説明

ペースト、及び多孔質体

【課題】粘度が低く塗工性に優れたペースト、及び該ペーストを焼成して得られる多孔質体の提供。
【解決手段】(1)半導体の微粒子、有機質バインダー、疎水性溶媒、及び水を含むペーストであって、前記水の含有量が0.1〜10質量%であることを特徴とするペースト。(2)前記微粒子の平均粒子径が5nm〜30nmであることを特徴とする(1)に記載のペースト。(3)前記微粒子の含有量が10〜30質量%であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のペースト。(4)前記有機質バインダーの含有量が3〜20質量%であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のペースト。(5)前記微粒子が、表面に水酸基又は酸素原子を有する酸化物半導体の微粒子であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のペースト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の微粒子を含むペースト、及び該ペーストを焼成して得られた多孔質体に関する。
【背景技術】
【0002】
色素増感太陽電池の光電極を構成する多孔質層は、酸化チタン等の半導体の微粒子を含むペーストをガラス基板等に塗布して焼成することにより形成される。前記多孔質層にクラックが生じることを防ぐため、及び前記多孔質層の空隙率を調整するために、前記ペーストには有機質バインダーが配合される。この有機質バインダーとして、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース等の酸素原子又は水酸基を多数有するポリマーが多用される。
【0003】
しかし、前記有機質バインダーと前記微粒子とを配合したペーストの粘度が高くなるという問題がある。特に、前記微粒子が粒子径1μm未満のナノ粒子であると前記有機質バインダーとの間に一層強い結合力が働くため、前記ペーストの粘度が一層高くなる。また、前記有機質バインダーが多数の水酸基又は酸素原子を有し、前記微粒子が表面に水酸基又は酸素原子を有する酸化チタン等であると、前記ペーストの粘度が著しく高くなり、基板に薄く均一に塗布することが困難になることがある。
【0004】
ペーストの粘度を調整するために界面活性剤等の助剤が用いられた場合、前記多孔質層を構成する微粒子同士の接合が妨げられて、高い光電変換効率が得られないことがある。このため、特許文献1では、界面活性剤の代わりにシクロデキストリンを分散剤として使用する方法が開示されている。また、特許文献2では、有機質バインダーを配合せず、tert-ブタノール(tert−ブチルアルコール)等の比較的粘性が高く親水性である溶媒及び水をペーストに配合して、当該ペーストを低温で焼成することによって多孔質層を形成する方法が開示されている。しかし、特許文献2の方法では、多孔質層の空隙率の調整が困難であり、基板との密着性及びクラック耐性が不十分であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−217693号公報
【特許文献2】特開2006−076855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、粘度が低く塗工性に優れたペースト、及び該ペーストを焼成して得られる多孔質体の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、微粒子と有機質バインダーとの間、および有機質バインダー相互間に、直接の水素結合が多数形成されることが、ペーストの粘度が過度に高まる原因であると考え、この結合力を減少させる方法を鋭意検討した。その結果、ペースト中に特定の含有量となるように水を配合することによって、ペーストの粘度を低下させられることを見出した。従来は、ペーストに水を入れると相分離を起こしてしまうと想像されていたため、ペースト中に水を配合することは全く検討されてこなかった。すなわち、上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
【0008】
本発明の請求項1に記載のペーストは、半導体の微粒子、有機質バインダー、疎水性溶媒、及び水を含むペーストであって、前記水の含有量が0.1〜10質量%であることを特徴とする。
本発明の請求項2に記載のペーストは、請求項1において、前記微粒子の平均粒子径が5nm〜30nmであることを特徴とする。
本発明の請求項3に記載のペーストは、請求項1又は2において、前記微粒子の含有量が10〜30質量%であることを特徴とする。
本発明の請求項4に記載のペーストは、請求項1〜3のいずれか一項において、前記有機質バインダーの含有量が3〜20質量%であることを特徴とする。
本発明の請求項5に記載のペーストは、請求項1〜4のいずれか一項において、前記微粒子が、表面に水酸基又は酸素原子を有する酸化物半導体の微粒子であることを特徴とする。
本発明の請求項6に記載のペーストは、請求項1〜5のいずれか一項において、前記有機質バインダーが、水酸基又は酸素原子を有する化合物が重合してなる重合体であることを特徴とする。
本発明の請求項7に記載のペーストは、請求項1〜6のいずれか一項において、前記疎水性溶媒が、水酸基、酸素原子又はチオール基を有するモノテルペノイドであることを特徴とする。
本発明の請求項8に記載のペーストは、請求項1〜7のいずれか一項において、温度25℃、せん断速度(1/s)=1の条件で測定した粘度が、1000Pa・s以下であることを特徴とする。
本発明の請求項9に記載のペーストは、請求項1〜8のいずれか一項において、前記粘度が、前記ペーストの調製後30日経過した時点においても、1000Pa・s以下を維持することを特徴とする。
本発明の請求項10に記載の多孔質体は、請求項1〜9のいずれか一項に記載のペーストを焼成して得られたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のペーストによれば、水を配合することによって、半導体の微粒子と有機質バインダーとの結合力、および有機質バインダー相互間の結合力を弱めることができるので、ペーストの粘度を従来よりも低くすることができる。このため、ペーストを基板に薄く均一に塗布することが容易である。つまり、本発明のペーストは塗工性に優れる。また、有機質バインダーを配合することによって、焼成して形成される多孔質体の空隙率の調整が容易である。
本発明の多孔質体は、任意の空隙率の多孔質構造を有し、基板に対する密着性に優れ、クラック耐性(クラックが生じ難いという性質)に優れるので、色素増感太陽電池の光電極に適した多孔質層を成すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明にかかるペーストの粘度を測定して得られたグラフの一例である。
【図2】(a)水の含有量が0質量%のペーストの状態を示す写真であり、(b)水の含有量が4質量%のペーストの状態を示す写真である。
【図3】本発明にかかるペーストの粘度の経時変化を示すグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳しく説明する。
<<ペースト>>
本発明のペーストは、半導体の微粒子、有機質バインダー、疎水性溶媒、及び水を含むペーストであって、前記水の含有量が0.1〜10質量%である。
従来のペーストは、疎水性溶媒との相溶性が低い水を配合することは、相分離が生じるであろうとの予測に基づき、避けられてきた。このため、従来のペーストに含まれる水含有量は実質的に0質量%である。
本発明のペーストは、疎水性溶媒と水とが相分離することなく、均一に混ざり合った状態である。含有された水は、ペースト中で微粒子及び/又は有機質バインダーと水和していると考えられ、微粒子と有機質バインダーとの間の強力な結合力を減少させることができる。この結果、ペーストの粘度が下がり、当該ペーストの塗工性が優れたものとなる。
【0012】
[粘度]
本発明のペーストの粘度は、JIS R1652:2003(円錐−平板型システム)に基づいて、せん断速度を規定できる回転式粘度計で測定した粘度の数値で評価できる。ペーストを基板に薄く均一に塗布する観点から、前記粘度は、温度25℃、せん断速度(1/s)=0.1の条件で測定した場合、10000(1万)Pa・s以下であることが好ましく、5000Pa・s以下であることがより好ましく、2000Pa・s以下であることが更に好ましい。また、前記粘度は、温度25℃、せん断速度(1/s)=1.0の条件で測定した場合、3000Pa・s以下であることが好ましく、2000Pa・s以下であることがより好ましく、1000Pa・s以下であることが更に好ましい。通常、前記粘度の下限値は10Pa・sである。
前記粘度の上限値以下であることにより、ドクターブレード法、スクリーン印刷法等の公知の塗工方法により、基板上にペーストを均一に薄く塗布することがより容易となる。このとき、塗布したペーストの厚さは、例えば1〜100μmとすることができる。
【0013】
[水の含有量]
本発明のペーストにおける水の含有量は0.1〜10質量%であり、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは1〜6質量%であり、さらに好ましくは3〜5質量%である。
上記範囲の下限値以上とすることで、ペーストの前記粘度をより確実に下げることができ、上記範囲の上限値以下とすることによって、ペースト中に分離した水相が生じることを防止できる。
【0014】
[微粒子]
前記微粒子の平均粒子径としては、5nm〜30nmが好ましく、5nm〜25nmがより好ましく、5nm〜20nmが更に好ましい。
上記範囲の下限値以上とすることで、ペースト中に当該微粒子を均一に分散することがより容易となる。また、焼成して得られる多孔質体に空隙を形成し、多孔質構造とすることがより容易となる。上記範囲の上限値以下とすることで、焼成して得られる多孔質体の強度、基板に対する密着性、及びクラック耐性をより高めることができる。
【0015】
前記平均粒子径を求める方法としては、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置の測定により得られた体積平均径の分布のピーク値として決定する方法、及びSEM観察によって複数の微粒子の長径を測定して平均する方法が挙げられる。異なる測定方法によって同一の微粒子を測定した値が異なる場合は、SEM観察の方法で決定した平均微粒子径を本発明の微粒子径であるものとする。
【0016】
本発明のペーストにおける前記微粒子の含有量としては、10〜30質量%が好ましく、12〜28質量%がより好ましく、15〜25質量%が更に好ましい。
上記範囲の下限値以上とすることで、ペーストを適度な粘度とすることがより容易となり、当該ペーストを基板に任意の厚さで均一に塗工することがより容易となる。上記範囲の上限値以下とすることで、ペーストの粘度が過度に高まることを抑制できる。また、焼成して得られる多孔質体に空隙を形成し、多孔質構造とすることがより容易となる。
【0017】
本発明のペーストを構成する半導体の微粒子は特に限定されず、例えば公知の色素増感太陽電池の多孔質層の形成に使用される半導体の微粒子が好ましく用いられる。具体的には、金属酸化物、金属カルコゲニド化合物等が挙げられる。これらのうち、微粒子の表面に水酸基又は酸素原子を有する酸化物半導体の微粒子がより好ましい。微粒子の表面に水酸基又は酸素原子を有することによって、ペーストに含まれる水分子と水素結合を介した水和状態を取り易くなる。この結果、当該ペーストの粘度を下げることがより容易となる。
【0018】
前記酸化物半導体としては、例えば酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)等が挙げられる。これらの中でも、多孔質膜を形成した時に電子伝導性に優れる酸化チタンが好ましい。
一般に、産業上利用される酸化チタンはアナターゼ型とルチル型とに大別され、その他にブルッカイト型や非晶質(アモルファス)の酸化チタンが知られる。本発明において、前記微粒子を構成する酸化物半導体として酸化チタンを使用する場合、アナターゼ型又はルチル型が好ましく、アナターゼ型がより好ましい。アナターゼ型又はルチル型の酸化チタン微粒子は、平均粒子径が揃った微粒子が市販されており、入手が容易である。
【0019】
前記微粒子の表面に、親水性を高める表面処理を行ってもよい。例えば、前記微粒子の表面に界面活性剤を化学的に結合させる方法等が知られている。この表面処理を行うことによって、ペースト中における前記微粒子の分散性を高められる場合がある。一方、焼成後に得られる多孔質体を構成する微粒子同士の結合が減じて、当該多孔質体の電子伝導性が低下する虞がある。
【0020】
[有機質バインダー]
本発明のペーストにおける前記有機質バインダーの含有量としては、有機質バインダーの種類にもよるが、3〜20質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましく、7〜11質量%がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上とすることによって、ペーストを適度な粘度とすることがより容易となり、当該ペーストを基板に任意の厚さで均一に塗工することがより容易となる。また、焼成して得られる多孔質体に空隙を形成し、多孔質構造とすることがより容易となる。上記範囲の上限値以下とすることによって、ペーストの粘度が過度に高まることを抑制できる。
【0021】
本明細書及び特許請求の範囲において、「有機質バインダー」とは、有機化合物からなるバインダーを意味する。前記バインダーは、結着材とも言い換えられる。該結着材は塗工したペースト(塗布膜)と基材との密着性を良好にして、塗布膜にクラックが生じることを抑制する働きを有するものである。さらに、塗布膜の加熱焼成工程において、有機質バインダーを半導体微粒子間から焼失させて、空隙を形成する。
【0022】
通常、有機質バインダーの含有量を多くするほど、多孔質体の空隙率を高められ、有機質バインダーの含有量を少なくするほど、多孔質体の空隙率を低くすることができる。有機質バインダーの含有量を調整することによって、焼成して得られる多孔質体の空隙率を制御できる。
【0023】
本発明のペーストを構成する有機質バインダーは特に限定されず、例えば公知の色素増感太陽電池の多孔質層の形成に使用される有機質バインダーが好ましく用いられる。これらの中でも、一分子中に水酸基又は酸素原子を少なくとも1つ有する化合物(モノマー)が重合してなる重合体(ポリマー)がより好ましい。前記重合体が水酸基又は酸素原子を有することによって、ペースト中の水分子と水素結合を形成し、有機質バインダーと前記微粒子との結合力を減少させることができる。この結果、当該ペーストの粘度を下げることがより容易となる。
具体的には、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルコールアセタール変性物、ゼラチン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド及びデキストリン等が挙げられる。
前記微粒子として酸化チタンを用いた場合、前記有機質バインダーとしては、エチルセルロースを用いることが好ましい。この組合せであると、より容易に当該ペーストの粘度を低下させることができる。
【0024】
エチルセルロースのグレード(粘度)は、トルエン:エタノール=80:20の溶剤に5%濃度で溶解した際の粘度にて表される。エチルセルロースを用いる場合、該エチルセルロースのグレードは、酸化チタン粒子の平均粒子径又は含有量、疎水性溶媒の種類、及び界面活性剤の配合の有無などにより適宜選択される。前記グレードで7cP〜100cP(7mPa・s〜100mPa・s)のエチルセルロースが好適に用いられ、10cP〜45cP(10mPa・s〜45mPa・s)のエチルセルロースがより好適に用いられる。
【0025】
前記重合体は前記具体例に制限されず、公知の種々の重合体が適用できる。
前記重合体としては、前記モノマーが10以上重合したポリマーが好ましい。前記重合体の重合度(重合体中を構成する前記モノマーの数)は特に制限されず、当該重合体の粘度が適切となるように決めればよい。前記重合度としては、例えば10以上が好ましく、100以上がより好ましく、500以上がさらに好ましい。通常、重合度が増えるほど、当該重合体の粘度が増加する。前記重合度の上限値はポリマーの種類や性質に応じて決めればよく、例えば10万以下とすればよい。
【0026】
前記エチルセルロース以外の重合体の粘度としては、例えば1mPa・s〜200mPa・sが好ましく、5mPa・s〜100mPa・sがより好ましく、10mPa・s〜50mPa・sがさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上とすることによって、ペースト中に微粒子をより確実に保持することができ、微粒子同士をより強く結び付けることができる。上記範囲の上限値以下とすることによって、ペーストの粘度が適度となり易く、ペーストの塗工性を一層向上させられる。
【0027】
[溶剤]
本発明のペーストを構成する疎水性溶媒は特に限定されず、例えば公知の色素増感太陽電池の多孔質層の形成に使用される疎水性溶媒が好ましく用いられる。ここで、疎水性溶媒とは、親水性が極めて低い有機溶媒のことである。
本発明の疎水性溶媒としては、HLB値が5以下であるもので、有機質バインダーを均質に溶解可能なものが好ましい。HLB値が5以下である多様な溶媒を使用できる。
また、本発明のペーストをスクリーン印刷法によって塗工する場合、急速な溶媒の蒸散によってスクリーン版の目詰まりを抑制する為に、本発明の疎水性溶媒としては、100℃以上の沸点を持つ高沸点のものが好ましい。
【0028】
前記疎水性溶媒の水100g(20℃)に対する溶解性としては、50mg〜400mgが好ましく、100mg〜300mgがより好ましく、150〜250mgが更に好ましい。上記範囲の下限値以上であることにより、ペースト中に水を分散させることがより容易となり、上限値以下であることにより、ペースト中の微粒子同士が凝集してしまうことを防止できる。
【0029】
前記疎水性溶媒は、アルコール及びエーテルに易溶であるものが好ましい。本発明のペーストの製造方法として、例えば、半導体微粒子を水やエタノール等の極性溶媒に分散した分散液と、有機質バインダー溶液および前記高沸点の疎水性溶媒とを均一に混合した後、低沸点の極性溶媒のみをエバポレーター等を使って蒸発除去することで溶媒置換して得る方法が挙げられる。この場合、前記疎水性溶媒は、前記エタノール等の極性溶媒との蒸気圧差が大きく、且つ相溶性の高いものが好ましい。
【0030】
前記疎水性溶媒としては、モノテルペン類が好ましく、分子中に水酸基、酸素原子及びチオール基のうちの少なくとも1つを有するモノテルペン類の誘導体(モノテルペノイド)がより好ましく、単環式のモノテルペノイドが更に好ましく、メンタン骨格を有するモノテルペノイドが特に好ましい。これらの疎水性溶媒を使用することにより、本発明のペースト中に半導体微粒子、有機質バインダーおよび水を均一に分散させることがより容易となる。
【0031】
前記モノテルペン類は、分子中に酸素原子を有してもよいし、有さなくてもよい。前記モノテルペン類は、非環式、単環式、二環式、及び三環式のいずれであってもよい。なお、前記モノテルペン類の炭素数は、置換されていない限り、10個である。
【0032】
前記モノテルペン類である前記モノテルペノイドは、分子中に水酸基、酸素原子又はチオール基を少なくとも1つ有するものが好ましく、分子中に水酸基を少なくとも1つ有するものがより好ましく、分子中に水酸基を1〜2個有するものが更に好ましい。これらのモノテルペノイドを使用することにより、本発明のペースト中に水を均一に分散させることがより容易となる。
【0033】
前記モノテルペノイドは、単環式であることが好ましく、メンタン骨格を持つものがより好ましい。前記メンタン骨格としては、パラメンタン(p−メンタン)骨格、メタメンタン(m−メンタン)骨格、オルトメンタン(o−メンタン)骨格を有するものが挙げられる。これらのなかでも、本発明の疎水性溶媒としては、パラメンタン骨格を有するものが好ましく、パラメンタン骨格、メタメンタン骨格、及びオルトメンタン骨格を有するモノテルペノイドの混合物がより好ましい。
また、これらのモノテルペノイドは、そのメンタン骨格中に不飽和結合を有するもの(不飽和誘導体)、そのメンタン骨格中に水酸基を有するもの(アルコール誘導体)、そのメンタン骨格中にカルボニル基を有するもの(カルボニル誘導体)も好ましい。
また、チオール基を有するチオテルピネオール、環状エーテル結合を持つシネオールも同様に好ましいものとして挙げられる。
【0034】
前記不飽和誘導体としては、例えばリモネン、ジメン、テルピネン、テルピノレン、α‐フェランドレン等が挙げられる。
前記アルコール誘導体としては、メントール、テルピネオール(ターピネオール)、イソプレゴール、テルピン等が挙げられる。
前記カルボニル誘導体としては、ペリルアルデヒド、メントン、プレゴン、カルボン等が挙げられる。
これらのモノテルペノイドを使用することにより、本発明のペースト中に水を均一に分散させることがより容易となる。
【0035】
例示したモノテルペノイドのうち、テルピネオールが特に好ましい。テルピネオールを使用することにより、本発明のペースト中に水を均一に分散させることがより一層容易となり、当該ペーストの粘度をより容易に低下させることができる。また、テルピネオールは、当該ペーストを焼成した際に、揮発し易く、熱による分解によって残渣を形成することが少ないため好ましい。
【0036】
テルピネオールは、天然に存在するモノテルペンアルコールの一種であり、水酸基と二重結合の位置が異なる4種の異性体α‐テルピネオール、β‐テルピネオール、γ‐テルピネオール、δ‐テルピネオールが知られる。本発明における疎水性溶媒としてテルピネオールを使用する場合、これらの4種の異性体のうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、α‐テルピネオールが主成分となるように使用することが好ましい。
例えば、前記疎水性溶媒のうち、α‐テルピネオールの含有量が、50〜100質量%であることが好ましく、60〜100質量%であることがより好ましく、70〜100質量%であることが更に好ましい。上記範囲の下限値以上であることにより、ペースト中に水を分散させることがより容易となり、上限値以下であることにより、ペースト中の微粒子同士が凝集してしまうことを防止できる。
【0037】
本発明のペーストにおける前記疎水性溶媒の含有量としては、疎水性溶媒の種類にもよるが、40〜85質量%が好ましく、50〜80質量%がより好ましく、60〜75質量%が更に好ましい。
上記範囲の下限値以上とすることによって、当該ペースト中に半導体の微粒子及び有機質バインダーを均一に分散させることができる共に、当該ペーストの粘度が過度に高まることを抑制できる。上記範囲の上限値以下とすることによって、当該ペースト中に半導体の微粒子及び有機質バインダーを均一に分散させることができる共に、ペーストを適度な粘度とすることがより容易となり、当該ペーストを基板に任意の厚さで均一に塗工することがより容易となる。
【0038】
本発明のペーストには、ペースト中の水が分離しない限り、前記疎水性溶媒以外の溶媒(以下、「他の溶媒」という)を添加してもよい。
前記他の溶媒としては、水との相溶性が高い溶媒が好ましく、例えばアルコール類、アミド類、スルホキシド類、アミン類、環状エーテル類、及びエステル類等が挙げられる。
前記アルコール類としては、ブチルアルコール、ベンジルアルコール及びブチルカルビトール等が挙げられる。前記アミド類としては、ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド等が挙げられる。前記スルホキシド類としては、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。前記アミン類としては、n−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。前記環状エーテル類としては、ジオキサン等が挙げられる。前記グリコールエーテル類としては、エチルセロソルブ及びメチルセロソルブ等が挙げられる。前記エステル類としては、ジブチルフタレート等が挙げられる。
【0039】
前記他の溶媒は、本発明のペーストを構成する必須成分ではなく、当該ペーストの粘度を安定に長期間維持する観点からすると前記他の溶媒を添加しない方がよい場合がある。しかし、当該ペーストの使用目的に応じて前記他の溶媒を添加する場合、当該ペースト中の前記他の溶媒の含有量としては、0.001〜5質量%が好ましく、0.001〜3質量%以下がより好ましく、0.001〜1質量%が更に好ましい。上記範囲であれば、当該ペースト中の水を分離させる虞が少なく、当該ペーストの粘度を長期間(例えば30日以上)安定に維持しうる。
【0040】
本発明のペーストには、ペースト中の水が分離しない限り、添加剤を含有してもよい。
前記添加剤としては、界面活性剤などの分散剤、分散安定剤、消泡剤、酸化防止剤、着色剤及び粘度調整剤等が挙げられる。これらの添加剤を含むことにより、本発明のペーストがより安定化して、長期安定性が向上する場合がある。
【0041】
塩などの強イオン性の分散剤は、半導体の微粒子へのアルカリ金属等の付着による性能変化を引き起こす可能性が高い。このため、非アルカリ金属性の分散剤が好ましい。
【0042】
前記分散剤としては、特に限定されず、例えば、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸類、及びポリエチレングリコール脂肪酸エステル類等が挙げられる。
【0043】
前記添加剤を当該ペーストの使用目的に応じて添加する場合、当該ペースト中の前記添加剤の含有量としては、0.001〜5質量%が好ましく、0.001〜3質量%以下がより好ましく、0.001〜1質量%が更に好ましい。上記範囲であれば、当該ペースト中の水を分離させる虞が少なく、当該ペーストの粘度を長期間(例えば1ヵ月以上)安定に維持しうる。
【0044】
[ペーストの安定性]
本発明のペーストは、前記半導体の微粒子、前記有機質バインダー、前記疎水性溶媒及び水が均一に分散されているので、その粘度が長期間に渡って安定に維持されうる。
本発明のペーストを調製後、20〜30℃で、密閉容器に保存した場合、調製後30日経過した時点においても、調製時の粘度を安定に維持できる。
例えば、ペースト調製後48時間以内に、温度25℃、せん断速度(1/s)=1の条件で測定した粘度が1000Pa・s以下である場合、当該ペースト調製後30日経過した時点においても、1000Pa・s以下を維持することが可能である。
【0045】
<<ペーストの調製方法>>
本発明のペーストの調製方法としては、前記半導体の微粒子、前記有機質バインダー、前記疎水性溶媒及び水を、各成分が均一に分散するように混合できる方法であれば特に制限されない。
【0046】
各成分を混合する際に、分散機を用いることが好ましい。分散機としては、ボールミル、ビーズミル、ブレンダーミル、超音波ミル、ペイントシェイカー、ホモジナイザー、ディスパー、撹拌羽根式ミキサー、3本ロール、ヘンシェルミキサー及び自転公転型ミキサー等の公知の分散機が挙げられる。
前記分散機としては、特に限定されず、また、混合時に、加熱、冷却、加圧又は減圧を行ってもよい。
【0047】
本発明のペーストは、例えば、以下のようにして調製できる。ただし、本発明のペーストの調製方法は、以下の方法に限定されない。
【0048】
前記半導体の微粒子を、例えばエタノール等の低粘度及び低沸点であり且つ前記疎水性溶媒と相溶性が高い溶剤に添加し、混合し、自転公転型ミキサー又は撹拌羽根式ミキサーを用いて分散させ、分散液を得る。得られた分散液を、ジェットミル又はビーズミル等を使用して、より激しく撹拌し、前記微粒子が好適な平均粒子径となるように調製してもよい。この場合、分散した微粒子の平均粒子径および分散の程度を、レーザー散乱又は回折方式等の粒度分布計等にて確認しながら、撹拌条件、温度及び時間を決定することが好ましい。
【0049】
次に、例えばテルピネオール等の疎水性溶媒に、例えばエチルセルロース等の前記有機質バインダーを溶かした溶液を、前記分散液に添加して、例えば自転公転型ミキサー等の分散機を用いて混合し、混合液を得る。その後、エバポレーター等を用いて、前記混合液を撹拌しながら減圧し、前記エタノール等の低沸点溶剤を除去することによって、前記微粒子、前記有機質バインダーが前記疎水性溶媒に均一に分散したペースト前駆体を得る。ペースト前駆体における水の含有量は実質的に0質量%である。ペースト前駆体の粘度は非常に高い。その形態は、例えば図2(a)に示すようなグミ状態(ゴム状態)である。このため、ペースト前駆体のままではスクリーン印刷等には用いることはできない。
【0050】
前記混合液を得る際、水を予め添加したとしても、その後のエバポレーションによる溶媒置換工程で水とエタノールを蒸発させるので、残すべき水の量を制御できないことがあるので不都合である。また、前記混合液を得る際、水を予め添加すると、水と混和しにくいターピネオールやエチルセルロースと分離してしまうために半導体微粒子が凝集し、均質なペーストが得られないことがあるので不都合である。
【0051】
つづいて、ペースト前駆体に所定の含有量となるように水を吸収させることによって、本発明のペーストを得る。ペーストにおける水の含有量は、前述の通り、0.1〜10質量%である。上記質量%の範囲内の水を吸収させることによって、ペーストの粘度は適度に低く、液体状態となる。その形態は、例えば図2(b)に示すようなスラリー状態である。このペーストの塗工性は優れる。
【0052】
前記ペースト前駆体に水を吸収させる方法は特に制限されず、ペースト前駆体に水を練り込む方法(練り込み法)、ペースト前駆体を加温しつつ捏ねて、水を徐々に添加する方法(加温法)、ペースト前駆体及び所定量の水を容器中で接触させた状態で静置して、水を徐々に浸透させる方法(浸透法)等が挙げられる。これらの方法のうち、前記浸透法が簡便であり、好ましい。前記浸透法では、水を浸透させた後に、ペースト全体を緩やかに撹拌することによって、ペースト中の全成分の分散性を一層高めることが好ましい。
【0053】
前記練り込み法における練り込む方法としは、例えば分散機又はヘラ等を用いて緩やかに捏ねながら練り込めばよい。その練り込み時間は、ペーストの各成分の種類によって変わるが、通常1〜24時間程度で行えばよい。
前記加温法における捏ねる方法としは、例えば分散機又はヘラ等で緩やかに捏ねればよい。前記加温法における温度としては、ペースト中の各成分が分解しない範囲であれば特に制限されず、例えば20〜60℃で行えばよい。その捏ねる時間は、ペーストの各成分の種類によって変わるが、通常1〜24時間程度で行えばよい。
前記浸透法における静置の温度としては、ペースト中の各成分が分解しない範囲であれば特に制限されず、例えば20〜60℃で行えばよい。その静置の時間は、ペーストの各成分の種類によって変わるが、通常1〜24時間程度で浸透させることができる。
【0054】
このように、本発明のペーストの製造方法としては、前記半導体の微粒子、前記有機質バインダー、及び前記疎水性溶媒を混合してペースト前駆体を得る第一工程と、前記ペースト前駆体に水を所定量添加する第二工程とを有する製造方法が好ましい。水を添加する工程を後工程とすることによって、前記微粒子を凝集させてしまうことを防ぐことができ、焼成によって得られる多孔質体の透明度を高め、均一な空隙分布が得られる。
【0055】
<<多孔質体>>
本発明の多孔質体は、本発明のペーストを焼成して得られたものである。
例えば透明導電膜を配したガラス基板上に、本発明のペーストをドクターブレード法又はスクリーン印刷法等で薄く均一に塗布して、これを焼成することによって得られる。前記塗布したペーストの厚さは特に制限されず、例えば1μm〜100μmとすればよい。前記焼成条件としては、半導体の微粒子同士が焼結して多孔質構造を形成しうる温度と時間であれば特に制限されず、例えば400〜500℃で0.5〜2時間の焼成を行えばよい。
本発明の多孔質体の空隙率は、例えば50〜90%で任意に調節できる。前記空隙率は、例えばガス吸着法や水銀圧入法等の公知の方法によって決定できる。
本発明の多孔質体は、色素増感太陽電池の光電極を構成する多孔質層として好適である。
【実施例】
【0056】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0057】
<実施例1>
[ペーストの調製]
一次粒子径が15nmのアナターゼ型酸化チタン(日本アエロジル社製)をエタノールと混合し、0.1mmジルコニアビーズを用いたビーズミル(AiMEX社製)により分散処理を行い、酸化チタンの含有量を20質量%とした分散液を得た。また、20cpグレードのエチルセルロース(和光純薬社製)の含有量が10質量%となるようにエタノールへ溶解したエチルセルロース溶液を調製した。
前記分散液8g、前記エチルセルロース溶液7g、テルピネオール6gを混合した混合液を、自転/公転併用のミキサー(THINKY社製)で撹拌した後、エバポレーターでエタノールを除去し、ペースト前駆体を得た(図2(a)参照)。
得られたペースト前駆体に、最終濃度が1質量%となるように蒸留水を添加して、ペースト前駆体と前記蒸留水とを接触させた状態で密閉容器に入れて、30℃で19時間、静置した。その後、水が浸透したペーストを3本ロール(AiMEX社製)で混練して、各成分が均一に分散したペーストを得た(図2(b)参照)。
【0058】
得られたペーストにおいて、水の含有量は1質量%であり、酸化チタン粒子の含有量は19質量%であり、テルピネオールの含有量は71.6質量%、エチルセルロースの含有量は8.4質量%であった。
得られたペーストの粘度を、RS600(HAAKE社製)を用い、25℃、せん断速度(シェア)は0.01〜50 1/sの範囲で測定した。その結果を図1に示す。
【0059】
<実施例2> 調製したペーストの水含有量が2質量%となるように、ペースト前駆体に水を添加した以外は、実施例1と同様に行った。
得られたペーストにおいて、水の含有量は2質量%であり、酸化チタン粒子の含有量は18.9質量%であり、テルピネオールの含有量は70.8質量%、エチルセルロースの含有量は8.3質量%であった。
得られたペーストの粘度を、実施例1と同様の方法で測定したその結果を図1に示す。
【0060】
<実施例3>
調製したペーストの水含有量が3質量%となるように、ペースト前駆体に水を添加した以外は、実施例1と同様に行った。
得られたペーストにおいて、水の含有量は3質量%であり、酸化チタン粒子の含有量は18.8質量%であり、テルピネオールの含有量は70質量%、エチルセルロースの含有量は8.2質量%であった。
得られたペーストの粘度を、実施例1と同様の方法で測定した。その結果を図1に示す。
【0061】
<実施例4>
調製したペーストの水含有量が4質量%となるように、ペースト前駆体に水を添加した以外は、実施例1と同様に行った。
得られたペーストにおいて、水の含有量は4質量%であり、酸化チタン粒子の含有量は18.5質量%であり、テルピネオールの含有量は69.5質量%、エチルセルロースの含有量は8質量%であった。
得られたペーストの粘度を、実施例1と同様の方法で測定した。その結果を図1に示す。
【0062】
<比較例1>
前記ペースト前駆体を比較用のペーストとした。
得られたペーストにおいて、水の含有量は0質量%であり、酸化チタン粒子の含有量は19質量%であり、テルピネオールの含有量は72.5質量%、エチルセルロースの含有量は8.5質量%であった。
得られたペーストの粘度を、実施例1と同様の方法で測定した。その結果を図1に示す。
【0063】
実施例4のペーストを調製した後、19時間後、2日後、7日後、30日後に、再び粘度を同じ方法で測定した。その結果を図3に示す。実施例4のペーストは調製後30日経過した時点においても、調製時と同等の粘度を維持していることが明らかである。
【0064】
以上の結果から、本発明にかかる実施例1〜4のペーストは、比較例1のペーストに比べて粘度が低いことが明らかである。すなわち、実施例1〜4のペーストは、従来のペースト(比較例1)よりも、塗工性に優れる。
【0065】
<実施例5>
[ペーストを用いた色素増感太陽電池の作製]
透明導電基板として、FTO膜を配した表面抵抗10オーム(Ω)のガラス基板を用いた。実施例4で得たペーストをスクリーン印刷法で4mm×4mmの面積で、FTO膜上に塗布した後、空気雰囲気下500℃で30分間焼成して、透明導電基板上に厚さ8μmの多孔質膜(多孔質電極)を形成した。
次いで、ビスイソシアネートビスビピリジルRu錯体のテトラブチルアンモニウム塩(N719)を、アセトニトリル:tert-ブタノール(1:1)の混合溶媒に、濃度30mMで溶解した色素溶液を調製した。この色素溶液へ上記多孔質層を形成したガラス基板を浸漬し、室温で24時間放置することによって、色素を多孔質層に吸着させた後、乾燥して光電極とした。
対極としてクロム、白金をこの順で積層して成膜したガラス基板を用いた。この対極と上記の光電極とを厚さ30μmの樹脂製ガスケットを介して重ね合わせてクリップ止めし、両電極間にアセトニトリル、イミダゾリウムヨードニウム塩、ヨウ化リチウム、tert-ブチルピリジン、ヨウ素からなる電解液を注入して色素増感太陽電池を作成した。
【0066】
[色素増感太陽電池の光電変換効率の評価]
光電変換効率の測定は次のようにして行った。入射光100mW/cmのAM1.5擬似太陽光の条件で、電流電圧測定装置を用いて、DC電圧を40mV/secで走査しながら出力電流値を計測し、電流−電圧特性を得た。これに基づき、短絡電流(Isc)、開放電圧(Voc)、曲線因子(FF)、最大出力電力(Wm)、光電変換効率(η)をそれぞれ算出した。この結果を表1に示す。
【0067】
<比較例2>
水の含有量が0質量%である酸化チタン含有ペースト(Solaronix社製、T/SP)を使用して厚さ8μmの多孔質電極を形成した以外は、実施例5と同様に色素増感太陽電池を作製し、同様の評価を行った。この結果を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
以上の結果から、本発明にかかる多孔質体(多孔質層)は、従来のペーストを焼成して得られた多孔質層と同等以上の性能を有することが明らかである。また、本発明の多孔質体を観察したところ、基板に対する密着性及びクラック耐性に優れることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体の微粒子、有機質バインダー、疎水性溶媒、及び水を含むペーストであって、前記水の含有量が0.1〜10質量%であることを特徴とするペースト。
【請求項2】
前記微粒子の平均粒子径が5nm〜30nmであることを特徴とする請求項1に記載のペースト。
【請求項3】
前記微粒子の含有量が10〜30質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のペースト。
【請求項4】
前記有機質バインダーの含有量が3〜20質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項5】
前記微粒子が、表面に水酸基又は酸素原子を有する酸化物半導体の微粒子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項6】
前記有機質バインダーが、水酸基又は酸素原子を有する化合物が重合してなる重合体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項7】
前記疎水性溶媒が、水酸基、酸素原子又はチオール基を有するモノテルペノイドであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項8】
温度25℃、せん断速度(1/s)=1の条件で測定した粘度が、1000Pa・s以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項9】
前記粘度が、前記ペーストの調製後30日経過した時点においても、1000Pa・s以下を維持することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のペーストを焼成して得られた多孔質体。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−30400(P2013−30400A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166543(P2011−166543)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】