説明

ホウ素吸着剤の再生方法

【課題】極めて簡易な方法でホウ素吸着剤を再生する新規な方法を提供する。
【解決手段】実施形態のホウ素吸着剤の再生方法は、ホウ素吸着剤に吸着されたホウ素を脱離させるホウ素吸着剤の再生方法であって、ホウ素吸着剤に、電気抵抗率が0.01MΩ・cm以上の水を40℃から100℃の温度で接触させ、前記ホウ素吸着剤に吸着したホウ素を離脱させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ホウ素吸着剤の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業の発達や人口の増加により水資源の有効利用が求められている。そのためには、廃水の再利用が非常に重要である。これらを達成するためには水の浄化、すなわち水中から他の物質を分離することが必要である。
【0003】
一方、ホウ素はその特異な性質のため、半導体の製造や原子力発電所の制御棒、ガラスの製造など広い範囲で使用され、ハイテク産業において必要不可欠な元素である。しかしながらホウ素は人体に有害であり、神経毒性や成長阻害を引き起こすため、その排出規制は厳しいものとなっている。
【0004】
1998年には世界保健機関(WHO)がその毒性評価を見直し、上水の水質基準を0.5 ppmに引き下げており、また日本でも2001年に水質汚濁防止法が制定され、排出基準が10 ppm以下に定められている。さらに、半導体製造工場で使用する純水なども極低濃度のホウ素含有水が望まれているなど、ホウ素除去に関してその技術は必要とされている。
【0005】
水中において、ホウ素は主としてホウ酸イオンとして存在するが、その除去方法としては、膜による分離や、電気的分離、イオン交換、凝集沈殿などが知られている。この中でも特にランニングコストが少なく、汚泥が発生しにくい除去方法であるイオン交換が広く使用されている。イオン交換では、例えば特許文献1に記載のように、グルカミン型キレート樹脂をホウ素吸着剤として用いたイオン交換樹脂が提案されている。
【0006】
この場合、ホウ素吸着を実施した後のホウ素吸着剤の再生は、このホウ素吸着剤を酸やアルカリに順次に接触させて行う。具体的には、0.5N〜1Nの硫酸等の薬剤を含む第1の再生液と、水酸化ナトリウム等の薬剤を含む第2の再生液とを準備し、最初に第1の再生液でホウ素吸着剤を処理して、ホウ素吸着剤より配位した陰イオン、すなわちホウ素を含む化合物陰イオンを脱離させ、その後、第2の再生液でホウ素吸着剤を処理して、その表面にOH基を生成するようにする。
【0007】
しかしながら、上述した方法によれば、ホウ素吸着剤の再生に際し、第1の再生液及び第2の再生液を準備して、それぞれの再生液でホウ素吸着剤を処理することが要求されるので、工程が2段階となり、再生処理が煩雑化する。また、第1の再生液は硫酸等を含み、第2の再生液は水酸化ナトリウム等を含むので、処理液中には離脱したホウ素(を含む化合物陰イオンのみでなく、硫酸イオンやナトリウムイオン等が高濃度で含まれるようになる。したがって、処理液中からホウ素(を含む化合物陰イオン)のみを分離除去して、回収するのが極めて困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−126543号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、簡易な方法でホウ素吸着剤を再生する新規な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態のホウ素吸着剤の再生方法は、ホウ素吸着剤に吸着されたホウ素を脱離させるホウ素吸着剤の再生方法であって、ホウ素吸着剤に、電気抵抗率が0.01MΩ・cm以上の水を40℃から100℃の温度で接触させ、前記ホウ素吸着剤に吸着したホウ素を離脱させる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
最初に、所定のホウ素吸着剤を準備し、このホウ素吸着剤を、ホウ素を含む廃液中に分散させ、ホウ素吸着剤に対しホウ素の吸着を行う。あるいは、ホウ素吸着剤を所定のカラム中に充填し、このカラム内にホウ素を含む廃液を通水させることによってホウ素の吸着を行う。
【0012】
ホウ素吸着剤の種類は、ホウ素を吸着することができれば特に限定されるものではなく、耐熱性、耐水性、耐薬品性に優れたポリスチレン樹脂や、フェノール樹脂にアミノポリオール基を付与させたイオン交換樹脂を挙げることができる。
【0013】
ポリスチレン樹脂やフェノール樹脂は、その表面に存在するエポキシ基や水酸基、クロロメチル基等の反応性の高い官能基を通じてホウ素を吸着するアミノポリオール基が付加されているので、アミノポリオール基の、アミノ基および水酸基の部分とイオン交換によってホウ素を吸着するようになる。
【0014】
なお、アミノポリオール基の中でも特にN−メチルグルカミン基は高いイオン交換能を有するので、N−メチルグルカミン基を含むイオン交換樹脂が特に好ましい。
【0015】
また、上述したイオン交換樹脂は、水中に浸漬した場合においても、水中に溶け出してイオン化する成分をほとんど含まないので、後に説明するホウ素吸着剤の再生後の処理液中に含まれるイオン濃度の低減に寄与する。したがって、処理液からのホウ素の回収操作をより簡易化することができる。
【0016】
上述したイオン交換樹脂は、骨格となるポリスチレン樹脂やフェノール樹脂等に対してアミノポリオール基が付加されていれば特に限定されるものではなく、例えば特許文献1に記載されたようなグルカミン型キレート樹脂の他に、トリスヒドロキシメチルアミノメタン型キレート樹脂等を挙げることができる。
【0017】
吸着すべきホウ素は、上述のように廃液中に含まれているので、一般には、廃液中のpHが酸性の領域においては、ホウ酸(HBO)の形態で存在するが、中性からアルカリ性の領域、すなわちpH=7〜11の範囲では、B(OH)4−、B(OH)4−、B(OH)2−、B(OH)2−等のポリマーイオンの形態やB(OH)等の4配位の形態で存在する。したがって、上述したホウ素吸着剤の吸着に際して、廃液中のホウ素はこのようなポリマーイオンや4配位の形態で存在する方が、水酸基等の官能基との反応性が向上する他、アミノポリオール基のイオン交換能も向上する。したがって、上述したホウ素吸着剤によって廃液中のホウ素を吸着する際には、廃液のpHを上記7〜11の範囲に保つことが好ましい。一方、廃液中のホウ素がB(OH)の3配位の形態で存在すると、アミノポリオールとの結合力は弱く、ホウ素が脱離してしまう。一般に、3配位のホウ素に変換するために、再生液には酸を用いることが多い。
【0018】
次いで、上述のようにしてホウ素吸着剤によってホウ素を吸着した後、このホウ素吸着剤を再生する。
【0019】
ホウ素吸着剤の再生は、電気抵抗率が0.01MΩ・cm以上の水を40℃から100℃の温度で接触させて行う。すなわち、40℃から100℃の温度に加熱した電気抵抗率が0.01MΩ・cm以上の水を接触させることによって行う。
【0020】
水の温度を40℃〜100℃に加熱するのは、このような温度の水をホウ素吸着剤に接触させることによって、ホウ素吸着剤が40℃〜100℃に加熱されると、主としてアミノポリオール基、特にN−メチルグルカミン基のホウ素吸着能が劣化し、吸着しているホウ素(ポリマーイオン)が容易に離脱するためである。一般的にポリマー側鎖の長さが長くなると、熱の影響を受けやすい。そのため、例えば炭素の個数が6個であるようなN−メチルグルカミン基のような官能基は、熱を与えられると吸着反応はホウ素を脱離する方向に傾く。
【0021】
また、吸着反応はエントロピーの観点からも、熱をかけるとその反応は吸着物を脱離する方向に傾く。したがって、上述のように、40℃〜100℃の温度に加熱した水をホウ素吸着剤に接触させることにより、上述したエポキシ樹脂等の単独樹脂の場合においても吸着したホウ素は脱離するようになり、N−メチルグルカミン基のような長い側鎖を有する樹脂、すなわちイオン交換樹脂においては、その影響が顕著となる。
【0022】
なお、水の温度が40℃未満では、上述した作用効果を十分に得ることができず、水の温度が100℃を超えると、水中に含まれるイオン等の不純物の濃度にも依存するが、水が沸騰してしまい再生処理のために使用することが困難となるためである。このような観点より、上記水の温度の上限は95℃程度であることが好ましい。
【0023】
再生に用いる水の温度を40℃〜100℃の範囲に設定するには、当該水を別途準備した熱交換器やヒートポンプ、加熱パイプなどのヒーターを用いて加熱することにより実施することもできるが、ホウ素含有廃液を排出する施設からの廃熱や、その他の処理施設あるいは発電所からの廃熱を用いて加熱することにより実施することもできる。また、地熱を用いることもできる。
【0024】
さらに、ホウ素吸着剤の再生に用いる水は、その電気抵抗率が0.01MΩ・cm以上であることが必要である。当該電気抵抗率は、再生に用いる水中の電解質量、すなわちイオン濃度を間接的に規定するものであって、電気抵抗率を0.01MΩ・cm以上と規定することによって、水中の電解質量、すなわちイオン濃度が所定の濃度以下となるように間接的に規定するものである。
【0025】
一般に、水道水等には、カルシウムイオンや炭酸イオン等が含まれ、工業用水等には、その由来に起因してカルシウムイオンや炭酸イオンの他に、ナトリウムイオン、塩素イオン(塩化物イオン)、硫酸イオン等の多種多様のイオンが含まれるようになる。また、カルシウムイオン等は2価のイオンであるが、ナトリウムイオン等は1価のイオンである。このため、再生に用いる水中の電解質量、イオン濃度を直接的に画定するのは困難であることから、本実施形態では、上記水の電気抵抗率によって水中の電解質量等を間接的に規定するようにしたものである。
【0026】
再生に用いる水の電気抵抗率が0.01MΩ・cm未満であると、水中に含まれる電解質量が所定量以上となって、ホウ素(ポリマーイオン)の形態が4配位に傾くと考えられ、ホウ素吸着剤に、例えば水酸基を介して結合(吸着)しやすくなる。したがって、たとえ上述のように、水の温度を40℃〜100℃に加熱したとしても、ホウ素吸着剤からのホウ素の脱離は困難となる。
【0027】
一方、再生に用いる水の電気抵抗率が0.01MΩ・cm以上であると、水中に含まれる電解質量が所定量以下となって、ホウ素(ポリマーイオン)の形態が3配位になると考えられ、ホウ素吸着剤に結合(吸着)しづらくなる。したがって、上述のように、水の温度を40℃〜100℃に加熱したこととの相乗効果によって、ホウ素吸着剤からのホウ素の脱離を促進させることができる。
【0028】
なお、上述した作用効果を考慮した場合、再生に用いる水の電気抵抗率は0.1MΩ・cm以上であることが好ましい。
【0029】
一方、上記電気抵抗率の上限は特に限定されるものではなく、電気抵抗率が高くなるほど水中の電解質量が減少し、吸着したホウ素の、ホウ素吸着剤からの脱離が容易になると考えられるが、現状の精製技術においては、電気抵抗率の上限はおおよそ40MΩ・cmである。
【0030】
上述した再生に用いる水の電気抵抗率は、例えば電気伝導度計(横川電機製パーソナルSCメータ、型名SC-72)によって測定することができる。
【0031】
また、再生に用いる水の電気抵抗率は、当該水中における電解質量、すなわちイオン濃度を間接的に規定しているので、電気抵抗率の制御は、水中に含まれる電解質量を調節することによって行うことができる。具体的には、フィルターや活性炭、逆浸透膜、EDI(電気再生式イオン交換装置)等を用いて電解質量を調節することができる。
【0032】
本実施形態においては、再生に用いる水の電気抵抗率の下限値、すなわち当該水中に含まれる電解質量の上限値を規定しているので、上述した電解質量の調節は、基本的に、当該量が上限値を超えている場合に、その量を上限値以下とするように調節する。特に、再生に用いる水が水道水や工業用水のような場合は、水中に含まれる電解質量が多くなるので、上述した精製に使用する手段から複数を適宜選択して使用することができる。例えば、水道水又は工業用水をフィルターに通水させた後、活性炭に接触させ、逆浸透膜及びEDIを通水させることによって、含まれる電解質量を所定の濃度以下とし、その電気抵抗率を0.01MΩ・cm以上とすることができる。
【0033】
なお、いわゆる純水や蒸留水は、予め上述したような精製工程を得て得られる水の総称であるので、これらの水は自ずから0.01MΩ・cm以上の電気抵抗率を満足している場合が多い。
【0034】
さらに、再生に用いる水のpHは6〜8の範囲であることが好ましく、さらには7近傍となることが好ましい。これは、本実施形態において、ホウ素吸着剤の再生に用いる水が、基本的に酸やアルカリを含まないことを担保するものである。したがって、従来のように、酸によってホウ素吸着剤からホウ素を除去した後、アルカリによってホウ素吸着剤の表面にOH基を再生するような複雑な工程を経ることなく、上述した要件を満足する水でホウ素吸着剤を処理するという極めて簡易な操作のみで、当該ホウ素吸着剤を再生することができる。なお、このことは、上述した、本実施形態の再生処理のプロセスからも明らかである。
【0035】
また、本実施形態では、ホウ素吸着剤の再生に関して酸やアルカリを用いず、水のみを用いるので、再生処理後の処理液中には、水分中に含まれる上述したカルシウムイオンや炭酸イオン等の夾雑イオン以外の、硫酸イオンやナトリウムイオン等を含まない。したがって、処理液中からの脱離したホウ素(ポリマーイオン)の回収を容易に行うことができる。
【実施例】
【0036】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。
【0037】
(実施例1)
ホウ酸ナトリウムを純水に溶解させて飽和ホウ酸ナトリウム水溶液(7850ppm)を調整するとともに、このホウ酸水溶液にN−メチルグルカミンが付加されてなるキレート樹脂なるホウ素吸着剤(ロームアンドハース社製、Amberlite IRA−743)を20mlの水溶液に分散させ、当該ホウ素吸着剤に対してホウ素を吸着させた。
【0038】
次いで、上記ホウ酸ナトリウム水溶液中から上記ホウ素吸着剤を回収し、電気抵抗率:0.01MΩ・cm、温度90℃の純水で1時間処理した。その後、処理水中のホウ素濃度をICP(誘導結合プラズマ)発光分析装置によって測定したところ、吸着したホウ素の41%に相当するホウ素の存在が確認され、上記ホウ素吸着剤によってホウ酸水溶液中のホウ素を吸着するとともに、上記純水によってホウ素吸着剤の再生を実施できることを確認した。
【0039】
したがって、上記ホウ素吸着剤は、再度ホウ素の吸着操作に使用できることが判明した。実際、上記ホウ素吸着剤を同濃度のホウ酸水溶液に分散させてホウ素の吸着を実施したところ、処理液中のホウ素は7354ppmに減少することを確認した。また、純粋による洗浄を繰り返したところ、1回目と合わせ、吸着したホウ素の53%に相当するホウ素の脱離が確認された。このことから、洗浄する回数や使用する純水の量を増やせば、再生率を変更できることが判明した。
【0040】
なお、処理液中に含まれるイオンをICP発光分析装置によって調べたところ、酸やアルカリに由来するイオンの存在は認められなかった。
【0041】
(実施例2)
純水の温度を90℃から50℃にした以外は、実施例1と同様にしてホウ素吸着操作を行い、またホウ素再生操作を実施した。その結果、処理水中には、吸着したホウ素の22%に相当するホウ素の存在が確認され、上記ホウ素吸着剤によってホウ酸水溶液中のホウ素をほぼ完全に吸着するとともに、上記純水によってホウ素吸着剤の再生をほぼ完全に実施できることを確認した。また、再生処理したホウ素吸着剤によって再度ホウ素の吸着を実施したところ、処理液中のホウ素濃度は7689ppmに減少することを確認した。なお、処理液中に含まれるイオンをICP発光分析装置によって調べたところ、酸やアルカリに由来するイオンの存在は認められなかった。
【0042】
(実施例3)
純水の温度を90℃から95℃にした以外は、実施例1と同様にしてホウ素吸着操作を行い、またホウ素再生操作を実施した。その結果、処理水中には、吸着したホウ素の54%に相当するホウ素の存在が確認され、上記ホウ素吸着剤によってホウ酸水溶液中のホウ素をほぼ完全に吸着するとともに、上記純水によってホウ素吸着剤の再生をほぼ完全に実施できることを確認した。また、再生処理したホウ素吸着剤によって再度ホウ素の吸着を実施したところ、処理液中のホウ素濃度は7312ppmに減少することを確認した。なお、処理液中に含まれるイオンをICP発光分析装置によって調べたところ、酸やアルカリに由来するイオンの存在は認められなかった。
【0043】
(実施例4)
電気抵抗率:0.01MΩ・cmの純水に代えて、電気抵抗率:0.1MΩ・cmの純水(蒸留水)を用いた以外は、実施例1と同様にしてホウ素吸着操作を行い、またホウ素再生操作を実施した。その結果、処理水中には、吸着したホウ素の43%に相当するホウ素の存在が確認され、上記ホウ素吸着剤によってホウ酸水溶液中のホウ素をほぼ完全に吸着するとともに、上記純水によってホウ素吸着剤の再生をほぼ完全に実施できることを確認した。また、再生処理したホウ素吸着剤によって再度ホウ素の吸着を実施したところ、処理液中のホウ素濃度は7351ppmに減少することを確認した。なお、処理液中に含まれるイオンをICP発光分析装置によって調べたところ、酸やアルカリに由来するイオンの存在は認められなかった。
【0044】
(比較例1)
純水の温度を90℃から38℃にした以外は、実施例1と同様にしてホウ素吸着操作を行い、またホウ素再生操作を実施した。その結果、処理水中には、吸着したホウ素の3%に相当するホウ素の存在が確認され、上記純水によるホウ素吸着剤の再生は不完全であることを確認した。また、再生処理したホウ素吸着剤によって再度ホウ素の吸着を実施したところ、処理液中のホウ素濃度は7849ppmであったため、再生が不完全であることに起因して、最初のホウ素吸着量と比べホウ素の吸着量がほぼ無いことが確認された。なお、処理液中に含まれるイオンをICP発光分析装置によって調べたところ、酸やアルカリに由来するイオンの存在は認められなかった。
【0045】
(比較例2)
電気抵抗率:0.01MΩ・cmの純水に代えて、電気抵抗率:0.003MΩ・cmの純水(蒸留水)を用いた以外は、実施例1と同様にしてホウ素吸着操作を行い、またホウ素再生操作を実施した。その結果、処理水中には、吸着したホウ素の13%に相当するホウ素の存在が確認され、上記純水によるホウ素吸着剤の再生は不完全であることを確認した。また、再生処理したホウ素吸着剤によって再度ホウ素の吸着を実施したところ、処理液中のホウ素濃度は7801ppmであったため、再生が不完全であることに起因して、最初のホウ素吸着量よりもさらにホウ素の吸着量が減少していることが確認された。なお、処理液中に含まれるイオンをICP発光分析装置によって調べたところ、酸やアルカリに由来するイオンの存在は認められなかった。
【0046】
(比較例3)
実施例1と同様にしてホウ素の吸着を実施した後、ホウ酸水溶液中からホウ素吸着剤を回収し、1Nの硫酸水溶液に1時間浸漬した。次いで、取り出したホウ素吸着剤を1Nの水酸化ナトリウム水溶液に1時間浸漬した。その後、ホウ素吸着剤を取り出し、硫酸水溶液及び水酸化ナトリウム水溶液のホウ素濃度を測定したところ、硫酸水溶液のみホウ素の存在が確認できた。また、硫酸水溶液に含まれるイオンをICP発光分析装置によって調べたところ、硫酸イオンとホウ素イオンの2種類であることが判明した。
【0047】
再生後、上記ホウ素吸着剤を再度ホウ酸水溶液中に分散させたところ、ホウ素濃度の脱離に伴って、ホウ素が吸着されていることが確認できた。
【0048】
以上、実施例及び比較例から明らかなように、本実施形態に従った実施例においては、規定の温度及び規定の電気抵抗率を有する水による処理のみで、ホウ素吸着剤に吸着したホウ素をほぼ完全に脱離することができ、ほぼ完全に再生できることが分かる。すなわち、極めて簡易な方法でホウ素吸着剤を再生できることが分かる。
【0049】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として掲示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素吸着剤に吸着されたホウ素を脱離させるホウ素吸着剤の再生方法であって、
ホウ素吸着剤に、電気抵抗率が0.01MΩ・cm以上の水を40℃から100℃の温度で接触させ、前記ホウ素吸着剤に吸着したホウ素を離脱させることを特徴とする、ホウ素吸着剤の再生方法。
【請求項2】
前記水のpHが6〜8の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載のホウ素吸着剤の再生方法。
【請求項3】
前記ホウ素吸着剤は、アミノポリオール基を有するイオン交換樹脂を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のホウ素吸着剤の再生方法。
【請求項4】
前記アミノポリオール基は、N−メチルグルカミン基であることを特徴とする、請求項3に記載のホウ素吸着剤の再生方法。
【請求項5】
前記水は、廃熱によって前記温度にまで加熱することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載のホウ素吸着剤の再生方法。

【公開番号】特開2012−183476(P2012−183476A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47979(P2011−47979)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】