説明

ペースト注出器

【課題】 先端においてペースト注出口がノズル状に突出するシリンダ部材を備えたシリンジ型のペースト注出器において、プランジャ部材の押圧を停止した後のペーストの切れが良く、ノズル状のペースト注出口内には気泡が進入せず、しかも、シリンダ部材内部に充填されるペーストの封鎖性も良いものを開発することを目的とする。
【解決手段】 プランジャ部材の先端近傍の周には凹溝が形成されており、該凹溝には、外周縁がシリンダ部材の内周壁と当接し、且つ後壁面に複数の小突起が周設された弾性のシール用Oリングが外嵌されてなる前記シリンジ型のペースト注出器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト注出器、詳しくは歯牙修復材ペースト等の低粘度のペーストを充填するのに好適なペースト注出器に関する。
【背景技術】
【0002】
齲蝕された歯牙の治療は、齲蝕部を削り取った後、形成された修復部位に、歯牙修復材ペーストを充填し、これを口腔内に光照射して光重合することにより、或いはそのまま化学重合により硬化させることで行われる。
【0003】
このような歯科修復に使用されるペースト等(以下、単にペーストともいう)の充填具としては、少量のペーストを定量的に注出させる必要があることから、先端においてペースト注出口がノズル状に突出するシリンダ部材、および該シリンダ部材の後端開口部から挿嵌されるプランジャ部材とからなるシリンジ型のペースト注出器が使用されている。かかるシリンジ型のペースト注出器では、プランジャ部材の先端近傍の周には凹溝が形成されており、該凹溝には、外周縁がシリンダ部材の内周壁と当接する弾性のシール用Oリングが外嵌されているため、該プランジャ部材を、シリンダ部材の先端方向に所望程度に押すことにより、そのシリンダ部材の中空部内の内圧を高めることができ、該ペーストを、修復に必要な量だけペースト注出口から押し出すことができる。
【0004】
しかしながら、このようなペースト注出器を用いての歯牙修復材ペーストの注出では、必要量を注出した後のペースト注出口でのペーストの切れを良くすることが課題であった。すなわち、こうしたペーストの注出では、プランジャ部材への押圧を停止した後においても、シリンダ内部に充填されるペーストにはかなりの圧が残り、前記したようにペーストの注出口はノズル状(小口径)であるため、この残圧により該注出口からペーストが漏れ出すことがあった。このペーストの漏れ出しは、ペーストの注出量の定量性を損なう他、必要外の箇所で落滴して周囲を汚す原因にもなり改善が望まれていた。
【0005】
こうしたことから、ペースト注出器では、プランジャ部材の押圧を停止した後のペーストの切れをよくするため、プランジャ部材の先端近傍の周に形成されるシール用Oリングの外嵌用の凹溝の幅を、該シール用Oリングの無負荷状態での厚み幅の1.5〜2.5倍に広くすることが提案されている(特許文献1参照)。すなわち、このように溝幅が広く遊びのある構造とすれば、ペーストを注出させるためにプランジャ部材を押した際には、ペーストの内圧の高まりにより、シール用Oリングは該凹溝内を、シリンダ部材の開口端側に向かって移動する。そして、この時、該シール用Oリングの外周縁近傍は凹溝の上端よりも高く位置しているので、この部分はシリンダ部材の開口端側に向かって弾性変形して撓る。しかして、ペーストの注出を終え、プランジャ部材の押圧を停止すると、上記外周縁が開口端側に向かって撓っていたシール用Oリングには、撓りを初期の状態に戻そうとする復元力が働き、その結果、プランジャ部材は若干量開口端側に押し戻される。このプランジャ部材の押し戻しの力は、ペースト注出口ではペーストをシリンダ部材の内部に引き込む力となって作用するので、上記構造のペースト注出器では、ペーストの注出停止後において、ペースト注出口からのペーストの漏れ出しが良好に抑制できる。
【0006】
【特許文献1】特開2001−57987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記構造のペースト注出器では、前記プランジャ部材の凹溝内におけるシール用Oリングの撓りの程度が今一歩安定せず、プランジャ部材のシリンダ部材への押し込みの最中に大きくよれて、その外周縁がシリンダ部材の内周壁と十分に当接しない箇所が生じることがあった。このようにして、シール用Oリングの外周縁がシリンダ部材の内周壁と十分に当接していないと、シリンダ部材内部に充填されるペーストの封鎖が十分に行えなくなり、該ペーストはシリンダ部材の後端開口部側に流出する。
【0008】
また、上記ペースト注出器では、凹溝の深さ全体をつかってシール用Oリングの外周縁が撓るため、撓りの程度が大きくなりすぎ、ペースト注出口におけるペーストをシリンダ部材の内部に引き込む力が過剰に働くことがあった。この場合、ノズル状のペースト注出口内に空気の気泡が進入してしまい、再度のペーストの注出の際、その定量性が低下したり、気泡が吐出するときにペーストの飛沫が周囲に飛び散る危険性が生じる。
【0009】
しかして、このような現象は、特に、前記シール用Oリングの撓りを大きくするため、プランジャ部材の先端近傍の周に形成する凹溝を深くしたり、該凹溝の幅をシールリングの全体の厚みに対して広くするとより発生する傾向があった。
【0010】
以上の背景にあって本発明は、上記ペースト注出器において、プランジャ部材の押圧を停止した後のペーストの切れが良く、ノズル状のペースト注出口内には気泡が進入せず、しかも、シリンダ部材内部に充填されるペーストの封鎖性も良いものを開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意検討を行った。その結果、シール用Oリングの後壁面に、突部を周設することにより上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、先端においてペースト注出口がノズル状に突出するシリンダ部材と該シリンダ部材の後端開口部から挿嵌されるプランジャ部材とからなるペースト注出器であって、該プランジャ部材の先端近傍の周には凹溝が形成されており、該凹溝には、外周縁がシリンダ部材の内周壁と当接し、且つ、後壁面に、該後壁面の中央付近に最高部を有する突部が周設された弾性のシール用Oリングが外嵌されてなることを特徴とするペースト注出器である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の本発明のペースト注出器によれば、プランジャ部材の押圧を停止した後のペーストの切れが良く、上記状態において、ノズル状のペースト注出口からのペーストの漏れが防止される。
【0014】
また、該ペースト注出口内に気泡が進入することも抑制され、再度のペーストの注出の際、ペーストの定量性が低下したり、気泡が吐出するときにペーストの飛沫が周囲に飛び散る危険性も少ない。さらに、シール用Oリングによる、シリンダ部材内部に充填されるペーストの封鎖性も良く、該ペーストがシリンダ部材の後端開口部側に流出することもない。
【0015】
したがって、本発明のペースト注出器は低粘度のペーストの注出器として有用であり、特に、上記粘度の歯牙修復材ペーストの注出器として最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明のペースト注出器を、その代表的態様の断面図を示す図1、該ペースト注出器におけるシリンダ部材(1)の断面図を示す図2、および該ペースト抽出器におけるプランジャ部材(4)の断面図を示す図3により説明する。
【0017】
シリンダ部材(1)は、内部は中空であり、先端にはペースト注出口(2)がノズル状に突出している。また、後端開口部(3)からはプランジャ部材(4)が中空部(8)に挿嵌されている。ここで、シリンダ部材(1)の中空部(8)の内口径は3〜20mmであるのが一般的であり、その先端近くは、ペーストが定量的に注出できるように、断面(5)を経て縮径されているのが好ましい。すなわち、シリンダ部材の先端近くは、細い円柱筒状、或いはゆるやかなテーパーを有する細い円錐形状をしているのが好ましい。なお、断面(5)は、シリンダ部材の軸方向に対して直角に形成されていても良いが、充填されるペーストが流動し易いようにテーパー状であるのが好ましい。
【0018】
シリンダ部材(1)の後端開口部(3)の外周壁には、操作者が該シリンダ部材を保持する際に指(通常は、人差し指と中指)を引掛ける係指部(6)が、シリンダ部材の径外方向に張り出しているのが好ましい。
【0019】
上記シリンダ部材(1)において、ノズル状のペースト注出口(2)の内口径は0.1〜2.0mm、より好適には0.3〜1.5mmの場合において本発明の効果が良好に発揮され易く好ましい。ペースト注出口(2)の長さは1〜30mmが一般的であり、この長さにおいてノズル状の該注出口は途中で屈曲させてあってもよい。なお、こうしたノズル状のペースト注出口(2)を備えたシリンダ部材(1)の先端近傍部分は、チップ状の別部材として、シリンダ部材の本体部に装着して使用する構造としても良い。図2に示される図1のペースト注出器はこうした構造であり、図2に示されるシリンダ部材(1)は、かかるノズル状のペースト注出口(2)を備えた先端チップが外された状態での本体部の断面図である。
【0020】
一方、プランジャ部材(4)は、前記したシリンダ部材(1)の中空部(8)の内面形状と一致するような形態で形成される。その直径は、シリンダ部材(1)の口径よりも若干小さくされる。プランジャ部材(4)の後端面には、該プランジャ部材をシリンダ部材(1)の中空部(8)内に押し込み易いように、親指平の係指部(7)が、プランジャ部材の径外方向に張り出しているのが好ましい。
【0021】
このような基本構造のペースト注出器において、そのシリンダ部材(1)の中空部(8)には、ペーストが充填されている。そして、プランジャ部材(4)の先端近傍の周には凹溝(9)が形成されている。この凹溝(9)には、直径がシリンダ部材(1)の口径と同一か極僅かに上回る大きさであり、プランジャ部材(4)を該シリンダ部材(1)に挿嵌すると外周縁がシリンダ部材(1)の内周壁に当接する形態の弾性のシール用Oリング(10)が外嵌されている。したがって、かかるペースト注出器では、中空部(8)のプランジャ部材(4)より先端側の空間は、該シール用Oリング(10)により、その後方のシリンダ部材(1)とプランジャ部材(4)との間隙から封鎖されており、この空間に充填されるペーストは、プランジャ部材(4)の後端開口部(3)側への流出が防止されている。このためペースト注出器の操作者が、シリンダ部材(1)とプランジャ部材(4)の各係止部(6,7)に指を掛けて、該プランジャ部材(4)を、シリンダ部材(1)の先端方向に所望程度に押すと、その中空部(8)に充填されるペーストの内圧が高まり、それに応じて、必要量のペーストをペースト注出口(2)から押し出すことができる。
【0022】
本発明の最大の特徴は、こうしたペースト注出器において、シール用Oリング(10)の後壁面に、該後壁面の中央付近に最高部を有する突部(11)を周設した点にある。しかして、このような構造のシール用Oリングを装着したペースト注出器では、図4のシール用Oリング(10)近傍の拡大図に示すように、プランジャ部材(4)をシリンダ部材(1)の先端方向に押して、ペーストの内圧が高まった場合には、シール用Oリング(10)に対してシリンダ部材(1)の後端開口部(3)側へ押し返す力が働き、前記突部(11)は凹溝(9)の後側壁面(12)に圧接される。これは、たとえプランジャ部材(4)の凹溝(9)がシール用Oリング(10)の全体厚みよりも広い幅で設けられており、プランジャ部材(4)を押す前において、シール用Oリング(10)の後壁面が凹溝(9)の後側壁面(12)に接触していない場合でも、該凹溝(9)の底壁面の深さが後側壁面(12)に向かって大きく狭まっているようなことがなく、実質的に均一であれば、ペーストの内圧の高まりにより該シール用Oリング(10)はシリンダ部材(1)の後端開口部(3)側へ押されて移動し、上記と同様の状態に至る。
【0023】
このようにして、シール用Oリング(10)の後壁面に、該後壁面の中央付近に最高部を有する態様で形成した突部(11)が、凹溝(9)の後側壁面に圧接されると、該シール用Oリング(10)は、上記後壁面の中央付近で、該突部(11)により部分的に支持された状態になる。したがって、ペーストの内圧のさらなる高まりにより、該シール用Oリング(10)の外周縁がシリンダ部材(1)の後端開口部(3)側へ撓っても、その撓りの程度は適度になる。これにより、プランジャ部材(4)の押圧を停止した際には、図4に示す機構で生じる、この撓りの復元力も適度になり、ペースト注出口(2)においてペーストがシリンダ部材(1)の内部に過剰に引き込まれて、空気が進入することが抑制される。
【0024】
同様に、シール用Oリング(10)は、外周縁が、シリンダ部材(1)の内周壁と十分に当接しなくなるような大きなよれも発生し難くなる。その結果、上記ペースト注出器では、ペーストの後端開口部(3)側への流出も発生しなくなる。
【0025】
本発明において、上記効果を良好に発揮させるためには、プランジャ部材(4)の凹溝(9)の幅は、シール用Oリング(10)の無負荷状態における全体の厚み(全壁面から突部の最高部までの厚み)に対して0.8〜1.5倍、好ましくは0.9〜1.3倍の長さであるのが好ましい。この凹溝(9)の幅が、シール用Oリング(10)の全体の厚みに対して1.5倍よりも大きくなると、プランジャ部材(4)を押した際に、シール用Oリング(10)がシリンダ部材(1)の後端開口部(3)側へ押されて移動する距離が大きくなりすぎ、小突起(11)が凹溝(9)の後側壁面に十分に接触しなくなる危険性がある。
【0026】
他方、凹溝(9)の深さは、シリンダ部材(1)の内口径の15〜30%の長さとするのが、シール用Oリング(10)の外周縁の撓りを適度なものとする観点から好ましい。
【0027】
また、シール用Oリング(10)の前壁面から後壁面までの厚みは、シリンダ部材(1)の口径にも左右され一概には決定できないが、通常、0.5〜1.5mmが適当である。
【0028】
本発明において、前記作用を有する突部(11)は、シール用Oリング(10)の後壁面において、周方向に、突条として設けても良く、また、複数の小突起として設けても良い。突条として設ける場合、後壁面の全周に完全な円環として設けると、外周縁の撓りの程度がやや弱くなるおそれもあるので、適当な間断部を設けて調整するのが好ましい。外周縁の適度な撓りという観点からは、複数の小突起(11)として、所望の撓りの程度に形成数を調整して設けるのが好ましい。
【0029】
突部(11)を小突起(11)として設ける場合において、その形状は、特に制限されるものではなく、図5のように、外周が円状のであるのが一般的であるが、楕円状や多角形状等であっても良い。その隆起の裾野がシール用Oリング(10)の外周縁にまで達しているものは、外周縁が撓った後の復元力が強くなり好ましい態様である。こうした態様としては、例えば、図6に示すような、外周が、シール用Oリング(10)の径方向に沿った縦長の楕円形状であるものや、図7に示すような、同じく外周が、頂部を内側に向けた扇形状のものが考えられる。隆起の先端は平たんでも良いが、上方に弧を描いて隆起しているのが好ましい。なお、このような形状の2個以上の小突起(11)同士が隆起の途中で連結して複数の最高部を有する形態で一つの小突起を形成していても良い。
【0030】
こうした形状の小突起(11)は、少なくとも3個、より好適には6〜10個を、シール用Oリング(10)の後壁面に周設するのが好ましい。各小突起(11)のシール用Oリング(10)の径方向における長さは、該シール用Oリング(10)の環幅の30〜100%の長さであるのが好適である。効果の均質性から、各小突起は実質的に等間隔を空けて形成させるのが良好である。これら複数の小突起は、それぞれ同一形状でも、2種以上の異なる形状であっても良い。
【0031】
本発明において、突部(11)は、その最高部が後壁面の中央付近に位置するように設ける必要がある。ここで、後壁面の中央付近とは、シール用Oリング(10)の後壁面において、その中央から外方向および内方向に、それぞれ環幅の30%以内、より好適には20%以内、特に好適には10%以内の範囲をいう。突部(11)の最高部が、上記位置にない場合、シール用Oリング(10)の撓りの効果が十分に発揮させることができず、ペーストの切れが悪くなる。
【0032】
また、効果の均質性からは、突部(11)の最高部は、シール用Oリング(10)の後壁面において実質的に同一円周上に位置するように形成するのが好ましい。
【0033】
突部(11)の高さは、該シール用Oリングの前壁面から後壁面までの厚みに対して40〜230%、より好適には80〜200%の長さであるのが、その外周縁の撓りを適度なものとする観点から好ましい。通常は、0.5〜1.5mmが好適である。また、突部(11)を複数の小突起として設ける場合、各小突起の最高部の高さは、実質的に同一の高さであるのが好ましい。
【0034】
以上の構造をした本発明のペースト注出器の材質は、特に制限されるものではなく、金属やガラス等であっても良いが、通常は、プラスチック、例えばポリプロピレン、ナイロン、テフロン(登録商標)等が採用される。なお、先端のノズル状のペースト注出口については、上記例示したようなプラスチック製であっても良いが、金属製であっても良い。また、シール用Oリングの材質は、シリコーン樹脂、フッ素系エラストマー等の合成樹脂からなる弾性材料が好ましい。また、これらの弾性材料は、一般にはショア硬度が100以下、より好適には40〜100のものが使用される。
【0035】
次に、本発明のペースト注出器に充填するペーストは、特に制限されるものではないが、ペースト注出口からのペーストの切れを良くする本発明の効果を顕著に発揮される観点からは、低粘度のものが好ましく、23℃で測定した粘度が10〜10,000ポイズ、より好適にはより好適には50〜5,000ポイズであることが好ましい。
【0036】
特に、本発明のペースト注出器に充填するペーストとしては、歯牙修復材ペーストであるのが好ましい。これら歯牙修復材ペーストの具体例としては、コンポジットレジンと呼ばれる欠損した歯牙の充填修復材料、歯髄保護のための裏層材料、および小窩裂溝封鎖に適した充填修復材料などが挙げられる。これらは、化学重合により硬化するタイプであっても良いし、光重合により硬化するタイプであっても良いが、後者の方がより好ましい。
【0037】
光硬化型の歯牙修復材ペーストは、一般にフィラー、重合性単量体、及び光重合開始剤を含んでなる。この場合、フィラーは特に限定されず、有機及び無機フィラーが何ら制限なく用いられる。具体的に例示すると、無機フィラーとしてホウケイ酸ガラス、重金属(例えばバリウム、ストロンチウム、ジルコニウム)を含むガラス、アルミノシリケートガラス、ガラスセラミックス、シリカやシリカ・ジルコニア、シリカ・チタニア、シリカ・アルミナ等の複合無機酸化物等が挙げられる。また、有機フィラーとしてアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの単独重合体又は共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステルポリアミド等が挙げられる。
【0038】
重合性単量体も特に限定的でなく、一般に歯科用モノマーとして使用される公知のラジカル重合性単量体が使用できる。好適に使用できる重合性単量体として、単官能及び多官能の(メタ)アクリレート系単量体があげられる。
【0039】
光重合開始剤は、紫外または可視光線照射によりラジカルを発生する公知の光重合開始剤が特に制限なく使用できる。具体的に例示すると、カンファーキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0040】
また、上記光重合開始剤に加えて、第三級アミン等を除触媒として添加したものであっても良い。
【0041】
実施例
以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
実施例1
図1に示された構造であり、さらに、シリンダ部材(1)が透明で内部の様子が観察可能なシリンジ型のペースト注出器を使用した。また、シリンジ型のペースト注出器に充填するペーストとしては、下記の条件
温度;23℃
測定装置;ボーリン社製CVO120型レオメーター
測定治具;φ20mm、角度0°のプレート
クリアランス;500μm
剪断速度;10秒−1
で測定した粘度が730ポイズである光硬化型の歯牙修復材ペーストを使用した。
【0043】
上記ペースト注出器において、シリンダ部材(1)は、中空部(8)の内口径が6.2mmであり、ペーストの充填容量が1mlであり、ノズル状のペースト注出口(2)の内口径が0.5mmであり、長さは10mmのものであった。また、プランジャ部材(4)の凹溝(9)は幅が1.8mm(シール用Oリングの無負荷状態における全体の厚みに対して1. 1倍の長さ)であり、深さが1.2mm(シリンダ部材(1)の内口径の19%の長さ)であった。さらに、シール用Oリング(10)は、直径が6.6mmであり、環幅が2.0mmであり、前壁面から後壁面までの厚みが0.7mmであった。小突起(11)の高さは、0.9mm(シール用Oリング(10)の前壁面から後壁面までの厚みに対して129%の長さ)であった。該小突起(11)の形成個数は8個であり、それぞれは、外周が真円で、先端は上方に弧を描いた形状であった。また、小突起(11)のそれぞれの最高部は、シール用Oリング(10)の後壁面において、環幅の中央をとおる円周上に位置していた。なお、該シール用Oリング(10)の材質は、弾性なシリコーン樹脂(ショア硬度80)であった。
【0044】
このペースト注出器に、前記ペーストを充填後、23℃の暗室内で、プランジャ部材(4)をシリンダ部材(1)の先端方向に押して、ペースト注出口(2)より0.07mlのペーストを抽出させ、プランジャ部材(4)の押圧を停止した。その後、ペースト注出器を、ペースト注出口(2)を上方に向け、台の上に置き60秒間静置したが、ペースト注出口(2)よりのペーストの漏れ出しは全くなかった。
【0045】
続いて、プランジャ部材(4)をシリンダ部材(1)の先端方向に再度押してペーストをペースト注出口(2)より注出させようとしたところ、ペーストはスムーズに排出された。
【0046】
また、これらの操作の後、ペースト注出器を明るい場所に持ち出し、透明なシリンダ部材(1)を透視して、該シリンダ部材(1)のシール用Oリング(10)より後端開口部(3)側の内壁面に、プランジャ部材(4)の押し込み時のペーストの後方への流出による付着はないか観察したが、そのような付着は全く認められなかった。
【0047】
比較例1
実施例1において、シール用Oリング(10)の後壁面に小突起(11)を形成しない以外は同様に実施して、、ペースト注出口(2)よりペーストを抽出させた。
【0048】
上記ペーストの注出後において、ペースト注出器を、ペースト注出口(2)を上方に向け、台の上に置き60秒間静置したが、ペースト注出口(2)よりのペーストの漏れ出しは認められなかった。
【0049】
しかしながら、プランジャ部材(4)をシリンダ部材(1)の先端方向に再度押してペーストをペースト注出口(2)より注出させようとしたところ、注出の最初にペースと共に気泡の突出が認められた。
【0050】
さらに、これらの操作の後、ペースト注出器を明るい場所に持ち出し、透明なシリンダ部材(1)を透視したところ、該シリンダ部材(1)のシール用Oリング(10)より後端開口部(3)側の内壁面に、かなりのペーストの付着が認められた。
【0051】
比較例2
比較例1において、プランジャ部材(4)の凹溝(9)の溝幅を、後壁面に小突起が形成されていない態様のシール用Oリング(10)の厚みと同一幅とする以外は同様に実施して、ペースト注出口(2)よりペーストを抽出させた。
【0052】
上記ペーストの注出後において、ペースト注出器を、ペースト注出口(2)を上方に向け、台の上に置き60秒間静置したところ、ペースト注出口(2)よりのペーストの漏れ出しが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、本発明のペースト注出器の代表的態様を示す断面図である。
【図2】図2は、図1のペースト注出器における、シリンダ部材の断面図である。
【図3】図3は、図1のペースト注出器における、プランジャ部材の断面図である。
【図4】図4は、図1のペースト注出器における、シール用Oリングの作用機構を示す同部材近傍の拡大図である。
【図5】図5は、本発明のペースト注出器で使用するシール用Oリングの代表的態様の、後壁面側を示す図である。
【図6】図6は、本発明のペースト注出器で使用するシール用Oリングの別の態様の、後壁面側を示す図である。
【図7】図7は、本発明のペースト注出器で使用するシール用Oリングの別の態様の、後壁面側を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1;シリンダ部材
2;ペースト注出口
3;後端開口部
4;プランジャ部材
5;断面
6;指を引掛ける係指部
7;親指平の係指部
8;中空部
9;凹溝
10;シール用Oリング
11;小突起
12;後側壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端においてペースト注出口がノズル状に突出するシリンダ部材と該シリンダ部材の後端開口部から挿嵌されるプランジャ部材とからなるペースト注出器であって、該プランジャ部材の先端近傍の周には凹溝が形成されており、該凹溝には、外周縁がシリンダ部材の内周壁と当接し、且つ、後壁面に、該後壁面の中央付近に最高部を有する突部が周設された弾性のシール用Oリングが外嵌されてなることを特徴とするペースト注出器。
【請求項2】
シール用Oリングの後壁面に形成された突部の高さが、シール用Oリングの前壁面から後壁面までの厚みに対して40〜230%の長さである請求項1に記載のペースト注出器。
【請求項3】
突部が、シール用Oリングの後壁面に複数の小突起として周設されてなる請求項1または請求項2に記載のペースト注出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−204628(P2006−204628A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21962(P2005−21962)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【出願人】(391003576)株式会社トクヤマデンタル (222)
【Fターム(参考)】