説明

ホイール剛性測定装置及びホイール剛性の測定方法

【課題】ホイールの径方向に対して他のあらゆる方向からのホイールの剛性を容易に測定し得るホイール剛性測定装置及びホイール剛性の測定方法を提供する。
【解決手段】ホイール4の周囲を固定する台座部14と、台座部14を回転させる駆動手段26と、ホイール4のハブ面に固定される負荷アーム18と、負荷アーム18を傾けてホイール4に負荷荷重をかける荷重発生手段19と、負荷アーム18または/及びホイール4に接続されて測定面20を配するターゲット部材21と、ターゲット部材21の測定面20からの距離を測定する距離計測手段22と、ホイール4の回転角を測定する回転角計測手段23とを備え、
距離計測手段22から測定面20の傾斜を検出し、測定面20の傾斜と、荷重発生手段19の負荷荷重と、ホイール4の回転角とからホイール4を回転させつつホイール4の剛性を測定するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールの剛性について測定を行うホイール剛性測定装置及びホイール剛性の測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用のホイールについて剛性を測定する際にはホイール剛性測定装置を用いている。
【0003】
ホイール剛性測定装置は、図9に示す如く、床面1に配置された立体状のフレーム2と、フレーム2に配置されるロッド状の負荷アーム3とを備えている。フレーム2は、上面に、ホイール4を固定するクリップ等の固定手段(図示せず)を配した台座面5を形成している。また負荷アーム3は、台座面5に形成された通過孔6を介して配置され、上端に水平な固定面7を形成する固定部8を備えると共に、下端にはジャッキ等の荷重発生手段(図示せず)と、負荷アーム3の傾斜を測定するダイヤルゲージ9とを備えている。
【0004】
一方、ホイール4は、タイヤ(図示せず)を装着するリム10と、円盤状のディスク11とを備えて構成されており、ディスク11の中央には、車両のハブ(図示せず)に取り付けるハブ面12が備えられ、ハブ面12には、車両のハブとボルト締結し得るボルト穴(図示せず)と、ホイール4の軸心に位置するハブ穴13とが形成されている。
【0005】
ホイール4の剛性を計測する際には、準備段階で、ホイール4を車両側に取り付けたとき車両側となる面を下面に向けるようにホイール4を載置し、ホイール4のリム10の周囲側端部を固定手段で固定し、次に、ホイール4のハブ面12に下方側から負荷アーム3の固定面7を接触させてハブ面12のボルト孔(図示せず)を介してボルト12aにより締結し、計測段階へ移行する。計測段階では、荷重発生手段により負荷アーム3を傾けてホイール4に負荷荷重をかけると同時に、ダイヤルゲージ9で負荷アーム3の傾斜を計測し、負荷アーム3の傾斜をホイール4のハブ面12の傾斜変動と推定し、ホイール4を1radねじるために必要な力としてホイール4の剛性(N・m/rad)を算出するようにしている。
【0006】
ここで負荷アーム3はホイール4へ負荷荷重をかける際に負荷アーム3自身に撓みを生じるため、撓み分の誤差を解消するように負荷アーム3の材質を考慮して材料計算によりホイール4の剛性を補正するようにしている。
【0007】
なおホイール4の剛性を測定する装置や方法としては、下記の先行技術文献が存在している。
【特許文献1】特開2004−109132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このようなホイール剛性測定装置では、負荷荷重をかける方向がホイール4の径方向で負荷アーム3が傾斜する一方向のみになるため、ホイール4に他の径方向から負荷荷重をかける際には、ホイール4の位置もしくは荷重発生手段の配置を変更しなければならず、ホイール4の径方向に対して他の方向からのホイール4の剛性を容易に測定することができないという問題があった。
【0009】
またホイール4はディスク11に様々な意匠が形成されているため、意匠の種類によってはホイール4のねじれ方向が異なり、負荷荷重の作用方向と負荷アーム3の傾斜方向とがズレて、ホイール4の剛性の測定に誤差を生じるという問題があった。更に、負荷アーム3の撓みを含まないように測定し、測定の正確さを向上させることが求められていた。
【0010】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、ホイールの径方向に対して他のあらゆる方向からのホイールの剛性を容易に測定し得ると共に、ホイールのねじれによる負荷荷重の作用方向と負荷アームの傾斜方向のズレに伴う誤差を低減し、負荷アームの撓みを含まないように測定して測定の正確さを向上させるホイール剛性測定装置及びホイール剛性の測定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のホイール剛性測定装置は、ホイールの周囲を固定する台座部と、該台座部を回転可能に配する台座テーブルと、前記台座部を回転させる駆動手段と、前記ホイールの軸線上に位置するようにホイールのハブ面に固定される負荷アームと、該負荷アームを傾けてホイールに負荷荷重をかける荷重発生手段と、前記負荷アームまたは/及びホイールに接続されてホイールのリム径方向に沿うように測定面を配するターゲット部材と、該ターゲット部材の測定面からの距離を測定する距離計測手段と、前記台座部の回転に伴うホイールの回転角を測定する回転角計測手段とを備え、
前記距離計測手段からターゲット部材の測定面の傾斜を検出し、測定面の傾斜と、荷重発生手段の負荷荷重と、ホイールの回転角とからホイールを回転させつつホイールの剛性を測定するように構成されたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明のホイール剛性測定装置において、ホイールに負荷荷重をかけると共に台座部を回転させ、ホイールの回転に伴ってホイールの剛性を連続的に測定するように構成したことが好ましい。
【0013】
本発明のホイール剛性測定装置において、回転角計測手段は、ホイール、台座部、ターゲット部材、負荷アームの少なくとも一つに対応するように回転角センサを備えたことが好ましい。
【0014】
本発明のホイール剛性測定装置において、距離計測手段は、周方向に沿って少なくとも3箇所以上の計測地点に配置されたことが好ましい。
【0015】
本発明のホイール剛性測定装置において、距離計測手段は、2箇所の計測地点が、負荷荷重の作用方向に沿うように配置されたことが好ましい。
【0016】
本発明のホイール剛性測定装置において、距離計測手段は、測定面に接触して距離を計測する接触ゲージ、及び/または測定面に非接触で距離を計測する非接触ゲージを備えたことが好ましい。
【0017】
本発明のホイール剛性測定装置において、荷重発生手段は、負荷アームを回転可能に配する接続部を介して負荷アームを傾ける負荷荷重シリンダと、該負荷荷重シリンダの負荷荷重を計測するロードセルとを備えたことが好ましい。
【0018】
本発明のホイール剛性測定装置において、ホイールのハブ穴を介して負荷アームとターゲット部材を接続し、ホイールのディスク面の隣接位置にターゲット部材の測定面を配置したことが好ましい。
【0019】
本発明のホイール剛性の測定方法は、ホイールの周囲を固定し且つホイールの軸心に負荷アームを固定し、該負荷アームまたは/及びホイールに、測定面を配したターゲット部材を接続し、前記負荷アームを傾けてホイールに負荷荷重をかけ、ターゲット部材の測定面の傾斜を検出し、更にホイールを回転させ、測定面の傾斜とホイールへの負荷荷重とホイールの回転角とからホイールを回転させつつホイールの剛性を測定するものである。
【0020】
本発明のホイール剛性の測定方法は、ホイールに負荷荷重をかけると共にホイールを回転させ、ホイールの回転に伴ってホイールの剛性測定を連続的に行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
上記した本発明によれば、負荷アームまたは/及びホイールに接続されて且つ測定面を配するターゲット部材を備え、負荷アームを傾けてホイールに負荷荷重をかけ、ターゲット部材の測定面の傾斜を検出し、更にホイールを回転させ、測定面の傾斜とホイールへの負荷荷重とホイールの回転角とからホイールの剛性を回転させつつ測定するので、ホイールの径方向に対して他のあらゆる方向からのホイールの剛性を容易に測定することができる。また、ターゲット部材は、測定面をホイールのリム径方向に沿うように配して、距離の測定方向を測定面へ向かう方向に変更すると共にハブ面の変移量を拡大するので、ホイールのねじれによる負荷荷重の作用中心のズレに伴う誤差を低減することができる。更に、負荷アームに撓みを生じてもターゲット部材の測定面には影響を与えないので、負荷アームの撓みを含まないように測定することが可能となり、ホイールの剛性を測定する際に測定の正確さを向上させることができるという種々の優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施例を添付図面を参照して説明する。
【0023】
図1〜図7は本発明のホイール剛性測定装置及びホイール剛性の測定方法を実施する形態の第一例である。
【0024】
本発明のホイール剛性計測装置の形態の第一例は、図1〜図7に示す如く、ホイール4を固定し得る台座部14と、床面1に底面15及び脚部16を介して台座部14を配する台座テーブル17と、台座テーブル17に配置されるロッド状の負荷アーム18と、負荷アーム18の下部に接続される荷重発生手段19と、負荷アーム18の上端に接続され且つ測定面20を配するターゲット部材21と、ターゲット部材21の測定面20からの距離を測定する距離計測手段22と、ホイール4の回転角を測定する回転角計測手段23と、荷重発生手段19及び距離計測手段22並びに回転角計測手段23に接続されるPC等の制御器24とを備えている。ここでホイール4は従来例と同じものを示している。
【0025】
台座テーブル17は、台座部14をベアリング25等により回転可能(軸転可能)に配すると共に、台座部14の側方にモータ等の駆動手段26を配し、駆動手段26から回転ベルト等の動力伝達手段27を介して台座部14を回転させるようにしている。ここで、台座テーブル17は、台座部14を回転可能に配置するならば、台座部14の支持構造は特に制限されるものでない。また駆動手段26は、台座テーブル17にブラケット(図示せず)を介して支持されることが好ましいが、他の位置に配置されても良い。また、駆動手段26と台座部14を連結する動力伝達手段27は、回転ベルトの代わりにギア等でも良い。更に、台座部14は回転ベルトやギヤを介さず、中空モータ等で直接駆動しても良い。また駆動も、モータ等の駆動機器を使用せず、ハンドル等を用いて人力(手動)で回転させても良い。
【0026】
台座部14は、上面に、ホイール4を固定するクリップ等の固定手段(図示せず)を配した板状の円盤で構成されており、円盤の中央には所定径の通過孔28が形成されている。また台座部14の両側には、3方へ延びる上部フレーム部材29と、上部フレーム部材29を支持する側部フレーム部材30とからなるフレーム31が備えられ、ホイール4及びターゲット部材21を跨ぐように配置されている。更に台座部14は、所定の厚みと剛性により荷重発生手段19等の作動によるゆがみが生じないようになっている。ここで、ホイール4を固定する固定手段(図示せず)は、クリップに限定されるものでなく、台座部14に凹凸を形成してホイール4を固定しても良いし、また、他の挟み込む手段を備えて固定しても良い。また固定手段は、ホイール4のリム10部分を固定するならば、リム10のホイール軸方向内側の周囲端面を固定しても良いし、リム10のホイール軸方向外側の周囲端面を固定しても良いし、リム10の他の周囲端面を固定しても良い。なお、ホイールを車両に取付けたとき、車両側となる側をホイール軸方向内側、その反対側をホイール軸方向外側とする。
【0027】
負荷アーム18は、台座部14に形成された通過孔28を介して配置されており、負荷アーム18の上端には水平な固定面32を形成する円盤状の固定部33が備えられている。固定部33の中心位置には中心取付孔34(図2参照)が形成されると共に、中心取付孔34の周囲には、ホイール4のハブ面12のボルト孔(図示せず)に対応する複数のボルト対応孔(図示せず)が形成されている。また負荷アーム18の下部にはベアリング35を介する接続部36が備えられている。
【0028】
荷重発生手段19は、進退動可能なロッド37を配する負荷荷重シリンダ38であって台座テーブル17の脚部16に固定されており、ロッド37は、チェーンやロッド部材等の連結体39によって負荷アーム18の接続部36に接続され、負荷アーム18を引き寄せ可能にすると共に回転可能に支持している。またロッド37の端側には、負荷荷重シリンダ38から発生した負荷荷重を計測するロードセル40が配置されている。
【0029】
ターゲット部材21は、ホイール4のハブ穴13に挿通し得るピン41と、ピン41の上端に形成されて所定径の測定面20を有する円盤状の測定体42とを備えて構成されている。ピン41の下端には挿入突起部43を備え、負荷アーム18の固定面32に形成された中心取付孔34に対し、挿入突起部43を挿入してターゲット部材21を固定し得るようにしている。ここでターゲット部材21は測定面20の測定体42のみからなり、負荷アーム18に、ホイール4のハブ穴13に挿通し得るピンを備えても良い。また負荷アーム18に挿入突起部を備えると共にターゲット部材21に取付孔を形成して負荷アーム18とターゲット部材21とを固定しても良い。更にターゲット部材21と負荷アーム18とは、接続構造を特に制限するものではなく、ホイール4のハブ穴13を介してターゲット部材21と負荷アーム18とを固定し得るならば、ネジ溝による結合、嵌入による結合、磁石による結合等のどのような結合でも良い。また、ターゲット部材21の測定面(ターゲット)20は負荷アーム18だけでなく、ホイール4のハブ面12と同じ変形をする。ターゲット部材を固定する部位は、ホイール固定ボルトやディスク11に固定しても良い。またホイール4のディスク11等で上記同じ変形をする部位に本計測が可能な部平面があれば、当該平面を直接測定面(ターゲット)として測定しても良い。
【0030】
距離計測手段22は、測定面20に接触して距離を計測するダイヤルゲージ等の接触ゲージ、及び/または測定面20に非接触で距離を計測するレーザ距離計等の非接触ゲージを備えており、接触ゲージ及び/または非接触ゲージは三方の上部フレーム部材29の端部に固定され、少なくとも3箇所以上の複数の計測地点に配置されるようになっている(図6では非接触ゲージが3箇所に配置されている)。ここで距離計測手段22の複数の計測地点は、ターゲット部材21の中心位置を基準としてターゲット部材21の周方向に沿って等間隔で配置されている。また図6の場合には、3箇所の計測地点が中心角で約120度間隔に配置されている。
【0031】
回転角計測手段23は、台座部14の底面に対して回転角を計測するロータリーエンコーダ等の回転角センサ44を備えている。ここで、回転角計測手段23は、ホイール4、台座部14、ターゲット部材21、負荷アーム18の少なくとも一つに対応するように備えても良く、ホイール4の回転角を計測し得るならば回転角計測手段23の構成、手法等は特に制限されるものではない。
【0032】
制御器24は、荷重発生手段19のロードセル40から信号ライン40aを介して信号データを受けると共に、距離計測手段22から信号ライン22a及びセンサーアンプ45を介して信号データを受け、更に回転角計測手段23から信号ライン23aを介して信号データを受けるようになっている。更に制御器24は荷重発生手段19及び駆動手段26に駆動指令を出すように制御ライン(図示せず)を備えても良い。
【0033】
以下本発明を実施する形態の第一例の作用を説明する。
【0034】
ホイール4の剛性を測定する際には、最初に準備段階としてホイール4を測定可能な状態に配置する。具体的には、ホイール4の軸方向外側を上面に向けるようにホイール4を台座テーブル17の台座部14に載置し、ホイール4のリム10の周囲側端部をクリップ等の固定手段により固定する。またホイール4のハブ面12に下方側から負荷アーム18の固定面32を接触させてハブ面12のボルト孔(図示せず)を介してボルト12aにより締結して固定する(ステップS1)。ここで、ホイール4の周囲の固定と負荷アーム18の固定とはどちらが先でも良いし、同時に行っても良い。
【0035】
次に、ホイール4のハブ穴13を介してターゲット部材21と負荷アーム18とを接続して固定し、ターゲット部材21の測定面20をホイール4のディスク11の上方隣接位置に配置して準備段階を完了する(ステップS2)。ここで、ターゲット部材21は、測定面20をディスク11のハブ面12に近接し且つホイール4の軸と垂直の方向に配置することにより、距離の測定方向を負荷アーム18の傾斜方向(ホイール4の軸と垂直の方向)から測定面20へ向かう方向(ホイール4の軸方向)に変更すると共に、ハブ面12の変移量を拡大している。また、ターゲット部材21にピン41を備える場合には、ターゲット部材21のピン41をホイール4のハブ穴13に挿通してターゲット部材21と負荷アーム18を接続しており、負荷アーム18にピンを備える場合には、負荷アーム18のピン41をホイール4のハブ穴13に挿通してターゲット部材21と負荷アーム18を接続している。
【0036】
続いて測定段階としてホイール剛性の計測を開始する際には、距離計測手段22と、荷重発生手段19のロードセル40と、回転角計測手段23とから制御器24へ信号データを送る状態にし、距離計測手段22によりターゲット部材21の測定面20に対して距離の測定を開始する(ステップS3)。ここで、距離計測手段22がダイヤルゲージ等の接触ゲージの場合には、ダイヤルゲージの接触面をターゲット部材21の測定面20に接触させて測定面20の変動距離を計測可能な状態にし、距離計測手段22がレーザ距離計等の非接触ゲージの場合には、非接触で測定面20の変動距離を計測可能な状態にする。
【0037】
次に荷重発生手段19により負荷アーム18を傾動させて固定面32からホイール4のハブ面12に負荷荷重をかけ、ホイール4にねじれを発生させる(ステップS4)。
【0038】
この時、ターゲット部材21の測定面20は、ホイール4のねじれの発生場所であるハブ面12に近接してハブ面12の変化に追従しており、距離計測手段22は、ターゲット部材21の測定面20からの距離を測定し、距離変化により測定面20の傾きを算出する(ステップS5)。ここで、ホイール4のねじれにより負荷荷重の作用方向と負荷アーム18の傾斜のズレによる誤差がある場合であっても、ターゲット部材21が、距離の測定方向を測定面20へ向かう方向(ホイール4の軸方向)にすると共にハブ面12の変移量を拡大することにより、ホイール4のねじれの誤差を低減する。また負荷アーム18に撓みを生じても、荷重発生手段19の負荷荷重は固定面32からハブ面12に全て伝わると共に、ターゲット部材21は、負荷アーム18の撓みの影響を受けることがない。更に距離計測手段22は、負荷荷重の方向に沿ってターゲット部材21の測定面20の少なくとも3箇所以上で計測することにより、測定面20の上下の変動を検出して負荷荷重の方向に沿うターゲット部材21の測定面20の傾斜を適切に算出する。
【0039】
一方、ホイール4に負荷荷重をかけて測定面20の傾きを計測する際(ステップS4、ステップS5)には、同時に駆動手段26により動力伝達手段27を介して台座部14を回転させると共に、台座部14と一体的にホイール4、負荷アーム18、上部フレーム部材29、距離計測手段22を回転させる(ステップS6)。ここで、負荷アーム18は接続部36のベアリング35を介して荷重発生手段19に接続され、負荷アーム18の回転力が荷重発生手段19に伝わることはない。
【0040】
続いて台座部14の回転を介して回転角計測手段23によりホイール4の回転角を連続的に計測する(ステップS7)。ここでホイール4の回転角の計測は、台座部14の回転前から開始することが好ましく、回転と同時に開始しても良い。
【0041】
そしてターゲット部材21の測定面20の傾斜を測定すると共にホイール4を回転させた際には、距離計測手段22からの信号データをセンサーアンプ45を介して制御器24に送ると共に、その時の荷重発生手段19のロードセル40からの信号データを制御器24に送り、更に回転角計測手段23からの信号データを送り、距離計測手段22によるターゲット部材21の測定面20の傾きと、荷重発生手段19による負荷荷重と、回転角計測手段23によるホイール4の回転角とから、ホイール4の径方向位置を特定しつつ、ホイール4を1radねじるために必要な力としてホイール4の剛性(N・m/rad)を連続的に算出する(ステップS8)。
【0042】
ここで、ホイール4を回転させつつホイール4の剛性を測定する際には、制御器24においてホイール4の回転とホイール4の剛性値とが連続的に記録され、ホイール4のディスク11等の意匠により直線状のプロットや周期的な波状のプロットになり、ホイール4の剛性にゆがみやバランスが取れない等の問題がある場合には、直線状のプロットや波状のプロットが崩れ、ホイールの問題点を検出し得る。またホイール剛性の計測は、負荷荷重の有無とホイールの回転の有無とを組み合わせて測定条件を変更しても良い。
【0043】
而して、このように実施の形態の第一例によれば、負荷アーム18のホイール4側先端または/及びホイール4に接続されて且つ測定面20を配するターゲット部材21を備え、負荷アーム18を傾けてホイール4に負荷荷重をかけ、ターゲット部材21の測定面20の傾斜を検出し、更にホイール4を回転させ、測定面20の傾斜とホイール4への負荷荷重とホイール4の回転角とからホイール4の剛性を回転させつつ測定するので、ホイール4の径方向に対して他のあらゆる方向からのホイール4の剛性を容易に測定することができる。また、ターゲット部材21は、測定面20をホイール4の軸と垂直の方向に沿うように配して、距離の測定方向を負荷アーム18の傾斜方向(ホイール4の軸と垂直の方向)から測定面20へ向かう方向(ホイール4の軸方向)に変更すると共に、ハブ面12の変移量を拡大するので、ホイール4のねじれによる負荷荷重の作用方向と負荷アーム18の傾斜方向のズレに伴う誤差を低減することができる。更に、負荷アーム18に撓みを生じてもターゲット部材21の測定面20には影響を与えないので、負荷アーム18の撓みを含まないように測定することが可能となり、ホイール4の剛性を測定する際に測定の正確さを向上させることができる。
【0044】
実施の形態の第一例において、ホイール4に負荷荷重をかけると共に台座部14を回転させ、ホイール4の回転に伴ってホイール4の剛性を連続的に測定すると、ホイール4の径方向に対して他のあらゆる方向からのホイール4の剛性を容易且つ好適に測定することができる。またホイール4の回転とホイール4の剛性値とのプロットからホイール4の剛性の問題点を容易に検出することができる。
【0045】
実施の形態の第一例において、回転角計測手段23は、ホイール4、台座部14、ターゲット部材21、負荷アーム18の少なくとも一つに対応するように回転角センサ44を備えると、台座部14の回転に伴うホイール4の回転角を容易に測定し得るので、測定面20の傾斜とホイール4への負荷荷重とホイール4の回転角とからホイール4の径方向に対して他のあらゆる方向からのホイール4の剛性を一層容易に測定することができる。
【0046】
実施の形態の第一例において、距離計測手段22は、周方向に沿って少なくとも3箇所以上の計測地点に配置されると、ターゲット部材21の測定面20を介してホイール4の傾き量のみならず、傾きの方向まで容易に算出し得るので、負荷荷重の作用方向と負荷アーム18の傾斜方向のズレによる誤差を好適に低減すると共に、負荷アーム18の撓みを含まないように測定して測定の正確さを向上させることができる。また測定面20の周方向に沿って等間隔で3箇所以上配置されると、測定面20の傾斜を極めて好適に測定することができる。またホイール4を回転させる際に、ホイール4の状態を容易且つ好適に測定することができる。更に距離計測手段22は、周方向に沿って少なくとも3箇所以上の計測地点に配置した場合には、距離計測手段22の設置位置の精度によらず、精度良く計測することができる。
【0047】
実施の形態の第一例において、距離計測手段22は、測定面20に接触して距離を計測する接触ゲージ、及び/または測定面20に非接触で距離を計測する非接触ゲージを備え、少なくとも2箇所以上の計測地点に配置されると、ターゲット部材21の測定面20を基準にしてハブ面12の傾斜を適切に測定し、結果的に負荷荷重の作用方向と負荷アーム18の傾斜方向のズレによる誤差を好適に低減すると共に、負荷アーム18の撓みを含まないように測定して測定の正確さを向上させることができる。
【0048】
実施の形態の第一例において、荷重発生手段19は、負荷アーム18を回転可能に配する接続部36を介して負荷アーム18を傾ける負荷荷重シリンダ38と、負荷荷重シリンダ38の負荷荷重を計測するロードセル40とを備えると、ホイール4のハブ面12に作用する負荷荷重を適切に測定し、結果的に負荷荷重の作用方向と負荷アーム18の傾斜方向のズレによる誤差を好適に低減すると共に、負荷アーム18の撓みを含まないように測定して測定の正確さを向上させることができる。
【0049】
実施の形態の第一例において、ホイール4のハブ穴13を介して負荷アーム18とターゲット部材21を接続し、ホイール4のディスク11の隣接位置にターゲット部材21の測定面20を配置すると、ターゲット部材21の測定面20を、ディスク11のハブ面12に近接し且つホイール4の軸と垂直の方向に配置し、距離計測手段22による距離の測定方向を容易に変更すると共に測定範囲を好適に拡大するので、ホイール4のねじれによる負荷荷重の作用方向と負荷アーム18の傾斜方向のズレを伴う誤差を大幅に低減することができる。
【0050】
以下、本発明の実施の形態の第二例を図8を参照して説明する。図中、図1〜図7と同一の符号を付した部分は同一物を表している。
【0051】
本発明のホイール剛性計測装置の形態の第二例は、第一例と略同様に、床面1に底面15及び脚部16を介して台座部14を配置した台座テーブル17と、台座テーブル17に配するロッド状の負荷アーム18と、負荷アーム18の下部に接続される荷重発生手段19と、負荷アーム18の上端に接続され且つ測定面20を配するターゲット部材21と、ターゲット部材21の測定面20からの距離を測定する距離計測手段47と、ホイール4の回転角を測定する回転角計測手段23と、荷重発生手段19及び距離計測手段47並びに回転角計測手段23に接続されるPC等の制御器24とを備えている。
【0052】
台座テーブル17は、第一例と同様に、台座部14をベアリング25等により回転可能(軸転可能)に配しており、台座部14は、上面に、ホイール4を固定するクリップ等の固定手段(図示せず)を配した板状の円盤で構成されており、円盤の中央には所定径の通過孔28が形成されている。また台座部14の上方には、図8に示す如くホイール4及びターゲット部材21の上方に位置し且つ荷重発生手段19の負荷荷重の方向へ延在するフレーム46が備えられており、フレーム46は台座テーブル17等の部材に固定されている。
【0053】
距離計測手段47は、測定面20に接触して距離を計測するダイヤルゲージ等の接触ゲージ、及び/または測定面20に非接触で距離を計測するレーザ距離計等の非接触ゲージを備えており、接触ゲージ及び/または非接触ゲージは、少なくとも2箇所以上で、ターゲット部材21の測定面20の径方向両側で負荷荷重の作用方向に沿うようにフレーム46部材に固定される(図8では非接触ゲージが2箇所に配置されている)。
【0054】
以下本発明を実施する形態の第二例の作用を説明する。
【0055】
ホイール4の剛性を測定する際には、第一例と同様に準備段階としてホイール4を測定可能な状態に配置する。
【0056】
次に測定段階としてホイール剛性の計測を開始する際には、第一例と同様に処理し、距離計測手段47によるターゲット部材21の測定面20の傾きと、荷重発生手段19による負荷荷重と、回転角計測手段23によるホイール4の回転角とから、ホイール4の径方向位置を特定しつつ、ホイール4を1radねじるために必要な力としてホイール4の剛性(N・m/rad)を連続的に算出する。
【0057】
この時、距離計測手段47は、台座部14、ホイール4等が回転する際に、固定位置からターゲット部材21の測定面20への距離を測定しており、常に荷重発生手段19による負荷荷重の作用方向で測定する。
【0058】
而して、このように実施の形態の第二例によれば、第一例と同様な作用効果を得ることができる。また実施の形態の第二例において、距離計測手段47は、2箇所の計測地点が、負荷荷重の作用方向に沿うように配置されるので、距離計測手段47による距離のハブ面12の変移量を拡大して測定面20の傾斜を好適に測定し、結果的に負荷荷重の作用方向と負荷アーム18の傾斜方向のズレによる誤差を好適に低減すると共に、負荷アーム18の撓みを含まないように測定して測定の正確さを向上させることができる。
【0059】
尚、本発明のホイール剛性測定装置及びホイール剛性の測定方法は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明を実施する形態の第一例を示す概念図である。
【図2】本発明を実施する前の状態を示す概念図である。
【図3】台座部を回転させる構成を示す概念図である。
【図4】ホイール及び負荷アームを固定した状態を示す概念図である。
【図5】ターゲット部材を固定した状態を示す概念図である。
【図6】本発明を実施する形態の第一例を示す平面図である。
【図7】本発明を実施する手順を示すフローである。
【図8】本発明を実施する形態の第二例を示す平面図である。
【図9】従来のホイール剛性測定装置を示す概念図である。
【符号の説明】
【0061】
4 ホイール
14 台座部
12 ハブ面
17 台座テーブル
18 負荷アーム
19 荷重発生手段
20 測定面
21 ターゲット部材
22 距離計測手段
23 回転角計測手段
26 駆動手段
36 接続部
47 距離計測手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールの周囲を固定する台座部と、該台座部を回転可能に配する台座テーブルと、前記台座部を回転させる駆動手段と、前記ホイールの軸線上に位置するようにホイールのハブ面に固定される負荷アームと、該負荷アームを傾けてホイールに負荷荷重をかける荷重発生手段と、前記負荷アームまたは/及びホイールに接続されてホイールのリム径方向に沿うように測定面を配するターゲット部材と、該ターゲット部材の測定面からの距離を測定する距離計測手段と、前記台座部の回転に伴うホイールの回転角を測定する回転角計測手段とを備え、
前記距離計測手段からターゲット部材の測定面の傾斜を検出し、測定面の傾斜と、荷重発生手段の負荷荷重と、ホイールの回転角とからホイールを回転させつつホイールの剛性を測定するように構成されたことを特徴とするものである特徴とするホイール剛性測定装置。
【請求項2】
ホイールに負荷荷重をかけると共に台座部を回転させ、ホイールの回転に伴ってホイールの剛性を連続的に測定するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のホイール剛性測定装置。
【請求項3】
回転角計測手段は、ホイール、台座部、ターゲット部材、負荷アームの少なくとも一つに対応するように回転角センサを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のホイール剛性測定装置。
【請求項4】
距離計測手段は、周方向に沿って少なくとも3箇所以上の計測地点に配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載のホイール剛性測定装置。
【請求項5】
距離計測手段は、2箇所の計測地点が、負荷荷重の作用方向に沿うように配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載のホイール剛性測定装置。
【請求項6】
距離計測手段は、測定面に接触して距離を計測する接触ゲージ、及び/または測定面に非接触で距離を計測する非接触ゲージを備えたことを特徴とする請求項4または5に記載のホイール剛性測定装置。
【請求項7】
荷重発生手段は、負荷アームを回転可能に配する接続部を介して負荷アームを傾ける負荷荷重シリンダと、該負荷荷重シリンダの負荷荷重を計測するロードセルとを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のホイール剛性測定装置。
【請求項8】
ホイールのハブ穴を介して負荷アームとターゲット部材を接続し、ホイールのディスク面の隣接位置にターゲット部材の測定面を配置したことを特徴とする請求項1または2に記載のホイール剛性測定装置。
【請求項9】
ホイールの周囲を固定し且つホイールの軸心に負荷アームを固定し、該負荷アームまたは/及びホイールに、測定面を配したターゲット部材を接続し、前記負荷アームを傾けてホイールに負荷荷重をかけ、ターゲット部材の測定面の傾斜を検出し、更にホイールを回転させ、測定面の傾斜とホイールへの負荷荷重とホイールの回転角とからホイールを回転させつつホイールの剛性を測定することを特徴するホイール剛性の測定方法。
【請求項10】
ホイールに負荷荷重をかけると共にホイールを回転させ、ホイールの回転に伴ってホイールの剛性測定を連続的に行うことを特徴とする請求項9に記載のホイール剛性の測定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate