説明

ホスフェート誘導体

本発明に従って、以下のステップ(d)フェノール性ヒドロキシ化合物をアルキルα:ωジアルデヒド又は糖様ポリヒドロキシジアルデヒドと反応して、ヘミアセタールを形成し;(e)ステップ(a)からの生成物の末端アルデヒド基を水酸基と反応し;そしてステップ(b)から形成された水酸基をリン酸化して、フェノール性ヒドロキシ化合物のホスフェート誘導体を生成するステップの反応生成物を含むフェノール性ヒドロキシ化合物のホスフェート誘導体が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール性ヒドロキシ化合物のホスフェート誘導体及び該誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書中では、文献、文書、又は知識が参照又は考察される場合、当該参照又は考察は、該文献、文書、又は知識、或いはそれらの組み合わせが、優先日における一般的な常識であったということ、又は本明細書に係る問題を解決する試みに関与すると知られていたことを認めるものではない。
【0003】
以下の議論が、麻酔薬の活性化合物のデリバリーにおいて本発明のホスフェート誘導体の潜在的な使用に関する一方で、水溶性の改善、即座の活性、又は改善されたデリバリーが所望される場合、本発明がフェノール性水酸基を含む他の化合物、例えばアドレナリン(CAS51-43-4&99-45-6)及び鎮痛薬(CAS36322-90-4)にも適用可能であるということを理解される。
【0004】
理想的な麻酔薬は、スムーズにかつ迅速に麻酔状態を誘導し、次に使用中止の際に迅速な回復を可能にするであろう。当該麻酔薬はまた、使用に安全でありそして副作用を含まないが、単一の薬剤でこれらの特性の全てを有するものはないので、現在の慣用では薬剤の組合わせが使用されることが多い。
【0005】
プロポフォールは、極めて重要な静脈内導入薬であり、静脈バルビツール酸系催眠薬と同等の速さで麻酔状態をもたらすが、回復はより早い。患者は、術後すぐに良くなることを報告し、そして他の薬剤と比較してすぐに動くことができた。術後の吐き気及び嘔吐は一般的ではない。なぜなら、プロポフォールは、制吐作用を有することが報告されるからである。これらの理由のため、プロポフォールは、麻酔状態の導入と維持の両方として使用される日帰り手術において特に一般的な薬剤である。
【0006】
プロポフォールの重大な欠点はその脂溶性から生じ、溶解度を改善するより可溶性の脂質媒体、例えば中鎖トリグリセリド(クレモフォア)、水中油型乳濁液(Intralipid)、ポリオキシル35カストル油(水素付加カストル油)又は他の脂質乳濁システムを必要とする。
【0007】
過感受性反応は、プロポフォールについて報告されてきた。これらは、低血圧、紅潮、及び気管支痙攣を含み、それらは主に脂質溶媒クレモフォアのため生じると考えられる。
【0008】
見込みのある代替アプローチは、プロポフォールの水溶性誘導体であるプロポフォール・ホスフェートを使用することである。プロポフォール・ホスフェートの静脈内投与は、アルカリホスファターゼなどの血漿及び組織ホスファターゼの作用を介して本化合物を変換することを予期される。in vitroでのプロポフォール・ホスフェートの使用は、麻酔状態を誘導せず、そして、ホスフェート基がゆっくり加水分解するので親薬剤は放出されない。
【0009】
それゆえ、ある活性化合物のデリバリーを高めるために使用されるフェノール性ヒドロキシ化合物のさらなる誘導体への必要性がいまだに存在する。
【発明の開示】
【0010】
本発明の第一態様に従って、以下のステップ:
(a) フェノール性ヒドロキシ化合物を、アルキルα:ωジアルデヒド又は糖様ポリヒドロキシ・ジアルデヒドと反応して、ヘミアセタールを生成し:
(b) ステップ(a)から得た生成物の末端アルデヒド基を水酸基に還元し、及び
(c) ステップ(b)で形成された水酸基をリン酸化する
からの反応生成物を含むフェノール性ヒドロキシ化合物のホスフェート誘導体が提供される。
【0011】
以下の反応スキーム1及び2は、本発明の第一態様に記載される3個の反応ステップを記載する。該スキームの両方において、R1、R2、R3、R4、及びR5は、各々独立してH又はアルキル基から選ばれてもよい。反応スキームIにおいて、n及びmは、独立して0〜8の範囲である。反応スキーム2において、R6、R7、及びR8は、各々独立してH又はOHでありうる。
【0012】
【化1】

【0013】
【化2】

【0014】
一の好ましい実施態様では、ステップ(c)の生成物を、さらに両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、窒素官能基を有するアミノ酸、及び当該アミノ酸を多く含むタンパク質を含む群から選ばれる複合体形成剤とさらに反応する。
【0015】
本発明の第二態様に従い、以下のステップ:
(a) フェノール性ヒドロキシ化合物を、アルキルα:ωジアルデヒト又は糖様ポリヒドロキシ・ジアルデヒドと反応して、ヘミアセタールを生成し;
(b) ステップ(a)から得られた生成物の末端アルデヒド基を、水酸基に還元し;そして
(c) ステップ(b)において形成される水酸基をリン酸化する
を含むフェノール性ヒドロキシ化合物のホスフェート誘導体を製造する方法が提供される。
【0016】
一の好ましい実施態様では、ステップ(c)の生成物を、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、窒素官能基を有するアミノ酸、及び当該アミノ酸を多く含むタンパク質を含む群から選ばれる複合体形成剤と反応するステップ(d)をさらに含む。
【0017】
本発明の第三の態様に従って、以下のステップ:
(a) フェノール性ヒドロキシ化合物を、アルキルα:ωジアルデヒト又は糖様ポリヒドロキシ・ジアルデヒドと反応して、ヘミアセタールを生成し;
(b) ステップ(a)から得られた生成物の末端アルデヒド基を、水酸基に還元し;そして
(c) ステップ(b)において形成される水酸基をリン酸化して、フェノール性ヒドロキシ化合物のホスフェート誘導体を生成する
を含むフェノール性ヒドロキシ化合物の生物学的利用能を改善するための方法が提供される。
【0018】
本明細書中に使用される場合、「ホスフェート誘導体」は、ホスフェート基のリン原子に酸素を用いて共有結合される化合物をさす。ホスフェート誘導体は、遊離リン酸、その塩、2個のフェノール性ヒドロキシ化合物分子を含むジホスフェートエステル、及び1のフェノール性ヒドロキシ化合物と他のフェノール性ヒドロキシ化合物とを含む混合エステル、及び遊離ホスフェート酸素が、アルキル又は置換アルキル基との結合を形成するホスファチジル化合物の形態で存在してよい。
【0019】
本発明で使用される適切な複合体形成剤は、アルキル・アミノ/アミド・ベタイン、サルテイン、ホスホベタイン、ホスフィタイン(Phosphitaine)、イミダゾリマム(Imidazolimum)、及び直鎖モノ及びジカルボキシ両性電解質、四級アンモニウム塩、及びカチオン性アルコキシル化モノ及びジ-脂質アミン;及び窒素官能基を有するアミノ酸及び当該アミノ酸を多く含むタンパク質を含むクラスから選ばれる選択界面活性剤であってよい。好ましい複合体形成剤は、N-ラウリル・イミノ・ジ-プロピオネート及びアルギニンである。
【0020】
本発明中に使用するための窒素官能基を有する適切なアミノ酸は、グリシン、アルギニン、リジン、及びヒスチジンを含む。当該アミノ酸を多く含むタンパク質は、複合体形成剤として使用しても良い。例えばカゼインである。当該本組成物が、非限定的に吸入、経口摂取、経皮適用、点眼、又は坐薬を含む他の投与経路によりデリバリーされる必要があるとき、当該複合体形成剤は使用される。
【0021】
両性界面活性剤は、特異的なpH範囲で顕著な等電点を示す両性界面活性剤、又は全pH範囲にわたりカチオン性であり、かつ通常顕著な等電点を示さない双性界面活性剤であってもよい。当該両性界面活性剤は、三置換アミン、例えば以下の式:
NR91011
[式中、
9は、C6〜C22の直鎖又は分枝鎖が混じったアルキル・ラジカル及びそのカルボニル誘導体を含む群から選ばれ、
10及びR11は、H、CH2COOX、CH2CHOHCH2SO3X、CH2CHOHCH2OPO3X、CH2CH2COOX、CH2COOX、CH2CH2CHOHCH2SO3X、又はCH2CH2CHOHCH2OPO3Xを含む群から独立して選ばれ、そしてXは、H、Na、K、又はアルカノールアミンである。但し、R10とR11の両方がHであることはなく、
さらに、R9がRCOである場合、R10はCH3であってもよく、そしてR11は(CH2CH2)N(C24OH)-H2COPO3であってもよいか、或いはR10とR11は、一緒になってN(CH2)2N(C24OH)CH2COO-であってもよい。]
で表されるアミンである。
【0022】
市販されるものの例は、Henkel/Cognisにより販売されるデリファット(DERIPHAT)、Henkel/Cognisにより販売されるデヒトン(DEHYTON)、Goldschmidtにより販売されるテゴベタイン(TEGOBETAINE)、Rhone Poulencにより販売されるミラノール(MIRANOL)である。
【0023】
カチオン性界面活性剤、例えば四級アンモニウム化合物は、ヒドロキシ化合物薬剤のリン酸化誘導体、例えばトコフェリル・ホスフェートとの複合体を形成するであろう。カチオン性界面活性剤の例は、以下:
(a)RN+(CH3)3Cl-
(b)[R2+CH32SO42-
(c)[RCON(CH3)CH2CH2CH2+(CH3)224OH]2SO42-
(d)エトミーン(Ethomeens):RN[(CH2CH2O)xCH2OH][(CH2CH2O)yCH2OH]、[式中、x及びyは独立して1〜50の整数である。]
を含む。ここでRはC8〜C22の直鎖又は分枝鎖アルキル基又は混合アルキル基である。
【0024】
親水性及び疎水性官能基を含むシリコーン界面活性剤もまた使用されてもよい。例えば、ジメチコーンPGベタイン、アモジメチコーン、又はトリメチルシリルアモジメチコーンである。例えば、Goldschmidt Chemical Co.のアバイル9950(ABILE9950)である。疎水性物質は、C6〜C22の直線又は分岐アルキル又は混合アルキル、例えばフルオロアルキル、フルオロシリコーン、及び/又はその混合体でありうる。親水性部分は、カルボキシアルキル基又はスルホキシ・アルキル基のアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はアルカノールアミンの塩でありうる。つまり、スルタイン、ホスファタイン、若しくはホスホベタイン、又はその混合体である。
【0025】
典型的に、フェノール性ヒドロキシ化合物のホスフェート誘導体の複合体は、(1)フェノール性ヒドロキシ化合物の遊離リン酸を複合体形成剤で直接的に中和すること、又は(2)フェノール性ヒドロキシ化合物のホスフェート誘導体の混合ナトリウム塩を、複合体形成剤とin situ混合することにより作られる。
【0026】
プロポフォールは、本発明が適用されるフェノール性ヒドロキシ化合物の例である。本明細書中で使用されうるプロポフォールの形態は、以下:
・2,6-ジイソプロピルフェノール(CAS2078-54-8)
・プロポフォール・ホスフェート又はフェノール,2,6-ビス(1-メチルエチル)-,二水素ホスフェート(9CI)(CAS18351-38-7)
・フェノール,2,6-ビス(1-メチルエチル)-,二水素ホスフェート,二ナトリウム塩(9CI)(CAS250345-80-3)
アドレナリン及び鎮痛薬は、本発明において使用されうる他のフェノール性化合物の例である。
【実施例】
【0027】
本発明は、以下の非制限的な例を参照することによりさらに説明及び例示されるであろう。
実施例1-プロポフォールのホスフェート誘導体の製造
17.8g(0.1M)の2,6-ジイソプロピルフェノール(プロポフォール)を、良い攪拌機を備えた100mlフラスコ中に配置した。4.2gの炭酸水素ナトリウム及び3.4gの炭酸ナトリウムを23.2gの50%グルタルアルデヒド水溶液中に溶解した。該溶液を2,6-ジイソプロピルフェノールに加え、1時間激しく攪拌した。次に、攪拌を1時間続けた。水を蒸発させて、2,6-ジイソプロピルフェノールの乾燥ヘミアセタール誘導体(A)を与えた。Aを50mlのトルエン中に溶解し、次に7.8gのP410を加え、そして温度を40℃〜60℃の範囲に維持して、1時間混合液を攪拌した。50mlの水を注意深く加え、そして混合液を30分間攪拌して、全てのピロホスフェートを加水分解した。トルエン層を、分画ロートを使用して分離し、そして乾燥して2- (2,6-ジイソプロピルフェノキシ)-テトラヒドロピラン-6-イル,二水素ホスフェート(I)を生成した。
【0028】
実施例2-プロポフォールのホスフェート誘導体の製造
17.8g(0.1M)の2,6ージイソプロピルフェノール(プロポフォール)を良い攪拌機を備える100mlフラスコ中に配置した。4.2gの炭酸水素ナトリウム及び3.4gの炭酸ナトリウムを32.6gの50%トリヒドロキシペンタンジアル(trihydroxy pentandial)水溶液中に溶解した。該溶液を、2,6-ジイソプロピルフェノールに加え、1時間激しく攪拌した。攪拌を1時間続けた。水を蒸発させて、乾燥2,6-ジイソプロピルフェノールのヘミアセタール誘導体(B)を与えた。Bを50mlのトルエン中に溶解し、次に7.8gのP410を加え、そして混合液を1時間攪拌し、温度を40℃〜60℃の範囲に維持した。50mlの水を注意深く加え、そして混合液を30分間攪拌して、全てのピロホスフェートを加水分解した。トルエン層を分画漏斗を使用して分離し、そして乾燥して2-(2,6-ジイソプロピルフェノキシ)-3,4,5-トリヒドロキシ・テトラヒドロピランー6-イル,二水素ホスフェート(II)を生成した。
【0029】
実施例3-プロポフォールのホスフェート誘導体の製造
17.8g(0.1M)の2,6-ジイソプロピルフェノール(プロポフォール)をよい攪拌機を備える100mlフラスコ中に入れた。4.2gの炭酸水素ナトリウム及び3.4gの炭酸ナトリウムを12.8gの50%グリオキサール(glyoxyal)水溶液中に溶解した。当該溶液を、2,6-ジイソプロピルフェノールに加え、1時間激しく攪拌した。次に攪拌を1時間続けた。3.8gの水素化ホウ素ナトリウムを加え、そして混合液を1時間攪拌した。水を蒸発させて、乾燥2,6-ジイソプロピルフェノールのヘミアセタール誘導体(C)を与えた。Cを50mlのトルエン中に溶解し、次に7.8gのP410を加え、そして混合液を1時間攪拌し、温度を40〜60℃の範囲に維持した。25mlの水を注意深く加え、そして混合液を30分間攪拌して、全てのピロホスフェートを加水分解した。トルエン層を分画漏斗を使用して分離し、そして乾燥して2-(2,6-ジイソプロピルフェノキシ)-2-ヒドロキシ・エチルホスフェート(III)を生成した。
【0030】
実施例4-プロポフォールのホスフェート誘導体の複合体の製造
373g(1M)の二ナトリウムラウリル-イミノ-ジプロピオネートを2000mlの脱イオン水中に溶解し、そして50〜60℃に熱して、pH11〜12の透明溶液を形成した。実施例1からの358g(1M)の生成物Iを加え、よく攪拌して、pH8〜9で水溶液として二ナトリウム・ラウリル-イミノ-ジプロピオネート-2-(2,6-ジイソプロピルフェノキシ)テトラヒドロピラン-6-イル・二水素ホスフェート複合体(IV)を形成した。pHを適切な量のどちらかの要素を加えることにより調節してよい。
【0031】
実施例5 プロポフォールのホスフェート誘導体の複合体の製造
174gのアルギニンを1000mlの脱イオン水中に溶解した。実施例2からの406gの生成物IIを当該溶液に加え、よく攪拌してアルギニン2-(2,6-ジイソプロピルフェノキシ)-3,4,5-トリヒドロキシ・テトラヒドロピラン-6-イル-二水素-ホスフェート複合体(V)を、終pH6.5〜7.5の水溶液として生成した。
【0032】
実施例6-プロポフォールのホスフェート誘導体の複合体の製造
17g(0.1M)アルギニンを100mlの脱イオン水中に溶解した。実施例3由来の生成物III、31.8g(0.1M)を当該溶液に加え、よく攪拌して、アルギニン2-(2,6-ジイソプロピルフェノキシ)-2-ヒドロキシ・エチルホスフェート複合体(VI)を終pH6.5〜7.5を有する水性複合体として形成した。
【0033】
実施例7-プロポフォールのホスフェート誘導体の複合体の製造
373g(1M)の二ナトリウム・ラウリル-イミノ-ジプロピオネートを200mlの脱イオン水中で溶解し、そして50〜60℃に熱して、pH11〜12の透明溶液を形成した。実施例1の358g(1M)の生成物を加え、よく攪拌して二ナトリウム・ラウリル-イミノ-ジプロピオネート2-(2,6-ジイソプロピルフェノキシ)テトラヒドロピラン-6-イル・二水素ホスフェート複合体(VII)をpH8〜9で水溶液として形成した。pHを、適切な量のどちらかの要素を加えることにより調節してよい。溶液を次に24時間凍結乾燥して、複合体を乾燥粉末として産生した。
【0034】
実施例8-プロポフォールのホスフェート誘導体の複合体の製造
174gのアルギニンを200mlの脱イオン水中で溶解した。実施例2からの406gの生成物IIを該溶液に加え、よく攪拌して2-(2,6-ジイソプロピルフェノキシ)-3,4,5-トリヒドロキシテトラヒドロピラン-6-イル・二水素・ホスフェート・アルギニン複合体を終pH6.5〜7.5で生成した。該溶液を24時間凍結乾燥して複合体を乾燥粉末として産生した。
【0035】
実施例9-プロポフォールのホスフェート誘導体の複合体の製造
17g(0.1M)のアルギニンを20mlの脱イオン水中に溶解した。実施例3の31.8g(0.1M)の生成物IIIを加えてよく攪拌し、2-(2,6-ジイソプロピルフェノキシ)-2-イルヒドロキシ・エチルホスフェート複合体(IX)を終pH6.5-7.5を有する水性複合体として形成した。溶液を次に24時間凍結乾燥して複合体を乾燥粉末として産生した。
【0036】
実施例10-プロポフォールのホスフェート誘導体の複合体の製造
174gアルギニンを200mlの脱イオン水中に溶解した。実施例Iの358gの生成物Iを該溶液に加えて、よく攪拌し、2-(2,6-ジイソプロピルフェノキシ)-テトラヒドロピラン-6-イル二水素ホスフェート・アルギニン複合体(X)を終pH6.5〜7.5で産生した。0.3Mの2,6-ジーイソプロピルフェノールを加え、高せん断攪拌で十分乳濁化した。該溶液を24時間凍結乾燥して、当該複合体と遊離2,6-ジ-イソプロピルフェノールとの混合体である生成物を産生した。当該混合体は、静脈内で使用されるとき、麻酔薬として作用した。遊離2,6-ジイソプロピルフェノールは、乳濁化状態において迅速な麻酔作用に利用され、そして当該複合体の加水分解後の2,6-ジイソプロピルフェノールのゆっくりとしたデリバリーに利用される。
【0037】
本明細書中及び添付のクレーム中で使用される「含む」という単語及び「含む」という単語の形は、バリアント又は追加を除くようには特許請求される発明を制限しない。
本発明の改変及び改良は、当業者に容易に明らかであるであろう。そうした改変及び改良は、本発明の範囲内にあるとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ:
(a) フェノール性ヒドロキシ化合物を、アルキルα:ωジアルキルアルデヒド又は糖様ポリヒドロキシ・ジアルデヒドと反応してヘミアセタールを生成し;
(b) ステップ(a)からの生成物上の末端アルデヒド基を、水酸基に還元し;及び
(c) ステップ(b)で形成された水酸基をリン酸化して、フェノール性ヒドロキシ化合物のホスフェート誘導体を生成する
からの反応生成物を含むフェノール性ヒドロキシ化合物のホスフェート誘導体。
【請求項2】
化合物(I)[式中、R1、R2、R3、R4、及びR5が各々独立してH又はアルキル基から選ばれてもよく、そしてn及びmが独立して0〜8の範囲内である]の構造を有する、請求項1に記載のフェノール性ヒドロキシ化合物のホスフェート誘導体。
【請求項3】
化合物(II)[式中、R1、R2、R3、R4、及びR5が各々独立してH又はアルキル基から選ばれてもよく、そしてR6、R7、及びR8は各々独立してH又はOHでありうる]の構造を有する、請求項1に記載のフェノール性ヒドロキシ化合物のホスフェート誘導体。
【請求項4】
前記ステップ(c)の生成物が、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、窒素官能基を有するアミノ酸、及び当該アミノ酸に富むタンパク質を含む群から選ばれる複合体形成剤と反応された、請求項1に記載のフェノール性ヒドロキシ化合物のホスフェート誘導体。
【請求項5】
前記フェノール性ヒドロキシ化合物が、プロポフォール又はプロポフォール誘導体である、請求項1に記載のフェノール性ヒドロキシ化合物のホスフェート誘導体。
【請求項6】
前記プロポフォールのホスフェート誘導体が、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、窒素官能基を有するアミノ酸、及び当該アミノ酸に富むタンパク質を含む群から選ばれる複合体形成剤と反応された、請求項5に記載のフェノール性ヒドロキシ化合物のホスフェート誘導体。
【請求項7】
前記複合体形成剤がアルギニンである、請求項6に記載のフェノール性ヒドロキシ化合物のホスフェート誘導体。
【請求項8】
前記複合体形成剤が、二ナトリウム・ラウリル-イミノ-ジプロピオネートである、請求項6に記載のフェノール性ヒドロキシ化合物のホスフェート誘導体。
【請求項9】
前記アルキルα:ωジアルデヒド又は糖様ポリヒドロキシ・ジアルデヒドが、グルタルアルデヒド、トリヒドロキシ・ペンタンジアル、グリオキサール、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる、請求項1に記載のフェノール性ヒドロキシ化合物のホスフェート誘導体。
【請求項10】
前記フェノール性ヒドロキシ化合物が、アドレナリン、麻酔薬、及びそれらの混合体から選ばれる、請求項1に記載のフェノール性ヒドロキシ化合物のホスフェート誘導体。
【請求項11】
以下のステップ:
(a) フェノール性ヒドロキシ化合物を、アルキルα:ωジアルキルアルデヒド又は糖様ポリヒドロキシ・ジアルデヒドと反応してヘミアセタールを生成し;
(b) ステップ(a)からの生成物上の末端アルデヒド基を、水酸基に還元し;及び
(c) ステップ(b)で形成された水酸基をリン酸化して、フェノール性ヒドロキシ化合物のホスフェート誘導体を生成する
を含むフェノール性ヒドロキシ化合物のホスフェート誘導体の製造方法。
【請求項12】
(d) 前記ステップ(c)の生成物を、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、窒素官能基を有するアミノ酸、及び当該アミノ酸に富むタンパク質を含む群から選ばれる複合体形成剤と反応するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記フェノール性ヒドロキシ化合物が、プロポフォール又はプロポフォールの誘導体である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記プロポフォールのホスフェート誘導体を、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、窒素官能基を有するアミノ酸、及び当該アミノ酸に富むタンパク質を含む群から選ばれる複合体形成剤と反応するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記複合体形成剤がアルギニンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記複合体形成剤が、二ナトリウム・ラウリル-イミノ-ジプロピオネートである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記アルキルα:ωジアルデヒド又は糖様ポリヒドロキシ・ジアルデヒドが、グルタルアルデヒド、トリヒドロキシ・ペンタンジアル、グリオキサール、及びそれらの混合体からなる群から選ばれる、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
以下のステップ:
(a) プロポフォール又はプロポフォール誘導体を、アルキルα:ωジアルデヒド又は糖様ポリヒドロキシ・ジアルデヒドと反応してヘミアセタールを生成し;
(b) ステップ(a)からの生成物上の末端アルデヒド基を、水酸基に還元し;及び
(c) ステップ(b)で形成された水酸基をリン酸化して、プロポフォールのホスフェート誘導体又はプロポフォールの誘導体を生成する、
からの反応生成物を含む、プロポフォールのホスフェート誘導体又はプロポフォールの誘導体。
【請求項19】
前記ステップ(c)からのホスフェート誘導体が、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、窒素官能基を有するアミノ酸、及び当該アミノ酸に富むタンパク質を含む群から選ばれる複合体形成剤と反応される、請求項18に記載のプロポフォールのホスフェート誘導体又はプロポフォールの誘導体。
【請求項20】
前記複合体形成剤がアルギニンである、請求項19に記載のプロポフォールのホスフェート誘導体又はプロポフォールの誘導体。
【請求項21】
前記複合体形成剤が二ナトリウム・ラウリル-イミノ-ジプロピオネートである、請求項19に記載のプロポフォールのホスフェート誘導体又はプロポフォールの誘導体。
【請求項22】
前記アルキルα:ωジアルデヒド又は糖様ポリヒドロキシ・ジアルデヒドが、グルタルアルデヒド、トリヒドロキシ・ペンタンジアル、グリオキサール、及びその混合体からなる群から選ばれる、請求項18に記載のプロポフォールのホスフェート誘導体又はプロポフォールの誘導体。
【請求項23】
プロドラッグとして使用される、請求項1〜8のいずれか1項に記載のフェノール性ヒドロキシ化合物のホスフェート誘導体。
【請求項24】
麻酔薬として使用される、請求項1〜8のいずれか1項に記載のフェノール性ヒドロキシ化合物のホスフェート誘導体。
【請求項25】
以下のステップ:
(a) フェノール性ヒドロキシ化合物を、アルキルα:ωジアルキルアルデヒド又は糖様ポリヒドロキシ・ジアルデヒドと反応してヘミアセタールを生成し;
(b) ステップ(a)からの生成物上の末端アルデヒド基を、水酸基に還元し;及び
(c) ステップ(b)で形成された水酸基をリン酸化して、フェノール性ヒドロキシ化合物のホスフェート誘導体を生成する
を含むフェノール性ヒドロキシ化合物の生物学的理利用能を改良する方法。

【公表番号】特表2006−523622(P2006−523622A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504008(P2006−504008)
【出願日】平成16年4月14日(2004.4.14)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000491
【国際公開番号】WO2004/092187
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(503129590)バイタル ヘルス サイエンシズ プロプライアタリー リミティド (11)
【Fターム(参考)】