説明

ホットストリップミルにおける板幅方向の板厚差制御方法

【目的】ホットストリップミルの仕上圧延機において、出側に板幅方向の板厚測定器を設置して、圧延中に仕上圧延機の出側における板幅方向の板厚差を希望値に制御する。
【構成】ホットストリップミル仕上圧延機で出側に板幅方向の板厚測定器を設置し、圧延中に板幅中央と板幅各部の板厚差の測定値と希望値との誤差を各スタンドに分配し板幅方向の板厚差遺伝係数を用いて、板幅全体として誤差が零になるように制御する、または板幅中央と作業側の板幅各部の板厚差と、板幅中央と駆動側の板幅各部の板厚差とを独立に制御する。さらに、これらの組み合わせもある。
【効果】ホットストリップミルの仕上圧延機の出側において、板幅方向各部の板厚差を従来よりも正確にまた精密に制御できる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【産業上の利用分野】
【0001】
本発明は金属等を圧延するホットストリップミルに係わり、特に仕上圧延機の出側における板幅方向の板厚差を希望値に制御するための板幅方向の板厚差制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットストリップミルの仕上圧延機(タンデムミル)における圧延中の板クラウン制御については、公開特許公報(A)、平3−193206(以下資料1とする)、特許第3432381号(以下資料2とする)、特許第3831711号(以下資料3とする)、特許第3831712号(以下資料4とする)、特許第3844470号(以下資料5とする)に記載されている。資料1から5は板クラウンの制御であった。つまり、板クラウンは図1に示すように板幅中央の板厚と、板幅方向で作業側端部と駆動側端部の平均板厚との差であり、3点の板厚であるため、板幅全体にわたる板厚差の制御ではなかった。また、板幅中央から作業側の板厚差と板幅中央から駆動側の板厚差は対称である場合は少なく、異なることが多いという知見が得られたが、従来の板クラウン制御では板幅方向で作業側端部と駆動側端部の平均をとっているため、これらの区別ができなかった。また、従来は板幅中央から作業側と板幅中央から駆動側との板幅方向の板厚差をそれぞれ独立に制御することは行われていなかった。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術は板クラウンの制御であった。つまり、板幅方向に板幅中央部の板厚と、作業側端部板厚と駆動側端部板厚との差を板クラウンとして圧延中に制御していた。ホットストリップミルでの板幅は、たとえば、600から2000(mm)と広いので、板クラウン制御における板幅方向3点の制御では不足であり、板幅全体に亘っての板厚差制御が課題である。また、板幅全体にわたる板幅方向の板厚差を制御することはひとつの課題であるが、さらに板幅中央から作業側の板幅方向の板厚差と、板幅中央から駆動側の板幅方向の板厚差は異なることが多いという知見が得られたので、これらをそれぞれ独立に制御することはもう一つの課題である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
[請求項1]に記載の手段は、板幅方向の板厚測定器を出側に設置し、各スタンドに板幅方向の板厚差制御操作端(アクチュエータということもある)を有するホットストリップミルの仕上圧延機(タンデムミル)において、仕上圧延機の出側における板幅方向の板厚差(板幅中央の板厚と板幅方向各部の板厚との差)希望値と測定値との誤差を、まず第1に各スタンドの出側における板幅方向の板厚差誤差に分配する。これは別途形状設定計算で求めた各スタンドにおける板幅方向の板厚比係数と板幅中央部の板厚とを用いて演算するが、板幅方向の板厚比係数は仕上圧延機のスタンド間で板平坦度が良好になるように求める。第2に以上で求めた各スタンドの出側における板幅方向の板厚差誤差から各スタンドにおける板幅方向の板厚差制御量を求める。各スタンドの出側における板幅方向の板厚差誤差は当該スタンドにおける板厚差制御量と、前スタンド(入側スタンド)の出側における板幅方向の板厚差誤差に当該スタンドの板厚差遺伝係数を乗じたものとの和になる。したがって、仕上圧延機の第1スタンドでは、前スタンド(入側スタンド)の出側における板幅方向の板厚差誤差はトランスファーバーのものになるが、これは別途実測するかまたは鋼種、板幅、板厚で決まる簡単なモデル式で求めることができるので、
これを用いて第1スタンドにおける板幅方向の板厚差制御量を求める。この結果を第2スタンドに適用すれば、第2スタンドにおける板幅方向の板厚差制御量が求まる。これを同様に順次最終スタンドまで演算して、仕上圧延機全スタンドにおける板幅方向の板厚差制御量が求まる。
[請求項2]に記載の手段は、[請求項1]で求めた仕上圧延機各スタンドでの板幅方向の板厚差制御量を実現するための各スタンドでの操作端の操作量を求める手段である。ここでは、板幅全体にわたっての板幅方向の板厚差制御に係わるものである。各スタンドの操作端はいろいろなものがある。例えば、上バックアップロールとワークロール、下バックアップロールとワークロールを一対(ペア)にしてクロスさせるもの(以下ペアクロスという)、ボトル状のロールを上下対称に配置して、板幅方向にシフトするもの(以下ロールシフトという)で板幅全体に作用する操作端の例であり、ロールベンド力によるものや圧下レベリングによるもので板幅全体に作用もできるが板幅中央から作業側と板幅中央から駆動側とで独立にも作用できる操作端の例であり、またロールの局部冷却によるものなどである。したがって、これらのいずれか一つの操作端、または複数の操作端の組み合わせにおいて、各操作端の操作量を求める手段を提供する。すなわち、[請求項1]で求めた各スタンドの板幅方向全体としての板幅方向の板厚差制御量は、各スタンドにおける各々の操作量に影響係数を乗じたものの和になる。したがって、板幅方向全体に対する最小二乗法により各スタンドにおける板幅方向の各々の操作量を求めることができる。
[請求項3]に記載の手段は、[請求項1]で求めた仕上圧延機各スタンドでの板幅方向の板厚差制御量を実現するための各スタンドでの操作端の操作量を求める手段である。ここでは、板幅中央から作業側と板幅中央から駆動側とをそれぞれ独立に制御する手段である。各スタンドの操作端のうち、板幅方向全体に作用する操作端で例えばペアクロス、ロールシフトなどは作業側と駆動側を独立に制御できないので[請求項2]の手段を用いるが、ロールベンド力、圧下レベリング、ロールの局部冷却などは作業側と駆動側で夫々独立の操作端が可能である。したがって、これらの操作端のうち単数または複数を用いた手段を提供する。すなわち、[請求項1]で求めた各スタンドの板幅方向の板厚差制御量のうち、板幅中央から作業側のものは作業側における板幅方向の板厚差制御操作端の制御量に影響係数を乗じたものの和となる。したがって、作業側での板幅方向に対する最小二乗法により作業側での各スタンドにおける各々の板幅方向の板厚差操作端の操作量を求めることができる。駆動側においては作業側と同様にして駆動側での各スタンドにおける各々の板幅方向の板厚差制御操作端の操作量を求めることができる。
[請求項4]に記載の手段は、[請求項1]で求めた仕上圧延機各スタンドでの板幅方向の板厚差制御量を実現するための各スタンドでの操作端の操作量を求める手段である。ここでは、[請求項2]と同様に板幅全体に作用する操作端を用いて板幅全体における板幅方向の板厚差を制御し、この制御による残りの板幅方向の板厚差を[請求項3]と同様に作業側と駆動側で独立に作用する操作端を用いて作業側と駆動側における板幅方向の板厚差をそれぞれ独立に制御する。
【作用】
【0005】
本発明ではホットストリップミルの仕上圧延機の出側に板幅方向の板厚測定器を設置して圧延中にこれを測定する。これより板幅中央と板幅各部の板厚の差を求め(板厚差という)、希望値との誤差をとり、この誤差を仕上圧延機の各スタンドに分配して制御し、仕上圧延機出側の板幅方向の板厚差を希望値に制御するものである。まず、板を仕上圧延機に通板し仕上圧延機の出側で板幅方向の板厚を測定する。これより板幅方向の板厚差を求めて、希望値との誤差をもとめ、この誤差を仕上圧延機の各スタンドに分配する。この分配方法はスタンド間の板平坦度が良好になるように、別途形状設定計算で求めた板幅方向の板厚比係数を用いる。つぎに、板幅方向の板厚差遺伝係数を用いて、各スタンドでの板幅方向の板厚差制御量を求める。そして、各スタンドではこの板厚差制御量を実現するための板厚差制御操作端の操作量を求める。操作端は例えば、ペアクロス、ロールシフト、ロールベンド、圧下レベリング、ロールの局部冷却などがある。板幅方向の板厚差制御を実施するには3通りの方法がある。ひとつは板幅全体に亘って板幅方向の板厚差を制御するものであり、二つ目は板幅を中央から作業側と駆動側にわけてそれぞれ独立に板厚差を制御するものである。三つ目はこれらの組み合わせである。いずれにおいても各スタンドでは各々の操作端の操作量に影響係数を乗じたものの和が板幅方向の板厚差制御量になるから、最小二乗法を用いて各々の操作量を求める。これらの操作量を各スタンドの操作端に印加して板幅方向の板厚差を希望値に制御する。板の制御された部分は仕上圧延機の第1スタンドでの制御点が仕上圧延機の出側の板幅方向の板厚測定器に到達すれば制御結果がわかる。したがって、つぎに上記の測定と制御を繰り返す。これは板が仕上圧延機を尻抜けするまで繰り返す。このようにして、圧延中の制御により、仕上圧延機の出側における板幅方向の板厚差を希望値に制御する。
【実施例】
【0006】
以下本発明の実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、[請求項1]について説明する。図1は従来技術における板クラウンを定義するものである。6は圧延された板の断面で、1は板幅中央の板厚、2は作業側端部の板厚、3は駆動側端部の板厚、4は板幅、5は圧延方向を示す。板クラウンは、

で定義される。ここで、Cは板クラウン、hは板幅中央の板厚、hWSは作業側板幅端の板厚、hDSは駆動側板幅端の板厚である。板幅端は一般に板幅エッジから25、ないし40(mm)を用いている。従来技術では、(1)式で示す板クラウンの圧延中における制御であった。
図2は本発明に係わる板幅方向の板厚を示したものである。板幅4を(2N)等分している。分割された板幅は任意でいいが、例えば、10(mm)または20(mm)などである。本発明はこれらの(2N)個に分割した板幅における板厚差を制御することであり、これを板幅方向の板厚差制御とよぶ。
板幅方向の板厚差は、
=h−h (2)
で定義する。ここで、jは作業側から駆動側に向かって、(2N)個に分割した番号であり1から(2N)、Cは板幅方向の板厚差、hは板幅中央の板厚、hはj番目の板厚である。また、板幅中央の板厚は

である。
図3は本発明の1実施構成例である。仕上圧延機の数は任意でいいが、ここでは7スタンドの場合をしめす。仕上圧延機の出側には板幅方向の板厚測定器33を設置して、板幅方向の板厚h(jは1から(2N))を測定する。
さて、仕上圧延機では圧延命令28から圧延の仕様が与えられ、ミル設定計算29で圧延前に仕上圧延機各スタンド11から17の出側における板厚中央部の板厚を求める。そしてその他の演算を行って、各スタンドのロール間隙とロール周速を求める。ミル設定計算29で求めた各スタンドの出側における板幅中央部の板厚は形状設定計算30に印加する。形状設定計算30では仕上圧延機の入側板(トランスファーバーという)18の板幅方向の板厚差から仕上圧延機出側板19の希望する板幅方向の板厚差に至る、各スタンド出側での板幅方向の板厚差希望値を求める。これを板幅方向の板厚差スケジュールとよぶ。トランスファーバーの板幅方向の板厚差は別途実測するかまたは鋼種、板幅、板厚で決まる簡単なモデル式で求めることができる。さて、板幅方向の板厚差スケジュールは無数にあるが、一般には仕上圧延機各スタンド間で板平坦度が良好になるように求めるのが普通である。このようにして求めた板幅方向の板厚差スケジュールは

となる。ここでiはスタンド番号であり1から6、jは板幅方向の分割番

たものである。また、仕上圧延機の最終スタンド17の出側では、圧延命令28から与えられた板幅方向の板厚差の希望値は、

となる。(4)、(5)式から、各スタンドで、

で定義する板幅方向の板厚比係数Ki,jを求める。ここで、iは1から6、jは1から(2N)である。また、最終スタンド17では、K7,j=1.0である。
このようにして求めた板幅方向の板厚比係数と最終スタンド17出側での板幅方向の板厚差の希望値を形状設定計算から、本発明に係わる板幅方向の板厚差制御装置31に印加する。板厚差制御装置31では次の演算を行う、
まず、トンンスファーバーを仕上圧延機11から17に通板して、板先端が出側の板幅方向の板厚測定器33に到達すると第1回目の測定値を板幅方向の板幅差制御装置31に印加する。そして、31ではまずこの測定値から仕上圧延機出側での板幅方向の板厚差を次の式で求める。

ここで、MEASは測定値を示す。jは1から(2N)である。
(5)式、(7)式から、仕上圧延機出側における板幅方向の板厚差誤差を求める。

ここで、ΔC7,jは仕上圧延機出側における板幅方向の板厚差誤差である。つまり、希望値からの誤差である。
つぎに、(8)式の仕上圧延機出側における板幅方向の板厚差誤差を各スタンド出側に分配する。つまり、(6)式で求めた板幅方向の板厚比係数Ki,jを用いて、

タ式で求めることができる。ΔCi,jは各スタンド出側での板幅方向の板厚差誤差である。また、このようにして求めた仕上圧延機11から17の出側における板幅方向の板厚差誤差が零に制御できれば、仕上圧延機の出側において板幅方向の板厚差が希望値になる。また、(9)式による各スタンドへの誤差の分配方法により、仕上圧延機各スタンド間の板平坦度が良好に保たれるのも本発明の一つの特徴である。
さて、従来技術である板クラウンについて、板クラウンは(1)式で定義されているが、仕上圧延機の任意のスタンドの出側における板クラウンは、
C=α・P+αθ・θ+α.F+αWR・CWR+α・L+η・CIN (10)
であることが、例えば、「板圧延の理論と実際」、日本鉄鋼協会、1984年(以下資料6とする)に記載されている。ここで、Cはスタンド出側の板クラウン、Pは全圧延荷重、θは例えばペアクロス角またはロールシフト量、Fはワークロールベンド力、CWRはワークロールクラウン、Lは圧下レベリング、CINはスタンド入側板クラウン、影響係数αは、例えば資料6の方法で求められる、またηは周知の板クラウン遺伝係数である。
ところで、本発明の板幅方向の板厚差は板クラウンを板幅全体に亘って拡張したものである。したがって、本発明は(10)式を拡張して、仕上圧延機の任意のiスタンド出側において、板幅方向の板厚差を、

のようにすることが特徴である。ここで、iはスタンド番号で1から7、jは板幅方向の分割番号で1から(2N)、Ci,jは板幅方向の板厚差、Pは全圧延荷重、θは板幅全体に作用する例えばペアクロス角またはロールシフト量であり、

ロール直径でロールの局部冷却などでかわる。また、Ci−l,jはスタンド入側での板幅方向の板厚差、影響係数αは例えば資料6記載の方法で板の変形と圧延機の変形を連立して求められる、また、ηi,jは板幅方向の板厚差遺伝係数である。板幅方向の板厚差遺伝係数は、例えば、本郷祐一・梁井俊男・常田弘:熱間圧延機の幅方向のクラウン比率遺伝特性を活用したクラウン制御の検討:、塑性と加工、第38巻、第433号(1997−2)、(以下資料7とする)に記載されている。

(11)式の微小変化Δをとると、

となる。操作端の操作量のみによるi スタンド出側での板幅方向の板厚差制御


である。
一方、(9)式で求めた板幅方向の板厚差誤差ΔCi,jを、

と置く。ここで、iは1から7である。
(12)、(13)、(14)式から、全圧延荷重は操作できないので省くと、

をうる。ここで、iは1から7である。(15)式はiスタンド出側における板幅方向の板厚差誤差は当該スタンドにおける板幅方向の板厚差制御量と、前スタンドつまり(i−l)スタンド出側における板幅方向の板厚差誤差に板幅方向の板厚差遺伝係数を乗じたものとの和になることを示している。仕上圧延機の第1スタンドから順番に各スタンドで(15)式を書くと、

向の板厚差であり、前述のように別途実測するかまたはモデル式で求めることが

圧延機出側における板幅方向の板厚差誤差である。したがって、例えば、(16)式

最終スタンドまで演算して、仕上圧延機各スタンドにおける板幅方向の板厚差制御量をもとめることができる。これらの値を用いて、[請求項2]または[請求項3]または[請求項4]にしたがって制御を行う。第1回目の制御結果は第1スタンド11での制御された部分が仕上圧延機の出側に設置した板幅方向の板厚測定器33に到達すればわかるので、同様に第2回目の測定と制御を繰り返す。同様のことを板が仕上圧延機を尻抜けするまで繰り返す。以上が[請求項1]である。
つぎに、[請求項2]について説明する。[請求項2]では図3における板幅方向の板厚差制御装置31で、板幅全体にわたる板厚差を制御するための操作量を求める。特に、21から27に示した操作端のうち、ワークロールベンド力は1スタンドあたり1個の油圧弁で作業側と駆動側を同じ値で操作し、圧下レベリングは作業側と駆動側で符号が逆の同じ値を用いる。
まず、トランスファーバー18を仕上圧延機11から17に通板し、板幅方向の板厚測定器33で板幅方向の板厚を測定する。板幅方法の板厚差制御装置31では以下の演算をする。まず、[請求項1]で述べた各スタンドにおける板幅方向

ンドで、

の評価式を定義する。ここで、iは1から7である。これは板幅方向の板厚差制御量を最小二乗法により実現する各操作量を求めるものである。

より、板幅方向全体に作用する例えばペアクロス角またはロールシフト量の操作

以上の操作量から(13)式を用いて、


操作量はすべてを用いることや任意のものを単数または複数用いることもできる。以上で求めた操作量を夫々操作端21から27に印加して板幅方向の板厚差を制御する。
つぎに、これらの制御結果は第1スタンド11での制御部分が板幅方向の板厚測定器33に到達した時点で判明する。したがって、全く同様にして、次の測定と制御を行い、板が仕上圧延機を尻抜けするまで繰り返す。
以上が[請求項2]である。
つぎに、[請求項3]について説明する。[請求項3]では図3における板幅方向の板厚差制御装置31で、板幅中央から作業側での板厚差と板幅中央から駆動側での板厚差とをそれぞれ独立に制御するための操作量を求める。特に、21から27に示した操作端のうち、ワークロールベンド力は1スタンドあたり作業側と駆動側で各々1個の油圧弁を用いて操作し、圧下レベリングは作業側と駆動側で独立に操作する。
まず、トランスファーバー18を仕上圧延機11から17に通板し、板幅方向の板厚測定器33で板幅方向の板厚を測定する。板幅方法の板厚差制御装置31では以下の演算をする。まず、[請求項1]で述べた各スタンドにおける板幅方向

ンドで、板幅中央から作業側では、

の評価式を定義する。ここで、iは1から7である。また、WSは作業側を示す。これは板幅方向の板厚差制御量を最小二乗法により実現する各操作量を求めるものである。

とする。また、

(13)式でΔθ=0、つまり板幅全体に作用する操作端、例えばペアクロス角またはロールシフトは作業側と駆動側とで独立して動かせないことを考慮して、

ワークロールの局部冷却などで実施する。

複数用いることができる。
板幅中央から駆動側では、jを(N+1)から(2N)として全く同様の演

以上で求めた操作量を各々各スタンドの操作端21から27に印加して、板幅方向の板厚差を作業側と駆動側とでそれぞれ独立に制御する。
つぎに、これらの制御結果は第1スタンド11での制御部分が板幅方向の板厚測定器33に到達した時点で判明する。したがって、上記と同様の測定と制御を行う。これは板が仕上圧延機を尻抜けするまで実施する。以上が[請求項3]である。
以上の本発明により仕上圧延機の出側における板幅方向の板厚差を希望値に制御できる。
つぎに、[請求項4]について説明する。[請求項4]では図3における板幅方向の板厚差制御装置31で、板幅全体に作用する操作端で例えばペアクロス角またはロールシフト量を用いて板幅全体に亘る板幅方向の板厚差を制御するための操作量を求め、この制御による残りの板幅方向の板厚差を板幅中央から作業側に作用する操作端と板幅中央から駆動側に作用する操作端を用いて板幅中央から作業側での板厚差と板幅中央から駆動側での板厚差とをそれぞれ独立に制御するための操作量を求める。特に、21から27に示した操作端のうち、ワークロールベンド力は1スタンドあたり作業側と駆動側で各々1個の油圧弁を用いて独立に操作し、圧下レベリングは作業側と駆動側で独立に操作する。
まず、トランスファーバー18を仕上圧延機11から17に通板し、板幅方向の板厚測定器33で板幅方向の板厚を測定する。板幅方法の板厚差制御装置31では以下の演算をする。まず、[請求項1]で述べた各スタンドにおける板幅方向

ンドで、

の評価式を定義する。ここで、iは1から7である。これは板幅全体に作用する操作端で例えばペアクロス角またはロールシフト量などの操作端の操作量を求めるものである。

より、板幅全体に作用する操作端で例えばペアクロス角またはロールシフト量な

ば、

となる。
(8)式で求めた仕上圧延機出側における板幅方向の板厚差誤差、ΔC7,jから(34)

に作用する操作端で例えばペアクロス角またはロールシフト量などの操作端の操作量による制御分を差し引いた残りである。
これを新しい仕上圧延機出側における板幅方向の板厚差誤差として、[請求項1]と[請求項3]の方法を同様に用いて、仕上圧延機の各スタンドにおける作業側と駆動側それぞれのワークロールベンド力、圧下レベリング量の操作量およびワークロール直径の操作量を求めることができる。
以上で求めた操作量を各々各スタンドの操作端21から27に印加して、板幅方向の板厚差を作業側と駆動側とでそれぞれ独立に制御する。
つぎに、これらの制御結果は第1スタンド11での制御部分が板幅方向の板厚測定器33に到達した時点で判明する。したがって、上記と同様の測定と制御を行う。これは板が仕上圧延機を尻抜けするまで実施する。以上が[請求項4]である。
以上の本発明により仕上圧延機の出側における板幅方向の板厚差を希望値に制御できる。
【発明の効果】
【0007】
ホットストリップミルの仕上圧延機(タンデムミル)において、出側に板幅方向の板厚測定器を設置して、圧延中に仕上圧延機の出側における板クラウン誤差をなくすように各スタンドの操作端を操作して、板クラウンを制御することが、従来技術として資料1から5に記載されている。これらの従来技術は板クラウン、つまり板幅中央と作業側板幅端と駆動側板幅端の3点に対する制御であった。また、従来技術では板クラウン制御において、仕上圧延機のスタンド間で板平坦度を良好にすることは述べられていない。また、従来技術では板幅中央から作業側と板幅中央から駆動側とでそれぞれ独立に板クラウンを制御することは述べられていない。
本発明は、ホットストリップミルの仕上圧延機(タンデムミル、)において、出側に板幅方向の板厚測定器を設置して、圧延中に仕上圧延機の出側において板幅方向で板幅を多数に等分(例えば、板幅が1500(mm)の時、20(mm)毎に75等分)して、それぞれの板厚差つまり板幅方向の中央との板厚差を希望値に制御する技術を提供する。特に、仕上圧延機の出側における板幅方向の板厚差誤差を各スタンド間で板平坦度が良好になるように各スタンドに分配する。これを板幅方向の板厚差遺伝係数を用いて、各スタンドでの板幅方向の板厚差制御量を求める。また、板幅方向で板幅全体として、板幅方向の板厚差を制御するための各スタンドにおける操作量を求めて板幅方向の板厚差を制御する方法を提供する。さらに、板幅中央から作業側における板幅方向の板厚差と板幅中央から駆動側における板幅方向の板厚差とを、それぞれ独立に制御する方法を提供する。
このように本発明により、板幅方向の多数の等分割点における板厚差(板幅方向の板厚差)を制御できるとともに、正確で精密な制御ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、従来技術の板クラウンを定義する図
【図2】は、本発明に係わる板幅方向に多数に等分した各等分部分の板厚を示す図。作業側から駆動側に向かって、jは1から2Nの番号となっている。
【図3】は、本発明に1実施構成例を示す図である。ホットストリップミル仕上圧延機11から17と出側の板幅方向の板厚測定器33、圧延命令28、ミル設定計算29、形状設定計算30および本発明に係わる板幅方向の板厚差制御装置31、板幅方向の板厚差操作端21から27などの関係を示している。
【符号の説明】
1は、板幅方向中央部の板厚。
2は、作業側の板幅端部の板厚。
3は、駆動側の板幅端部の板厚。
4は板幅。
5は圧延方向。
6は板の断面を示す。
11から17はホットストリップミル仕上圧延機の各スタンド。
18は仕上圧延機の入側板でトランスファーバー。
19は仕上圧延機の出側板。
21から27は板幅方向の板厚差制御操作端で、板幅全体に作用する操作端で例えばペアクロス角またはロールシフト、ワークロールベンド力、圧下レベリング、ロールの局部冷却などを操作する。
28は圧延命令。
29はミル設定計算。
30は形状設定計算。
31は板幅方向の板厚差制御装置。
32は形状設定計算結果を操作端に印加するもの。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板幅方向の板厚測定器を出側に設置し、各スタンドに板幅方向の板厚差制御操作端(アクチュエータということもある)を有するホットストリップミルの仕上圧延機(タンデムミル)において、仕上圧延機の出側における板幅方向の板厚差(板幅中央の板厚と板幅各部の板厚との差)希望値と測定値の誤差を、別途実施する形状設定計算で求めた各スタンド毎の板幅方向の板厚比係数と板幅方向中央での板厚と板幅方向の板厚差遺伝係数とを用いて、各スタンドの出側における板幅方向の板厚差制御量に分配することにより、仕上圧延機出側における板幅方向の板厚差を希望値に制御する方法。
【請求項2】
板幅方向の板厚測定器を出側に設置し、各スタンドに板幅方向の板厚差制御操作端(アクチュエータということもある)を有するホットストリップミルの仕上圧延機(タンデムミル)の各スタンドにおいて、[請求項1]で求めた各スタンドの出側における板幅方向の板厚差制御量から、板幅全体に亘って、板幅方向の板厚差制御操作端とその影響係数を用いて、最小二乗法により操作端の操作量求めることにより、仕上圧延機の出側における板幅方向の板厚差を希望値に制御する方法。
【請求項3】
板幅方向の板厚測定器を出側に設置し、各スタンドに板幅方向の板厚差制御操作端(アクチュエータということもある)を有するホットストリップミルの仕上圧延機(タンデムミル)各スタンドにおいて、[請求項1]で求めた各スタンドの出側における板幅方向の板厚差制御量から、板幅中央から作業側では、板幅方向の板厚差制御操作端とその影響係数を用いて、最小二乗法により操作端の操作量求めることにより、また、板幅中央から駆動側では、板幅方向の板厚差制御操作端とその影響係数を用いて、最小二乗法により操作端の操作量求めることにより、作業側と駆動側とで独立に板幅方向の板厚差を制御して、仕上圧延機の出側における板幅方向の板厚差を希望値に制御する方法。
【請求項4】
板幅方向の板厚測定器を出側に設置し、各スタンドに板幅方向の板厚差制御操作端(アクチュエータということもある)を有するホットストリップミルの仕上圧延機(タンデムミル)各スタンドにおいて、[請求項1]で求めた各スタンドの出側における板幅方向の板厚差制御量から、板幅全体に亘っては板幅全体に作用する操作端を用いて、板幅中央から作業側と板幅中央から駆動側ではそれぞれ独立に作用する操作端を用いて、それぞれの操作端とその影響係数を用いて最小二乗法により操作量を求めることにより板幅方向の板厚差を制御することにより、仕上圧延機の出側における板幅方向の板厚差を希望値に制御する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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