説明

ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド、ペルフルオロブタンスルホン酸カリウム塩、およびペルフルオロブタンスルホニルフルオリドの製造方法

【課題】ペルフルオロブタンスルホニルフルオリドを精製し、ペルフルオロスルホランを除去した、高純度のペルフルオロブタンスルホニルフルオリドを提供する。
【解決手段】ペルフルオロスルホランの含有量が質量基準で100ppm以下であるペルフルオロブタンスルホニルフルオリド。1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブタンスルホン酸カリウム塩の含有量が質量基準で100ppm以下であるペルフルオロブタンスルホン酸カリウム塩、およびペルフルオロブタンスルホニルフルオリド中に、アルカリ金属水酸化物の水溶液を添加してペルフルオロスルホランを除去するペルフルオロブタンスルホニルフルオリドの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度のペルフルオロブタンスルホニルフルオリド、およびその製造方法、並びにペルフルオロブタンスルホニルフルオリドを用いて製造されるペルフルオロブタンスルホン酸カリウム塩に関する。より詳しくは、副生するペルフルオロスルホランを効率よく除去することができるペルフルオロブタンスルホニルフルオリドの製造方法、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド、及びペルフルオロブタンスルホン酸カリウム塩に関する。
【背景技術】
【0002】
ペルフルオロブタンスルホン酸塩(CFCFCFCFSOM、式中、Mは、カチオンである)は、半導体製造時に用いられるフォトリソグラフィー用の光酸発生剤や、ポリカーボネート樹脂の難燃剤、樹脂の導電化剤等に用いられる。このペルフルオロブタンスルホン酸塩は、原料としてペルフルオロブタンスルホニルフルオリド(CFCFCFCFSOF)を用いて製造される。ペルフルオロブタンスルホニルフルオリドは、スルホラン(テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド)を電解フッ素化することで製造されている。この電解フッ素化(ECF:Electrochemical Fluorination)は、以下の反応式(1)で示される。
【0003】
【化1】

【0004】
しかし、この電解フッ素化の過程において、以下の反応式(2)により、不純物としてペルフルオロスルホラン(ペルフルオロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド)が副生し、この不純物は、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド中に数質量%含有されている。
【0005】
【化2】

【0006】
ペルフルオロブタンスルホニルフルオリドを精製するために、まず、蒸留を行う。しかし、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリドとペルフルオロスルホランは、いずれも沸点が約65℃とほぼ等しいため、ペルフルオロスルホランを蒸留により除去することは困難であるという問題がある。
【0007】
ペルフルオロスルホランを除去する方法として、リン酸水素二カリウムとリン酸カリウムの緩衝水溶液を使用する方法が報告されている(非特許文献1)。しかしながら、この方法では、ペルフルオロスルホランの除去に4日を要する。また、ペルフルオロスルホランの除去も十分とは言えず、さらに除去に使用する緩衝水溶液に起因するリンが新たな不純物として混入する。例えば、半導体のリソグラフィー用フォトレジストに使用する場合には、不純物としてのリンは許容されないので、緩衝水溶液を使用する上記除去方法は適切でない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】マイケル エー ケー ボーゲル(Michael A.K.Vogel)、他2名、シンレット(SYNLETT)、(米国)、2007年、第18巻、p.2907−2911
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリドを精製して、ペルフルオロスルホランを除去し、高純度のペルフルオロブタンスルホニルフルオリドを得ることを課題とする。このため、本発明は、高純度のペルフルオロブタンスルホニルフルオリド、高純度のペルフルオロブタンスルホン酸カリウム塩、および高純度のペルフルオロブタンスルホニルフルオリドの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の高純度のペルフルオロブタンスルホニルフルオリド、ペルフルオロブタンスルホン酸カリウム塩、およびペルフルオロブタンスルホニルフルオリドの製造方法の要旨を以下に示す。
(1)ペルフルオロスルホランの含有量が、質量基準で100ppm以下であることを特徴とするペルフルオロブタンスルホニルフルオリド。
(2)1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブタンスルホン酸カリウム塩の含有量が、質量基準で100ppm以下であることを特徴とするペルフルオロブタンスルホン酸カリウム塩。
(3)ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド中に、アルカリ金属水酸化物の水溶液を添加してペルフルオロスルホランを除去することを特徴とするペルフルオロブタンスルホニルフルオリドの製造方法。
(4)前記アルカリ金属水酸化物が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、および水酸化セシウムからなる群より選択される少なくとも1種である上記(3)記載のペルフルオロブタンスルホニルフルオリドの製造方法。
(5)前記ペルフルオロスルホラン:1モルに対して、前記アルカリ金属水酸化物の添加量が1〜3モルの比率である上記(3)または(4)記載のペルフルオロブタンスルホニルフルオリドの製造方法。
(6)前記アルカリ金属水酸化物の水溶液:100質量部に対して、前記アルカリ金属水酸化物の量が0.1〜20質量部である上記(3)〜(5)のいずれか記載のペルフルオロブタンスルホニルフルオリドの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の態様(1)によれば、高純度のペルフルオロブタンスルホニルフルオリドを提供できる。従来の製造方法では、このように高純度のペルフルオロブタンスルホニルフルオリドを製造することは難しい。
【0012】
本発明の態様(3)によれば、高純度のペルフルオロブタンスルホニルフルオリドを、例えば、1〜2時間程度の短時間で容易に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。なお、含有量を示す単位%は特に示さない限り、質量%である。
【0014】
〔ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド、ペルフルオロブタンスルホン酸カリウム塩〕
本実施形態のペルフルオロブタンスルホニルフルオリドは、ペルフルオロスルホランの含有量が、質量基準で100ppm以下であることを特徴とする。また、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリドを原料として用いて製造される本実施形態のペルフルオロブタンスルホン酸カリウム塩は、1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブタンスルホン酸カリウム塩の含有量が、質量基準で100ppm以下であることを特徴とする。
【0015】
ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド中のペルフルオロスルホランは、前述した反応式(2)で生成する。
【0016】
ペルフルオロブタンスルホニルフルオリドを、例えば、水酸化カリウムと反応させてペルフルオロブタンスルホン酸カリウム塩を製造する際、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド中に存在するペルフルオロスルホランも水酸化カリウムと反応する。このとき、以下の反応式(3)により、ペルフルオロスルホラン中の1つのCF−S結合が開裂して不純物が生成する。この不純物が1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブタンスルホン酸カリウム塩(HCFCFCFCFSOK)である。
【0017】
【化3】

【0018】
ペルフルオロブタンスルホン酸カリウム塩中の1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブタンスルホン酸カリウム塩は、原料とするペルフルオロブタンスルホニルフルオリド中に存在するペルフルオロスルホランに由来する。したがって、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド中のペルフルオロスルホランの生成を抑制することにより、ペルフルオロブタンスルホン酸カリウム塩中の1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブタンスルホン酸カリウム塩の生成を防止することができる。
【0019】
1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブタンスルホン酸カリウム塩の含有量が、100ppm以下であると、ペルフルオロブタンスルホン酸カリウム塩は、半導体製造時に用いられる不純物含有量の小さいフォトリソグラフィー用の光酸発生剤の原料として有用である。ここで、1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブタンスルホン酸カリウム塩の定量は、19F−NMRやLC−MSにより行う。また、ペルフルオロスルホランを分析するときは、ガスクロマトグラフィー(GC)により行う。
【0020】
〔ペルフルオロブタンスルホニルフルオリドの製造方法〕
本実施形態のペルフルオロブタンスルホニルフルオリドの製造方法は、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド中に、アルカリ金属水酸化物の水溶液を添加して精製することを特徴とする。この製造方法(精製方法)によれば、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド中のペルフルオロスルホランの含有量を、1〜2時間で、100ppm以下にすることができる。以下、不純物としてペルフルオロスルホランを含有するペルフルオロブタンスルホニルフルオリドに、アルカリ金属水酸化物の水溶液を添加して起こる反応を、アルカリ金属として、カリウムを使用する場合について説明する。
【0021】
ペルフルオロブタンスルホニルフルオリドと、ペルフルオロスルホランは、ともに非水溶性である。ここで、水酸化カリウムの水溶液を添加すると、反応温度0〜50℃(好ましくは20〜30℃)では、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリドは水酸化カリウムと反応せず、変化がない。一方、ペルフルオロスルホランは水酸化カリウムと反応し、上記の反応式(3)により、水溶性の1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブタンスルホン酸カリウム塩が生成し、水酸化カリウムの水溶液に溶解する。反応式(3)の反応が完了し、さらに1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブタンスルホン酸カリウム塩が、水酸化カリウムの水溶液に溶解し終えた後には、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリドと、1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブタンスルホン酸カリウム塩を含有する水酸化カリウムの水溶液は、層分離する。ペルフルオロブタンスルホニルフルオリドは下層に、水酸化カリウムの水溶液は上層に、分かれる。したがって、下層のみを分液することにより、高純度のペルフルオロブタンスルホニルフルオリドが得られる。
【0022】
アルカリ金属水酸化物は、好ましくは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、および水酸化セシウムからなる群より選択される少なくとも1種であり、2種以上を併用してもよい。
【0023】
アルカリ金属水酸化物の水溶液:100質量部に対して、アルカリ金属水酸化物の量は、0.1〜20質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることがより好ましい。アルカリ金属水酸化物の比率が0.1質量部未満では、精製効果が見られない。アルカリ金属水酸化物の比率が20質量部を超えると、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリドの分解が生じるため好ましくない。
【0024】
ペルフルオロスルホランの除去において、ペルフルオロスルホラン:1モルに対して、アルカリ金属水酸化物の添加量(比率)は、1〜10モルであることが好ましく、2〜5モルであることがより好ましい。アルカリ金属水酸化物の比率が1モル未満であると、反応式(3)の反応が完了せず精製効果が得られない。アルカリ金属水酸化物の比率が10モルを超えても、格段の効果は得られない。
【0025】
ペルフルオロブタンスルホニルフルオリドへのアルカリ金属水酸化物の水溶液の添加は、公知の方法を用いればよく、特に限定されない。しかし、精製後に分離した下層のペルフルオロブタンスルホニルフルオリドを容易に取り出すためには、例えば分液ロート等で行うことが好ましい。反応の条件の一例としては、適宜混合溶液を撹拌しながら、室温で、1〜2時間反応させることが挙げられる。反応条件は、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド中に含有されているペルフルオロスルホランの量、反応させるバッチの大きさ(原料の量)、撹拌の強さ等により、適宜決定すればよい。
【0026】
〔ペルフルオロブタンスルホン酸カリウム塩の製造方法〕
ペルフルオロブタンスルホニルフルオリドを原料として、ペルフルオロブタンスルホン酸カリウム塩は、以下の反応式(4)により製造することができる。
SOF+2KOH→CSOK+KF+HO (4)
【0027】
具体的には、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリドを水酸化カリウム水溶液と反応させ、生成したペルフルオロブタンスルホン酸カリウム塩を冷却し、晶析させる。次いで、晶析されたペルフルオロブタンスルホン酸カリウム塩をろ過、乾燥させる。以上によりペルフルオロブタンスルホン酸カリウム塩を得ることができる。
【0028】
ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド:1モルに対して、水酸化カリウムのモル比は、2〜3モルが好ましく、2モルが特に好ましい。
【0029】
水酸化カリウム水溶液:100質量部に対して、水酸化カリウムの量は、20〜70質量部が好ましく、20質量部が特に好ましい。
【0030】
反応式(4)の反応温度は、50〜100℃であり、特に好ましくは80℃である。また、反応式(4)の反応時間は、10〜50時間であり、これにより反応を完結させることができる。
【0031】
生成したペルフルオロスルホン酸カリウム塩を冷却し、ペルフルオロスルホン酸カリウム塩を晶析させる方法、及び晶析されたペルフルオロブタンスルホン酸カリウム塩をろ過、乾燥する方法は、公知の方法を用いればよく、特に限定されない。
【0032】
上記により、本実施形態のペルフルオロブタンスルホン酸カリウム塩を製造することができる。
【実施例】
【0033】
以下に、実施例により、本実施形態を詳細に説明するが、本実施形態はこれらに限定されない。
【0034】
〔実施例1〕
ペルフルオロスルホランを1質量%含有するペルフルオロブタンスルホニルフルオリド:50gを、100cmのポリエチレン瓶に入れた。次に、1質量%水酸化カリウム水溶液:21gを入れた。室温にて1時間撹拌し、次いで下層を分離し、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド:49gを得た。
【0035】
得られたペルフルオロブタンスルホニルフルオリドをガスクロマトグラフィー(GC)分析した。その結果、ペルフルオロスルホランの含有量は100ppm未満であった。なお、100ppmは、GCにおけるペルフルオロスルホランの検出下限値である。
【0036】
〔実施例2〕
1質量%水酸化カリウム水溶液:11gを用いた以外は、実施例1と同様にして、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド:49gを得た。得られたペルフルオロブタンスルホニルフルオリドをGC分析した。その結果、ペルフルオロスルホランの含有量は100ppm未満であった。
【0037】
〔実施例3〕
1質量%水酸化カリウム水溶液:31gを用いた以外は、実施例1と同様にして、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド:49gを得た。得られたペルフルオロブタンスルホニルフルオリドをGC分析した。その結果、ペルフルオロスルホランの含有量は100ppm未満であった。
【0038】
〔実施例4〕
1質量%水酸化カリウム水溶液の代わりに、1質量%水酸化ナトリウム水溶液:15gを用いた以外は、実施例1と同様にして、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド:49gを得た。得られたペルフルオロブタンスルホニルフルオリドをGC分析した。その結果、ペルフルオロスルホランの含有量は100ppm未満であった。
【0039】
〔実施例5〕
1質量%水酸化カリウム水溶液:42gを用いた以外は、実施例1と同様にして、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド:49gを得た。得られたペルフルオロブタンスルホニルフルオリドをGC分析した。その結果、ペルフルオロスルホランの含有量は100ppm未満であった。
【0040】
〔参考例1〕
1質量%水酸化カリウム水溶液:9gを用いた以外は、実施例1と同様にして、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド:49gを得た。得られたペルフルオロブタンスルホニルフルオリドをGC分析した。その結果、ペルフルオロスルホランの含有量は3000ppmであった。
【0041】
〔比較例1〕
1質量%水酸化カリウム水溶液の代わりに、1質量%炭酸カリウム(KCO)水溶液:21gを用いた以外は、実施例1と同様にして、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド:50gを得た。得られたペルフルオロブタンスルホニルフルオリドをGC分析した。その結果、ペルフルオロスルホランの含有量は1%であった。
【0042】
〔比較例2〕
1質量%水酸化カリウム水溶液の代わりに、10質量%硫酸:21gを用いた以外は、実施例1と同様にして、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド:50gを得た。得られたペルフルオロブタンスルホニルフルオリドをGC分析した。その結果、ペルフルオロスルホランの含有量は1%であった。
【0043】
〔比較例3〕
1質量%水酸化カリウム水溶液の代わりに、リン酸水素二カリウム0.5重量%とリン酸カリウム0.5重量%の混合水溶液21gを用い、実施例1と同様にして、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド:50gを得た。得られたペルフルオロブタンスルホニルフルオリドをGC分析した。その結果、ペルフルオロスルホランの含有量は9500ppmであった。
【0044】
〔実施例6〕
20質量%水酸化カリウム水溶液:15gと、実施例1のペルフルオロスルホラン含有量が100ppm未満のペルフルオロブタンスルホニルフロライド:8gを、100cmフラスコに入れた。そして混合液を80℃で24時間攪拌した。その後、20℃まで冷却し、結晶をろ過した。得られた結晶を減圧乾燥して、ペルフルオロブタンスルホン酸カリウム塩:8gを得た。得られたペルフルオロブタンスルホン酸カリウム塩中の1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブタンスルホン酸カリウム塩の含有量は100ppm以下であった。
【0045】
〔比較例4〕
ペルフルオロブタンスルホニルフロライドとして、比較例1で製造されたペルフルオロスルホラン含有量が10000ppmのものを用いた以外は、実施例6と同様にして、ペルフルオロブタンスルホン酸カリウム:8gを得た。得られたペルフルオロブタンスルホン酸カリウム塩の1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブタンスルホン酸カリウム塩の含有量は9000ppmであった。
【0046】
上記のように、実施例1〜5の全てにおいて、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド中のペルフルオロスルホランの含有量が100ppm未満であった。これに対して、ペルフルオロスルホラン:1モルに対して、水酸化カリウムの量が約0.84モルである参考例1では、ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド中のペルフルオロスルホランの含有量が3000ppmであった。また、アルカリ金属水酸化物の水溶液を使用しない比較例1〜3の全てにおいて、ぺルフルオロブタンスルホニルフルオリド中のペルフルオロスルホランの含有量が約1%であり、ペルフルオロスルホランを除去することができなかった。なお、ペルフルオロスルホラン:1モルに対する水酸化カリウムの比率は、実施例1では約1.95、実施例2では約1.05、実施例3では約2.89、実施例4では約3.95である。
【0047】
また、ペルフルオロスルホラン含有量が100ppm未満のペルフルオロブタンスルホニルフロライドを用いた実施例6では、1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブタンスルホン酸カリウム塩の含有量が100ppm以下であった。これに対して、ペルフルオロスルホラン含有量が10000ppmのペルフルオロブタンスルホニルフロライドを用いた比較例4では、1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブタンスルホン酸カリウム塩の含有量は9000ppmであった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本実施形態のペルフルオロブタンスルホニルフルオリドの製造方法により、短時間でペルフルオロスルホランを除去することができ、高純度のペルフルオロブタンスルホニルフルオリドを得ることができる。このため、本実施形態では、高純度のペルフルオロブタンスルホニルフルオリド、及びこのペルフルオロブタンスルホニルフルオリドから合成される高純度のペルフルオロブタンスルホン酸塩を提供できる。本実施形態のペルフルオロブタンスルホン酸塩は、高純度であるため、半導体製造時に用いられるフォトリソグラフィー用の光酸発生剤の原料や、ポリカーボネート樹脂の難燃剤、樹脂の導電化剤等の用途に、非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペルフルオロスルホランの含有量が、質量基準で100ppm以下であることを特徴とするペルフルオロブタンスルホニルフルオリド。
【請求項2】
1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブタンスルホン酸カリウム塩の含有量が、質量基準で100ppm以下であることを特徴とするペルフルオロブタンスルホン酸カリウム塩。
【請求項3】
ペルフルオロブタンスルホニルフルオリド中に、アルカリ金属水酸化物の水溶液を添加してペルフルオロスルホランを除去することを特徴とするペルフルオロブタンスルホニルフルオリドの製造方法。
【請求項4】
前記アルカリ金属水酸化物が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、および水酸化セシウムからなる群より選択される少なくとも1種である請求項3に記載のペルフルオロブタンスルホニルフルオリドの製造方法。
【請求項5】
前記ペルフルオロスルホラン:1モルに対して、前記アルカリ金属水酸化物の添加量が1〜10モルの比率である請求項3または4に記載のペルフルオロブタンスルホニルフルオリドの製造方法。
【請求項6】
前記アルカリ金属水酸化物の水溶液:100質量部に対して、前記アルカリ金属水酸化物の量が0.1〜20質量部である請求項3〜5のいずれか1項に記載のペルフルオロブタンスルホニルフルオリドの製造方法。

【公開番号】特開2012−176944(P2012−176944A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−20483(P2012−20483)
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(597065282)三菱マテリアル電子化成株式会社 (151)
【Fターム(参考)】