説明

ペースト加工用塩化ビニル系樹脂及びその製造方法、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物並びにその用途

【課題】 本発明により得られたペースト塩ビは、加工する際にペースト塩ビ組成物を調整した際に、粘度が低く、かつ該組成物を裏打ち紙上に塗布し、加熱発泡したとき、良好な発泡体が得られるためその工業的価値はきわめて高いものであり、特に壁紙用途に優れたものである。
【解決手段】 粒子径が0.05〜30μmの範囲に連続的に分布し、0.45μm未満の粒子(A成分)、0.45μm以上4.5μm未満の粒子(B成分)、4.5μm以上の粒子(C成分)の粒子径分布が、A成分:10〜40重量%、A成分とB成分の和とC成分の重量比[((A)+(B))/(C)]:95/5〜65/35であって、B成分の極大値を与える粒子径がA成分の極大値を与える粒子径の6〜20倍であり、かつ、特定の界面活性剤を含有するペースト加工用塩化ビニル系樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂及びその製造方法、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物並びにその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペースト加工用塩化ビニル系樹脂(以下、ペースト塩ビと略記する)は、一般的に可塑剤、安定剤、発泡剤等の配合剤と混練することにより、ペースト塩ビ組成物(以下、ペースト塩ビゾルと称する場合がある)として加工に供され、種々の加工法により様々な成型品が得られる。これらペースト塩ビは、ペースト塩ビゾルを常温において成形するという特徴を生かし、壁紙、床材、塩ビ鋼板などの用途に用いられている。特に壁紙、床材用途においては、ペースト塩ビゾルを基材上にコーティングする際、良好なハンドリング性の確保とコーティング時に発生する刃裏モレとよばれるコーティング刃の裏側に堆積した粒状ペースト塩ビゾルがある大きさに成長したのちコーティング面に移り、面を荒らしたり、筋引きの原因となったりすることを避けるため、ペースト塩ビゾルの粘度を調整しており、一般的には配合時に灯油、ミネラルスピリット等の希釈剤と称される有機溶媒を添加している。
【0003】
しかしながら、希釈剤は芳香族炭化水素や脂肪族炭化水素が主成分であり、加熱加工時に希釈剤が蒸発、気化することによる環境汚染を引き起こしたり、成形品に残存した場合、これら希釈剤の揮発による室内環境を汚染したりするなどの問題があった。
【0004】
近年、これら問題を解決するために、配合剤に使用する希釈剤の添加量を低減、又は添加せずに成形品を得ることができるような低粘度のペースト塩ビゾルを与えるペースト塩ビに対する要求が大きくなってきている。例えば、これら要求に対応するため、粒径5〜65μmの粒子が10〜90重量%と粒径3μm以下の微粒子が90〜10重量%とそれ以外の粒子が0〜10重量%よりなる分散液を顆粒化することにより高剪断領域でも低粘度を得る方法が示されている(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、このような粒径分布では発泡時の倍率が上がらない、発泡体のセルや表面が荒れるなどといった発泡性が悪化する傾向にある。
【0006】
また、粒子径が少なくとも0.2〜10μmの範囲に分布しており、0.5μm未満の粒子(A成分)、0.5〜4μmの粒子(B成分)、4μm以上(C成分)の分布が、A成分が10〜30重量%、B成分とC成分の重量比が(B)/(C)=30/70〜60/40であるペースト加工用塩化ポリ塩化ビニル系樹脂が、低粘度のペースト塩ビゾルとペースト塩ビゾルを加熱加工して得られた成形品が良好な発泡体を与えることを示している(特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、このように4μm以上(C成分)の割合が多い場合、ペースト塩ビゾルの粘度は低くなるものの、発泡体セルの肥大化によるエンボス後の発泡体厚みの減少、並びに発泡表面の平滑性が損なわれ、製品概観が悪化するなどの問題がある。
【0008】
【特許文献1】特開平5−194752号
【特許文献2】特開2003−238621
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ペースト塩ビゾルを調整したときの、粘度が低剪断速度から高剪断速度まで広範囲の剪断速度において低く、コーティング適正に優れ、良好な表面平滑性を有する発泡体を得ることができるペースト塩ビを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、特定の粒子径分布を有するペースト塩ビが、特に壁紙分野に適したペースト塩ビとなることを見出し本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、粒子径が0.05〜30μmの範囲に連続的に分布し、0.45μm未満の粒子(A成分)、0.45μm以上4.5μm未満の粒子(B成分)、4.5μm以上の粒子(C成分)の粒子径分布が、A成分:10〜40重量%、A成分とB成分の和とC成分の重量比[((A)+(B))/(C)]:95/5〜65/35であって、B成分の極大値を与える粒子径がA成分の極大値を与える粒子径の6〜20倍であり、かつ、下記一般式[I]で示される界面活性剤を含有することを特徴とするペースト加工用塩化ビニル系樹脂及びその製造方法、組成物並びに用途に関するものである。
【0012】
【化1】

[式中、Rは、炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を表し、Rは、水素又は炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基若しくはアラルキル基を表し、Rは、水素又はプロペニル基を表し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、nは1〜200の整数を表し、Mは、アルカリ金属、アンモニウムイオン又はアルカノールアミン残基を表す。]
以下に、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0013】
本発明のペースト塩ビは、粒子径が0.05〜30μmの範囲に連続的に分布し、0.45μm未満の粒子(A成分)、0.45μm以上4.5μm未満の粒子(B成分)、4.5μm以上の粒子(C成分)の粒子径分布が、A成分:10〜40重量%、A成分とB成分の和とC成分の重量比[((A)+(B))/(C)]:95/5〜65/35であって、B成分の極大値を与える粒子径がA成分の極大値を与える粒子径の6〜20倍であることが必要である。
【0014】
本発明のペースト塩ビは、粒子径が0.05〜30μmの範囲に連続的に分布するものである。粒子径が連続的に分布するとは、それぞれの極大値を有する粒径分布の山が単独で存在せず、重なりあっており、区切れがない粒径分布を示すことをいう。粒子径が0.05〜30μmの範囲に連続的に分布していないと目的のペースト塩ビが得られない。ここに、粒子径は、一般に知られている粒度分布測定機により測定するものであり、例えば、レーザー回折式粒度分布測定機,レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置があげられる。
【0015】
本発明のペースト塩ビのA成分の比率は、10〜40重量%である。A成分の比率が10重量%より低いと、高剪断速度域のペースト塩ビゾルの粘度が上昇することにより、コーティング時の刃裏モレが多くなる、または、コーティングできなくなる等の問題が発生し、また、発泡した際の発泡性も悪化する傾向にある。一方、A成分の比率が40重量%を越えると低剪断速度でのペースト塩ビゾルの粘度上昇と粘度の経時変化が大きくなる。なお、ペースト塩ビゾルの粘度特性並びに発泡特性の両立化を考慮すると、10重量%以上25重量%未満が好ましい。
【0016】
本発明のペースト塩ビのA成分とB成分の和とC成分の重量比[((A)+(B))/(C)]は、95/5〜65/35である。C成分が95/5より少ないと高剪断速度域のペースト塩ビゾル粘度が高くなったり、粘度の経時変化が大きくなる傾向にある。一方、65/35より多いと、ペースト塩ビゾルの粘度が上昇したり、ペースト塩ビゾルをコーティングした後に発泡した際、発泡表面の平滑性が損なわれたり、発泡体を再加熱後エンボスした際に、発泡体の厚みが減少するなどの問題がある。なお、ペースト塩ビゾルの粘度特性と発泡特性を両立するためには、95/5〜80/20が好ましい。
【0017】
本発明のペースト塩ビのB成分の極大値を与える粒子径がA成分の極大値を与える粒子径の6〜20倍である。ここに、極大値を与える粒子径とは、粒径分布の山の頂点を示す粒子径のことをいう。6倍未満又は20倍より大きいと得られたペースト塩ビの粒子の充填密度があがらず、流動に寄与できない可塑剤量が増加することによってペースト塩ビゾルの粘度が高くなるため好ましくない。なお、ペースト塩ビゾルの粘度特性並びに発泡特性の両立化を考慮すると7〜15倍が好ましい。
【0018】
また、本発明のペースト塩ビは、下記一般式[I]で示される界面活性剤を含有することが必要である。
【0019】
【化2】

[式中、Rは、炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を表し、Rは、水素又は炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基若しくはアラルキル基を表し、Rは、水素又はプロペニル基を表し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、nは1〜200の整数を表し、Mは、アルカリ金属、アンモニウムイオン又はアルカノールアミン残基を表す。]
一般式[I]で示される界面活性剤とは、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル塩であり、例えば、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩[アクアロンHS10](商品名,第一工業製薬(株)製,ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド100モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、ドデシルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル,プロピレンオキシド10モルランダム付加体硫酸エステルナトリウム塩、ドデシルプロペニルフェノールブチレンオキシド4モル,エチレンオキシド30モルブロック付加体硫酸エステルナトリウム塩等が挙げられる。当該界面活性剤を含有しないとペースト塩ビゾルの粘度が効果的に低下しない等の問題が生ずる。ペースト塩ビゾルの粘度低下、重合の際の、重合安定化のために、当該界面活性剤の含有量は、0.01〜1重量%が好ましく、0.01〜0.5重量%がさらに好ましい。
【0020】
本発明のペースト塩ビは、粘度が低く、ペースト塩ビゾルをコーティングした後に発泡した際の発泡特性が優れることから、本発明のペースト塩ビを用いて得られたペースト塩ビ組成物について、B8H型粘度計、No.5ローターを使用して、20rpmで測定したときの粘度(以下、B粘と略記する)が8000mPa・s以下であり、かつ、Severs粘度計を使用して、オリフィス径2mm、圧力0.414M・Paで測定したときの粘度(以下、S粘と略記する)が11500mPa・s以下であることが好ましい。
【0021】
ここに、本発明におけるペースト塩ビの測定で用いられるペースト塩ビ組成物は、本発明のペースト塩ビ100重量部に、ジイソノニルフタレート(可塑剤)50重量部、炭酸カルシウム(充填剤)60重量部、酸化チタン(顔料)15重量部、アゾジカルボンアミド(発泡剤)4重量部、Ba−Zn系安定剤3重量部、減粘剤3重量部を配合し、ディゾルバー式ミキサーを用い、25℃、2000rpmで2分混練した後、25℃、2時間放置して得られたものである。
【0022】
本発明のペースト塩ビは、上記したペースト塩ビ組成物を裏打ち紙上に塗布し発泡させたとき、得られた発泡体が平滑な表面である発泡体を与える効果を奏するものである。
【0023】
ここで用いられるディゾルバー式ミキサーとしては、一般の市販されているディゾルバー式ミキサーであればいかなるものも用いることができる。
【0024】
ペースト塩ビ組成物の粘度を測定する際に使用されるB8H型粘度計としては、一般の市販されているB8H型粘度計であればいかなるものでも使用することが可能であり、その際に粘度測定としては、ローターNo.5を用い、20rpmで粘度測定するものである。また、ペースト塩ビ組成物の粘度を測定する際に使用されるSevers粘度計は、一般の市販されているSevers粘度計であればいかなるものでも使用することが可能であり、その際に粘度測定としては、オリフィス径2mm、圧力0.414M・Paで粘度を測定するものである。
【0025】
本発明のペースト塩ビは、塩化ビニル単量体単独又は塩化ビニルを主体とする単量体混合物を下記一般式[I]で示される界面活性剤を使用して重合して得られた1〜2個の極大値を有する塩化ビニル系樹脂ラテックス(A)と、塩化ビニル単量体単独又は塩化ビニルを主体とする単量体混合物を重合して得られた平均粒子径が4.0μm以上の塩化ビニル系樹脂ラテックスとを、塩化ビニル系樹脂ラテックス(A)がそれ以外の塩化ビニル系樹脂ラテックスより多くなるように混合し、得られた塩化ビニル系樹脂ラテックスを乾燥して得られるものである。
【0026】
【化3】

[式中、Rは、炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を表し、Rは、水素又は炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基若しくはアラルキル基を表し、Rは、水素又はプロペニル基を表し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、nは1〜200の整数を表し、Mは、アルカリ金属、アンモニウムイオン又はアルカノールアミン残基を表す。]
ここに、一般式[I]で示される界面活性剤を使用して重合して得られた1〜2個の極大値を有する塩化ビニル系樹脂ラテックスを用いないと、ペースト塩ビゾルの粘度低下と発泡特性の両立ができない等の問題が生ずる。
【0027】
また、重合して得られた平均粒子径が4.0μm以上の塩化ビニル系樹脂ラテックスを用いないと、ペースト塩ビゾルの粘度が効果的に低下しない問題が生ずる。
【0028】
さらに、一般式[I]で示される界面活性剤を使用して重合して得られた1〜2個の極大値を有する塩化ビニル系樹脂ラテックス(A)と、塩化ビニル単量体単独又は塩化ビニルを主体とする単量体混合物を重合して得られた平均粒子径が4.0μm以上の塩化ビニル系樹脂ラテックスとを、塩化ビニル系樹脂ラテックス(A)がそれ以外の塩化ビニル系樹脂ラテックスより多くなるように混合しないと、発泡の際、発泡体のセル荒れが起こる等の問題が生ずる。
【0029】
一般式[I]で示される界面活性剤は、先に説明したものと同じである。なお、得られたペースト塩ビゾルの粘度を低くするため、当該界面活性剤の量は、使用する単量体に対して、0.01〜1重量部が好ましく、0.01〜0.5重量部がさらに好ましい。
【0030】
また、ペースト塩ビゾルのさらなる粘度低下のために、上記した塩化ビニル単量体単独又は塩化ビニルを主体とする単量体混合物を一般式[I]で示される界面活性剤を使用して重合して得られた1〜2個の極大値を有する塩化ビニル系樹脂ラテックス(A)と、塩化ビニル単量体単独又は塩化ビニルを主体とする単量体混合物を重合して得られた平均粒子径が4.0μm以上の塩化ビニル系樹脂ラテックスに、さらに、塩化ビニル単量体単独又は塩化ビニルを主体とする単量体混合物を重合して得られた平均粒子径が0.05〜0.50μmである塩化ビニル系樹脂ラテックスを混合することが好ましい。
【0031】
本発明のペースト塩ビの製造方法は、上記した条件が必要である。一方、それ以外については、特に限定はなくいかなる方法でも可能である。例えば、A成分、B成分、C成分共にミクロ懸濁重合法で作製後にこれらを所定比率で混合することにより目的の粒子径分布を得ることができる。また、A成分を乳化重合法で作製しB成分及びC成分を通常のミクロ懸濁重合法で作製した後に、これら所定比率で混合することにより目的の粒子径分布を得ることができる。さらにシードミクロ懸濁重合法によりA成分とB成分を同時に作製し、微細懸濁重合により作製したC成分を混合することにより目的の粒子径分布を得ることができる。
【0032】
これらのうち、以下に、本発明のペースト塩ビを得る好ましい製造方法を具体的に説明するがこれに限定されるものではない。
【0033】
すなわち、塩化ビニル単量体単独又は塩化ビニルを主体とする単量体混合物を、界面活性剤、開始剤等含有シードと該単量体可溶な重合開始剤を含有しない平均粒子径0.1〜0.4μmのシード粒子、緩衝剤、必要に応じて重合度調整剤を水性媒体中でシードミクロ懸濁重合して得られたラテックス(A成分及びB成分を含有)と、微細懸濁重合法により、均質化条件を調整後、重合して得られたラテックス(C成分を含有)を所定比率で混合後、乾燥することにより製造される。その際の重合温度は、特に限定するものではないが、ペースト塩ビラテックスを安定に、且つ、安全に製造するために、40〜70℃が好ましい。
【0034】
本発明のペースト塩ビの製造方法において、塩化ビニルを主体としこれと共重合し得る共単量体との混合物は、混合物中の塩化ビニルの量が80重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましい。塩化ビニルと共重合し得る共単量体としては、例えば、エチレン、プロピレンなどのオレフィン系化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和モノカルボン酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−N,N−ジメチルアミノエチルなどの不飽和モノカルボン酸エステル;アクリルアミド、メタクリルアミドなどの不飽和アミド;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル;マレイン酸、フマール酸などの不飽和ジカルボン酸;これらのエステル及びこれらの無水物;N−置換マレイミド類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル;さらに塩化ビニリデンなどのビニリデン化合物などを挙げることができる。
【0035】
本発明のペースト塩ビの製造方法において用いられる界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤が挙げられる。ここで、アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジへキシルスルホコハク酸ナトリウムなどのスルホコハク酸塩;ラウリン酸ナトリウム、半硬化牛脂脂肪酸カリウムなどの脂肪酸塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェートナトリウム塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルサルフェートナトリウム塩などのエトキシサルフェート塩;アルカンスルホン酸塩;アルキルエーテル燐酸エステルナトリウム塩などを挙げることができる。また、ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンラウリルエステルなどを挙げることができる。
【0036】
本発明のペースト塩ビ製造方法において用いられる緩衝剤としては、例えば、リン酸一もしくは二水素アルカリ金属塩、フタル酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどがあげられる。
【0037】
本発明のペースト塩ビの製造方法において用いられる重合度調整剤としては、例えば、トリクロルエチレン、四塩化炭素等のハロゲン系炭化水素、2−メルカプトエタノール、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、アセトン、n−ブチルアルデヒド等のアルデヒド類などがあげられ、重合度を調整できるものであればいかなるものを用いてもよい。
【0038】
本発明のペースト塩ビの製造方法において、ラテックスを乾燥する方法は、いかなる方法を用いてもよいが、効率よく水分を除去することができることから、噴霧乾燥による方法が好ましい。噴霧乾燥に使用する乾燥機は、一般的に使用されているものでよく、例えば「SPRAY DAYING HANDBOOK」(K.Masters著、3版、1979年、George godwin Limitedより出版)の121頁第4.10図に記載されている各種のスプレー乾燥機があげられるが、噴霧方式としてはディスクアトマイザータイプが好ましい。乾燥温度は、乾燥機の入口で一般的に80〜200℃に、また出口では40〜70℃、好ましくは45℃〜65℃がよい。乾燥後、得られたペースト塩ビは、塩化ビニル系樹脂ラテックスを構成する粒子の凝集体であり、通常10〜150μmの顆粒状である。乾燥出口温度が52℃を超える場合には、得られた顆粒状ペースト塩ビを粉砕した方が可塑剤への分散性の点から好ましく、乾燥出口温度が52℃以下であれば、顆粒状のままでも粉砕して使用してもどちらでもよい。
【0039】
また、乾燥する前のラテックスに肪酸酸又はポリグリセリン高級脂肪酸エステルを塩化ビニル系樹脂に対し、0.01〜5重量部添加するとペースト塩ビゾルの粘度が低くなるので好ましい。高級脂肪酸は、炭素数8以上のものであればいずれでも良いが、縮合リシノレイン酸が好ましい。
【0040】
開始剤等含有シードは、例えば次のようなミクロ懸濁重合法で調整される。まず、塩化ビニル単量体単独又は塩化ビニルを主体とする単量体混合物、単量体可溶重合開始剤、界面活性剤、緩衝剤、高級アルコール、高級脂肪酸及びそのエステル、塩素化パラフィンなどの分散助剤、必要に応じて重合度調整剤を加えてプレミックスし、ホモジナイザーにより均質化処理して油滴の調整を行う。ホモジナイザーとしては、例えば、コロイドミル、振動攪拌機、二段式高圧ポンプなどを用いることができる。均質化処理した液を重合器に送り、緩やかに攪拌しながら重合器内の温度を上げて重合反応を開始し、以後所定の転化率に達するまで重合を行うことができる。重合温度は、30〜55℃であることが好ましい。単量体可溶重合開始剤の種類としては、10時間半減期温度30〜70℃のジアシルパーオキサイドが好ましい。例えば、イソブチリルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、コハク酸パーオキサイドなどがあげられる。
【0041】
重合に用いる界面活性剤は、前記にあげた界面活性剤を単独又は2種類以上を混合しても用いることができる。また、緩衝剤は前記にあげたものを用いることができる。さらに、必要に応じて用いられる重合度調整剤は前記にあげたものを用いることができる。
【0042】
一方、単量体可溶重合開始剤を含有しないシードは、例えば、次のような乳化重合法で調整される。塩化ビニル単独又は塩化ビニルを主体としこれと共重合し得る共単量体との混合物、純水、界面活性剤、水溶性重合開始剤などを仕込み、重合器内の脱気あるいは必要に応じて窒素などの不活性気体による置換を行い、塩化ビニル単独又は塩化ビニルを主体としこれと共重合し得る共単量体との混合物を仕込み、撹拌して単量体を可溶化した乳化剤ミセル層を形成しつつ、重合器内の温度を上げて重合を進める。反応速度や粒子径の制御のために、乳化剤、開始剤、還元剤などを重合反応中に添加することもできる。重合温度は40〜70℃の範囲が好ましい。使用する界面活性剤としては、前記のミクロ懸濁重合法で使用したものと同様のものをあげることができる。また、使用する水溶性重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などの水溶性過酸化物、これらの過酸化物又はクメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシドなどのヒドロパーオキシドに、酸性亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、アスコルビン酸、第1鉄イオンのエチレンジアミン四酢酸ナトリウム錯塩、ピロリン酸第1鉄などの還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩などの水溶性アゾ化合物などをあげることができる。
【0043】
本発明のペースト塩ビは、可塑剤及び所望により用いられる各種添加剤、例えば、充填剤、その他配合剤を配合することにより、ペースト塩ビ組成物を調製するものである。この場合、ペースト塩ビ組成物の粘度が低く、粘度の経時安定性が良く、さらに良好な加工特性が得られるために、ペースト塩ビ100重量部、可塑剤30〜300重量部、充填剤300重量部以下、安定剤1〜5重量部、顔料3〜30重量部、発泡剤20重量部以下、減粘剤1〜10重量部からなることが好ましい。
【0044】
ペースト塩ビ組成物の調製に用いる可塑剤には、特に制限がなく、従来塩化ビニル系樹脂組成物の可塑剤として通常使用されているものを使用することができる。このような、可塑剤の具体例としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジベンジルフタレートなどのフタル酸エステル系可塑剤;ジメチルイソフタレート、ジ−2−エチルヘキシルイソフタレート、ジイソオクチルイソフタレートなどのイソフタル酸エステル系可塑剤;ジ−2−エチルヘキシルテトラヒドロフタレート、ジ−n−オクチルテトラヒドロフタレート、ジイソデシルテトラヒドロフタレートなどのテトラヒドロフタル酸エステル系可塑剤;ジ−n−ブチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペートなどのアジピン酸エステル系可塑剤;ジ−n−ヘキシルアゼレート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、ジイソオクチルアゼレートなどのアゼライン酸エステル系可塑剤;ジ−n−ブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケートなどのセバシン酸エステル系可塑剤;ジ−n−ブチルマレエート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジ−2−エチルヘキシルマレエートなどのマレイン酸エステル系可塑剤;ジ−n−ブチルフマレート、ジ−2−エチルヘキシルフマレートなどのフマル酸エステル系可塑剤;トリ−n−ヘキシルトリメリテート、トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート、トリ−n−オクチルトリメリテート、トリイソオクチルトリメリテート、トリイソノニルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテートなどのトリメリット酸エステル系可塑剤;テトラ−2−エチルヘキシルピロメリテート、テトラ−n−オクチルピロメリテートなどのピロメリット酸エステル系可塑剤;トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−2−エチルヘキシルシトレートなどのクエン酸エステル系可塑剤;モノメチルイタコネート、モノブチルイタコネート、ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジブチルイタコネート、ジ−2−エチルヘキシルイタコネートなどのイタコン酸エステル系可塑剤;ブチルオレエート、グリセリルモノオレエート、ジエチレングリコールモノオレエートなどのオレイン酸エステル系可塑剤;メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、グリセリルモノリシノレート、ジエチレングリコールモノリシノレートなどのリシノール酸エステル系可塑剤;n−ブチルステアレート、グリセリンモノステアレート、ジエチレングリコールジステアレートなどのステアリン酸エステル系可塑剤;ジエチレングリコールモノラウレート、ジエチレングリコールジペラルゴネート、ペンタエリスリトールの各種脂肪酸エステルなどのその他の脂肪酸エステル系可塑剤;トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェートなどのリン酸エステル系可塑剤;ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、ジブチルメチレンビスチオグリコレートなどのグリコール系可塑剤;グリセロールモノアセテート、グリセロールトリアセテート、グリセロールトリブチレートなどのグリセリン系可塑剤;エポキシ化大豆油、エポキシブチルステアレート、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソデシル、エポキシトリグリセライド、エポキシ化オレイン酸オクチル、エポキシ化オレイン酸デシルなどのエポキシ系可塑剤;アジピン酸系ポリエステル、セバシン酸系ポリエステル、フタル酸系ポリエステルなどのポリエステル系可塑剤、あるいは部分水添ターフェニル、接着性可塑剤、さらにはジアリルフタレート、アクリル系モノマーやオリゴマーなどの重合性可塑剤などを挙げることができる。ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤、トリオクチルトリメリテート、ジオクチルアジペート、エポキシ化大豆油、エポキシ化脂肪酸エステル、塩素化脂肪酸エステル、リン酸トリス−β−クロルエチル、塩素化パラフィン等の可塑剤が挙げられ、これらの可塑剤は2種以上を混合して用いることもできる。
【0045】
ペースト塩ビ組成物の調製に用いる充填剤には、特に制限がなく、従来塩化ビニル系樹脂組成物の充填剤として通常使用されているものを使用することができる。このような、充填剤の具体例としては、炭酸カルシウム、ケイソウ土、炭酸マグネシウム、酸化チタン等が挙げられる。
ペースト塩ビ組成物の調製に用いる安定剤には、特に制限がなく、従来塩化ビニル系樹脂組成物の安定剤として通常使用されているものを使用することができる。このような、安定剤の具体例としては、エポキシ系安定剤、バリウム系安定剤、カルシウム系安定剤、スズ系安定剤、亜鉛系安定剤等が挙げられ、これらは1種類以上を併用することもできる。また、市販のカルシウム−亜鉛系(Ca−Zn系)、バリウム−亜鉛系(Ba−Zn系)等の複合安定剤を使用することもできる。
【0046】
ペースト塩ビ組成物の調製に用いる顔料には、特に制限がなく、従来塩化ビニル系樹脂組成物の顔料として通常使用されているものを使用することができる。このような、顔料の具体例としては、酸化チタン等が挙げられる。
【0047】
ペースト塩ビ組成物の調製に用いる発泡剤には、特に制限がなく、従来塩化ビニル系樹脂組成物の発泡剤として慣用されているものを使用することができる。このような、発泡剤の具体例としては、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アミド化合物、ホウ水素化ナトリウム等の無機系発泡剤、イソシアネート化合物、アゾジカーボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、バリウムアゾジカルボキシレートらのアゾ化合物、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジドらのヒドラジン誘導体、セミカルバジド化合物、アジ化合物、ジニトロソペンタメチレンテトラミンらのニトロソ化合物、トリアゾール化合物等の有機系発泡剤が挙げられ、これらの各種発泡剤を2種以上組み合わて使用することもできる。また、必要に応じて上記発泡体と亜鉛華(酸化亜鉛)等の分解促進剤を併用することも可能である。
【0048】
ペースト塩ビ組成物の調製に用いる減粘剤は、ノニオン系界面活性剤など沸点が200℃以上の有機物であればいずれでも用いることができる。
【0049】
本発明のペースト塩ビを用いて調製されたペースト塩ビ組成物は、粘度が低く、粘度の経時安定性に優れることから成型加工性に優れたものであり、更には、該ペースト塩ビ組成物を発泡した際、発泡体表面の平滑性および発泡セル構造が良好で、また、発泡体を作製した後、再度加熱した時の厚み減少率が小さいことから、特に壁紙用途に適したものである。
【発明の効果】
【0050】
本発明により得られたペースト塩ビは、加工する際にペースト塩ビ組成物を調製した際に、粘度が低く、かつ該組成物を裏打ち紙上に塗布し、加熱発泡したとき、良好な発泡体が得られるためその工業的価値はきわめて高いものであり、特に壁紙用途に優れたものである。
【実施例】
【0051】
以下に、実施例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、それらの内容は本発明の範囲を特に制限するものではない。
【0052】
なお、実施例において、測定及び評価は下記の方法により行った。
(1)塩化ビニル系樹脂ラテックスの平均粒子径および粒子径分布の測定
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製、商品名LA−700)を使用し、2回測定を行い、その平均値を平均粒子径として測定した。
(2)A成分とB成分の粒子径比
(1)で測定した粒子径分布からA成分とB成分の極大値を与える粒子径を読み取り次式にて算出した。
【0053】
A成分とB成分の粒子径比=B成分の極大値を与える粒子径/A成分の極大値を与える粒子径
(3)B粘
ペースト塩ビ100重量部に対し、ジイソノニルフタレート((株)ジェイプラス製)50重量部、炭酸カルシウム(白石カルシウム(株)製、ホワイトンH)60重量部、Ba−Zn系安定剤(共同薬品(株)製、KF−705Z)3重量部、顔料(堺化学(株)製、R650)15重量部、化学発泡剤(大塚化学(株)製、AZウルトラ1050)3重量部、減粘剤(ビックケミー(株)製、BYKLPR−20386)3重量部をT.K.ホモディスパー(特殊機化工業製:ディゾルバー式ミキサー)を用い、25℃、2000rpmで2分間混練し、ペースト塩ビゾルを調製した。該ゾルを25℃で2時間放置した後、B8H型粘度計(ローターNo.5、20rpm、東京計器製)用い、測定した。
(4)S粘
(3)のゾル流出量測定の項で記載したのと同様の方法でペースト塩ビゾルを調製し、Severs粘度計[BURRELL−SEVERS EXTRUSION RHEOMETER MODEL A−120(BURRELL社製,オリフィス径2mm)]、を使用し、圧力0.414M・Paにおいて測定を行なった。
(5)粘度経時安定性
(3)のゾル流出量測定の項で記載したのと同様の方法でペースト塩ビゾルを調製し、東京計器製B8H型粘度計(ローターNo.5、20rpm)を用い測定し、下記式によって粘度経時安定性を求めた。
【0054】
粘度経時安定性=η24H/η2H
(η24H:得られたプラスチゾルを25℃、24H放置後測定した粘度、η2H:得られたプラスチゾルを25℃、2H放置後測定した粘度)。
(6)発泡表面平滑性
(3)のゾル流出量測定の項で記載したのと同様の方法でゾルを調製し、該ゾルを一般紙上に0.15mmの厚みでコーティングし、190℃に加熱されたオーブンで8秒間加熱することにより半ゲル状のシートを作製した。このシートを室温まで冷却した後、230℃に加熱したオーブン中で40秒加熱することにより発泡し、得られた発泡体の表面平滑性を観察することにより評価した。
発泡表面平滑性の評価基準を以下に示す。
【0055】
○:表面が平滑 ×:表面が粗い
(7)厚み減少率
発泡表面平滑性の評価と同様の方法で発泡体を作製し、得られた発泡体を室温まで冷却後、230℃に加熱したオーブン中で10秒加熱することにより、加熱前後の厚みを測定し次式により算出した。厚み減少率が少ないほど良好な発泡体であることの指標とした。
厚み減少率(%)=(加熱前の発泡体厚み(mm)−加熱後の発泡体厚み(mm))/加熱前の発泡体厚み(mm)×100
合成例1(開始剤等含有シードの製造例)
1mオートクレーブ中に脱イオン水360kg、塩化ビニル単量体300kg、過酸化ラウロイル6kg及び15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液30kg、ドデシルメルカプタン1.5kgを仕込み、該重合液をホモジナイザーを用いて2時間循環し、均質化処理後、温度を45℃に上げて重合を進めた。圧力が低下した後、未反応の塩化ビニル単量体を回収した。得られた開始剤等含有シードラテックス(以下、シード1と略記する)の平均粒子径は0.60μmであった。
【0056】
合成例2(単量体可溶重合開始剤を含有しないシードの製造例)
1mオートクレーブ中に脱イオン水400kg、塩化ビニル単量体350kg、16重量%ラウリン酸カリウム水溶液2kg及び16重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液5kgを仕込み、温度を54℃に上げて重合を進めた。そして、圧力が低下した後、未反応塩化ビニル単量体を回収した。得られた単量体可溶重合開始剤を含有しないシードラテックス(以下、シード2と略記する)は、平均粒子径0.15μmであった。
【0057】
製造例1
1mオートクレーブ中に脱イオン水350kg、塩化ビニル単量体400kg、20重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2kg、シード1を塩化ビニル単量体に対して3重量%、シード2を塩化ビニル単量体に対して7.5重量%、仕込み、この反応混合物の温度を61℃に上げて重合を開始した。重合開始してから重合終了までの間、塩化ビニル単量体に対してドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム/アクアロンHS10(第一工業製薬(株)製)=9/1の割合で混合した界面活性剤0.7重量部(一般式[I]で示される界面活性剤の量:
0.07重量部)を重合開始してから終了までの間、連続的に添加した。重合圧が61℃における塩化ビニル単量体の飽和蒸気圧から0.6MPa降下した時に重合を停止し、未反応の塩化ビニル単量体を回収し、塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。得られたラテックスは、前記方法において粒子径分布を測定した。得られたラテックスの粒子径分布と平均粒子径を表1に記載した。
【0058】
【表1】

製造例2
シード1を塩化ビニル単量体に対して2重量%とした以外は製造例1と同様の方法で、塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。得られたラテックスは、前記方法において粒子径分布を測定した。得られたラテックスの粒子径分布と平均粒子径を表1に記載した。
【0059】
製造例3
シード1を塩化ビニル単量体に対して4.5重量%、重合開始してから終了までの間に連続的に添加する界面活性剤がドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのみとし、シード2を仕込まなかった以外は製造例1と同様の方法で、塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。得られたラテックスは、前記方法において粒子径分布を測定した。得られたラテックスの粒子径分布と平均粒子径を表1に記載した。
【0060】
製造例4
1mオートクレーブ中に脱イオン水400kg、塩化ビニル単量体300kg、20重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5kg、シード2を塩化ビニル単量体に対して2重量%仕込み、この反応混合物の温度を62℃に上げて重合を開始した。重合開始してから重合終了までの間、塩化ビニル単量体に対してドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.7重量部を重合開始してから終了までの間、連続的に添加した。重合圧が62℃における塩化ビニル単量体の飽和蒸気圧から0.6MPa降下した時に重合を停止し、未反応の塩化ビニル単量体を回収し、塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。得られたラテックスは、前記方法において粒子径分布を測定した。得られたラテックスの粒子径分布と平均粒子径を表1に記載した。
【0061】
製造例5
1mオートクレーブ中に脱イオン水500kg、塩化ビニル単量体300kg、重合度600、ケン化度91.0〜94.0のポリビニルアルコール(日本合成化学製 AL−06)8.4kg、過酸化ラウロイル240gを仕込み、循環式ホモジナイザーで150分間均質化した後、この反応混合物の温度を66℃に上げて重合を開始した。重合圧が62℃における塩化ビニル単量体の飽和蒸気圧から0.6MPa降下した時に重合を停止し、未反応の塩化ビニル単量体を回収し、塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。得られたラテックスを遠心分離機により分離し、分離された塩化ビニル樹脂を脱イオン水中に分散した。得られた分散液の粒子径分布をを前記方法において測定した。得られたラテックスの粒子径分布と平均粒子径を表1に示す。
【0062】
実施例1
製造例1で得られたラテックス、製造例5で得られたラテックスをその固形分が80:20となるように混合し、入り口温度160℃、出口温度55℃の条件で噴霧乾燥後、粉砕することによりペースト塩ビを得た。得られたペースト塩ビを用いペースト塩ビゾルを作製し、粘度及び発泡性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0063】
【表2】

実施例2〜7
製造例1〜5で得られたラテックスを表2に記載の比率で混合し、実施例1と同様の方法でペースト塩ビを得た。得られたペースト塩ビを用いペースト塩ビゾルを作製し、粘度及び発泡性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0064】
実施例8
実施例7と同様の比率でラテックスを混合し、入り口温度120℃、出口温度50℃の条件で噴霧乾燥し、粉砕することなしにペースト塩ビを得た。得られたペースト塩ビを用いペースト塩ビゾルを作製し、粘度及び発泡性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0065】
比較例1〜7
製造例1〜5で得られたラテックスを表3に記載の比率で混合し、実施例1と同様の方法でペースト塩ビを得た。得られたペースト塩ビを用いペースト塩ビゾルを作製し、粘度及び発泡性の評価を行った。結果を表3に示す。
【0066】
【表3】

比較例8
製造例4と製造例5で得られたラテックスを表3に記載の比率で混合し、実施例1と同様の方法でペースト塩ビ(粒子径が0.05〜30μmの範囲に連続的に分布するものでないもの)を得た。得られたペースト塩ビを用いペースト塩ビゾルの作製を試みたが、ペースト塩ビゾルは得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径が0.05〜30μmの範囲に連続的に分布し、0.45μm未満の粒子(A成分)、0.45μm以上4.5μm未満の粒子(B成分)、4.5μm以上の粒子(C成分)の粒子径分布が、A成分:10〜40重量%、A成分とB成分の和とC成分の重量比[((A)+(B))/(C)]:95/5〜65/35であって、B成分の極大値を与える粒子径がA成分の極大値を与える粒子径の6〜20倍であり、かつ、下記一般式[I]で示される界面活性剤を含有することを特徴とするペースト加工用塩化ビニル系樹脂。
【化1】

[式中、Rは、炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を表し、Rは、水素又は炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基若しくはアラルキル基を表し、Rは、水素又はプロペニル基を表し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、nは1〜200の整数を表し、Mは、アルカリ金属、アンモニウムイオン又はアルカノールアミン残基を表す。]
【請求項2】
一般式[I]で示される界面活性剤の含有量が0.01〜1重量%であることを特徴とする請求項1記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いて得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物について、B8H型粘度計、No.5ローターを使用して、20rpmで測定したときの粘度が8000mPa・s以下であり、かつ、Severs粘度計を使用して、オリフィス径2mm、圧力0.414M・Paで測定したときの粘度が11500mPa・s以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂。
【請求項4】
塩化ビニル単量体単独又は塩化ビニルを主体とする単量体混合物を下記一般式[I]で示される界面活性剤を使用して重合して得られた1〜2個の極大値を有する塩化ビニル系樹脂ラテックス(A)と、塩化ビニル単量体単独又は塩化ビニルを主体とする単量体混合物を重合して得られた平均粒子径が4.0μm以上の塩化ビニル系樹脂ラテックスとを、塩化ビニル系樹脂ラテックス(A)がそれ以外の塩化ビニル系樹脂ラテックスより多くなるように混合し、得られた塩化ビニル系樹脂ラテックスを乾燥することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの項記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法。
【化2】

[式中、Rは、炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を表し、Rは、水素又は炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基若しくはアラルキル基を表し、Rは、水素又はプロペニル基を表し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を表し、nは1〜200の整数を表し、Mは、アルカリ金属、アンモニウムイオン又はアルカノールアミン残基を表す。]
【請求項5】
塩化ビニル単量体単独又は塩化ビニルを主体とする単量体混合物を重合して得られた平均粒子径が0.05〜0.50μmである塩化ビニル系樹脂ラテックスをさらに混合することを特徴とする請求項4記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法。
【請求項6】
高級脂肪酸又はポリグリセリン高級脂肪酸エステルを粘度調整剤として、塩化ビニル系樹脂に対し、0.01〜5重量部添加することを特徴とする請求項4又は請求項5記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法。
【請求項7】
高級脂肪酸が縮合リシノレイン酸であることを特徴とする請求項6記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜請求項3のいずれかの項記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、可塑剤30〜300重量部、充填剤300重量部以下、安定剤1〜5重量部、顔料3〜30重量部、発泡剤20重量部以下、減粘剤1〜10重量部よりなることを特徴とするペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂組成物からなることを特徴とする壁紙。

【公開番号】特開2006−96947(P2006−96947A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−287478(P2004−287478)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】