説明

ホスファイト配位子を含む触媒組成物およびこれを用いたヒドロホルミル化方法

【課題】
【解決手段】本発明は、ビス−ホスファイト配位子と;ポリ−ホスファイト配位子またはモノ−ホスファイト配位子;および遷移金属触媒を含む触媒組成物およびこれを用いたヒドロホルミル化反応に関し、前記触媒組成物は、触媒活性に優れ、それを用いたヒドロホルミル化反応により生成されるアルデヒドのノルマル/イソ(N/I)選択性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸素を含むリン化合物であるホスファイト(phosphite)配位子を含む触媒組成物およびこれを用いたヒドロホルミル化方法に関し、より詳しくは、オレフィン系化合物のヒドロホルミル化反応に用いられるビス−ホスファイト化合物とポリ−ホスファイトまたはモノ−ホスファイト化合物を用いたヒドロホルミル化方法に関する。
【0002】
本出願は2007年4月9日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第2007−34760号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0003】
各種オレフィンを、均一系有機金属触媒と配位子の存在下で、合成ガスと呼ばれる一酸化炭素(CO)と水素(H2)を反応させ、炭素数が1つ増加した線状(linear、normal)および分岐状(branched、iso)アルデヒドを生成するヒドロホルミル化(hydroformylation)反応は、1938年、ドイツのオットー・レーレン(Otto Roelen)によって初めて発見された。
【0004】
一般的にオキソ(OXO)反応と知られているヒドロホルミル化反応は均一系触媒反応において工業的に非常に重要な反応であって、2001年、現在、世界的に約8百40万トンのアルコール誘導体を含む各種アルデヒドがオキソ合成(oxo process)により生産および消費されている(SRI報告書、November 2002,682.7000A(非特許文献1))。
【0005】
オキソ反応により合成された各種アルデヒドは酸化または水素化過程を通じてアルデヒド誘導体である酸とアルコールに変形される。また、アルドール(Aldol)等の縮合反応後に酸化または水素化して、長いアルキル基が含まれた様々な酸とアルコールに変形されたりもする。特に、このようなオキソ反応によるアルデヒドの水素化アルコールをオキソアルコールといい、このオキソアルコールは溶剤、添加剤、各種可塑剤の原料、合成潤滑油などのように工業的に広範囲にかけて用いられている。
【0006】
ヒドロホルミル化反応の触媒としては金属−カルボニル化合物触媒が活性があると知られており、工業的に用いられる触媒としては主にコバルト(Co)とロジウム(Rh)系がある。これら触媒の種類、配位子の種類および実施条件により、生成されるアルデヒドのN/I選択性(ratio of linear (normal) to branched (iso) isomers)が変わる。
【0007】
現在、全世界70%以上のオキソ工場は、高価の触媒価格および被毒による触媒活性の低下問題などの短所があるにもかかわらず、高い触媒活性、高いN/I選択性および比較的に容易な反応条件により、ロジウム系触媒にホスフィン配位子が過量に適用された低圧オキソ合成(Low Pressure OXO Process)を採択している。
【0008】
オキソ反応のための触媒の中心金属としては、コバルト(Co)とロジウム(Rh)の他にも、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、プラチナム(Pt)、パラジウム(Pd)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)等の遷移金属を適用することができる。しかし、各金属はRh≫Co>Ir、Ru>Os>Pt>Pd>Fe>Niなどの順に触媒活性を示すと知られている。Co、Rh、PtとRuは8族遷移金属に属する金属であって、オキソ反応において高い触媒活性を示す。PtとRuの場合は、学究的な研究だけに適用されている。現在、大部分の商業的な目的のオキソ合成はロジウムとコバルトを根幹としており、HCo(CO)4、HCo(CO)3PBu3およびHRh(CO)(PR33をその代表的な例として挙げられる。
【0009】
オキソ合成に用いられる配位子の種類としては、ホスフィン(Phosphine、PR3、R=C65、n−C49)、ホスフィンオキシド(Phosphine Oxide)およびホスファイト(Phosphite)がある。窒素を含む配位子としてアミン(Amine)、アミド(Amide)、イソニトリル(Isonitrile)等が適用可能であるが、これらのメタルに対する強い配位により、その触媒活性はホスフィンが含まれた配位子に比べて遥かに低い。特に、ロジウムを中心金属として用いる場合、触媒活性と安定性の面でトリフェニルホスフィン(TPP)を凌駕する配位子はほぼないと知られている。
【0010】
イーストマンコダック社(Eastman Kodak Company)とユニオンカーバイド社(Union Carbide Company、現在はDowとして統合)により、高い触媒活性と高いN/I選択性を示す二座配位ホスフィン配位子(bidentate phosphine ligand)が開発されており(US 4694109(特許文献1)、US 4668651(特許文献2))、Dowにより開発されたビス−ホスファイト配位子の場合には一部工場にも適用されていると知られている。その反面、米国特許4,668,651号の実施例6〜9において配位子Bで示されたポリ−ホスファイト配位子の場合には、非常に高い触媒活性を示すにもかかわらず、相当低いN/I選択性を示す。したがって、これは、同じホスファイト系の配位子であってもその構造により相当異なる触媒性質を有するということを示す。
【0011】
1995年Kranenburgなどによって開発されたジホスフィン類のXantphos配位子は金属とホスフィン間(P−M−P)のバイト角(bite angle)を100°以上増加できる配位子であって、これをヒドロホルミル化反応に適用した時に線状アルデヒドに対する選択性を増加させることができるという結果を示しており、これと関連した研究が進行し続けられている。
【0012】
本出願人は、大韓民国特許出願番号第10−2004−73919号(特許文献3)に示すように、窒素が含まれた二座配位リン化合物を遷移金属触媒に適用してヒドロホルミル化反応に対する高N/I選択性を示す触媒システムを開発した。
【0013】
商業的に、線状(ノルマル)アルデヒドであるイソアルデヒドの価値がより高いゆえ、優れた触媒活性を有しつつN/I選択性の高い触媒を製造する技術が切実に求められている現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第4694109号明細書
【特許文献2】米国特許第4668651号明細書
【特許文献3】韓国公開特許第10−2004−73919号号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】SRI報告書、November 2002,682.7000A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、前記問題点を解決するために、触媒活性に優れ、生成されるアルデヒドのノルマル/イソ(N/I)選択性を高める触媒組成物およびこれを用いたヒドロホルミル化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、下記化学式1で示されるビス−ホスファイト配位子;下記化学式2で示されるポリ−ホスファイト配位子または下記化学式3で示されるモノ−ホスファイト配位子;および下記化学式4で示される遷移金属触媒を含む触媒組成物を提供する。
【0018】
【化1】

【0019】
前記化学式1において、
1〜R8およびR1’〜R8’は各々独立に相異なるか同じであってもよく、水素、C1〜C20のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、カルボアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニル基、アミド基(−CONH)、ニトロ基(−NO2)、ハロゲン基、シアノ基(−CN)、シリル基(−SiR3、Rは水素、アルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択された一つである)およびチオール基(−SR、Rは水素、アルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択された一つである)からなる群から選択された一つであり、
【0020】
【化2】

【0021】
前記化学式2において、
9〜R12、R9’〜R12’、R9’’〜R12’’およびR9’’’〜R12’’’は各々独立に相異なるか同じであってもよく、水素、C1〜C20のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、カルボアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニル基、アミド基(−CONH)、ニトロ基(−NO2)、ハロゲン基、シアノ基(−CN)、シリル基(−SiR3、Rは水素、アルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択された一つである)およびチオール基(−SR、Rは水素、アルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択された一つである)からなる群から選択された一つであり、nは1〜4であり、
【0022】
【化3】

【0023】
前記化学式3において、
13〜R21およびR13’〜R16’は各々独立に相異なるか同じであってもよく、水素、C1〜C20のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、カルボアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニル基、アミド基(−CONH)、ニトロ基(−NO2)、ハロゲン基、シアノ基(−CN)、シリル基(−SiR3、Rは水素、アルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択された一つである)およびチオール基(−SR、Rは水素、アルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択された一つである)からなる群から選択された一つであり、
[化学式4]
M(L1x(L2y(L3z
前記化学式4において、
Mはコバルト(Co)、ロジウム(Rh)およびイリジウム(Ir)からなる群から選択された一つであり、L1、L2およびL3は各々独立に水素、CO、シクロオクタジエン(cyclooctadiene)、ノルボルネン(norbonene)、塩素(chlorine)、トリフェニルホスフィン(triphenylphosphine)およびアセチルアセトナート(acetylacetonato)からなる群から選択された一つであり、x、yおよびzは各々独立に0〜5であり、x、yおよびzは同時に0ではない。
【0024】
本発明は、a)前記化学式1で示されるビス−ホスファイト配位子を溶媒に溶かして配位子溶液を製造するステップと;b)前記化学式2で示されるポリ−ホスファイト配位子または前記化学式3で示されるモノ−ホスファイト配位子を溶媒に溶かして配位子溶液を製造するステップと;c)前記化学式4で示される遷移金属触媒を溶媒に溶かして触媒溶液を製造するステップ;およびd)前記a)およびb)ステップで製造された配位子溶液ならびに前記c)ステップで製造された触媒溶液を混合して触媒組成物を製造した後、オレフィン系化合物および一酸化炭素と水素の合成ガスを追加して反応させるステップを含むヒドロホルミル化方法を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明による触媒組成物およびこれを用いたヒドロホルミル化方法は、オレフィンのヒドロホルミル化反応にビス−ホスファイト配位子と共にポリ−ホスファイトまたはモノ−ホスファイト配位子を用いることにより、非常に高い触媒活性と共に高いN/I選択性を確立することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明においては、オレフィンのヒドロホルミル化反応に金属触媒とビス−ホスファイト配位子を単独で適用する場合より、ポリ−ホスファイト配位子またはモノ−ホスファイト配位子をさらに添加すれば触媒活性およびN/I選択性がより高くなるという事実を発見した。
【0027】
したがって、本発明は、下記化学式1で示されるビス−ホスファイト配位子と;下記化学式2で示されるポリ−ホスファイト配位子または下記化学式3で示されるモノ−ホスファイト配位子;および下記化学式4で示される遷移金属触媒を含む触媒組成物を提供する。
【0028】
【化4】

【0029】
前記化学式1において、
1〜R8およびR1’〜R8’は各々独立に相異なるか同じであってもよく、水素、C1〜C20のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、カルボアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニル基、アミド基(−CONH)、ニトロ基(−NO2)、ハロゲン基、シアノ基(−CN)、シリル基(−SiR3、Rは水素、アルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択された一つである)およびチオール基(−SR、Rは水素、アルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択された一つである)からなる群から選択された一つであり、
【0030】
【化5】

【0031】
前記化学式2において、
9〜R12、R9’〜R12’、R9’’〜R12’’およびR9’’’〜R12’’’は各々独立に相異なるか同じであってもよく、水素、C1〜C20のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、カルボアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニル基、アミド基(−CONH)、ニトロ基(−NO2)、ハロゲン基、シアノ基(−CN)、シリル基(−SiR3、Rは水素、アルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択された一つである)およびチオール基(−SR、Rは水素、アルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択された一つである)からなる群から選択された一つであり、nは1〜4であり、
【0032】
【化6】

【0033】
前記化学式3において、
13〜R21およびR13’〜R16’は各々独立に相異なるか同じであってもよく、水素、C1〜C20のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、カルボアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニル基、アミド基(−CONH)、ニトロ基(−NO2)、ハロゲン基、シアノ基(−CN)、シリル基(−SiR3、Rは水素、アルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択された一つである)およびチオール基(−SR、Rは水素、アルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択された一つである)からなる群から選択された一つであり、
[化学式4]
M(L1x(L2y(L3z
前記化学式4において、
Mはコバルト(Co)、ロジウム(Rh)およびイリジウム(Ir)からなる群から選択された一つであり、L1、L2およびL3は各々独立に水素、CO、シクロオクタジエン(cyclooctadiene)、ノルボルネン(norbonene)、塩素(chlorine)、トリフェニルホスフィン(triphenylphosphine)およびアセチルアセトナート(acetylacetonato)からなる群から選択された一つであり、x、yおよびzは各々独立に0〜5であり、x、yおよびzは同時に0ではない。
【0034】
好ましくは、L1はCOであり、L2はアセチルアセトナートでありながら、xおよびyは各々2と1である場合、L1はCOであり、L2はアセチルアセトナートであり、L3はトリフェニルホスフィンでありながら、x、yおよびzの全てが1である場合、L1はCOであり、L2は水素であり、L3はトリフェニルホスフィンでありながら、x、yおよびzが各々独立に1,1および3である場合をその例として挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0035】
また、本発明は、a)前記化学式1で示されるビス−ホスファイト配位子を溶媒に溶かして配位子溶液を製造するステップと;b)前記化学式2で示されるポリ−ホスファイト配位子または前記化学式3で示されるモノ−ホスファイト配位子を溶媒に溶かして配位子溶液を製造するステップと;c)前記化学式4で示される遷移金属触媒を溶媒に溶かして触媒溶液を製造するステップ;およびd)前記a)およびb)ステップで製造された配位子溶液ならびに前記c)ステップで製造された触媒溶液を混合して触媒組成物を製造した後、オレフィン系化合物および一酸化炭素と水素の合成ガスを追加して反応させるステップを含むヒドロホルミル化方法を提供する。より詳細には、前記オレフィン系化合物および一酸化炭素と水素の合成ガスを追加する時、攪拌しながら、昇温、加圧してアルデヒドを製造するオレフィン系化合物のヒドロホルミル化方法を提供する。
【0036】
前記ビス−ホスファイト配位子は、2,2−ビス(((2,2’−ビスフェノキシ)ホスフィノ)−オキシ)−3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−1,1’−ビフェニル(2,2’−bis(((2,2’−bisphenoxy)phosphino)−oxy)−3,3’,5,5’−tetra−tert−butyl−1,1’−biphenyl、ISO−44)、および2,2’−ビス(((2,2’−ビスフェノキシ)ホスフィノ)−オキシ)−3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−メトキシ−1,1’−ビフェニル(2,2’−bis(((2,2’−bisphenoxy)phosphino)−oxy)−3,3’−di−tert−butyl−5,5’−di−methoxy−1,1’−biphenyl)からなる群から選択された1種以上であることが好ましい。
【0037】
前記ポリ−ホスファイト配位子は、1,4−ビス(((4,4’−ジメトキシ−6,6’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビスフェノキシ)ホスフィノ)オキシ)フェニル(1,4−bis(((4,4’−dimethoxy−6,6’−di−tert−butyl−2,2’−bisphenoxy)phosphino)oxy)phenyl、Ligand B)、4,4’−ビス(((4,4’−ジメトキシ−6,6’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビスフェノキシ)ホスフィノ)オキシ)ビフェニル(4,4’−Bis(((4,4’−dimethoxy−6,6’−di−tert−butyl−2,2’−bisphenoxy)phosphino)oxy)biphenyl、44−BP)、および1,4−ビス(((4,4’,6,6’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビスフェノキシ)ホスフィノ)オキシ)フェニル(1,4−bis(((4,4’,6,6’−tetra−tert−butyl−2,2’−bisphenoxy)phosphino)oxy)phenyl)からなる群から選択された1種以上であることが好ましい。
【0038】
前記モノ−ホスファイト配位子は、4,4’−ジメトキシ−6,6’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビスフェノキシホスフィノキシ−ベンゼン(4,4’−dimethoxy−6,6’−di−tert−butyl−2,2’−bisphenoxyphosphinoxy−benzene、BPP)、4,4’,6,6’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビスフェノキシホスフィノキシ−ベンゼン(4,4’,6,6’−tetra−tert−butyl−2,2’−bisphenoxyphosphinoxy−benzene)、2,2’−ビスフェノキシホスフィノキシ−2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチル−ベンゼン(2,2’−bisphenoxyphosphinoxy−2,6−di−tert−butyl−4−methyl−benzene)、および2,2’−ビスフェノキシホスフィノキシ−2,6−ジ−tert−ブチル−ベンゼン(2,2’−bisphenoxyphosphinoxy−2,6−di−tert−butyl−benzene)からなる群から選択された1種以上であることが好ましい。
【0039】
前記ビス−ホスファイト配位子、ポリ−ホスファイト配位子およびモノ−ホスファイト配位子の各含量は、前記遷移金属触媒1モルを基準に、0.5〜100モルが好ましい。より好ましくは1〜20モルである。
【0040】
前記ホスファイト配位子の含量が0.5モル未満であれば触媒系の安定性に問題が生じ、100モルを超過すれば高価な配位子を過量に用いることになって費用が上昇する。
【0041】
前記遷移金属触媒は、コバルトカルボニル(CO2(CO)8)、アセチルアセトナートジカルボニルロジウム(Rh(AcAc)(CO)2)、アセチルアセトナートカルボニルトリフェニルホスフィンロジウム(Rh(AcAc)(CO)(TPP))、ヒドリドカルボニルトリ(トリフェニルホスフィン)ロジウム(HRh(CO)(TPP)3)、アセチルアセトナートジカルボニルイリジウム(Ir(AcAc)(CO)2)およびヒドリドカルボニルトリ(トリフェニルホスフィン)イリジウム(HIr(CO)(TPP)3)からなる群から選択された1種以上の化合物を含むことができる。この時、前記遷移金属触媒はアセチルアセトナートジカルボニルロジウム(Rh(AcAc)(CO)2)であることが好ましい。
【0042】
前記遷移金属触媒の含量は、与えられたヒドロホルミル化方法の反応媒質内の遊離遷移金属含量を用いて計算し、約10ppm〜約1000ppmの範囲における触媒濃度が前記方法において充分である。通常は遷移金属の約10ppm〜500ppm、より好ましくは25〜500ppmを用いることが好ましい。
【0043】
遷移金属の含量が10ppm未満である場合には、ヒドロホルミル化反応速度が遅くなるために商業的に好ましくなく、1000ppmを超過する場合には、遷移金属が高価であるために費用が増加し、反応速度面においても優れた効果を示さない。
【0044】
前記ヒドロホルミル化方法において、前記オレフィン系化合物は下記化学式5で示される化合物であることが好ましい。
【0045】
【化7】

【0046】
前記化学式5において、
22とR23は各々独立に水素、炭素数1〜20のアルキル基、フッ素基(−F)、塩素基(−Cl)、臭素基(−Br)、トリフルオロメチル基(−CF3)および0〜5個の置換基を有するC6〜C20のフェニル基からなる群から選択された一つであり、この時、フェニル基の置換基はニトロ基(−NO2)、フッ素基(−F)、塩素基(−Cl)、臭素基(−Br)、メチル基、エチル基、プロピル基およびブチル基のうちから選択することができる。
【0047】
具体的には、前記オレフィン系化合物は、エテン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンおよびスチレンからなる群から選択された1種以上の化合物であってもよい。
【0048】
前記ヒドロホルミル化方法において、前記溶媒は、プロパンアルデヒド、ブチルアルデヒドおよびバレルアルデヒドを含むアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノンおよびシクロヘキサノンを含むケトン類;ベンゼン、トルエンおよびキシレンを含む芳香族類;オルトジクロロベンゼンを含むハロゲン化芳香族類;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンおよびジオキサンを含むエーテル類;塩化メチレンを含むハロゲン化パラフィン類;およびヘプタンを含むパラフィン炭化水素からなる群から選択された1種以上の化合物を用いることができ、好ましくはアルデヒド類と、トルエンを含む芳香族類をその例として挙げられる。
【0049】
前記ヒドロホルミル化方法において、一酸化炭素と水素の合成ガスであるCO:H2の組成比は広範囲にかけて変わることができるが、好ましくは約5:95〜70:30であり、より好ましくは約40:60〜60:40の範囲内であり、最も好ましくは約1:1の比率で混合して用いることができる。
【0050】
前記ヒドロホルミル化方法において、反応温度は約20〜180℃が好ましく、約50〜150℃がより好ましく、約75〜105℃が最も好ましい。
【0051】
前記ヒドロホルミル化方法において、反応圧力は約1〜700barが好ましく、1〜300barがより好ましい。
【0052】
前記のようなヒドロホルミル化方法による反応は下記反応式1または反応式2で示すことができる。
【0053】
【化8】

【0054】
【化9】

【0055】
前記反応式1および反応式2において、AR1〜AR9は置換もしくは非置換のベンゼン環であり、R22およびR23は前記化学式5で定義した通りである。
【0056】
前記ヒドロホルミル化反応のために、先ず、前記遷移金属触媒(4)と配位子(1)および(2)または(3)をベンゼン、トルエン、エタノール、ペンタノール、オクタノール、テキサノール、ブチルアルデヒド、ペンチルアルデヒドなどの溶媒に溶かして触媒と配位子の混合溶液を製造する。
【0057】
前記反応に、配位子として、ビス−ホスファイト配位子(1)とポリ−ホスファイト(2)またはモノ−ホスファイト配位子(3)を混用して用いる。
【0058】
前記触媒と配位子の混合溶液と共に、オレフィン系化合物(6)、一酸化炭素および水素の合成ガス(5)を反応器に注入し、攪拌しながら、昇温、加圧してヒドロホルミル化反応を進行することができる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の実施例により本発明をより詳細に説明する。但し、本発明の実施例は色々な形態に変形することができるため、本発明の範囲を下記にて詳述する実施例に限定して解釈してはいけない。本発明の実施例は当業界において平均的知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0060】
<実施例1〜4>アセチルアセトナートジカルボニルロジウム(Rh(AcAc)(CO)2)触媒、ビス−ホスファイト化合物とポリ−ホスファイト化合物を用いたプロペンのヒドロホルミル化反応。
【0061】
オートクレーブ(Auto Clave)社により製作されたHTS(High Throughput Screen Unit)の反応器に触媒であるRh(AcAc)(CO)2 0.100mg(0.390mmol)、GC分析の内部標準物質であるヘキサデカン(Hexadecane)0.2mlおよびビス−ホスファイト化合物であるISO−44とポリ−ホスファイト化合物であるLigand Bまたは44−BPを下記表1に記載されたロジウム(Rh(AcAc)(CO)2)に対する配位子のモル比(L/Rh)に従ってトルエン溶媒に溶かして全体溶液が100mlになるようにした後に添加した。
【0062】
前記反応溶液にプロペン(オレフィン):CO:H2のモル比1:1:1で反応気体を注入し、反応器内の圧力を6barになるように維持し、85℃で攪拌しながら2.5時間反応させた。
【0063】
前記反応に対する触媒と配位子の種類と触媒に対する配位子のモル比、N/I選択性および触媒活性を表1に詳細に記載した。
【0064】
本実施例および比較例において、N/I選択性は反応によって生成されたノルマル−ブチルアルデヒド(normal−butylaldehyde)の量をイソ−ブチルアルデヒド(iso−butylaldehyde)の量で割った値であり、各アルデヒドの生成量は内部標準物質として添加したヘキサデカンの量を基準にガス・クロマトグラフィー(GC)分析によって求めた。
【0065】
触媒活性は、前記反応によって生成されたノルマルアルデヒドとイソアルデヒドの総量をブチルアルデヒドの分子量、用いた触媒の濃度、および反応時間で割った値である。この時、触媒活性の単位はmol(BAL)/mol(Rh)/hである。
【0066】
【表1】

【0067】
<実施例5〜6>アセチルアセトナートジカルボニルロジウム(Rh(AcAc)(CO)2)触媒、ビス−ホスファイト化合物とモノ−ホスファイト化合物を用いたプロペンのヒドロホルミル化反応。
【0068】
配位子としてビス−ホスファイト化合物であるISO−44とモノ−ホスファイト化合物であるBPPを用いたことを除いては、下記表2に記載されたモル比に従って実施例1〜4と同じ方法により触媒活性実験を行い、その結果を下記表2に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
<実施例7〜14>アセチルアセトナートジカルボニルロジウム(Rh(AcAc)(CO)2)触媒、ビス−ホスファイト化合物とポリ−ホスファイト化合物を適用した、温度変化に応じたプロペンのヒドロホルミル化反応。
【0071】
配位子として用いた化合物は下記表1に整理した通りであり、配位子に対するロジウム(Rh(AcAc)(CO)2)のモル比を各々5に固定し、反応温度を75℃から105℃まで10℃ずつ変化させたことを除いては、実施例1〜4と同じ方法により触媒活性実験を行い、その結果を下記表3に示す。
【0072】
【表3】

【0073】
<実施例15〜18>アセチルアセトナートジカルボニルロジウム(Rh(AcAc)(CO)2)触媒、ビス−ホスファイト化合物とモノ−ホスファイト化合物を適用した、温度変化に応じたプロペンのヒドロホルミル化反応。
【0074】
配位子としてビス−ホスファイト化合物であるISO−44とモノ−ホスファイト化合物であるBPPを用いたことを除いては、実施例7〜10と同じ方法により触媒活性実験を行い、その結果を表4に示す。
【0075】
【表4】

【0076】
<比較例1〜3>アセチルアセトナートジカルボニルロジウム(Rh(AcAc)(CO)2)触媒、2,2’−ビス(((2,2’−ビスフェノキシ)ホスフィノ)−オキシ)−3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−1,1’−ビフェニル(2,2’−bis(((2,2’−bisphenoxy)phosphino)−oxy)−3,3’,5,5’−tetra−tert−butyl−1,1’−biphenyl、ISO−44)を用いたプロペンのヒドロホルミル化反応。
【0077】
ISO−44を配位子として用い、配位子に対するロジウム(Rh(AcAc)(CO)2)のモル比が各々2、5および10であることを除いては、実施例1と同じ方法により触媒活性実験を行い、その結果を下記表5に示す。
【0078】
<比較例4〜5>アセチルアセトナートジカルボニルロジウム(Rh(AcAc)(CO)2)触媒と1,4−ビス(((4,4’−ジメトキシ−6,6’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビスフェノキシ)ホスフィノ)オキシ)フェニル(1,4−bis(((4,4’−dimethoxy−6,6’−di−tert−butyl−2,2’−bisphenoxy)phosphino)oxy)phenyl、Ligand B)を用いたプロペンのヒドロホルミル化反応。
【0079】
配位子としてISO−44の代わりにLigand Bを用い、配位子に対するロジウム(Rh(AcAc)(CO)2)のモル比が各々3および10であることを除いては、比較例1と同じ方法により触媒活性実験を行い、その結果を下記表5に示す。
【0080】
<比較例6〜7>アセチルアセトナートジカルボニルロジウム(Rh(AcAc)(CO)2)と4,4’−ビス(((4,4’−ジメトキシ−6,6’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビスフェノキシ)ホスフィノ)オキシ)ビフェニル(4,4’−bis(((4,4’−dimethoxy−6,6’−di−tert−butyl−2,2’−bisphenoxy)phosphino)oxy)biphenyl、44−BP)を適用したプロペンのヒドロホルミル化反応。
【0081】
配位子としてISO−44の代わりに44−BPを用いたことを除いては、比較例2〜3と同じ方法により触媒活性実験を行い、その結果を下記表5に示す。
【0082】
<比較例8〜9>アセチルアセトナートジカルボニルロジウム(Rh(AcAc)(CO)2)と4,4’−ジメトキシ−6,6’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビスフェノキシホスフィノキシ−ベンゼン(4,4’−dimethoxy−6,6’−di−tert−butyl−2,2’−bisphenoxyphosphinoxy−benzene、BPP)を適用したプロペンのヒドロホルミル化反応。
【0083】
配位子としてISO−44の代わりにBPPを用いたことを除いては、比較例2〜3と同じ方法により触媒活性実験を行い、その結果を表5に示す。
【0084】
【表5】

【0085】
<比較例10〜17>アセチルアセトナートジカルボニルロジウム(Rh(AcAc)(CO)2)触媒とビス−ホスファイト化合物を適用した、温度変化に応じたプロペンのヒドロホルミル化反応。
【0086】
配位子としてビス−ホスファイト化合物であるISO−44だけを用い、配位子に対するロジウム(Rh(AcAc)(CO)2)のモル比が各々5および10であることを除いては、実施例7〜10と同じ方法により触媒活性実験を行い、その結果を下記表6に示す。
【0087】
<比較例18〜21>アセチルアセトナートジカルボニルロジウム(Rh(AcAc)(CO)2)触媒とポリ−ホスファイト化合物を適用した、温度変化に応じたプロペンのヒドロホルミル化反応。
【0088】
配位子としてポリ−ホスファイト化合物である44−BPだけを用いたことを除いては、実施例7〜10と同じ方法により触媒活性実験を行い、その結果を下記表6に示す。
【0089】
<比較例22〜25>アセチルアセトナートジカルボニルロジウム(Rh(AcAc)(CO)2)触媒とモノ−ホスファイト化合物を適用した、温度変化に応じたプロペンのヒドロホルミル化反応。
【0090】
配位子としてモノ−ホスファイト化合物であるBPPだけを用いたことを除いては、実施例7〜10と同じ方法により触媒活性実験を行い、その結果を下記表6に示す。
【0091】
【表6】

【0092】
実施例および比較例を参考すれば、ビス−ホスファイト化合物とポリ−ホスファイト配位子またはモノ−ホスファイト配位子を同時に混用する場合には、非常に高い触媒活性を維持するだけでなく、N/I選択性をビス−ホスファイトだけを適用した場合より1.9倍まで高められることが分かる。
【0093】
実施例1の場合、触媒としてアセチルアセトナートジカルボニルロジウム(Rh(AcAc)(CO)2)を適用し、1,4−ビス(((4,4’−ジメトキシ−6,6’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビスフェノキシ)ホスフィノ)オキシ)フェニル(1,4−bis(((4,4’dimethoxy−6,6’−di−tert−butyl−2,2’−bisphenoxy)phosphino)oxy)phenyl、Ligand B)を添加した後、2,2’−ビス(((2,2’−ビスフェノキシ)ホスフィノ)−オキシ)−3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−1,1’−ビフェニル(2,2’−bis(((2,2’−bisphenoxy)phosphino)−oxy)−3,3’,5,5’−tetra−tert−butyl−1,1’−biphenyl、ISO−44)をさらに添加する場合、触媒活性は306mol(BAL)/mol(Rh)/h、N/I選択性は18.3の値を示した。
【0094】
しかし、同一条件でISO−44だけを適用した比較例2の場合、触媒活性は271.9mol(BAL)/mol(Rh)/hであり、N/I選択性は9.6の値を有する。
【0095】
また、実施例1〜18のように二つの配位子を同時に適用した場合、ISO−44だけを単独で適用した場合より、同じ温度条件でより高いN/I選択性を示すことを確認することができる。
【0096】
ビス−ホスファイト化合物を適用した比較例1〜2の結果を見てみれば、表5に示すように、ISO−44を配位子として適用する場合、ISO−44に対するロジウムの比が2モル以上である時に触媒活性は260mol(BAL)/mol(Rh)/h以上の高い値を示したが、この時のN/I選択性を見てみれば、約10であって、多少低いノルマル−アルデヒドに対する選択性を示した。
【0097】
比較例4、6および8に用いられたポリ−ホスファイトおよびモノ−ホスファイトのプロペンのヒドロホルミル化反応に対する触媒活性およびN/I選択性を見てみれば、三つの配位子全てが1程度の低いN/I選択性を有し、また、触媒活性も230〜360mol(BAL)/mol(Rh)/hの範囲の活性を示した。
【0098】
また、1種類の配位子を用い、1種類の配位子に対するロジウム(Rh(AcAc)(CO)2)のモル比が10である比較例3、5、7、9および14−17を、2種類の配位子を共に用い、これらの配位子に対するロジウム(Rh(AcAc)(CO)2)のモル比の合算値が8以上である実施例1〜18と比較してみた時、比較例3、5、7、9および14−17において、1種類の配位子を実施例1〜18と類似するように多量用いるとしても、表5および表6から分かるように、N/I選択性は特に改善されず、活性だけが落ちる傾向を示すことを確認することができる。このように、1種類の配位子を多量用いるとしても、2種類の配位子を共に用いる本発明による実施例1〜18の効果を提供できないことを確認することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で示されるビス−ホスファイト配位子;
下記化学式2で示されるポリ−ホスファイト配位子または下記化学式3で示されるモノ−ホスファイト配位子;および
下記化学式4で示される遷移金属触媒を含む触媒組成物。
【化10】

前記化学式1において、
1〜R8およびR1’〜R8’は各々独立に相異なるか同じであってもよく、水素、C1〜C20のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、カルボアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニル基、アミド基(−CONH)、ニトロ基(−NO2)、ハロゲン基、シアノ基(−CN)、シリル基(−SiR3、Rは水素、アルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択された一つである)およびチオール(sionyl)基(−SR、Rは水素、アルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択された一つである)からなる群から選択された一つであり、
【化11】

前記化学式2において、
9〜R12、R9’〜R12’、R9’’〜R12’’およびR9’’’〜R12’’’は各々独立に相異なるか同じであってもよく、水素、C1〜C20のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、カルボアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニル基、アミド基(−CONH)、ニトロ基(−NO2)、ハロゲン基、シアノ基(−CN)、シリル基(−SiR3、Rは水素、アルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択された一つである)およびチオール基(−SR、Rは水素、アルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択された一つである)からなる群から選択された一つであり、nは1〜4であり、
【化12】

前記化学式3において、
13〜R21およびR13’〜R16’は各々独立に相異なるか同じであってもよく、水素、C1〜C20のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、カルボアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニル基、アミド基(−CONH)、ニトロ基(−NO2)、ハロゲン基、シアノ基(−CN)、シリル基(−SiR3、Rは水素、アルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択された一つである)およびチオール基(−SR、Rは水素、アルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択された一つである)からなる群から選択された一つであり、
[化学式4]
M(L1x(L2y(L3z
前記化学式4において、
Mはコバルト(Co)、ロジウム(Rh)およびイリジウム(Ir)からなる群から選択された一つであり、L1、L2およびL3は各々独立に水素、CO、シクロオクタジエン(cyclooctadiene)、ノルボルネン(norbonene)、塩素(chlorine)、トリフェニルホスフィン(triphenylphosphine)およびアセチルアセトナート(acetylacetonato)からなる群から選択された一つであり、x、yおよびzは各々独立に0〜5であり、x、yおよびzは同時に0ではない。
【請求項2】
前記遷移金属触媒含量は反応媒質内の遊離遷移金属含量を用いて計算し、遊離遷移金属含量が25〜500ppmである、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記ビス−ホスファイト、ポリ−ホスファイトおよびモノ−ホスファイト配位子のそれぞれの含量は、前記遷移金属触媒1モルを基準に、0.5〜100モルである、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項4】
前記ビス−ホスファイト配位子は、2,2’−ビス(((2,2’−ビスフェノキシ)ホスフィノ)−オキシ)−3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−1,1’−ビフェニル(2,2’−bis(((2,2’−bisphenoxy)phosphino)−oxy)−3,3’,5,5’−tetra−tert−butyl−1,1’−biphenyl、ISO−44)および2,2’−ビス(((2,2’−ビスフェノキシ)ホスフィノ)−オキシ)−3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−メトキシ−1,1’−ビフェニル(2,2’−bis(((2,2’−bisphenoxy)phosphino)−oxy)−3,3’−di−tert−butyl−5,5’−di−methoxy−1,1’−bipehnyl)からなる群から選択された1種以上を含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記ポリ−ホスファイト配位子は、1,4−ビス(((4,4’−ジメトキシ−6,6’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビスフェノキシ)ホスフィノ)オキシ)フェニル(1,4−bis(((4,4’−dimethoxy−6,6’−di−tert−butyl−2,2’−bisphenoxy)phosphino)oxy)phenyl、Ligand B)、4,4’−ビス(((4,4’−ジメトキシ−6,6’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビスフェノキシ)ホスフィノ)オキシ)ビフェニル(4,4’−Bis(((4,4’−dimethoxy−6,6’−di−tert−butyl−2,2’−bisphenoxy)phosphino)oxy)biphenyl、44−BP)および1,4−ビス(((4,4’,6,6’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビスフェノキシ)ホスフィノ)オキシ)フェニル(1,4−bis(((4,4’,6,6’−tetra−tert−butyl−2,2’−bisphenoxy)phosphino)oxy)phenyl)からなる群から選択された1種以上を含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項6】
前記モノ−ホスファイト配位子は、4,4’−ジメトキシ−6,6’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビスフェノキシホスフィノキシ−ベンゼン(4,4’−dimethoxy−6,6’−di−tert−butyl−2,2’−bisphenoxyphosphinoxy−benzene、BPP)、4,4’,6,6’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビスフェノキシホスフィノキシ−ベンゼン(4,4’,6,6’−tetra−tert−butyl−2,2’−bisphenoxyphosphinoxy−benzene)、2,2’−ビスフェノキシホスフィノキシ−2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチル−ベンゼン(2,2’−bisphenoxyphosphinoxy−2,6−di−tert−butyl−4−methyl−benzene)および2,2’−ビスフェノキシホスフィノキシ−2,6−ジ−tert−ブチル−ベンゼン(2,2’−bisphenoxyphosphinoxy−2,6−di−tert−butyl−benzene)からなる群から選択された1種以上を含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項7】
前記遷移金属触媒は、コバルトカルボニル(Co(CO)8)、アセチルアセトナートジカルボニルロジウム(Rh(AcAc)(CO)2)、アセチルアセトナートカルボニルトリフェニルホスフィンロジウム(Rh(AcAc)(CO)(TPP))、ヒドリドカルボニルトリ(トリフェニルホスフィン)ロジウム(HRh(CO)(TPP)3)、アセチルアセトナートジカルボニルイリジウム(Ir(AcAc)(CO)2)およびヒドリドカルボニルトリ(トリフェニルホスフィン)イリジウム(HIr(CO)(TPP)3)からなる群から選択された1種以上の化合物を含む、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項8】
a)下記化学式1で示されるビス−ホスファイト配位子を溶媒に溶かして配位子溶液を製造するステップ;
b)下記化学式2で示されるポリ−ホスファイト配位子または下記化学式3で示されるモノ−ホスファイト配位子を溶媒に溶かして配位子溶液を製造するステップ;
c)下記化学式4で示される遷移金属触媒を溶媒に溶かして触媒溶液を製造するステップ;および
d)前記a)ステップおよび前記b)ステップで製造された配位子溶液ならびに前記c)ステップで製造された触媒溶液を混合して触媒組成物を製造した後、オレフィン系化合物および一酸化炭素と水素の合成ガスを追加して反応させるステップを含むヒドロホルミル化方法。
【化13】

前記化学式1において、
1〜R8およびR1’〜R8’は各々独立に相異なるか同じであってもよく、水素、C1〜C20のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、カルボアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニル基、アミド基(−CONH)、ニトロ基(−NO2)、ハロゲン基、シアノ基(−CN)、シリル基(−SiR3、Rは水素、アルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択された一つである)およびチオール基(−SR、Rは水素、アルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択された一つである)からなる群から選択された一つであり、
【化14】

前記化学式2において、
9〜R12、R9’〜R12’、R9’’〜R12’’およびR9’’’〜R12’’’は各々独立に相異なるか同じであってもよく、水素、C1〜C20のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、カルボアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニル基、アミド基(−CONH)、ニトロ基(−NO2)、ハロゲン基、シアノ基(−CN)、シリル基(−SiR3、Rは水素、アルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択された一つである)およびチオール基(−SR、Rは水素、アルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択された一つである)からなる群から選択された一つであり、nは1〜4であり、
【化15】

前記化学式3において、
13〜R21およびR13’〜R16’は各々独立に相異なるか同じであってもよく、水素、C1〜C20のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、カルボアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニル基、アミド基(−CONH)、ニトロ基(−NO2)、ハロゲン基、シアノ基(−CN)、シリル基(−SiR3、Rは水素、アルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択された一つである)およびチオール基(−SR、Rは水素、アルキル基およびアルコキシ基からなる群から選択された一つである)からなる群から選択された一つであり、
[化学式4]
M(L1x(L2y(L3z
前記化学式4において、
Mはコバルト(Co)、ロジウム(Rh)およびイリジウム(Ir)からなる群から選択された一つであり、L1、L2およびL3は各々独立に水素、CO、シクロオクタジエン(cyclooctadiene)、ノルボルネン(norbonene)、塩素(chlorine)、トリフェニルホスフィン(triphenylphosphine)およびアセチルアセトナート(acetylacetonato)からなる群から選択された一つであり、x、yおよびzは各々独立に0〜5であり、x、yおよびzは同時に0ではない。
【請求項9】
前記遷移金属触媒含量は、前記d)ステップで製造された触媒組成物の反応媒質内の遊離遷移金属含量を用いて計算し、遊離遷移金属含量が25〜500ppmである、請求項8に記載のヒドロホルミル化方法。
【請求項10】
前記ビス−ホスファイト、ポリ−ホスファイトおよびモノ−ホスファイト配位子のそれぞれの含量は、前記遷移金属触媒1モルを基準に、0.5〜100モルである、請求項8に記載のヒドロホルミル化方法。
【請求項11】
前記ビス−ホスファイト配位子は、2,2’−ビス(((2,2’−ビスフェノキシ)ホスフィノ)−オキシ)−3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−1,1’−ビフェニル(2,2’−bis(((2,2’−bisphenoxy)phosphino)−oxy)−3,3’,5,5’−tetra−tert−butyl−1,1’−biphenyl、ISO−44)および2,2’−ビス(((2,2’−ビスフェノキシ)ホスフィノ)−オキシ)−3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジ−メトキシ−1,1’−ビフェニル(2,2’−bis(((2,2’−bisphenoxy)phosphino)−oxy)−3,3’−di−tert−butyl−5,5’−di−methoxy−1,1’−bipehnyl)からなる群から選択された1種以上を含む、請求項8に記載のヒドロホルミル化方法。
【請求項12】
前記ポリ−ホスファイト配位子は、1,4−ビス(((4,4’−ジメトキシ−6,6’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビスフェノキシ)ホスフィノ)オキシ)フェニル(1,4−bis(((4,4’−dimethoxy−6,6’−di−tert−butyl−2,2’−bisphenoxy)phosphino)oxy)phenyl、Ligand B)、4,4’−ビス(((4,4’−ジメトキシ−6,6’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビスフェノキシ)ホスフィノ)オキシ)ビフェニル(4,4’−Bis(((4,4’−dimethoxy−6,6’−di−tert−butyl−2,2’−bisphenoxy)phosphino)oxy)biphenyl、44−BP)および1,4−ビス(((4,4’,6,6’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビスフェノキシ)ホスフィノ)オキシ)フェニル(1,4−bis(((4,4’,6,6’−tetra−tert−butyl−2,2’−bisphenoxy)phosphino)oxy)phenyl)からなる群から選択された1種以上を含む、請求項8に記載のヒドロホルミル化方法。
【請求項13】
前記モノ−ホスファイト配位子は、4,4’−ジメトキシ−6,6’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビスフェノキシホスフィノキシ−ベンゼン(4,4’−dimethoxy−6,6’−di−tert−butyl−2,2’−bisphenoxyphosphinoxy−benzene、BPP)、4,4’,6,6’−テトラ−tert−ブチル−2,2’−ビスフェノキシホスフィノキシ−ベンゼン(4,4’,6,6’−tetra−tert−butyl−2,2’−bisphenoxyphosphinoxy−benzene)、2,2’−ビスフェノキシホスフィノキシ−2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチル−ベンゼン(2,2’−bisphenoxyphosphinoxy−2,6−di−tert−butyl−4−methyl−benzene)および2,2’−ビスフェノキシホスフィノキシ−2,6−ジ−tert−ブチル−ベンゼン(2,2’−bisphenoxyphosphinoxy−2,6−di−tert−butyl−benzene)からなる群から選択された1種以上を含む、請求項8に記載のヒドロホルミル化方法。
【請求項14】
前記遷移金属触媒は、コバルトカルボニル(Co(CO)8)、アセチルアセトナートジカルボニルロジウム(Rh(AcAc)(CO)2)、アセチルアセトナートカルボニルトリフェニルホスフィンロジウム(Rh(AcAc)(CO)(TPP))、ヒドリドカルボニルトリ(トリフェニルホスフィン)ロジウム(HRh(CO)(TPP)3)、アセチルアセトナートジカルボニルイリジウム(Ir(AcAc)(CO)2)およびヒドリドカルボニルトリ(トリフェニルホスフィン)イリジウム(HIr(CO)(TPP)3)からなる群から選択された1種以上の化合物を含む、請求項8に記載のヒドロホルミル化方法。
【請求項15】
前記オレフィン系化合物は下記化学式5で示される化合物である、請求項8に記載のヒドロホルミル化方法。
【化16】

前記化学式5において、
22とR23は各々独立に水素、炭素数1〜20のアルキル基、フッ素基(−F)、塩素基(−Cl)、臭素基(−Br)、トリフルオロメチル基(−CF3)および0〜5個の置換基を有するC6〜C20のフェニル基からなる群から選択された一つであり、この時、フェニル基の置換基はニトロ基(−NO2)、フッ素基(−F)、塩素基(−Cl)、臭素基(−Br)、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基である。
【請求項16】
前記オレフィン系化合物は、エテン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンおよびスチレンからなる群から選択された1種以上の化合物である、請求項15に記載のヒドロホルミル化方法。
【請求項17】
前記溶媒は、アルデヒド類;ケトン類;ハロゲン化芳香族類;エーテル類;パラフィン類;およびパラフィン炭化水素からなる群から選択された1種以上の化合物である、請求項8に記載のヒドロホルミル化方法。
【請求項18】
前記一酸化炭素と水素の合成ガス(CO:H2)のモル比は5:95〜70:30である、請求項8に記載のヒドロホルミル化方法。
【請求項19】
前記ヒドロホルミル化反応は20〜180℃の温度で行われる、請求項8に記載のヒドロホルミル化方法。
【請求項20】
前記ヒドロホルミル化反応は1〜700barの圧力で行われる、請求項8に記載のヒドロホルミル化方法。

【公表番号】特表2010−523312(P2010−523312A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502034(P2010−502034)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【国際出願番号】PCT/KR2008/001985
【国際公開番号】WO2008/123740
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】