説明

ホイールクレーンのフック部保持具及びフック装置

【課題】簡単な作業で、ホイールクレーンの走行時の良好な視界と十分な地上高とが確保されるようにフック部を保持可能なホイールクレーンのフック部保持具を提供する。
【解決手段】ホイールクレーンのフック部保持具1は、フックブロック4を囲むようにそのフックブロック4に着脱可能に取り付けられる取付部22と、フック部6を支持するフック支持部24とを備え、取付部22とフック支持部24は、取付部22がフックブロック4に取り付けられることによって、フックブロック4が倒伏状態のブームに沿う姿勢で保持されたときにフック部6が鉛直方向からブームに沿う方向へ所定角度だけ回動した姿勢となるようにフック支持部24がフック部6を下から支持するような形状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールクレーンのフック部保持具及びフック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホイールクレーンは、車輪の回転により走行を行う下部走行体と、その下部走行体上に搭載された上部旋回体とを備えており、その上部旋回体に起伏自在に設けられたブームの先端からロープを介して昇降自在に吊り下げられるフック装置により吊荷の吊り作業が行われるようになっている。そして、このようなホイールクレーンの走行時には、ブームが前下がりとなるように最大に倒伏した状態とされる。この時、ブームの先端からフック装置が垂れ下がると、クレーンの走行に支障をきたす虞がある。そこで、下記特許文献1と下記特許文献2には、フック装置の垂れ下がりを防止するための技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、倒伏した状態のブームの先端部の下面に取り付けられ、ブームが最大に倒伏した状態においてフック装置をブームに沿うような姿勢で格納してフック装置の垂れ下がりを抑制するフック格納装置が示されている。このフック格納装置では、フック装置が巻き上げられることによってフック格納装置内にフック装置のフックブロックが係合し、それによって、フックブロックが倒伏状態のブームに沿うような姿勢をとるようになっている。
【0004】
また、引用文献2では、下部走行体上に主巻きフックを固定して、ホイールクレーンの走行のためにブームを最大に倒伏させたときには、ブームの先端から主巻きフックが垂れ下がらないようにすることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−341496号公報
【特許文献2】特開平9−208188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、フック装置のうちフックブロックの保持により当該フックブロックの垂れ下がりは防止されるが、吊荷を吊るフック部の垂れ下がりは防止できない。
【0007】
具体的には、上記特許文献1に開示されたクレーンのフック装置では、吊荷を吊るフック部がフックブロックに対して水平軸回りに回動可能に取り付けられている。このため、フックブロックがフック格納装置によって倒伏状態のブームに沿うような姿勢で格納されたとしても、フック部だけはフックブロックから鉛直下方に垂れ下がる。
【0008】
また、上記特許文献2の技術では、主巻きフックの垂れ下がりを防止するために必要な作業が煩雑であるとともに、クレーンの走行時における運転室からの視界が悪化するという問題点がある。
【0009】
具体的には、上記特許文献2の技術では、主巻きフックを下部走行体上に固定する際、ブームの先端から吊り下げられた主巻きフックが下部走行体上の当該フックの固定部位に配置されるようにブームの起伏角度を調節した後、主巻きフックの固定作業を行い、その後、ブームを走行時の姿勢である最大倒伏姿勢まで倒伏させる必要がある。このため、主巻きフックの垂れ下がりの防止に必要な作業が煩雑となる。また、主巻きフックを下部走行体上に固定する場合には、その下部走行体上に固定された主巻きフックとブームとの干渉を避けるため、ブームを大きく前下がりに倒伏させることができなくなる。その結果、クレーンの走行時に運転室からの視界がブームに遮られて良好な視界が得られなくなる。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、簡単な作業で、ホイールクレーンの走行時の良好な視界と十分な地上高とが確保されるようにフック部を保持可能なホイールクレーンのフック部保持具及びフック装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、起伏自在に設けられたブームと、そのブームの先端部からロープを介して昇降自在に吊り下げられたフックブロックと、そのフックブロックに水平軸回りに回動可能に設けられ、吊荷を吊るためのフック部と、前記ブームの先端部に取り付けられ、前記フックブロックが巻き上げられるのに応じて、前記フックブロックを前記ブームに沿う方向に変位させて保持するフックブロック保持部材とを備えたホイールクレーンに取り付けられ、前記フック部を保持するためのホイールクレーンのフック部保持具であって、前記フックブロックを囲むようにそのフックブロックに着脱可能に取り付けられる取付部と、前記フック部を支持するフック支持部とを備え、前記取付部と前記フック支持部は、前記取付部が前記フックブロックに取り付けられることによって、前記フックブロックが倒伏状態の前記ブームに沿う姿勢で保持されたときに前記フック部が鉛直方向から前記ブームに沿う方向へ所定角度だけ回動した姿勢となるように前記フック支持部が前記フック部を下から支持するような形状に形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
この請求項1に記載の発明では、フック部保持具をフックブロックに取り付けることによって、フック部の垂れ下がりを防止してホイールクレーンの走行時の良好な視界と十分な地上高を確保することができる。
【0013】
具体的には、本発明によるフック部保持具の取付部をフックブロックに取り付ければ、フックブロック保持部材によってフックブロックが倒伏状態のブームに沿う姿勢で保持されたときにフック部が鉛直方向からブームに沿う方向へ所定角度だけ回動した姿勢となるようにフック部保持具のフック支持部がフック部を下から支持するため、フックブロックが倒伏状態のブームに沿うように保持されたときのフック部の垂れ下がりを防止することができる。このように、フック部の垂れ下がりを防止できることにより、ホイールクレーンの走行時にブームが前下がりに倒伏されたとしても十分な地上高を確保することができる。また、フック部が垂れ下がらないので、ブームを大きく前下がりに傾斜するように倒伏させることが可能となり、ホイールクレーンの走行時に運転室からの視界がブームに遮られるのを防いで良好な視界を確保することができる。
【0014】
また、この請求項1に記載の発明では、フック部保持具の取付部をフックブロックに取り付けるだけでフック部の垂れ下がりを防止できるので、簡単な作業でフック部の垂れ下がりを防止することができる。
【0015】
具体的に、前述の従来技術では、クレーンの下部走行体上の固定部位にフックが位置するようにブームの起伏角度を調節すべく煩雑なブーム起伏操作を行う必要があり、さらに、フックを前記固定部位に固定した後、ブームを走行時の姿勢である前下がりの最大倒伏姿勢に倒伏させるという二度の起伏操作を要するのに対し、本発明によれば、フック部保持具の取付部をフックブロックに取り付けるだけで、上記のような煩雑なブームの起伏角度の調節や二度手間となるブームの起伏操作を行うことなく、フック部の垂れ下がりを防止することができる。従って、本発明では、従来に比べて簡単な作業でフック部の垂れ下がりを防止することができる。
【0016】
また、本発明では、下部走行体上にフックを固定する従来の技術のようにフック部がブームの倒伏の邪魔になることはないので、ブームを大きく前下がりに倒伏させることができ、ホイールクレーンの走行時に良好な視界を確保することができる。
【0017】
従って、本発明のフック部保持具によれば、簡単な作業で、ホイールクレーンの走行時の良好な視界と十分な地上高とが確保されるようにフック部を保持することができる。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のホイールクレーンのフック部保持具において、前記取付部は、前記フックブロックが前記ブームの先端部から吊り下げられた状態においてそのフックブロックが前記フック部の回動軸の延びる方向と直交する方向で且つ水平方向に進入可能な開口部を有し、前記フック支持部は、前記取付部のうち前記フックブロックが進入する側の一対の端部に着脱可能に結合してそれらの端部同士を連結することを特徴とするものである。
【0019】
この請求項2に記載の発明によれば、フックブロックがブームの先端部から吊り下げられた状態において、作業者が、取付部をフックブロックに対してフック部の回動軸の延びる方向と直交する方向で且つ水平方向に係合させ、その後、取付部のうちフックブロックが進入する側の一対の端部にフック支持部を結合させてそれら一対の端部同士を連結することによって、フック部保持具をフックブロックに取り付けることができる。すなわち、この発明によれば、作業者が、ブームの先端部から吊り下げられたフックブロックに対して横からフック部保持具の取付部を取り付けることができ、楽な作業姿勢でその取り付け作業を行うことができる。このため、フックブロックに対する取付部の取付作業にかかる作業負担を軽減することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のホイールクレーンのフック部保持具において、前記フック部保持具は、前記フックブロックとして、前記フック部の回動軸の延びる方向において互いに離間して配置され、当該フックブロックの両外側面を構成する一対の側板と、その一対の側板を貫通するように設けられ、前記フック部を前記一対の側板の間で支持するフック支持軸と、前記各側板の外面にそれぞれ突設され、前記フック支持軸の対応する端部を回動可能に支持する支持軸保持部とを有するフックブロックに取り付けられるものであって、前記取付部は、前記一対の側板を両外側から挟むように配置され、前記フックブロックが前記ブームの先端部から吊り下げられた状態において、対応する前記支持軸保持部上にそれぞれ載置される一対の載置部と、倒伏状態の前記ブームに沿う姿勢で保持された前記フックブロックにおいて上面となる面に当接し、前記一対の載置部を互いに連結する連結部とを有し、前記フック支持部は、前記フックブロックに対して前記連結部と反対側の位置で前記一対の載置部と着脱可能に結合し、前記一対の載置部を互いに連結することを特徴とするものである。
【0021】
この請求項3に記載の発明では、フックブロックがブームの先端部から吊り下げられた状態で、フック部保持具の取付部をフックブロックの横から一対の側板の両外側と前記上面となる面に跨るように係合させ、その後、フック支持部を取付部の一対の載置部に結合させてそれら一対の載置部をフック支持部によって連結することによって、フックブロックが吊り下げられた状態では、載置部がフックブロックの支持軸保持部によって下から支持されることによりフック部保持具がフックブロックに対して位置固定され、フックブロックが倒伏状態のブームに沿う姿勢で保持された時には、連結部がフックブロックの上面となる面によって支持されることによりフック部保持具がフックブロックに対して位置固定される。すなわち、この請求項3に記載の発明では、取付螺子等の取り付け手段によらないで、フック部保持具をフックブロックに対して固定することができる。このため、この請求項3に記載の発明では、フックブロックにフック部保持具の固定用の螺子穴等を形成しなくても、フックブロックにフック部保持具を間単に取り付けることができるので、既存のホイールクレーンのフックブロックにフック部保持具を簡単に後付けすることができる。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のホイールクレーンのフック部保持具において、前記フック支持部は、前記一対の載置部と着脱可能に結合する一対の接続部を有し、前記載置部と前記接続部には、それぞれピン穴が設けられており、前記載置部のピン穴と前記接続部のピン穴にピンが挿嵌されることによって前記載置部と前記接続部が互いに結合されることを特徴とするものである。
【0023】
この請求項4に記載の発明によれば、取付部の載置部とフック支持部の接続部とをピン結合することができるので、例えばボルトで締結する場合等に比べて載置部と接続部の結合作業を容易に行うことができる。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のホイールクレーンのフック部保持具において、前記フック支持部は、前記一対の接続部同士を連結し、前記フックブロックが倒伏状態の前記ブームに沿う姿勢で保持されたときに前記フック部が鉛直方向から前記ブームに沿う方向へ所定角度だけ回動した姿勢となるように前記フック部を下から支持する支持部位を有し、前記載置部と前記接続部のうち一方には、前記ピン穴が複数設けられており、その複数のピン穴は、前記載置部と前記接続部のうち他方に設けられたピン穴と前記ピンによって結合されたときに前記支持部位がそれぞれ異なる位置に配置されるように配設されていることを特徴とするものである。
【0025】
この請求項5に記載の発明では、ピン結合に用いるピン穴を変えれば、例えば、フック部の大きさが種々異なる場合でもそのフック部の大きさに対応した適切な位置で支持部位によってフック部を垂れ下がらないように支持することができる。
【0026】
請求項6に記載の発明は、ホイールクレーンに起伏自在に設けられたブームの先端部から吊り下げられるホイールクレーンのフック装置であって、前記ブームの先端部からロープを介して昇降自在に吊り下げられるフックブロックと、前記フックブロックに対して水平軸回りに回動可能に取り付けられ、吊荷を吊るためのフック部と、請求項3〜5のいずれか1項に記載のフック部保持具とを備え、前記フックブロックは、前記フック部の回動軸の延びる方向において互いに離間して配置され、当該フックブロックの両外側面を構成する一対の側板と、その一対の側板を貫通するように設けられ、前記フック部を前記一対の側板の間で支持するフック支持軸と、前記各側板の外面にそれぞれ突設され、前記フック支持軸の対応する端部を回動可能に支持する支持軸保持部とを有し、前記取付部の前記一対の載置部は、前記一対の側板を両外側から挟むように配置されるとともに、前記フックブロックが前記ブームの先端部から吊り下げられた状態において、対応する前記支持軸保持部上にそれぞれ載置され、前記連結部は、倒伏状態の前記ブームに沿う姿勢で保持された前記フックブロックにおいて上面となる面に当接するとともに、前記一対の載置部を互いに連結し、前記フック支持部は、前記フックブロックに対して前記連結部と反対側の位置で前記一対の載置部と着脱可能に結合し、前記一対の載置部を互いに連結することを特徴とするものである。
【0027】
この請求項6に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明と同様、フックブロックにフック部保持具の固定用の螺子穴等を形成しなくても、フックブロックにフック部保持具を間単に取り付けることができるので、既存のホイールクレーンのフックブロックにフック部保持具を簡単に後付けすることができる。また、この請求項6に記載の発明では、フックブロックがブームの先端部から吊り下げられた状態において、フック部保持具の取付部をフックブロックに係合させたときに、フックブロックの支持軸保持部を利用して取付部をフックブロックに対して位置固定することができるので、取付部の位置固定用の部分をフックブロックの側板の外側面に別途設ける必要がない。従って、この発明では、フックブロックを構成する部材点数の増大を防ぎつつ、フックブロックに対するフック部保持具の後付けの容易化を図ることができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、簡単な作業で、ホイールクレーンの走行時の良好な視界と十分な地上高とが確保されるようにフック部を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態によるフック部保持具を取り付けたホイールクレーンのフック装置を巻き上げる前の状態を示す側面図である。
【図2】図1に示したホイールクレーンのフック装置を巻き上げ、ブームを走行姿勢に倒伏させた状態を示す側面図である。
【図3】図1中のフック装置を部分的に拡大して示す図である。
【図4】図2中のフック装置を部分的に拡大して示す図である。
【図5】図3に示したフック装置のV−V線に沿った断面図である。
【図6】図3中のフック装置のVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】本発明の一実施形態によるフック部保持具の取付部の側面図である。
【図8】本発明の一実施形態によるフック部保持具の取付部の正面図である。
【図9】本発明の一実施形態によるフック部保持具のフック支持部の側面図である。
【図10】本発明の一実施形態によるフック部保持具のフック支持部の正面図である。
【図11】本発明の一実施形態の第1変形例によるフック部保持具のフック支持部の側面図である。
【図12】本発明の一実施形態の第1変形例によるフック部保持具をフックブロックに取り付けた状態を示す図4に対応する図である。
【図13】本発明の一実施形態の第1変形例によるフック部保持具をフックブロックに取り付けた状態を示す図4に対応する図である。
【図14】本発明の一実施形態の第2変形例によるフック部保持具の取付部の側面図である。
【図15】本発明の一実施形態の第2変形例によるフック部保持具をフックブロックに取り付けた状態を示す図4に対応する図である。
【図16】本発明の一実施形態の第2変形例によるフック部保持具をフックブロックに取り付けた状態を示す図4に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0031】
まず、図1〜図10を参照して、本発明の一実施形態によるホイールクレーン100のフック部保持具1及びフック装置2の構成について説明する。
【0032】
本実施形態のフック部保持具1は、図1に示すようなホイールクレーン100に取り付けられ、当該ホイールクレーン100のフック部6がフックブロック4から垂れ下がらないように当該フック部6を保持するためのものである。
【0033】
ホイールクレーン100は、車輪102aの回転により走行を行う下部走行体102と、その下部走行体102上に垂直軸回りに旋回可能に搭載され、運転室104aが設けられた上部旋回体104と、その上部旋回体104に起伏自在に設けられたブーム106と、後述するフック装置2のフックブロック4をブーム106に沿う姿勢で保持するフックブロック保持部材107と、ブーム106の先端部からロープ108を介して昇降自在に吊り下げられたフック装置2とを備えている。
【0034】
ブーム106は、伸縮可能となっており、ホイールクレーン100の走行時には、収縮状態で図2に示すような前下がりの最大倒伏姿勢(走行姿勢)にされる。
【0035】
フックブロック保持部材107は、後述するフックブロック4が巻き上げられるのに応じて、当該フックブロック4をブーム106に沿う方向に変位させて保持する。このフックブロック保持部材107は、倒伏状態のブーム106においてそのブーム106の先端部のうち下端となる部分に取り付けられている。このフックブロック保持部材107は、その上端部がブーム106の幅方向(水平方向)に延びる図略の軸部に対して回動可能に取り付けられている。これにより、フックブロック保持部材107は、前記図略の軸部を中心として図1に示すような鉛直方向に垂下した姿勢から後方へ向かってブーム106に沿う姿勢となる方向へ回動可能となっている。そして、図1に示す状態で、フックブロック4が巻き上げられることによりフックブロック保持部材107の下端部にフックブロック4が当接し、さらにフックブロック4が巻き上げられると、その巻き上げ力によってフックブロック保持部材107が後方へブーム106に沿う方向へ回動するとともに、フックブロック4も同方向へ変位してブーム106に沿った姿勢で保持される。
【0036】
フック装置2は、ブーム106の先端部からロープ108を介して昇降自在に吊り下げられるフックブロック4と、そのフックブロック4に水平軸回りに回動可能に設けられ、吊荷を吊るためのフック部6と、本実施形態のフック部保持具1とを有する。
【0037】
フックブロック4は、図3〜図5に示すように、一対の側板8と、シーブ支持軸10と、複数のシーブ12(図5参照)と、フック支持軸14と、フック用キーパプレート16とを有する。
【0038】
一対の側板8は、フック部6の後述する回動軸(水平軸)の延びる方向において互いに離間して配置されている。両側板8の外側面は、フックブロック4の両外側面をそれぞれ構成する。各側板8には、シーブ用貫通穴8a(図5参照)とフック用貫通穴8bが設けられている。各側板8のシーブ用貫通穴8aは、互いに対応する位置に配置されており、各側板8のフック用貫通穴8bは、互いに対応する位置に配置されている。シーブ用貫通穴8aは、フックブロック4がブーム106の先端部から吊り下げられた状態において側板8の上部となる部分に設けられ、側板8の幅方向の中心の位置に配設されている。フック用貫通穴8bは、フックブロック4がブーム106の先端部から吊り下げられた状態において側板8の下部となる部分に設けられ、側板8の幅方向の中心の位置に配設されている。また、各側板8の幅方向の両端縁は、シーブ用貫通穴8a付近の位置からフック用貫通穴8b側に位置するその側板8の長手方向の一端部に至るまで徐々に互いに接近するように直線的に傾斜している。
【0039】
シーブ支持軸10は、シーブ12を回転可能に支持するものであり、一対の側板8のシーブ用貫通穴8aに挿嵌されている。
【0040】
複数のシーブ12は、前記ロープ108が掛けられるものであり、シーブ支持軸10に軸支されている。この複数のシーブ12は、一対の側板8の間と各側板8の外側とにそれぞれ分かれて配置されている。
【0041】
フック支持軸14は、フック部6を一対の側板8の間で支持するものであり、一対の側板8のフック用貫通穴8bに挿嵌されることによりそれら両側板8を貫通するように設けられている。このフック支持軸14の軸方向の中央部には、その軸方向と直交する方向に貫通する挿通孔14a(図5参照)が設けられている。
【0042】
フック用キーパプレート16は、フック支持軸14をその軸回りに回転可能に支持するものであり、前記各側板8の外面にそれぞれ突設されている。このフック用キーパプレート16は、本発明の支持軸保持部の概念に含まれるものである。フック用キーパプレート16は、各側板8の外面のうちフック用貫通穴8bの両側の位置に設けられており、フック支持軸14のうちフック用貫通穴8bを通じて側板8の外側に突出した端部を回動可能に支持している。このフック用キーパプレート16の上面は、フックブロック4が鉛直方向に吊り下げられた状態で水平面となる平面状に形成されている。
【0043】
フック部6は、図5に示すように、直線的に延び、フック支持軸14の挿通孔14aに挿通される軸部6aと、その軸部6aの下端に連続して設けられ、吊荷が掛けられる掛部6bとを有する。軸部6aの基端部(図5の状態における上端部)は、挿通孔14aを通じてフック支持軸14から突出している。この軸部6aの基端部は、スラストベアリング6cを介してフック支持軸14に取り付けられており、ナット6dによってスラストベアリング6cに固定されている。これにより、フック部6が、軸部6aの軸心回りにフック支持軸14に対して回動可能となっている。そして、フック支持軸14が水平方向に延びるその軸心回りに回動可能となっていることにより、フック部6は、スラストベアリング6c、ナット6d及びフック支持軸14とともに水平軸(フック支持軸14の軸心)回りに回動可能となっている。
【0044】
そして、本実施形態によるフック部保持具1は、以上説明したような構造のホイールクレーン100に取り付けられ、前記フック部6を垂れ下がらないように保持するものである。
【0045】
具体的には、フック部保持具1は、フックブロック4に対して取り付けられる。このフック部保持具1は、取付部22と、フック支持部24と、ピン26と、抜け止め部材28とを備えている。
【0046】
取付部22とフック支持部24は、取付部22がフックブロック4に取り付けられることによって、フックブロック4が倒伏状態のブーム106に沿う姿勢で保持されたときにフック部6が鉛直方向からブーム106に沿う方向へ所定角度だけ回動した姿勢となるようにフック支持部24がフック部6を下から支持するような形状に形成されている。このようにフック部保持具1がフック部6を下から支持することによって、ホイールクレーン100の前部の地上高H(図2参照)として安全な走行が可能な十分な地上高が確保されるとともに、ホイールクレーン100が進入可能な坂道の角度に相当するアプローチアングルα(図2参照)として十分なアプローチアングルが確保されるようになっている。換言すれば、ブック部保持具1の取付部22及びフック支持部24の形状が、規定の十分な地上高Hを下回る位置及び規定の十分なアプローチアングルαを下回る位置までフック部6が垂れ下がらないようにそのフック部6を支持可能な形状となっている。
【0047】
取付部22は、一方向に開放された形状に形成されており(図8参照)、フックブロック4を囲むようにそのフックブロック4に着脱可能に取り付けられる。この取付部22は、フックブロック4がブーム106の先端部から鉛直方向に吊り下げられた状態においてそのフックブロック4がフック部6の回動軸であるフック支持軸14の延びる方向と直交する方向で且つ水平方向に進入可能な開口部22aを有している。
【0048】
具体的には、この取付部22は、一対の載置部30と、連結部32と、取手部34とを有する。
【0049】
一対の載置部30は、フック支持軸14の延びる方向においてフックブロック4の一対の側板8を両外側から挟むように配置され、フックブロック4がブーム106の先端部から吊り下げられた状態において、対応するフック用キーパプレート16上にそれぞれ載置される(図3及び図5参照)。各載置部30は、同様の形状の細長い板材からなり、特定方向に直線的に延びる第1部分30aと、その第1部分30aの先端側に連続して設けられ、第1部分30aに対して斜めに延びる第2部分30bとを有する。
【0050】
第1部分30aは、側板8のうち取付部22が取り付けられる部位の幅に略等しい長さを有している。そして、載置部30のうち第1部分30aがフック用キーパプレート16の上面に載置されるようになっており、フックブロック4が鉛直方向に吊り下げられた状態では、当該第1部分30aは水平方向に延びるように配置される。
【0051】
第2部分30bは、取付部22がフックブロック4に取り付けられた状態で、側板8の幅方向の一方の端縁から突出してフック部6の掛部6b側へ延びるようになっている。第2部分30bには、板厚方向に貫通する2つのピン穴30c(図7参照)が設けられている。この2つのピン穴30cは、第2部分30bの延びる方向に並んで互いに離間して配設されている。
【0052】
連結部32は、一対の載置部30を互いに連結するものであり、倒伏状態のブーム106に沿う姿勢で保持されたフックブロック4において上面となる面に当接する。具体的には、連結部32は、略L字形の断面を有している。この連結部32の断面L字形の一辺を形成する部分であり、フックブロック4の前記上面となる面に当接する部分である当接部32aが、一対の載置部30の基端部(一対の載置部30の第1部分30aのうち第2部分30bと反対側の端部)に溶接されており、それらの基端部同士を連結している。そして、この当接部32aと載置部30の第1部分30aのうちフック用キーパプレート16の上面に当接する端縁とが成す角度は、当接部32aが当接するフックブロック4の前記上面となる面(フックブロック4が吊り下げられた状態で側板8の後端縁となる傾斜した端縁)とフック用キーパプレート16の上面とが成す角度と同じ角度となっている。これにより、取付部22がフックブロック4に係合される際には、フック用キーパプレート16の上面に載置部30の第1部分30aが当接するとともに側板8の傾斜した端縁に連結部32の当接部32aが当接することによって取付部22がフックブロック4に対して位置固定されるようになっている。
【0053】
取手部34は、各載置部30の第1部分30aのうちその長手方向の中央部の外側面にそれぞれ設けられている。この取手部34は、作業者がフック部保持具1をフックブロック4に着脱する際に取付部22を保持するために把持する部分である。
【0054】
フック支持部24は、フック部6を支持するための部材である。このフック支持部24は、取付部22とは別部材となっており、その取付部22と着脱可能に結合する。フック支持部24は、図10に示すように、一方向に開放された形状に形成されている。そして、フック支持部24は、取付部22のうちフックブロック4が進入する側の一対の端部、すなわち、一対の載置部30の第2部分30bに着脱可能に結合してそれらの第2部分30b同士を連結する。
【0055】
具体的には、このフック支持部24は、一対の接続部36と、支持部位38と、一対の取手部40とを有する。
【0056】
一対の接続部36は、フックブロック4に対して前記連結部32と反対側の位置で一対の載置部30の第2部分30bと着脱可能に結合する。具体的には、接続部36は、直線的に延びる細長い板材からなり、その一方の端部には、板厚方向に貫通する2つのピン穴36a(図9参照)が設けられている。この2つのピン穴36aは、接続部36の延びる方向に並んで互いに離間して配設されており、第2部分30bに設けられた2つのピン穴30cと対応する位置に設けられている。一対の接続部36は、一対の載置部30の両外側に分かれて配置されるとともに対応する載置部30の第2部分30bに対してその第2部分30bと同方向に延びる姿勢で重ね合わされ、各接続部36に設けられた2つのピン穴36aと第2部分30bに設けられた2つのピン穴30cとが位置合わせされる。そして、それら位置合わせされたピン穴36a,30cに後述するようにピン26が挿嵌されることにより、載置部30の第2部分30bと接続部36とが互いに結合されるようになっている。
【0057】
また、一対の接続部36が載置部30の第2部分30bに結合された状態でその載置部30の第1部分30aとの間に成す角度は、取付部22がフックブロック4に係合されてその連結部32の当接部32aがフックブロック4の端縁に当接し、載置部30の第1部分30aがフック用キーパプレート16の上面に当接した状態で、フックブロック4が倒伏状態のブーム106に沿う姿勢で保持された時に、フック部6の下端の高さ位置が規定の地上高H以上となるとともにフック部6の下端が規定のアプローチアングルαの範囲内に入らないように後述の支持部位38がフック部6を支持できるような角度に設定されている。
【0058】
支持部位38は、フックブロック4が倒伏状態のブーム106に沿う姿勢で保持されたときにフック部6が鉛直方向からブーム106に沿う方向へ所定角度だけ回動した姿勢となるようにフック部6を下から支持する部位である。この支持部位38は、フック支持軸14と平行に延びる細長い平板状に形成されており、一対の接続部36のうち前記ピン穴36aが設けられた側(取付部22の第2部分30bと結合する側)と反対側の端部同士を連結している。この支持部位38は、一対の接続部36のピン穴36aが設けられた側と反対側の端部のフック部6側に位置する両端縁に掛け渡した状態でそれらの端縁に対して溶接されている。
【0059】
取手部40は、各接続部36の外側面の対応する箇所にそれぞれ設けられている。この取手部40は、作業者がフック部保持具1をフックブロック4に着脱する際にフック支持部24を保持するために把持する部分である。この取手部40は、各接続部36のうちピン穴36aが設けられた箇所と連結部32が結合される箇所との間に位置する部位に設けられている。
【0060】
ピン26は、図6に示すように、2本設けられており、各ピン26は、一方の載置部30の第2部分30bに設けられた対応するピン穴30cとその第2部分30bに重ねられる一方の接続部36の対応するピン穴36aに挿嵌されるとともに、他方の載置部30の第2部分30bに設けられた対応するピン穴30cとその第2部分30bに重ねられる他方の接続部36の対応するピン穴36aに挿嵌される。そして、ピン26は、このようにピン穴36a,30cに挿嵌された状態でフック支持軸14と平行に延びるように配置される。第2部分30bの2つのピン穴30cのうち第1部分30a寄りに位置するピン穴30cに挿嵌されたピン26は、倒伏状態のブーム106に沿うようにフックブロック4が配置されたときにそのフックブロック4の下面となる面に周面が当接するようになっている。これにより、取付部22をフックブロック4に係合させて、このピン26で取付部22の載置部30の第2部分30bとフック支持部24の接続部36とをピン結合すると、取付部22の連結部32の当接部32aと当該ピン26との間でフックブロック4が挟持される。
【0061】
各ピン26のうち前記ピン穴36aを通じて接続部36の外側に突出した端部には、径方向に貫通する図略の貫通穴が設けられている。各ピン26が前記ピン穴36a,30cに挿嵌された状態で、各ピン26の貫通穴に抜け止め部材28のピン部28が挿嵌されている。抜け止め部材28は、ピン部28の一端に止め輪28bが設けられており、ピン26の貫通穴にピン部28を挿嵌した後、止め輪28bを図3に示すようにピン部28の他端に掛けることによってピン部28がピン26の貫通穴から抜け出ないようになっている。そして、各ピン26の端部の貫通穴に抜け止め部材28のピン部28が挿嵌されることによって、各ピン26がピン穴36a,30cから抜け出るのが防止されている。
【0062】
次に、本実施形態によるフック部保持具1のフックブロック4に対する取付方法について説明する。
【0063】
まず、フック部保持具1をフックブロック4に取り付ける際には、図1に示すように、略水平姿勢のブーム106の先端からフック装置2がロープ108を介して吊り下げられた状態で、作業者がフック部保持具1の取付部22を持ち上げてその取付部22をフックブロック4に対して後側から係合させる。この際、取付部22の連結部32の当接部32aがフックブロック4の一対の側板8の後端縁に当接するとともに、取付部22の一対の載置部30が一対の側板8の両外側に分かれて配置されてその側板8の外側面に重なるように取付部22をフックブロック4に係合させる。そして、この際、取付部22の各載置部30の第1部分30aを対応するフック用キーパプレート16上に載置する。これにより、作業者が取付部22を手で保持しなくても、取付部22はフックブロック4に係合した状態で位置固定される。
【0064】
次に、作業者は、フック部保持具1のフック支持部24を持ち上げ、そのフック支持部24の一対の接続部36が取付部22の一対の載置部30の第2部分30bの外側に重なるようにフック支持部24を配置する。そして、接続部36に設けられた2つのピン穴36aを、その接続部36が重ねられた第2部分30bに設けられた2つのピン穴30cに対して位置合わせし、ピン26を各ピン穴36a,30cに挿嵌する。これにより、取付部22の一対の載置部30とフック支持部24の一対の接続部36がピン結合される。そして、各ピン26の端部に設けられた貫通穴に抜け止め部材28のピン部28aを挿嵌し、止め輪28bでピン部28aの抜け止めをすることにより、ピン穴36a,30cからのピン26の脱落を防止する。以上のようにして、フック部保持具1がフックブロック4に対して取り付けられる。
【0065】
次に、本実施形態のフック部保持具1によりフック部6が保持されるプロセスについて説明する。
【0066】
図1に示すように、フック部保持具1をフックブロック4に取り付けた後、クレーン100のオペレータが図略のフック用ウィンチを操作してフックブロック4を巻き上げる。この際、フックブロック4がフックブロック保持部材107に当接し、さらにフックブロック4が巻き上げられると、その巻き上げ力によってフックブロック保持部材107が後方へブーム106に沿う方向に回動し、それに伴ってフックブロック4も同方向に変位する。この際、フック部6は、フック支持軸14とともにフックブロック4から垂れ下がる方向に回動するが、当該フック部6の掛部6bがフック部保持具1の支持部位38に当接する位置でその回動が停止され、それ以上、回動しない。
【0067】
その後、オペレータは、ブーム106の倒伏操作を行い、ブーム106を前下がりに倒伏した走行姿勢にさせる。この走行姿勢では、図2に示すように、フック部保持具1によってフック部6の垂れ下がりが防止されることにより、ホイールクレーン100の前部の十分な地上高H及び十分なアプローチアングルαが確保される。
【0068】
以上説明したように、本実施形態では、フック部保持具1の取付部22をフックブロック4に取り付ければ、フックブロック保持部材107によってフックブロック4が倒伏状態のブーム106に沿う姿勢で保持されたときにフック部6が鉛直方向からブーム106に沿う方向へ所定角度だけ回動した姿勢となるようにフック部保持具1のフック支持部24がフック部6を下から支持するため、フックブロック4が倒伏状態のブーム106に沿うように保持されたときのフック部6の垂れ下がりを防止することができる。このように、フック部6の垂れ下がりを防止できることにより、ホイールクレーン100の走行時にブーム106が前下がりに倒伏されたとしても十分な地上高を確保することができる。また、フック部6が垂れ下がらないので、ブーム106を大きく前下がりに傾斜するように倒伏させることが可能となり、ホイールクレーン100の走行時に運転室104aからの視界がブーム106に遮られるのを防いで良好な視界を確保することができる。
【0069】
また、本実施形態では、フック部保持具1の取付部22をフックブロック4に取り付けるだけで、煩雑なブーム106の起伏角度の調節や二度手間となるブーム106の起伏操作を行うことなく、フック部6の垂れ下がりを防止することができる。従って、本実施形態では、従来に比べて簡単な作業でフック部6の垂れ下がりを防止することができる。
【0070】
また、本実施形態では、下部走行体上にフックを固定する従来の技術とは異なり、フック部6がブーム106の倒伏の邪魔になることはないので、ブーム106を大きく前下がりに倒伏させることができ、ホイールクレーン100の走行時に良好な視界を確保することができる。
【0071】
従って、本実施形態によれば、簡単な作業で、ホイールクレーン100の走行時の良好な視界と十分な地上高とが確保されるようにフック部6を保持することができる。
【0072】
また、本実施形態では、フックブロック4がブーム106の先端部から吊り下げられた状態において、作業者が、取付部22をフックブロック4に対して後方から係合させ、その後、取付部22のうちフックブロック4が進入する側の一対の端部である一対の第2部分30bにフック支持部24の一対の接続部36を結合させてそれら一対の第2部分30bをフック支持部24を介して互いに連結することによって、フック部保持具1をフックブロック4に取り付けることができる。すなわち、本実施形態によれば、作業者が、ブーム106の先端部から吊り下げられたフックブロック4に対して後方からフック部保持具1の取付部22を取り付けることができ、楽な作業姿勢でその取り付け作業を行うことができる。このため、フックブロック4に対する取付部22の取付作業にかかる作業負担を軽減することができる。
【0073】
また、本実施形態では、フックブロック4がブーム106の先端部から吊り下げられた状態で、フック部保持具1の取付部22をフックブロック4の後方から一対の側板8の両外側とその後端縁に跨るように係合させ、その後、フック支持部24を取付部22の一対の載置部30に結合させてそれら一対の載置部30をフック支持部24によって連結することによって、フックブロック4が吊り下げられた状態では、載置部30がフックブロック4のフック用キーパプレート16によって下から支持されることによりフック部保持具1がフックブロック4に対して位置固定され、フックブロック4が倒伏状態のブーム106に沿う姿勢で保持された時には、連結部32がフックブロック4の上面となる面によって支持されることによりフック部保持具1がフックブロック4に対して位置固定される。すなわち、本実施形態では、取付螺子等の取り付け手段によらないで、フック部保持具1をフックブロック4に対して固定することができる。このため、本実施形態では、フックブロック4にフック部保持具1の固定用の螺子穴等を形成しなくても、フックブロック4にフック部保持具1を間単に取り付けることができるので、既存のホイールクレーン100のフックブロック4にフック部保持具1を簡単に後付けすることができる。
【0074】
また、本実施形態では、取付部22の載置部30の第2部分30bとフック支持部24の接続部36とをピン結合することができるので、例えばボルトで締結する場合等に比べて載置部30と接続部36の結合作業を容易に行うことができる。
【0075】
また、本実施形態では、フックブロック4がブーム106の先端部から吊り下げられた状態において、フック部保持具1の取付部22をフックブロック4に係合させたときに、フックブロック4のフック用キーパプレート16を利用して取付部22をフックブロック4に対して位置固定することができるので、取付部22の位置固定用の部分をフックブロック4の側板8の外側面に別途設ける必要がない。従って、本実施形態では、フックブロック4を構成する部材点数の増大を防ぎつつ、フックブロック4に対するフック部保持具1の後付けの容易化を図ることができる。
【0076】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0077】
例えば、図11〜図13に示す上記実施形態の第1変形例のように、フック支持部24の接続部36に設けられた複数のピン穴36aが、取付部22の載置部30aの第2部分30bに設けられたピン穴30cとピン26によって結合されたときに支持部位38が接続部36の長手方向において異なる位置に配置されるように配設されていてもよい。具体的には、接続部36には、3つのピン穴36aが並んで設けられており、その3つのピン穴36aのうち支持部位38から遠い側の2つのピン穴36aと載置部30aの第2部分30bに設けられた2つのピン穴30cとをピン結合する場合(図12参照)には、比較的大きなフック部6を適切な位置で支持部位38によって支持することができ、一方、前記3つのピン穴36aのうち支持部位38に近い側の2つのピン穴36aと載置部30aの第2部分30bに設けられた2つのピン穴30cとをピン結合する場合(図13参照)には、比較的小さなフック部6を適切な位置で支持部位38によって支持することができる。
【0078】
この第1変形例の構成によれば、前記3つのピン穴36aのうちピン結合に用いるピン穴36aを変えれば、フック部6の大きさが種々異なる場合でもそのフック部6の大きさに対応した適切な位置で支持部位38によってフック部6を垂れ下がらないように支持することができる。
【0079】
また、図14〜図16に示す上記実施形態の第2変形例のように、取付部22の載置部30の第2部分30bに、2つのピン穴30cを1組として2組のピン穴30cが第1部分30aの延びる方向に沿って並んで配設されていてもよい。この第2変形例では、図16に示すように、フックブロック4の側板8の幅が大きい場合には、前記2組のピン穴30cのうち第1部分30aから遠い方の組のピン穴30cとフック支持部24の接続部36に設けられた2つのピン穴36aとをピン結合することにより、側板8の幅方向の一方の端縁の外側でピン26により載置部30の第2部分30bと接続部36とをピン結合することができる。また、この第2変形例では、図15に示すように、フックブロック4の側板8の幅が前記図16の場合よりも小さい場合には、前記2組のピン穴30cのうち第1部分30aに近い方の組のピン穴30cとフック支持部24の接続部36に設けられた2つのピン穴36aとをピン結合することにより、2つのピン26のうち一方が側板8の幅方向の一方の端縁に当接する位置で載置部30の第2部分30bと接続部36とをピン結合することができる。すなわち、この第2変形例では、フックブロック4の側板8の幅に応じて、取付部22の載置部30とフック支持部24の接続部36とをピン結合する位置を選択できるようになっている。
【符号の説明】
【0080】
1 フック部保持具
4 フックブロック
6 フック部
8 側板
14 フック支持軸
16 フック用キーパプレート(支持軸保持部)
22 取付部
24 フック支持部
26 ピン
30 載置部
30c ピン穴
32 連結部
36 接続部
36a ピン穴
38 支持部位
106 ブーム
107 フックブロック保持部材
108 ロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起伏自在に設けられたブームと、そのブームの先端部からロープを介して昇降自在に吊り下げられたフックブロックと、そのフックブロックに水平軸回りに回動可能に設けられ、吊荷を吊るためのフック部と、前記ブームの先端部に取り付けられ、前記フックブロックが巻き上げられるのに応じて、前記フックブロックを前記ブームに沿う方向に変位させて保持するフックブロック保持部材とを備えたホイールクレーンに取り付けられ、前記フック部を保持するためのホイールクレーンのフック部保持具であって、
前記フックブロックを囲むようにそのフックブロックに着脱可能に取り付けられる取付部と、
前記フック部を支持するフック支持部とを備え、
前記取付部と前記フック支持部は、前記取付部が前記フックブロックに取り付けられることによって、前記フックブロックが倒伏状態の前記ブームに沿う姿勢で保持されたときに前記フック部が鉛直方向から前記ブームに沿う方向へ所定角度だけ回動した姿勢となるように前記フック支持部が前記フック部を下から支持するような形状に形成されている、ホイールクレーンのフック部保持具。
【請求項2】
前記取付部は、前記フックブロックが前記ブームの先端部から吊り下げられた状態においてそのフックブロックが前記フック部の回動軸の延びる方向と直交する方向で且つ水平方向に進入可能な開口部を有し、
前記フック支持部は、前記取付部のうち前記フックブロックが進入する側の一対の端部に着脱可能に結合してそれらの端部同士を連結する、請求項1に記載のホイールクレーンのフック部保持具。
【請求項3】
前記フック部保持具は、前記フックブロックとして、前記フック部の回動軸の延びる方向において互いに離間して配置され、当該フックブロックの両外側面を構成する一対の側板と、その一対の側板を貫通するように設けられ、前記フック部を前記一対の側板の間で支持するフック支持軸と、前記各側板の外面にそれぞれ突設され、前記フック支持軸の対応する端部を回動可能に支持する支持軸保持部とを有するフックブロックに取り付けられるものであって、
前記取付部は、前記一対の側板を両外側から挟むように配置され、前記フックブロックが前記ブームの先端部から吊り下げられた状態において、対応する前記支持軸保持部上にそれぞれ載置される一対の載置部と、倒伏状態の前記ブームに沿う姿勢で保持された前記フックブロックにおいて上面となる面に当接し、前記一対の載置部を互いに連結する連結部とを有し、
前記フック支持部は、前記フックブロックに対して前記連結部と反対側の位置で前記一対の載置部と着脱可能に結合し、前記一対の載置部を互いに連結する、請求項2に記載のホイールクレーンのフック部保持具。
【請求項4】
前記フック支持部は、前記一対の載置部と着脱可能に結合する一対の接続部を有し、
前記載置部と前記接続部には、それぞれピン穴が設けられており、
前記載置部のピン穴と前記接続部のピン穴にピンが挿嵌されることによって前記載置部と前記接続部が互いに結合される、請求項3に記載のホイールクレーンのフック部保持具。
【請求項5】
前記フック支持部は、前記一対の接続部同士を連結し、前記フックブロックが倒伏状態の前記ブームに沿う姿勢で保持されたときに前記フック部が鉛直方向から前記ブームに沿う方向へ所定角度だけ回動した姿勢となるように前記フック部を下から支持する支持部位を有し、
前記載置部と前記接続部のうち一方には、前記ピン穴が複数設けられており、
その複数のピン穴は、前記載置部と前記接続部のうち他方に設けられたピン穴と前記ピンによって結合されたときに前記支持部位がそれぞれ異なる位置に配置されるように配設されている、請求項4に記載のホイールクレーンのフック部保持具。
【請求項6】
ホイールクレーンに起伏自在に設けられたブームの先端部から吊り下げられるホイールクレーンのフック装置であって、
前記ブームの先端部からロープを介して昇降自在に吊り下げられるフックブロックと、
前記フックブロックに対して水平軸回りに回動可能に取り付けられ、吊荷を吊るためのフック部と、
請求項3〜5のいずれか1項に記載のフック部保持具とを備え、
前記フックブロックは、前記フック部の回動軸の延びる方向において互いに離間して配置され、当該フックブロックの両外側面を構成する一対の側板と、その一対の側板を貫通するように設けられ、前記フック部を前記一対の側板の間で支持するフック支持軸と、前記各側板の外面にそれぞれ突設され、前記フック支持軸の対応する端部を回動可能に支持する支持軸保持部とを有し、
前記取付部の前記一対の載置部は、前記一対の側板を両外側から挟むように配置されるとともに、前記フックブロックが前記ブームの先端部から吊り下げられた状態において、対応する前記支持軸保持部上にそれぞれ載置され、
前記連結部は、倒伏状態の前記ブームに沿う姿勢で保持された前記フックブロックにおいて上面となる面に当接するとともに、前記一対の載置部を互いに連結し、
前記フック支持部は、前記フックブロックに対して前記連結部と反対側の位置で前記一対の載置部と着脱可能に結合し、前記一対の載置部を互いに連結する、ホイールクレーンのフック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−236027(P2011−236027A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110282(P2010−110282)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】