説明

ホイップアンテナ

【課題】 放射素子と無給電素子とを有するホイップアンテナにおいて、小型化することができると共に給電点を高くしても広帯域化できるようにする。
【解決手段】 ホイップアンテナ2は、グランド25から高さH上に線状の放射素子20と、放射素子20とほぼ平行に間隔EDをおいて配置された線状の無給電素子21とが設けられている。高さHの給電部23の先端が給電点24とされて、給電点24に一端が接続されたコイル22の他端が放射素子20の下端に接続されることにより、放射素子20が給電点24からコイル22を介して給電されている。無給電素子21の下端は給電部23の外被導体を介してグランド25に接続されている。コイル22の作用により放射素子20と無給電素子21との間隔EDを約2mmまで狭めることが可能となると共に、広帯域化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広帯域特性を得ることができると共に小型化することができるホイップアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
車体に取り付けられるアンテナとしては種々のアンテナがあるが、車体では最も高い位置にあるルーフにアンテナを取り付けると受信感度を高められると共に、デザイン性にも優れていることから、ルーフに取り付けるルーフアンテナが好まれている。従来のルーフに取り付ける車載用アンテナは、ホイップアンテナとホイップアンテナを車体に取付けるためのアンテナベースからなり、ホイップアンテナの下端をアンテナベースに固着するようにしている。このような従来の車載アンテナにおけるホイップアンテナの一例の構成を図19に示す。
図19に示すホイップアンテナ100は、高周波特性の良好な細長い矩形の基板111にプリントされた線状の放射素子110と、放射素子110に給電する給電部113とを備えている。給電部113は接栓112を有し、接栓112は、アンテナベースに着脱自在に取り付けられる。ホイップアンテナ100の放射素子110の先端から接栓112の下端までのエレメント長ELは、使用周波数帯域の中心周波数にほぼ共振する長さとされている。
【0003】
図19に示すホイップアンテナ100において、使用周波数帯域を170〜202MHzとしてその中心周波数186MHzにほぼ共振するエレメント長ELとされた場合のホイップアンテナ100の電圧定在波比(VSWR)の周波数特性およびインピーダンス特性を示すスミスチャートを図20に示す。
図20を参照すると、VSWR2.0以下の帯域幅として約20MHzが得られており、VSWR2.0以下の比帯域は(20÷186)×100=10.8%となる。しかし、170MHzにおけるインピーダンスは33.373−j47.215Ωとなって、この際のVSWRは約3.2と2.0を超えてしまい、また、202MHzにおけるインピーダンスは41.970+j46.558Ωとなって、この際のVSWRは約2.7と2.0を超えてしまうようになる。さらに、中心周波数186MHzにおけるインピーダンスは38.025+j0.776Ωとなって、この際のVSWRは約1.3となる。
【0004】
このように、ホイップアンテナ100では使用周波数帯域170〜202MHzの全域を確保することができない。ここで、アンテナの広帯域化を図る従来の手法の一つとして、放射素子と所定間隔離して無給電素子を配置することが特許文献1,2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−319734号公報
【特許文献2】特開2003−243916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の無給電素子を有する広帯域化されたホイップアンテナの一例の構成を図21に示す。
図21に示すホイップアンテナ200は、高周波特性の良好な細長い矩形の基板212の左縁にプリントされた線状の放射素子210と、基板212の右縁にプリントされた線状の無給電素子211と、放射素子210に給電する給電部214とを備えている。給電部214は接栓213を有し、接栓213は、アンテナベースに着脱自在に取り付けられる。ホイップアンテナ200の放射素子210の先端から接栓213の下端までのエレメント長ELは、使用周波数帯域の低域側の周波数に共振する長さとされ、無給電素子211のエレメント長NLと給電部214の高さHを足した長さは同帯域の高域側の周波数に共振する長さとされて、ホイップアンテナ200を広帯域化するようにしている。
【0007】
図21に示すホイップアンテナ200において、使用周波数帯域が170〜202MHzとされ、基板212の誘電率が約3.9とされた際に、放射素子210のエレメント長ELを約410mmとし、無給電素子211のエレメント長NLを約270mmとし、給電部214の高さHを約20mmとし、放射素子210と無給電素子211との間隔EDを約10mmとした場合のホイップアンテナ200のVSWRの周波数特性およびインピーダンス特性を示すスミスチャートを図22に示す。
図22を参照すると、VSWR2.0以下の帯域幅は約40MHzの広帯域が得られており、VSWR2.0以下の比帯域は(40÷186)×100=21.5%となる。また、170MHzにおけるインピーダンスは36.866−j12.455Ωとなって、この際のVSWRは約1.5と2.0以内となり、また、202MHzにおけるインピーダンスは50.578−j33.205Ωとなって、この際のVSWRは約1.9と2.0以内となる。さらに、中心周波数186MHzにおけるインピーダンスは68.950+j20.491Ωとなって、この際のVSWRは約1.65となる。このように、無給電素子211を備えるホイップアンテナ200では広帯域化されて使用周波数帯域170〜202MHzの全域を確保することができるようになる。
【0008】
次に、図21に示すホイップアンテナ200において、放射素子210と無給電素子211との間隔EDを約9mmに変更した場合のホイップアンテナ200のVSWRの周波数特性およびインピーダンス特性を示すスミスチャートを図23に示す。
図23を参照すると、VSWR2.0以下の帯域幅は約30MHzに減少し、VSWR2.0以下の比帯域は(40÷186)×100=16.1%となる。また、170MHzにおけるインピーダンスは34.507−j6.6505Ωとなって、この際のVSWRは約1.5と2.0以内になるが、202MHzにおけるインピーダンスは93.471−j31.938Ωとなって、この際のVSWRは約2.15と2.0を超えるようになる。そして、使用周波数帯域170〜202MHzにおける最悪のVSWRは約2.3となり、放射素子210と無給電素子211との間隔EDを約9mmに変更したホイップアンテナ200では使用周波数帯域170〜202MHzの全域を確保することができないようになる。このことから、放射素子210と無給電素子211との間隔EDは約10mm以上必要になることが分かる。
【0009】
このように、従来の放射素子に無給電素子を所定間隔離して配置したホイップアンテナにおいては、その間隔に限界がありホイップアンテナを小型化することができないという問題点があった。
また、車載用アンテナでは、走行中にアンテナが木や地下駐車場の屋根等の障害物に衝突することがあり、衝突した際にアンテナが折損することがある。これを防止するために、緩衝用スプリングをアンテナの下部に設けるようにしている。このように、緩衝用スプリングをアンテナの下部に設けると、アンテナの給電点がルーフとされるグランドから高い位置になってしまい、無給電素子を装荷しても広帯域化の効果が得られなくなるという問題点があった。
そこで、本発明は、放射素子と無給電素子とを有するホイップアンテナにおいて小型化することができると共に、給電点を高くしても広帯域化することのできるホイップアンテナを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のホイップアンテナは、線状の放射素子が形成されていると共に、該放射素子から所定間隔離隔されてほぼ平行に線状の無給電素子が形成された絶縁基板と、該絶縁基板の下側に配置され、前記放射素子に給電点から給電すると共に、前記無給電素子を接地する給電部と、前記放射素子の下端に一端が接続され、他端が前記給電点に接続されたコイルとを備えたことを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、放射素子の下端に一端が接続され、他端が前記給電点に接続されたコイルの作用により、放射素子と無給電素子との間隔を大幅に狭くすることができるようになる。例えば、ホイップアンテナの使用周波数帯域が170〜202MHzとされていた場合は、間隔を約2mmまで狭めることができるようになる。また、給電点が給電部の下端とされるグランドから高い位置となっても前記コイルの作用により、ホイップアンテナを広帯域化することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施例のホイップアンテナの構成の概要を示す図である。
【図2】本発明の第2実施例のホイップアンテナの構成の概要を示す図である。
【図3】本発明の第1実施例のホイップアンテナの詳細な構成を示す図である。
【図4】本発明の第1実施例のホイップアンテナのVSWRの周波数特性およびインピーダンス特性を示すスミスチャートの図である。
【図5】本発明の第1実施例の変形例のホイップアンテナの詳細な構成を示す図である。
【図6】本発明の第1実施例の変形例のホイップアンテナのVSWRの周波数特性およびインピーダンス特性を示す図である。
【図7】本発明の第2実施例のホイップアンテナの詳細な構成を示す図である。
【図8】本発明の第2実施例のホイップアンテナのVSWRの周波数特性およびインピーダンス特性を示すスミスチャートの図である。
【図9】本発明の第2実施例のホイップアンテナのパラメータを変更した際のVSWRの周波数特性およびインピーダンス特性を示すスミスチャートの図である。
【図10】本発明の第2実施例のホイップアンテナのパラメータを変更した際のVSWRの周波数特性およびインピーダンス特性を示すスミスチャートの図である。
【図11】本発明の第2実施例のホイップアンテナのパラメータを変更した際のVSWRの周波数特性およびインピーダンス特性を示すスミスチャートの図である。
【図12】本発明の第2実施例のホイップアンテナのパラメータを変更した際のVSWRの周波数特性およびインピーダンス特性を示すスミスチャートの図である。
【図13】本発明の第2実施例のホイップアンテナのパラメータを変更した際のVSWRの周波数特性およびインピーダンス特性を示すスミスチャートの図である。
【図14】本発明の第2実施例のホイップアンテナのパラメータを変更した際のVSWRの周波数特性およびインピーダンス特性を示すスミスチャートの図である。
【図15】本発明の第2実施例のホイップアンテナのパラメータを変更した際のVSWRの周波数特性およびインピーダンス特性を示すスミスチャートの図である。
【図16】本発明の第2実施例のホイップアンテナの具体的な構成を示す図である。
【図17】本発明の第2実施例のホイップアンテナの具体的な構成の一部を示す図である。
【図18】本発明の第2実施例のホイップアンテナにおける基板の構成の一部を示す図である。
【図19】従来のホイップアンテナの構成を示す図である。
【図20】従来のホイップアンテナのVSWRの周波数特性およびインピーダンス特性を示すスミスチャートの図である。
【図21】従来の無給電素子を有するホイップアンテナの構成を示す図である。
【図22】従来の無給電素子を有するホイップアンテナのVSWRの周波数特性およびインピーダンス特性を示すスミスチャートの図である。
【図23】従来の無給電素子を有するホイップアンテナのパラメータを変更した際のVSWRの周波数特性およびインピーダンス特性を示すスミスチャートの図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1実施例のホイップアンテナの構成の概要を図1に示す。
図1に示す本発明の第1実施例とされるホイップアンテナ1は、金属板等の導電性のグランド15上に線状の放射素子10と、放射素子10とほぼ平行に間隔EDをおいて配置された線状の無給電素子11とが設けられている。グランド15の下面から同軸状の給電部13が貫通して設けられており、グランド15の上面位置とされる給電部13の中心導体の先端が給電点14とされて、給電点14に一端が接続されたコイル12の他端が放射素子10の下端に接続されることにより、放射素子10が給電点14からコイル12を介して給電されている。給電部13の外被導体はグランド15に電気的に接続されている。また、無給電素子11の下端はグランド15に電気的に接続されている。ホイップアンテナ1の放射素子10とコイル12とからなる等価的なエレメント長ELは、使用周波数帯域の下側の周波数にほぼ共振する長さとされ、無給電素子11のエレメント長NLは、使用周波数帯域の上側の周波数にほぼ共振する長さとされることにより、ホイップアンテナ1は広帯域化されている。また、後述するようにコイル12の作用により放射素子10と無給電素子11との間隔EDは約2mmまで狭めることが可能となる。
【0014】
本発明の第2実施例のホイップアンテナの構成の概要を図2に示す。
図2に示す本発明の第2実施例とされるホイップアンテナ2は、金属板等の導電性のグランド25から高さH上に線状の放射素子20と、放射素子20とほぼ平行に間隔EDをおいて配置された線状の無給電素子21とが設けられている。グランド25の下面から同軸状の給電部23が貫通して高さHまで設けられており、給電部23の先端が給電点24とされて、高さHとされた給電点24に一端が接続されたコイル22の他端が放射素子20の下端に接続されることにより、放射素子20が給電点24からコイル22を介して給電されている。無給電素子21の下端は給電部23の外被導体の上部に電気的に接続され、外被導体はグランド25に貫通する部位においてグランド25に電気的に接続されている。ホイップアンテナ2の放射素子20とコイル22とを含むグランド25までの等価的なエレメント長ELは、使用周波数帯域の下側の周波数にほぼ共振する長さとされ、無給電素子21のエレメント長NLと給電部23の高さHを足した長さは、使用周波数帯域の上側の周波数にほぼ共振する長さとされることにより、ホイップアンテナ2は広帯域化されている。また、後述するようにコイル22の作用により放射素子20と無給電素子21との間隔EDは約2mmまで狭めることが可能となる。
【0015】
次に、図1に示す本発明の第1実施例とされるホイップアンテナの詳細な構成の一例を図3に示す。
図3に示す第1実施例にかかるホイップアンテナ3は、テフロン等の高周波特性の良好な細長い矩形の基板16aの左縁にプリントされた線状の放射素子10aと、基板16aの右縁に放射素子10aにほぼ平行にプリントされた線状の無給電素子11aと、放射素子10aに給電する給電部13aとを備えている。給電部13aは接栓17aを有し、接栓17aは同軸接栓とされ、車両のルーフ等に固着されるアンテナベースに着脱自在に取り付けられる。放射素子10aの下端はL字状に折曲されて形成されており、L字状の部位にコイル12aの一端が接続され、コイル12aの他端が接栓17aの中心導体に電気的に接続されている。また、無給電素子11aの下端は接栓17aの外部導体の上端に電気的に接続されている。ホイップアンテナ3の放射素子10aの先端から接栓17aの下端までのコイル12aを含む等価的なエレメント長ELは、使用周波数帯域の低域側の周波数に共振する長さとされ、無給電素子11aのエレメント長NLと給電部13aの高さHとを足した長さは使用周波数帯域の高域側の周波数に共振する長さとされている。
【0016】
図3に示すホイップアンテナ3において、使用周波数帯域が170〜202MHzとされ、基板16aの誘電率が約3.9とされている場合に、放射素子10aのエレメント長ELを約400mmとし、無給電素子11aのエレメント長NLを約270mmとし、給電部13aの高さHを約20mmとし、放射素子10aと無給電素子11aとの間隔EDを約10mmとし、コイル12aのインダクタンスを約17nHとした場合のホイップアンテナ3のVSWRの周波数特性およびインピーダンス特性を示すスミスチャートを図4に示す。
図4を参照すると、VSWR2.0以下の帯域幅は約45MHzの広帯域が得られており、VSWR2.0以下の比帯域は(45÷186)×100=24.2%となり、従来より約2.7%比帯域が広くなっている。また、170MHzにおけるインピーダンスは約34.420+j1.6359Ωとなって、この際のVSWRは約1.45と良好な値となり、また、202MHzにおけるインピーダンスは約54.653−j16.911Ωとなって、この際のVSWRは約1.4と良好な値となる。さらに、中心周波数186MHzにおけるインピーダンスは約62.159+j35.112Ωとなって、この際のVSWRは約1.9と2.0以内となる。このように、放射素子10aに給電部13aからコイル12aを介して給電するホイップアンテナ3は広帯域化されて使用周波数帯域170〜202MHzの全域を十分確保することができるようになる。
【0017】
次に、図3に示す本発明の第1実施例にかかるホイップアンテナの変形例の詳細な構成を図5に示す。
図5に示す第1実施例にかかる変形例のホイップアンテナ4は、ホイップアンテナ3において、放射素子と無給電素子との間隔EDを最小の間隔としたホイップアンテナとされている。ホイップアンテナ4は、テフロン等の細長い矩形の基板16bの左縁にプリントされた線状の放射素子10bと、基板16bの右縁に放射素子10bにほぼ平行にプリントされた線状の無給電素子11bと、放射素子10bに給電する給電部13bとを備えている。給電部13bは接栓17bを有し、接栓17bは同軸接栓とされ、アンテナベースに着脱自在に取り付けられる。放射素子10b下端にコイル12bの一端が接続され、コイル12bの他端が接栓17bの中心導体に電気的に接続されている。また、無給電素子11bの下端は接栓17bの外部導体の上端に電気的に接続されている。ホイップアンテナ4の放射素子10bの先端から接栓17bの下端までのコイル12bを含む等価的なエレメント長ELは、使用周波数帯域の低域側の周波数に共振する長さとされ、無給電素子11bのエレメント長NLと給電部13bの高さHとを足した長さは使用周波数帯域の高域側の周波数に共振する長さとされている。
【0018】
図5に示すホイップアンテナ4において、使用周波数帯域が170〜202MHzとされ、基板16bの誘電率が約3.9とされている場合に、放射素子10bのエレメント長ELを約400mmとし、無給電素子11bのエレメント長NLを約240mmとし、給電部13bの高さHを約20mmとし、放射素子10bと無給電素子11bとの間隔EDを約2mmとし、コイル12bのインダクタンスを約6nHとした場合のホイップアンテナ4のVSWRの周波数特性およびインピーダンス特性を示すスミスチャートを図6に示す。
図6を参照すると、VSWR2.0以下の帯域幅は約44MHzの広帯域が得られており、VSWR2.0以下の比帯域は(44÷186)×100=23.7%となり、従来より約2.2%比帯域が広くなっている。また、170MHzにおけるインピーダンスは約30.613+j5.4974Ωとなって、この際のVSWRは約1.65と良好な値となり、また、202MHzにおけるインピーダンスは約59.313−j28.674Ωとなって、この際のVSWRは約1.75と十分2.0以内となる。さらに、中心周波数186MHzにおけるインピーダンスは約66.116+j25.359Ωとなって、この際のVSWRは約1.7と十分2.0以内となる。このように、放射素子10bに給電部13bからコイル12bを介して給電することにより、放射素子10bと無給電素子11bとの間隔EDを約2mmと小型化しても使用周波数帯域170〜202MHzの全域を確保することができるようになる。
【0019】
次に、図2に示す本発明の第2実施例とされるホイップアンテナの詳細な構成の一例を図7に示す。
図7に示す本発明の第2実施例にかかるホイップアンテナ5は、テフロン等の高周波特性の良好な細長い矩形の基板26aの左縁にプリントされた線状の放射素子20aと、基板26aの右縁に放射素子20aにほぼ平行にプリントされた線状の無給電素子21aと、放射素子20aに給電する給電部23aとを備えている。給電部23aは高さHの接栓27aを有し、同軸接栓とされた接栓27aの高さHまで延伸されている内部に同軸伝送路が設けられている。接栓27aは車両のルーフ等に固着されるアンテナベースに着脱自在に取り付けられる。放射素子20aの下端はL字状に折曲されて形成されており、L字状の部位にコイル22aの一端が接続され、コイル22aの他端が接栓27aの同軸伝送路における中心導体の先端に電気的に接続されている。また、無給電素子21aの下端は接栓27aにおける同軸伝送路の外部導体の上端に電気的に接続されている。ホイップアンテナ5の放射素子20aの先端から接栓27aの下端までのコイル22aを含む等価的なエレメント長ELは、使用周波数帯域の低域側の周波数に共振する長さとされ、無給電素子21aのエレメント長NLと給電部23aの高さHとを足した長さは使用周波数帯域の高域側の周波数に共振する長さとされている。
【0020】
図7に示すホイップアンテナ5において、使用周波数帯域を170〜202MHzとされ、基板26aの誘電率が約3.9とされている場合は、給電部23aの高さHが約20mmとされた場合、放射素子20aのエレメント長ELが約400mmとされ、無給電素子21aのエレメント長NLが約270mmとされる。この際に、放射素子20aと無給電素子21aとの間隔EDを約2mm〜約15mmとすることができ、コイル22aのインダクタンスは約6nH〜約30nHとすることができる。ここで、給電部23aの高さHを約20mmとした場合に、放射素子20aと無給電素子21aとの間隔EDを約15mmとした際の図7に示すホイップアンテナ5のVSWRの周波数特性およびインピーダンス特性を示すスミスチャートを図8に示す。
図8を参照すると、VSWR2.0以下の帯域幅は約44MHzの広帯域が得られており、VSWR2.0以下の比帯域は(44÷186)×100=23.7%となり、従来より約2.2%比帯域が広くなっている。また、170MHzにおけるインピーダンスは約26.849−j773.46mΩとなって、この際のVSWRは約1.85と十分2.0以下となり、また、202MHzにおけるインピーダンスは約49.940−j21.242Ωとなって、この際のVSWRは約1.55と良好な値となる。さらに、中心周波数186MHzにおけるインピーダンスは約56.053+j16.143Ωとなって、この際のVSWRは約1.4と良好な値となる。なお、図8に示す特性はコイル22aのインダクタンスが約17nH〜30nHの範囲であればほぼ同様となる。
【0021】
次に、給電部23aの高さHを約20mmとした場合に、放射素子20aと無給電素子21aとの間隔EDを約2mmと変更した際の図7に示すホイップアンテナ5のVSWRの周波数特性およびインピーダンス特性を示すスミスチャートを図9に示す。
図9を参照すると、VSWR2.0以下の帯域幅は約41.5MHzの広帯域が得られており、VSWR2.0以下の比帯域は(41.5÷186)×100=22.3%となり、従来より約0.8%比帯域が広くなっている。また、170MHzにおけるインピーダンスは約33.328+j4.0637Ωとなって、この際のVSWRは約1.5と良好な値となり、また、202MHzにおけるインピーダンスは約48.837−j25.807Ωとなって、この際のVSWRは約1.7と良好な値となる。さらに、中心周波数186MHzにおけるインピーダンスは約70.470+j26.512Ωとなって、この際のVSWRは約1.75と良好な値となる。このように、放射素子20aに給電部23aからコイル22aを介して給電することにより、放射素子20aと無給電素子21aとの間隔EDを約2mmまで小型化しても使用周波数帯域170〜202MHzの全域を確保することができるようになる。なお、図9に示す特性はコイル22aのインダクタンスが約6nH〜17nHの範囲であればほぼ同様となる。
【0022】
次に、図7に示すホイップアンテナ5において、使用周波数帯域が170〜202MHzとされ、基板26aの誘電率が約3.9とされている際に、給電部23aの高さHが約50mmとされた場合、放射素子20aのエレメント長ELが約430mmとされ、無給電素子21aのエレメント長NLが約230mm〜260mmとされる。この際に、放射素子20aと無給電素子21aとの間隔EDを約2mm〜約15mmとすることができる。ここで、給電部23aの高さHを約50mmとした場合に、放射素子20aのエレメント長ELを約430mm、無給電素子21aのエレメント長NLを約260mm、放射素子20aと無給電素子21aとの間隔EDを約15mmとした際の図7に示すホイップアンテナ5のVSWRの周波数特性およびインピーダンス特性を示すスミスチャートを図10に示す。
図10を参照すると、VSWR2.0以下の帯域幅は約40.7MHzの広帯域が得られており、VSWR2.0以下の比帯域は(40.7÷186)×100=21.9%となり、従来より約0.4%比帯域が広くなっている。また、170MHzにおけるインピーダンスは約34.185−j705.17mΩとなって、この際のVSWRは約1.45と良好な値となり、また、202MHzにおけるインピーダンスは約40.379−j11.747Ωとなって、この際のVSWRは約1.4と良好な値となる。さらに、中心周波数186MHzにおけるインピーダンスは約72.398+j17.633Ωとなって、この際のVSWRは約1.6と良好な値となる。このように、放射素子20aに給電部23aからコイル22aを介して給電することにより、給電部23aの高さHを約50mmと高くしても使用周波数帯域170〜202MHzの全域を確保することができるようになる。なお、図10に示す特性はコイル22aのインダクタンスが約17nH〜30nHの範囲であればほぼ同様となる。
【0023】
次に、給電部23aの高さHを約50mmとした場合に、放射素子20aのエレメント長ELを約430mm、無給電素子21aのエレメント長NLを約230mm、放射素子20aと無給電素子21aとの間隔EDを約2mmに変更した際の図7に示すホイップアンテナ5のVSWRの周波数特性およびインピーダンス特性を示すスミスチャートを図11に示す。ここではコイル22aのインダクタンスは約17nHとされている。
図11を参照すると、VSWR2.0以下の帯域幅は約43.7MHzの広帯域が得られており、VSWR2.0以下の比帯域は(43.7÷186)×100=23.5%となり、従来より約2.0%比帯域が広くなっている。また、170MHzにおけるインピーダンスは約30.613+j5.4974Ωとなって、この際のVSWRは約1.65と良好な値となり、また、202MHzにおけるインピーダンスは約59.313−j28.674Ωとなって、この際のVSWRは約1.75と十分2.0以下となる。さらに、中心周波数186MHzにおけるインピーダンスは約66.116+j25.359Ωとなって、この際のVSWRは約1.65と良好な値となる。このように、放射素子20aに給電部23aからコイル22aを介して給電することにより、給電部23aの高さHを約50mmと高くすると共に、放射素子20aと無給電素子21aとの間隔EDを約2mmまで小型化しても使用周波数帯域170〜202MHzの全域を確保することができるようになる。
【0024】
次に、接栓27aの長さHを約80mmとした場合に、放射素子20aのエレメント長ELを約430mm、無給電素子21aのエレメント長NLを約240mm、放射素子20aと無給電素子21aとの間隔EDを約15mmとした際の図7に示すホイップアンテナ5のVSWRの周波数特性およびインピーダンス特性を示すスミスチャートを図12に示す。
図12を参照すると、VSWR2.0以下の帯域幅は約47.4MHzの広帯域が得られており、VSWR2.0以下の比帯域は(47.4÷186)×100=30.8%となり、従来より約9.3%もの大幅に比帯域が広くなっている。また、170MHzにおけるインピーダンスは約40.097+j7.29624Ωとなって、この際のVSWRは約1.3と良好な値となり、また、202MHzにおけるインピーダンスは約60.479−j14.176Ωとなって、この際のVSWRは約1.4と良好な値となる。さらに、中心周波数186MHzにおけるインピーダンスは約72.683+j32.783Ωとなって、この際のVSWRは約1.9と2.0以下となる。このように、放射素子20aに給電部23aからコイル22aを介して給電することにより、接栓27aの長さHを約80mmと高くしても使用周波数帯域170〜202MHzの全域を確保することができるようになる。なお、図12に示す特性はコイル22aのインダクタンスが約30nH〜45nHの範囲であればほぼ同様となる。
【0025】
次に、接栓27aの長さHを約80mmとした場合に、放射素子20aのエレメント長ELを約430mm、無給電素子21aのエレメント長NLを約220mm、放射素子20aと無給電素子21aとの間隔EDを約2mmと変更した際の図7に示すホイップアンテナ5のVSWRの周波数特性およびインピーダンス特性を示すスミスチャートを図13に示す。ここではコイル22aのインダクタンスは約30nHとされている。
図13を参照すると、VSWR2.0以下の帯域幅は約42.6MHzの広帯域が得られており、VSWR2.0以下の比帯域は(42.6÷186)×100=22.9%となり、従来より約1.4%比帯域が広くなっている。また、170MHzにおけるインピーダンスは約28.702+j1.7711Ωとなって、この際のVSWRは約1.75と十分2.0以下となり、また、202MHzにおけるインピーダンスは約43.493−j4.7489Ωとなって、この際のVSWRは約1.2と良好な値となる。さらに、中心周波数186MHzにおけるインピーダンスは約58.723+j19.621Ωとなって、この際のVSWRは約1.5と良好な値となる。このように、放射素子20aに給電部23aからコイル22aを介して給電することにより、接栓27aの長さHを約80mmと高くすると共に、放射素子20aと無給電素子21aとの間隔EDを約2mmまで小型化しても使用周波数帯域170〜202MHzの全域を確保することができるようになる。
【0026】
次に、接栓27aの長さHを約130mmとした場合に、放射素子20aのエレメント長ELを約470mm、無給電素子21aのエレメント長NLを約240mm、放射素子20aと無給電素子21aとの間隔EDを約15mmとした際の図7に示すホイップアンテナ5のVSWRの周波数特性およびインピーダンス特性を示すスミスチャートを図14に示す。
図14を参照すると、VSWR2.0以下の帯域幅は約45.9MHzの広帯域が得られており、VSWR2.0以下の比帯域は(45.9÷186)×100=24.7%となり、従来より約3.2%比帯域が広くなっている。また、170MHzにおけるインピーダンスは約40.039+j9.5594Ωとなって、この際のVSWRは約1.35と良好な値となり、また、202MHzにおけるインピーダンスは約51.595−j6.7027Ωとなって、この際のVSWRは約1.15と良好な値となる。さらに、中心周波数186MHzにおけるインピーダンスは約84.391+j16.757Ωとなって、この際のVSWRは約1.8と2.0以下となる。このように、放射素子20aに給電部23aからコイル22aを介して給電することにより、接栓27aの長さHを約130mmと高くしても使用周波数帯域170〜202MHzの全域を確保することができるようになる。なお、図14に示す特性はコイル22aのインダクタンスが約45nH〜62nHの範囲であればほぼ同様となる。
【0027】
次に、接栓27aの長さHを約130mmとした場合に、放射素子20aのエレメント長ELを約470mm、無給電素子21aのエレメント長NLを約220mm、放射素子20aと無給電素子21aとの間隔EDを約2mmに変更した際の図7に示すホイップアンテナ5のVSWRの周波数特性およびインピーダンス特性を示すスミスチャートを図15に示す。
図15を参照すると、VSWR2.0以下の帯域幅は約41.8MHzの広帯域が得られており、VSWR2.0以下の比帯域は(41.8÷186)×100=22.5%となり、従来より約1.0%比帯域が広くなっている。また、170MHzにおけるインピーダンスは約29.777+j1.3309Ωとなって、この際のVSWRは約1.65と良好な値となり、また、202MHzにおけるインピーダンスは約41.880−j12.236Ωとなって、この際のVSWRは約1.4と良好な値となる。さらに、中心周波数186MHzにおけるインピーダンスは約67.711+j15.965Ωとなって、この際のVSWRは約1.5と良好な値となる。このように、放射素子20aに給電部23aからコイル22aを介して給電することにより、接栓27aの長さHを約130mmと高くすると共に、放射素子20aと無給電素子21aとの間隔EDを約2mmまで小型化しても使用周波数帯域170〜202MHzの全域を確保することができるようになる。なお、図15に示す特性はコイル22aのインダクタンスが約30nH〜45nHの範囲であればほぼ同様となる。
【0028】
上記したとおり、本発明の第2実施例にかかるホイップアンテナ5は、放射素子20aに給電部23aからコイル22aを介して給電することにより、給電部23aの高さを130mmまで高くしても広帯域することができる。このため、ホイップアンテナ5の下部に緩衝用のスプリングを設けても広帯域化することができるようになる。なお、放射素子20aと無給電素子21aとの間隔EDを約2mmまで狭めることが可能となり、ホイップアンテナ5の外形を細くして小型化することもできる。
【0029】
次に、ホイップアンテナの下部に緩衝用スプリングを設けた本発明の第2実施例にかかるホイップアンテナ6の具体的な構成を図16、図17、図18に示す。図16はホイップアンテナ6の具体的な構成を示す正面図であり、図17はホイップアンテナ6の具体的な構成の一部を示す背面図であり、図18はホイップアンテナ6における基板32の構成を示す正面図である。
図16ないし図18に示す本発明の第2実施例にかかるホイップアンテナ6は、テフロン等の高周波特性の良好な細長い矩形の基板32の一面における縁部に線状の放射素子30がプリントされており、基板26aの他面における縁部に線状の無給電素子31がプリントされている。放射素子30に給電するホイップアンテナ6の下部に設けられている給電部38は、同軸の接栓35と、接栓35の上に設けられた緩衝用のスプリング34とを有し、スプリング34内には接栓35から伸びる同軸ケーブル38aが配置されている。接栓35は、車両のルーフ等に固着されるアンテナベースに着脱自在に取り付けられる。
【0030】
放射素子30の下端はL字状に折曲されて形成されており、L字状の部位にコイル33の一端が接続され、コイル33の他端が給電点38bとされる同軸ケーブル38aの芯線が接続された基板32上に形成されたランドに電気的に接続されている。また、無給電素子31の下端は同軸ケーブル38aの上部に電気的に接続されている。これにより、接栓35および同軸ケーブル38aを介して放射素子30に給電される。基板32はFRP(Fiber Reinforced Plastics)等の合成樹脂製とされた円筒状のカバー部36により覆われており、カバー部36の先端にはトップ部37が嵌挿されている。カバー部36の下部は、スプリング34の上部から延伸している円筒状の部位の内部に嵌入されて固着される。
【0031】
ホイップアンテナ6において、使用周波数帯域が170〜202MHzとされ、接栓35の下端から給電点38bまでの高さHが約120mmとされた際に、コイル22aを含む放射素子30の先端から給電点38bまでのエレメント長ELが約340mm(接栓35の下端までの全長は約460mm)とされ、無給電素子31のエレメント長NLが約240mmとされている。また、放射素子30と無給電素子31との間隔EDが約10mmとされている。さらに、コイル33のインダクタンスは約62nHとされている。このように構成されたホイップアンテナ6は、スプリング34を有する給電部38の高さが高くされてもコイル33の作用により使用周波数帯域170〜202MHzの全域を確保することができるようになる。また、ホイップアンテナ6を備える車載用アンテナでは、走行中にアンテナが木や地下駐車場の屋根等の障害物に衝突してもスプリング34の作用により、衝突した際にホイップアンテナ6が折損することを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上説明した本発明のホイップアンテナにおいては、放射素子と無給電素子との間隔を最小2mmまで狭めることができることから、具体的な構成とされているホイップアンテナ6における外径を細くして小型化することができるようになる。
また、上記の説明では放射素子および無給電素子は基板上にプリントにより形成するようにしたが、線材からなる放射素子と無給電素子とを平行に配置して構成するようにしても良い。この際に、放射素子と無給電素子との間にスペーサを設けて、両者の間隔を規定するようにしても良い。
【符号の説明】
【0033】
1,2,3,4,5,6 ホイップアンテナ、10,10a,10b 放射素子、11,11,11b 無給電素子、12,12a,12b コイル、13,13a,13b 給電部、14 給電点、15 グランド、16a,16b 基板、17a,17b 接栓、20,20a 放射素子、21,21a 無給電素子、22,22a コイル、23,23a 給電部、24 給電点、25 グランド、26a 基板、27a 接栓、30 放射素子、31 無給電素子、32 基板、33 コイル、34 スプリング、35 接栓、36 カバー部、37 トップ部、38 給電部、38a 同軸ケーブル、38b 給電点、100 ホイップアンテナ、110 放射素子、111 基板、112 接栓、113 給電部、200 ホイップアンテナ、210 放射素子、211 無給電素子、212 基板、213 接栓、214 給電部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状の放射素子が形成されていると共に、該放射素子から所定間隔離隔されてほぼ平行に線状の無給電素子が形成された絶縁基板と、
該絶縁基板の下側に配置され、前記放射素子に給電点から給電すると共に、前記無給電素子を接地する給電部と、
前記放射素子の下端に一端が接続され、他端が前記給電点に接続されたコイルと、
を備えることを特徴とするホイップアンテナ。
【請求項2】
上記給電部には接栓と緩衝用のスプリングが設けられており、前記接栓から前記スプリング内を延伸した同軸ケーブルにより、前記緩衝用スプリングの上において前記給電点が形成されていることを特徴とする請求項1記載のホイップアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−4234(P2011−4234A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146365(P2009−146365)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000227892)日本アンテナ株式会社 (176)
【Fターム(参考)】