説明

ホイールローダ

【課題】機械室と冷却器室とを仕切る隔壁の着脱が容易なホイールローダを提供する。
【解決手段】ホイールローダは、ホイールローダの後部車体に設けられた機械室と、機械室の後方でホイールローダの後部車体に設けられた冷却器室と、機械室と冷却器室との仕切りであって、少なくとも一部がホイールローダの左右方向に挿抜可能な板状の隔壁と、ホイールローダの左右方向に挿抜される隔壁を案内するガイドとを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールローダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダでは、後部車体に機械室と冷却器室が設けられている。そして、機械室に設けられたエンジンからの騒音防止等のために、機械室と冷却器室との間が隔壁で仕切られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−142597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した特許文献に記載のホイールローダでは、エンジンの点検等のために隔壁を取り外す際、隔壁の固定を解除した後、隔壁を車外に引き出すのが困難である。また、一旦車外に引き出した隔壁を再び車内に挿入するのが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1) 請求項1の発明によるホイールローダは、ホイールローダの後部車体に設けられた機械室と、機械室の後方でホイールローダの後部車体に設けられた冷却器室と、機械室と冷却器室との仕切りであって、少なくとも一部がホイールローダの左右方向に挿抜可能な板状の隔壁と、ホイールローダの左右方向に挿抜される隔壁を案内するガイドとを備えることを特徴とする。
(2) 請求項2の発明は、請求項1に記載のホイールローダにおいて、ガイドは、隔壁の下方に設けられていて、ホイールローダの左右方向に挿抜される隔壁を案内するとともに下方から支持する案内レールであることを特徴とする。
(3) 請求項3の発明は、請求項2に記載のホイールローダにおいて、隔壁の下端は、上方に向かって折り返されており、案内レールは、隔壁を案内する際に隔壁の下端との当接位置よりも下方に水抜き穴が設けられていることを特徴とする。
(4) 請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のホイールローダにおいて、隔壁は、少なくとも上側の隔壁と下側の隔壁の上下2つに分割され、下側の隔壁がホイールローダの左右方向に挿抜可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、機械室と冷却器室との仕切りであって、少なくとも一部がホイールローダの左右方向に挿抜可能な板状の隔壁と、ホイールローダの左右方向に挿抜される隔壁を案内するガイドとを備えるように構成したので、隔壁を容易に着脱できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ホイールローダの側面図である。
【図2】後部車体に設けられた建屋カバーの内部を模式的に示す側面図である。
【図3】後部車体に設けられた建屋カバーの内部を模式的に示す斜視図である。
【図4】隔壁およびガイドレールの斜視図である。
【図5】図4のV−V矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1〜5を参照して、本発明によるホイールローダの一実施の形態を説明する。図1は、本実施の形態に係るホイールローダの側面図である。図2は、ホイールローダ100の後部車体120の後述する建屋カバー130の内部を模式的に示す側面図である。図3は、後部車体120の建屋カバー130の内部を模式的に示す斜視図である。
【0009】
ホイールローダ100は、アーム111,バケット112,タイヤ113等を有する前部車体110と、運転室121,機械室(エンジン室)122,冷却器室126,タイヤ123等を有する後部車体120とで構成される。エンジン室122は、上方がエンジンフード140で、側方が開閉可能な建屋カバー130で覆われている。なお、後述するように、建屋カバー130は、上部のヒンジを中心に外側に向かって開くように構成されており、不図示のガススプリングによって開いた状態で保持されるように構成されている。
【0010】
エンジンフード140には、エンジン301の駆動に必要な空気を外部から取り込むための不図示の吸気管と、排気ガスを排気するためのテールパイプ171が取り付けられている。冷却器室126は、エンジン室122の後方に設けられており、エンジン室122とは隔壁360,370によって仕切られている。冷却器室126の側面は、建屋カバー130の一部と冷却器用建屋カバー132とで覆われ、冷却器室126の上面は、冷却器用建屋カバー132で覆われている。冷却器室126には、複数の冷却器(熱交換器)等が設けられている。冷却器用建屋カバー132は、後方で開口している。当該開口部分は、開閉可能に取り付けられたグリル200によって覆われている。
【0011】
エンジン室122内で、エンジン301の上方には、不図示のエアクリーナと、排気ガス浄化装置320とが設けられている(図2)。なお、排気ガス浄化装置320には、酸化触媒や、粒子状物質の除去フィルタや、消音装置が設けられている。
【0012】
後部車体120の後方にはカウンタウエイト124が取り付けられている。エンジン室122の前方には、作動油タンク125が設けられている。
【0013】
アーム111は不図示のアームシリンダの駆動により上下方向に回動(俯仰動)し、バケット112はバケットシリンダ115の駆動により上下方向に回動(ダンプまたはクラウド)する。前部車体110と後部車体120はセンタピン101により互いに回動自在に連結され、ステアリングシリンダ116の伸縮により後部車体120に対し前部車体110が左右に屈折する。説明の便宜上、本実施の形態では各図に記載したように前後左右方向および上下方向を規定する。
【0014】
冷却器室126には、ラジエータフレーム135と、空冷ファンユニット297とが配設されている。ラジエータフレーム135には、エンジン301の冷却水を冷却するラジエータ291や、作動油の冷却用の不図示のオイルクーラ、エンジン301の過給器で加圧された空気を冷却する不図示のインタークーラ等が取り付けられている。なお、ホイールローダ100の機種により、ラジエータフレームには、トランスミッションオイルクーラや、運転室121の空調用のエアコンのコンデンサなどの各種の冷却器も取り付けられる。ラジエータフレームは、後部車体120に固定されている。
【0015】
空冷ファンユニット297は、ファンモータ297aで駆動される空冷ファン297bと、ファンシュラウド297cとを備えており、ラジエータフレーム135の前方に配設されている。
【0016】
−−−隔壁360,370について−−−
上述したように、隔壁360,370は、エンジン室122と冷却器室126とを仕切る部材であり、エンジン301で発生する騒音を抑制するものである。すなわち、建屋カバー130の冷却器室126の側方、およびグリル200には、冷却用の空気が出入りするための開口が設けられているので、これらの開口からエンジン301で発生する騒音が外部に伝達されるのを抑止するために隔壁360,370が設けられている。隔壁360,370は、後部車体120に立設された略門型の建屋カバー支持部材160の後面に、たとえばボルト止めなどによって固定されている。隔壁360は、建屋カバー支持部材160の上部に取り付けられ、隔壁370は、隔壁360の下方で建屋カバー支持部材160および後述するガイドレール380の前側案内板381に、たとえばボルトおよびナットによって取り付けられている。
【0017】
たとえば、エンジン301の不図示のベルト類の点検や調節、交換、不図示の作動油ポンプからファンモータ297aへ作動油を送るホースの交換などの作業の際、下側の隔壁370が障害となる。そのため、これらの作業を行う際には、下側の隔壁370を取り外し、作業終了後に再び隔壁370を取り付ける。
【0018】
そこで、図3,4に示すように、本実施の形態のホイールローダでは、下側の隔壁370の着脱が容易となるように隔壁370の下方にガイドレール380を設けている。図4は、隔壁370およびガイドレール380の斜視図である。ガイドレール380は、略門型形状を呈する建屋カバー支持部材160の左右の脚部の間を左右方向に延在するように配設されている。ガイドレール380は、隔壁370を左右方向に移動させる際に隔壁370を下方から支持するとともに、隔壁370の左右方向への移動を案内する。隔壁370は、ホイールローダ100の右側へも左側へも抜き出して取り外すことができる。
【0019】
後に詳述するガイドレール380で支持および案内されやすくなるように、隔壁370は次のように構成されている。すなわち、隔壁370は、ガイドレール380との接触部分における面圧を低減して左右方向に挿抜する際のガイドレール380上での摺動性が良好となるように、および、板状の隔壁370の強度向上のために下端371および上端372がヘミング曲げとされて折り返されている。また、隔壁370は、板状の隔壁370の強度向上のために、後方に向かって突出するように加工された、上下方向に延在する突状部373を有する。
【0020】
上述したように、隔壁360の下方で建屋カバー支持部材160およびガイドレール380の前側案内板381に隔壁370がボルトおよびナットによって固定されている。本実施の形態では、上述した点検作業等のための隔壁370の着脱を容易にするため、隔壁370の固定箇所が、作業員の手が容易に届くように、建屋カバー130の近傍、すなわち隔壁370の左右端近傍に設けられている。図4において、391は、隔壁370を建屋カバー支持部材160およびガイドレール380の前側案内板381に固定するためのボルトである。
【0021】
このように、隔壁370の固定が略矩形形状を呈する板状の隔壁370の四隅の近傍だけであり、矩形の中央付近では固定していないため、エンジン301の振動等によって隔壁370が振動しやすくなってしまう。そこで、本実施の形態では、上述したように、下端371および上端372の折り返し部分や突状部373を設けることで、隔壁370を補強している。これにより、ホイールローダ100の運転中の隔壁370の振動を抑止できる。
【0022】
隔壁370には、ホイールローダ100の機側にいる作業員が左右方向に挿抜する際の手を掛ける場所として、取っ手穴374が左右端近傍に設けられている。取っ手穴374は、板状の隔壁370に設けられた開口である。取っ手穴374を介したエンジン301からの音の漏洩や、エンジン室122と冷却器室126との間の意図しない空気の流れを防止するために、不使用時には取っ手穴374を閉塞することが望ましい。
【0023】
そこで、本実施の形態では、取っ手穴374を閉塞するための揺動カバー375を設けている。揺動カバー375は、取っ手穴374の上方に設けられた軸に揺動可能に軸支され、自重によって垂下している板状の部材である。取っ手穴374を使用する際には、揺動カバー375を揺動させることで取っ手穴374を露出させればよい。このように取っ手穴374および揺動カバー375を設けることで、簡単な構成で隔壁370が挿抜し易くなるとともに、取っ手穴374からの騒音防止等を実現できる。
【0024】
図4に示すように、隔壁370の右下および左下の隅376には、R面取りが施されている。本実施の形態では、隔壁370の左右方向への挿抜に支障が出ないように、ある程度大きな半径でR面取りを施している。すなわち、たとえば、隔壁370を左から右へ挿入する際に、多少隔壁370が右下がりになっても右側の隅376がガイドレール380の後述する水抜き穴383に引っ掛かりにくくなるように、右側の隅376にR面取りが施されている。左側の隅376についても同様である。
【0025】
隔壁370では、下端371および上端372の折り返しは、隔壁370の後面に設けられている。突状部373は、隔壁370の後方に向かって突出している。揺動カバー375は、隔壁370の後面に設けられている。すなわち、隔壁370の前面には前方に突出する部位がない。このようにすることで、建屋カバー支持部材160の後面に取り付けられる隔壁370が、ガイドレール380に案内されて左右方向に挿抜される際に建屋カバー支持部材160の後面と干渉する部分がなくなる。これにより、隔壁370が挿抜し易くなる。
【0026】
ガイドレール380は、隔壁370の前方で略鉛直方向に延在するように立設されている前側案内板381と、前側案内板381の後面に設けられて、後斜め上方に向かって延在する後側案内板382とを有する。図4,5に示すように、後側案内板382には、冷却器室内126内に入り込んだ雨水や塵埃等を排出するための水抜き穴383が設けられている。図5は、図4のV−V矢視断面図である。図5に示すように、ガイドレール380は、隔壁370の下端371近傍の前面に前側案内板381の後面が当接し、折り返されている隔壁370の下端371の後斜め下方から後側案内板382が当接する。
【0027】
すなわち、ガイドレール380は、前側案内板381と後側案内板382とによって、隔壁370を下方から支持する受け部が構成されているとともに、隔壁370が左右方向に挿抜される際の案内部が構成されている。エンジン301の点検等のために隔壁370を着脱する際、隔壁370がガイドレール380で下方から支持されるとともに、前後方向への移動が規制されつつ左右方向へ案内されるので、隔壁370の挿抜が容易となる。
【0028】
なお、隔壁370を外す際には、建屋カバー130を上部のヒンジを中心に外側に向かって開き、不図示のガススプリングによって開いた状態で保持させておく。そして、隔壁370を固定しているボルト391を外して、隔壁370をガイドレール380で支持および案内させながら、右側または左側に引き抜く。隔壁370を取り付ける場合は、上述した隔壁370を外す手順とは逆の手順で取り付ければよい。
【0029】
図5に示すように、水抜き穴383は、前側案内板381と後側案内板382とによって下方から支持している隔壁370の下端371よりも下方に設けられている。これにより、隔壁370が左右方向に挿抜される際に隔壁370の下端371が水抜き穴383に引っ掛かることがないので、隔壁370の挿抜が容易となる。また、水抜き穴383の存在により、前側案内板381と後側案内板382との間に溜まった塵埃や土砂、水などを水抜き穴383から下方へ落とすことができる。これにより、前側案内板381と後側案内板382との間に溜まった塵埃や土砂などによって、隔壁370が左右方向に挿抜される際に抵抗が増えて挿抜しにくくなることを抑止できる。
【0030】
−−−変形例−−−
(1) 上述の説明では、上側の隔壁360と下側の隔壁370とが設けられ、下側の隔壁370がガイドレール380によって案内、支持されるように構成しているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、上側の隔壁360に対しても同様にガイドレール380と同様のガイドレールを設けてもよい。そして、上側の隔壁360を下側の隔壁370と同様の構成としてもよい。
【0031】
(2) 上述の説明では、隔壁が上下で2分割されているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、隔壁が1枚であってもよい。この場合、この1枚の隔壁を上述した下側の隔壁370と同様に構成してもよい。そして、この1枚の隔壁を上述したガイドレール380と同様のガイドレールによって案内、支持するように構成してもよい。また、たとえば、隔壁が上下方向で3枚以上に分割されていてもよい。
【0032】
(3) 上述の説明では、隔壁370の下端371および上端372の双方に折り返しを設けるように構成しているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、振動に対する隔壁370の強度が十分であるのであれば、折り返しは下端371だけに設けてもよい。
【0033】
(4) 上述の説明では、隔壁370には、上下方向に延在する突状部373がたとえば3箇所設けられているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、振動に対する隔壁370の強度によっては、突状部373がなくてもよく、1箇所でもよく、2箇所でもよく、4箇所以上でもよい。また、突状部373が上下方向以外の方向、たとえば左右方向に延在していてもよく、斜め方向に延在していてもよい。
【0034】
(5) 上述の説明では、ガイドレール380が、隔壁370の前方で略鉛直方向に延在するように立設されている前側案内板381と、前側案内板381の後面に設けられて、後斜め上方に向かって延在する後側案内板382とを有するように構成されているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、前側案内板381が前斜め上方に向かって延在するように構成されていてもよく、後側案内板382が隔壁370の後方で略鉛直方向に延在するように立設されていてもよい。また、前側案内板381が前斜め上方に向かって延在し、かつ、後側案内板382が後斜め上方に向かって延在するように構成されていてもよい。また、前側案内板381が隔壁370の前方で略鉛直方向に延在するように立設され、かつ、略L字状断面を有するように下部が前方に向かって水平に折り曲げられた後側案内板382が前側案内板381の後面に取り付けられ、後側案内板382の水平部分の上面で隔壁370の下端を受けるように構成されていてもよい。
(6) 上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0035】
なお、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、ホイールローダの後部車体に設けられた機械室と、機械室の後方でホイールローダの後部車体に設けられた冷却器室と、機械室と冷却器室との仕切りであって、少なくとも一部がホイールローダの左右方向に挿抜可能な板状の隔壁と、ホイールローダの左右方向に挿抜される隔壁を案内するガイドとを備えることを特徴とする各種構造のホイールローダを含むものである。
【符号の説明】
【0036】
100 ホイールローダ 120 後部車体
122 機械室(エンジン室) 124 カウンタウエイト
126 冷却器室 130 建屋カバー
132 冷却器用建屋カバー 160 建屋カバー支持部材
291 ラジエータ 297 空冷ファンユニット
360,370 隔壁 371 下端
373 突状部 374 取っ手穴
375 揺動カバー 380 ガイドレール
381 前側案内板 382 後側案内板
383 水抜き穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールローダの後部車体に設けられた機械室と、
前記機械室の後方で前記ホイールローダの後部車体に設けられた冷却器室と、
前記機械室と前記冷却器室との仕切りであって、少なくとも一部が前記ホイールローダの左右方向に挿抜可能な板状の隔壁と、
前記ホイールローダの左右方向に挿抜される隔壁を案内するガイドとを備えることを特徴とするホイールローダ。
【請求項2】
請求項1に記載のホイールローダにおいて、
前記ガイドは、前記隔壁の下方に設けられていて、前記ホイールローダの左右方向に挿抜される隔壁を案内するとともに下方から支持する案内レールであることを特徴とするホイールローダ。
【請求項3】
請求項2に記載のホイールローダにおいて、
前記隔壁の下端は、上方に向かって折り返されており、
前記案内レールは、前記隔壁を案内する際に前記隔壁の下端との当接位置よりも下方に水抜き穴が設けられていることを特徴とするホイールローダ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のホイールローダにおいて、
前記隔壁は、少なくとも上側の隔壁と下側の隔壁の上下2つに分割され、前記下側の隔壁が前記ホイールローダの左右方向に挿抜可能であることを特徴とするホイールローダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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