説明

ペーストの製造方法及び循環式分散機

【課題】容易に正確な粘度調整をすることができるペーストの製造方法及び循環式分散機を提供すること。
【解決手段】本発明にかかるペーストの製造方法は、循環式分散機を用いたペーストの製造方法であって、ペーストの温度、ペーストの流量、及びペーストの比重のうち少なくとも一つのパラメータをインラインにて測定する。また、ペーストの粘度をインラインにて測定する。そして、測定したパラメータに基づいて、測定したペーストの粘度を補正する。補正後の粘度に基づいて、ペーストの分散条件を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペーストの製造方法及び循環式分散機に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池用ペーストの製造において、ペーストの分散が不足すると、正極ではAB(アセチレンブラック)の凝集が生じ、負極ではCMC(カルボキシメチルセルロース)の分子鎖が切れず、ペーストの粘度が高くなる。そのため、塗工工程やフィルター工程においてペーストが詰まってしまうことがある。一方、分散が過剰になると、活物質の割れやCMCの分子鎖の切れすぎにより、ダイラタンシーや凝集、沈降が生じる。そのため、ペーストの品質(特に粘度)の維持ができない。したがって、リチウムイオン二次電池用ペーストの製造においては、適切な粘度調整が望まれている。
【0003】
特許文献1には、リチウムイオン二次電池用ペーストの製造方法が開示されている。具体的には、固練り途中に随時測定されたペースト粘度が、所定の粘度範囲内に到達した時点で固練りを終了させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−187819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リチウムイオン二次電池用ペーストの製造において、循環式分散機を用いてインラインの粘度測定を行う場合、粘度測定に誤差を発生させる要因がいくつか存在する。例えば、ペースト温度の上昇、ペーストの流量の変化、気泡の混入などである。これらの誤差要因の影響によって、粘度計が測定した粘度が真値からずれてしまい、最終的なペーストの粘度を適切な値に調整することが難しいという問題があった。
【0006】
なお、特許文献1では、測定した粘度が所定の範囲に入るような制御は行われるが、粘度の測定において、上記の誤差要因については何ら考慮されていない。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、容易に正確な粘度調整をすることができるペーストの製造方法及び循環式分散機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様にかかるペーストの製造方法は、循環式分散機を用いたペーストの製造方法であって、ペーストの温度、前記ペーストの流量、及び前記ペーストの比重のうち少なくとも一つのパラメータをインラインにて測定し、前記ペーストの粘度をインラインにて測定し、測定した前記パラメータに基づいて、測定した前記ペーストの粘度を補正し、補正後の粘度に基づいて、前記ペーストの分散条件を制御するものである。これにより、ペーストの粘度に影響するパラメータを考慮しながら、インラインにて、粘度調整を行うことができる。そのため、容易に正確な粘度調整を行うことができる。
【0009】
また、前記パラメータの変化に対する前記ペーストの粘度の変化に基づいて、測定した前記ペーストの粘度を補正してもよい。これにより、パラメータ変化後のペーストの粘度を把握できるため、正確な粘度調整を行うことができる。
【0010】
また、測定した前記ペーストの粘度を、アウトラインの粘度測定環境におけるペーストの粘度に補正してもよい。アウトラインにおけるペーストの粘度を把握できるため、正確な粘度調整を行うことができる。
【0011】
また、前記パラメータの測定は、前記ペーストの粘度の測定の直前に行われてもよい。これにより、パラメータ補正直後のペーストの粘度を測定できるため、粘度調整の正確性が向上する。
【0012】
また、前記分散条件には、前記ペーストの循環時間、前記ペーストの流速、及び分散手段の回転数のうち少なくとも一つが含まれていてもよい。これにより、異なるLotであっても、ペーストの粘度のばらつきを抑えることができる。
【0013】
本発明の第2の態様にかかるペーストの製造方法は、循環式分散機を用いたペーストの製造方法であって、ペーストの温度、前記ペーストの流量、及び前記ペーストの比重のうち少なくとも一つのパラメータをインラインにて調整し、前記パラメータの調整後に前記ペーストの粘度をインラインにて測定し、前記ペーストの粘度の測定結果に基づいて、前記ペーストの分散条件を制御するものである。これにより、ペーストの粘度に影響するパラメータを考慮しながら、インラインにて、粘度調整を行うことができる。そのため、容易に正確な粘度調整を行うことができる。
【0014】
また、前記パラメータの調整処理及び前記ペーストの粘度測定が行われるペーストの経路とは異なる経路において、前記ペーストの分散処理が行われてもよい。これにより、効率よくパラメータ調整処理及び分散処理が実行できる。
【0015】
また、前記パラメータの調整は、前記ペーストの粘度の測定の直前に行われてもよい。これにより、パラメータ調整直後のペーストの粘度を測定できるため、粘度調整の正確性が向上する。
【0016】
本発明の第3の態様にかかる循環式分散機は、ペーストの温度、前記ペーストの流量、及び前記ペーストの比重のうち少なくとも一つのパラメータをインラインにて測定するパラメータ測定手段と、前記ペーストの粘度をインラインにて測定する粘度測定手段と、
前記パラメータ測定手段が測定した前記パラメータに基づいて、前記粘度測定手段が測定した前記ペーストの粘度を補正する補正手段と、補正後の粘度に基づいて、前記ペーストの分散条件を制御する制御手段と、を備える。これにより、ペーストの粘度に影響するパラメータを考慮しながら、インラインにて、粘度調整を行うことができる。そのため、容易に正確な粘度調整を行うことができる。
【0017】
本発明の第4の態様にかかる循環式分散機は、ペーストの温度、前記ペーストの流量、及び前記ペーストの比重のうち少なくとも一つのパラメータをインラインにて調整するパラメータ調整手段と、前記パラメータ調整手段により前記パラメータが調整されたペーストの粘度をインラインにて測定する粘度測定手段と、前記粘度測定手段により測定された前記ペーストの粘度に基づいて、前記ペーストの分散条件を制御する制御手段と、を備える。これにより、ペーストの粘度に影響するパラメータを考慮しながら、インラインにて、粘度調整を行うことができる。そのため、容易に正確な粘度調整を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、容易に正確な粘度調整をすることができるペーストの製造方法及び循環式分散機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態1にかかる循環式分散機のブロック図である。
【図2】実施の形態1にかかる循環式分散機の動作を示すフローチャートである。
【図3】実施の形態1にかかるペーストの温度変化に対するペーストの粘度変化を示すグラフである。
【図4】実施の形態1にかかるペーストの比重変化に対するペーストの粘度変化を示すグラフである。
【図5】実施の形態1にかかるペーストの流量変化に対するペーストの粘度変化を示すグラフである。
【図6】実施の形態2にかかる循環式分散機のブロック図である。
【図7】実施の形態2にかかる循環式分散機の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施の形態1>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態にかかる循環式分散機1のブロック図を図1に示す。循環式分散機1は、循環タンク11と、ホモジナイザ12と、コリオリ流量計13と、粘度計14と、補正部15と、制御部16と、を備える。なお、太線矢印はリチウムイオン二次電池用ペースト(以下、ペーストと称す。)が流れる配管を意味し、細線矢印は信号を意味する。循環タンク11と、ホモジナイザ12と、コリオリ流量計13と、粘度計14とは、配管を介して連結されている。つまり、循環タンク11と、ホモジナイザ12と、コリオリ流量計13と、粘度計14とを連結する配管が、ペーストの循環経路である。
【0021】
循環タンク11は、ペーストを貯蓄するタンクである。循環タンク11の内部には、ペーストを混練するための羽根が設けられている(図示省略)。循環タンク11は、所定の速度で羽根を回転させることにより、循環タンク11に溜まっているペーストの粘度が変化しないようにする。つまり、循環タンク11では、ペースト粘度の調整は行われない。
【0022】
ホモジナイザ12(パラメータ調整手段)は、循環タンク11から送られてくるペーストを分散する。ホモジナイザ12の回転数が変化することにより、分散の加減が調整される。つまり、ホモジナイザ12の回転数が変化することにより、ペーストの粘度が調整される。なお、分散機はホモジナイザに限られず、粘度調整ができればよい。
【0023】
コリオリ流量計(パラメータ測定手段)13は、配管内部のペーストの温度、ペーストの比重、及びペーストの流量の3つのパラメータを測定する。つまり、コリオリ流量計13は、インラインにて、上記3つのパラメータを測定する。なお、インラインとは、ペーストが循環経路(配管内部)を流れている状態のことを意味する。つまり、コリオリ流量計13は、ペーストを循環経路から取り出すことなく、ペーストの温度、ペーストの比重、及びペーストの流量を測定する。コリオリ流量計13においてペーストの比重を測定することにより、ペースト粘度に影響する気泡の含有量を算出できる。
【0024】
粘度計14は、ペーストの粘度を測定する。このとき測定される粘度は、配管内部を通過するペーストの粘度、つまり、インラインにおけるペーストの粘度である。
【0025】
補正部15は、コリオリ流量計13が測定したパラメータに基づいて、粘度計14が測定した粘度を補正する。具体的には、パラメータの変化に対するペーストの粘度変化に基づいて、粘度計14が測定したペーストの粘度を、アウトラインの粘度測定環境におけるペーストの粘度に補正する。
【0026】
このとき、アウトラインの粘度測定環境とは、例えば、ペースト温度20℃、ペースト比重1.0〜2.5g/cc(アウトラインでは流量なし。せん断速度を変えて測定。)である。なお、アウトラインとは、循環式分散機1の配管外部のことを意味する。言い換えると、アウトラインとは、ペーストの循環経路外の環境を意味する。
【0027】
制御部16は、補正後の粘度に基づいて、分散条件を制御する。具体的には、制御部16は、補正後の粘度に基づいて、循環式分散機1におけるペーストの循環時間、循環タンク11から送られるペーストの流量、及びホモジナイザ12の回転数を調整する。このとき、分散条件とは、循環式分散機1の設定条件を意味し、ペーストの循環時間、ペーストの流量、及びホモジナイザ12の回転数に限られるものではない。なお、補正部15及び制御部16は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の演算処理装置を含む処理部である。
【0028】
続いて、本実施の形態にかかる循環式分散機1の動作について、図2に示すフローチャートを参照して説明する。まず、循環式分散機1における循環経路にペーストが流れる。ホモジナイザ12は、配管から流れてくるペーストを分散する(ステップS101)。これにより、ペーストの粘度が調整される。
【0029】
次に、コリオリ流量計13が、分散されたペーストの温度、ペーストの比重、及びペーストの流量をインラインにて測定する(ステップS102)。コリオリ流量計13は、計測結果を補正部15に出力する。
【0030】
そして、粘度計14がインラインにてペーストの粘度を測定する(ステップS103)。つまり、循環式分散機1の循環経路の外部(アウトライン)にペーストを取り出さずに、配管内(インライン)にてペーストの粘度を測定する。粘度計14は、測定した粘度を補正部15に出力する。
【0031】
補正部15は、コリオリ流量計13から入力されたペーストの温度、ペーストの比重、及びペーストの流量に基づいて、粘度計14から入力された粘度を補正する。より詳細には、補正部15は、図3〜図5に示すグラフを参照して、粘度を補正する。なお、図3は、ペーストの温度変化に対するペーストのせん断粘度変化を示す。図4は、ペーストの比重変化に対するペーストのせん断粘度変化を示す。図5は、ペーストの流量変化に対するペーストのせん断粘度変化を示す。
【0032】
なお、図3〜図5に示すパラメータ変化に対するペーストの粘度変化は、ペーストの材料等によって異なる。パラメータ変化に対するペーストの粘度変化に関する情報は、予め補正部15が参照可能なメモリ等に格納されている。
【0033】
ここで、補正部15の詳細な補正処理について説明する。例として、循環式分散機1の配管内(インライン)のペースト温度が60℃で、外部の粘度測定環境(アウトライン)におけるペースト温度が20℃であるとする。補正部15は、コリオリ流量計13から入力されたペーストの温度(60℃)と、図3に示すグラフとを参照する。そして、補正部15は、配管内のペースト温度(60℃)からアウトラインにおける粘度測定環境におけるペースト温度(20℃)まで変化した場合のペーストの粘度変化を算出する。図3においては、ペースト温度が60℃から20℃に変化すると、ペースト粘度は約600mPa・s上昇する。
【0034】
補正部15は、粘度計14から入力された粘度に約600mPa・s加算することにより、粘度を補正する。つまり、ペースト温度が配管内のペースト温度からアウトラインにおける粘度測定環境におけるペースト温度まで変化した場合におけるペースト粘度の変化量を、実際の粘度(粘度計14が測定した粘度)に加算する。言い換えると、補正部15は、測定されたペーストの粘度を、アウトラインの粘度測定環境におけるペーストの粘度に補正する。これにより、ペーストがアウトラインに取り出された後、つまり、温度変化の影響を受けてペースト粘度が変化した後のペースト粘度を把握できる。補正部15は、補正後の粘度を制御部16に出力する。
【0035】
なお、上記の例では、ペーストの温度変化に基づいて、ペーストの粘度を補正する動作について説明したが、ペーストの比重及びペーストの流量に基づいて補正する場合も同様である。つまり、補正部15は、図4及び図5に基づいて、パラメータ(ペースト比重及びペースト流量)の変化に対するペーストのせん断粘度変化量を算出し、その変化量を測定された粘度に加算(または減算)する。
【0036】
制御部16は、補正部15により補正された粘度が所望の粘度であるか否かを判定する(ステップS105)補正部15により補正された粘度が所望の粘度である場合(ステップS105:Yes)、循環式分散機1は、分散動作を終了する。このときの配管内部のペースト粘度は、所望の粘度とは異なるが、その後、ペーストをアウトラインに取り出すと、ペーストの温度と共に、ペーストの粘度が変化し、ペーストの粘度が所望の粘度となる。
【0037】
一方、補正部15により補正された粘度が所望の粘度でない場合(ステップS105:No)、制御部16は、補正部15から入力された補正後の粘度が所望の粘度に近づくように、分散条件を制御する(ステップS106)。具体的には、制御部16は、循環タンク11に対して制御信号を出力し、ペーストの循環時間及びペーストの流量を調整する。また、制御部16は、ホモジナイザ12に制御信号を出力し、ホモジナイザ12の回転数を調整する。
【0038】
そして、ホモジナイザ12は、制御部16によって調整された分散条件において、再度分散処理を行う(ステップS101)。循環式分散機1は、補正部15により補正された粘度が所望の粘度になるまで、上記の処理を繰り返す。
【0039】
以上のように、本実施の形態にかかる循環式分散機1の構成によれば、補正部15が、コリオリ流量計13によりインラインにて測定されたペーストの温度、ペーストの比重、及びペーストの流量の少なくとも一つのパラメータに基づいて、粘度計14によりインラインにて測定されたペーストの粘度を補正する。そして、制御部16が補正後の粘度に基づいて、ホモジナイザ12の回転数等の分散条件を制御する。これにより、循環式分散機1は、パラメータの変化に対するペーストの粘度変化量を考慮して、分散条件を調整できる。その結果、例えばアウトラインにおけるペーストの粘度をインラインにて調整できる。したがって、分散したペーストの粘度をアウトラインに取り出して測定する必要がないため、容易に粘度の調整を行うことができる。また、補正後の粘度(アウトラインの環境における粘度)に基づいて、分散条件を制御し、粘度調整を行っているため、インラインにて正確な粘度調整を行うことができる。
【0040】
また、ペーストをアウトラインに取り出すことなく、所定の環境における粘度を把握できるため、インラインにおいて、粘度の異常を検知することができる。つまり、循環式分散機1は、アウトラインにおけるペーストの粘度測定を待つことなく、配管内部のペースト粘度の異常を検知できる。そのため、粘度異常を直ちに検知し、分散処理の自動停止することができる。加えて、ユーザが循環式分散機1から粘度計測のためにペーストを採取する手間も省ける。そのため、ユーザの労力を軽減できる。
【0041】
さらに、循環式分散機1は、ペーストの循環時間、ペーストの流量、及びホモジナイザの回転数を調整することにより、粘度の調整を行っている。そのため、異なるLotであっても、ペーストの粘度のばらつきを抑えることができる。
【0042】
<実施の形態2>
本発明にかかる実施の形態について説明する。本実施の形態にかかる循環式分散機2のブロック図を図6に示す。循環式分散機2は、循環タンク11と、ホモジナイザ12と、粘度計14と、制御部16と、調整部21と、を備える。循環タンク11と、ホモジナイザ12と、粘度計14と、調整部21とは、配管を介して連結されている。
【0043】
調整部21は、ペーストのパラメータを調整する。具体的には、調整部21は、配管内部のペーストの流量、ペーストの比重(気泡の含有量)、及びペーストの温度を調整する。なお、その他の構成については循環式分散機1と同様であるので、説明を適宜省略する。
【0044】
このとき、調整部21は、ペーストのパラメータ(ペースト温度、ペースト比重、ペースト流量)が、アウトラインの粘度測定環境におけるパラメータと同様の値となるように、ペーストのパラメータを調整する。より詳細には、調整部21は、配管を流れるペーストの流速を止める。また、調整部21は、真空引きにより、ペーストの気泡を除去する。さらに、調整部21は、冷却管等を用いて、ペーストの温度調節を行う。
【0045】
なお、循環式分散機2においては、循環タンク11から2本の配管が出ており、一方はホモジナイザ12に連結され、他方は調整部21に連結されている。つまり、循環タンク11から流れ出るペーストは、ホモジナイザ12と調整部21とに送られる。そして、ホモジナイザ12により粘度が調整されたペーストは循環タンク11に送られる。一方、調整部21を経て、粘度計14により粘度が測定されたペーストも循環タンク11に送られる。
【0046】
続いて、本実施の形態にかかる循環式分散機2の動作について、図7に示すフローチャートを参照して説明する。まず、循環式分散機2における循環経路(配管)にペーストが流れる。ホモジナイザ12は、配管から流れてくるペーストを分散する(ステップS201)。これにより、ペーストの粘度が調整される。
【0047】
調整部21は、ホモジナイザ12により粘度調整が行われ、循環タンク11に戻ってきたペーストのパラメータを調整する(ステップS202)。粘度計14は、パラメータが調整された状態のペーストの粘度を測定する(ステップS203)。つまり、粘度計14は、アウトラインの粘度測定環境におけるペーストと同様の状態となったインラインのペーストの粘度を測定する。粘度計14は、インラインにて測定したペーストの粘度を、制御部16に出力する。
【0048】
制御部16は、測定されたペースト粘度が所望の粘度であるか否かを判定する(ステップS204)。測定されたペースト粘度が所望の粘度である場合(ステップS204:Yes)、循環式分散機2は、分散動作を終了する。
【0049】
このとき、循環タンク11内のペーストは、調整部21により調整を受けてから時間が経っているため、調整されたパラメータからずれている。例えば、ペーストの温度に着目すると、調整部21においてアウトラインの温度(20℃)に調整されたペーストの温度は、循環経路を流れる間に上昇する。このため、ペーストの粘度も、粘度計14において測定された粘度から変化している。
【0050】
しかし、循環タンク11から取り出されたペーストは、アウトラインの環境にて測定・使用される。そのため、ペーストのパラメータは、調整部21において調整されたパラメータに変化する。それに伴って、ペーストの粘度も粘度計14において測定された粘度(所望の粘度)に近づく。つまり、パラメータの影響を受けて変化するペーストの粘度の調整を正確に行うことができる。
【0051】
一方、測定されたペースト粘度が所望の粘度でない場合(ステップS204:No)、制御部16は、粘度計14において測定される粘度が所望の粘度に近づくように、分散条件を制御する(ステップS205)。具体的には、制御部16は、ペーストの循環時間、ホモジナイザ12の回転数、ペーストの流量を調整する。
【0052】
そして、ホモジナイザ12は、制御部16によって調整された分散条件において、再度分散処理を行う(ステップS201)。循環式分散機2は、粘度計14において測定される粘度が所望の粘度となるまで、上記の処理を繰り返す。
【0053】
以上のように、本実施の形態にかかる循環式分散機2の構成によれば、調整部21がペーストのパラメータを所定の環境(例えばアウトライン)におけるパラメータに調整する。そして、粘度計14はパラメータが調整されたペーストの粘度を測定する。つまり、粘度計14がインラインにて測定するペーストの粘度は、アウトラインの環境におけるペーストの粘度である。そのため、循環式分散機2からペーストを取り出し、アウトラインにて粘度を測定する必要がなく、容易にペースト粘度の測定ができる。加えて、粘度計14におけるペーストのパラメータは、アウトラインの環境におけるパラメータに調整されたパラメータであるため、粘度計14において測定された粘度がアウトラインにおけるペーストの粘度と一致する。このため、正確にペーストの粘度を調整できる。
【0054】
また、図6に示すように、循環式分散機2においては、配管の経路が2つに分かれている。具体的には、ペーストがホモジナイザ12を通る経路と、ペーストが調整部21及び粘度計14を通る経路が存在する。ホモジナイザ12を通る経路の配管には太い配管が用いられ、調整部21及び粘度計14を通る配管には細い配管が用いられる。このような構成により、分散される(粘度が調整される)ペーストの量を多くしつつ、ペーストのパラメータ調整及び粘度測定が行われるペーストの量を少なくできる。このため、粘度調整及びペーストのパラメータ調整を効率よく行うことができる。勿論、ペーストが通る経路を1つにして、ホモジナイザ12の後段に調整部21及び粘度計14を設けてもよい。
【0055】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更及び組み合わせをすることが可能である。例えば、本実施の形態においては、ペーストの温度、ペーストの比重、及びペーストの流量の3つのパラメータを測定または調整しているが、必ずしも3つ全てを測定または調整しなくてもよい。いずれか1つのパラメータだけ測定または調整しても本発明の効果を発揮することができる。勿論、複数のパラメータを用いた方が、より正確な粘度調整を行うことができる。また、ペーストの種類はリチウムイオン二次電池用ペーストに限られない。
【符号の説明】
【0056】
1、2 循環式分散機
11 循環タンク
12 ホモジナイザ
13 コリオリ流量計
14 粘度計
15 補正部
16 制御部
21 調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環式分散機を用いたペーストの製造方法であって、
ペーストの温度、前記ペーストの流量、及び前記ペーストの比重のうち少なくとも一つのパラメータをインラインにて測定し、
前記ペーストの粘度をインラインにて測定し、
測定した前記パラメータに基づいて、測定した前記ペーストの粘度を補正し、
補正後の粘度に基づいて、前記ペーストの分散条件を制御するペーストの製造方法。
【請求項2】
前記パラメータの変化に対する前記ペーストの粘度の変化に基づいて、測定した前記ペースト粘度を補正する請求項1に記載のペーストの製造方法。
【請求項3】
測定した前記ペーストの粘度を、アウトラインの粘度測定環境におけるペーストの粘度に補正する請求項1または2に記載のペーストの製造方法。
【請求項4】
前記パラメータの測定は、前記ペーストの粘度の測定の直前に行われる請求項1〜3のいずれか一項に記載のペーストの製造方法。
【請求項5】
前記分散条件には、前記ペーストの循環時間、前記ペーストの流速、及び分散手段の回転数のうち少なくとも一つが含まれる請求項1〜4のいずれか一項に記載のペーストの製造方法。
【請求項6】
循環式分散機を用いたペーストの製造方法であって、
ペーストの温度、前記ペーストの流量、及び前記ペーストの比重のうち少なくとも一つのパラメータをインラインにて調整し、
前記パラメータの調整後に前記ペーストの粘度をインラインにて測定し、
前記ペーストの粘度の測定結果に基づいて、前記ペーストの分散条件を制御するペーストの製造方法。
【請求項7】
前記ペーストのパラメータを、アウトラインの粘度測定環境におけるペーストのパラメータに調整する請求項6に記載のペーストの製造方法。
【請求項8】
前記パラメータの調整は、前記ペーストの粘度の測定の直前に行われる請求項6または7に記載のペーストの製造方法。
【請求項9】
ペーストの温度、前記ペーストの流量、及び前記ペーストの比重のうち少なくとも一つのパラメータをインラインにて測定するパラメータ測定手段と、
前記ペーストの粘度をインラインにて測定する粘度測定手段と、
前記パラメータ測定手段が測定した前記パラメータに基づいて、前記粘度測定手段が測定した前記ペーストの粘度を補正する補正手段と、
補正後の粘度に基づいて、前記ペーストの分散条件を制御する制御手段と、
を備える循環式分散機。
【請求項10】
ペーストの温度、前記ペーストの流量、及び前記ペーストの比重のうち少なくとも一つのパラメータをインラインにて調整するパラメータ調整手段と、
前記パラメータ調整手段により前記パラメータが調整されたペーストの粘度をインラインにて測定する粘度測定手段と、
前記粘度測定手段により測定された前記ペーストの粘度に基づいて、前記ペーストの分散条件を制御する制御手段と、
を備える循環式分散機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−78740(P2013−78740A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220756(P2011−220756)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】