説明

ペレット形状のポリエステルの輸送方法および貯蔵方法

【課題】ポリエステルのペレットを気力輸送する際に、ペレットの含水率を増大させることなく簡便な手段で輸送することができるペレット状のポリエステルの輸送方法及び貯蔵方法を提供する。
【解決手段】ペレット形状の脂肪族ポリエステルを圧力気体流と共に輸送配管を介し気力輸送するペレット形状の脂肪族ポリエステルの気力輸送方法であって、気力輸送に用いる気体に含まれる水分量を低減し気体の露点を0℃以下に調整する気体除湿工程と、気体除湿工程において露点が0℃以下に調整された気体を圧縮する気体圧縮工程と、気体圧縮工程において圧縮された圧力気体をペレット形状の脂肪族ポリエステル1トン当たり50Nm/時間〜600Nm/時間で輸送配管内に供給する圧力気体供給工程と、圧力気体供給工程において輸送配管に供給された圧力気体流と共にペレット形状の脂肪族ポリエステルを輸送配管を介し気力輸送する輸送工程と、を有することを特徴とするペレット形状の脂肪族ポリエステルの気力輸送方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペレット形状のポリエステルの輸送方法等に関し、より詳しくは、吸湿性のペレット形状のポリエステルの輸送に適したペレット形状のポリエステルの輸送方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド等のポリマーは、通常、所定の製造装置において重縮合反応等が行われた後に溶融状態でストランド状に押し出され、冷却水により冷却された後、カッター等によりペレット形状に成形され、製品となる。この場合、ペレット形状のポリマー(以下、「ポリマーペレット」と言う。)は、表面に付着した水分が除去され、その後、所定の輸送配管内を圧力気体流に乗って気力輸送され、検査や出荷等のため貯槽サイロ等の貯蔵容器に一旦貯蔵される。
ポリマーペレットを乾燥する方法については、例えば、特許文献1に記載のように樹脂成形材料のペレットを貯蔵カプセルに供給し、真空処理して脱気乾燥する方法が記載されている。また所定の乾燥炉も使用される。
【0003】
【特許文献1】特開平6−134764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般に、ポリマーペレットが吸湿性を有する場合、ポリマーペレットを気力輸送に使用する圧縮空気やポリマーペレットを貯蔵する貯蔵容器中の気体に水分が含まれていると、気体に含まれている水分がポリマーペレットに吸湿される。
この場合、例えば、ポリエステル等の樹脂は、吸湿した水分により加水分解を生じるおそれがある。特に、生分解性機能を有する脂肪族ポリエステルは、一般に吸湿性が高く、ポリマーペレット中の水分量を管理しないと、保管時にポリマーペレット中の水分が原因とされる加水分解により著しく劣化する傾向がある。その結果、引張特性等の機械特性に優れたポリエステルが得られない場合がある。このため、ポリマーペレットが一旦水分を吸湿した場合、乾燥等の後処理によってポリマーペレット中の水分を除去する必要がある。
しかし、このような後処理は、乾燥装置や脱気装置を使用するため設備が大掛かりで過大になるばかりか、エネルギーロスが大きいな等省エネルギーの観点からも問題がある。また、乾燥後のポリマーペレットを長距離輸送する場合、再び水分を吸湿することの防止は困難である。
【0005】
本発明の目的は、ポリエステルのペレットを気力輸送する際に、ペレットの含水率を増大させることなく簡便な手段で輸送することができるペレット形状のポリエステルの輸送方法及び貯蔵方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を行った結果、気体中に含まれる水分を予め除湿機により除去することにより気体の露点を調整し、このような露点が調整された気体を使用してペレット形状の脂肪族ポリエステルの気力輸送を行うと、ポリマーペレットの含水率が増大しないことを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成した。
【0007】
かくして本発明によれば、露点が0℃以下の気体を使用し、吸湿性のペレット形状のポリエステルを気力輸送することを特徴とするペレット形状のポリエステルの輸送方法が提供される。
ここで、本発明が適用されるペレット形状のポリエステルの輸送方法では、気体により気力輸送されるポリエステルは、主たる構成単位が脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールである脂肪族ポリエステルであることが好ましい。
また、ペレット形状のポリエステルの気力輸送に用いる気体は、空気であることが好ましい。
また、露点が0℃以下の気体により気力輸送されたペレット形状のポリエステルの含水率が、0.1重量%以下であることが好ましい。
さらに、ペレット形状のポリエステルの気力輸送に用いる気体の温度が0℃以上、80℃以下であることが好ましい。
【0008】
次に、本発明によれば、ペレット形状の脂肪族ポリエステルを圧力気体流と共に輸送配管を介し気力輸送するペレット形状の脂肪族ポリエステルの気力輸送方法であって、ペレット形状の脂肪族ポリエステルの気力輸送に用いる気体に含まれる水分量を低減し気体の露点を0℃以下に調整する気体除湿工程と、気体除湿工程において露点が0℃以下に調整された気体を圧縮する気体圧縮工程と、気体圧縮工程において圧縮された圧力気体をペレット形状の脂肪族ポリエステル1トン当たり50Nm/時間〜600Nm/時間で輸送配管内に供給する圧力気体供給工程と、圧力気体供給工程において輸送配管に供給された圧力気体流と共にペレット形状の脂肪族ポリエステルを輸送配管を介し気力輸送する輸送工程と、を有することを特徴とするペレット形状の脂肪族ポリエステルの気力輸送方法が提供される。
【0009】
ここで、本発明が適用されるペレット形状の脂肪族ポリエステルの気力輸送方法では、気体除湿工程において、ペレット形状の脂肪族ポリエステルの気力輸送に用いる気体の露点を−10℃以下に調整することが好ましい。
さらに、輸送工程において、輸送配管に供給された圧力気体流と共にペレット形状の脂肪族ポリエステルを予め露点が0℃以下の気体が充填された貯蔵設備に気力輸送することが好ましい。
【0010】
次に、本発明によれば、貯蔵容器中に露点が0℃以下の気体を充填し、貯蔵容器中に吸湿性のペレット形状のポリエステルを貯蔵することを特徴とするペレット形状のポリエステルの貯蔵方法が提供される。
ここで、貯蔵容器中に貯蔵されたペレット形状のポリエステルの含水率が0.1重量%以下であることが好ましい。
さらに、貯蔵容器中に充填される気体の温度が0℃以上、80℃以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、吸湿性の脂肪族ポリエステルのペレットを、簡便な手段で、含水率を増大させることなく気力輸送し、貯蔵することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、発明を実施するための最良の形態(発明の実施の形態)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。また、使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0013】
(脂肪族ポリエステル)
本実施の形態で使用する脂肪族ポリエステルとしては、主たる繰り返し単位が脂肪族ジカルボン酸単位および脂肪族ジオール単位であるジオール/ジカルボン酸系脂肪族ポリエステルと、主たる繰り返し単位が脂肪族オキシカルボン酸であるオキシカルボン酸系脂肪族ポリエステルと、芳香族−脂肪族共重合ポリエステル等が挙げられる。これらの脂肪族ポリエステルは、1種または2種以上を任意の比率で組み合わせてもよい。
これらの脂肪族ポリエステルの中では、ジオール/ジカルボン酸系脂肪族ポリエステルが特に好ましい。ここで、脂肪族ジカルボン酸単位は、脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体から形成される構成単位であり、脂肪族ジオール単位は、脂肪族ジオール又はその誘導体から形成される構成単位である。以下、ジオール/ジカルボン酸系脂肪族ポリエステルについて説明する。
【0014】
(ジオール/ジカルボン酸系脂肪族ポリエステル)
本実施の形態で使用するジオール/ジカルボン酸系脂肪族ポリエステルのジオール単位として、下記式(I)で表わされるジオール又はその誘導体(以下適宜、ジオール又はその誘導体を「ジオール成分」ということがある。)から形成されるものが好ましい。また、ジカルボン酸単位として、下記式(II)で表わされるジカルボン酸又はその誘導体(以下適宜、ジカルボン酸又はその誘導体を「ジカルボン酸成分」という。)から形成されるものが好ましい。
【0015】
【化1】

【0016】
(式(I)において、Rは、鎖中に酸素原子を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基を表わす。また、式(II)において、Rは、2価の脂肪族炭化水素基を表わす。nは、0又は1である。)
【0017】
(ジオール)
先ず、式(I)で表わされるジオールについて説明する。
式(I)において、Rは、鎖中に酸素原子を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基を表わす。Rは、鎖状脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基のいずれであってもよい。また、Rは、分岐鎖を有していてもよい。
【0018】
さらに、Rの炭素数は本発明により得られる効果を著しく損なわない限り特に限定されない。例えば、Rが鎖状脂肪族炭化水素基の場合、Rの炭素数は通常2以上、通常10以下、好ましくは6以下である。Rが脂環式炭化水素基の場合、Rの炭素数は通常3以上、また、通常10以下、好ましくは8以下である。
さらに、ジオール成分としては、上記の式(I)のジオールの誘導体も好適に用いることができる。式(I)のジオールの誘導体の例としては、例えば、式(I)のジオールと酢酸とのエステル化合物等が挙げられる。
【0019】
上記式(I)で表されるジオール及びその誘導体の具体例としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が好適に挙げられる。中でも、得られる脂肪族ポリエステルの物性の面から、特に1,4−ブタンジオールが好ましい。
【0020】
式(I)において、Rが鎖中に酸素原子を含有する2価の鎖状脂肪族炭化水素基である場合、Rとしては、下記式(III)で表されるアルキレングリコールの縮合体が好ましい。また、式(III)で表されるアルキレングリコールの縮合体の炭素数は、2〜6であることが好ましい。
【0021】
【化2】

【0022】
上記式(III)中、Rはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表わす。p及びp’は、それぞれ独立に、1〜3の整数を表わす。q及びq’は、それぞれ0以上の整数を表わす。但し、qとq’とが同時に0であることはなく、一方が0の場合、他方は2以上の整数である。
【0023】
式(III)で表わされるアルキレングリコールの縮合体の具体例は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレンジオール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。さらに、ポリエチレングリコール等とポリプロピレングリコール等との共重合体が挙げられる。
これらの中でも、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール等とポリプロピレングリコール等との共重合体が好ましい。
式(III)で表わされるアルキレングリコールの縮合体の分子量が100万〜200万の場合、得られる脂肪族ポリエステルの融点の低下が小さくなるので好ましい。
【0024】
(ジカルボン酸)
次に、式(II)で表わされるジカルボン酸について説明する。
式(II)において、Rは、2価の脂肪族炭化水素基を表わす。また、Rは、鎖状脂肪族炭化水素基であってもよく、脂環式炭化水素基であってもよい。さらに、Rは、分岐鎖を有していてもよい。
【0025】
の炭素数は、本発明で得られる効果を著しく損なわない限り特に限定されないが、通常2以上、通常48以下である。
ただし、Rが鎖状脂肪族炭化水素基である場合、Rは、−(CH−で表わされる2価の鎖状脂肪族炭化水素基であることが好ましい。なお、mは、通常1以上、通常10以下、好ましくは6以下の整数である。
また、Rが脂環式炭化水素基である場合、Rの炭素数は、通常3以上、好ましくは4以上、通常10以下、好ましくは8以下である。
【0026】
本実施の形態において、上記式(II)で表されるジカルボン酸の誘導体も、ジカルボン酸成分として好適に用いることができる。ジカルボン酸の誘導体としては、例えば、式(II)のジカルボン酸の低級アルコールエステルや酸無水物等が挙げられる。中でも、炭素数1〜4の低級アルコールエステルまたは酸無水物が好ましい。
【0027】
式(II)で表されるジカルボン酸としては、炭素数が2以上48以下の鎖状または脂環式ジカルボン酸が挙げられる。具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、へプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカンニ酸、テトラデカン二酸、ペンタデカンニ酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、マレイン酸、フマル酸、1,6−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等が挙げられる。
【0028】
式(II)で表されるジカルボン酸の誘導体としては、例えば、ジメチルエステル、ジエチルエステル等の低級アルコールとのエステル;無水コハク酸、無水アジピン酸等の酸無水物等が挙げられる。中でも、得られる脂肪族ポリエステルの物性の面から、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸またはこれらの酸無水物、及びこれらの低級アルコールとのエステルが好ましく、特に、コハク酸、無水コハク酸、またはこれらの混合物が好ましい。
【0029】
ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸との混合物であっても良い。これらの中では、脂肪族ジカルボン酸を主成分とするものが好ましい。ここで、主成分とは、全ジカルボン酸単位に対して、通常50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、特に好ましくは90モル%以上の成分を指す。
【0030】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルおよびブチルエステル等の芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルが挙げられる。この中でも、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸が好ましい。芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、ジメチルテレフタレートが好ましい。
【0031】
(他の共重合成分)
本実施の形態で使用する脂肪族ポリエステルは、式(I)で表わされるジオール及び式(II)で表されるジカルボン酸に加え、必要に応じて用いられる他の共重合成分との共重合体であってもよい。
他の共重合成分の具体的な例としては、2官能のオキシカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、架橋構造を形成するための多官能化合物が挙げられる。ここで多官能化合物としては、3官能以上の多価アルコール、3官能以上の多価カルボン酸またはその無水物、3官能以上のオキシカルボン酸等が挙げられる。これらの他の共重合成分の中でも、高重合度のポリエステルが容易に製造できることから、オキシカルボン酸が好適に使用される。
【0032】
2官能のオキシカルボン酸としては、具体的には、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸等が挙げられる。これらはオキシカルボン酸のエステルやカプロラクトン等のラクトン、オキシカルボン酸重合体等の誘導体であっても良い。また、これらオキシカルボン酸は単独又は2種以上の混合物として使用することもできる。これらオキシカルボン酸に光学異性体が存在する場合には、D体、L体、またはラセミ体のいずれでもよく、形態としては固体、液体、または水溶液であってもよい。これらの中では、入手の容易な乳酸またはグリコール酸が特に好ましい。その形態は、30%〜95%の水溶液のものが容易に入手することができるので好ましい。
2官能のオキシカルボン酸の使用量は、通常、ポリエステルを構成する全単量体単位に対して、下限が通常0.02モル%以上、好ましくは0.5モル%以上、より好ましくは1.0モル%以上であり、上限が、通常30モル%以下、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。
【0033】
不飽和ジカルボン酸としては、イタコン酸、アコニット酸、フマル酸やマレイン酸等が挙げられる。これらは単独又は2種以上の混合物として使用することもできる。不飽和ジカルボン酸の使用量は、ゲルの発生原因となるため通常ポリエステルを構成する全単量体単位に対して、通常5モル%以下、好ましくは0.5モル%以下、より好ましくは0.05モル%以下である。
【0034】
多官能化合物としては、3官能以上の多価アルコール、3官能以上の多価カルボン酸またはその無水物、3官能以上のオキシカルボン酸等が挙げられる。3官能以上の多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。3官能以上の多価カルボン酸またはその無水物としては、プロパントリカルボン酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、シクロペンタテトラカルボン酸無水物等が挙げられる。3官能以上のオキシカルボン酸としては、具体的には、リンゴ酸、ヒドロキシグルタル酸、ヒドロキシメチルグルタル酸、酒石酸、クエン酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシテレフタル酸等が挙げられる。これらの中でも、入手の容易性から、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸が好ましい。これらは単独又は2種以上の混合物として使用することができる。
多官能化合物の使用量は、ポリエステルを構成する全単量体単位に対して、通常、0.001モル以上、好ましくは0.01モル以上、より好ましくは0.1モル以上であり、一方、その上限は通常、5モル%以下、好ましくは0.5モル%以下、より好ましくは0.2モル%以下である。使用量が過度に多いとゲルが発生する傾向がある。
【0035】
上述したジオール/ジカルボン酸系脂肪族ポリエステルのメルトフローインデックス(MFR)は、190℃、2.16kgで測定した場合、下限が、通常0.1g/10分以上であり、上限が通常100g/10分以下、好ましくは50g/10分以下、より好ましくは30g/10分以下、特に好ましくは10g/10分以下である。
【0036】
本実施の形態で使用する脂肪族ポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は、1.4dL/g以上、好ましくは1.6dL/g以上、より好ましくは2.0dL/g以上、特に好ましくは2.2dL/g以上である。還元粘度(ηsp/c)値の上限は、6.0dL/g以下、好ましくは5.0dL/g以下、更に好ましくは4.0dL/g以下である。還元粘度が過度に小さいと、実用上十分な力学特性が得られない傾向がある。還元粘度が過度に大きいと、重縮合反応後の装置内からの抜き出し性、成形性が低下する傾向がある。
【0037】
ここで、還元粘度(ηsp/c)は以下の測定条件により測定される。
粘度管:ウベローデ粘度管
測定温度:30℃
溶媒:フェノール/テトラクロロエタン(1:1重量比)溶液
ポリエステル濃度:0.5g/dl
【0038】
本実施の形態で使用する脂肪族ポリエステルの末端カルボキシル基量は、通常、60eq/トン以下、好ましくは40eq/トン以下、より好ましくは30eq/トン以下である。また、脂肪族ポリエステル系樹脂の末端カルボキシル基量の下限は、通常、0.1eq/トン以上、より好ましくは1eq/トン以上である。カルボキシル基末端量が過度に少ないと、重合速度が遅くなり、高重合度の脂肪族ポリエステルが得られない傾向がある。そのような理由から、脂肪族ポリエステル系樹脂の末端カルボキシル基量の下限は、通常、0.1eq/トン以上、より好ましくは1eq/トン以上である。
末端カルボキシル基量は、通常、公知の滴定方法により算出される。本実施の形態では、脂肪族ポリエステルをベンジルアルコールに溶解し0.1N NaOHにて滴定した値であり、1×10g当たりのカルボキシル基当量である。
【0039】
(脂肪族ポリエステルの製造方法)
本実施の形態で使用する脂肪族ポリエステルの製造方法は、公知の重縮合反応方法が採用できる。また、この際の重縮合反応は、従来から採用されている適切な条件を設定することができ、特に制限されない。また、通常は、エステル化反応を進行させた後、減圧操作を行なうことによってさらに重合度を高めることができる。
【0040】
脂肪族ポリエステルの製造時に、ジオール単位を形成するジオール成分とジカルボン酸単位を形成するジカルボン酸成分とを反応させる場合、目的とする組成を有するようにジオール成分及びジカルボン酸成分の使用量を設定する。通常、ジオール成分とジカルボン酸成分とは実質的に等モル量である。ただし、ジオール成分の使用量は、エステル化反応中の留出があることから、通常は1モル%〜20モル%過剰に用いられる。
【0041】
さらに、脂肪族オキシカルボン酸単位や多官能成分単位等の必須成分以外の成分(任意成分)を含有させる場合、その脂肪族オキシカルボン酸単位や多官能成分単位もそれぞれ目的とする組成となるように、それぞれに対応する化合物(モノマーやオリゴマー)を反応に供するようにする。この場合、任意成分を反応系に導入する時期及び方法に制限は無く、適宜決定される。
例えば、脂肪族オキシカルボン酸を反応系に導入する時期及び方法は、ジオール成分とジカルボン酸成分との重縮合反応以前であれば特に限定されず、(1)予め触媒を脂肪族オキシカルボン酸溶液に溶解させた状態で混合する方法、(2)原料仕込み時に触媒を系に導入すると同時に混合する方法等が挙げられる。
多官能成分単位を形成する化合物の導入時期は、重合初期の他のモノマーやオリゴマーと同時に仕込むようにしてもよい。または、エステル交換反応後、減圧を開始する前に仕込むようにしてもよいが、他のモノマーやオリゴマーと同時に仕込むほうが工程の簡略化の点で好ましい。
【0042】
脂肪族ポリエステルは、通常、触媒の存在下で製造される。触媒としては、公知の化合物が挙げれ特に限定されない。その例としては、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、アンチモン、スズ、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等の金属化合物が好適である。中でもゲルマニウム化合物、チタン化合物が好適である。
ゲルマニウム化合物としては、例えば、テトラアルコキシゲルマニウム等の有機系ゲルマニウム化合物、酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウム化合物等が挙げられる。中でも、価格や入手の容易さ等から、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム及びテトラブトキシゲルマニウム等が好ましく、特には、酸化ゲルマニウムが好適である。
チタン化合物としては、例えば、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラフェニルチタネート等のテトラアルコキシチタン等の有機系チタン化合物が挙げられる。中でも、価格や入手の容易さ等から、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等が好ましい。尚、必要に応じて他の触媒の併用を妨げない。触媒は1種又は2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0043】
触媒の使用量は、特に限定されないが、通常、使用するモノマー量に対して0.0005重量%以上、より好ましくは0.001重量%以上、また、通常3重量%以下、好ましくは1.5重量%以下である。触媒量が過度に少ないと、重縮合反応が進行しない傾向があり、過度に多いと、製造費が高くなるばかりでなく、得られたポリマーが著しい着色を生じたり加水分解が促進される傾向がある。触媒の導入時期は、重縮合以前であれば特に限定されないが、原料仕込み時に導入しておいてもよく、減圧開始時に導入してもよい。
【0044】
脂肪族ポリエステルを製造する際の反応温度、重合時間、圧力等の反応条件は特に限定されない。但し、ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。また、反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下である。さらに、反応圧力は、通常、常圧〜10kPaであるが、中でも常圧が好ましい。また、反応時間は、下限が通常1時間以上であり、上限が通常10時間以下、好ましくは4時間以下である。
【0045】
さらに、ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応後の重縮合反応は、圧力を、下限が通常0.01×10Pa以上、好ましくは0.03×10Pa以上、上限が通常1.4×10Pa以下、好ましくは0.4×10Pa以下の真空度下として行なうことが望ましい。また、このときの反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。さらに、反応時間は、下限が通常2時間以上であり、上限が通常15時間以下、好ましくは10時間以下である。
【0046】
重縮合反応後、反応容器より排出されたストランド状の脂肪族ポリエステルは、ストランドバス等を経由して冷却水により冷却され、ストランドカッター等のカッターでペレット化される。また、重合反応後、押出機で各種添加剤がそれぞれ供給されてもよい。
そして、最後に遠心脱水機等にて水分除去した後に貯蔵容器である貯槽サイロに輸送されるが、このとき、本実施の形態が適用されるポリマーペレットの輸送方法、および貯蔵方法が使用される。
【0047】
本実施の形態において、高温のストランド状の脂肪族ポリエステルを冷却水で冷却し、ストランドカッター等のカッターでペレット化した後、遠心脱水機等の脱水機にて水分除去された直後のポリマーペレット中の水分量を制御することが重要である。
即ち、遠心脱水機等にて水分除去された直後ポリマーペレット中の水分量を低く抑えた状態で、ポリマーペレットを速やかに露点を制御した気体と接触させることにより、ポリマーペレットの吸湿を回避し、その後の煩雑な乾燥炉の使用や脱気乾燥工程を省略することができる。
遠心脱水機等にて水分除去された直後のポリマーペレット中の水分量は、通常、0.3重量%以下、好ましくは0.25重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下、特に0.15重量%以下に制御すると、保存時の加水分解が問題とならない0.1重量%以下の水分量のポリマーペレットが容易に得られるので好ましい。
【0048】
遠心脱水機等にて水分除去された直後のポリマーペレット中の水分量は、ストランド状の脂肪族ポリエステルを冷却水により冷却する際の冷却時間により調整される。脂肪族ポリエステルを冷却水により冷却する際の冷却時間は、特に制限はされないが、通常0.3秒以上、好ましくは1秒以上、その上限は通常30秒以下、好ましくは15秒以下、より好ましくは10秒以下である。
【0049】
遠心脱水機等にて水分除去された直後のポリマーペレットを露点を制御した気体と接触させるまでの時間は、下限は、通常、0時間以上、その上限は、通常12時間以内、より好ましくは6時間以内、特に好ましくは1時間以内、最も好ましくは30分以内である。
【0050】
図1は、本実施の形態が適用されるポリマーペレットの輸送方法および貯蔵方法の一例を説明する図である。
図1には、所定の製造装置から供給されたポリマーペレットを貯蔵する貯槽サイロ16a,16b(貯蔵容器、貯蔵設備)と、ポリマーペレットの気力輸送に使用する空気(Air)を除湿し圧縮した後、送り出す除湿機17とが示されている。
また、貯槽サイロ16a,16bの槽底には、内部に貯蔵したポリマーペレットを排出するためのペレット出口配管26a,26bがそれぞれ設けられている。
【0051】
図1に示すように、除湿機17には、所定の製造装置15aから供給されるポリマーペレットを貯槽サイロ16a,16bに気力輸送するための空気を供給する空気輸送配管23が設けられている。また、空気輸送配管23から分岐し、除湿機17から排出される空気を貯槽サイロ16a,16b内に導く空気輸送配管24が設けられている。
さらに、空気輸送配管23から分岐し、貯槽サイロ16a,16bの槽底に設けられたペレット出口配管26a,26bと結合し、貯槽サイロ16a,16b内から排出されるポリマーペレットを、装置外に移送するための空気を供給する空気輸送配管25が配設されている。
【0052】
本実施の形態において、除湿機17は、例えばハニカム型吸着式除湿装置である。除湿機17の内部には、塩化リチウム、ゼオライト、シリカゲル等の除湿剤を含浸させハニカム状に形成された不織布を用い、ロータ状に形成された除湿ロータ(図示せず)が内蔵されている。除湿ロータは、所定のモータによって回転駆動される。
除湿機17の空気供給口21から除湿機17内に導入された空気は、除湿機17に内蔵された除湿ロータ(図示せず)を通過する際に、空気中に含まれた水分が除湿材によって吸着される(気体除湿工程)。その後、図示しない空気圧縮機により圧縮され(気体圧縮工程)、除湿機17の空気排出口22より排出される。
【0053】
本実施の形態では、除湿機17内に導入された空気は、予め、濾過精度5ミクロン以下、好ましくは1ミクロン以下のフィルターにより濾過されており、除湿機17に内蔵された除湿ロータにより空気中に含まれた水分が除湿材に吸着され、露点が0℃以下、好ましくは、−10℃以下、さらに好ましくは、−20℃以下になるように管理されている。露点の下限は特に制限されない。
ここで、気体の露点とは、一般に、気体中の水蒸気の分圧を飽和水蒸気圧とする温度であって、徐々に冷却された気体に含まれる水分が凝縮し、露ができ始めるときの温度である。
【0054】
本実施の形態において、除湿機17により露点が制御された空気は、所定の温度範囲に管理され、ポリマーペレットの気力輸送に使用される。この場合、空気の温度は、通常0℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上であり、その上限は、通常80℃以下、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下である。
気力輸送に使用される空気の温度が過度に低いと、ポリマーペレット中の水分量を低減させるために長時間を要する傾向がある。空気の温度が過度に高いと、比較的融点が低い脂肪族ポリエステルが軟化しスネークスキンが発生する傾向がある。また、加水分解反応が促進する傾向がある。
【0055】
図1に示すように、ポリマーペレット(polymer)は、所定の製造装置15aからペレット供給口15bを経て空気輸送配管23に供給される(圧力気体供給工程)。そして、除湿機17において露点が0℃以下に調整され空気排出口22から排出された圧縮空気により空気輸送配管23内を気力輸送され(輸送工程)、貯槽サイロ16a,16b内に導入されて貯蔵される。
本実施の形態では、ポリマーペレットは、露点が0℃以下に調整された圧縮空気により気力輸送されることにより、含水率が0.1重量%以下、好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは、0.02重量%以下に保たれた状態で貯槽サイロ16a,16b内に貯蔵される。ペレットの含水率の下限は特に制限はない。
【0056】
ここで、含水率は、ポリマーペレットの所定の重量m(本実施の形態では、0.2g〜1g)と、このポリマーペレットを250℃で加熱乾燥した後に測定したペレットの重量mとの重量差(m―m)の乾燥前のポリマーペレットの重量mに対する割合(重量%)である。本実施の形態では、所定の水分測定装置及び水分気化装置を用いる電量滴定法によりポリマーペレットの含水率が測定される。
脂肪族ポリエステルのペレットは、通常、含水率が0.1重量%以下の状態で製品として出荷される。本実施の形態では、気力輸送に使用する気体の露点を0℃以下に管理することにより、含水率を0.1重量%以下に維持することが可能となる。
【0057】
ここで、本実施の形態において、除湿機17の空気排出口22から空気輸送配管23に供給される圧縮空気の風量は、ポリマーペレット1トン当たり、通常、50Nm/時間〜600Nm/時間であり、好ましくは、100Nm/時間〜500Nm/時間であり、さらに好ましくは100Nm/時間〜400Nm/時間である。圧縮空気の風量が過度に少ないと、ポリマーペレットが気力輸送されない傾向がある。圧縮空気の風量が過度に大きいと、ペレットが配管内壁に衝突することによるペレットの割れが発生したり微粉の発生が多くなる傾向がある。
本実施の形態では、上述した範囲の風量で圧縮空気を空気輸送配管23に供給することにより、ポリマーペレットの輸送速度は、通常、1t/時間〜20t/時間、好ましくは2t/時間〜10t/時間、さらに好ましくは3t/時間〜8t/時間で気力輸送される。
【0058】
また、本実施の形態では、図1に示すように、除湿機17によって露点が0℃以下に調整された空気が除湿機17の空気排出口22から空気輸送配管24を経て貯槽サイロ16a,16b内に供給され、貯槽サイロ16a,16b内に充填されている。これにより貯槽サイロ16a,16b内は、貯槽サイロ16a,16b内に貯蔵されたポリマーペレットが水分を吸着しないように、常に乾燥状態に保たれている。
このように、露点が0℃以下に調整された空気が貯槽サイロ16a,16b内に充填されていることにより、例えば、ポリマーペレットが吸湿性を有する場合であっても、貯槽サイロ16a,16b内にペレットは、含水率が増大することなく貯蔵されている。
【0059】
本実施の形態では、製品検査や出荷等のため貯槽サイロ16a,16bからポリマーペレットを排出する場合、貯槽サイロ16a,16bの槽底部にそれぞれ設けられたペレット出口配管26a,26bによりペレットを排出する。
図1に示すように、ペレット出口配管26a,26bにより貯槽サイロ16a,16bから排出されたポリマーペレットは、除湿機17によって露点が0℃以下に調整され空気輸送配管25を経て供給された空気により、ポリマーペレットが水分を吸着しないように乾燥状態が保たれたまま製造装置外に気力輸送される。
尚、本実施の形態において、ポリマーペレットが吸湿性を有する場合とは、平衡含水率が0.1重量%以上であるポリマーのペレットを言う。また平衡含水率とは、温度30℃、湿度70%の状態で吸湿と放湿が見かけ上平衡に達したときの含水率である。
【0060】
尚、本実施の形態では、除湿機17としてハニカム型吸着式除湿装置を例に挙げて説明したが、気力輸送に使用する気体を除湿し、露点を0℃以下に調整できる除湿機能を有するものであれば、他の形態の除湿装置を使用することが可能であり、特に限定されるものではない。
また、ポリマーペレットを気力輸送するための気体として空気を使用したが、これに限定されるものでなく、気力輸送するポリマーのペレットの性質等に応じ、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等を使用することできる。
【0061】
本実施の形態では、ペレット形状のポリエステルを例に挙げて説明したが、本実施の形態が適用されるポリマーペレットの輸送方法は、他の吸湿性を有するポリマーのペレットについても適用することが可能である。このようなポリマーとしては、例えば、ペレット形状のポリエステル、ポリアミド等が例示される。
ポリマーのペレットの形状は、粒状、不定形状、平板状、円柱状,球状等が挙げられ、特に限定されることはない。また、ペレットの大きさは、最も長い部分の長さが20mm以下に加工されたものが好ましく、通常1mm〜5mm程度が好ましい。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定して解釈されない。尚、実施例及び比較例において使用したポリマーペレットの各種の物性の測定方法と評価方法は以下(1)〜(6)に示す通りである。
【0063】
(1)ポリマーペレットの含水率の測定方法
ポリマーペレットの含水率は、水分測定装置(ダイアインスツルメンツ社製CA−100型)及び水分気化装置(ダイアインスツルメンツ社製VA−100型)を用いた電量滴定法により測定した。試料とするポリマーペレットの重量は、0.2g〜1gである。水分気化装置におけるポリマーペレットの加熱条件は、250℃である。
【0064】
(2)気体の露点の測定方法
ポリマーペレットの気力輸送に使用する気体の露点は、露点測定器(株式会社いすず製作所社製形式ISUZU−1A)を用い、以下の手順で測定した。
(i) 露点を測定する気体を露点測定器の冷却筒に連続的に吹き付ける。
(ii)気体が連続的に吹き付けられた冷却筒にエタノールを入れ、その中にドライアイスの小片を少しずつ投入し、注意深く撹拌しながら徐々に冷却する。そして、冷却筒の鏡面を目視にて観察し、鏡面上に露が生じた時点でドライアイスの投入を止める。尚、鏡面上に露が生じた時点の、冷却筒中のエタノールの温度をT1とする。
(iii)次いで、冷却筒に入れたエタノール及びドライアイスを撹拌し、冷却筒の鏡面上の露が消えるまで徐々に温度を上昇させる。鏡面上の露が消える時点の冷却筒中のエタノールの温度をT2とする。
(iv)T1とT2との平均値を、その気体の露点とする。
【0065】
(3)ポリエステルの還元粘度(ηsp/c)の測定方法
ポリエステル0.25gを、フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒を用い、濃度(c)0.5g/dlの試料溶液を調製する。次に、ウベローデ型毛細粘度管により、30℃で原液との相対粘度(ηrel)を測定し、この相対粘度(ηrel)−1から求めた比粘度(ηsp)と濃度(c)との比(ηsp/c)を求める。
【0066】
(4)ポリエステルの末端カルボキシル基量の測定方法
ポリエステル樹脂をベンジルアルコールに溶解し、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定することにより測定する(単位:μモル/g)。
【0067】
(5)ポリエステルのメルトフローインデックス(MFR)の測定方法
JIS K 7210に準拠し、荷重2.16kg、温度190℃で、ポリエステルのメルトフローインデックス(MFR)を測定する。
【0068】
(6)ポリエステルの保管特性評価
ポリマーペレットを、ポリエステル/アルミニウム/ポリエチレンの複合フィルム袋中に密閉し、60℃のオーブンに5日間保存する。次に、複合フィルム袋から取り出したポリマーペレットについて、ポリステルの還元粘度(ηsp/c)を測定し、5日間保存前後の還元粘度(ηsp/c)の変化を観察する。
【0069】
(7)脂肪族ポリエステルの製造例
攪拌装置、窒素導入口及び加熱装置温度計を備えた反応容器(A)及び攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計及び減圧用排気口を備えた反応容器(B)を用い、以下の条件でポリブチレンサクシネートラクテート(PBSL)を製造する。
窒素雰囲気下、反応容器(A)に、コハク酸100重量部、1,4−ブタンジオール88.5重量部、リンゴ酸0.4重量部、並びに、二酸化ゲルマニウム(触媒)を予め1重量%溶解させた88%乳酸水溶液5.4重量部を供給する。
次に、反応容器(A)の系内を撹拌しながら220℃に昇温し反応時間2.5時間で反応を行う。反応終了後、この反応生成物を、反応容器(B)に移し、徐々に減圧度を下げながら230℃で4.5時間重縮合反応を行い、脂肪族ポリエステルを得た。最終到達減圧度は0.07×10Paであった。
この脂肪族ポリエステルを、0.6MPaの加圧下で樹脂温度230℃以下に冷却しながら反応槽の底部に取り付けられたダイヘッドから、ストランドとして押し出す。押し出された溶融状態のストランドを、12℃の冷却水が流れる傾斜したスライダーで冷却水と接触させて冷却する。冷却されたストランドは、冷却ステージ下部に設けられたカッターにより引き取られ、連続的にペレット状に切断され、その後、アフタークーラー、脱水機、振動ふるいを経由して回収された。回収されたペレット中の含水量は0.12重量%〜0.15重量%であった。
得られたポリブチレンサクシネートラクテート(PBSL)の還元粘度(ηsp/c)は2.50、末端カルボキシル基量は25当量/トンであった。
【0070】
(実施例1)
前述した脂肪族ポリエステルの製造例で製造されたポリブチレンサクシネートラクテート(PBSL)を使用し、ハニカム型吸着式除湿装置を使用して−30℃の露点の圧縮空気を輸送配管に供給し、PBSLのポリマーペレットを貯槽サイロに気力輸送した。この際の圧縮空気の温度は30℃であった。このときの輸送配管中の風量は720Nm/時間であり、ポリマーペレットは2t/時間の速度で貯槽サイロに気力輸送した。
貯槽サイロに輸送されたポリマーペレットの含水率を測定したところ0.05重量%であった。このように、生分解性機能を有するPBSLのペレットを、露点が−30℃の圧縮空気により気力輸送することにより、気力輸送後の含水率が大幅に低下した状態で、PBSLのペレットを安定的に貯槽サイロに貯蔵されることが分かる。
また、PBSLのメルトフローインデックス(MFR)は4.4g/10分であった。さらに、複合フィルム袋中に5日間密閉した後に測定したPBSLの還元粘度(ηsp/c)は2.45であった。この結果から、保管中に加水分解反応等が促進せず、安定した状態でPBSLのペレットが保管されたことが分かる。
【0071】
(比較例1)
前述した脂肪族ポリエステルの製造例で製造されたポリブチレンサクシネートラクテート(PBSL)を使用し、32℃で湿度70%の未処理の外気(露点26℃)を使用した圧縮空気を輸送配管に供給し、PBSLのポリマーペレットを貯槽サイロに気力輸送した。このときの輸送配管中の風量は720Nm/時間であり、ポリマーペレットは2t/時間の速度で貯槽サイロに気力輸送することができた。
貯槽サイロに輸送されたPBSLのポリマーペレットの含水率を測定したところ0.2重量%であった。このように、PBSLのペレットを、露点が26℃(0℃を超える)の圧縮空気を用いて気力輸送することにより、気力輸送されたPBSLのペレットの含水率が増大することが分かる。
また、PBSLのメルトフローインデックス(MFR)は6.1g/10分であった。この結果から、気力輸送中に含水率が増大したPBSLは溶融時の熱安定性が低く,フィルムや容器などの成形には適さないことが分かる。
さらに、複合フィルム袋中に5日間密閉した後に測定したPBSLの還元粘度(ηsp/c)は2.33であった。この結果から、生分解性機能を有するPBSLは、含水率が増大したことにより保管中の加水分解反応により劣化しやすく、保管特性が悪化したことが分かる。
【0072】
以上、本実施の形態において詳述したポリマーペレットの輸送方法および貯蔵方法によれば、吸湿性のポリマーペレットを、乾燥機等の大掛かりな装置を使用せずに、簡便な手段でポリマーペレットが吸湿することなく輸送することができる。また、吸湿性のポリマーペレットが吸湿することなく、簡便な手段で貯蔵することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本実施の形態が適用されるポリマーペレットの輸送方法および貯蔵方法の一例を説明する図である。
【符号の説明】
【0074】
15a…製造装置、15b…ペレット供給口、16a,16b…貯槽サイロ、17…除湿機、21…空気供給口、22…空気排出口、23,24,25…空気輸送配管、26a,26b…ペレット出口配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露点が0℃以下の気体を使用し、吸湿性のペレット形状のポリエステルを気力輸送することを特徴とするペレット形状のポリエステルの輸送方法。
【請求項2】
気体により気力輸送されるポリエステルは、主たる構成単位が脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールである脂肪族ポリエステルであることを特徴とする請求項1に記載のペレット形状のポリエステルの輸送方法。
【請求項3】
ペレット形状のポリエステルの気力輸送に用いる気体は、空気であることを特徴とする請求項1又は2に記載のペレット形状のポリエステルの輸送方法。
【請求項4】
露点が0℃以下の気体により気力輸送されたペレット形状のポリエステルの含水率が、0.1重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のペレット形状のポリエステルの輸送方法。
【請求項5】
ペレット形状のポリエステルの気力輸送に用いる気体の温度が0℃以上、80℃以下であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のペレット形状のポリエステルの輸送方法。
【請求項6】
ペレット形状の脂肪族ポリエステルを圧力気体流と共に輸送配管を介し気力輸送するペレット形状の脂肪族ポリエステルの気力輸送方法であって、
気力輸送に用いる気体に含まれる水分量を低減し当該気体の露点を0℃以下に調整する気体除湿工程と、
前記気体除湿工程において露点が0℃以下に調整された気体を圧縮する気体圧縮工程と、
前記気体圧縮工程において圧縮された圧力気体をペレット形状の脂肪族ポリエステル1トン当たり50Nm/時間〜600Nm/時間で輸送配管内に供給する圧力気体供給工程と、
前記圧力気体供給工程において輸送配管に供給された圧力気体流と共にペレット形状の脂肪族ポリエステルを当該輸送配管を介し気力輸送する輸送工程と、を有する
ことを特徴とするペレット形状の脂肪族ポリエステルの気力輸送方法。
【請求項7】
前記気体除湿工程において、気力輸送に用いる気体の露点を−10℃以下に調整することを特徴とする請求項6に記載のペレット形状の脂肪族ポリエステルの気力輸送方法。
【請求項8】
前記輸送工程において、前記輸送配管に供給された圧力気体流と共にペレット形状の脂肪族ポリエステルを予め露点が0℃以下の気体が充填された貯蔵設備に気力輸送することを特徴とする請求項6又は7に記載のペレット形状の脂肪族ポリエステルの気力輸送方法。
【請求項9】
貯蔵容器中に露点が0℃以下の気体を充填し、当該貯蔵容器中に吸湿性のペレット形状のポリエステルを貯蔵することを特徴とするペレット形状のポリエステルの貯蔵方法。
【請求項10】
前記貯蔵容器中に貯蔵されたペレット形状のポリエステルの含水率が0.1重量%以下であることを特徴とする請求項9に記載のペレット形状のポリエステルの貯蔵方法。
【請求項11】
前記貯蔵容器中に充填される気体の温度が0℃以上、80℃以下であることを特徴とする請求項9又10に記載のペレット形状のポリエステルの貯蔵方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−260280(P2008−260280A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72528(P2008−72528)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】