説明

ペースト状等食品容器の蓋体と、これを用いた容器

【課題】 ナイフ口を開口させた後における開封タブの廃棄の問題をなくし、更に当該開封タブが意図せず蓋体から切り離される事を無くしたペースト状容器の蓋体と、これを用いた容器を提供すること。
【解決手段】 バター、マーガリン、ピーナツバター、ジャム、マーマレードおよびスプレッドチーズを含むペースト状の食品を収容する容器の蓋体であって、脆弱に形成された部分を切り離して折り返すことによりナイフ口を出現させる開封タブを具備し、折り返した前記開封タブが接する領域には、当該折り返した開封タブを保持する為に、突起その他の係止手段が形成されている容器の蓋体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バター、マーガリン又はスプレッドチーズを含むペースト状食品、高粘度の液状食品、又は粒状や粉状の食品を収容する容器の蓋体、およびこれを用いた容器に関するものであり、バターナイフが貫通するナイフ口を出現させる開封タブを保持・固定可能にしたペースト状等食品用の容器の蓋体、およびこれを用いた容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、バター、マーガリン、ピーナツバター、ジャム、マーマレードおよびスプレッドチーズ等のペースト状の食品等は、プラスチック製の容器に充填して販売されている。そしてこの容器は、これらペースト状食品等が充填されて上方が広く開口した略箱型の容器本体と、この容器本体の開口部分を閉塞する蓋体とで構成されているのが一般的である。
【0003】
容器本体の開口部の縁部分は、バターナイフの柄を容器の内外に通す為の切り欠きが少なくとも1つ以上形成されており、蓋体には、この切り欠き部分に対向する部分を、フラップ状に折り曲げてナイフ口を出現させる開封タブが形成されている。
【0004】
このような構成において、蓋体の開封タブを折り返すことにより、容器の内外に貫通する開口が出現することになる。そして収容物であるペースト状の食品等を掬い取る為のバターナイフ等のナイフは、この開口を貫通させて柄の部分を容器の外側に突出させることにより、ナイフの先端側を容器内に存在させた状態で収容することができるようになっている。
【0005】
かかるナイフ口の構造について、従来では特許文献1(実開平02−99749号公報)及び特許文献2(特開平8−244812号公報)が提案されている。
【0006】
特許文献1では、バター、マーガリン等食品のワンウェイ容器は、流通段階においては密閉状態にあり、消費者の使用段階では、ナイフ、スプーン等を容器内に挿入したままの状態で蓋ができるようにしたものであり、蓋の一部に切取ミシン目線を形成し、消費者が使用する際に該切取ミシン目線を切り取って、ナイフ、スプーン等の挿入孔が形成されるようになっている事が記載されている。更に、このような従来のワンウェイ容器では、使用する際に切取ミシン目に沿って手でむしり取るか、又はハサミ等を使用して切取る等、手間がかかることから、流通段階では密閉状態が保たれ、使用段階においてはミシン目線等切取ることなくナイフを挿入した状態で蓋ができるワンウェイ容器を提供しようとするものである。そしてかかるワンウェイ容器として、合成樹脂により成形された容器本体と、被せ蓋とから成り、容器本体の上縁外周の適宜位置に夫々が上下に僅かに離れて位置する複数の係合突起を設け、蓋体の下縁内周に、上記複数の係合突起をのり越えて嵌合し且つ複数の突起間において係合し得る内向き突条を設け、容器本体の上縁外周の適宜位置に、蓋体の内向き突条が容器本体の複数の突条の全てをのり越えた閉塞状態で閉じられ、複数の突起間において係合している状態でナイフ挿入口となる切欠凹部を形成することが提案されている。
【0007】
また特許文献2では、薄肉部を破らずに蓋を開くことはできない不正開封防止容器を移送中や施蓋時などに薄肉部が破れることなく、かつ開蓋時には容易に開蓋できるようにし、更にナイフ口やスプーン口を開封と同時に形成する不正開封防止容器として、蓋体の側面壁は容器本体のフランジに達する高さに形成され、かつ容器本体のフランジを形成しない切欠部に介装される前記フランジ部と外形断面が同形状の開封タブを設けた蓋開封部内面に容器本体の係止手段と係合する係止手段を設けると共に薄肉部と開封タブとで蓋開封部を構成してなる不正開封防止容器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平02−99749号公報
【特許文献2】特開平8−244812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のとおり、従来からバターやマーガリンの容器として使用されている箱型で開閉自在な蓋体を具備する容器には、ナイフやスプーン等を通すナイフ口が形成されている。そしてこのナイフ口は、蓋体の側面の一部に切取ミシン目線や薄肉線等の脆弱部によって区画された開封タブを形成し、消費者が使用する際に該脆弱部を切り離すことにより開封タブを折り返し、ナイフ、スプーン等を挿入するナイフ口を出現させるように構成されている。
【0010】
そしてこの開封タブについては、前記特許文献1では切取ることが記載されているが、切取った開封タブは小さく、目立たないことから、これが容器内に混入してしまうと、これを取り出すのが困難である。また現在においては、切り取った開封タブの処理の問題を解消する為に、フラップ状に自由に折り返すことができる状態で使用されている。また、このように開封タブをフラップ状に揺動自在にしておくことで、仮にナイフやスプーン等を挿入しておかない場合には、当該ナイフ口をカバーすることができるものとなっている。
【0011】
しかしながら、一旦、切り離してフラップ状に揺動自在になってしまった開封タブでは、実質的にナイフ口を閉塞することが困難であり、むしろ使用の都度、揺動することによって、開封タブの蓋体との接続部分も脆弱化してしまい、仮に当該開封タブが蓋体から切り離されてしまった場合には、切り離された開封タブに気付くのが困難である。
【0012】
そこで本発明は、ナイフ口を開口させた後における開封タブの廃棄の問題をなくし、更に当該開封タブが意図せず蓋体から切り離される事を無くしたペースト状食品等の容器の蓋体と、これを用いた容器を提供することを第一の課題とする。
【0013】
また折り返した開封タブをフラップ状にして蓋体に存在させる場合、開封タブの折り返しに際して切り離した部分は、ギザギザになっている事も考えられる。そして、この場合においては、使用に際して、利用者の不注意などから手などを引っ掻いてしまうことも考えられる。
【0014】
そこで本発明では、このような自由に揺動する開封タブを固定すると共に、更に開封タブにおける切り離した部分を、利用者に接しない様にしまうことにより、より安全性を高めたペースト状食品等の容器の蓋体と、これを用いた容器を提供することを第二の課題とする
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題の少なくとも何れかを解決するため、本発明では折り返した開封タブを保持するように構成した蓋体を提供するものである。
【0016】
即ち、本発明では、バター、マーガリン、ピーナツバター、ジャム、マーマレードおよびスプレッドチーズを含むペースト状食品、高粘度の液状食品、又は粒状や粉状の食品を収容する容器の蓋体であって、脆弱に形成された部分を切り離して折り返すことによりナイフ口を出現させる開封タブを具備し、折り返した前記開封タブが接する領域には、当該折り返した開封タブを保持する係止手段が形成されている容器の蓋体を提供し、前記課題の少なくとも何れかを解決するものである。
【0017】
かかるペースト状等の食品を収容する容器(食品用容器)の蓋体は、多くの場合には合成樹脂材料を用いて形成されるが、これに限らず各種の材料を用いて形成することもできる。また当該蓋体は容器本体とは異なる材料で形成することもできる。
【0018】
また開封タブは、バターナイフやスプーンの柄の部分を貫通させる為のナイフ口を出現させる為の部分であり、これは蓋体の側面の一部を、ミシン目や薄肉部等として形成した脆弱部から切開することにより、フラップ状になる領域(開封タブとなる領域)として定義付けすることができる。その為、当該開封タブは少なくとも一部が蓋体とつながっている事が必要であり、線状又は点で蓋体とつながっていても良い。また、フラップ状の開封タブは、いかなる方向に揺動するものであっても良く、蓋体の上下方向に揺動する他、左右方向に揺動するように設けても良い。
【0019】
そしてこの開封タブをフラップ状にして折り返した領域には、この開封タブを保持する係止手段を設ける。かかる係止手段は、折り返した開封タブを保持するような突起や溝等の構造部分として形成したり、あるいは粘着乃至は接着シートといった材料により保持するように形成することもできる。
【0020】
以上の様に構成したペースト状等の食品用の蓋体では、ナイフ口(バターナイフに限らず、スプーンの柄等を通す為の開口も含む。以下同じ。)を開口させる為に折り返した開封タブを保持することにより、当該開封タブの自在な揺動を無くし、その折り曲げ部分の脆弱化を無くすことができる。これにより、意図せず当該開封タブが蓋体から脱離するおそれを無くすことができる。
更にナイフ口を開口させておくために、フラップ状の開封タブを切り離す必要が無くなり、ナイフ口を意図して切り離した時に生じる小片が新たなゴミとなる問題も本発明により解消され、ゴミを捨てる手間を省くことができる。
そして、従来のナイフ口を切り離さないで残した状態で使用する場合には、脆弱部を中心として可動する一部切断したナイフ口のプラスチック(即ちフラップ状の開封タブ)の先端が作業者の手や着衣に引っ掛かる等の潜在的な問題点もあったが、これも本発明により解消することができる。
【0021】
また、上記本発明に係るペースト状等の食品用の蓋体は、容器本体の開口部に対向する平面部と、当該平面部の周縁から下方には曲折する曲折部と、この曲折部から下方に延伸して容器本体における開口部の縁部分外側を覆う帯状部とを具備するものとして構成し、前記開封タブは当該帯状部の幅方向を横切るようにして延伸する2条の肉薄部分間に形成されると共に、当該開封タブの先端には帯状部分に対して交差する向きに突出する突起部を形成し、前記係止手段は、当該開封タブの突起部が嵌入する溝、又は当該突起部が係止する凸部として形成することが望ましい。
【0022】
かかる構成の蓋体において、帯状部が前記した蓋体の側面に相当し、この部分の一部に開封タブが形成される。そして開封タブを容易に引き起こすことができるように、脆弱部を形成している。またこの開封タブの先端側、即ち揺動する為に蓋体と繋がっている部分を基端とする、その先端側に、帯状部分に対して交差する向き、例えば蓋体の内側又は外側に向かって突出する突起部を形成する。そして、折り返した前記開封タブが接する領域に形成され、折り返した開封タブを保持する係止手段として、開封タブの突起部が嵌入する溝、又は当該突起部が係止する凸部を形成する。
【0023】
このように係止手段を溝や突起として形成することにより、単に開封タブを引き起こして、そのまま係止手段に保持させることにより、当該開封タブをスムーズかつ簡易に保持・固定することができる。
【0024】
また、上記本発明に係るペースト状等の食品用の蓋体では、前記突起部が、開封タブの幅方向全体にわたって、蓋体の外側に向かってフランジ状に突起する部分として形成されており、前記係止手段は蓋体の外面に形成され、前記開封タブは外側に折り返されるものとして形成することが望ましい。
【0025】
突起部を開封タブの幅方向全体にわたって形成することにより、当該開封タブの保持をより確実に行うことができる為である。また開封タブの突起部を、蓋体の外側に向かってフランジ状に突起する部分として形成し、係止手段を蓋体の外面に形成することにより、ナイフ口を開口させる為に折り返す開封タブを、蓋体の外側、即ち容器の外側に折り返すことができ、これにより当該開封タブの容器内への混入をより確実に阻止することができる。
【0026】
また本発明に係るペースト状等の食品用の蓋体は、容器本体の開口部に対向する平面部と、当該平面部の周縁から下方には曲折する曲折部と、この曲折部から下方に延伸して容器本体における開口部の縁部分外側を覆う帯状部とを具備し、前記曲折部は、平面部から帯状部分にかけて湾曲する湾曲形状に形成されており、当該曲折部における開封タブの折り返し領域に、当該折り返した開封タブが収容される溝状収容部分を設けることが望ましい。
【0027】
かかる溝状収容部分は、少なくとも他の部位から凹んだ状態に形成され、且つ折り返した開封タブを収容できるような大きさ及び深さに形成されるべきである。そして、このような溝状収容部分を設けることにより、折り返した開封タブは、当該溝状収容部分内に収容され、蓋体の側面(帯状部)から切り離した部分が露出することが無い。これにより、当該切り離した部分で手を引っ掻く等の問題を解消することができる。
【0028】
そして折り返した開封タブによる引っ掻きの問題を解消し、更に折り返して保持された開封タブが外力により起き上がることが無いように、前記曲折部に形成された溝状収容部分は、平面部から帯状部に向かう方向の長さが、折り返した開封タブよりも長く、且つ折り返して収容した開封タブが突出しない深さに形成されている事が望ましい。これにより、溝状収容部分に収容された開封タブは、他の外力により押し返されることが無くなり、その保持を長期的かつ確実に維持できるためである。
【0029】
上記ペースト状・高粘度の液状・粒状・粉状食品用容器に使用される本発明の蓋体において、係止手段は蓋体の何れかの部位であって、少なくとも折り返した開封タブを保持できる場所に形成されていれば良く、この開封タブは、蓋体の側面の何れか一か所以上に形成されていればよい。
【0030】
そして本発明では、前記課題の少なくとも何れかを解決する為に、上記蓋体を用いて構成したペースト状食品、高粘度の液状食品、又は粒状や粉状食品用の容器を提供する。即ち、開口部を有し、バター、マーガリン、ピーナツバター、ジャム、マーマレードおよびスプレッドチーズを含むペースト状食品、高粘度の液状食品、又は粒状や粉状の食品を収容する容器本体と、この容器本体の開口部を閉塞する蓋体とからなる容器であって、当該蓋体は上記本発明に係る開封タブの係止手段を具備する蓋体であって、前記容器本体の開口部における、開封タブに対向する部分には、ナイフ口を形成する切り欠き部が形成されているペースト状等食品用の容器である。
【0031】
かかるペースト状等食品用の容器において、容器本体の開口部に形成される切り欠き部は、少なくとも一か所以上であることが望ましく、例えば直方体や立方体その他の箱型に形成されている場合には、開口部が存在する対向する辺に、対称となる位置に夫々一か所形成することができる。
【0032】
なお、本発明に係るペースト状等食品用の容器は、特にバター、マーガリン、ピーナツバター、ジャム、マーマレードおよびスプレッドチーズ等の食品を収容するのに好適であるが、その他にも粒状物や粉状物、あるいは液状(特に練乳やはちみつ等のような高粘度の液状)のもの(食品に限らない)を収容するものとして使用することもできる。
【発明の効果】
【0033】
上記本発明のペースト状食品等の容器と、それに使用される蓋体によれば、ナイフ口を開口させた後における開封タブの廃棄の問題をなくし、更に当該開封タブが意図せず蓋体から切り離される事を無くしたペースト状等食品用の容器の蓋体と、これを用いた容器を提供することができる。
【0034】
また折り返した開封タブをフラップ状にして蓋体に存在させる場合、開封タブの折り返しに際して切り離した部分は、ギザギザになることも考えられるが、折り返して自由に揺動する開封タブを固定し、更に溝状収容部分を形成した場合には、この開封タブにおける切り離した部分を、利用者に接しない様にしまうことができる為、より安全性を高めたペースト状等食品用容器の蓋体と、これを用いた容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施の形態に係る食品用容器の蓋を開けた状態を示す斜視図
【図2】(A)は脆弱部を切り離す前の状態における開封タブを示す要部拡大斜視図、(B)は脆弱部を切り離して開封タブを折り返し、これを溝状収容部分内に収容・固定した状態を示す要部拡大斜視図
【図3】(A)は脆弱部を切り離す前の状態の要部拡大断面図、(B)は脆弱部を切り離して開封タブを折り返し、これを溝状収容部分内に収容・固定した状態の要部拡大断面図
【図4】他の実施の形態に係る食品用容器の蓋体を示す、(A)要部拡大斜視図、(B)要部拡大側面図
【図5】更に他の実施の形態に係る食品用容器の蓋体を示す、(A)要部拡大斜視図、(B)要部拡大平面図
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施の形態に係るペースト状等の食品を収容する食品用容器(10)の蓋を開けた状態を示す斜視図であり、図2は、開封タブ(35)の開閉状態を示す要部拡大図であり、(A)は脆弱部(34)を切り離す前の状態における開封タブ(35)を示す要部拡大斜視図、(B)は脆弱部(34)を切り離して開封タブ(35)を折り返し、これを溝状収容部分内(36)に収容・固定した状態を示す要部拡大斜視図であり、図3(A)は脆弱部(34)を切り離す前の状態の要部拡大断面図、図3(B)は脆弱部(34)を切り離して開封タブ(35)を折り返し、これを溝状収容部分(36)内に収容・固定した状態の要部拡大断面図であり、図4は他の実施の形態に係るペースト状等の食品を収容する食品用容器の蓋体(30)を示す、(A)要部拡大斜視図、(B)要部拡大側面図であり、図5は更に他の実施の形態に係るペースト状等の食品を収容する食品用容器の蓋体(30)を示す、(A)要部拡大斜視図、(B)要部拡大平面図である。
【0037】
先ず、図1において、バター又はマーガリン等の食用油脂を収納するペースト状等の食品を収容する食品用容器(以下、単に「ペースト状食品用容器10」とする)は、上面を開けた箱型の容器本体(20)と、この容器本体(20)における上部開口(21)を閉塞する蓋体(30)とから構成されており、これらの各構成部材は樹脂を射出成型する等によって形成することができる。
【0038】
容器本体(20)における上部の開口(21)は略矩形に開いており、その短辺側縁部分の中央には、その一部を凹ませた切り欠き部(22)を形成している。この切り欠き部(22)は、本実施の形態においては、短辺側縁部分の何れか一方に形成しているが、対向する短辺側縁部分の両方に、其々対称となる位置に形成することもできる。またこの容器本体(20)の側壁(23)の上端側には、外側に突起した出っ張り部(24)が形成されている。この出っ張り部(24)は、後述する蓋体(30)を係止するための係合構造であり、当該出っ張り部(24)の形成は任意である。
【0039】
そして、容器本体(20)の開口(21)を閉塞する蓋体(30)は、容器本体(20)の開口している部分に対向する平面部(31)と、当該平面部(31)の周縁から下方には曲折する曲折部(32)と、この曲折部(32)から下方に延伸して容器本体(20)における開口(21)の縁部分外側を覆う帯状部(33)とを具備している。平面部(31)は、前記容器本体(20)の開口(21)に被さって閉塞するように、前記容器本体(20)の開口(21)と略同じ大きさの矩形に形成されており、曲折部(32)は、この平面部(31)から湾曲しながら下方に向かい、この平面部(31)を一周する様に設けられている。そして帯状部(33)は曲折部(32)の下方から高さ方向に延伸し、蓋体(30)の側壁を構成するように、この蓋体(30)を一周する帯状に形成されている。この帯状部(33)は蓋体(30)を容器本体(20)に被せた状態において、蓋体(30)の側壁(23)の開口側(上端側)の外側を囲む様になっている。
【0040】
そしてこの帯状部(33)における短辺側の中央には、折り返すことによりナイフ口(12)を出現させる開封タブ(35)が形成されている。この開封タブ(35)の左右両側には、薄肉状に形成された2条の(2本の)脆弱部(34)が設けられており、この脆弱部(34)を切り離すことにより当該開封タブ(35)は上向きに折り返すことが可能になっている。また、この開封タブ(35)が形成されている領域の上方に存在する曲折部(32)には、折り返した開封タブ(35)を収容する溝状収容部分(36)を他の部分よりも凹ませて形成している。
【0041】
次に図2及び図3を参照しながら、この開封タブ(35)と溝状収容部分(36)の構造、および開封タブ(35)の折り返し・固定構造をより具体的に説明する。図2はこの開封タブ(35)の開閉状態を示す要部拡大図であり、図2(A)は脆弱部(34)を切り離す前の状態における開封タブ(35)を示しており、図2(B)は脆弱部(34)を切り離して開封タブ(35)を折り返し、これを溝状収容部分(36)内に収容・固定した状態を示している。また図3は開封タブ(35)と溝状収容部分(36)における要部縦断面図であり、図3(A)は脆弱部(34)を切り離す前の状態示しており、図3(B)は脆弱部(34)を切り離して開封タブ(35)を折り返し、これを溝状収容部分(36)内に収容・固定した状態を示している。
【0042】
この図2(A)に示すように、開封タブ(35)の下端側には外向きフランジ状に突起する突起部(37)が形成されており、当該突起部(37)は、この開封タブ(35)の幅方向の略全体に形成されている。そしてこの突起部(37)の先端には、幅方向に長く突条(38)が形成されている。この突条(38)は、後述する溝状収容部分(36)に設けられた係止手段(39)に係合する為の引っかかりとして機能する。なお、この突条(38)は直線状に設ける必要は無く、鎖線状、又は点条に設けることもできる。
【0043】
そして図3(A)に示すように、この開封タブ(35)における、容器本体(20)と繋がっている部分(上端側の部分)であり、且つ折れ曲がる部分は、当該開封タブ(35)の他の部分よりも僅かに肉薄に形成されている。これは当該開封タブ(35)を折り返しやすくするためである。本実施の形態では当該開封タブ(35)の外側の面を溝状に薄く形成している。ただしミシン目を形成しても良い。
【0044】
またこの実施の形態において係止手段(39)は、図3に示すように、蓋体(30)の曲折部(32)に形成した溝状収容部分(36)内に、前記突条(38)を支持する様に突起する凸状に形成している。即ち、折り返した開封タブ(35)は、フランジ状の突起部(37)の先端に形成された突条(38)が、この凸状の係止手段(39)に係合し、これにより開封タブ(35)が固定されることになる。その結果、ナイフ口(12)を開口させる為に折り返した開封タブ(35)は固定され、自由に揺動することが無いことから、折り曲げ部分の脆弱化、及び切断の問題を解消することができる。
【0045】
また、この実施の形態において開封タブ(35)は、折り返して係止手段(39)に固定した状態において、当該開封タブ(35)の突起部(37)を含む領域が溝状収容部分(36)内に収容されている。このように形成することにより、当該係止手段(39)に保持された突起部(37)に外力が作用することは無く、且つ帯状部(33)から切り離した開封タブ(35)の側面(23)が露出することは無い。
【0046】
したがって、蓋体(30)の側面を構成する帯状部(33)に開封タブ(35)を設け、これを上方向に折り返すように構成した蓋体(30)にあっては、この開封タブ(35)の長さ(即ち帯状部33の幅)は、曲折部(32)に形成される溝状収容部分(36)内に収まる長さに形成されることが望ましい。
【0047】
なお、図3において蓋体(30)の曲折部(32)領域の内側にプレート状に存在するのは補強リブ(28)であり、また帯状部(33)に存在する矩形の部分(27)は、前記容器本体(20)の側面(23)上方に形成された出っ張り部(24)が相補的に嵌合する凹みであり、当該部分によって蓋体(30)は容器本体(20)に係合することができる。
【0048】
次に、図4及び5を参照しながら、幾つかの他の実施の形態に係るペースト状食品用容器(10)に使用可能な蓋体(30)の例を示す。
【0049】
図4は、折り返した開封タブ(35)を保持する係止手段(439)が、前記1〜3に示したものとは異なっている。即ち、この実施の形態に示す蓋体(30)では、溝状収容部分(36)内の左右両側面に、溝の内側に向かって突起する凸状の係止手段(439)を形成している。特に本実施の形態において、この溝状収容部分(36)内の左右両側面に設けられる凸状の係止手段(439)は夫々直線状に形成されているが、その他にも点状に出っ張るものとして形成しても良い。
【0050】
このように形成された蓋体(30)では、帯状部(33)における脆弱部(34)を切り離し、開封タブ(35)を上向きに折り返すと、その両側縁は、前記溝状収容部分(36)内の左右両側面に形成された凸状の係止手段(439)に支持されることになる。これにより、折り返された開封タブ(35)は溝状収容部分(36)内に固定・保持されて、その後における揺動を阻止することができる。その結果、開封タブ(35)の折り曲げ部分における脆弱化を避け、この開封タブ(35)の蓋体(30)からの脱離を阻止することができる。
【0051】
そして図5は、開封タブ(35)の揺動する方向、即ち折り返す向きが前記の実施の形態に示したものと異なっている。即ち、この実施の形態に示す蓋体(30)において、開封タブ(35)は横向きに折り返すように構成されており、その為に、脆弱部(34)は帯状部(33)の幅方向と、帯状部(33)の長さ方向に直角に交わるように形成されている。また、このように横向きに折り返した開封タブ(35)を係止する為に、当該開封タブ(35)の折り返し方向には、折り返した開封タブ(35)の先端を保持する為に、略フック状に形成されて突起する係止手段(539)が形成されている。
【0052】
このように形成された蓋体(30)では、帯状部(33)分における脆弱部(34)を切り離し、開封タブ(35)を横向きに折り返すと、その先端が帯状部(33)に形成されたフック状の係止手段(539)に支持されることになる。これにより、折り返された開封タブ(35)は揺動が阻止され、その結果、開封タブ(35)の折り曲げ部分における脆弱化を避け、この開封タブ(35)の蓋体(30)からの脱離を阻止することができる。
【0053】
以上の様な図4及び5に示したような蓋体(30)は、前記図1に示したような容器本体(20)と組み合わせることにより、ペースト状食品用容器(10)として形成することができる。
【0054】
そして上記の実施の形態に係るペースト状食品用容器(10)においては、開封タブ(35)を引き起こして固定することにより、容器本体(20)に形成された切り欠き部(22)と、開封タブ(35)を引き起こしたことにより、容器の内外に貫通するナイフ口(12)が出現し、これにより、容器内にバターナイフやスプーンの先端部分を存在させ、その柄部分をこの貫通孔を通して外側に突出させることができる。
なお、上記実施の形態では、脆弱部を中心に容器外側の上方向に折り込む方式と、横方向に折り込む方式を挙げているが、本発明に係る蓋体や容器は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明を応用し、例えば容器の内側に折り込むことも勿論可能であり、折り返したタブを保持するものであれば、本発明の技術的範囲に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
上記本発明は、バター、マーガリン、ピーナツバター、ジャム、マーマレードおよびスプレッドチーズ等のペースト状食品の他、練乳やはちみつ等の高粘度の液状食品、又は粒状や粉状の食品を収容する箱型の容器の蓋体において利用することができ、その他にも当該容器は他の食品や物品を収容するものとして利用することができる。また、スプーンやナイフ等の棒状部分を容器内外に貫通させて使用する容器等においても利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
10 ペースト状食品用容器
12 ナイフ口
20 容器本体
21 上部開口
22 切り欠き部
23 側壁
24 出っ張り部
30 蓋体
31 平面部
32 曲折部
33 帯状部
34 脆弱部
35 開封タブ
36 溝状収容部分
37 突起部
38 突条
39 係止手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バター、マーガリン、ピーナツバター、ジャム、マーマレードおよびスプレッドチーズを含むペースト状食品、高粘度の液状食品、又は粒状や粉状の食品を収容する容器の蓋体であって、
脆弱に形成された部分を切り離して折り返すことによりナイフ口を出現させる開封タブを具備し、
折り返した前記開封タブが接する領域には、当該折り返した開封タブを保持する係止手段が形成されている事を特徴とする、容器の蓋体。
【請求項2】
蓋体は容器本体の開口部に対向する平面部と、当該平面部の周縁から下方には曲折する曲折部と、この曲折部から下方に延伸して容器本体における開口部の縁部分外側を覆う帯状部とを具備し、
前記開封タブは当該帯状部の幅方向を横切るようにして延伸する2条の肉薄部分間に形成されると共に、当該開封タブの先端には帯状部分に対して交差する向きに突出する突起部が形成されており、
前記係止手段は、当該開封タブの突起部が嵌入する溝、又は当該突起部が係止する凸部として形成されている、請求項1に記載の蓋体。
【請求項3】
前記突起部は、開封タブの幅方向全体にわたって、蓋体の外側に向かってフランジ状に突起する部分として形成されており、前記係止手段は蓋体の外面に形成され、前記開封タブは外側に折り返される、請求項1又は2に記載の蓋体。
【請求項4】
蓋体は容器本体の開口部に対向する平面部と、当該平面部の周縁から下方には曲折する曲折部と、この曲折部から下方に延伸して容器本体における開口部の縁部分外側を覆う帯状部とを具備し、
前記曲折部は、平面部から帯状部分にかけて湾曲する湾曲形状に形成されており、当該曲折部における開封タブの折り返し領域には、当該折り返した開封タブが収容される溝状収容部分が形成されている、請求項1〜3の何れか一項に記載の蓋体。
【請求項5】
前記曲折部に形成された溝状収容部分は、平面部から帯状部に向かう方向の長さが、折り返した開封タブよりも長く、且つ折り返して収容した開封タブが突出しない深さに形成されている、請求項4に記載の蓋体。
【請求項6】
開口部を有し、バター、マーガリン、ピーナツバター、ジャム、マーマレードおよびスプレッドチーズを含むペースト状食品、高粘度の液状食品、又は粒状や粉状の食品を収容する容器本体と、この容器本体の開口部を閉塞する蓋体とからなる容器であって、
当該蓋体は請求項1〜5の何れか一項に記載の蓋体であって、
前記容器本体の開口部における、開封タブに対向する部分には、ナイフ口を形成する切り欠き部が形成されていることを特徴とする食品用容器。
【請求項7】
請求項6記載の食品用容器に、バター、マーガリン、ピーナツバター、ジャム、マーマレードおよびスプレッドチーズを含むペースト状食品、高粘度の液状食品、又は粒状や粉状の食品を充填してなることを特徴とする容器詰め食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−52913(P2013−52913A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193402(P2011−193402)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000006138)株式会社明治 (265)
【出願人】(300045891)サンプラスチックス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】