説明

ホイール・アイソレータ・カップリング

駆動部材と係合するスプロケットを備え、スプロケットは第1アダプタに確りと連結され、スプロケットは第1ベアリングを介してシャフトに回転係合され、第2アダプタに確りと連結されるホイール部を備え、ホイール部は第2ベアリングを介してシャフトに回転係合され、第1アダプタは、少なくとも1つの受容部を有し、受容部内に配置される少なくとも1つの圧縮性部材を備え、第2アダプタは、受容部内において圧縮性部材と係合するための径方向延出部材を有し、スプロケットが第1ベアリングに軸力を掛けないホイール・アイソレータ・カップリング。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイール・アイソレータ・カップリングに関し、特に、スプロケットベアリングに軸力を与えないスプロケットに関する。
【背景技術】
【0002】
アイソレータは、自動二輪車の後輪駆動装置において、騒音、振動、ハーシュネス(NVH)を低減するために用いられ、これらはアイソレータが無ければライダーに伝わってしまうであろう。
【0003】
従来技術のカップリングは、スプロケットハブ内に振動絶縁材料を組み入れる手段のためにスプロケットからの軸荷重をホイール・シャフト・ベアリングに伝達する。軸荷重は、ホイールベアリングに早期の破損をもたらす。
【0004】
この技術の代表は、米国特許第5,240,087号明細書(1993)であり、チェイン駆動される後輪を備え、自動二輪車の車高に影響を与えることなく伝動チェインの張力が調整できる自動二輪車のための片側後輪スイングアーム・サスペンション・システムを開示する。サスペンション・システムは、自動二輪車の車体に回動可能に取り付けられ、後輪の周辺に、その側面に沿って後方に延出するリア・スイングアームを備える。スイングアームの後端は、調整用ヨークを案内し受容する延長された凹部を有する。後輪は、調整用ヨークから横切って延出するスピンドルに軸支される。ヨークは、スイングアームから延出する調整用スタッドと、これに対応しヨークのネックの中に嵌められる調整用ナットを用いてスイングアーム上に長手方向に位置決めできる。スピンドルの端部に設けられた1つの調整用クランプナットは、スピンドルにヨークを固定し、また要求されるチェイン張力に対応する選択された位置においてヨークをスイングアームに固定するように働く。
【0005】
2007年5月21日に出願されたホイール・アイソレータに関する同時係属中の米国特許出願第11/726,091号も援用される
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
必要とされているのは、スプロケット。・ベアリングに軸力を与えないスプロケットを備えるホイール・アイソレータ・カップリングである。本発明はこの要求に合致する。
【0007】
本発明の第1の目的は、スプロケット・ベアリングに軸力を与えないスプロケットを備えるホイール・アイソレータ・カップリングを提供することである。
【0008】
本発明のその他の目的は、本発明の以下の説明と添付された図面により指摘され明らかとされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、駆動部材と係合するスプロケットを備え、スプロケットは第1アダプタに確りと連結され、スプロケットは第1ベアリングを介してシャフトに回転係合され、第2アダプタに確りと連結されるホイール部を備え、ホイール部は第2ベアリングを介してシャフトに回転係合され、第1アダプタは、少なくとも1つの受容部を有し、受容部内に配置される少なくとも1つの圧縮性部材を備え、第2アダプタは、受容部内において圧縮性部材と係合するための径方向延出部材を有し、スプロケットが第1ベアリングに軸力を掛けないホイール・アイソレータ・カップリングを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
この明細書に組み込まれその一部を構成する添付図面は、本発明の好ましい実施形態を示し、説明とともに本発明の原理を説明するために用いられる。
【図1】アイソレータ・カップリングの分解図である。
【図2】アイソレータ・カップリングの断面図である。
【図3】別の実施形態の分解図である。
【図4】図3に示される別の実施形態の断面図である。
【図5】別の実施形態の分解図である。
【図6】図5に示される別の実施形態の断面図である。
【図7】別の実施形態の分解図である。
【図8】図7に示される別の実施形態の断面図である。
【図9】別の実施形態の分解図である。
【図10】図9に示される別の実施形態の断面図である。
【図11】別の実施形態の分解図である。
【図12】図11に示される別の実施形態の断面図である。
【図13】別の実施形態の分解図である。
【図14】図13に示される別の実施形態の断面図である。
【図15】スプロケット・アダプタの詳細図である。
【図16】ホイール・アダプタ・キャップの斜視図である。
【図17】図1の詳細図である。
【図18】図1の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の自動二輪車のホイール・アイソレータ・カップリングは、従来技術の自動二輪車の後輪駆動システムに関わる騒音、振動、ハーシュネス(NVH)を著しく低減する。このアイソレータ・カップリングの利益は動的な遷移イベント、すなわちトランスミッションのスピードシフト時、高速でのダウンシフト時、完全な停止状態からの急発進時に最もよく現れる。このようなイベントにおいて、衝撃ショック荷重(トルク)は、軟質ゴムクッションによって吸収される。
【0012】
図1は、このアイソレータ・カップリングの分解図である。カップリング100は、スプロケット10を備える。スプロケット10はスプロケット・アダプタ20にボルト11を用いて連結される。スプロケット・アダプタ20は、受容部21を備える。スプロケット組立体(10、11、12)は、ホイール40に直接には取り付けられない。
【0013】
ホイール・アダプタ30は、ホイール40にボルト31によって連結される。ホイール40は、一般的には、スイング・アーム(図示せず)を含む自動二輪車のリア・サスペンションの一部である。ホイール・シャフト60は、一般的にはスイング・アームに連結されている。駆動部材、すなわち、歯付ベルトBはスプロケット10の歯付ベルト係合面12に係合する。歯付ベルトは従来周知である。ベルトBは、エンジン・トランスミッション・スプロケット(図示せず)からホイール40を回転させるトルクをスプロケット10に伝達し、自動二輪車を前進させる。タイヤ(図示せず)はホイール40に取り付けられる。タイヤは地面に接触する。
【0014】
ホイール・アダプタ30は、部材30の中心から径方向外向きに延出する平面ラジアル部材32を備える。部材32は、スプロケット・アダプタ20の受容部21の中へ協調的に係合する。
【0015】
部材32の間、かつ受容部21の中に位置する空間には、弾性ブロック50が配置される。
【0016】
この配置では、ホイール40とホイール・アダプタ30の間における弾性ブロックの軸方向の全ての伸張が包含される。組み立ての間、ホイール・アダプタ30がホイール40にボルト留されるとき、弾性ブロック50の軸方向伸張力は、互いに相殺され、それにより、スプロケット・ベアリング70に掛かる軸力は0となる。軸力はホイール・シャフト(軸)60に平行である。これは、従来のアイソレータ・カップリングの設計に比べ著しい進歩である。特に、このデザインでは、従来技術のカップリングが用いられた高い軸力に耐える必要のあるスプロケットにおいて一般的に使用される二重列ボール・ベアリングの代わりに単列深溝ボール・ベアリング70を使用できる。
【0017】
弾性ブロック50は、圧縮可能であり、作動中にエネルギーを散逸する。弾性ブロック50は、利用において適正な周知の如何なる材料であってもよい。弾性ブロックは、2007年5月21日に出願され、ここでその全てが援用される同時係属中の米国特許出願第11/726,091号に開示されたものであってもよい。
【0018】
アイソレータ・カップリングは、自己完結的なスタンド・アローン・ユニットである。それは、アイソレータ組立体の一部として、噛み合い部品(すなわち、ホイール又はスプロケット)の形態に依存しない。したがって、本発明のアイソレータ・カップリングを異なる自動二輪車のプラットフォームやアプリケーションで利用され得る「スタンダード」なアイソレータ・ユニットして利用することが可能である。
【0019】
図2は、アイソレータ・カップリングの断面図である。ホイール・アダプタ30は、ホイール40にボルト留される。スプロケット・アダプタ20は、スプロケット10にボルト留される。ブロック50は、ホイール・アダプタ30、部材32、そしてスプロケット・アダプタ20の間に配置される。ホイールは、ブロックのみによりスプロケットと機械的な捩り係合状態に維持される。スプロケットとホイールの間には、「硬い」ボルトによる連結は存在しない。
【0020】
ホイールとスプロケットはホイール・シャフト60と、ベアリング70、71により係合される。ベアリング・レースウェイ・スペーサ61は、ベアリング70、71の間の適正な間隔を維持する。ナット80は、ホイールを車軸に保持する。
【0021】
ベアリング70は、好ましくは単列溝ボール・ベアリングである。ベアリング71は、二重列溝ボール・ベアリングである。
【0022】
ブロック50は、軸方向に沿った一対ベクトル力(F)を働かせる。この対の一方の力は、接点“a”においてホイールに作用する。他方の力は、接点“b”において、逆向きに、ホイール・アダプタ30に作用する。
【0023】
力の全体における最終結果は:
ΣF=F−F=0
モーメントの全体における最終結果は:
ΣM=F×h−F×h=0
【0024】
したがって、ゴム・ブロックの軸方向への伸張により引き起こされるスプロケット・ベアリング70への軸力もモーメントも作用しない。この軸方向は、回転軸でもあるホイール・シャフト60に平行である。
【0025】
図15は、スプロケット・アダプタの詳細図である。スプロケット・アダプタ20は、受容部21を備える。スポーク22は、外側リング23から内側リング24へと延出する。ボルト11は、外側リング23に設けられた穴25を通してスプロケット・アダプタ20に係合する。ホイール・シャフト60は、内側リング24を通って延出する。スポーク22は、アイソレータ・カップリングの作用によりアダプタ同士が引き離されないようにスプロケット・アダプタ20をホイール・アダプタ30に連結する。
【0026】
ブロック50は、受容部21内であって部材32とスポーク22の間に配置される。運転中、トルクは部材32からブロック50を通してスポーク22へと伝達される。
【0027】
別の実施形態では、ホイール側面に配置されたホイール・アダプタ・キャップ33が示される。図3は、別の実施形態の分解図である。図1に示されるように、アイソレータの取付面としてホイール側壁を利用する代わりに、ホイール・アダプタ・キャップ33が用いられる。この実施形態では、キャップ33は、部材32とスロット開口34の干渉的な嵌合によりホイール・アダプタ30に押圧される(図16参照)。しかし、ファスナ(ボルト)や溶接などを用いた他の適切な機械的な手段を用いて連結することもできる。
【0028】
図4は、図3に示される別の実施形態の断面図である。
【0029】
図16は、ホイール・アダプタ・キャップの斜視図である。スロット34は、ホイール・キャップ33の周りに等間隔で配置される。各ホイール・キャップは軸方向に延出して示されているが、どのような形のスロット34も適用できる。
【0030】
図5は、別の実施形態の分解図である。スプロケット・アダプタ20をスプロケット10の代わりに直接ホイール40にボルト31を用いて取り付けることにより、図1に示される順序の略逆になる。
【0031】
図6は、図5に示される別の実施形態の断面図である。この実施形態のホイール・アダプタ30は、ボルト11を用いてスプロケット10に確りと連結される。スプロケット・アダプタ20は、ボルト31を用いてホイール40に確りと連結される。ホイール・アダプタ30は、スプロケット・アダプタと軸方向に係合してスポーク22に保持される(図15参照)。
【0032】
図7は、別の実施形態の分解図である。この実施形態は、ホイール・キャップ33がこの実施形態ではスプロケット・アダプタ20とスプロケット10の間に配置されるということ以外、図5に示されたものと同じである。
【0033】
図8は、図7に示される実施形態の断面図である。スプロケット・アダプタ20は、ボルト31を用いてホイール40に確りと連結される。
【0034】
図9は、別の実施形態の分解図である。この実施形態は、穴25が、外側リング23の代わりに内側リング24に配置されること以外、図1に示されたものと同じである。
【0035】
図10は、図9に示される実施形態の断面図である。
【0036】
図11は、別の実施形態の分解図である。この実施形態は、穴25が、外側リング23の代わりに内側リング24に配置されること以外、図5に示されたものと同じである。
【0037】
図12は、図11に示される実施形態の断面図である。
【0038】
図13は、別の実施形態の分解図である。この実施形態は、ホイール・キャップ33がスプロケット・アダプタ20とスプロケット10の間に配置されるということ以外、図11に示されたものと同じである。
【0039】
図14は、図13に示される実施形態の断面図である。
【0040】
図17は、図1の詳細図である。この詳細図は、スプロケット側から見た斜視図である。ホイール・アダプタ30は、スプロケット・アダプタ20と係合されて示される。穴25はボルト11を受け入れる。穴35はボルト31を受け入れる。
【0041】
図18は図1の詳細図である。この詳細図は、図17の斜視図の反対側のもので、ホイール側から見た斜視図である。ブロック50は、受容部21内に組み入れられ、スプロケット22の両側に示される。部材32は、隣接するブロック50の各々の部分の間に配置される。ボルト31は、ホイール40(図示せず)にホイール・アダプタ30を締結するために穴35を通して突出する。そうすることにより、スプロケット・アダプタ20とブロック50は、ホイール・アダプタ30とホイール40の間に保持される。
【0042】
駆動トルクは、ベルトからスプロケット10へ伝達され、それからスプロケット・アダプタ20へ、スポーク22へ、そして各ブロック50、そして各部材32、そしてホイール40へと伝達される。ダウンシフトとエンジン・ブレーキのトルクは、逆方向に伝達される。
【0043】
図17、18に示される詳細図は、アイソレータ・カップリングをスタンド・アローン・ユニットとして示す。これは、アイソレータは、スプロケットがスプロケット・アダプタ20に確りと留められ、ホイールがホイール・アダプタ30に確りと留められている限り、どのようなホイールとスプロケットの組合せでもこのアイソレータが利用できることを意味する。
【0044】
ここでは、本発明のいくつか形態について説明されたが、当業者にとっては、ここで説明された本発明の趣旨と範囲を逸脱することなく、その構成や構成部の関係を様々に変形することは容易である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部材と係合するスプロケットを備え、前記スプロケットは第1アダプタに確りと連結され、
前記スプロケットは第1ベアリングを介してシャフトに回転係合され、
第2アダプタに確りと連結されるホイール部を備え、
前記ホイール部は第2ベアリングを介して前記シャフトに回転係合され、
前記第1アダプタは、少なくとも1つの受容部を有し、
前記受容部内に配置される少なくとも1つの圧縮性部材を備え、
前記第2アダプタは、前記受容部内において前記圧縮性部材と係合するための径方向延出部材を有し、
前記スプロケットが前記第1ベアリングに軸力を掛けない
ことを特徴とするホイール・アイソレータ・カップリング。
【請求項2】
更に、前記第2アダプタに連結されたキャップを備え、前記キャップが前記第2アダプタに対して前記第1アダプタの反対側に配置されることを特徴とする請求項1に記載のホイール・アイソレータ・カップリング。
【請求項3】
前記駆動部材が歯付面を有することを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載のホイール・アイソレータ・カップリング。
【請求項4】
更に、複数の圧縮性部材を備えることを特徴とする請求項1に記載のホイール・アイソレータ・カップリング。
【請求項5】
前記第1アダプタが更に、前記第1アダプタを前記第2アダプタに連結するための部材を備えることを特徴とする請求項1に記載のホイール・アイソレータ・カップリング。
【請求項6】
原動部材に係合するように形成された原動部材アダプタと、
従動部材に係合するように形成された従動部材アダプタと、
前記受動部材アダプタと前記原動部材アダプタの間に配置される弾性部材とを備え、
前記原動部材アダプタと前記従動部材アダプタは、前記原動部材アダプタが、前記従動部材アダプタと前記従動部材の間に配置されるように相互に連結され、
前記従動部材アダプタと前記原動部材アダプタは、前記従動部材アダプタが、前記原動部材アダプタと前記原動部材の間に配置されるように相互連結される
ことを特徴とするホイール・アイソレータ・カップリング。
【請求項7】
更に、複数の弾性部材を備えることを特徴とする請求項6に記載のホイール・アイソレータ・カップリング。
【請求項8】
前記原動部材アダプタが歯付面を備えることを特徴とする請求項6に記載のホイール・アイソレータ・カップリング。
【請求項9】
前記原動部材アダプタが、第1ベアリングを介してシャフトに回転係合され、
前記従動部材アダプタが、第2ベアリングを介してシャフトに回転係合され、
前記第1ベアリングに軸力が掛からないことを特徴とする請求項6に記載のホイール・アイソレータ・カップリング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2010−532449(P2010−532449A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514753(P2010−514753)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/006700
【国際公開番号】WO2009/005566
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(504005091)ザ ゲイツ コーポレイション (103)