説明

ホスファチジルセリンおよび抗原またはアレルゲンを含む組成物、およびその使用

(i) 抗原;および
(ii) ホスファチジルセリンレセプターリガンド
を含む、組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、治療の際に使用するための新規組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
免疫系は、誘起し、外来または新規物質を特異的に検知し、宿主から排除するために進展してきた。この物質は、ウイルス、細菌または寄生虫起源の物質でもあり得るし、宿主細胞の外側または内側に存在し得るか、または腫瘍起源のものであり得る。
【0003】
非特異的または本来の免疫系は、通常新規攻撃に対する防御の第一線である。それには、バリア(例えば、皮膚および粘膜)および酵素の分泌によるかまたはそれを飲み込むこと(食作用)によって外来物質を破壊するためにプログラムされた専門細胞(例えば、好中球およびマクロファージ)が含まれる。本来の免疫系は、外来物質(PAMPS)の一般的な形態を認識する食細胞(パターンレセプターまたはトル様レセプター;Toll-like receptor)の表面で、レセプターによって開始され得る。少なくとも10個のトル様レセプターが知られている。例えば、TLR4は細菌細胞壁由来のリポ多糖体(LPS)を認識し、TLR9はCpG DNA配列を認識する。食細胞は、活性化された場合に、一次特異的免疫応答、例えばT-細胞と関連のある細胞を動員する炎症性サイトカインを放出する。さらに、多くの食細胞は、内部で外来タンパク質を処理し、それらのフラグメント(エピトープ)を提示することにより特異的免疫応答の進展の前段階として獲得免疫系の動員された特異的細胞を提示することにより、抗原提示細胞(APC's)としても作用し得る。
【0004】
特異的免疫応答は、一般的に、キラーT-細胞破壊が感染細胞を破壊するところで細胞か、または体液のいずれかで媒介され、ここで抗体(例えばIgG)が外来物質と結合し、破壊過程を補助し、補体系および食作用によって身体から除去する。全ての場合において、APCは、APCからの情報伝達サイトカインプロファイルおよびT-ヘルパー細胞タイプによって、Th-細胞応答の範囲を示すT-ヘルパー細胞(Th)にエピトープを提示する。Th1様応答は、細胞媒介性であって、T-細胞が一次サイトカインとしてγインターフェロンを分泌する。Th2様応答は体液性であり、分泌されたγサイトカインインターロイキン4によって部分的に媒介される。活性化Th2細胞は、最終的に抗体産生をもたらす休止B-細胞を活性化する助けとなる。特異的免疫応答は発生するまで通常10-14日かかる。
【0005】
大部分の一次特異的免疫応答において、急性の炎症は病変部位で見出されることが多い。IgG1およびIgEは、炎症性抗体として知られており、これは補体系を活性化するか、またはマスト細胞または好塩基球から炎症性サイトカインの放出を開始するためである。
【0006】
補体系は、病原体の細胞外形態を攻撃するために一緒に作用する一組の血漿タンパク質である。補体は、病原体のオプソニン化、炎症性細胞の補充をもたらし、病原体の殺傷を方向づける。補体系は、2つの異なる経路によって活性化され得る:古典的な補体経路および別の補体経路。古典経路は抗体依存性であって、抗体分子(具体的には、IgMおよびIgG1、2および3)が外来粒子と結合することによって活性化される。炎症および組織損傷における補体の役割は、ある実験の炎症疾患の発症は補体依存性であるという臨床試験および知見から明らかとなった。
【0007】
全身の血管周囲結合組織に位置するマスト細胞は、I型アレルギー疾患に関係がある。I型アレルギー疾患は、アメリカやヨーロッパの人口の30%までが罹患する先進国の疾患である。IgE媒介性アレルギーは喘息に関係があり、70%以上の喘息患者は1以上のアレルゲンに対してアレルギー性である。アレルギー疾患の費用は、おそらくUSAだけで100億ドルを超える。吸入されるかまたは粘膜表面上に捕らえられると、花粉がタンパク質(アレルゲン)を放出し、いくつかの個体において、マスト細胞に結合したアレルゲン特異的IgE抗体によって媒介された急性炎症性応答が生じる。アレルギー反応は、アレルゲンがマスト細胞に結合した前形成したIgEを架橋する場合に開始され、マスト細胞の脱顆粒および多量のヒスタミンを含む炎症性メディエーターの放出がもたらされる。重篤な症例では、アレルギー疾患は、喘息およびアナフィラキシー、すなわち生命を脅かす症状をもたらし得る。
【0008】
免疫応答の開始に対して、炎症後の抗原またはアレルゲン攻撃に関する解決についてはそれほど知られていない。T-細胞の別のクラスには、いわゆる調節T-細胞またはT-regが包含されると考えられる。T-細胞応答を鎮静化する際に関連のある抗炎症性サイトカインTNFbおよびインターロイキン-10の影響下にあるこれらの細胞は、抗体応答を、非炎症性抗体であり、補体系を活性化しないIgAおよびIgG4に切り替える。分泌性IgA(sIgA)は、粘膜上で見出され、ウイルスを中和化し、粘膜上にある上皮細胞へのその接着を防止することが示された(McCluskie et al., Microbes Infect. 1999 Jul;1(9):685-98; Ogra et al., Clin Microbiol Rev. 2001 Apr;14(2):430-45; Rosenthal et al., Semin Immunol. 1997 Oct;9(5):303-14; van Ginkel etval., Emerg Infect. Dis. 2000 Mar-Apr;6(2):123-32)。
【0009】
炎症性細胞、例えば炎症性病変部位由来の好中球の除去機構に対する近年の研究は、急速なターンオーバーおよびこれらの細胞のアポトーシスに焦点があてられている。好中球は、食細胞であって、それらが外来物質を取り込んだ後に、その処理に関するその安全かつ効果的な方法が必要とされる。瀕死の好中球を取り込んでいるマクロファージは、その型のサイトカインの分泌パターンを変える有意な変化を受け(Fadok et al, J. Clin. Invest., 101, 890-898, 1998)、炎症性サイトカインから、特にTGFβを包含する抗炎症性サイトカイン合成に産生を切り替える。
【0010】
最近、ホスファチジルセリンが、食細胞によるアポトーシス細胞(例えば、好中球など)の除去についての一般的な識別マーカーとなり得ることが示され(Fadok et al., Nature 405:85-90, 2000)、一方でUS特許出願番号09/957,698では、T-細胞-媒介疾患を処置するためのホスファチジルセリンの使用が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の要約
免疫応答を調節する製剤を提供する。特に、免疫過敏応答を下方調節でき、抗原またはアレルゲン特異的IgG4および/またはIgAを刺激して、組織または粘膜表面からそれぞれ感染物質またはアレルギー物質の侵入に対する防御を提供できる製剤を提供するものである。
【0012】
ホスファチジルセリンレセプターリガンドを含む製剤を提供する。かかる製剤は、環境性抗原/アレルゲンに対する免疫応答を調節し得る。ホスファチジルセリンレセプターリガンドは、抗原/アレルゲンとの接触の前、同時または後に投与され得る。
【0013】
また、ホスファチジルセリンレセプターリガンドと、抗原またはアレルゲンとの両方を含む製剤が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の詳細な説明
本発明の一局面に従って、これらは、本明細書に定義したホスファチジルセリンレセプターリガンドを含む組成物を提供するものである。
【0015】
本発明の別の態様に従って、
(i) 抗原;および
(ii) ホスファチジルセリンレセプターリガンド、
を含む組成物を提供する。
【0016】
本発明の別の態様に従って、
(i) アレルゲン;および
(ii) ホスファチジルセリンレセプターリガンド、
を含む組成物を提供する。
【0017】
一実施態様において、本発明で使用したリガンドは、下記構造式;
【化1】

{式中、
X1は、Hまたは
【化2】

から選択され、
X2は、Hまたは
【化3】

から選択される、
[式中、“*”は、分子の残りの部分との結合点を示す;そして、
R1およびR2 部分は、水素、アルキルまたはアルケニル基から独立して選択され、これらの各基は、ハロゲノ、NO2、CN、(CH2)mORa(ここで、mは0、1、2または3である)、O(CH2)nORb(ここでnは1、2または3である)、NRcRd、CF3、COORe、CONRfRg、CORh、SO3H、SO2Ri、SO2NRjRk、シクロアルキル、アルケニルまたはアリールから選択された基によって所望により(モノ-またはポリ-)置換されていてもよい;そしてRa-kは各々独立して、Hまたはアルキルである;そして
R3は、アルキル、アルケニル、シクロアルキルまたはアリール基であり、これらの各基は、ハロゲノ、ハロアルキル、NO2、CN、(CH2)mORa(ここで、mは0、1、2または3である)、O(CH2)nORb(ここで、nは1、2または3である)、NRcRd、CF3、COORe、CONRfRg、CORh、SO3H、SO2Ri、SO2NRjRk、シクロアルキル、アルケニルまたはアリールから選択された基で所望により(モノ-またはポリ-)置換されていてもよく;およびRa-k は各々独立してHまたはアルキルである;そして、
R3は、炭素よりも強い電気陰性度を有する少なくとも1つの原子を含む]}
を有するか、またはその医薬的に許容し得る塩または誘導体を有する。
【0018】
本発明の一局面において、R1およびR2 は、水素、アルキルまたはアルケニル基から独立して選択され、R3 は極性基である。
【0019】
好ましくは、R3 は、炭素よりも強い電気陰性度を有する少なくとも1つの原子を含む。
【0020】
一実施態様において、R1 および/またはR2は、C1−C6アルコキシ、ヒドロキシル、アミノおよび/またはハロゲノ基で(モノ-またはポリ-)置換される。
【0021】
別の実施態様において、R3は、ヒロドキシル、カルボキシル、カルボキシレート、NR'R''で(モノ-またはポリ-)置換され、ここでR'およびR''は、HまたはC1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルキルから独立して選択され、所望によりヒドロキシルまたはカルボキシル、C(O)NH2、CF3またはC1-C6アルキル-COOH基で置換される。
【0022】
好ましくは、R3は、カルボキシ、ヒドロキシおよび/またはアミノ基で(モノ-またはポリ-)置換される。
【0023】
好ましくは、R1および/またはR2 および/またはR3は、所望により1から3個の基で置換される。
【0024】
一実施態様において、R1 および/またはR2 は、非分岐アルキルまたはアルケニル基である。
【0025】
R1 および/またはR2 は、1または1以上の、好ましくは1から3個の、N、OまたはSから独立して選択されるヘテロ原子をさらに含有するアルキルまたはアルケニル基であり得る。
【0026】
別の実施態様において、R2 は、非分岐アルキルまたはアルケニル基である。
【0027】
R1およびR2 は、1から60個の、より好ましくは1から26個の、より好ましくは14から26個の、より好ましくは16から22個の、より好ましくは18から22個の炭素原子を独立して含み得る。
【0028】
一実施態様において、R1 は、1から6個の二重結合を含むアルケニル基である。
【0029】
別の実施態様において、R1 は、1から4個の二重結合を含むアルケニル基である。
【0030】
別の実施態様において、R1 は、1つの二重結合を含むアルケニル基である。
【0031】
別の実施態様において、R2 は、1から6つの二重結合を含むアルケニル基である。
【0032】
別の実施態様において、R2 は、1から4つの二重結合を含むアルケニル基である。
【0033】
別の実施態様において、R2 は、4つの二重結合を含むアルケニル基である。
【0034】
別の実施態様において、R2 は、1つの二重結合を含むアルケニル基である。
【0035】
一実施態様において、X1およびX2は、各々独立して、水素、および飽和もしくは不飽和脂肪酸アシル基、またはその誘導体もしくは塩から選択される。
【0036】
脂肪酸アシル基の例示は、ヘキサノイル、カプロイル、オウロイル(auroyl)、フィタノイル、ヘプタデカノイル、リノレオイル、エルコイル(erucoyl)、ドコサヘキサンエノイル、ヘプタノイルオクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ウンデカノイル、ラウロイル、トリデカノイル、ミリストイル、ペンタデカノイル、パルミトイル、ヘプタデカノイル、ステアロイル、オレオイル、ノナデカノイル、アラキドイル、ベヘノイルおよびリグノセロイル(lignoceroyl)である。
【0037】
一実施態様において、X1は、ステアロイル基またはその誘導体もしくは塩、オレオイル基またはその誘導体もしくは塩、および水素から選択される。
【0038】
一実施態様において、Xは、アラキドノイル基またはその誘導体もしくは塩、オレオイル基またはその誘導体もしくは塩、または水素から選択される。
【0039】
R3は、炭素よりも強い電気陰性度を有する1から8個の、1から6個の、1から3個のまたは1個の原子を含み得る。
【0040】
好ましくは、炭素よりも強い電気陰性度を有する原子は、O、N、Sまたはハロゲンを含む基から選択される。より好ましくは、炭素よりも強い電気陰性度を有する原子は、OまたはNを含む基から選択される。
【0041】
一実施態様において、R3はアルキル基を含む。
【0042】
別の実施態様において、R3はシクロアルキル基を含む。
【0043】
別の実施態様において、R3はアリール基を含む。
【0044】
好ましくは、R3 は、1から15個の、1から12個の、3から9個の、2から8個のまたは3から6個の炭素原子を含む。
【0045】
別の実施態様において、R3は、
【化4】

およびその誘導体、からなる群から選択される。
【0046】
R3は、アミノ酸またはその誘導体であり得る。好ましくは、アミノ酸は、天然のアミノ酸であり得る。好ましくは、リンを含む酸素が、アミノ酸のα炭素と結合される。
【0047】
一実施態様において、R3 は、
【化5】

またはその誘導体。
【0048】
一実施態様において、ホスファチジルセリンレセプターリガンドがホスファチジルセリンまたはその誘導体またはその塩である。
【0049】
別の実施態様において、リガンドが、ジ-オレオイルホスファチジルセリン、リゾ-オレオイルホスファチジルセリンおよびステアロイル-アラキドノイルホスファチジルセリンからなる群から選択される。
【0050】
本発明で使用される抗原またはアレルゲンは、細菌、ウイルスまたは腫瘍から得られてもよい。
【0051】
抗原またはアレルゲンは、ポリペプチド、または抗原ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを含み、該ポリヌクレオチドの発現を許容し得る調節配列と機能的に結合され得るベクターの形態で存在し得る。
【0052】
本発明の別の態様に従って、本明細書で定義されたホスファチジルセリンレセプターリガンドを含む組成物を提供する。かかる組成物は、抗原またはアレルゲンを含まない。一実施態様において、かかる組成物は、医薬上有効量の抗原またはアレルゲンを含まない。
【0053】
本発明の組成物は、好ましくは医薬上有効量のホスファチジルセリンレセプターリガンドおよび/またはアレルゲンまたは抗原を含む。
【0054】
本発明の組成物は、アジュバントを含み得る。適当なアジュバントには、例えばモノホスホリルリピドAおよびその誘導体およびアナログおよびCpG DNAモチーフおよびその誘導体およびアナログが含まれる。
【0055】
好ましくは、本発明の組成物は、医薬上許容し得る担体、希釈剤または賦形剤を含む。
【0056】
本発明の別の態様に従って、ワクチンの形態にある本発明の組成物を提供する。該ワクチンは、予防用ワクチンまたは治療用ワクチンであり得る。
【0057】
本発明の組成物は、非経口組成物、即ちレピシエントによって飲み込まれない組成物であり得る。
【0058】
一実施態様において、ホスファチジルセリンレセプターリガンドは組成物中に存在し、5-500μgの範囲の用量を提供する。
【0059】
別の実施態様において、ホスファチジルセリンレセプターリガンドは組成物中に存在し、10-100μgの範囲の用量を提供する。
【0060】
別の実施態様において、ホスファチジルセリンレセプターリガンドは組成物中に存在し、10-50μgの範囲の用量を提供する。
【0061】
本発明の別の態様に従って、本発明の組成物を、医薬における使用のために提供する。
【0062】
本発明の別の態様に従って、医薬において同時に、別々にまたは連続的に使用するための併用製剤として、アレルゲンまたは抗原および本発明のホスファチジルセリンレセプターリガンドを含有する製品を提供する。
【0063】
一実施態様において、アレルゲンまたは抗原およびホスファチジルセリンレセプターリガンドが同時に投与される。
【0064】
別の実施態様において、アレルゲンまたは抗原およびホスファチジルセリンレセプターリガンドが連続的に投与される。ホスファチジルセリンレセプターリガンドは、アレルゲンまたは抗原の前か後に投与されてもよい。
【0065】
別の実施態様において、アレルゲンまたは抗原およびホスファチジルセリンレセプターリガンドは皮下投与される。
【0066】
別の実施態様において、ホスファチジルセリンレセプターリガンドおよび/またはアレルゲンは、高天然アレルゲン攻撃に暴露される臓器、例えば後記に限定するものではないが皮膚、鼻または口に投与され得る。
【0067】
本発明の別の態様に従って、免疫応答を調節する医薬調製のための、本発明の組成物または製品の使用を提供する。
【0068】
本発明の別の態様に従って、ヒトまたは動物に本発明の組成物または製品の投与を含む、ヒトまたは動物における免疫応答の調節方法を提供する。
【0069】
本発明の別の態様に従って、細菌またはウイルス感染または癌に対する感受性を処置、予防または低下するための医薬調製のための、本発明の組成物または製品の使用を提供する。
【0070】
本発明の別の態様に従って、本発明の組成物または製品を対象に投与することを含む、細菌またはウイルス感染または癌に対する感受性を処置、予防または低下するための方法を提供する。
【0071】
本発明の別の態様に従って、アレルギー反応を処置または防止するための医薬製造のための発明の組成物または製品の使用を提供する。
【0072】
本発明の別の態様に従って、本発明の組成物または製品を対象に投与することを含む、アレルギー反応の感受性を処置、予防または低下するための方法を提供する。
【0073】
本発明の別の態様に従って、好ましくは1-4型、より好ましくはタイプ1または4型、より好ましくは1型を、免疫過敏反応を処置または予防するための、医薬製造のための本発明の組成物または製品の使用を提供する。
【0074】
本発明の別の態様に従って、本発明の組成物または製品を対象に投与することを含む、免疫過敏反応の感受性を処置、予防または低下するための方法を提供する。
【0075】
好ましくは、免疫過敏反応は、既存障害、即ち対象が罹患しているかまたは罹患したことのある障害である。
【0076】
好ましくは、免疫過敏反応が1型の過敏反応である。
【0077】
本発明の別の態様に従って、ホスファチジルセリンレセプターリガンドおよび抗原またはアレルゲンを含む本発明の組成物、または該アレルゲンまたは抗原に対する抗炎症性免疫応答を生じさせるための医薬製造のための本発明の製品の使用を提供するものである。
【0078】
本発明の別の態様に従って、アレルゲンまたは抗原に対する抗炎症性免疫応答を生じさせるための医薬製造のためのホスファチジルセリンレセプターリガンドを含有する組成物の使用を提供する。
【0079】
本発明の別の態様に従って、ホスファチジルセリンレセプターリガンドおよび抗原またはアレルゲン、または本発明の製品を含む組成物を対象に投与することを含む、対象における抗炎症性免疫応答を生じさせる方法を提供する。
【0080】
本発明の別の態様に従って、対象をアレルゲンまたは抗原に暴露する前、同時または後に、対象にホスファチジルセリンレセプターリガンドを含む組成物を投与することを含む、対象における抗炎症性免疫応答を生じさせる方法を提供する。
【0081】
好ましくは、抗炎症免疫応答は、抗炎症性抗体応答を包含し、この抗体は補体を活性化させないものを包含する。
【0082】
一実施態様において、抗炎症性抗体応答において生じた抗体には、IgAおよび/またはIgG4が含まれる。
【0083】
本発明の別の態様に従って、抗原またはアレルゲンに対する免疫応答における炎症性抗体のレベルを低下させるための医薬製造のための、ホスファチジルセリンレセプターリガンドおよび抗原またはアレルゲンを含む組成物または本発明の製品の使用を提供する。
【0084】
本発明の別の態様に従って、対象にホスファチジルセリンレセプターリガンドおよび抗原またはアレルゲンを含む組成物または本発明の製品を患者に投与することを含む、抗原またはアレルゲンに対する免疫応答における炎症抗体のレベルを低下させる方法を提供する。
【0085】
本発明の別の態様に従って、抗原またはアレルゲンに対する免疫応答において炎症性抗体のレベルを低下させるための医薬製造のための、ホスファチジルセリンレセプターリガンドを含む組成物の使用を提供する。
【0086】
本発明の別の態様に従って、対象をアレルゲンまたは抗原に暴露する前、同時または後にホスファチジルセリンレセプターリガンドを含む組成物を対象に投与することを含む、対象における抗原またはアレルゲンに対する免疫応答における炎症性抗体のレベルを低下させる方法を提供する。
【0087】
本発明の別の態様に従って、炎症性抗体のレベル低下と関連する免疫応答を誘導するための、医薬製造のための本発明の組成物または製品の使用を提供する。一実施態様において、炎症性抗体は、補体を活性化するものを包含する。
【0088】
一実施態様において、該炎症性抗体は、IgE、IgG1または両方である。
【0089】
本発明の別の態様に従って、自己免疫疾患を処置または予防するための医薬製造のための、本発明の組成物または製品の使用を提供する。
【0090】
本発明の別の態様に従って、対象に本発明の組成物または製品を投与することを含む、対象における抗炎症性免疫応答を生じさせる方法を提供する。
【0091】
本発明の別の態様に従って、組成物の抗原またはアレルゲンを認識する抗体を産生するための方法における、本発明の組成物または製品の使用を提供する。
【0092】
好ましくは、該抗体はIgG4およびIgAから選択される。
【0093】
本発明の別の態様に従って、細菌またはウイルス感染、癌または免疫過敏反応を処置または予防するための医薬製造のための、上記方法に従って産生した抗体の使用を提供するものである。
【0094】
本発明の詳細な説明
抗原
用語“抗原”は、免疫応答の適応エレメントによって、即ちB細胞またはT細胞、またはその両方によって、特異的に認識され得るあらゆる分子を示すために使用される。
【0095】
本発明で使用される抗原とは、好ましくは免疫原であり、即ち免疫細胞を活性化し、自身に対する免疫応答を生じさせる抗原である。
【0096】
抗原は、組換え法またはペプチド合成によって、または天然の起源または抽出物から得られ、またあらゆる生物または非生物から得られ得る。
【0097】
抗原は、細菌、例えば炭疽菌、カンピロバクター、コレラ、ジフテリア、エンテロトキシン産生大腸菌、ジアルジア属、淋菌、ヘリコバクター・ピロリ、インフルエンザ菌B、インフルエンザ菌NT株、髄膜炎菌、百日咳菌、肺炎球菌、サルモネラ菌、赤痢菌、連鎖球菌B、グループA 連鎖球菌、破傷風菌、コレラ菌、エルシニア属、ブドウ球菌、緑膿菌およびクロストリジウムの種から得られる。
【0098】
抗原は、ウイルス、例えばアデノウイルス、デング熱ウイルス血清型1〜4、エボラウイルス(Jahrling et al., Arch Virol Suppl, 11:135-140, 1996)、エンテロ・ウイルス、肝炎血清型A〜E (Blum, Digestion 56:85-95, 1995; Katkov, Med Clin North Am 80:189-200, 1996; Lieberman and Greenberg, Adv Pediatr Infect Dis 11:333-3631996; Mast et al., Annu Rev Med 47:257-266, 1996)、単純ヘルペスウイルス1または2、ヒト免疫不全ウイルス(Deprez et al., Vaccine 14:375-382, 1996)、インフルエンザウイルス、日本脳炎ウイルス、ノーウォークウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルスB19、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、ロタウイルス、風疹ウイルス、麻疹ウイルス、牛痘ウイルス、他の抗原(例えばマラリア抗原、水痘および黄熱)をコードしている遺伝子を含有する種痘ウイルス構築体、から得られ得る。寄生虫には、例えば:赤痢アメーバー(Entamoeba histolytica)(Zhang et al., Infect. Immun 63:1349-1355);マラリア原虫(Plasmodium)(Bathurst et al., Vaccine 11:449-456, 1993)、トキソプラズマ症および蠕虫が含まれる。
【0099】
多価抗原製剤は、同時に1以上の抗原に対する免疫応答を誘導するために使用され得る。コンジュゲートは、複数の抗原に対する免疫応答を誘導し、この免疫応答をブーストするため、または両方に使用され得る。
【0100】
アレルゲン
用語“アレルゲン”は、望ましくない免疫過敏性またはアレルギー反応を誘起させる抗原を説明するために使用される。
【0101】
アレルギーは、環境性抗原(アレルゲン)に対する過敏応答である。
【0102】
本明細書で使用されるアレルゲンは、あらゆるアレルギー誘発物質から得られ得る。アレルギー誘発物質は、例えば、花粉(例えば、ブタクサまたは樺の花粉)、食品、昆虫の毒液、菌類および動物由来物質(例えば動物の毛)、またはダニ(例えば、ハウスダスト;例えばD. farinae またはD. pteronyssinus)などを包含するが、これに限定するものではない。
【0103】
抗原またはアレルゲンは、望ましくない副作用効果を回避するように助力しつつ、抗原の所望の免疫原性を保持するかまたは増強する既知物質(例えば、ホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒドであるがこれらに限定されない)との反応によって化学的に修飾され得る。かかる改変は、当業者に知られている。修飾された抗原の例示には、ホルムアルデヒドとの反応による破傷風毒素から得られた破傷風トキソイドがある
【0104】
免疫過敏性
本明細書で定義されたように、免疫過敏とは、身体が外来物質(アレルゲン)に対して過剰な免疫応答にて反応する、反応性が変化した状態を意味するものである。過敏反応には4つの型(I、II、IIIおよびIV型)がある。最初の3つは抗体-媒介性であり;4つめはT細胞およびマクロファージによって主に媒介される。
【0105】
I型、アナフィラキシー型または即時型の過敏性とは、アレルゲンへの再暴露によって誘起されたアレルギー反応である。暴露とは、摂取、吸入、注射または直接接触であり得る。該反応は、IgE抗体によって媒介され、好塩基球およびマスト細胞によるヒスタミン、アラキドン酸塩および誘導体の即時放出によって引き起こされる。これは、即時反応(数秒から数分)をもたらす炎症応答を引き起こし、続いて後発相応答または反応をもたらし、例えば喘息、枯草熱、全身性アナフィラキシーまたは接触性皮膚炎を引き起こし得る。
【0106】
ホスファチジルセリンレセプターリガンド
本発明の組成物は、好ましくは選択的にホスファチジルセリンレセプターに結合し得るリガンドを含む。好ましくは、リガンドは、食細胞またはエンドサイト;(endocytes)の表面上のホスファチジルセリンレセプターに認識され、それによってサイトカイン産生を上方調節する。
【0107】
情報伝達アポトーシスにおけるその機能の一部として、ホスファチジルセリンは、CD14またはCD14複合体の一部と同時配置した特異的レセプターであり得る食細胞上のレセプターによって認識され、次にトル様のレセプター、例えばTLR2およびTLR4への提示を介して食細胞を下方調節し得る。ホスファチジルセリンレセプターリガンドは、細菌から得られるリポ多糖により活性化される食細胞により炎症性サイトカインの発現を防止し得るか、または炎症誘発性サイトカインの活性化がヒト気道中で見られる平滑筋細胞を活性化することを防止し得る。
【0108】
用語"ホスファチジルセリンレセプター"は、ホスファチジルセリンを認識する食細胞およびエンドサイトの表面に存在するレセプターを指す(Fadok, V, A. et al. Nature 405, 85-90 (2000))。
【0109】
かかるリガンドについてのスクリーニングアッセイはホスファチジルセリンレセプターを用いることができ、このレセプターは溶液中で遊離していても、固体支持体に付着されても、細胞表面上にあっても、細胞内にあってもよい。ここで、レセプターおよび標的間の複合体形成は、当業者にはよく知られている方法を適切に適合させて測定され得る。
【0110】
ホスファチジルセリンレセプターリガンドは、当業者に認められたモデルであるネズミ接触過敏症(CHS)モデルにおいて耳の腫れを減少させる能力を測定することによってスクリーニングした(例えば、米国特許出願番号09/957,698(米国公開番号2002/0086049)を参照されたい)。マウスの両耳は、例えば2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)で攻撃され、耳の膨張の程度は、CHS応答の指標として使用される。ホスファチジルセリンレセプターリガンドの耳の膨張を減少させる能力を、リガンドを含む注射を行ったマウスにおける耳の膨張と、リガンドを含む注射を行わなかったマウスにおける耳の膨張とを比較することによって評価できる。本発明で使用したリガンドは、CHSモデルにおける耳の膨張を減少させるものが好ましい。
【0111】
ホスファチジルセリンレセプターリガンドは、Fadok et al., Nature 405:85-90, 2000に記載したようにアポトーシス細胞の食作用を阻害するその能力を測定することによってもスクリーニングされ得る。本発明で使用したリガンドは、アポトーシス細胞の食作用を防止できるものが好ましい。
【0112】
一実施態様において、リガンドは、ホスファチジルセリンである。該ホスファチジルセリンは、あらゆる天然または市販起源由来のものであり得る。ホスファチジルセリン分子は、当業者には既知の合成方法を用いて合成され得る。ホスファチジルセリン合成は、例えばMorgans D, Bioorganic Med Chem Letts 1994; 4(6):827; Roodsari, FS, J Org Chem 1999; 64(21): 7727-7737; Diaz et al., Bioconjugate Chemistry 1998; 9(2): 250-254, Infante MR. Frontiers in colloid chemistry 1997; 123/124: 49-70; Lindberg J, J Org Chem 2002; 67; part 1 194-199; Comfurius et al., Biochem Biophys Acta 1977 488,36-42; Na et al., JAOCS 1990, 67, 776-770; Yaqoah et al., 2001 Process Biochemistry, June 36 (12), 1181-1185; Duclos et al., 1993 Chem Phys Lipids. Dec; 66(3):161-170; Turner et al., 1964 Journal of Lipids research 5 616-622;Vares et al., 2003 J Org Chem, December 26, 68(26): 10073-8; Ebli et al., 1980 Chem Phys Lipids. June; 26(4):405-29; Rosenthal et al., 1975 Methods Enzymol.35:429-529; Braksmayer et al., 1977 Chem Phys Lipids. Jun; 19(2):93-98; Morillo et al., 1996, Lipids. May; 31(5):541-6; Nicholas et al., 1983 Lipids. Jun;18(6): 434-8; Aneja et al., 1970 Biochim Biophys Acta. Oct 6; 218(1):102-11; Lindberg et al., 2002 J Org Chem Jan 11; 67(1):194-9; Radhakrishnan et al., 1981 Methods Enzymol.; 72: 408-33; Moore et al., 1970 Tetrahedron Lett. Oct; 50: 4423-6に記載されている。
【0113】
ホスファチジルセリンは、2つの脂肪酸分子およびアミノ酸L-セリンを結合したグリセロホスフェート骨格で構成される。天然では、脂肪酸の厳密な組成は、ホスファチジルセリンの起源によって変化する。例えば、ヒト血漿では、1-ステアロイル-2-オレオイル(下記の構造を参照されたい)および1-ステアロイル-2-アラキドノイル種が優勢であるが、脳および多くの他の組織においては、1-ステアロイル-2-ドコサヘキサエノイル種が非常に多い。
【0114】
【化6】


1-ステアロイル-2-オレオイルホスファチジルセリン
【0115】
本発明において使用するためのリガンドの例示には、ジ-オレオイルホスファチジルセリン、リゾ-オレオイルホスファチジルセリン、ジ-ステアロイルホスファチジルセリン、リゾ-ステアロイルホスファチジルセリンおよびステロイル-アラキドニルホスファチジルセリンが包含される。
【0116】
ホスホリパーゼA (PLA2) スーパーファミリーは、炎症における重要な役割を有する酵素の異種の群を提示し、それらの共通する特徴はリン脂質のsn-2位に存在する脂肪酸を加水分解することである。
【0117】
PLA2は、生物学的に活性な脂質メディエーターの広範なアレイを生成することによって細胞情報伝達における重要な役割を果たす。リン脂質のPLA2-媒介性加水分解は、他の脂質メッセンジャー、例えばプロスタグランジンの生成のための基質として働き得るアラキドン酸の放出をおこし、これがその後炎症性応答をおこし続け得る。
【0118】
本発明の一実施態様において、アラキドノイル基は、リガンドのX1またはX2の位置に存在する。そのような場合であるときに、アラキドン酸は、PLA2の影響の下でこのリガンドから放出され、炎症性応答を刺激し得る。次いで、残余分のリゾホスファチジルセリンレセプターリガンドは、非炎症性応答を調節するのに役立ち得る。
【0119】
即ち、本発明のリガンドを、PLA2の作用によって産生された残余分のリゾホスファチジル基と組合せて、X2 官能基の性質により、上方または下方いずれかの免疫応答を調節するために使用できる。
【0120】
本明細書で使用したように、用語“アルキル”は、飽和直鎖および分枝鎖アルキル基の両方を包含する。
【0121】
本明細書で使用したように、用語“アルケニル”は、分枝鎖または非分岐鎖であり得る1以上の炭素-炭素の二重結合を含有する基を示す。
【0122】
本明細書で使用したように、用語“アリール”は、単環または多環式芳香族基を示す。好ましくは、多環式芳香族基は二または三環である。
【0123】
本明細書で使用したように、用語“シクロアルキル”は、単環または多環式アルキルを示し、好ましくは、多環式アルキル基が二または三環である。
【0124】
好ましくは、ホスファチジルセリンレセプターリガンドは、ホスファチジルセリンまたはそれらの誘導体の塩である。用語“誘導体”は、ホスファチジルセリンの活性を保持するホスファチジルセリンレセプターリガンドを意味するのに使用される。
【0125】
ホスファチジルセリンレセプターリガンドの例示は、ジ-オレオイル-ホスファチジルセリンおよびリゾ-オレオイル-ホスファチジルセリンを包含する。
【0126】
本発明で使用したホスファチジルセリンレセプターリガンドは、リポソームの形態で存在し得る。
【0127】
ホスファチジルセリンレセプターリガンドは、リポソームによって送達されるか、またはリポソーム内に包含されうる。
【0128】
本発明で使用したホスファチジルセリンレセプターリガンドは、リポソームの一部を含み得る。言い換えると、ホスファチジルセリンレセプターリガンドは、膜の単独構成要素として、またはその構成要素の主要成分または微量成分として、他のリン脂質および/または膜形成物質と共にリポソームの膜を形成し得る。リポソームは、"活性なホスファチジルセリンレセプターリガンド"のための担体として使用され、ここで該活性なリガンドがリポソームの表面の一部を形成し得る。
【0129】
ホスファチジルセリンレセプターは、化学修飾によってリポソーム表面に化学的に結合され得る。リポソームを調製する方法は、当業者にはよく知られている(例えば, New, R. C.,"Liposomes;A Practical Approach,"IRL Press at Oxford University Press, Oxford, England (1990)を参照されたい)。
【0130】
一実施態様において、本発明で使用したホスファチジルセリンレセプターリガンドは、リポソームの形態で存在しない。用語"リポソーム"は、1以上のリン脂質層に封入された水性コアからなる人工的な微細小嚢を意味する。
【0131】
好ましくは、ホスファチジルセリンレセプターリガンドは、本発明の組成物において活性な成分である。つまり、リガンドは免疫または抗体応答における変化を刺激すると言える。
【0132】
抗体
抗体の性質および学名は種間で異なることは認識されるであろう。本明細書に示した抗体は、ヒト抗体を示し、対応する抗体は他の哺乳動物および動物において見出される。対応する抗体は、生物学および機能的活性における類似性を基にしている。例えば、ヒトIgEおよびヒトIgAのネズミの対応物は、各々ネズミIgEおよびネズミIgAである。一方で、ヒトIgG4は、補体を活性化しないことが知られており、ネズミIgG1と最も類似していると見なされる。
【0133】
ネズミIgG2aおよびIgG2b、またヒトIgG1およびIgG3は、補体を固定し、タンパク質抗原と結合する能力を共有する(Scott, M. G., D. E. Briles, and M. H. Nahm. 1990. Selective IgG Subclass expression:biologic, clinical and functional aspects, p. 161-183)。
【0134】
調製
本発明の組成物は直接投与され得る。好ましくは、組成物を医薬上許容し得る担体、賦形剤または希釈剤と組合せて、医薬組成物を作成し得る。
【0135】
処置
処置に対する本明細書中の全ての文献は、治療的、一時的および予防的処置を包含することは認識されるであろう。哺乳動物の処置は特に好ましい。ヒトおよび獣畜医用処置は本発明の範囲内である。
【0136】
医薬組成物
医薬組成物は、治療上有効量の医薬的に活性な薬剤を含むか、または治療上有効量の医薬的に活性な薬剤からなる組成物である。好ましくは、医薬上許容し得る担体、希釈剤または賦形剤(その組合せ物を包含する)を包含する。治療用途のために許容し得る担体または希釈剤は、医薬分野ではよく知られており、例えばRemington's Pharmaceuticals Sciences, Mack Publishing Co.(A. R. Gennaro edit. 1985)に記載されている。医薬担体、賦形剤または希釈剤の選択は、意図する投与経路および標準的な医薬上の慣例に関して選択される。医薬組成物は、あらゆる適当なバインダー、潤滑剤、懸濁剤、被覆剤、可溶化剤を、担体、賦形剤または希釈剤として、または担体、賦形剤または希釈剤に加えて含んでいてもよい。
【0137】
医薬上許容し得る担体の例示は、例えば、水、塩溶液、アルコール、シリコーン、ワックス剤、ワセリン、植物油、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、リポソーム、糖、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、界面活性剤、シリク酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリドおよびジグリセリド、ペトロエスラル(petroethral)脂肪酸エステル、ヒドロキシメチル-セルロース、ポリビニルピロリドンなどが包含される。
【0138】
適切な場合、医薬組成物は、いずれか1以上の後記形態で;吸入、座薬またはペッサリーの形態で、皮膚パッチの使用により、局所的にローション、溶液、クリーム、軟膏または粉剤の形態で、経口的に賦形剤、例えばスターチまたはラクトースを含有する錠剤の形態で、または単独または賦形剤と混合物いずれかのカプセルまたは卵型形状(ovules)の形態で、または風味または着色剤を含有するエリキシル、溶液または懸濁液の形態で投与されるか、またはそれらは非経口的に注射される。例えば、髄腔内で(intracavernos)、静脈内で、筋肉注射でまたは皮下注射で、または舌下投与によって投与され得る。非経口投与のために、組成物は、他の物質、例えば血液との等張溶液をなし得る程度に十分な塩またはモノサッカライドを含むみ得る滅菌水溶液の形態で使用され得るのが最良である。口腔または舌下投与のために、該組成物は、従来の方法で製剤され得る形態、例えばドロップ、スプレー、クリーム、ゲル、錠剤またはロゼンジの形態で投与され得る。
【0139】
様々な送達系によって、組成物/製剤の様々な要件が存在し得る。例示した方法によって、本発明の医薬組成物は、ミニポンプを用いるか、または粘膜経路、例えば吸入のための経鼻スプレーまたはエアゾールまたは摂取可能な溶液によって送達され得るか、または非経口的に送達するために、例えば静脈内、筋肉内または皮下経路による送達のために、この組成物は注射し得る形態に製剤され得る。あるいは、該製剤は、両経路によって送達されるように設計される。
【0140】
一実施態様において、本発明の組成物は非経口組成物である。すなわち、組成物はレピシエントによって飲み込まれない。
【0141】
本発明のある局面において、ホスファチジルセリンレセプターリガンドを含む組成物が提供される。かかる組成物は、環境性抗原/アレルゲンに対する免疫応答を調節し得る。一実施態様において、ホスファチジルセリンレセプターリガンドを含む組成物は、抗原/アレルゲンと接触する前、同時または後に投与され得る。即ち、抗原またはアレルゲンの起源は対象の環境周辺に存在し得る。
【0142】
ホスファチジルセリンレセプターリガンドと抗原またはアレルゲンとの両方を含む組成物もまた提供される。
【0143】
製品
本発明の製品は、アレルゲンまたは抗原、好ましくはアレルゲン、とホスファチジルセリンレセプターリガンドとを含有し得る。アレルゲンまたは抗原およびホスファチジルセリンレセプターリガンドは、独立した組成物として存在でき、望ましくない免疫過敏反応を処置する際に使用するために同時、別々または連続的に投与され得る。
【0144】
アレルゲンまたは抗原およびホスファチジルセリンレセプターリガンドが別々または連続的に投与される場合、投与方法はアレルゲンおよびホスファチジルセリンレセプターリガンドが同じ標的細胞を標的とし得ることが好ましい。これは、例えば皮下注射によって達成され得る。
【0145】
本発明の医薬組成物は、モノホスホリルリピドA(MPL)、抗原およびホスファチジルセリンレセプターリガンドの3つの組合せを含み得る。
【0146】
ワクチン
活性な成分として免疫原性ポリペプチド/ポリヌクレオチドを含有するワクチンの調製は、当業者により知られている。通常、かかるワクチンは、注射し得るものとして、液体または懸濁液のいずれかとして調製される;注射前に液体中に溶解または懸濁するのに適当な固体形態としても調製できる。また、製剤は乳化され得るか、または該タンパク質はリポソーム中に封入される。この活性な免疫原性成分は、医薬的に許容でき、活性な成分と相溶し得る賦形剤と混合されることが多い。適当な賦形剤は、例えば水、生理食塩水、デキストロース、グリセリン、エタノール等およびその組み合わせである。
【0147】
さらに、所望により、該ワクチンは、少量の助剤物質、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤および/またはワクチンの効果を増強するアジュバントを含有し得る。
【0148】
アジュバントは、抗原またはアレルゲンに対する免疫応答を増強するあらゆる薬理学的に許容し得る物質である。すなわち、Th1-誘導性アジュバントは、抗原またはアレルゲンに対するTh1細胞の応答を増強する。
【0149】
効果的であり得るアジュバントの例示には、次のものが包含されるが、これに制限するものではない:水酸化アルミニウム、チロシンおよびその誘導体、N-アセチル-ムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチル-ノル-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(CGP 11637, nor-MDPとして示す)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1'-2'-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(CGP 19835A, MTP-PEとして示す)、および細菌から抽出した3つの成分を含有するRIBI、モノホスホリルリピドA、トレハロース ジミコレート(dimycolate)および2%スクアラン/Tween 80 エマルジョン中の細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)。
【0150】
アジュバントおよびその他の薬剤のさらなる例示は、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(alum)、硫酸ベリリウム、シリカ、カオリン、炭素、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、ムラミルジペプチド、細菌エンドトキシン、脂質X、コリネバクテリウムパルバム(Propionobacterium acnes)、Bordetella pertussis、ポリリボヌクレオチド、アルギン酸ナトリウム、ラノリン、リゾレシチン、ビタミンA、サポニン、リポソーム、レバミゾール、DEAE-デキストラン、ブロックコポリマーまたは他の合成アジュバンドを包含する。かかるアジュバントは、様々な供給会社から購入できる。例えば、メルクアジュバント65 (Merck and Company, Inc., Rahway, N.J.)またはフロイント不完全アジュバントおよび完全アジュバント(Difco Laboratories, Detroit, Michigan)。
【0151】
通常、アジュバントは、例えばAmphigen(水中油型)、Alhydrogel(アルミニウム水酸化物)、またはAmphigenとAlhydrogelとの混合物、チロシンおよびその誘導体、およびカルシウムリン酸塩が使用される。
【0152】
好ましいアジュバントは、食細胞およびエンドサイトおよび/または抗原提示細胞上のトル様レセプター、例えばトル様レセプター2および/または4および/または9と相互作用することが知られている。これらのアジュバントの例示は、Th1誘導性アジュバンドモノホスホリルリピドA (MPL、米国特許出願4,912,094および4,987,237を参照されたい)およびその誘導体および合成アナログおよびCpG DNA モチーフおよびその誘導体およびアナログであるが、これに限定するものではない。
【0153】
免疫原とアジュバントの割合は、その両方が有効量で存在する限り広範囲にわたって変化され得る。例えば、水酸化アルミニウムは、約0.5%のワクチン混合物(Al2O3 塩基)の量で存在し得る。従来的に、ワクチンは、0.2〜200 μg/ml、好ましくは5〜50 μg/ml、最も好ましくは15 mg/mlの範囲の最終濃度の免疫原を含有するように製剤される。
【0154】
アジュバントの効果は、多様なアジュバンドも含むワクチンにおけるこの薬剤の投与から生じる免疫原性薬剤に対する抗体の量を測定することによって決定され得る。
【0155】
ワクチンは、通常、例えば経皮的または筋肉内のいずれかで注射することにより、非経口的に投与される。他の投与様式に適切である別の製剤として、坐剤、ある場合には経口製剤が挙げられる。坐剤の場合、伝統的な結合剤および担体として、例えばポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドが挙げられ;かかる坐剤は、活性成分を0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%の範囲にて含有する混合物により形成してもよい。経口製剤は、例えば医薬品等級のマンニトール、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどそのように一般的に使用される成分を有していてもよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、ピル、カプセル、徐放性剤または散剤の形態をとり、10%〜95%、好ましくは25%〜70%の活性成分を含有する。ワクチン組成物を凍結乾燥させた場合、その凍結乾燥物質を投与前に、例えば懸濁液として、溶解させてもよい。溶解は緩衝液にて行うことが好ましい。
【0156】
ワクチンの用量および投与
ワクチンは投与方法と適合し得る方法にて、かつ予防的および/または治療的に効果的であるような用量にて投与される。予防用ワクチンとは疾患を予防するものである。投与されるべき量は、例えば1用量当たり抗原の5 μg〜250 μgの範囲であり、治療すべき対象、対象の免疫系が抗体を合成する能力および所望の防御程度および抗原の性質に依存する。好ましい範囲は、1用量当たり約20μg〜約40μgである。
【0157】
適当な用量範囲は、約0.5 mlである。したがって、筋肉内注射の用量は、例えば20μgの免疫原を0.5%のアジュバントと混合して含有する0.5 mlからなる。
【0158】
投与されるべき必要な活性成分の正確な量は、熟練した医師の判断に依存し、各患者に特異的であり得る。
【0159】
ワクチンは、単回投与計画、または好ましくは複数回投与計画で与えられることができる。複数回投与計画は、ワクチン接種の主な経過が1から10回に分割された投与であり、その後、さらなる投与を、免疫応答の維持および/または強化のために必要な間隔で、例えば一次投与の2〜4週間後、必要ならばその後の投与を数ヶ月後(複数でも可)に行うものである。また、その投与方法は、少なくともある程度、各個体の必要性および熟練した医師の判断に依存して決定されるであろう。
【0160】
さらに、抗原を含有するワクチンは、他の免疫調節剤、例えば免疫グロブリンと一緒に投与してもよい。
【0161】
発明の組成物を使用する抗体の調製
本発明の組成物を直接使用して、免疫原として抗血清およびモノクローナル抗体を生成できる。従って、本発明は、以下の工程:
a)本発明の組成物を用いて、動物またはヒトを免疫化する工程、
b)該組成物の抗原の領域に特異的なイムノグロブリンを動物の血液から回収する工程、
を含む抗原特異的イムノグロブリン産生を誘導するための方法を提供する。
【0162】
抗体産生に使用される動物は、この目的のために通常使用されるあらゆる動物、特に哺乳類であってもよい。特に言及されるものとして、マウス、ラット、モルモットおよびウサギである。
【0163】
免疫化は確立された技術に従って実施される(“Antibodies, A laboratory Mannual” by E. Harlow and D. Lane (1988) Cold Spring Harbor, U.S.A.を参照されたい)。精製した組成物(約1 mg)はウサギに注射される。組成物(0.5 mg)のブースタ注射を、最初の注射の4週間後に行った。抗体をウサギ血清から単離し、反応性について試験した。選択した抗原に対して選択的に結合できる抗体をこの方法によって得た。
【0164】
より詳細には、抗原を含む本発明の組成物は、抗体、ポリクローナルおよびモノクローナルの両方を生産するために使用できる。ポリクローナル抗体が必要ならば、選択された哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマ等)を免疫化する。免疫化した動物からの血清を集め、公知の方法により処理する。血清が他の抗原に対するポリクローナル抗体を含む場合、ポリクローナル抗体を、免疫アフィニティークロマトグラフィーにより精製できる。ポリクローナル抗血清の製造および処理技術は当該分野では公知である。
【0165】
本発明において使用される抗原に対するモノクローナル抗体もまた、当業者により容易に製造できる。ハイブリドーマによりモノクローナル抗体を製造する一般的な方法がよく知られている。永久抗体産生細胞系は、細胞融合、また腫瘍形成DNAでのBリンパ球の直接的形質転換またはエプスタイン・バール・ウイルスでのトランスフェクションのような他の方法により作成できる。抗原に対して産生されたモノクローナル抗体のパネルは、種々の特性;すなわち、アイソタイプおよびエピトープ親和性に関してスクリーニングできる。
【0166】
別の技術として、ファージ提示ライブラリーをスクリーニングすること、例えばファージが多種の相補性決定領域(CDR)を有する被覆表面でscFvフラグメントを発現することを含む。この技術は当該分野で公知である。
【0167】
抗原に対する抗体、モノクローナルおよびポリクローナルの両方は、診断の際に特に有用であり、中和抗体は受動免疫治療において有用である。特に、モノクローナル抗体は、抗イディオタイプ抗体を生じさせるために使用できる。抗イディオタイプ抗体は、感染物質に対する防御が望まれるものの抗原の「内部イメージ」を有する免疫グロブリンである。
【0168】
抗イディオタイプ抗体を生じさせる技術は当該分野で公知である。これらの抗イディオタイプ抗体もまた、処置ならびに抗原の免疫原性領域の解明に有用でありうる。
【0169】
本発明の目的に関して、「抗体」なる用語は、特記しない限りそれらの標的抗原に対する結合活性を保持する完全な抗体のフラグメントを含む。このようなフラグメントは、Fv、F(ab')およびF(ab')2フラグメント、ならびに単鎖抗体(scFv)を含む。さらに、抗体およびそのフラグメントは、例えばEP-A-239400に記載のようにヒト化抗体であってもよい。
【0170】
本発明は、下記実施例を参照して説明するものであるが、これは単なる例示であって、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0171】
実施例1−オボアルブミン+ジ-オレオイルホスファチジルセリン、リゾ-オレオイルホスファチジルセリンまたはステアロイル(X1)-アラキドノイル(X2)ホスファチジルセリン投与に対するIgE、IgAおよびIgG1、IgG2aおよびIgG2b応答
ラットを、オボアルブミン抗原と、ジ-オレオイルホスファチジルセリン、リゾ-オレオイルホスファチジルセリンまたはステアロイル(X1)-アラキドノイル(X2)ホスファチジルセリンとを含むかまた含まないワクチン組成物を用いて注射し、IgE、IgAおよびIgGの濃度を比較する。
【0172】
動物を投与前の5日間順応させた。順応期間中、動物を実施週間中1日に2回および週末には1日1回観察し、動物の健康状態を評価した。次いで、コンピューターを利用した無作為系列番号付(computer-generated random order numbers)を用いて、ラットを下記投与グループに分けた。
【0173】
表1:
【表1】

【0174】
0日目に、最終容量(0.5ml)で、アルヒドロゲル(AHG)アジュバントと共にオボアルブミン(OA)(20μg)のリン酸生理緩衝液(PBS)を投与した。
【0175】
21および42日目に、最終容量(0.5ml)で、比較試験化合物と共にオボアルブミン(OA)(20μg)のリン酸生理緩衝溶液(PBS)を投与した。
【0176】
各場合において、接種材料(0.5ml)を首の襟元に皮下注射した。
【0177】
0日目に、接種前の血液試料を採取した。血液試料を15、22、29、36、43、50、57および64日目に各動物から採取した。
【0178】
血清を、2,500rpm、10分間で血液試料の遠心分離により調製し、-20℃で凍結させた。次いで、サンプルをELISAにより分析し、IgE、IgAおよびIgG1、IgG2aおよびIgG2bの濃度を定めた。
【0179】
ELISA
ELISAの目的は、特定タンパク質が試料中に存在するかどうかを決定することであり、そしてどれくらい量が存在するかを定量できることである。オボアルブミン(OVA)を用いてウェルの底部を被覆することによって、抗OVA特異的抗体との結合が可能である。抗OVA IgA 抗体のみを検出するために、HRPに結合した抗ラットIgAを二次抗体として使用した。ラット血清サンプル中の特異的抗体の定量を、抗体力価測定を用いて行った。該データを、終点力価として報告した。終点力価を、ELISAプレート(緩衝液)に対してバックグラウンドの2倍の光学密度と等しい光学密度値を提供する最終の血清希釈度として定義した。
【0180】
結果を下記に示した:
【表2】

【0181】
【表3】

【0182】
【表4】

【0183】
【表5】

【0184】
【表6】

【実施例2】
【0185】
実施例2-炎症誘発性サイトカイン放出の阻害
CD14、TLR2およびTLR4を発現する上皮血液単核細胞(PBMC)の共培養物を、Morris et. al., American Journal of Critical Care vol. 171, pp814-822, 2005)に記載の方法に従って、トル様レセプター(TLR)アゴニストに非応答性であるが炎症誘発性サイトカインに応答する気道平滑筋肉細胞(ASMC)上に重層した。共培養物を、リポ多糖体(LPS)で攻撃し、IL6およびIL8を含む炎症誘発性サイトカインを生成させる。2つの細胞型からの炎症誘発性および抗炎症性サイトカインの放出に対するホスファチジルセリン誘導体(PS)の直接的な効果および該培養物を測定した。様々な培養物および共培養物を、多様な濃度のPS(実施例1に使用したようにジ-オレオイル、リゾオレオイルまたはステロイルアラキドニル誘導体を包含する)に、LPSの添加前および後かまたはLPS攻撃と同時に暴露し、炎症誘発性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインの得られるレベルを測定した。
【0186】
放出されたサイトカインの測定に関する結果は、化合物が多様なヒト炎症性損傷の制御の際に臨床的に使用されるように、特定のPS分子がLPSの効果を調節する能力を有することを示した。
【実施例3】
【0187】
実施例3-マスト細胞および好塩基球からのヒスタミン放出の阻害
ホスファチジルセリンレセプターリガンドを含む組成物は、喘息において炎症性応答を減少でき、およびアレルギー疾患を処置する際に、例えばアレルゲンおよび他のメディエーターによって引き起こされる様々な身体部位でヒスタミン放出にかかわる炎症を制御する際の有用性を示し得る。
【0188】
ホスファチジルセリンによる一次ヒト肺マスト細胞(HLMC)からの抗ヒトIgE-誘導性ヒスタミン放出を測定した。HLMCを、正常なヒト肺洗浄物から採取し、ホスファチジルセリン誘導体(実施例1で使用したジ-オレオイル、リゾオレオイルまたはステロイルアラキドニル誘導体)、抗IgEとインキュベートするのみとするか、または抗IgEの添加前にホスファチジルセリンと予めインキュベーションした。上清中に放出されたヒスタミンを測定した。
【0189】
上記明細書において言及した特定の文献類は、出典明示により本明細書の一部とする。本発明の記載方法および系に関する様々な修飾および変更は、本発明の範囲および精神から逸脱しないことは当業者には明らかであろう。本発明は、特に好ましい実施態様に関連して説明されるが、特許請求の範囲に記載した本発明は、かかる特定の実施態様に限定することを意図するものではないと解されるべきである。実際に、生化学および生物工学や関連技術分野における当業者には明らかであろうが、本発明を行うために記載した様式の様々な修飾は、下記請求項の範囲内であるべきであると意図されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) 抗原;および
(ii) ホスファチジルセリンレセプターリガンド、
を含む、組成物。
【請求項2】
(i) アレルゲン;および
(ii) ホスファチジルセリンレセプターリガンド、
を含む、組成物。
【請求項3】
ホスファチジルセリンレセプターリガンドが、下記構造式;
【化1】

{式中、X1 は、Hまたは
【化2】

から選択され、
X2 は、Hまたは
【化3】

から選択される
[式中、“*”は、分子の残りの部分との結合点を示す;そして、
R1およびR2 部分は、水素、アルキルまたはアルケニル基から独立して選択され、これらの各基は、ハロゲノ、NO2、CN、(CH2)mORa(ここでmは0、1、2または3である)、O(CH2)nORb(ここでnは1、2または3である)、NRcRd、CF3、COORe、CONRfRg、CORh、SO3H、SO2Ri、SO2NRjRk、シクロアルキル、アルケニルまたはアリールから選択された基によって所望により(モノ-またはポリ-)置換されていてもよい;そしてRa-k は各々独立してHまたはアルキルである;そして
R3は、アルキル、アルケニル、シクロアルキルまたはアリール基であり、これらの各基は、ハロゲノ、ハロアルキル、NO2、CN、(CH2)mORa(ここでmは0、1、2または3である)、O(CH2)nORb(ここでnは1、2または3である)、NRcRd、CF3、COORe、CONRfRg、CORh、SO3H、SO2Ri、SO2NRjRk、シクロアルキル、アルケニルまたはアリールから選択された基で所望により置換されていてもよく(モノ-またはポリ-);そしてRa-k は各々独立してHまたはアルキルである;そして、
R3は、炭素よりも強い電気陰性度を有する少なくとも1つの原子を含む]}
を有するか、またはその医薬的に許容し得る塩または誘導体である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
R1および/またはR2が、C1C6アルコキシ、ヒドロキシル、アミノおよび/またはハロゲノ基によって(モノ-またはポリ-)置換される、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
R1が、非分岐アルキルまたはアルケニル基である、請求項3または4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
R2が非分岐アルキルまたはアルケニル基である、請求項3から5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
R1がN、OまたはSから独立して選択される1または1以上のヘテロ原子をさらに含有するアルキルまたはアルケニル基である、請求項3から6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
R2は、1または1以上の、N、OまたはSから独立して選択されるヘテロ原子をさらに含有するアルキルまたはアルケニル基である、請求項3から7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
アルキルまたはアルケニル基が、N、OまたはSから独立して選択される1から3個のヘテロ原子を含有する、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
R1およびR2が各々独立して1から60個の炭素原子を含む、請求項3から9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
R1およびR2 が1から26個の炭素原子を独立して含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
R1が14から26個の炭素原子を含む、請求項3から11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
R1が16から22個の炭素原子を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
R1 が18から22個の炭素原子を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
R2 が14から26個の炭素原子を含む、請求項3から14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
R2が16から22個の炭素原子を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
R2が18から22個の炭素原子を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
R1が1から6つの二重結合を含有するアルケニル基である、請求項3から17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
R1が1から4つの二重結合を含むアルケニル基である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
R1が1つの二重結合を含むアルケニル基である、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
R2が1から6つの二重結合を含むアルケニル基である、請求項3から20のいずれかに記載の組成物。
【請求項22】
R2が1から4つの二重結合を含むアルケニル基である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
R2が4つの二重結合を含むアルケニル基である、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
R2が1つの二重結合を含むアルケニル基である、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
X1およびX2が、各々独立して水素、飽和または不飽和脂肪酸アシル基またはその誘導体または塩から選択される、請求項3から24のいずれかに記載の組成物。
【請求項26】
脂肪酸アシル基が、ヘキサノイル、カプロイル、オウロイル(auroyl)、フィタノイル、ヘプタデカノイル、リノレオイル、エルコイル(erucoyl)、ドコサヘキサンエノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ウンデカノイル、ラウロイル、トリデカノイル、ミリストイル、ペンタデカノイル、パルミトイル、ヘプタデカノイル、ステアロイル、オレオイル、ノナデカノイル、アラキドイル、ベヘノイルおよびリグノセロイル(lignoceroyl)を含む群から選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
X1がステアロイル基、またはその誘導体または塩である、請求項25または26記載の組成物。
【請求項28】
X1がオレオイル基、またはその誘導体または塩である、請求項25または26記載の組成物。
【請求項29】
X1が水素である、請求項25または26に記載の組成物。
【請求項30】
X2がアラキドノイル基、またはその誘導体または塩である、請求項25から29のいずれかに記載の組成物。
【請求項31】
X2がオレオイル基または、その誘導体または塩である、請求項25から29のいずれかに記載の組成物。
【請求項32】
X2が水素である、請求項25から29のいずれに記載の組成物。
【請求項33】
R3が炭素よりも強い電気陰性度を持つ1から8個の原子を含む、請求項3から32のいずれかに記載の組成物。
【請求項34】
R3が炭素よりも強い電気陰性度を持つ1から6個の原子を含む、請求項3から32のいずれかに記載の組成物。
【請求項35】
R3が炭素よりも強い電気陰性度を持つ1から3個の原子を含む、請求項3から32のいずれかに記載の組成物。
【請求項36】
R3が炭素よりも強い電気陰性度を持つ1つの原子を含む、請求項3から32のいずれに記載の組成物。
【請求項37】
炭素よりも強い電気陰性度を持つ原子が、O、N、Sまたはハロゲンを含む群から選択されている、請求項3から32のいずれかに記載の組成物。
【請求項38】
炭素よりも強い電気陰性度を持つ原子が、OまたはNを含む群から選択される、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
R3がアルキル基を含む、請求項3から38のいずれかに記載の組成物。
【請求項40】
R3がシクロアルキル基を含む、請求項3から38のいずれかに記載の組成物。
【請求項41】
R3がアリール基を含む、請求項3から38のいずれかに記載の組成物。
【請求項42】
R3が、ヒロドキシル、カルボキシル、カルボキシレート、NR'R''(ここで、R'およびR''はHまたはC1C6アルキル、C1C6アルコキシ、ヒドロキシルまたはカルボキシル、C(O)NH2、CF3またはC1C6アルキル-COOH基によって所望により置換されているC1C6アルキルから独立して選択される)によって(モノ-またはポリ-)置換されている、請求項3から41のいずれかに記載の組成物。
【請求項43】
R3がカルボキシ、ヒドロキシおよび/またはアミノ基によって(モノ-またはポリ-)置換されている、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
R1および/またはR2および/またはR3が、1から3個の基によって置換されている、請求項3から43のいずれかに記載の組成物。
【請求項45】
R3が1から12個の炭素原子を含む、請求項3から44のいずれかに記載の組成物。
【請求項46】
R3が3から9個の炭素原子を含む、請求項3から44のいずれかに記載の組成物。
【請求項47】
R3が3から6個の炭素原子を含む、請求項3から44のいずれかに記載の組成物。
【請求項48】
R3が、
【化4】

およびその誘導体からなる群から選択される、請求項3から32のいずれかに記載の組成物。
【請求項49】
R3がアミノ酸またはその誘導体である、請求項3から47のいずれかに記載の組成物。
【請求項50】
R3が、
【化5】

またはその誘導体である、請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
リガンドが、ホスファチジルセリン、またはその誘導体またはその塩である、前記請求項いずれかに記載の組成物。
【請求項52】
リガンドが、ジ-オレオイルホスファチジルセリン、リゾ-オレオイルホスファチジルセリンおよびステアロイル-アラキドノイルホスファチジルセリンからなる群から選択される、前記請求項いずれかに記載の組成物。
【請求項53】
抗原が、細菌、ウイルスまたは腫瘍から得られる、請求項1および3から52のいずれかに記載の組成物。
【請求項54】
抗原またはアレルゲンが、ポリペプチド、または抗原ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含みポリヌクレオチドの発現を可能にする調節配列と操作可能に結合されている、ベクターの形態にある、前記請求項いずれかに記載の組成物。
【請求項55】
有効量のホスファチジルセリンレセプターリガンドを含む、組成物。
【請求項56】
請求項3から52のいずれかに定義された有効量のホスファチジルセリンレセプターリガンドを含む、組成物。
【請求項57】
ホスファチジルセリンレセプターリガンドがリポソームの形態ではない、前記請求項いずれかに記載の組成物。
【請求項58】
さらにアジュバントを含む、前記請求項いずれかに記載の組成物。
【請求項59】
アジュバントがモノホスホリルリピドAである、請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
前記請求項いずれかに記載の組成物を、医薬上許容し得る担体、希釈剤または賦形剤と共に含む、医薬組成物。
【請求項61】
ワクチンの形態にある、前記請求項いずれかに記載の組成物。
【請求項62】
ワクチンが予防用ワクチンである、請求項61に記載の組成物。
【請求項63】
ワクチンが治療用ワクチンである、請求項61に記載の組成物。
【請求項64】
組成物が非経口組成物である、前記請求項いずれかに記載の組成物。
【請求項65】
ホスファチジルセリンレセプターリガンドが、5-500μgの範囲の用量を提供する量で存在する、前記請求項いずれかに記載の組成物。
【請求項66】
ホスファチジルセリンレセプターリガンドが、10-100μgの範囲の用量を提供する量で存在する、前記請求項いずれかに記載の組成物。
【請求項67】
ホスファチジルセリンレセプターリガンドが、10-50μgの範囲の用量を提供する量で存在する、前記請求項いずれかに記載の組成物。
【請求項68】
医薬における使用のための前記請求項いずれかに記載の組成物。
【請求項69】
医薬における、併用調製物として同時、別々または連続的使用のためのアレルゲンまたは抗原、およびホスファチジルセリンレセプターリガンドを含有する製品。
【請求項70】
ホスファチジルセリンレセプターリガンドが、請求項3から52のいずれかに定義されるとおりである、請求項69に記載の製品。
【請求項71】
アレルゲンまたは抗原、およびホスファチジルセリンレセプターリガンドが同時に投与される、請求項69または70に記載の製品。
【請求項72】
アレルゲンまたは抗原、およびホスファチジルセリンレセプターリガンドが、連続的に投与される、請求項69または70に記載の製品。
【請求項73】
アレルゲンまたは抗原、およびホスファチジルセリンレセプターリガンドが皮下投与される、請求項69から72のいずれかに記載の製品。
【請求項74】
免疫応答を調節するための医薬調製のための請求項1から68のいずれかに記載の組成物または請求項69から73のいずれかに記載の製品の使用。
【請求項75】
請求項1から68のいずれかに記載の組成物または請求項69から73のいずれかに記載の製品を、ヒトまたは動物に投与することを含む、ヒトまたは動物における免疫応答を調節するための方法。
【請求項76】
細菌またはウイルス感染または癌に対する感受性を、処置または予防、または低下させるための、医薬調製のための、請求項1から68のいずれかに記載の組成物または請求項69から73のいずれかに記載の製品の使用。
【請求項77】
アレルギー性反応を処置または防止するための医薬調製のための、請求項1から68のいずれかに記載の組成物または請求項69から73のいずれかに記載の製品の使用。
【請求項78】
免疫過敏反応を処置または防止するための医薬調製のための、請求項1から68に記載の組成物または請求項69から73のいずれかに記載の製品の使用。
【請求項79】
免疫過敏反応が既存疾患(pre-existing disorder)である、請求項78に記載の使用。
【請求項80】
免疫過敏反応が、I型過敏反応である、請求項78または79に記載の使用。
【請求項81】
抗原またはアレルゲンに対する抗炎症性免疫応答を高めるための医薬製造のための、請求項1から54および57から68のいずれかに記載の組成物または請求項69から73のいずれかに記載の製品の使用。
【請求項82】
アレルゲンまたは抗原に対する抗炎症性免疫応答を高めるための医薬製造のための、請求項55または56記載の組成物の使用。
【請求項83】
患者をアレルゲンまたは抗原に暴露する前に医薬が投与される、請求項82に記載の使用。
【請求項84】
抗炎症性免疫応答が抗炎症性抗体応答を伴う、請求項82または83に記載の使用。
【請求項85】
抗炎症性抗体がIgAを含む、請求項84記載の使用。
【請求項86】
抗炎症性抗体がIgG4を含む、請求項84記載の使用。
【請求項87】
抗原またはアレルゲンに対する免疫応答における、炎症性抗体のレベルを低下するための医薬製造のための、請求項1から54および57から78のいずれかに記載の組成物または請求項69から73のいずれかに記載の製品の使用。
【請求項88】
アレルゲンまたは抗原に対する免疫応答において、炎症性抗体のレベルを低下させるための医薬製造のための請求項55または56のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項89】
医薬がアレルゲンまたは抗原への個体の暴露前に投与される、請求項88記載の使用。
【請求項90】
炎症性抗体のレベル低下と関連した免疫応答を誘導するための医薬製造のための、請求項1から66のいずれかに記載の組成物または請求項67から71のいずれかに記載の製品の使用。
【請求項91】
炎症性抗体がIgEである、請求項87から90のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項92】
炎症性抗体がIgG1である、請求項87から90のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項93】
自己免疫疾患を処置または予防するための医薬製造のための、請求項1から66のいずれかに記載の組成物または請求項67から71のいずれかに記載の製品の使用。
【請求項94】
組成物の抗原またはアレルゲンを認識する抗体産生のための医薬製造のための、請求項1から54および57から78のいずれかに記載の組成物または請求項69から73のいずれかに記載の製品の使用。
【請求項95】
抗体を産生するための医薬製造のための請求項55または56のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項96】
抗体が非炎症性抗体である、請求項94または95に記載の使用。
【請求項97】
抗体がIgG4である、請求項96に記載の使用。
【請求項98】
抗体がIgAである、請求項96に記載の使用。
【請求項99】
細菌またはウイルス感染、癌または免疫過敏反応を処置または予防するための医薬製造のための、請求項96から98のいずれかに従って産生された抗体の使用。
【請求項100】
喘息、枯草熱、全身性アナフィラキシーまたは接触性皮膚炎を処置するための医薬調製のための、請求項1から54および57から78いずれかに記載の組成物または請求項69から73のいずれかに記載の製品の使用。

【公表番号】特表2008−521871(P2008−521871A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543927(P2007−543927)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004656
【国際公開番号】WO2006/059142
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(507182748)バクシーン・テクノロジー・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】VACCINE TECHNOLOGY LIMITED
【Fターム(参考)】