説明

ホスト装置およびその装置から外部機器への電源供給方法

【課題】 過電流検出回路を有するホスト装置において、外部機器を接続した際に発生する突入電流により、外部機器への給電が停止するのを防止することが可能なホスト装置の提供。
【解決手段】 外部機器が接続されるコネクタ2と、コネクタ2に接続される外部機器と通信を行い、かつコネクタ2を介して外部機器に供給する電源を制御するホストコントローラ1とを含み、ホストコントローラ1は、外部機器を認識したか否かを調べ、外部機器がコネクタ2に接続されてから認識されるまでの間に供給する電源に突入電流による過電流が発生した場合、外部機器への電源供給を継続し、外部機器がコネクタ2に接続されてから認識された後に供給する電源に過電流が発生した場合、外部機器への電源供給を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスト装置およびその装置から外部機器への電源供給方法に関し、特にUSB(Universal Serial Bus)機器を接続し、その機器に対し電源を供給するホスト装置の電源供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連するUSBホスト装置にはUSB機器への電源供給だけでなく、過電流対策としての回路が組み込まれている場合が多い。ポータブルHDD(Hard Disc Drive )等、バスパワーによって電流を比較的多く消費するUSB機器の登場もあり、さらに過電流対策の必要性は高まっている。
【0003】
しかしながら、USB機器は内部に負荷容量を有しており、USBホスト装置との接続時にも瞬間的に比較的大きな電流、すなわち突入電流が流れることが分かっている。過電流対策が施されたUSBホスト装置の場合、突入電流を過電流として検出し、USB機器への電源供給が停止するという問題がある。
【0004】
その問題に対し、たとえば特許文献1にタイマ回路を設けることで、USBホスト装置側の電源が入り、電源電圧供給バスに5Vが供給されてから一定時間は突入電流が流れるのを認める記録装置が開示されている。
【0005】
また、USB規格以上の電流が流れることを認めることで、突入電流による給電停止を防止する接続装置が特許文献2に開示されている。
【0006】
また、パーソナルコンピュータのUSBポートを介して携帯電話を接続し、携帯電話に電源を供給するUSBケーブルが特許文献3に開示されている。この発明では、データ転送と充電を同時に行う。そして、過電圧発生で電源供給を停止する。
【0007】
また、入力と出力との間に挿入されるスイッチに流れる電流の過電流検出機能を備えたハイサンドスイッチにおいて、スイッチをオンにするにあたり、スイッチの制御端子に印加する信号を制御して、スイッチのオン抵抗を一旦高抵抗とした後、徐々に低くなるように制御する手段を備え、デバイス接続時などのインラッシュ電流による過電流検出に対して、スイッチをオフ状態に保持しないようにしたハイサンドスイッチが特許文献4に開示されている。
【0008】
また、判別回路がUSBコネクタにUSB機器が接続されたときの差動信号D+、D−の電圧に基づいてこのUSB機器の種別を自動判別するUSBホスト/デバイス接続機構が特許文献5に開示されている。
【0009】
また、ホスト装置とデバイスとの間にスイッチ回路を挿入し、スイッチ・オン時から一定時間、スイッチ回路を介して流れる電流を一定電流値以下に制限する突入電流防止回路が特許文献6に開示されている。
【0010】
また、ホストとデバイスの接続および切断を第1および第2差動信号に基づき判定するホストコントローラが特許文献7に開示されている。
【0011】
また、電源オンから所定時間、電源の電流を制限し、突入電流を抑制する突入電流抑制回路が特許文献8に開示されている。
【0012】
また、電力の供給を受けながらデータ通信を行わないデバイスを判断して、そのデバイスに供給する電力を低減する電子機器が特許文献9に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−094821号公報
【特許文献2】特開2001−352661号公報
【特許文献3】特開2000−339067号公報
【特許文献4】特開2002−051449号公報
【特許文献5】特開2004−005283号公報
【特許文献6】特開2005−184904号公報
【特許文献7】特開2007−049273号公報
【特許文献8】特開2007−049786号公報
【特許文献9】特開2007−102444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、本発明に関連する過電流検出回路を有するUSBホスト装置では、USB機器を接続した際に発生する突入電流を過電流として検出することでUSB機器への給電が停止し、よってUSB機器が使用できなくなるという課題がある。
【0015】
一方、特許文献1に記載の発明では電源投入前にUSB機器がUSBホスト装置に予め接続してある状況のみを想定しており、電源投入時にUSB機器が接続されていない場合については考慮されていない。これに対し、本発明では、USBホスト装置への電源投入時にUSB機器が接続されているか否かにかかわらず本発明の効果を得ることができる。
【0016】
また、後述する本発明の第3実施形態においてもタイマ回路を用いているが、第3実施形態では過電流を検出してからカウントし始め、カウント終了後においてもUSBホスト装置がUSB機器を認識しておらず、さらに過電流が流れていた場合にはUSB機器への給電を停止することを特徴としており、特許文献1に記載のタイマ回路とは動作や得られる効果が異なる。
【0017】
また、特許文献2に記載の発明では、故障したUSB機器を使用した場合、給電を停止できずに過電流が流れ続ける場合があり、USBホスト装置に比較的大きな負荷をかける可能性がある。これに対し、本発明では第3実施形態によって過電流が流れ続けることによるUSBホスト装置への負荷を抑えている。
【0018】
また、特許文献3に記載の発明は、USB接続した際の過電圧検出を目的とするものではないため、この発明によって本発明の課題を解決することはできない。
【0019】
また、特許文献4に記載の発明は、電源供給バスに突入電流対策のためのスイッチを入れているのに対し、本発明では突入電流を差動信号の状態で監視しており、この文献に示されるようなスイッチは不要である。したがって、この点で特許文献4に記載の発明は本発明と構成が全く異なる。このため、この発明によって本発明の課題を解決することはできない。
【0020】
また、特許文献5に記載の発明は、USBコネクタを1つにすることができるUSBホスト/デバイス接続機構を提供することを目的としている。したがって、この発明は本発明と目的が全く異なり、目的達成のための構成も全く異なるため、この発明によって本発明の課題を解決することはできない。
【0021】
また、特許文献6に記載の発明は、突入電流防止を目的としており、給電制御を目的とするものではない。したがって、この発明は本発明と目的が全く異なり、目的達成のための構成も全く異なるため、この発明によって本発明の課題を解決することはできない。
【0022】
また、特許文献7に記載の発明は、ホストとデバイスの接続および切断を高精度に行うことを目的としており、電源供給の制御を目的としていない。したがって、この発明は本発明と目的が全く異なり、目的達成のための構成も全く異なるため、この発明によって本発明の課題を解決することはできない。
【0023】
また、特許文献8に記載の発明は、所定時間、電源の電流を制限することにより突入電流を抑制する構成であるのに対し、本発明は突入電流を抑制するのではなく、突入電流を検出した場合、給電を停止させない構成である。したがって、この文献に記載の発明は本発明と目的および構成が全く異なり、よってこの発明により本発明の課題を解決することはできない。
【0024】
また、特許文献9に記載の発明は、データ伝送を行わないUSBデバイスに対し、電源供給を制限することを目的としている。したがって、この発明はUSBデバイスを接続した際の電源供給の制御を目的としないため、その目的が本発明と全く異なり、目的達成のための構成も全く異なる。よってこの発明により本発明の課題を解決することはできない。
【0025】
そこで、本発明の目的は、過電流検出回路を有するホスト装置において、外部機器を接続した際に発生する突入電流により、外部機器への給電が停止するのを防止することが可能なホスト装置およびその装置から外部機器への電源供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前記課題を解決するために、本発明によるホスト装置は、外部機器が接続されるコネクタと、前記コネクタに接続される前記外部機器と通信を行い、かつ前記コネクタを介して前記外部機器に供給する電源を制御するホストコントローラとを含み、前記ホストコントローラは、前記外部機器を認識したか否かを調べ、前記外部機器が前記コネクタに接続されてから認識されるまでの間に供給する電源に突入電流による過電流が発生した場合、前記外部機器への電源供給を継続し、前記外部機器が前記コネクタに接続されてから認識された後に供給する電源に過電流が発生した場合、前記外部機器への電源供給を停止することを特徴とする。
【0027】
また、本発明による外部機器への電源供給方法は、外部機器が接続されるコネクタと、前記コネクタに接続される前記外部機器と通信を行い、かつ前記コネクタを介して前記外部機器に供給する電源を制御するホストコントローラとを含むホスト装置から外部機器への電源供給方法であって、前記ホストコントローラは、前記外部機器を認識したか否かを調べ、前記外部機器が前記コネクタに接続されてから認識されるまでの間に供給する電源に突入電流による過電流が発生した場合、前記外部機器への電源供給を継続し、前記外部機器が前記コネクタに接続されてから認識された後に供給する電源に過電流が発生した場合、前記外部機器への電源供給を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、過電流検出回路を有するホスト装置において、外部機器を接続した際に発生する突入電流により、外部機器への給電が停止するのを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るホスト装置の一例の構成図である。
【図2】差動信号監視回路4の第1実施例の構成図である。
【図3】本発明に係るUSBホスト装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】USB機器を接続した際に突入電流が発生した場合のUSBホスト装置の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【図5】USB機器使用時に過電流が発生した場合のUSBホスト装置の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【図6】差動信号監視回路4の第2 実施例の構成図である。
【図7】差動信号監視回路4の第3実施例の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
まず、実施の形態の説明に入る前に、本発明の特徴について説明する。本発明に係るホスト装置は、USBインタフェースの差動信号D+およびD−の論理状態を監視することで、突入電流による過電流検出でのUSB機器への給電停止を防ぐことを特徴としている。また、USB機器として、ロー・スピードデバイス、フル・スピードデバイス、ハイ・スピードデバイスを問わず、本発明に適用することが可能である。
【0031】
より具体的に説明すると、本発明はUSBの規格で定義されている差動信号であるD+信号(後述する図1の番号10参照)、およびD−信号(図1の番号11参照)の論理状態(“High”または“Low”)を差動信号監視回路4で監視し、過電流が流れたときに両信号が“Low”である場合は、USB機器への5V電源の給電停止を行わない。
【0032】
USBの規格により、D+信号10、D−信号11はUSBホスト装置がUSB機器を認識するまでは“Low”であり、アイドル時やデータ通信時はどちらかが“High”である。そのため、消費電流が比較的多くなるデータ通信時に過電流が流れた場合はD+信号10、D−信号11のどちらかが“High”であるため、USB機器への給電を停止する。一方、USB機器の接続時はD+信号10、D−信号11の両方が“Low”であるため、このときに過電流が流れた場合は突入電流によるものと判断し、USB機器への給電を停止しない。
【0033】
ハイ・スピードデバイスでは、データ通信時の差動信号は“High”で400mV程度であり、ロー・スピードデバイス、フル・スピードデバイスと同様の論理監視ができないが、自己保持回路(後述する図2の番号51参照)を差動信号監視回路4に組み込むことで、突入電流による給電停止を防止することが可能となる。
【0034】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は本発明に係るホスト装置の一例の構成図である。本発明ではホスト装置の一例としてUSBホスト装置について説明する。
【0035】
同図を参照すると、USBホスト装置は、USBホストコントローラ1と、USBコネクタ2と、過電流検出回路3と、差動信号監視回路4と、5V供給用の電源回路5とを含んで構成される。
【0036】
USBホストコントローラ1はD+信号10、D−信号11、GND(接地)信号12の信号線を介してUSBコネクタ2と接続され、USBホストコントローラ1とUSBコネクタ2間で双方向の通信が行われる。
【0037】
過電流検出回路3にはUSBホストコントローラ1からの制御信号13が入力され、過電流検出回路3からUSBコネクタ2に対し5V供給用のVbus(電源電圧バス)信号17が出力される。
【0038】
差動信号監視回路4には過電流検出回路3から過電流検出信号14が入力され、さらにD+信号10、D−信号11、Vbus信号17が入力される。また、差動信号開始回路4からUSBホストコントローラ1に対し監視結果信号16が出力される。また、電源回路5から過電流検出回路3に対し+5V信号15が出力される。USBコネクタ2はUSB機器を接続するためのコネクタである。
【0039】
USBホストコントローラ1はUSB機器を規格で定義された方法で制御する。また、USBホストコントローラ1は差動信号開始回路4からの監視結果信号16を認識することで、USB機器への給電を停止するか否かを判断する。
【0040】
USBコネクタ2への5V供給用のVbus(電源電圧バス)信号17は、過電流検出回路3を介して電源回路5とつながっており、USBホストコントローラ1は制御信号13によって過電流検出回路3を制御する。過電流検出回路3はVbus信号17の過電流を検出し、過電流検出信号14を差動信号監視回路4に出力する。
【0041】
差動信号監視回路4はD+信号10、D−信号11および過電流検出回路3から出力される過電流検出信号14の論理を監視し、USBホストコントローラ1に対し監視結果信号16を出力する。
【0042】
次に、差動信号監視回路4の実施例について説明する。まず、差動信号監視回路4の第1実施例について説明する。図2は差動信号監視回路4の第1実施例の構成図である。同図を参照すると、差動信号監視回路4の第1実施例は、自己保持回路51と、否定論理和回路52と、論理和回路53と、電流測定回路54とを含んで構成される。
【0043】
電流測定回路54にはVbus信号17が入力される。電流測定回路54から自己保持回路51に対し信号51が出力される。また、自己保持回路51にはD+信号10が入力される。
【0044】
否定論理和回路52には自己保持回路51からの信号(無番号)と、D−信号11とが入力される。また、論理和回路53には否定論理和回路52からの信号(無番号)と、過電流検出信号14とが入力され、論理和回路53から監視結果信号16が出力される。
【0045】
自己保持回路51はD+信号10が“High”であるときの状態を保持し、一度“High”になれば“High”を出力し続ける。否定論理和回路52はD+信号10とD−信号11の出力を受け、否定論理和を出力する。論理和回路53は否定論理和回路52からの信号(無番号)と過電流検出信号14を受け、論理和を監視結果信号16として出力する。
【0046】
電流測定回路54はVbus信号17に流れる電流値を測定し、自己保持回路51の制御を行う。USB機器が接続されておらず、Vbus信号17の電流が流れていない場合、電流測定回路54は自己保持回路51が保持しているD+信号10の論理状態を“Low”にする。
【0047】
そして、否定論理和回路52と論理和回路53との組み合わせで、D+信号10、D−信号11および過電流検出信号14の論理演算を行い、演算結果を監視結果信号16としてUSBホストコントローラ1へ出力する。USBホストコントローラ1はこの監視結果信号16から突入電流による過電流検出が発生したか否かを決定する。
【0048】
次に、本発明に係るUSBホスト装置の動作の一例について説明する。図3は本発明に係るUSBホスト装置の動作の一例を示すフローチャートである。同図は外部機器への電源供給方法の処理手順の一例を示しており、具体的には、Vbus信号17に過電流が流れて、過電流検出回路3がその過電流を確認してから、給電を停止するか否かを制御するところまでの処理手順の一例を示している。
【0049】
同図を参照すると、ステップS1で、過電流検出回路3は過電流を検出したので過電流検出信号14を“Low”にして差動信号開始回路4に出力する。過電流検出回路3は過電流が流れている間は“Low”を出力する。一方、過電流が検出されていない状態では過電流検出信号14は“High”である。
【0050】
ステップS2で、差動信号監視回路4は内部の自己保持回路51の出力が“High”であるか否かを確認する。そして、“High”であれば(ステップS2にて“YES”)、過電流は突入電流によるものではないと判断して、ステップS3をジャンプしてステップS4の前へ移行する。
【0051】
一方、ステップS2で“High”でなければ(ステップS2にて“NO”)、ステップS3に移行し、差動信号監視回路4は、D+信号10とD−信号11の出力が共に“Low”であるか否かを確認する。
【0052】
ステップS3で、どちらか片方でも“High”であれば(ステップS3にて“NO”)ステップS4に移行する。これに対し、D+信号10とD−信号11の出力が共に“Low”であれば(ステップS3にて“YES”)、過電流は突入電流によるものと判断し、ステップS6に移行する。
【0053】
ステップS4で、差動信号監視回路4は、検出した過電流はUSB機器接続により発生した突入電流ではないと判断し、監視結果信号16を“Low“にしてUSBホストコントローラ1に出力する。この過電流を検出した場合以外は監視結果信号16は“High”である。
【0054】
ステップS5で、USBホストコントローラ1は制御信号13を“Low”にして過電流検出回路3に出力する。この過電流検出時以外では制御信号13は“High”である。過電流検出回路3は制御信号13が“Low”になることでVbus信号17の5V出力を止めてUSB機器への給電を停止する。
【0055】
ステップS6で、USBホストコントローラ1は制御信号13を“High”にして過電流検出回路3に出力する。過電流検出回路3は制御信号13が“High”になることでVbus信号17のUSB機器への給電を継続する。
【0056】
次に、差動信号監視回路4の第1実施例の動作を具体的に説明する。まず、USB機器を接続した際にVbus信号17に突入電流が発生した場合について説明する。図4はUSB機器を接続した際に突入電流が発生した場合のUSBホスト装置の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【0057】
図4において、「過電流閾値」はVbus信号17に設定された過電流の閾値、「電流値」はVbus信号17の電流値をそれぞれ示す。それ以外の信号は図1に示す信号である。
【0058】
「過電流閾値」の破線は過電流の閾値を示しており、これより高い電流が流れると過電流検出回路3は過電流が発生したと認識する。各信号の初期状態は、D+信号10とD−信号11が“Low”であり、過電流検出信号14と監視結果信号16は“High”である。
【0059】
同図の“A1”で、USBコネクタ2にUSB機器が接続される。「電流値」は突入電流により瞬時に高い値(過電流閾値を越える値)を示す。
【0060】
同図の“A2”で、「電流値」が過電流閾値を越えたため、過電流検出回路3は過電流が発生したことを認識する。それにより、過電流検出回路3は“Low”の過電流検出信号14を出力する。
【0061】
一方、D+信号10とD−信号11が“Low”であるため、差動信号監視回路4から出力される監視結果信号16は“High”のままである。
【0062】
同図の“A3”で、「電流値」が過電流閾値を下回る。それにより過電流検出回路3は“High”の過電流検出信号14を出力する。
【0063】
同図の“A4”で、D+信号10がUSB機器内のプルアップ抵抗により“High”となり、USBホストコントローラ1がUSB機器を認識する。これにより、USBホストコントローラ1は“High”の制御信号13を過電流検出回路3へ出力する。この“High”の制御信号13を受け取った過電流検出回路3はUSB機器に対するVbus信号17の給電を継続する。
【0064】
次に、USB機器使用時にVbus信号17に過電流が発生した場合について説明する。図5はUSB機器使用時に過電流が発生した場合のUSBホスト装置の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【0065】
図5において、「過電流閾値」はVbus信号17に設定された過電流の閾値、「電流値」はVbus信号17の電流値をそれぞれ示す。それ以外の信号は図1に示す信号である。
【0066】
同図の“B1”で、USB機器はUSBホストコントローラ1とデータ通信中であり、D+信号10とD−信号11は互いに“High”、“Low”を繰り返している。
【0067】
同図の“B2”で、「電流値」が過電流閾値を越えたため、過電流検出回路3は過電流が発生したことを認識する。それにより、過電流検出回路3は“Low”の過電流検出信号14を出力する。
【0068】
一方、D−信号11が“High”であるため、差動信号監視回路4はUSB機器使用時にVbus信号17に過電流が発生したと判断し、“Low”の監視結果信号16をUSBホストコントローラ1に出力する。
【0069】
これにより、USBホストコントローラ1は“Low”の制御信号13を過電流検出回路3へ出力する。この“Low”の制御信号13を受け取った過電流検出回路3はUSB機器に対するVbus信号17の給電を停止する。
【0070】
以上説明したように、本発明の第1実施例による第1の効果は、突入電流が比較的大きなUSB機器でも使用が可能となることである。その理由は、突入電流による給電停止を防ぐことで、どのようなUSB機器でも使用が可能となるためである。
【0071】
また、第2の効果は、大規模な回路を追加する必要がないことである。その理由は、本発明では自己保持回路、電流測定回路および論理回路を使用しており、特殊なハードウエアやIC(Integrated Circuit)を必要としないためである。
【0072】
次に、差動信号監視回路4の第2実施例について説明する。図6は差動信号監視回路4の第2実施例の構成図である。同図を参照すると、第2実施例では第1実施例(図2参照)と異なりD−信号11の状態を監視せず、否定論理和回路52の代わりにインバータ55を追加している。その他の構成は図2と同様であるので説明を省略する。
【0073】
ロー・スピードデバイスはマウスやキーボード等の消費電流が比較的少ないUSB機器が主であり、データ通信が行われるまでの間に突入電流以外で過電流が発生することはないと考えられる。これに対し、フル・スピードデバイスおよびハイ・スピードデバイスはデバイススピード確認時にD+信号10が“High”になる。
【0074】
以上説明したように、本発明の第2実施例によれば、本発明の効果を損なうことなく回路規模を第1実施例よりも縮小することが可能となる。
【0075】
次に、差動信号監視回路4の第3実施例について説明する。図7は差動信号監視回路4の第3実施例の構成図である。同図を参照すると、第3実施例では第1実施例(図2参照)と異なり、否定論理和回路52と論理和回路53の間にタイマ回路56を追加している。
【0076】
過電流検出回路3により過電流が検出されて“Low”の過電流検出信号14がタイマ回路56に出力された後、タイマ回路56は否定論理和回路52からの信号が“High”であればカウントを開始する。
【0077】
そして、カウント終了時に否定論理和回路52からの信号を“Low”に変更し、この“Low”レベル信号を論理和回路53の一方の入力端子に出力する。また、タイマ回路56は、カウント終了時に過電流検出信号14のレベルをそのまま論理和回路53の他方の入力端子に出力する。
【0078】
したがって、カウント終了時に過電流検出信号14のレベルが“Low”であれば、論理和回路53から“Low”の監視結果信号16がUSBホストコントローラ1へ出力される。これにより、USBホストコントローラ1から“Low”の制御信号13が過電流検出回路3へ出力され、この“Low”の制御信号13を受け取った過電流検出回路3はUSB機器に対するVbus信号17の給電を停止する。
【0079】
電源とGND(接地)間のショート等で故障したUSB機器をUSBホスト装置に接続した場合、過電流が流れる可能性がある。さらにUSBホスト装置がUSB機器を認識しない場合、D+信号10とD−信号11は“High”にならないため、差動信号監視回路4は過電流を突入電流であると認識してUSB機器への給電を停止せず、過電流が流れ続けると考えられる。
【0080】
そこで、タイマ回路56を設けることで、ある一定時間突入電流が流れていた場合、それを故障したUSB機器による過電流と判断してUSB機器への給電を停止させる。
【0081】
以上説明したように、本発明の第3実施例によれば、過電流の発生原因がUSB機器の故障にあることを認識することができ、したがってこの場合、USB機器への給電を停止させることが可能となる。
【0082】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0083】
(付記1) 差動信号監視回路は差動信号として2つの負の差動信号を検出しかつ過電流検出回路から過電流検出の通知を受け取った場合、ホストコントローラに対し正の監視結果信号を送信し、前記正の監視結果信号を受信した前記ホストコントローラは、前記過電流検出回路に対し電源供給の継続を指示することを特徴とする外部機器への電源供給方法。
【0084】
(付記2) 前記差動信号監視回路は前記差動信号のうち正の差動信号を保持する自己保持回路を含むことを特徴とする付記1記載の外部機器への電源供給方法。
【0085】
(付記3) 前記差動信号監視回路は前記差動信号のうち負の差動信号を監視しないことを特徴とする付記1または2記載の外部機器への電源供給方法。
【0086】
(付記4) 前記差動信号監視回路は前記外部機器を認識するまでの間に前記過電流が検出された場合に駆動されるタイマ回路を含み、前記タイマ回路のカウントが終了しても前記過電流が検出される場合、前記差動信号監視回路は前記ホストコントローラに対し負の監視結果信号を送信し、前記負の監視結果信号を受信した前記ホストコントローラは、前記過電流検出回路に対し電源供給の停止を指示することを特徴とする付記1から3のいずれかに記載の外部機器への電源供給方法。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明を、USBインタフェースを持ち、接続されたUSB機器に電源供給が可能で、過電流が流れたときにUSB機器への電源供給を停止する構成である電子機器に適用することが可能である。また、上記に限らず、本発明を、信号線の論理からデバイス認識を行うインタフェースを持ち、接続されたデバイスに電源供給が可能で、過電流が流れたときにデバイスへの電源供給を停止する構成である電子機器に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 USBホストコントローラ
2 USBコネクタ
3 過電流検出回路
4 差動信号監視回路
5 電源回路
51 自己保持回路
52 否定論理和回路
53 論理和回路
54 電流測定回路
55 インバータ
56 タイマ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部機器が接続されるコネクタと、
前記コネクタに接続される前記外部機器と通信を行い、かつ前記コネクタを介して前記外部機器に供給する電源を制御するホストコントローラとを含み、
前記ホストコントローラは、前記外部機器を認識したか否かを調べ、前記外部機器が前記コネクタに接続されてから認識されるまでの間に供給する電源に突入電流による過電流が発生した場合、前記外部機器への電源供給を継続し、前記外部機器が前記コネクタに接続されてから認識された後に供給する電源に過電流が発生した場合、前記外部機器への電源供給を停止することを特徴とするホスト装置。
【請求項2】
電源回路と、
前記電源回路からの電源を前記コネクタへ供給しかつ前記電源から過電流を検出する過電流検出回路と、
前記外部機器と前記ホストコントローラ間の通信に用いられる差動信号から前記外部機器を認識したか否かを調べかつ前記過電流検出回路からの過電流検出結果を調べ、前記過電流が前記外部機器を認識するまでに発生したものであるか否かを監視し、その監視結果を前記ホストコントローラへ出力する差動信号監視回路とを含み、
前記ホストコントローラは、前記差動信号監視回路からの監視結果に基づき電源供給を制御することを特徴とする請求項1記載のホスト装置。
【請求項3】
前記差動信号監視回路は少なくとも前記差動信号のうち正の差動信号を検出しかつ前記過電流検出回路から過電流検出の通知を受け取った場合、前記ホストコントローラに対し負の監視結果信号を送信し、前記負の監視結果信号を受信した前記ホストコントローラは、前記過電流検出回路に対し電源供給の停止を指示することを特徴とする請求項2記載のホスト装置。
【請求項4】
前記差動信号監視回路は前記差動信号として2つの負の差動信号を検出しかつ前記過電流検出回路から過電流検出の通知を受け取った場合、前記ホストコントローラに対し正の監視結果信号を送信し、前記正の監視結果信号を受信した前記ホストコントローラは、前記過電流検出回路に対し電源供給の継続を指示することを特徴とする請求項2記載のホスト装置。
【請求項5】
前記差動信号監視回路は前記差動信号のうち正の差動信号を保持する自己保持回路を含むことを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載のホスト装置。
【請求項6】
前記差動信号監視回路は前記差動信号のうち負の差動信号を監視しないことを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載のホスト装置。
【請求項7】
前記差動信号監視回路は前記外部機器を認識するまでの間に前記過電流が検出された場合に駆動されるタイマ回路を含み、前記タイマ回路のカウントが終了しても前記過電流が検出される場合、前記差動信号監視回路は前記ホストコントローラに対し負の監視結果信号を送信し、前記負の監視結果信号を受信した前記ホストコントローラは、前記過電流検出回路に対し電源供給の停止を指示することを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載のホスト装置。
【請求項8】
外部機器が接続されるコネクタと、前記コネクタに接続される前記外部機器と通信を行い、かつ前記コネクタを介して前記外部機器に供給する電源を制御するホストコントローラとを含むホスト装置から外部機器への電源供給方法であって、
前記ホストコントローラは、前記外部機器を認識したか否かを調べ、前記外部機器が前記コネクタに接続されてから認識されるまでの間に供給する電源に突入電流による過電流が発生した場合、前記外部機器への電源供給を継続し、前記外部機器が前記コネクタに接続されてから認識された後に供給する電源に過電流が発生した場合、前記外部機器への電源供給を停止することを特徴とする外部機器への電源供給方法。
【請求項9】
前記ホスト装置はさらに電源回路と、前記電源回路からの電源を前記コネクタへ供給しかつ前記電源から過電流を検出する過電流検出回路と、前記外部機器と前記ホストコントローラ間の通信に用いられる差動信号から前記外部機器を認識したか否かを調べかつ前記過電流検出回路からの過電流検出結果を調べ、前記過電流が前記外部機器を認識するまでに発生したものであるか否かを監視し、その監視結果を前記ホストコントローラへ出力する差動信号監視回路とを含み、
前記ホストコントローラは、前記差動信号監視回路からの監視結果に基づき電源供給を制御することを特徴とする請求項8記載の外部機器への電源供給方法。
【請求項10】
前記差動信号監視回路は少なくとも前記差動信号のうち正の差動信号を検出しかつ前記過電流検出回路から過電流検出の通知を受け取った場合、前記ホストコントローラに対し負の監視結果信号を送信し、前記負の監視結果信号を受信した前記ホストコントローラは、前記過電流検出回路に対し電源供給の停止を指示することを特徴とする請求項9記載の外部機器への電源供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−123579(P2012−123579A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273087(P2010−273087)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】