説明

ホスホン酸エステル含有二成分塗装系、その製造及びその使用

本発明は、成分(a)として1種以上のポリイソシアネート、成分(b)として、成分(a)と反応する、1種以上のオリゴマー及び/又はポリマー化合物、成分(c)として、ホスホン酸ジエステル及びジホスホン酸ジエステルからなる群から選択される1種以上のホスホン酸エステルを含む、二成分塗装系であって、(i)成分(b)が成分(a)と反応し得る全てのオリゴマー及び/又はポリマー化合物を含み、二成分塗装系中に存在し、(ii)成分(b)が、成分(b)の全質量に対して、15質量%以下の、イソシアネートと反応し得るアミノ基を有するオリゴマー及び/又はポリマー化合物を含む、二成分塗装系に関する。本発明の更なる目的は、二成分塗装系の製造方法、クリアコート、特に、自動車多層塗装におけるクリアコートとしての、前記塗装系の使用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二成分塗装系、その製造、及び特に自動車産業におけるクリアコートとしての使用に関する。
【0002】
独国特許第4344063号から、水中における分散安定性を上昇させるための基としての水性バインダー混合物中におけるホスホン酸官能基の使用は公知である。遊離基付加重合における、遊離ホスホン酸基を含むポリウレタンマクロモノマーと不飽和モノマーとの反応の目的、並びにそれに続く、製品と更なる成分との更なる処理によりバインダー分散液を得る目的について開示する。このようにして、バインダーポリマーの骨格上に直接遊離ホスホン酸基を含み、それにより水性バインダー分散液のアニオン安定化を示す、水性バインダー系が得られる。
【0003】
塗料化学における、ホスホン酸又はその酸性エステルの他の機能は、独国特許出願公開第102004060966(A1)号に開示されている。このような化合物は、イソシアネートとヒドロキシル含有ポリアクリレートとの反応を安定化させるための添加剤として、他のリン酸、有機酸塩化物、及び硫酸又はスルホン酸と共に、そこで用いられている。ホスホン酸又はジホスホン酸のジエステルの使用は、そこに開示されていない。
【0004】
ホスホン酸又はその誘導体の使用を含む、自動車産業のためのコーティングの製造のための他の方法が、独国特許出願公開第19650478(A1)号に開示されている。従来のリン酸塩処理及び/又は従来の陰極蒸着腐食防止コーティングのための代替としてそこで提案されたものが、二重結合含有ホスホン酸又は官能性ホスホン酸エステルのホモポリマー又はコポリマーのタイコートの金属シートへの応用である。この場合、基材上で吸収されない官能基によって、存在する新規な腐食阻害コートのポリマーが分子間/分子内で、又は塗料の次のコートに架橋し得る。
【0005】
イソシアネートを主成分とする硬化剤及び基礎的系からなる、従来の全ての二成分塗装系の不都合は、二成分を混合した後の急速な反応である。この不都合は、パイプラインシステム及び生産工程方式のために単に特定の予備時間を必要とする賦形剤の工業用コーティングの場合に、増加する程度まで明らかである。結果として、特に二成分塗装系を用いて、完成したコーティング製剤のポットライフ(すなわち、処理可能性の持続)が重要因子となる。更に、基礎的系のバインダー成分と硬化成分の適合性は特に重要である。公知の系を用いて、このような関係においては、正確な整合が必要であるような、該成分の間に不適合がある場合があるという結果を伴い適合性のスペクトルが未だに制限されている。更に、クリアコート膜を製造するのに適している全く同じ二成分系は、環境の影響に関する良好な特性プロフィールと硬度、良好な光学的品質及び効果的なひっかき抵抗性を組み合わせているべきである。
【0006】
従って、本発明の目的は、良好なポットライフにより区別され、同時に良好な外観のみでなく十分な硬度を保証する、非常に普遍的な二成分コーティング材料を提供することである。更に、本発明の更なる目的は、新規補助剤の使用により、一般的な二成分クリアコート材料のポットライフ及び適合性を向上させることである。
【0007】
驚くべきことに、成分(a)として1種以上のポリイソシアネート、
成分(b)として、成分(a)と反応する、1種以上のオリゴマー及び/又はポリマー化合物、
成分(c)として、ホスホン酸ジエステル及びジホスホン酸ジエステルからなる群から選択される1種以上のホスホン酸エステルを含む、二成分塗装系であって、
(i)成分(b)が、二成分塗装系中に存在し、成分(a)と反応する全てのオリゴマー及び/又はポリマー化合物を含み、
(ii)成分(b)が、成分(b)の全質量に対して、15質量%以下の、イソシアネート反応性アミノ基を有するオリゴマー及び/又はポリマー化合物を含む、二成分塗装系が加工された場合に、得られたコーティングの部分において、良好なポットライフ、非常に良好な光学的特性及び非常に良好な微小押込み硬さを示すことが明らかとなった。
【0008】
「二成分塗装系」は、硬化を引き起こす化学反応が、二成分(元のコーティング材料及び硬化剤)の混合により開始するものである(DIN55945:1996−09)。本発明においては、成分(a)は硬化剤として作用し、成分(b)は、硬化剤と反応する、元のコーティング成分として作用する。本発明の成分(c)は、本発明の二成分塗装系中において、触媒として、及び/又は共反応体として存在し得るので、硬化剤として直接分類することはできない。従って、二成分塗装系の概念は、もっぱら成分(a)及び(b)の存在をベースとする。
【0009】
成分(a)としては、それぞれが、少なくとも2個、好ましくは3個のイソシアネート官能基を有する1種以上のポリイソシアネートを用いることが可能である。
【0010】
2個のイソシアネート官能基を有するポリイソシアネート(a)の具体例は、テトラメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート、ω,ω’−ジプロピルエーテルジイソシアネート、シクロヘキシル1,4−ジイソシアネート、シクロヘキシル1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシル1,2−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート、1,5−ジメチル−2,4−ジ(イソシアナト−メチル)ベンゼン、1,5−ジメチル−2,4−ジ(イソシアナトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリメチル−2,4−ジ(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリエチル−2,4−ジ(イソシアナトメチル)ベンゼン、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタン4,4’−ジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート及びジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネートである。
【0011】
2個以上のイソシアネート官能基を有するポリイソシアネート(a)の更なる具体例は、ノナントリイソシアネート(NTI)等のトリイソシアネート、並びに前記ジイソシアネート及びトリイソシアネート(a)を主成分とするポリイソシアネート(a)、特にイソシアヌレート、ビウレット、アロファネート、イミノオキサジアジンジオン、ウレタン、カルボジイミド、尿素及び/又はウレトジオン基を含み、有利には、2〜5、好ましくは2.2〜4.0、特には2.5〜3.8個のNCO官能基を有するオリゴマーである。少なくとも2個の遊離イソシアネート官能基を有する、一部がブロックされたポリイソシアネートを用いることも可能である。
【0012】
特に好ましくは、成分(a)として、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート及び対応するオリゴマー化ジイソシアネートのようなアルキレンジイソシアネートが用いられ、非常に好ましくは、それらから形成される三量体化ジイソシアネート(イソシアヌレート)である。
【0013】
成分(b)は、成分(a)と反応する、1種以上のオリゴマー又はポリマー化合物からなる。
【0014】
成分(b)の意味における「オリゴマー」化合物は、本明細書において、3〜10個のモノマー単位からなる化合物を意味する。一方、「ポリマー」化合物は、少なくとも11個のモノマー単位からなる化合物である。本発明の化合物の目的のため、オリゴマー化合物は、架橋剤及びバインダーとしての重合化合物とされる。
【0015】
成分(b)は、成分(a)のイソシアネート基に対して反応性である。成分(b)は、例えば、ヒドロキシル基又はチオール基のようなイソシアネート反応性基を介してこれを達成する。成分(b)は、好ましくは少なくとも2個、更には少なくとも3個、更には少なくとも4個のこのような基を含む。中でも特に好ましいイソシアネート反応性基はヒドロキシル基である。
【0016】
成分(b)としては、ヒドロキシ官能性架橋剤又はポリエステル及び/又はポリ(メタ)アクリレートを主成分とするバインダーを用いることが好ましい。本明細書において、「(メタ)アクリレート」なる表現は、アクリレートのみならず、メタクリレートをも含み、「(メタ)アクリル酸」なる表現は、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を含む。
【0017】
ヒドロキシ官能性架橋剤又はバインダーを成分(b)として用いる場合、それらは、好ましくは、ポリイソシアネート成分との効果的な架橋を確実にし、よって、得られたコーティングにおいて十分な硬度を確実にするOH価を有する。50〜300、特には100〜250、好ましくは150〜250mg KOH/gの成分(g)のOH価を有するポリエステル及び/又はポリ(メタ)アクリレートバインダー又は架橋剤が特に好ましい。ヒドロキシル価(OH価)は、アセチル化における1gの物質により結合する酢酸の量と等価な水酸化カリウムのmg数を表わす。測定の過程で、試料を、無水酢酸のピリジンで煮沸し、生成した酢酸を、水酸化カリウム溶液を用いて滴定する(DIN53240−2)。
【0018】
成分(b)の化合物は、好ましくは約30以下、更に好ましくは2〜18g KOH/gの成分(b)の化合物の酸価を有する。この酸価は、成分(b)のそれぞれの化合物1gを中和するのに消費される水酸化カリウムのmg数を表す(DIN ENISO2114)。
【0019】
成分(b)として特に好ましく適切であるのは、分子あたり、好ましくは少なくとも2個、更に好ましくは少なくとも3個、特には少なくとも4個のヒドロキシル基を有するヒドロキシル含有架橋剤又はバインダーである。架橋剤又はバインダーは、一級及び/又は二級ヒドロキシル基を有していてもよく、一級ヒドロキシル基を有するものであり、適切な場合のみ、さらに二級ヒドロキシル基を有するものが好ましい。ヒドロキシル基を有する架橋剤又はバインダーの中で、ヒドロキシル含有ポリエステル(b1)及びヒドロキシル含有ポリ(メタ)アクリレート(b2)が特に好ましい。
【0020】
本発明の二成分塗装系を製造するのに、特に適したヒドロキシル含有ポリエステル(b1)は、各場合、ポリスチレン標準物質に対するゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定した、500〜30000g/mol、好ましくは1000〜10000g/mol、更に好ましくは1000〜5000g/molの数平均分子量Mnを有するものである。
【0021】
m1)ジカルボン酸及び/又はポリカルボン酸又はそれらのエステル化可能な誘導体、同時に場合によりモノカルボン酸、
m2)ポリオール、同時に場合によりモノオール、及び
m3)場合により、更に改質成分
を反応させることにより得られるポリエステルを用いることが好ましい。
【0022】
これに関連し、モノオール及びモノカルボン酸を用いずに製造したポリエステルを用いることが特に好ましい。
【0023】
成分(m1)として用いることができるポリカルボン酸として言及し得る具体例は、芳香族、脂肪族及び脂環式ポリカルボン酸である。成分(m1)としては、芳香族及び/又は脂肪族ポリカルボン酸を用いることが好ましい。
【0024】
適切なポリカルボン酸の具体例は、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロ及びテトラブロモフタル酸等のハロフタル酸、アジピン酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、トリシクロデカンジカルボン酸、エンドエチレンヘキサヒドロフタル酸、樟脳酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロブタンテトラカルボン酸等である。脂環式ポリカルボン酸は、そのシス型又はトランス型のいずれか、又は両型の混合物として用いることができる。また、例えば、1〜4個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、又は1〜4個の炭素原子を有するヒドロキシアルコールとのそれらのモノエステル又はポリエステルのような、前記ポリカルボン酸のエステル化可能な誘導体が適切である。例えば、さらなる可能性は、更に前記酸の無水物を用いることである。
【0025】
場合によりポリカルボン酸と共に用いることができるモノカルボン酸の具体例は、安息香酸、tert−ブチル安息香酸、ラウリン酸、イソノナン酸、天然油の水素化脂肪酸である。
【0026】
ポリオール(m2)は、3個以上のヒドロキシル基を有するジオール、また、ポリオールを含む。
【0027】
ヒドロキシル含有ポリエステル(b1)を製造するための適切なジオール(m2)の具体例は、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリメチルペンタンジオール及びエチルブチルプロパンジオールである。更に、直鎖状又は分岐鎖状のポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール及び/又はポリ(オキシブチレン)グリコール等の脂肪族ポリエーテルジオール、並びにポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)グリコール等の混合ポリエーテルジオールも適切である。ポリエーテルジオールは、通常、ポリスチレン標準物質に対するGPCにより測定することができる400〜3000g/molの数平均モル質量Mnを有する。
【0028】
ジオールとしては、更に、2−アルキル−2−フェニルプロパン−1,3−ジオール等の芳香族又はアルキル芳香族ジオール、若しくは例えばエーテル官能基を有するビスフェノール誘導体を用いることも可能である。
【0029】
更なるジオールとして適切なものは、ジオールとヒドロキシカルボン酸とのエステルであり、用いることができるジオールは前述したものである。
【0030】
ヒドロキシカルボン酸の具体例は、ヒドロキシピバル酸又はジメチロールプロパン酸である。
【0031】
少なくとも3個のヒドロキシル基を有するポリオールの具体例は、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ホモペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアネート、1,2,4−ブタントリオール、プロパン−及びヘキサン−トリオール、及びトリスヒドロキシメチル(エチル)エタン酸等のトリヒドロキシカルボン酸である。少なくとも3個のOH基を有するポリオールは、単独で又は混合物として用いることができる。場合により、トリオールは、例えば、ブタノール、オクタノール、ラウリルアルコール、シクロヘキサノール、tert−ブチルシクロヘキサノール、並びにエトキシ化及び/又はプロポキシ化フェノール等の1価アルコールと共に用いることができる。
【0032】
ヒドロキシル含有ポリエステル(b1)を製造する成分(m3)として特に適切なものは、ポリエステルの官能基に対して反応性である基を有する化合物である。改質成分(m3)としては、ジエポキシド化合物、また、場合によりモノエポキシド化合物を用いることが可能である。適切な成分(m3)の具体例は、独国特許出願公開第4024204(A)号の第4頁4〜9行に開示されたものである。
【0033】
ヒドロキシル含有ポリエステル(b1)の製造は、例えば、独国特許出願公開第4024204(A)号の第4頁50〜65行に開示されたような、公知のエステル化により実施される。
【0034】
この反応は、通常、場合により、例えば、オクチル酸リチウム、酸化ジブチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、パラ−トルエンスルホン酸等の適切なエステル化触媒の存在下、180〜280℃の温度で実施される。
【0035】
ヒドロキシル含有ポリエステル(b1)の製造は、通常、共沸剤として少量の適切な溶媒の存在下に実施される。用いられる共沸剤は、例えば、特にキシレンのような芳香族炭化水素、特に、(環状)脂肪族炭化水素、例えばシクロヘキサンである。しかし、更に、無溶媒的に、ポリエステルを製造することも可能である(バルクでの反応)。
【0036】
成分(b2)として用いられるヒドロキシル含有(メタ)アクリレートコポリマーは、好ましくは、各場合、ポリスチレン標準物質に対するGPCにより測定した、1000〜30000g/mol、好ましくは1000〜15000g/molの数平均分子量を有する。
【0037】
ヒドロキシル基、及び場合により酸基を含む(メタ)アクリレートコポリマー(b2)としては、示されたOH価、酸価及び分子量を有する全ての(メタ)アクリレートコポリマーが適している。
【0038】
成分(b2)としては、少なくとも1種の重合開始剤の存在下、有機溶媒又は溶媒混合物中でのエチレン性不飽和モノマーの重合により得ることができる(メタ)アクリレートコポリマーを用いることが好ましい。
【0039】
重合に用いられる、エチレン性不飽和モノマー及び/又はその混合物は、得られるオリゴマー又はポリマーが、平均して少なくとも2個、更には少なくとも3個、特に好ましくは少なくとも4個のヒドロキシル基を含む程度でヒドロキシル含有モノマーを含まなければならない。
【0040】
本発明において用いられるヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレート樹脂については、特に、(メタ)アクリル酸のエステル又はこのような(メタ)アクリル酸エステルの混合物を用いて製造することが可能である。具体例は、アルキル基中に20個以下の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、エチルヘキシル、ステアリル及びラウリルアクリレート及びメタクリレート、並びにシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタン(メタ)アクリレート及びtert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートのような脂環式(メタ)アクリル酸エステルである。しかし、好ましくは400〜700g/molの数平均分子量Mnを有するエチルトリグリコール(メタ)アクリレート及びメトキシオリゴグリコール(メタ)アクリレート、若しくは他のエトキシ化及び/又はプロポキシ化ヒドロキシル非含有(メタ)アクリル酸誘導体を用いることも可能である。
【0041】
分子あたり少なくとも1個のヒドロキシル基を含む、エチレン性不飽和モノマーの具体例としては、一級及び/又は二級ヒドロキシル基を含む、アクリル酸、メタクリル酸又は他のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。これらのエステルは、酸によりエステル化されたアルキレングリコールに由来し、又は酸とアルキレンオキシドとの反応により得ることができる。用いられる、ヒドロキシル含有エチレン性不飽和モノマーは、好ましくは、ヒドロキシル基が20個以下、好ましくは10個以下、更に好ましくは6個以下の炭素原子を含むアクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシルアルキルエステルである。
【0042】
この種のヒドロキシアルキルエステルの具体例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシステアリルアクリレート及びヒドロキシステアリルメタクリレートが挙げられる。エタクリル酸、クロトン酸、及び分子あたり約6個以下の炭素原子を有する同様の酸等の他の不飽和酸の対応するエステルを同様に使用することができる。
【0043】
エチレン性不飽和モノマーとして、更に、例えばトリメチロールプロパンモノアリルエーテル等の、オレフィン性不飽和ポリオールを用いることも可能である。
【0044】
他のモノマーと共重合し得るエチレン性不飽和モノマーは、酸基を含むモノマーであってもよく、好ましくは、分子あたり1個のカルボキシル基を含むモノマーである。当然、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を用いて製造することが特に好ましい。あるいは、好ましくは、分子中に6個以下の炭素原子を有する他のエチレン性不飽和カルボン酸を用いることが可能である。このような酸の具体例としては、エタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸が挙げられる。
【0045】
ヒドロキシル含有ポリ(メタ)アクリレートに取り込むための、更に適切な共重合し得るエチレン性不飽和モノマーの具体例は、スチレン、α−アルキルスチレン及びビニルトルエンのようなビニル芳香族炭化水素である。
【0046】
本発明において用いられるヒドロキシル含有ポリ(メタ)アクリレート(b2)は、好ましくは、少なくとも1種の重合開始剤の存在下、有機溶媒又は溶媒混合物中で製造される。用いられる有機溶媒及び重合開始剤は、ポリアクリレート樹脂の製造のための通常の溶媒及び重合開始剤である。
【0047】
有用な溶媒の具体例としては、酢酸ペンチル、ブチルグリコール、2−メトキシプロパノール、n−ブタノール、メトキシブタノール、n−プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリメチロールプロパン、エチル2−ヒドロキシプロピオネート及び3−メチル−3−メトキシブタノール、更に、エチルエトキシプロピオネート、イソプロポキシプロパノール、メトキシプロピルアセテート等のプロピレングリコールを主成分とする誘導体が挙げられる。
【0048】
有用な重合開始剤としては、例えば、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート(TBPEH)、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル及びtert−ブチルパーベンゾエート等の遊離基を形成する開始剤が挙げられる。開始剤は、モノマー全質量に対して、好ましくは2質量%〜25質量%、更に好ましくは4質量%〜15質量%の量で用いられる。
【0049】
重合は、80〜160℃、好ましくは110〜160℃の温度で適切に実施される。溶媒としては、酢酸ペンチル、n−ブタノール、エトキシエチルプロピオネート及びイソプロポキシプロパノールを用いることが好ましい。
【0050】
ヒドロキシ官能性ポリ(メタ)アクリレート(b2)を製造するためのモノマーは、好ましくは、得られるポリアクリレート樹脂溶液が好ましくは80質量%〜60質量%の固形分を含むような濃度で重合される。重合が比較的高い希釈レベルで進行する場合、前記固形分は、溶媒の蒸発除去により、好ましくもたらされる。
【0051】
しかし、先行技術から公知の二成分塗装系は、架橋剤又はバインダーとして、アミノコーティングオリゴマー又はポリマー化合物を含む場合があり、例えば、このような化合物は、本発明の組成物中、微量でのみ用いられる。従って、(b)として用いられる化合物にイソシアネート反応性アミノ基を含むオリゴマー又はポリマー化合物が含まれる場合、これらの化合物は、成分(b)全質量に対して、15質量%以下、好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下、非常に好ましくは3質量%以下で存在する。特に、二成分コーティング組成物の延長されたポットライフに値を挿入する場合、組成物は、成分(b)全質量に対して、3質量%以下、更に好ましくは2質量%又は1質量%以下のアミノ基によりイソシアネート基と反応し得るアミノ含有オリゴマー又はポリマー化合物を含み、特には、これらを含まない。「アミノ基」なる用語には、例えば、N−ヒドロキシアルキル又はN−アルコキシアルキル基を含む置換アミノ基も含まれる。
【0052】
成分(c)としては、ホスホン酸ジエステル及びジホスホン酸ジエステルは、好ましくは、非環式ホスホン酸ジエステル、環式ホスホン酸ジエステル、非環式ジホスホン酸ジエステル及び環式ジホスホン酸ジエステルからなる群から選択される。
【0053】
非環式ホスホン酸ジエステル(c)は、好ましくは一般式(I):
【化1】

を有する。
【0054】
一般式(I)において、置換基R1及びR2は互いに同一又は異なっており、好ましくは同一である。
【0055】
置換基R1及びR2は、下記
−1〜12個、好ましくは1〜8個、特には1〜4個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐鎖状アルキル、3〜8個、好ましくは3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキル、及び5〜10個、好ましくは6〜10個の炭素原子を有するアリール、並びに
−アルキルアリール、アリールアルキル、アルキルシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリールシクロアルキル、シクロアルキルアリール、アルキルシクロアルキルアリール、アルキルアリールシクロアルキル、アリールシクロアルキルアルキル、アリールアルキルシクロアルキル、シクロアルキルアルキルアリール及びシクロアルキルアリールアルキル(各場合、存在するアルキル、シクロアルキル及びアリール基は、前記数の炭素原子を含む)からなる群から選択される。
【0056】
基R1及びR2は置換されているか、又は置換されておらず、特に、酸素、硫黄、窒素、リン及びケイ素、好ましくは酸素、硫黄及び窒素からなる群から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0057】
好ましい環式ホスホン酸ジエステル(c)は同様に式(I)から誘導される。しかし、環式ホスホン酸ジエステルの場合は、基R1及びR2は二価基であると解釈され、基R1の原子と基R2の原子と間の共有結合、若しくは酸素原子、置換された、特に酸素置換された、又は置換されていない硫黄原子、置換された、特にアルキル置換された窒素原子、置換された、特に酸素置換されたリン原子、置換された、特にアルキル置換及びアルコキシ置換されたケイ素原子からなる群から選択される二価結合基によって結合する。
【0058】
好ましい非環式ジホスホン酸ジエステル(c)は、一般式(II):
【化2】

[式中、基R1及びR2は式(I)と同じ定義を有する]を有する。
【0059】
環式ホスホン酸ジエステルについてと同様の方法で、好ましい環式ジホスホン酸ジエステル(c)は非環式ジホスホン酸ジエステルから誘導され、基R1及びR2は、ホスホン酸ジエステルについて記載したように互いに結合している。
【0060】
基R1及びR2、並びに環式化合物の場合に存在する二価結合基についての適切な置換基としては、ホスホン酸ジエステル及びジホスホン酸ジエステル(c)の作用に影響を及ぼさず、本発明の混合物における硬化反応を阻害せず、所望でない二次反応を誘発しない全ての基及び原子が挙げられる。適切な置換基の具体例は、ハロゲン原子、ニトリル基又はニトロ基であり、好ましくはハロゲン原子であり、特にフッ素原子、塩素原子及び臭素原子である。
【0061】
基R1及びR2は好ましくは非置換である。
【0062】
基R1及びR2は、好ましくはフェニル、メチル及びエチルからなる群から選択される。特に好ましくは、メチル又はフェニルが用いられる。
【0063】
一般式(I)の非環式ホスホン酸ジエステル(c)又は一般式(II)の非環式ジホスホン酸ジエステルを用いることが好ましい。これらの中で特に好ましいのは、ジアルキルホスホネート及びジアリールホスホネートの使用である。
【0064】
特に好ましくは、一般式(I)の非環式ホスホン酸ジエステル(c)の基R1及びR2は、フェニル、メチル及びエチルからなる群から選択される。更に好ましくは、メチル又はフェニルを用いる。
【0065】
特に適切な、一般式(I)のホスホン酸ジエステル(c)の一例は、当業者(完全に正確ではない)によりジメチルホスファイトとして言及されるジメチルホスホネートである。ジアリールホスホネートのうち、ジフェニルホスホネートが特に好ましい。
【0066】
本発明の好ましい実施態様によれば、成分(c)は、成分(b)の質量に対して、1質量%〜25質量%、更に好ましくは1質量%〜15質量%、特に好ましくは2質量%〜10質量%の質量比で用いられる。
【0067】
本発明によれば、二成分コーティング組成物は、必須成分(a)、(b)及び(c)に加え、成分(a)、(b)及び(c)とは異なる更なる成分(d)を含んでもよい。成分(a)、(b)、(c)及び(d)の合計が本発明の二成分塗装系を構成する。このような成分の具体例は、UV安定剤、充填材、消泡剤、乳化剤、湿潤剤、接着促進剤、光開始剤、遊離基捕捉剤、流動制御剤、レオロジー補助剤及び光安定剤等の通常のコーティング添加剤及び補助剤である。しかし、成分(d)には、例えば、溶媒又は顔料も含まれる。しかし、架橋剤、バインダー及び/又は触媒補助剤が成分(a)、(b)又は(c)のいずれかの定義に含まれない限り、成分(d)には架橋剤、バインダー及び/又は触媒補助剤が含まれる。しかし、好ましくは、成分(d)は架橋剤又はバインダーでない。添加剤及び補助剤は(d)は、広く変化し得、当業者に公知の有効量で加えられる。成分(a)には、最終的に、製造工程の理由で成分(a)、(b)及び(c)に存在するが、 対応する成分の製造のための触媒等の、成分(a)、(b)及び(c)の定義に含まれない化合物も含まれる。
【0068】
驚くべきことに、本発明によれば、アミノ含有イソシアネート反応性架橋剤又はバインダーとのあらゆる相互作用と独立して、成分の相溶性の改善が得られるため、同時に、得られる塗膜の光学的性質の改善を得ることが可能であることがわかった。本発明の目的が達成されるという事実にもかかわらず、架橋剤又はバインダー成分(b)がイソシアネート反応性アミノ基を含まなくてよいことは特に驚くべきことであった。更に、本発明の二成分塗装系は、例えば、シリル含有架橋剤又はバインダー等の自己縮合性架橋剤又はバインダーを含む必要がない。本発明の二成分塗装系は、好ましくは、15質量%未満、更に好ましくは10質量%未満、非常に好ましくは5質量%未満の、シリル基により自己縮合する自己架橋性架橋剤又はバインダーを含む。本発明の好ましい二成分塗装系は、自己架橋性架橋剤又はバインダーを含まない。
【0069】
本発明者の今日までの知識によれば、加えたホスホネート成分(c)は水分と反応し、その結果、ポリイソシアネートの、例えば、所望でないゲル化を引き起こす凝縮物との二次反応を抑制することができる。一方、ホスホン酸エステルは、架橋剤として作用することなく、リン−水素結合の全体わたってポリイソシアネートに加えるか、又はポリイソシアネートを用いて錯体形成を起こすことができる。一方、このようにして作成された添加剤又は錯体は、二成分コーティング材料についてポットライフの延長を達成し得るように、遊離ポリイソシアネートの反応性に良好な影響を発揮できる。一方、ホスホン酸エステル及びポリイソシアネートの付加物又は錯体は、成分(b)に関して相溶性の改善をもたらすことができる。このようにして、非常に極性、非常に反応性の強力に架橋性であるヒドロキシル官能性架橋剤及び/又はバインダーの使用でさえ、液体中又は硬化塗装系中での所望でない曇り、若しくはポットライフ中の急激な減少なしで可能である。
【0070】
更に、本発明に従って得られたペイントフィルムの微小押込み硬さの改善は、特に、高温でのホスホン酸エステルの可能なエステル交換反応に起因し得、ここで、加水分解されたホスホン酸エステルは、架橋反応において、成分(b)として用いられるヒドロキシ官能性架橋剤又はバインダーと反応する。
【0071】
本発明の二成分塗装系を希釈するための溶媒としては、芳香族であるか、及び/又はエステル基を含む非プロトン性溶媒を用いることが好ましい。
【0072】
本発明は、更に、成分(a)、(b)及び(c)を均一に混合する工程による本発明の二成分塗装系の製造方法であって、好ましくは、工程(A)において、成分(b)及び(c)、場合により成分(d)又は成分(d)の一部の予備混合物(V1)を製造し、工程(B)において、この予備混合物V1を、成分(a)と、又は成分(a)の予備混合物(V2)と、場合により成分(d)又は成分(d)の一部と混合する方法に関する。
【0073】
実際、その製造工程の結果として、成分(b)は、場合により他の補助剤と共に、有機溶媒又は溶媒混合物中に既に溶解又は分散している。言い換えると、成分(b)は、既に、添加剤又は他の補助剤、すなわち成分(d)の化合物との予備混合物として存在する場合がある。
【0074】
成分(a)は、その結果、成分(d)の定義に含まれる有機溶媒中に存在する場合がある。同様のことが成分(c)にもあてはまる。
【0075】
前記工程の代替え案として、成分(a)も、成分(c)、場合により、成分(d)又は成分(d)の一部との予備混合物として存在し得、それに続き、成分(b)、場合により、成分(d)又は成分(d)の一部との混合物と混合してもよい。
【0076】
一般的に言えば、この場合、成分(a)及び(b)の間で増大する、ポットライフ及び相溶性への良好な影響が、成分(c)を混合するまで現れないので、成分(c)の非存在下に成分(a)及び(b)を混合することは不利である。
【0077】
添加前に、前述したような成分は、まず十分に混合され、成分(a)及び(b)の混合比は、所望の化学量論を考慮し、イソシアネート基に対して反応性である成分(b)中の基の量、及び成分(a)中のイソシアネート基の量により与えられる。本発明によれば、イソシアネート基に対する、イソシアネート反応性基、特にはヒドロキシル基の好ましく用いられるモル比は1:08〜1:15であり、特に好ましくは1:0.9〜1:1.3である。
【0078】
更に、本発明は、ポットライフの延長の目的のために、1種以上のポリイソシアネート、及び2つ以上のイソシアネート反応性基を有する1種以上のオリゴマー又はポリマー化合物を含む二成分塗装系中、成分(c)として前述されたホスホン酸ジエステル及びジホスホン酸ジエステルの使用を提供する。ポットライフの延長とは、同一組成であるが、ホスホン酸ジエステル又はジホスホン酸ジエステルを使用せずに、又は加えずに製造した塗装系のポットライフと比較して、ポットライフが延長されていることを意味する。
【0079】
本発明は、クリアコート、特に、自動車多層塗装におけるクリアコートとしての、本発明の二成分塗装系の使用をも提供する。
【0080】
本発明により製造された二成分塗装系は、噴霧、浸漬法、圧延又はナイフコーティング等の公知の方法により塗布することができる。コーティングされる基材は、既に他のペイント塗料、特に、3回塗り又は4回塗りの自動車仕上げの対応するペイント塗料を備えている。本発明の二成分塗装系は、ベースコート膜に、いわゆるウェット・オン・ウェット法により塗布され、次いで、両方のペイントフィルムが共に硬化される場合、クリアコートとして特に適切である。
【0081】
本発明の二成分塗装系の硬化は、温度を上昇させることによって促進させることができる。硬化は、好ましくは50℃〜170℃の範囲で、更に好ましくは80℃〜150℃の範囲で実施される。
【0082】
このようにして製造して得られるクリアコート膜の膜厚は、好ましくは20μm〜60μmであり、更に好ましくは25μm〜45μmである。
【0083】
本発明のコーティング組成物は、例えば、自動車業界における、再仕上げのため、又はトップコートとしてのクリアコート膜を製造するために用いることができる。
【0084】
以下の実施例は、限定することなく本発明を説明する。
【0085】
実施例
製造例1(ヒドロキシ官能性アクリル樹脂A1)
反応容器にコンデンサを備え付け、窒素を充填した。酢酸ペンチル720.86質量部を導入し、攪拌しながら135℃に加熱した。
【0086】
添加する2種の混合物を製造する。混合物1は、エチルヘキシルメタクリレート483.13質量部、スチレン260.7質量部及び4−ヒドロキシブチルアクリレート789.9質量部からなる。
【0087】
混合物2は、酢酸ペンチル92.09質量部及びtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート(TBPEH)153.4質量部からなる。
【0088】
導入した反応混合物を135℃まで加熱した後、混合物2を285分かけて徐々に加えた。混合物2の添加開始の15分後、混合物1の添加を開始した。混合物1を、240分かけて均一な速度で徐々に加えた。混合物2の完全な添加に続き、後重合のために、反応混合物を135℃で120分間攪拌した。
【0089】
生成物の固体の割合は65.8%であり、酸価は2.3mg KOH/g(固体生成物に対して)であり、粘度は18dPas(23℃において)であった。ヒドロキシル価は200g KOH/gであった。
【0090】
製造例2(ヒドロキシル官能性アクリル樹脂A2)
反応容器にコンデンサを備え付け、窒素を充填した。酢酸ペンチル720.86質量部を導入し、攪拌しながら135℃に加熱した。
【0091】
添加する2種の混合物を製造する。混合物1は、エチルヘキシルメタクリレート498.5質量部、スチレン283.7質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート728.53質量部、及びアクリル酸23.01質量部からなる。
【0092】
混合物2は、酢酸ペンチル92.09質量部及びTBPEH 153.4質量部からなる。
【0093】
導入した反応混合物を135℃まで加熱した後、混合物2を285分かけて徐々に加えた。混合物2の添加開始の15分後、混合物1の添加を開始した。混合物1を、240分かけて均一な速度で徐々に加えた。混合物2の完全な添加に続き、後重合のために、反応混合物を135℃で120分間攪拌した。
【0094】
生成物の固体の割合は65.7%であり、酸価は11.6mg KOH/g(固体生成物に対して)であり、粘度は15dPas(23℃において)であった。ヒドロキシル価は185g KOH/gであった。
【0095】
製造例3(ヒドロキシル官能性アクリル樹脂A3)
反応容器にコンデンサを備え付け、窒素を充填した。酢酸ペンチル720.86質量部を導入し、攪拌しながら135℃に加熱した。
【0096】
添加する2種の混合物を製造する。混合物1は、エチルヘキシルメタクリレート368.10質量部、スチレン460.12質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート452.45質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート230.06質量部、及びアクリル酸23.01質量部からなる。
【0097】
混合物2は、酢酸ペンチル92.02質量部及びTBPEH 153.4質量部からなる。
【0098】
導入した反応混合物を135℃まで加熱した後、混合物2を285分かけて徐々に加えた。混合物2の添加開始の15分後、混合物1の添加を開始した。混合物1を、240分かけて均一な速度で徐々に加えた。混合物2の完全な添加に続き、後重合のために、反応混合物を135℃で120分間攪拌した。
【0099】
生成物の固体の割合は68.2%であり、酸価は14.02mg KOH/g(固体生成物に対して)であり、粘度は6.8dPas(23℃において)であった。ヒドロキシル価は186g KOH/gであった。
【0100】
実施例1〜4(異なるジメチルホスホネート量を有する本発明のクリアコート−微小押込み硬さ)
第1表中の質量部の塗料用原材料を連続して混合し、均質化して基本組成物を製造した。
【0101】
第1表
【表1】

【0102】
ByK 331は、Byk Chemieのシリコーンを主成分とする表面添加剤であり、Byk ES−80は、Byk Chemieの静電的に噴霧可能な、コーティング材料の伝導度を上昇させるための添加剤であり、Tinuvin 292及びTinuvin 384は、Ciba Spezialitaetenchemieの、コーティング材料のために特に開発された光安定剤である。
【0103】
用いられる硬化剤は、ヘキサメチレンジイソシアネートを主成分とするポリイソシアネートBasonat HI 190(BASF AGから購入)であった。各場合、第1表に示す基本組成物100質量部に対し、以下に示す質量部の硬化剤を加えた:
試験番号1:38.5
試験番号2:38.1
試験番号3:37.7
試験番号4:37.2
【0104】
実施例1〜4の二成分クリアコートをテストパネルに塗布した。これらの各パネルを、標準的な、公知の陰極に蒸着した、熱硬化した電気塗装、従来の公知の熱硬化したプライマーコート、及びBASF Coating AGの、市販の、溶媒を主成分とする銀又は黒のベースコートの皮膜でコーティングし、80℃、10分間の初期乾燥に供した。ベースコート及びクリアコートの皮膜を、共に140℃で22分間乾燥した。得られたベースコートは7.5μmの膜厚を有し、クリアコートは40μmの膜厚を有していた。
【0105】
微小押込み硬さについての得られたテストパネルの試験は、得られたフィルムの微小押込み硬さへのジメチルホスホネートの良好な影響を示した。更に、外観における大幅な改善を観察することが可能であった。
【0106】
第2表
【表2】

【0107】
微小押込み硬さ(ASTM E 384(1999)に従って測定)において明らかな改善が観察された。
【0108】
実施例5〜7(異なるジメチルホスホネート量を有する本発明のクリアコート−ポットライフの延長)
基本組成物を製造するために、第3表のコーティング材料のための原材料の質量部を、連続して混合し、均質化した。
【0109】
第3表
【表3】

【0110】
ByK 331は、Byk Chemieのシリコーンを主成分とする表面添加剤であり、Byk ES−80は、Byk Chemieの静電的に噴霧可能な、コーティング材料の伝導度を上昇させるための添加剤であり、Tinuvin 292及びTinuvin 384は、Ciba Spezialitaetenchemieの、コーティング材料のために特に開発された光安定剤である。
【0111】
用いられる硬化剤は、ヘキサメチレンジイソシアネートを主成分とするポリイソシアネートBasonat HI 190(BASF AGから購入)であった。各場合、第3表に示す基本組成物の100質量部に対し、以下に示す質量部の硬化剤を加えた:
試験番号5:36
試験番号2:34
試験番号3:32
【0112】
外観についての得られた試験領域の外観検査は、得られたフィルムの表面平滑におけるジメチルホスホネートに由来する良好な影響を示した(第4表)。ポットライフを同様に測定した(第4表)。ここで示されたより多くの良好な影響でさえ、ジメチルホスホネートによって引き起こされた。
【0113】
第4表
【表4】

【0114】
ポットライフは密閉容器内で測定した。容器を規則正しい間隔で、混合物がもはや液体でなくなるまで30分間攪拌しながら、基本組成物及び硬化剤の混合物を観察した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(a)として1種以上のポリイソシアネート、
成分(b)として、成分(a)と反応する、1種以上のオリゴマー及び/又はポリマー化合物、
成分(c)として、ホスホン酸ジエステル及びジホスホン酸ジエステルからなる群から選択される1種以上のホスホン酸エステルを含む、二成分塗装系であって、
(i)成分(b)が、二成分塗装系中に存在し、成分(a)と反応する全てのオリゴマー及び/又はポリマー化合物を含み、
(ii)成分(b)が、成分(b)の全質量に対して、高くても15質量%の、イソシアネート反応性アミノ基を有するオリゴマー及び/又はポリマー化合物を含む、二成分塗装系。
【請求項2】
成分(c)が、ジアルキルホスホネート及びジアリールホスホネートからなる群から選択される、請求項1に記載の二成分塗装系。
【請求項3】
成分(c)が、ジメチルホスホネート、ジエチルホスホネート及びジフェニルホスホネートからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の二成分塗装系。
【請求項4】
成分(c)が、成分(b)の質量に対して、1質量%〜25質量%の質量割合、更に好ましくは1質量%〜15質量%の質量割合で用いられる、請求項1から3までのいずれか1項に記載の二成分塗装系。
【請求項5】
成分(b)が、少なくとも2個のヒドロキシル基を有するポリエステル、又は少なくとも2個のヒドロキシル基を有するポリ(メタ)アクリレートである、請求項1から4までのいずれか1項に記載の二成分塗装系。
【請求項6】
成分(b)のヒドロキシル価が、100〜250mgKOH/gの成分(b)である、請求項5に記載の二成分塗装系。
【請求項7】
成分(b)が、成分(b)の全質量に対して、高くても5質量%、好ましくは高くても3質量%の、イソシアネート反応性アミノ基を有するオリゴマー又はポリマー化合物を含む、請求項1から6までのいずれか1項に記載の二成分塗装系。
【請求項8】
成分(a)がジイソシアネート又はジイソシアネートのオリゴマーである、請求項1から7までのいずれか1項に記載の二成分塗装系。
【請求項9】
前記ジイソシアネートのオリゴマーが、イソシアヌレート又はウレトジオンである、請求項8に記載の二成分塗装系。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の二成分塗装系の製造方法において、
成分(a)、(b)及び(c)を均一に混合し、
工程(A)において、成分(b)及び(c)、場合により成分(d)又は成分(d)の一部の予備混合物(V1)を製造し、
工程(B)において、予備混合物V1を、成分(a)と、又は成分(a)、場合により成分(d)又は成分(d)の一部の予備混合物(V2)と混合することを含む製造方法。
【請求項11】
成分(a)、(b)及び/又は(c)が、成分(d)又は成分(d)の一部との予備混合物の形態で用いられる、請求項10に記載の二成分塗装系の製造方法。
【請求項12】
成分(d)が溶媒からなり、場合により、更に通常のコーティング添加剤及び補助剤を含む、請求項10又は11に記載の二成分塗装系の製造方法。
【請求項13】
クリアコートとしての、好ましくは自動車多層塗装のクリアコートとしての、請求項1から9までのいずれか1項に記載の二成分塗装系の使用。
【請求項14】
ポットライフを延長するために1種以上のポリイソシアネート(a)、及び2つ以上のイソシアネート反応性基を有する1種以上のオリゴマー又はポリマー化合物(b)を含む、二成分塗装系における、請求項1から9までのいずれか1項に記載のホスホン酸ジエステル及びジホスホン酸ジエステルの使用。

【公表番号】特表2010−521575(P2010−521575A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500124(P2010−500124)
【出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【国際出願番号】PCT/EP2008/002291
【国際公開番号】WO2008/116607
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(599076424)BASFコーティングスジャパン株式会社 (59)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス アクチェンゲゼルシャフト (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings AG
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】