説明

ホスファチジルセリンの安定化された配合物

粉末、液体、および分散液形態における安定PS調製物、ならびにこれらの生成方法が開示される。最も重要なことは、これらの安定PS調製物は特に、残留ホスホリパーゼD活性を欠き、このような活性の除去方法も、本発明に記載されているということである。最後に、これらのPS調製物の、栄養補助食品における使用または製薬組成物の活性剤としての使用も、本発明において提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定化されたホスファチジルセリン調製物およびこれらの調製方法に関する。本発明の安定化されたホスファチジルセリン調製物は、粉末、液体、または分散液の形態にあってもよい。これらのホスファチジルセリン調製物は、栄養補助食品、または機能性食品または製薬組成物への栄養補助添加剤として用いることができる。
【背景技術】
【0002】
この出願全体に記載されているすべての出版物は、その中に引用されているすべての引例も含めて、参照して全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
ホスファチジルセリン(PS)、リン脂質栄養分は、細胞膜中で活性であり、大脳細胞の膜における主要な酸性リン脂質成分である。PSは、多くの膜関連神経細胞プロセスにおいて決定的な役割を果たす。PSの主要目的は、適切な膜の流動性の維持を助けることであり、これは、大部分の膜機能に対して主要な係わり合いを有する。
【0004】
PSはこれまで、物忘れ、気分、認知力、および学習能力の数多くのヒトの臨床試験のテーマであった。これらの研究の多くは、PSが、年齢関連の記憶障害を有する人々にとって助けになりうることを証明している。さらにはPSは、認知障害のない人々において認知を最適化するのを助けることさえできる。
【0005】
食餌PSは、効率的および迅速に腸に吸収され、血中に取り込まれ、血液脳関門を容易に横断して、大脳中の神経細胞に達する。
【0006】
PSは、ウシ大脳から、および植物から抽出することができるが、またはこれは生体触媒作用を用いて、大豆レシチンから生成することができる。ホスホリパーゼD(PLD)とのトランスホスファチジル化反応を用いることによって、リン脂質の頭基は、容易に修飾することができる。このようにしてホスファチジルセリンは、ホスファチジルコリン、またはセリンとのあらゆるほかのリン脂質混合物から、PLD触媒作用を通して生成することができる。
【0007】
現在、PSは、粉末および流体形態で、10〜90%の範囲の様々な濃度で製造され、市場に出されている。PSの流体形態は、通常は中鎖トリグリセリド(MCT)または大豆トリグリセリドの油性媒質中のホスファチジルセリンの澄んだ透明な溶液から通常なっている。この形態は通常、ソフトジェルカプセルの形態で食餌サプリメントのために用いられている。PSサプリメントは、栄養補助食品のカテゴリーに入り、これらは、食品、または食品の一部であるあらゆる物質として規定され、医薬および/または健康上の利点を与える。これには、病気の予防および治療が含まれる。広い定義において、食餌サプリメントおよび機能性食品の両方が、栄養補助食品と考えられる。
【0008】
特に液体形態にあるホスファチジルセリン調製物における主な問題の一つは、急速な分解によるその低い安定性である。この分解の正確な原因は、完全には理解されていない。この現象の原因に関して多くの仮説がある。ただし大部分は、十分に確立も証明もされていない。普通に考えられているのは、分解は主として残留生物触媒活性および/または水またはグリセロール、ならびにほかのアルコール部分との副反応によって引起こされるということである。これらの反応は、PS調製物が流体であり、これがソフトジェルカプセル中に充填される時に特に重要である。ソフトジェルカプセル充填は通常、低レベルの水および/またはグリセロールのカプセル内容物中への移動およびその後の組込みを結果として生じる。
【0009】
PLD残留生物触媒活性が存在するPS調製物、および特に流体調製物は、トランスホスファチジル化によるPS生物触媒崩壊を受けやすいことがある。これは、セリン頭基を除去し、その結果、PS活性成分の喪失を生じる。このトランスホスファチジル化活性は、流体PS調製物それ自体、またはカプセル充填後の流体調製物中に見られる水を利用して、加水分解を結果として生じうる。加水分解は、ホスファチジン酸(PA)の形成につながるであろう。トランスホスファチジル化が、流体PS調製物それ自体、またはカプセル充填後の流体調製物中に見られるグリセロールまたはほかのアルコール部分を利用する場合、これは、セリン頭基のほかのアルコールでの置換につながることがあり、ホスファチジルグリセロール(PG)またはほかの対応リン脂質誘導体を生じる。
【0010】
ほかの崩壊経路もありうる。これらには、化学崩壊、例えばセリンカルボキシル基の脱カルボキシル化が含まれ、これは、生成物、例えばホスファチジルエタノールアミン(PE)またはほかの誘導体を生じる。脂質ペルオキシド化もまた、PS崩壊においてある役割を果たしうる。PSは、リン脂質脂肪酸の全部または一部加水分解によって崩壊することがあり、対応して脱アセチル化されたPS(GPS)またはリソ−PS(LPS)を生じる。ホスホリパーゼC(PLC)−様活性を有する酵素による酵素的な、または化学的なPSホスフェート除去の場合、ジグリセリドを作ることがあり、同様に結果としてPS活性成分の低下を生じる。
【0011】
崩壊を克服する一つの方法が、第WO03/088949号において提案されており、この場合、リン脂質が、硬質またはペースト様マトリックス中に埋め込まれている。
【0012】
上に提案されていることのほかに、ほかの崩壊経路がありそうに思われ、これらは商業的調製物中のPSの明らかな崩壊の原因でありうるであろう。
【特許文献1】第WO03/088949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、安定化されたPS調製物を粉末、液体、または分散液として提供することが、本発明の一つの目的である。
【0014】
このような安定化されたPS調製物の調製方法を提供することが、本発明のさらに一つの目的である。
【0015】
通常の食餌サプリメント用途、特にソフトジェルカプセルにおける使用のための前記安定化された調製物を提供することが、本発明のさらにもう一つの目的である。
【0016】
独立した栄養補助食品として、または食料品または製薬組成物への添加剤としての使用のための、前記安定化された調製物を提供することが、本発明のさらにもう一つの目的である。
【0017】
本発明のこれらの目的およびその他の目的は、説明が進むにつれて明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
ホスファチジルセリン不安定性の問題を克服するために、本発明は、より安定なPS組成物を開発し、本明細書において提示する。このような安定PSの使用および生成方法も提示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
したがって第一の態様において、本発明は、約1〜約99%(w/w)のホスファチジルセリンを含んでいる物質の安定PS組成物を提供する。
【0020】
本発明の物質の組成物の一つの実施形態において、前記組成物は、約1〜約99%(w/w)のPS、好ましくは約2.5〜80%(w/w)、約1〜約99%(w/w)のほかの機能性成分、好ましくは約5〜90%(w/w)、約1〜約99%(w/w)のホスファチジルコリン(PC)、好ましくは約1〜25%(w/w)、好ましくは約1〜約99%(w/w)のホスファチジルエタノールアミン(PE)、好ましくは約1〜10%(w/w)、約0.1〜約99%(w/w)のホスファチジルイノシトール(PI)、好ましくは約0.5〜10%(w/w)、約1〜約99%(w/w)オメガ−3源、好ましくは約10〜90%(w/w)、約1〜約99%(w/w)オメガ−6源、好ましくは約10〜90%(w/w)、および/または約1〜約99%(w/w)ステロールもしくはステロールエステル、好ましくは約1〜65%(w/w)を含んでいる。
【0021】
その上、本発明の物質の組成物は、その含量が、ホスファチジン酸(PA)15%を超えないことを特徴とする。好ましくはPA含量は10%以下、より好ましくは1〜7%である。
【0022】
もう一つの実施形態において、本発明の物質の組成物は、このホスファチジルセリンのわずか約1〜約5%しか、少なくとも6ヶ月、好ましくは少なくとも12ヶ月、より好ましくは少なくとも24ヶ月の貯蔵期間後に、分解されない。
【0023】
本発明の一つの特別な実施形態において、この物質の組成物は、ホスホリパーゼ活性、特にホスホリパーゼD活性を実質的に欠く。
【0024】
もう一つの特別な実施形態において、本発明の物質のホスファチジルセリン組成物は、粉末形態にある。
【0025】
さらに一つの実施形態において、本発明の物質の組成物中に含まれているPSは、有機溶媒中に実質的に可溶である塩、特に一価イオンの塩、好ましくはナトリウム塩の形態にある。
【0026】
さらになお一つの実施形態において、本発明の物質の組成物中に含まれているPSは、有機溶媒中に実質的に不溶である塩、特に二価イオンの塩、好ましくはカルシウム塩の形態にある。あるいはまた、これはマグネシウム塩であってもよい。
【0027】
本発明の物質の組成物はさらに、場合により、生理学的/製薬的に許容しうる添加剤、例えば流動剤、乳化剤、安定剤防腐剤、着色料、消泡剤、およびケーキング防止剤、ならびに希釈剤、賦形剤、およびキャリヤーもまた含んでいてもよい。
【0028】
さらにもう一つの実施形態において、本発明の物質のホスファチジルセリン組成物は、食餌サプリメント、栄養補助食品、および/または薬品添加剤としての使用のためのものである。
【0029】
第二の態様において、本発明は、本発明の物質のホスファチジルセリン組成物を含んでいるホスファチジルセリンの安定液体調製物であって、PSが、油、好ましくは中鎖トリグリセリド中に溶解された、有機溶媒中に実質的に可溶である塩の形態で存在する調製物を提供する。好ましくは、油中に溶解された前記PSは、ナトリウム塩の形態にある。
【0030】
一つの第一実施形態において、本発明の液体調製物は、ホスファチジルセリン約1〜約90%(w/w)、好ましくは約2.5〜約55%(w/w)を含んでいる。
【0031】
もう一つの実施形態において、本発明の液体ホスファチジルセリン調製物は、ホスファチジルセリンのわずか約1〜約5%しか、少なくとも6ヶ月、好ましくは少なくとも12ヶ月、より好ましくは少なくとも24ヶ月の貯蔵期間後に、分解されないことを特徴とする。
【0032】
さらに一つの実施形態において、本発明の液体ホスファチジルセリン調製物はさらに、追加の生物機能性成分、好ましくはレシチン、リン脂質、ビタミン、酸化防止剤、ミネラル、栄養タンパク質もしくはペプチド、ステロールおよびほかの誘導体、栄養炭水化物およびこれらの誘導体、アミノ酸、植物抽出物、発酵製品、グリセリド誘導体(モノ−およびジ−グリセリド)、多不飽和脂肪酸、およびオメガ−3および/またはオメガ−6脂質の少なくとも一つも含んでいる。
【0033】
さらにもう一つの実施形態において、本発明のホスファチジルセリン液体調製物は、食餌サプリメント、栄養補助食品、および/または薬品添加剤としての使用のためのものである。
【0034】
第三の態様において、本発明は、本発明の物質の安定ホスファチジルセリン組成物を含んでいるホスファチジルセリンの安定分散液であって、PSが、液体ベース中に分散された、有機溶媒中に実質的に不溶である塩の形態で存在する分散液を提供する。好ましくは前記塩は、カルシウム塩である。このようにして、PSの安定分散液は、好ましくは脂質、より好ましくは油ベースである液体ベース中に分散されたPSのカルシウム塩である。あるいはまた、PSの安定分散液は、好ましくは脂質、より好ましくは油ベースである液体ベース中に分散されたPSのマグネシウム塩である。
【0035】
一つの実施形態において、脂質ベースは、油、脂肪酸のエステル、遊離脂肪酸、およびほかの誘導体であってもよい。
【0036】
好ましくは本発明の前記ホスファチジルセリン分散液は、約1〜約70%(w/w)のホスファチジルセリン、最も好ましくは約5〜45%(w/w)を含んでいる。
【0037】
本発明のホスファチジルセリン分散液の一つの好ましい実施形態において、前記油ベースは、トリグリセリドベース、特に中鎖トリグリセリドベース、または植物油である。
【0038】
もう一つの実施形態において、本発明のホスファチジルセリン分散液はさらに、追加の生物機能性成分、好ましくはレシチン、リン脂質、ビタミン、酸化防止剤、ミネラル、栄養タンパク質もしくはペプチド、ステロールおよびほかの誘導体、栄養炭水化物およびこれらの誘導体、アミノ酸、植物抽出物、発酵製品、グリセリド誘導体(モノ−およびジ−グリセリド)、多不飽和脂肪酸、およびオメガ−3および/またはオメガ−6脂質の少なくとも一つも含んでいる。
【0039】
さらに一つの実施形態において、本発明の前記ホスファチジルセリン分散液は、食餌サプリメント、栄養補助食品、および/または薬品添加剤として使用のためのものである。
【0040】
もう一つの態様において、本発明は、本発明によって提供された形態のいずれか一つにおいて、すなわち物質のホスファチジルセリン組成物として、PS液体調製物として、またはPS分散液としてPSを含んでいる食料品を提供する。
【0041】
一つの実施形態において、前記食料品は場合によりさらに、少なくとも一つの追加の生物機能性成分、例えば上記のような生物機能性成分も含んでいる。
【0042】
次の態様において、本発明は、活性剤として、本発明によって提供された形態のいずれか一つにおいて、すなわち物質のホスファチジルセリン組成物として、PS液体調製物として、またはPS分散液としてPSを含み、場合によってさらに、少なくとも一つの追加活性剤および/または少なくとも一つの製薬的に許容しうる添加剤、希釈剤、キャリヤー、または賦形剤を含んでいる製薬組成物を提供する。本発明の製薬組成物は、追加の製薬的活性剤を含んでいてもよい。
【0043】
さらにもう一つの態様において、本発明は、本発明によって提供された形態のいずれか一つにおいて、すなわち物質のホスファチジルセリン組成物として、PS液体調製物として、またはPS分散液としてPSが入っているカプセルを提供する。前記カプセルは好ましくは、ソフトゼラチンカプセルである。
【0044】
本発明はまた、認知力および学習能力の向上剤としての、本発明において記載されたPS調製物のいずれかの、すなわち物質のホスファチジルセリン組成物として、PS液体調製物として、またはPS分散液としての使用も提供する。
【0045】
物忘れ、特に年齢関連の物忘れの予防における使用のために、本発明によって提供された形態のいずれか一つにおいて、すなわち物質のホスファチジルセリン組成物として、PS液体調製物として、またはPS分散液としてPSを提供することは、本発明のその後の一つの態様である。
【0046】
さらに一つの態様において、本発明は、物質の安定ホスファチジルセリン組成物の調製方法であって、
(a)L−セリンおよび場合により適切な有機溶媒とレシチンとの水性混合物を、固定化されたホスホリパーゼDの存在下に、適切な時間インキュベーションして、ホスファチジルセリンを生じる工程;
(b)このホスファチジルセリンを含有する上部層を除去する工程;
(c)標準的手段によって前記除去された上部層からホスファチジルセリンを得る工程;
(d)工程(c)で得られたホスファチジルセリンを、適切な水溶液で洗浄し、過剰なL−セリンを除去する工程;
(e)場合により、工程(d)で得られたホスファチジルセリンを、適切な有機溶媒、好ましくはエタノールで高温において洗浄する工程;および
(f)工程(e)で得られたホスファチジルセリンを乾燥する工程
を含む方法を提供する。
【0047】
本発明の方法の一つの特別な実施形態において、前記ホスホリパーゼは、好ましくはホスホリパーゼDである。
【0048】
本発明の方法のもう一つの実施形態において、前記方法はさらに、適切な手段によって、得られたホスファチジルセリン中のあらゆる残留ホスホリパーゼを非活性化する工程を含んでいてもよい。
【0049】
本発明の方法のさらにもう一つの好ましい実施形態において、前記ホスホリパーゼは、不溶性マトリックス上に固定化され、場合により界面活性剤コーティングされ、工程(a)後、反応混合物は、ホスホリパーゼが沈殿するまで放置される。
【0050】
さらにもう一つの態様において、本発明は、ホスファチジルセリンの安定ホスファチジルセリン油ベース液体調製物の調製方法であって、安定油ベース中に本発明の物質のホスファチジルセリン組成物を溶解する工程を含み、PSが、油、好ましくは中鎖トリグリセリド中に溶解された、有機溶媒中に実質的に可溶である塩の形態で存在する方法を提供する。好ましくは、油中に溶解された前記PSは、ナトリウム塩の形態にある。好ましくは前記油ベースは、中鎖トリグリセリドまたは植物油である。
【0051】
最後の態様において、本発明は、ホスファチジルセリンの安定液体ベース分散液の調製方法であって、本発明の物質のホスファチジルセリン組成物を分散する工程を含み、PSが、油、好ましくは中鎖トリグリセリド中に溶解された、有機溶媒中に実質的に不溶である塩の形態で存在し、好ましくは、油中に溶解された前記PSは、適切な油ベース、好ましくはトリグリセリドベース、特に中鎖トリグリセリドまたは植物油中のカルシウム塩の形態にある方法を提供する。混合物を増強するために、さらなる成分が、この液体調製物に添加されてもよいことに注目すべきである。
【0052】
本発明はまた、上記方法のいずれか一つによって調製された、物質の安定ホスファチジルセリン組成物も提供する。
【0053】
発明の詳細な説明
次の省略形が、この明細書全体で用いられる:
− EDTA:エチレンジアミンテトラ酢酸
− GC:ガスクロマトグラフィー
− GPS:脱アセチル化されたPS
− HPLC:高性能液体クロマトグラフィー
− HPTLC:高性能薄層クロマトグラフィー
− LPS:リソ−PS
− MCT:中鎖トリグリセリド
− NMR:核磁気共鳴
− PA:ホスファチジン酸
− PC:ホスファチジルコリン
− PE:ホスファチジルエタノールアミン
− PG:ホスファチジルグリセロール
− PI:ホスファチジルイノシトール
− PLC:ホスホリパーゼC
− PLD:ホスホリパーゼD
− PS:ホスファチジルセリン
− RH:相対湿度
− RT:室温
上記のように、ホスファチジルセリン(PS)は、細胞膜の必須成分であり、これは、記憶、気分、認知力、および学習能力との公知の関連をともなう、大脳細胞の良好な機能において特に重要である。その重要な機能にもかかわらず、ヒトの食餌においてPSを補うことは望ましい。サプリメントは市場に確かに存在するが、これらは、実際に消費者へ送達される量に関して非常に問題が多い。その理由は、現在一般の人が入手しうる組成物におけるPSの変質および分解という固有の問題があるからである。
【0054】
PSは、不安定であると一般に知られている。冷条件下に貯蔵された純粋乾燥粉末でさえ、高い崩壊率を有しやすい。さらには、PSの高濃度の組成物、および純粋PSは通常、不安定という問題をさらに有しやすい。純粋PSは、1日あたり0.5%w/wの率で崩壊を受けやすいことが記載されてきた[シグマ(Sigma)のカタログ]。この崩壊の正確な原因またはメカニズムは、完全に知られているわけではない。多くの場合、加水分解またはトランスホスファチジル化反応のせいだとされている。しかしながら、多くの場合、このような反応の生成物は、単離することができない。
【0055】
この不安定という問題を克服するために、本発明は、より安定なPS組成物を開発し、本明細書において提示する。このような安定PSの使用および生成方法も提示される。この向上した安定性は、特にPS脱安定化についてのいくつかの潜在的原因に取り組んで、様々な手段によって提供される。これらは、本明細書において以下に詳細に記載される。
【0056】
「安定化」および「安定」という用語は、本明細書において同義に用いられている。
【0057】
このようにして、第一の態様において、本発明は、約1〜約99%(w/w)のホスファチジルセリンを含んでいる物質の安定PS組成物を提供する。
【0058】
既に記載されているように、PS不安定性の主要な公知の原因は、PS調製物中の残留酵素活性、ならびにPSの化学的崩壊、例えば脱カルボキシル化、脂質ペルオキシド化、およびリン脂質脂肪酸の加水分解である。
【0059】
したがって、本発明によって提供された物質の安定PS組成物は、酵素活性を欠くか、または最小限の酵素活性しか有さず、これは化学的に安定であり、貯蔵安定である。このような属性は、次の実施例において明白に証明される。
【0060】
本発明の物質の組成物の一つの実施形態において、前記組成物は、約1〜約99%(w/w)のPS、好ましくは約2.5〜80%(w/w)、約1〜約99%(w/w)のほかの機能性成分、好ましくは約5〜約90%(w/w)、約1〜約99%(w/w)のホスファチジルコリン(PC)、好ましくは約1〜25%(w/w)、好ましくは約1〜約99%(w/w)のホスファチジルエタノールアミン(PE)、好ましくは約1〜10%(w/w)、約0.1〜約99%(w/w)のホスファチジルイノシトール(PI)、好ましくは約0.5〜10%(w/w)、約1〜約99%(w/w)のオメガ−3源、好ましくは約10〜90%(w/w)、約1〜約99%(w/w)のオメガ−6源、好ましくは約10〜90%(w/w)、および/または約1〜約99%(w/w)のステロールもしくはステロールエステル、好ましくは約1〜65%(w/w)を含んでいる。
【0061】
その上、本発明の物質の組成物は、その含量が、ホスファチジン酸(PA)15%を超えないことを特徴とする。好ましくはPA含量は10%以下であり、より好ましくは1〜7%である。
【0062】
もう一つの実施形態において、本発明の物質の組成物は、ホスファチジルセリンのわずか約1〜約5%しか、少なくとも6ヶ月、好ましくは少なくとも12ヶ月、より好ましくは少なくとも24ヶ月の貯蔵期間後に、分解されないことを特徴とする。
【0063】
換言すれば、本発明の物質の組成物のもとのPS含量の少なくとも95%が、少なくとも6ヶ月、好ましくは少なくとも12ヶ月、より好ましくは少なくとも24ヶ月の貯蔵期間後に保持される。好ましくはもとのPS含量の少なくとも97%が、前記貯蔵期間後に保持され、より好ましくはもとのPS含量の少なくとも99%が保持される。
【0064】
本発明の一つの特別な実施形態において、物質の組成物は、ホスホリパーゼ活性、特にホスホリパーゼD活性を実質的に欠く。実質的に欠くとは、1単位/mL未満、好ましくは0.1単位/mL以下、または0.05単位/mLでさえ、本発明の物質の組成物中に見られる最大残留酵素活性であることを意味する。実際的な意味では、残留酵素活性のこの量はごくわずかであるので、これは表3に示されている結果において証明されているようにほぼ測定可能な限界のところにある。
【0065】
記載されているようなPSの生成に用いられているホスホリパーゼD(PLD)(ホスファチジルコリンホスファチドヒドラーゼ、EC3.1.4.4)は、動物、細菌、真菌、または植物源から得ることができる。これらの例は、キャベツPLD、Streptomyces sp.PLD、Streptomyces chromofuscusなどである。固定化されたPLD調製物を用いることによって、本発明者らは、最終PS生成物調製においてこの酵素の存在を最小限にするか、またはこれを避けることさえでき、このようにして、プロセス酵素による連続的なPS崩壊のリスクを最小限にするか、避けることができる。
【0066】
もう一つの特別な実施形態において、本発明の物質のホスファチジルセリン組成物は、粉末形態にある。実施例1に示されているように、本発明者らによって用いられた合成方法を通して得られたPS調製物は、粉末形態にある。
【0067】
さらに一つの実施形態において、本発明の物質の組成物中に含まれているPSは、有機溶媒中に実質的に可溶である塩、特に一価イオンの塩、好ましくはナトリウム塩の形態にある。
【0068】
酵素的に生成されたホスファチジルセリン調製物は通常、二価金属、最も好ましくはCa+2の塩として生成される。これらの塩は、多くの有機溶媒、例えば油、ヘキサン中に、およびアルコール中にさえ可溶でない。二価塩は、溶媒の複合混合物の使用、異なる添加剤の利用から塩交換までの様々な技術の利用によって、有機溶媒中に可溶にすることができる。塩交換において、二価金属イオンは、一価金属イオン、例えばNaと交換される。これは、PS二価塩を、この交換を有利にするような条件下に、一価イオンの過剰に暴露することによって達成される。その上、選択的金属キレート化剤、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)またはEGTAを用いることができる。これらのキレート化剤は、二価金属、特にCa+2へのこれらの高い会合係数によって平衡をシフトさせる。これらのキレート化剤は、PSの塩において特定の位置を占める過剰のナトリウムイオンの存在下にCa+2イオンを掃去する(scavenge)。このことは、水性環境中で、金属キレート化剤の1〜3当量を用いて、周囲条件で、場合により高温で実施される。その結果生じたナトリウム塩は、有機溶媒中により容易に可溶である。
【0069】
有機溶媒中に実質的に可溶であるとは、実現可能でありかつ透明な溶液を形成する、1%w/w〜40%、さらには60%の範囲内にあるPSの溶液を意味する。
【0070】
有機溶媒は、例えばヘキサン、石油エーテル、トルエン、エタノール、油および脂肪(トリグリセリド)、脂肪酸エチルエステルなどである。
【0071】
さらにもう一つの実施形態において、本発明の物質の組成物中に含まれているPSは、有機溶媒中に実質的に不溶である塩、特に二価イオンの塩、好ましくはカルシウム塩の形態にある。あるいはまた、これはマグネシウム塩であってもよい。
【0072】
本発明の物質の組成物はさらに、場合により、生理学的/製薬的に許容しうる添加剤、例えば流動剤、乳化剤、安定剤防腐剤、着色料、消泡剤、およびケーキング防止剤、ならびに希釈剤、賦形剤、およびキャリヤーを含んでいてもよい。
【0073】
さらにもう一つの実施形態において、本発明の物質のホスファチジルセリン組成物は、食餌サプリメント、栄養補助食品、および/または薬品添加剤としての使用のためのものである。
【0074】
第二の態様において、本発明は、本発明の物質のホスファチジルセリン組成物を含んでいるホスファチジルセリンの安定液体調製物であって、PSが、油、好ましくは中鎖トリグリセリド中に溶解された、有機溶媒中に実質的に可溶である塩の形態で存在する調製物を提供する。好ましくは、油中に溶解された前記PSは、ナトリウム塩の形態にある。
【0075】
一つの第一実施形態において、本発明の液体調製物は、ホスファチジルセリン約1〜約90%(w/w)、好ましくは約2.5〜約55%(w/w)を含んでいる。
【0076】
もう一つの実施形態において、本発明の液体ホスファチジルセリン調製物は、ホスファチジルセリンのわずか約1〜約5%しか、少なくとも6ヶ月、好ましくは少なくとも12ヶ月、より好ましくは少なくとも24ヶ月の貯蔵期間後に、分解されないことを特徴とする。
【0077】
本発明の物質の組成物と同様に、このことは、本発明の液体PS調製物のもとのPS含量の少なくとも95%が、少なくとも6ヶ月、好ましくは少なくとも12ヶ月、より好ましくは少なくとも24ヶ月の貯蔵期間後に保持されることを意味する。好ましくはもとのPS含量の少なくとも97%が、前記貯蔵期間後に保持され、より好ましくはもとのPS含量の少なくとも99%が保持される。
【0078】
さらに一つの実施形態において、本発明の液体ホスファチジルセリン調製物はさらに、追加の生物機能性成分、好ましくはレシチン、リン脂質、ビタミン、酸化防止剤、ミネラル、栄養タンパク質もしくはペプチド、ステロールおよびほかの誘導体、栄養炭水化物およびこれらの誘導体、アミノ酸、植物抽出物、発酵製品、グリセリド誘導体(モノ−およびジ−グリセリド)、多不飽和脂肪酸、およびオメガ−3および/またはオメガ−6脂質の少なくとも一つも含んでいる。
【0079】
さらにもう一つの実施形態において、本発明のホスファチジルセリン液体調製物は、食餌サプリメント、栄養補助食品、および/または薬品添加剤としての使用のためのものである。
【0080】
第三の態様において、本発明は、本発明の物質の安定ホスファチジルセリン組成物を含んでいるホスファチジルセリンの安定分散液であって、PSが、液体ベース中に分散された、有機溶媒中に実質的に不溶である塩の形態で存在する分散液を提供する。好ましくは前記塩は、カルシウム塩である。このようにして、PSの安定分散液は、好ましくは脂質、より好ましくは油ベースである液体ベース中に分散されたPSのカルシウム塩である。あるいはまた、PSの安定分散液は、好ましくは脂質、より好ましくは油ベースである液体ベース中に分散されたPSのマグネシウム塩である。
【0081】
一つの実施形態において、脂質ベースは、油、脂肪酸のエステル、遊離脂肪酸、およびほかの誘導体であってもよい。
【0082】
脂質または有機キャリヤー中のホスファチジルセリンの分散液は、この種のキャリヤーが、PSの完全な可溶化を可能にしないことを特徴とする。このようなキャリヤーは、食用油(例えばトリグリセリドベースの製品、例えば植物油、魚油など)、有機ポリマー、炭水化物およびこれらの誘導体、タンパク質およびペプチド調製物などであってもよい。
【0083】
前記キャリヤー中に可溶でないPSは、様々な粒子サイズの結晶形態において見られる。この形態では、PSは、分解要因、例えば水、グリセロール、残留酵素、およびPS分子またはその置換基の一つとの分子レベルでの反応を必要とするあらゆるほかの要因へより接近しやすくない。
【0084】
PS分散液はまた、固体または半固体(極端に高い粘性形態)形態として得られてもよい。この固体性はさらに、単に、固相におけるこのようなプロセスの動的プロフィールが、実質的により低い速度係数(rate coefficient)を有するという事実によってのみ、PS活性成分のレベルの低下を結果として生じうる、あらゆる化学的または酵素的崩壊プロセスを阻害するか、または遅延させる。
【0085】
あるいはまた、液体ベースは脂質ではなく、有機または無機液体ポリマー、液体炭水化物などであってもよい。
【0086】
好ましくは本発明の前記ホスファチジルセリン分散液は、約1〜約70%(w/w)のホスファチジルセリン、最も好ましくは約5〜45%(w/w)を含んでいる。
【0087】
本発明者らは、実施例に示されているように、40%のPSを含有するPS分散液または流体PSを生成した。
【0088】
食餌サプリメントに対して普通の製品は、20%(w/w)のPSを有する、MCT油中の流体PSである。このことによって、100mgのPSを有する500mgソフトジェルカプセルの生産が可能され、PSの標準的で最も普通の日常の提供品(serving)は、市場で入手しうる。今日、カプセルの最も一般的な形態の一つであるソフトジェルカプセル充填のためには、周囲条件において、または35℃を超えない温度において、流体調製物を有しなければならない。これらの制限は、ソフトジェルカプセル充填技術および機械類から生じる。現在まで、20%以上のPS含量を有する流体PSを生成することは、可能でなかった。PSのより高い濃度を有する流体PSを生成することは、有利であるように見える。その理由は、これによって、カプセルを大きくしたり、人が摂取する必要がある毎日のカプセルの数を増加する必要もなく、より小さいカプセルサイズ、またはカプセルへのほかの成分の添加を可能にするであろうからである。このことは、経済的観点から、および顧客にとってより口当たりがよいものになるための両方から、有利である。
【0089】
本発明者らは、その安定性に関して妥協することなく、このような利点を有する流体PSを開発してきた。本発明において、PSナトリウム塩がヘキサン中に可溶化され、油キャリヤー、好ましくはMCTへ添加される。PCまたはレシチンは添加されず、用いられるMCTの量は変更されず、その結果として、PSのはるかにより濃縮された形態を生じる。この濃度は、MCT中のPSナトリウム塩の溶解性以上であり、したがってPSの一部が沈殿する。その結果、得られた配合物中のPSは、一部可溶であり、一部分散され、流体特性、容易な取り扱いおよび投薬、ならびに高い安定性を可能にする。
【0090】
本発明のホスファチジルセリン分散液の一つの好ましい実施形態において、前記油ベースは、トリグリセリドベース、特に中鎖トリグリセリドベース、または植物油である。
【0091】
もう一つの実施形態において、本発明のホスファチジルセリン分散液はさらに、追加の生物機能性成分、好ましくはレシチン、リン脂質、ビタミン、酸化防止剤、ミネラル、栄養タンパク質もしくはペプチド、ステロールおよびほかの誘導体、栄養炭水化物およびこれらの誘導体、アミノ酸、植物抽出物、発酵製品、グリセリド誘導体(モノ−およびジ−グリセリド)、多不飽和脂肪酸、およびオメガ−3および/またはオメガ−6脂質の少なくとも一つも含んでいる。
【0092】
さらに一つの実施形態において、本発明の前記ホスファチジルセリン分散液は、食餌サプリメント、栄養補助食品、および/または薬品添加剤としての使用のためのものである。
【0093】
もう一つの態様において、本発明は、本発明によって提供される形態のいずれか一つにおいて、すなわち物質のホスファチジルセリン組成物として、PS液体調製物として、またはPS分散液としてPSを含んでいる食料品を提供する。
【0094】
一つの実施形態において、前記食料品は場合によりさらに、少なくとも一つの追加の生物機能性成分、例えば上記のような生物機能性成分も含んでいる。
【0095】
次の態様において、本発明は、活性剤として、本発明によって提供された形態のいずれか一つにおいて、すなわち物質のホスファチジルセリン組成物として、PS液体調製物として、またはPS分散液としてPSを含み、場合によりさらに、少なくとも一つの追加活性剤、および/または少なくとも一つの製薬的に許容しうる添加剤、希釈剤、キャリヤー、または賦形剤も含んでいる製薬組成物を提供する。本発明の製薬組成物は、追加の製薬的活性剤を含んでいてもよい。
【0096】
製薬組成物の調製は、当業界において周知であり、多くの論文および教科書に記載されてきた。例えば「レミントンの製薬化学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)」、Gennaro A.R.版、Mack Publishing Company、ペンシルベニア州イーストン、1990年、特にその中の1521−1712ページ参照。
【0097】
本発明の製薬組成物は、投薬量単位形態において調製することができる。これらの投薬量形態はまた、徐放性器具を含んでいてもよい。これらの組成物は、製薬業において周知の方法のどれによって調製されてもよい。このような投薬形態は、本質的に非毒性かつ非治療的な生理学的に許容しうるキャリヤーを包含する。このようなキャリヤーの例には、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばホスフェート、グリシン、ソルビン酸、カリウムソルベート、飽和植物脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩、または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、マグネシウムトリシリケート、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、およびPEGが含まれる。
【0098】
経口投与は、本発明の製薬組成物を送達するのに好ましい経路である。ただしほかの経路も実行可能でありうる。
【0099】
この製薬組成物は、必要としている被験者へ、単一または多数の機会に投与されてもよい。本発明の組成物の「有効治療量」は、治療目標に関連した状態の重症度、投与経路、および患者の一般的条件(年齢、性、体重、および主治医へ公知のほかの考察事項)によって決定される。したがって、治療者が投薬量を滴定し、最適な治療効果を得るのに必要とされる投与経路を修正することが必要であろう。
【0100】
さらにもう一つの態様において、本発明は、本発明によって提供された形態のいずれか一つにおいて、すなわち物質のホスファチジルセリン組成物として、PS液体調製物として、またはPS分散液としてのPSが入っているカプセルを提供する。前記カプセルは好ましくは、ソフトゼラチンカプセルである。
【0101】
上記のように、PSは、気分および記憶、ならびに認知力および学習能力の改良と相互関連してきた。
【0102】
したがって本発明はまた、認知力および学習能力の向上剤としての、本発明に記載されたPS調製物のいずれかの、すなわち物質のホスファチジルセリン組成物として、PS液体調製物として、またはPS分散液としての使用も提供する。
【0103】
物忘れ、特に年齢関連の物忘れの予防における使用のための、本発明によって提供された形態のいずれか一つにおいて、すなわち物質のホスファチジルセリン組成物として、PS液体調製物として、またはPS分散液としてPSを提供することが、本発明のその後の一つの態様である。
【0104】
さらに一つの態様において、本発明は、物質の安定ホスファチジルセリン組成物の調製方法であって、
(a)L−セリンおよび場合により適切な有機溶媒とレシチンとの水性混合物を、固定化されたホスホリパーゼDの存在下に、適切な時間インキュベーションして、ホスファチジルセリンを生じる工程;
(b)このホスファチジルセリンを含有する上部層を除去する工程;
(c)標準的手段によって前記除去された上部層からホスファチジルセリンを得る工程;
(d)工程(c)で得られたホスファチジルセリンを、適切な水溶液で洗浄し、過剰なL−セリンを除去する工程;
(e)場合により、工程(d)で得られたホスファチジルセリンを、適切な有機溶媒、好ましくはエタノールで高温において洗浄する工程;および
(f)工程(e)で得られたホスファチジルセリンを乾燥する工程
を含む方法を提供する。
【0105】
本発明の方法の一つの特別な実施形態において、前記ホスホリパーゼは、好ましくはホスホリパーゼDである。
【0106】
本発明の方法のもう一つの実施形態において、前記方法はさらに、適切な手段によって、得られたホスファチジルセリン中のあらゆる残留ホスホリパーゼ活性を非活性化させる工程を含んでいてもよい。
【0107】
前記適切な手段は、(a)EDTA処理、(b)有機溶媒、好ましくはメタノール、エタノール、またはプロパノールでのさらなるインキュベーション、(c)熱非活性化、および/または(d)PLD阻害剤の添加であってもよい。
【0108】
本発明の方法のさらにもう一つの好ましい実施形態において、前記ホスホリパーゼは、不溶性マトリックス上に固定化され、場合により界面活性剤コーティングされ、工程(a)後、この反応混合物は、ホスホリパーゼが沈殿するまで放置される。
【0109】
固定化されたPLC調製物は、この方法が有機または水性媒質中で、または二相系としても公知のこれらの混合物中で実施される時に用いることができる。
【0110】
上記方法の工程(a)において、レシチンは、場合により、反応混合物中のレシチン原料の分散および/または可溶化を補助する適切な有機溶媒の存在下に、L−セリンの水溶液へ添加される。この混合物は好ましくは、リン脂質を反応媒質中に均一に分散するために、適切な時間、好ましくは約1時間攪拌される。
【0111】
酵素反応それ自体は、攪拌しつつ、適切な時間、好ましくは少なくとも12時間実施され、ついでこの反応混合物は放置される。
【0112】
リン脂質フラクションを含有する反応の上部層が、標準的技術、例えば遠心分離、濾過、圧力濾過、デカンテーションなどによって得られる。その結果生じたホスファチジルセリンはさらに、あらゆる過剰のL−セリンを除去するために適切な水溶液で洗浄され、ホスホリパーゼ活性を実質的に欠くホスファチジルセリンを得るために乾燥される。
【0113】
固定化されたPLD調製物が、粉末または流体配合物のPSの生成において用いられた場合、最終PS配合物は、最小残留酵素活性によって証明されるように、商品として入手しうるPS配合物と比較して、優れた安定性を示した。固定化された調製物からの酵素漏れは、マトリックスの機械的崩壊または不十分な固定化による、非常に一般的な現象である。この問題を避けるために、本発明者らは、最終PS中に存在するあらゆる酵素活性を非活性化するためにさらなる工程を用いてきた。これらのさらなる工程は、(i)有機溶媒、好ましくはメタノール、エタノール、またはプロパノール、または高温(120℃まで)で酵素を不活性化しうるその他のあらゆる有機溶媒でのインキュベーションを介した酵素非活性化;(ii)熱非活性化;(iii)酵素を不活性化する添加剤の添加、例えばEDTA処理;(iv)PLD阻害剤の添加を包含する。
【0114】
酵素阻害剤での、または酵素補助因子、例えばCa+2イオンを除去する選択的試薬でのPS調製物の処理は好ましくは、残留酵素または水溶性補助因子への、このような阻害剤または試薬の接近しやすさを確保するために、水性媒質中に実施される。
【0115】
選択的金属イオンキレート化剤、例えば非限定的に、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)およびその対応塩および誘導体での処理は、結果としてCa+2イオンの選択的結合を生じ、これらをあらゆる残留酵素へ接近不能にする。このようにして、たとえ残留酵素がこの調製物中に存在するとしても、必須補助因子の欠如によって、これはトランスホスファチジル化または加水分解活性を行使することができないであろう。
【0116】
適切なEDTA塩で処理されたPS調製物はさらに、新鮮な水溶液で洗浄され、濾過およびその後の乾燥によって得られる。好ましくはこのPS調製物は、有機媒質への抽出によって得られる。前記有機媒質は、有機溶媒、または有機溶媒の混合物、または脂質系、例えば油、脂肪酸のエチルエステル、遊離脂肪酸、一部加水分解されたトリグリセリドなどから構成されていてもよい。さらには前記有機媒質は、有機溶媒および脂質キャリヤーの両方を、異なる割合で含有しうる。通常、MCTが脂質キャリヤーとして用いられる。有機溶媒、例えば炭化水素有機溶媒が、処理されたPS調製物の抽出に用いられる場合、前記溶媒はさらに、標準的技術によって除去される。
【0117】
さらに一つの態様において、本発明は、ホスファチジルセリンの安定ホスファチジルセリン油ベースの液体調製物の調製方法であって、適切な油ベース中に本発明の物質のホスファチジルセリン組成物を溶解する工程を含み、PSが、油、好ましくは中鎖トリグリセリド中に溶解された、有機溶媒中に実質的に可溶である塩の形態で存在する方法を提供する。好ましくは、油中に溶解された前記PSは、ナトリウム塩の形態にある。好ましくは、前記油ベースは、中鎖トリグリセリドまたは植物油である。
【0118】
最後の態様において、本発明は、ホスファチジルセリンの安定液体ベース分散液の調製方法であって、本発明の物質のホスファチジルセリン組成物を分散する工程を含み、PSが、油、好ましくは中鎖トリグリセリド中に溶解された、有機溶媒中に実質的に不溶である塩の形態で存在し、好ましくは、油中に溶解された前記PSは、適切な油ベース、好ましくはトリグリセリドベース、特に中鎖トリグリセリドまたは植物油中のカルシウム塩の形態にある方法を提供する。混合物を増強するために、さらなる成分が、この液体調製物に添加されてもよいことに注目すべきである。例えばホスファチジルコリン含量は、より多くのレシチンを添加することによって増加させてもよい。
【0119】
このようにして、本発明の方法によって生成されたPSは、ホスファチジルセリンの安定化粉末形態として、または固定化された油ベース液体調製物として得られ、どちらもホスホリパーゼ活性を実質的に欠く。
【0120】
本発明はまた、上記方法のいずれか一つによって調製された、物質の安定ホスファチジルセリン組成物も提供する。
【0121】
要するに、いくつかのメカニズムは、公知でも未知でも、PS崩壊の原因であると考えられている。公知のメカニズムのうち、次のものに注目することができる:(1)酵素加水分解およびトランスホスファチジル化であって、PAまたはPGを生じるもの;(2)リン脂質脂肪酸の一部または全部加水分解であって、対応してリソ−PSまたは脱アセチル化されたPS(GPS)を生じるもの;(3)ホスフェート基の除去であって、ジグリセリド(DAG)を生じるもの;(4)L−セリンカルボキシレート基の脱カルボキシル化であって、PEまたはほかのより複合した生成物を生じるもの;(5)リン脂質のヒドロペルオキシド化;および(6)空気、光などによって生じた、L−セリン頭基の第一アミン基の酸化。
【0122】
アミンに関して、特に第一アミンが酸化に対して非常に感受性が高い。このような酸化の生成物は多数あり、これらの同定はほぼ不可能である。したがってアミン−酸化に耐えうる安定化されたPSは、感受性の高い化学基を酸化から保護する能力を特徴とする添加剤の組込みによって生成された。酸化防止特徴を有するこれらの添加剤が、粉末PSならびに流体PSへ、特にソフトジェルカプセル中に充填された流体PSへ添加された。後者のものは、PS崩壊を極端に受けやすい。用いられた酸化防止剤は、0〜5,000ppmのレベルにおけるローズマリー抽出物、トコフェロール、およびアスコルビルパルミテート、および0〜200ppmのレベルにおけるBHA、BHT、およびTBHQからなっていた。合成または天然のほかの酸化防止剤または酸化防止剤のブレンドが、この発明中に組み込まれる。PSを崩壊から保護するために用いられる酸化防止剤のレベルは、少なくとも100ppm、好ましくは1,000−3,000ppmである。これらのカプセルならびにこれらのバルク材料は、室温で、および促進試験において、これらの安定性について分析された。このバルク材料は、室温で暗所の密閉容器中に貯蔵された。
【0123】
要するに、この発明の安定化PS調製物は、酵素崩壊の点で特に安定であることが証明され、固定化された生物触媒の使用、残留酵素非活性化、および酵素阻害剤の使用によって達成された。
【0124】
本明細書に記載された方法によって発生されたPSの安定性は、上記のような各々の崩壊経路の様々な崩壊生成物の監視を通して分析した。これらの生成物の存在は、31P−NMR、および通常のクロマトグラフィー方法(HPTLC、HPLC−ELSD、およびGC)によって測定された。すべての場合、このような崩壊マーカーの存在下において上昇は検知されず、これらの崩壊経路のどれも発生しえないという結論に導かれ、非常に安定なPSを生じた。
【0125】
したがって本発明は、3つの形態、すなわち物質の組成物、液体、または分散液のいずれか一つにおける安定ホスファチジルセリンの調製物であって、次の経路:酵素加水分解およびトランスホスファチジル化、リン脂質脂肪酸の一部または全部加水分解、ホスフェート基の除去、L−セリンカルボキシレート基の脱カルボキシル化、リン脂質ヒドロペルオキシド化、L−セリン頭基の第一アミン基の酸化の少なくとも一つによる崩壊に抵抗性のある調製物を提供する。
【0126】
開示され、記載されているが、この発明は、本明細書に開示された特定の実施例、工程段階、および材料に限定されないと理解すべきである。その理由は、このような工程段階および材料は、いくぶん変えることができるからである。同様に、本明細書において用いられている用語は、特定の実施形態を説明する目的でのみ用いられ、限定的であるよう意図されているわけではないことも理解すべきである。その理由は、本発明の範囲が、添付クレームおよびその同等物によってのみ限定されるからである。
【0127】
この明細書および添付クレームにおいて用いられている単数形「一つの(a)」、「一つのan」、および「その(the)」は、内容が明らかにほかのものを示していないかぎり、複数の指示物を包含することにも留意しなければならない。
【0128】
この明細書およびクレーム全体において、文脈がほかのことを要求していないかぎり、「含む(comprise)」という単語および変形例、例えば「含む(comprises)」、および「含んでいる(comprising)」は、記載された整数もしくは工程、または整数もしくは工程群を包含するが、あらゆるほかの整数もしくは工程、または整数もしくは工程群を除外しないことを意味すると理解される。
【0129】
次の実施例は、本発明の態様を実施するにあたって本発明者らによって用いられた技術を代表する。これらの技術は、本発明の実施のための好ましい実施形態の一例ではあるが、当業者なら、本発明の開示から考えて、本発明の精神および意図された範囲から逸脱することなく、数多くの修正を行なうことができることが分かるであろう。
【実施例】
【0130】
実施例1 − 固定化された酵素調製物を用いた、粉末形態における安定ホスファチジルセリンの調製
1.固定化された酵素の調製
この発明において、本発明者らは、いくつかの商品として入手しうるPLD、例えばStreptomyces sp.キャベツ、およびStreptomyces chromofuscusからのホスホリパーゼDを利用した。すべての場合、これらの酵素は高い反応性を示し、高品質のPSが合成された。最も重要なことは、ホスファチジン酸のレベルが通常低かったことである(データは示されていない)。
【0131】
いくつかのPLDを、様々な技術によって、様々な不溶性マトリックスをキャリヤーとして用いて固定化した。マトリックス固定化された、好ましくは界面活性剤コーティングされたホスホリパーゼを、第WO00/56869号に記載された方法にしたがって調製した。これは、参照して本明細書に完全に組み込まれる。酵素共有結合固定化のために設計された、商品として入手しうる不溶性マトリックスも用いた。例えばユーパーギット(Eupergit)エポキシ活性化されたマトリックス(ドイツ国、ローム・アンド・ハース)である。
【0132】
簡単に言えば、粗PLD酵素(300mg/Lタンパク質)を、不溶性無機または有機マトリックス(セリート、シリカゲル、アルミナ、またはポリプロピレン)4gを含有する1Lトリス緩衝液pH6.5中に溶解した。この溶液を、25℃で30分間攪拌棒を用いて激しく攪拌した。界面活性剤コーティングされ、固定化された酵素調製物の場合、非イオン性界面活性剤を、攪拌された酵素溶液へ一滴ずつ添加した。界面活性剤コーティングされ、固定化されたホスホリパーゼおよび固定化された粗ホスホリパーゼの両方を、10分間音波処理し、ついで25℃で8時間攪拌した。その結果生じた沈殿物を、濾過または遠心分離(12,000rpm、4℃)によって収集し、ついで−20℃で一晩冷凍および凍結乾燥した。
【0133】
表1に示されているように、これらのPLD固定化調製物は、L−セリンでのレシチンのトランスホスファチジル化によってホスファチジルセリンを首尾よく生成した。D−セリンもまた、これらの調製のために用いることができる。PS収率は常に30%以上であった。PSの様々なグレードを、レシチン出発原料に応じて生成することができる。最も重要なことは、固定化PLD調製物が、この方法において用いられたレシチン出発原料とは無関係に高い活性を示したことである(データは示されていない)。
【0134】
2.安定PS調製
L−セリン250g(フランス国レキシム(Rexim))を、適切な緩衝液(pH3.5−7)、例えば200mMのCaClを含有するシトレート緩衝液750mLで満たされた1リットル反応器に入れた。セリンの完全溶解後、分画された(fractionated)大豆レシチン(米国ソラエ(Solae)社)53gを、場合によりリン脂質の分散を補助するためにほかの有機溶媒、例えばヘキサン、酢酸エチル、ジエチルエーテルなどとともに添加した。この混合物を、20〜60℃の温度で0.5〜2時間攪拌し、反応媒質中にこのリン脂質を均一に分散させた。酵素調製物1.25g(反応2、PLD2、表1)を、反応媒質へ添加した。反応混合物を24時間攪拌し、ついで、酵素調製物が反応器の底部に沈殿するまで攪拌せずに放置した。リン脂質フラクションを含有する上部層を、反応器から除去した。ホスファチジルセリンがこのフラクションから得られ、適切な水溶液で洗浄し、過剰なセリンを除去した。得られたホスファチジルセリンは、主として酵素が固定化されたという事実によって、ほとんど酵素痕跡を含んでいなかった。
【0135】
この調製から、ホスファチジルセリン47gが、30%以上の純度で得られた。この手順を、表1に示されている酵素調製物(それぞれ1、2、3、および4)を用いて繰り返した。収率は、第一バッチについて示されているようなものであった。固定化された酵素調製物を、さらなるバッチ(それぞれ第二、第三、および第四バッチ)において再使用し、得られた結果もまた、表1に要約する。
【0136】

表1:固定化されたPLD調製物、反応条件、およびPS収率

実施例2 − 酵素非活性化
A.有機溶媒
不溶性マトリックスから漏れたかもしれないあらゆる残留酵素を非活性化するために、実施例1に記載されているように得られたPSを、非活性性有機溶媒、好ましくはメタノールまたはエタノールの存在下、20〜120℃の範囲の温度で、0.5〜10時間の適切な時間激しく攪拌した。
【0137】
有機溶媒は、PSを溶解させることができ、PS中に見られるあらゆる残留酵素へのこの溶媒の完全な接近を確実にする。選択された有機溶媒は、PSを完全に溶解するわけではなく、このようにして磨砕様方法を作り出し、溶媒がPSの少量のみ溶解することを可能にし、これは、あらゆる残留酵素の非活性化を確実にする。これらの条件下、非活性化方法の完了後、PSを濾過し、乾燥した。非活性化において用いられた有機溶媒がPSの有意量を溶解した時、PSは、標準的技術、例えば溶媒除去および乾燥によって、場合によりスプレー乾燥を用いた非活性化処理の完了後に得られた。これらの処理は、粉末および液体PS調製物の両方の分解を有意に減少させた。粉末PSの場合、当初PS濃度は約22%であり、4ヶ月の貯蔵後に有意な変化は観察されなかった。液体PSの場合、当初PS濃度は約22.67%であり、ここでもまた、4ヶ月の貯蔵後に有意な変化(0.02%の減少)は観察されなかった。
【0138】
表2は、加熱での有機溶媒(エタノール)非活性化後、非活性化時間の関数としての酵素活性の減少について記載している。
【0139】

表2:加熱での有機溶媒の非活性化

表3は、本発明者らによって調製された3つのPSバッチについて記載しており、極端に低い残留酵素活性を示している。
【0140】

表3:3つのPS調製物間の比較

次に本発明者らは、様々なPS製造業者によって生成されたほかのPS調製物を分析した。本発明者らは、PLDの残留酵素活性が、本発明者らによって調製されたPSの残留酵素活性と比較してかなり高いことを発見した。例えば、一つのこのような「よその(foreign)」PS調製物は、同様なグレードのPS調製物の2つのバッチにおいて0.0242および0.0196単位/mLを示した。
【0141】
B.EDTAを通した酵素非活性化 − 安定液体ホスファチジルセリンの調製
実施例1において得られた粉末PSを、1:1水:エタノール混合物の0.2M EDTA溶液中に分散し、25℃で10時間攪拌した。次に、ホスファチジルセリンを、n−へキサン250mLで抽出した。n−へキサン層を、水で二回洗浄した。MCT(95g)をn−へキサン溶液に添加し、n−へキサンの蒸発後、ホスファチジルセリン配合物の透明な油性流体が得られた。
【0142】
粉末PSは、実施例1の方法によって、カルシウム塩として得られた。これは、有機溶媒中に可溶でない。EDTAでの処理は、このPSにおいて二重の役割を果たす。一方で、これは、Ca+2イオンを掃去することによってPSを有機溶媒中に可溶にする。Ca+2イオンはNaによって置換され、その結果PSを可溶にし、このようにして液体形態が得られる。同時に、Ca+2はPLD触媒活性に対する補助因子であるので、Ca+2枯渇の結果、残留酵素の不活性化を生じる。
【0143】
適切なEDTA塩で処理されたPS調製物をさらに、新鮮な水溶液で洗浄し、PSは、濾過およびその後の乾燥によって得られた。
【0144】
結果として生じたPSは、安定化された粉末形態であるか、またはホスファチジルセリンの安定化された油ベース液体調製物として得ることができ、どちらもホスホリパーゼ活性を実質的に欠く。
【0145】
EDTAで処理された流体PSを、冷暗所の密閉容器に保持した。PS濃度は、ELS検出器を有するHPLCを通して、および31P−NMRを通して分析した。
【0146】
表4は、製造後まもなく、および監視された貯蔵の4ヶ月後に測定されたPS濃度を示している。
【0147】

表4:EDTA処理後のPS安定性(有機溶媒後の処理)

実施例3 − ホスホリパーゼD活性の測定
ホスホリパーゼD活性を、S.Katoらによって報告された修正方法を用いて、分光測光法によってアッセイした[Kato,S.ら、(1984年)Agric.Biol.Chem.,48,2181−2188]。
【0148】
(1)酵素単位の定義
ホスホリパーゼDの1酵素単位は、下に特定された条件下、基質から1分後にコリン1マイクロモルを放出する酵素の量として定義される。
【0149】
(2)試薬
1. 5%大豆レシチン(エピクロン(Epikuron)200、ホスファチジルコリン95%)エマルジョン
2. 5%ホスファチジルセリン調製物エマルジョン
3. 0.1モル/Lトリス−マレエート−NaOH緩衝液、pH5.5
4. 0.1モル/L塩化カルシウム溶液
5. 7.5%トリトン(Triton)X−100溶液
6. 1モル/Lトリス−HCl緩衝液中の0.05モル/LのEDTA、pH8.0
7. 着色試薬:コリンオキシダーゼ(Alcaligenes sp.から)3単位、ペルオキシダーゼ(ホースラディッシュから)6単位、フェノール1mg、および50ミリモル/L Hepes−NaOH緩衝液(pH7.4)4mL中の4−アミノ−アンチピリン0.6mg。
【0150】
8. 1.43μモル/mL(0.2g/L)の塩化コリン標準溶液
9. 0.01%酵素溶液。
【0151】
(3)手順
次の溶液を調製した。
【0152】
溶液A:試験管において、5%大豆レシチンエマルジョンおよび5%ホスファチジルセリンエマルジョン0.1mL、0.1モル/Lトリス−マレエート−NaOH緩衝液(pH5.5)0.1mL、0.1モル/L塩化カルシウム溶液0.05mL、および7.5%トリトンX−100溶液0.15mLをよく混合し、水浴中で37℃において5分間インキュベーションした。この溶液へ、酵素溶液0.1mLを添加し、正確に10分後、EDTA溶液0.2mLを添加し、インキュベーション管を、沸騰水中に5分間入れた。ついでこの管を除去し、室温に冷ました。
【0153】
溶液B:試験管において、5%ホスファチジルセリンエマルジョン0.1mL、0.1モル/Lトリス−マレエート−NaOH緩衝液(pH5.5)0.1mL、0.1モル/L塩化カルシウム溶液0.05mL、および7.5%トリトンX−100溶液0.15mLをよく混合し、水浴中で37℃において5分間インキュベーションした。この溶液へ、酵素溶液0.1mLを添加し、正確に10分のインキュベーション後、EDTA溶液0.2mLを添加し、この管を、沸騰水中に5分間入れた。ついでこの管を除去し、室温に冷ました。
【0154】
ブランク溶液:蒸留水
標準溶液 − 酵素溶液に代わる、それぞれ塩化コリン標準溶液
ついで着色試薬4mLを、4つの溶液の各々に添加し、よく混合し、37℃において20分間インキュベーションした。この反応物、ならびに標準溶液の光学密度を、ブランク溶液に対して500nm(光路1cm)において読取った。
【0155】
(4)酵素単位計算
ホスホリパーゼD活性(1mLあたりの単位)=(溶液AのΔE−溶液BのΔE)/標準のΔE×0.143:ブランク溶液に対する500nmにおける光学密度。
【0156】
実施例4 − 非固定化酵素および酵素非活性化を用いた、粉末形態における安定ホスファチジルセリンの調製
L−セリン250gを、200mMのCaClを含有する適切な緩衝液(pH3.5−7)、例えばシトレート緩衝液750mLで満たされた1リットル反応器に入れた。セリンの完全溶解後、分画された大豆レシチン53gを、場合によりリン脂質の分散を補助するためにほかの有機溶媒とともに添加した。この混合物を、20〜60℃の温度で0.5〜2時間攪拌し、反応媒質中にこのリン脂質を均一に分散させた。酵素1.25g(PLD)を、反応媒質に添加した。反応混合物を24時間攪拌した。リン脂質を含有する上部層を、反応器から除去した。ホスファチジルセリンがこの層から得られ、ついでこれを水溶液で洗浄した。ホスファチジルセリンをさらに、有機溶媒、好ましくはメタノールまたはエタノールで高温下、少なくとも0.5時間処理し、酵素のあらゆる痕跡を非活性化した。ホスファチジルセリンが、濾過または溶媒除去によって得られ、これを乾燥した。最終リン脂質フラクション収率は47gであった。このうち、60%以上がPSからなっていた。生成されたPSもまた、流体調製物の生成に用いた(下記参照)。流体および粉末調製物の両方を、生成物安定性について分析した。
【0157】
酵素非活性化後、流体(MCT中に溶解された)および粉末PSを、冷暗所の密閉容器中に保持した。PS濃度を、貯蔵前後に、ELS検出器を備えたHPLCを用いて、およびまた31P−NMRを通して分析した。7ヶ月(流体PSの場合)または7.5ヶ月(粉末PSの場合)の貯蔵後、非活性化処理(有機溶媒を通して高温で)後に、ほぼまったく(または1%未満)崩壊は発生しなかった。
【0158】
実施例5 − PS分散液
安定化されたPS分散液は、安定化ホスファチジルセリン(好ましくはホスホリパーゼ活性を実質的に欠く)を、適切な油ベース、好ましくはトリグリセリドベースおよび特に中鎖トリグリセリド(例えばMCTまたは魚油エチルエステル)または植物油中に、室温から80℃までの温度で分散することによって調製し、その結果として安定化された油ベースPS分散液を生じた。分散は、激しい攪拌、均質化、圧力均質化、およびほかの工業ブレンド方法によって得られた。
【0159】
これらの配合物を、バルク活性成分として、およびソフトジェルカプセル中のホスファチジルセリンの安定性についてチェックした。
【0160】
− ソフトジェルカプセルの調製
分散されたPSを、上記のように調製し、ソフトジェルカプセルの製造において用いた。これらは、ソフトジェルカプセル調製のための日常的な方法によって調製した。分散されたPSが入っているカプセルを、次の三つの異なる条件で貯蔵した:(1)室温で暗所の密閉容器中に;(2)35℃および60%RH(促進条件)で密閉容器中に;および(3)35℃および60%RHで(促進条件)でフタなし容器中に。室温で貯蔵されたカプセル(条件1)を、製造プロセスの終了時に、および4週間の貯蔵期間後に、これらのPS濃度についてテストした。促進条件で貯蔵されたカプセル(2および3)を、製造プロセスの終了時に、および1、2、3、および4週間の貯蔵期間後に、これらのPS濃度についてテストした。PS濃度を、ELS検出器を有するHPLCおよび/またはHPTLCを用いて、および31P−NMRを通して分析した。表5は、異なるカプセル中のPS濃度を示している。
【0161】

表5:分散されたPS調製物が入っているソフトジェルカプセル中のPS安定性

PS濃度に加えて、水およびグリセロールの含量も、製造の終了時にカプセル中でテストした。上記のように、カプセルの内容物によって吸収された水およびグリセロールは、PSの崩壊を促進することがある。水含量は、標準的カール・フィッシャー方法によってテストした。グリセロール含量は、標準的AOCS(アメリカ油化学者協会(American Oil Chemists Society))方法による滴定によってテストした。表6は、分散液から製造されたカプセルおよび流体PSから製造されたカプセル中の水およびグリセロール含量を示している。
【0162】

表6:分散液または流体PSから製造されたカプセル中の水およびグリセロール含量

実際、分散液調製物も、カプセルのPS内容物による水およびグリセロールの移動および吸収を最小限にすることにおいて有効であった。このことは、上記のほかの手段に加えて、カプセル中の安定化されたPSを生じる。
【0163】
実施例6 − その他の固相PS
安定化されたホスファチジルセリンはまた、高温でのみ流体でありかつ室温で固体であるPS調製物を作製することによっても提供される。この方法では、すべての崩壊反応が阻害される。
【0164】
これは、様々な手段によって達成された:
(a)PSの様々な塩、例えば半分散液を作るカルシウムまたはナトリウム塩を用いて;
(b)室温で固体であり、かつ高温において、カプセル充填プロセスを可能にするのに十分なほど流体である食用油を用いて;または
(c)様々な硬化性添加剤を用いて。
【0165】
上記実施例で得られたホスファチジルセリン調製物(2g)を、EDTA溶液で処理され、かつ上記のようにn−へキサン(80g)で洗浄されたホスファチジルセリンと混合した。大豆レシチン(12.26g)およびPKO(26.45g)を、この溶液に添加した。n−へキサンを、45℃で蒸発させた。最終材料は、45℃で流体でかつ室温で固体の濁った油である。
【0166】
実施例7 − 安定化性添加剤/酸化防止剤/光増感剤
上記のように、いくつかのメカニズムまたは現象が、PS崩壊の原因であると考えられる。その中に次のものがある:
1.酵素加水分解およびトランスホスファチジル化であって、PAまたはPGを生じるもの;
2.リン脂質脂肪酸の一部または全部加水分解であって、対応してリソ−PSまたは脱アシル化されたPS(GPS)を生じるもの;
3.ホスフェート基の除去であって、ジグリセリド(DAG)を生じるもの;
4.L−セリンのカルボキシレート基の脱カルボキシル化であって、PEまたはほかのより複合した生成物を生じるもの;
5.リン脂質のヒドロキシペルオキシド化;
6.L−セリン頭基の第一アミン基の酸化(空気、光などによる)。
【0167】
− リソ−PS、DAG、およびPEを結果として生じる崩壊
例えば、本発明の方法によって生成された安定化PSが入っているソフトジェルカプセルを、周囲条件(すなわち室温および非制御湿度)における4ヶ月の貯蔵後、異なる崩壊マーカーについて分析した。リソ−PS(0.68w/w%)、DAG(0.35w/w%)、およびPE(0.79w/w%)のレベルはごくわずかであり、このことは、このような副生物につながる崩壊経路のどれも発生しなかったことを示している。
【0168】
− PAおよびPG副生物を結果として生じる崩壊
上記分析方法はまた、酵素崩壊の点で、本発明の方法によって生成されたPS調製物の安定性を検証するためにも用いた。この崩壊経路は、副生物、例えばPAおよびPGを生じると推量される。周囲条件における4ヶ月の貯蔵後、PAおよびPGのレベルは、貯蔵前のレベル(PS生成後)と同じであり、それぞれ2.58および0.2w/w%であった。これらの生成物中の増加は検知されなかったので、本発明のPSは、その分解につながりうる酵素活性を実際に欠くと結論することができるであろう。
【0169】
− ヒドロペルオキシド化
低グレード生成物のもう一つの原因は、脂質のヒドロペルオキシド化である。これは、感受性の高い化合物、例えばPSの分解につながる。この酸化は、材料生成方法およびこの材料が受けた処理によることが多い。この酸化の主要な指標は、材料のサンプル中の過酸化物の同等物として滴定的に通常は測定される、過酸化物価(PV)と呼ばれる価である。
【0170】
本発明のPS調製物は、その当初の過酸化物価ならびに大きくなってゆく(developing)価について完全に分析した。この分析は、2つのPS調製物に対して実施した:酵素非活性化について処理された、および場合により酵素阻害剤、例えばEDTAで処理された調製物;ならびに固定化された酵素を用いて生成された調製物である。下に示された結果(表7)は、PSの生成方法およびその後の酵素非活性化処理の結果としての、酸化安定性の点に関する本発明のPSの高い安定性を証明している。
【0171】

表7:PS酸化安定性

この発明に記載された生成方法およびその後の様々な処理後、過酸化物価の増加は検知されず、このことは、ヒドロペルオキシド化に関する本発明のPS調製物の安定性を確認していることが分かる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
約1〜約99%(w/w)ホスファチジルセリンを含んでいる、物質の安定ホスファチジルセリン(PS)組成物。
【請求項2】
約1〜約99%(w/w)のホスファチジルセリン、約1〜約99%(w/w)のほかの機能性成分、約1〜約99%(w/w)のホスファチジルコリン(PC)、好ましくは約1〜約99%(w/w)のホスファチジルエタノールアミン(PE)、約1〜約99%(w/w)のホスファチジルイノシトール(PI)、約1〜約99%(w/w)のオメガ−3源、約1〜約99%(w/w)のオメガ−6源、および/または約1〜約99%(w/w)のステロールもしくはステロールエステルを含んでいる、請求項1に記載の物質の組成物。
【請求項3】
前記ホスファチジルセリンのわずか約1〜約5%しか、少なくとも6ヶ月、好ましくは少なくとも12ヶ月、より好ましくは少なくとも24ヶ月の貯蔵期間後に、分解されないことを特徴とする、請求項1または2に記載の物質の組成物。
【請求項4】
ホスホリパーゼ活性、特にホスホリパーゼD活性を実質的に欠くことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の物質の組成物。
【請求項5】
粉末形態にある、請求項1〜4のいずれか1項記載の物質のホスファチジルセリン組成物。
【請求項6】
前記ホスファチジルセリンが、有機溶媒中に実質的に可溶な塩、好ましくはナトリウム塩の形態で存在する、請求項1〜5のいずれか1項記載の物質のホスファチジルセリン組成物。
【請求項7】
前記PSナトリウム塩が、金属キレート化剤、好ましくはEDTAでのPS二価塩の処理によって得られる、請求項6に記載の物質のホスファチジルセリン組成物。
【請求項8】
前記ホスファチジルセリンが、有機溶媒中に実質的に不溶な塩、好ましくはカルシウム塩の形態で存在する、請求項1〜5のいずれか1項記載の物質のホスファチジルセリン組成物。
【請求項9】
油、好ましくは中鎖トリグリセリド中に溶解されている、請求項1〜7のいずれか1項記載の物質のホスファチジルセリン組成物を含んでいる、ホスファチジルセリンの安定液体調製物。
【請求項10】
約1〜約90%(w/w)のホスファチジルセリン、好ましくは約2.5〜約55%(w/w)を含んでいる、請求項9に記載の液体調製物。
【請求項11】
前記ホスファチジルセリンのわずか約1〜約5%しか、少なくとも6ヶ月、好ましくは少なくとも12ヶ月、より好ましくは少なくとも24ヶ月の貯蔵期間後に、分解されないことを特徴とする、請求項9または10に記載の液体ホスファチジルセリン調製物。
【請求項12】
さらに、追加の生物機能性成分、好ましくはレシチン、リン脂質、ビタミン、酸化防止剤、ミネラル、栄養タンパク質もしくはペプチド、ステロールおよびほかの誘導体、栄養炭水化物およびこれらの誘導体、アミノ酸、植物抽出物、発酵製品、グリセリド誘導体(モノ−およびジ−グリセリド)、多不飽和脂肪酸、およびオメガ−3および/またはオメガ−6脂質の少なくとも一つも含んでいる、請求項9〜11のいずれか1項記載の液体ホスファチジルセリン調製物。
【請求項13】
液体ベース、好ましくは脂質ベース、より好ましくは油ベース中に分散された、請求項1〜5および8のいずれか1項記載の物質の安定ホスファチジルセリン組成物を含んでいる、ホスファチジルセリンの安定分散液。
【請求項14】
約1〜約70%(w/w)ホスファチジルセリン、好ましくは約5〜45%(w/w)を含んでいる、請求項11に記載のホスファチジルセリン分散液。
【請求項15】
前記油ベースが、トリグリセリドベース、特に中鎖トリグリセリドベース、または植物油である、請求項13または14に記載のホスファチジルセリン分散液。
【請求項16】
さらに、追加の生物機能性成分、好ましくはレシチン、リン脂質、ビタミン、酸化防止剤、ミネラル、栄養タンパク質もしくはペプチド、ステロールおよびほかの誘導体、栄養炭水化物およびこれらの誘導体、アミノ酸、植物抽出物、発酵製品、グリセリド誘導体(モノ−およびジ−グリセリド)、多不飽和脂肪酸、およびオメガ−3および/またはオメガ−6脂質の少なくとも一つも含んでいる、請求項13〜15のいずれか1項記載のホスファチジルセリン分散液。
【請求項17】
前記分散液が、室温で固体であり、かつ高温で流体であり、ソフトジェルカプセル充填に適していることを特徴とする、請求項13〜16のいずれか1項記載のホスファチジルセリン分散液。
【請求項18】
食餌サプリメント、栄養補助食品、および/または薬品添加剤としての使用のための、請求項1〜8のいずれか1項記載の物質のホスファチジルセリン組成物。
【請求項19】
食餌サプリメント、栄養補助食品、および/または薬品添加剤としての使用のための、請求項9〜12のいずれか1項記載のホスファチジルセリン液体調製物。
【請求項20】
食餌サプリメント、栄養補助食品、および/または薬品添加剤としての使用のための、請求項13〜17のいずれか1項記載のホスファチジルセリン分散液。
【請求項21】
請求項1〜6のいずれか1項記載の物質のホスファチジルセリン組成物を含み、かつ場合によりさらに少なくとも一つの追加の活性成分も含んでいる食料品。
【請求項22】
請求項9〜12のいずれか1項記載のホスファチジルセリン液体調製物を含み、かつ場合によりさらに少なくとも一つの追加の活性成分も含んでいる食料品。
【請求項23】
請求項13〜17のいずれか1項記載のホスファチジルセリン分散液を含み、かつ場合によりさらに少なくとも一つの追加の活性成分も含んでいる食料品。
【請求項24】
請求項1〜8のいずれか1項記載の物質のホスファチジルセリン組成物を含み、かつ場合によりさらに少なくとも一つの追加の生物機能性成分、および/または少なくとも一つの製薬的に許容しうる添加剤、希釈剤、キャリヤー、または賦形剤も含んでいる製薬組成物。
【請求項25】
請求項9〜12のいずれか1項記載のホスファチジルセリン液体調製物を含み、かつ場合によりさらに少なくとも一つの追加の生物機能性成分、および/または少なくとも一つの製薬的に許容しうる添加剤、希釈剤、キャリヤー、または賦形剤も含んでいる製薬組成物。
【請求項26】
請求項13〜17のいずれか1項記載のホスファチジルセリン分散液を含み、かつ場合によりさらに少なくとも一つの追加の生物機能性成分、および/または少なくとも一つの製薬的に許容しうる添加剤、希釈剤、キャリヤー、または賦形剤も含んでいる製薬組成物。
【請求項27】
請求項1〜8のいずれか1項記載の物質のホスファチジルセリン組成物が入っているカプセルであって、前記カプセルが好ましくはソフトゼラチンカプセルであるカプセル。
【請求項28】
請求項9〜12のいずれか1項記載の液体ホスファチジルセリン調製物が入っているカプセルであって、前記カプセルが好ましくはソフトゼラチンカプセルであるカプセル。
【請求項29】
請求項13〜17のいずれか1項記載のホスファチジルセリン分散液が入っているカプセルであって、前記カプセルが好ましくはソフトゼラチンカプセルであるカプセル。
【請求項30】
認知力および学習能力の向上剤としての使用のための、請求項1〜8のいずれか1項記載の物質のホスファチジルセリン組成物。
【請求項31】
認知力および学習能力の向上剤としての使用のための、請求項9〜12のいずれか1項記載の液体ホスファチジルセリン調製物。
【請求項32】
認知力および学習能力の向上剤としての使用のための、請求項13〜17のいずれか1項記載のホスファチジルセリン分散液。
【請求項33】
物忘れ、特に年齢関連の物忘れの予防における使用のための、請求項1〜8のいずれか1項記載の物質のホスファチジルセリン組成物。
【請求項34】
物忘れ、特に年齢関連の物忘れの予防における使用のための、請求項9〜12のいずれか1項記載の液体ホスファチジルセリン調製物。
【請求項35】
物忘れ、特に年齢関連の物忘れの予防における使用のための、請求項13〜17のいずれか1項記載のホスファチジルセリン分散液。
【請求項36】
物質の安定ホスファチジルセリン組成物の調製方法であって、
a.L−セリンおよび場合により適切な有機溶媒とレシチンとの水性混合物を、固定化されたホスホリパーゼDの存在下に、適切な時間インキュベーションして、ホスファチジルセリンを生じる工程;
b.前記ホスファチジルセリンを含有する上部層を除去する工程;
c.標準的手段によって前記上部層からホスファチジルセリンを得る工程;
d.結果として生じたホスファチジルセリンを、適切な水溶液で洗浄し、過剰なL−セリンを除去する工程;
e.場合により、工程(d)で得られたホスファチジルセリンを、適切な有機溶媒、好ましくはエタノールで高温において洗浄する工程;および
f.工程(e)で得られたホスファチジルセリンを乾燥する工程;
を含む方法。
【請求項37】
さらに、適切な手段によって、得られたホスファチジルセリン中のあらゆる残留ホスホリパーゼ活性を非活性化させる工程も含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ホスホリパーゼが、不溶性マトリックス上に固定化され、場合により界面活性剤コーティングされ、工程(a)後、前記反応混合物は、ホスファリパーゼDが沈殿するまで放置される、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
ホスファチジルセリンの安定ホスファチジルセリン油ベース液体調製物の調製方法であって、請求項1〜7のいずれか1項記載の、または請求項36〜38のいずれか1項記載の方法によって得られた物質のホスファチジルセリン組成物を、適切な油ベース、好ましくは中鎖トリグリセリドまたは植物油中に溶解する工程を含む方法。
【請求項40】
ホスファチジルセリンの安定液体ベース分散液の調製方法であって、
− 請求項1〜5および8のいずれか1項記載の、または請求項34〜36のいずれか1項記載の方法によって得られた物質のホスファチジルセリン組成物を、適切な液体ベース、好ましくはトリグリセリドベース、および特に中鎖トリグリセリドまたは食用油、好ましくは魚油中に分散する工程を含む方法。
【請求項41】
請求項36〜38のいずれか1項記載の方法によって調製された、物質の安定ホスファチジルセリン組成物。
【請求項42】
次の経路:酵素加水分解およびトランスホスファチジル化、リン脂質脂肪酸の一部または全部加水分解、ホスフェート基の除去、L−セリンカルボキシレート基の脱カルボキシル化、リン脂質ヒドロペルオキシド化、L−セリン頭基(head−group)の第一アミン基の酸化の少なくとも一つによる崩壊へ抵抗性がある、物質の安定ホスファチジルセリン組成物。
【請求項43】
次の経路:酵素加水分解およびトランスホスファチジル化、リン脂質脂肪酸の一部または全部加水分解、ホスフェート基の除去、L−セリンカルボキシレート基の脱カルボキシル化、リン脂質ヒドロペルオキシド化、L−セリン頭基の第一アミン基の酸化の少なくとも一つによる崩壊へ抵抗性がある、安定液体ホスファチジルセリン調製物。
【請求項44】
次の経路:酵素加水分解およびトランスホスファチジル化、リン脂質脂肪酸の一部または全部加水分解、ホスフェート基の除去、L−セリンカルボキシレート基の脱カルボキシル化、リン脂質ヒドロペルオキシド化、L−セリン頭基の第一アミン基の酸化の少なくとも一つによる崩壊へ抵抗性がある、ホスファチジルセリンの安定分散液。


【公表番号】特表2007−506733(P2007−506733A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527572(P2006−527572)
【出願日】平成16年9月26日(2004.9.26)
【国際出願番号】PCT/IL2004/000895
【国際公開番号】WO2005/027822
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(504263439)エンジィモテック リミテッド (5)
【Fターム(参考)】