説明

ホイール式作業機械

【課題】工具箱の扉の車体外方への飛び出しを防止できるホイール式作業機械の提供。
【解決手段】本発明は、前輪3及び後輪4を有する走行体5と、この走行体5上に配置される旋回体2と、この旋回体2に取り付けられる作業装置1と、前輪3と後輪4との間に配置されるステップ10及び工具箱11とを備え、工具箱11が前面に開口部26を有するとともに、開口部26を閉塞可能な扉を有するホイールショベルにおいて、扉がシャッタ14から成る構成にしてある。例えば工具箱11は、上面にも開口部27を有しており、シャッタ14は、前面の開口部26と、上面の開口部27の双方を閉塞可能となっている。また、工具箱11は、内部の両側部にシャッタ14を案内するガイド機構を備えるとともに、背面部19及び下面部20にシャッタ14の収納部を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業装置を有する旋回体と、自走可能な走行体を備えるとともに、工具箱を備えたホイールショベル等のホイール式作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホイール式作業機械は、自走可能な走行体と、その上部に作業装置を有する旋回体とを備え、走行体の前輪及び後輪の間には旋回体の運転室やエンジン室に上るためのステップ装置が配置されている。また、ステップ装置は、前輪と後輪との間に配置されるフロントフェンダ取付部材とリアフェンダ取付部材間に設けられて、ステップを形成する上段ステップ部材と下段ステップ部材の上下2段に横架された部材を備えている。さらに、ステップ装置は、上段ステップ部材と下段ステップ部材の間に、例えば特許文献1に示されるように工具箱を配置し、この工具箱への物品の収納を可能にさせている。
【0003】
特許文献1に示される工具箱は、走行体を構成するシャーシフレームとステップ装置の上段ステップ部材、下段ステップ部材との間に取り外し可能に搭載されている。また、工具箱の開口部は、走行体の側面部分(工具箱の前面部分)に設けられ、横開き式または縦開き式の扉によって開閉可能となっている。
【0004】
このように従来のホイール式作業機械は、ステップ部材間の広いスペースを有効利用して、物品収納力を有する工具箱をそのスペースに搭載させることができ、また、このような工具箱が不要な場合には該当する工具箱の取り外しが容易に可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−248607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示される従来の工具箱は、前面開口部が横開き、または縦開き式の扉により開閉されるため、工具箱の開放時に扉が当該ホイール式作業機械の車体外方に飛び出して開くことになる。ホイール式作業機械は、ホイール特有の機動性を活かし、現場間、または現場内を機敏に移動して回るため、走行移動中に工具箱の扉の閉め忘れや、何らかの衝撃により扉が開放されてしまつた場合、この工具箱の扉が周囲の物体に干渉する虞がある。
【0007】
なお、ステップ装置の上段ステップ部材と下段ステップ部材との間隔は、ISO規格により寸法が定められているため、従来の工具箱では、工具箱の前面開口部を上段ステップ部材と下段ステップ部材の間の高さ寸法以上とすることができず、工具箱の大きさが制限される問題もある。
【0008】
また、工具箱に対する物品の出し入れについては、前面開口部を通してのみ可能であり、例えば数台のホイール式作業機械が隙間なく駐機しているような場合、隣の作業機械との間隔が狭くて扉を開放することができず、工具箱に対する物品の出し入れが困難となることが起こり得る。
【0009】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、工具箱の扉の車体外方への飛び出しを防止できるホイール式作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明は、前輪及び後輪を有する走行体と、この走行体上に配置される旋回体と、この旋回体に取り付けられる作業装置と、前記前輪と前記後輪との間に配置されるステップ及び工具箱とを備え、前記工具箱が前面に開口部を有するとともに、前記開口部を閉塞可能な扉を有するホイール式作業機械において、前記扉がシャッタから成ることを特徴としている。このように構成した本発明は、扉がシャッタから成ることから走行中に工具箱の扉が車体外方へ飛び出すことを防止でき、工具箱の扉と周囲の物品との干渉や、工具箱の損傷を防ぐことができる。
【0011】
また本発明は、前記発明において、前記工具箱は、上面にも開口部を有し、前記シャッタは、前記前面の開口部と前記上面の開口部の双方を閉塞可能なものから成ることを特徴としている。このように構成した本発明は、工具箱の前面の開口部から物品を工具箱内に収納させることができるとともに、工具箱の上面の開口部からも物品を工具箱内に収納させることができ、工具箱に対する物品の出し入れを容易に行うことができる。
【0012】
また本発明は、前記発明において、前記工具箱は、内部の両側部に前記シャッタを案内するガイド機構を備えるとともに、背面部及び下面部に前記シャッタの収納部を有することを特徴としている。このように構成した本発明は、工具箱廻りのデッドスペースを活用することで、効率良くシャッタを収納部に収納させることができる。
【0013】
また本発明は、前記発明において、前記前輪と前記後輪との間に下段ステップ部材と上段ステップ部材とを備え、前記前面の開口部を前記下段ステップ部材と前記上段ステップ部材との間に形成し、前記工具箱の上面を前記上段ステップ部材よりも高く設定したことを特徴としている。
【0014】
また本発明は、前記発明において、前記前輪と前記後輪との間に下段ステップ部材と上段ステップ部材とを備え、前記前面の開口部を前記下段ステップ部材と前記上段ステップ部材との間に形成し、前記工具箱の下面を前記下段ステップ部材よりも低く設定したことを特徴としている。
【0015】
これらのように工具箱の上面あるいは下面の高さ位置を設定した本発明は、ステップ装置の上段ステップ部材と、下段ステップ部材との定められた間隔に制約されることなく、旋回体や地面との干渉防止さえ考慮すれば、より大きな工具箱が搭載可能となり、工具箱における物品収納能力を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のホイール式作業機械によれば、工具箱の扉がシャッタから成ることから、この工具箱の扉が車体外方へ飛び出すことを防止できる。したがって、従来では生じがちであった工具箱の周囲の物体と工具箱の扉との干渉を防止でき、周囲の物体あるいは工具箱の扉の損傷を防ぐことができ、信頼性の高い工具箱配設構造を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るホイール式作業機械の一実施形態を構成するホイールショベルを示す側面図である。
【図2】図1に示すホイールショベルに備えられる走行体部分を示す斜視図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】本実施形態に係るホイールショベルに備えられる工具箱を示す側断面図である。
【図5】図4に示す工具箱のシャッタ部分の要部拡大斜視図である。
【図6】図3に示す状態からシャッタを開いた状態を示す斜視図である。
【図7】図6に対応する工具箱の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るホイール式作業機械の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0019】
本発明の一実施形態に係るホイール式作業車両は、例えばホイールショベルである。このホイールショベルは、図1に示すように、作業装置1を有する旋回体2と、自走可能な前輪3及び後輪4を有する走行体5とを備えており、前輪3と後輪4との間にはステップ装置6が設けられている。
【0020】
ステップ装置6に含まれるステップ10は、図2,3に示すように、走行体5を構成するシャーシフレーム7の少なくとも一方の側面と、前輪3及び後輪4の間のフロントフェンダ取付部材8とリアフェンダ取付部材9との間に配置され、上段ステップ部材12と下段ステップ部材13から成っている。また、ステップ装置6に含まれる工具箱11は、上段ステップ部材12と下段ステップ部材13とで囲まれるスペースに配置してある。
【0021】
図4に示すように、工具箱11の扉は、例えばスラットと呼ばれる軽量部材の集合体で構成されたシャッタ14から成っている。そのシャッタ14は側面部のそれぞれに小ローラ17を有しており、この小ローラ17が工具箱11の両側面部に設けられたガイドレール15と、ガイドローラ16に沿って円滑にスライドするようになっている。前述したガイドレール15とガイドローラ16は、シャッタ14を案内するガイド機構を構成している。
【0022】
また、シャッタ14の下端には、シャッタロック機構18が設けられている。このシャッタロック機構18は、図5に示すように、座板21と、この座板21に取り付けられて回動可能なフック22と、工具箱11の内部底板に取り付けられ、フック22が係合する係合部25と、カギ穴23とで構成され施錠機能を有している。さらに、シャッタ14の下部には、手かけ24を備えている。
【0023】
なお、図3,4は、工具箱11の閉鎖時の状態を示しているのに対して、図6,7は工具箱11の開放時の状態を示している。図6,7に示すように、工具箱11を十分に開放した際には、工具箱11の前面に開口部26が形成されるとともに、上面にも開口部27が形成される。なお、開口部26は上段ステップ部材12と下段ステップ部材13との間に形成されている。
【0024】
次に、前述のように構成した工具箱11の使用時について説明する。
【0025】
工具箱11は主に機械整備等に必要な工具類や、ホース類などの予備部品等を収納する収納箱として使用される。この工具箱11に物品を収納する際には、まずカギ穴23にカギを挿入してフック22を回し、フック22と係合部25との係合を解いて開錠した後、手かけ24を使用して上方向へとスライドさせる。さらに、上段ステップ部材12に達した後には、このシャッタ14をガイドレール15と、ガイドローラ16に沿って、工具箱11の背面方向へと押し入れて背面部19及び下面部20によって形成される収納部に収納し、工具箱11を全開状態とする。なお、シャッタ14の収納時には、工具箱11の上部ガイドレール15と図5に示す座板21とが干渉し、シャッタ14がそれ以上収納部の方向に移動しない構造となっている。
【0026】
シャッタ14を閉鎖する際には、前述とは逆に、シャッタ14の端部の座板21を掴み、手前方向に向かって引き出し、走行中及び作業中にシャッタ14が不用意に開放しないようにロック機構18を使用しシャッタ14をロックする。すなわち、カギ穴23にカギを挿入し、回すことによってフック22を回動させ、このフック22を係合部25に係合させることが行われる。
【0027】
このように構成した本実施形態によれば、工具箱11の扉がシャッタ14から成るので、工具箱11の扉が車体の外方へ飛び出すこと防止できる。これにより、扉すなわちシャッタ14と、周囲の物体との干渉を防ぐことができ、また工具箱11の損傷を防ぐことができる。
【0028】
また、工具箱11に対する物品の出し入れに際し、旋回体2を任意の方向へ旋回させ、工具箱11の上方の障害を無くすことで、工具箱11の前面の開口部26と上面の開口部27とを開放し、これらの開口部26,27のそれぞれから容易に工具箱11内に物品を収納することができる。
【0029】
また、本実施形態は従来のステップ装置との互換性を残したまま改造が可能である。すなわち、本実施形態に備えられるシャッタ14を有する工具箱11と、従来の工具箱を入れ替えて使用することができ、より選択肢を広げることができる。
【0030】
さらに、シャッタ構成部材の材質によっては、工具箱11の軽量化を図ることができる。
【0031】
なお、本発明は前述した実施形態には限定されず、工具箱11の上面を上段ステップ部材12よりも高く設定することや、工具箱11の下面を下段ステップ部材13よりも低く設定する構成にしてもよい。このように構成した場合には、旋回体2及び地面との干渉防止さえ考慮すれば、さらに要領の大きな工具箱11を搭載することが可能となり、物品収納能力を高めることができる。
【0032】
また、前述した実施形態では、工具箱11のシャッタ14の開く方向は一般的なシャッタ14と同様に上方向であったが、本発明はこれに限られず、工具箱11廻りのデッドスペースを活用して、下方向に開くようにしても良く、左右方向に開くようにしてもよい。左右方向に開く場合には、両開きにしても良く、また片開きにしても良い。
【符号の説明】
【0033】
1 作業装置
2 旋回体
3 前輪
4 後輪
5 走行体
6 ステップ装置
10 ステップ
11 工具箱
12 上段ステップ部材
13 下段ステップ部材
14 シャッタ(扉)
15 ガイドレール
16 ガイドローラ
17 小ローラ
18 シャッタロック機構
19 背面部
20 下面部
25 係合部
26 開口部(前面)
27 開口部(上面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪及び後輪を有する走行体と、この走行体上に配置される旋回体と、この旋回体に取り付けられる作業装置と、前記前輪と前記後輪との間に配置されるステップ及び工具箱とを備え、前記工具箱が前面に開口部を有するとともに、前記開口部を閉塞可能な扉を有するホイール式作業機械において、前記扉がシャッタから成ることを特徴とするホイール式作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載のホイール式作業機械において、
前記工具箱は、上面にも開口部を有し、前記シャッタは、前記前面の開口部と前記上面の開口部の双方を閉塞可能なものから成ることを特徴とするホイール式作業機械。
【請求項3】
請求項2に記載のホイール式作業機械において、
前記工具箱は、内部の両側部に前記シャッタを案内するガイド機構を備えるとともに、背面部及び下面部に前記シャッタの収納部を有することを特徴とするホイール式作業機械。
【請求項4】
請求項3に記載のホイール式作業機械において、
前記前輪と前記後輪との間に下段ステップ部材と上段ステップ部材とを備え、前記前面の開口部を前記下段ステップ部材と前記上段ステップ部材との間に形成し、前記工具箱の上面を前記上段ステップ部材よりも高く設定したことを特徴とするホイール式作業機械。
【請求項5】
請求項3項に記載のホイール式作業機械において、
前記前輪と前記後輪との間に下段ステップ部材と上段ステップ部材とを備え、前記前面の開口部を前記下段ステップ部材と前記上段ステップ部材との間に形成し、前記工具箱の下面を前記下段ステップ部材よりも低く設定したことを特徴とするホイール式作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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