説明

ホルダーおよびそれを含むインク供給機構

【課題】 インクタンクと、インクジェット記録ヘッドに接続されたニードル状接続管との容易かつ高精度の位置決めを可能にする。
【解決手段】 インクジェット記録ヘッド21を保持するとともにインクタンク1を搭載可能なホルダー10が、インクタンク1内のインクをインクジェット記録ヘッド21に供給するためのインク流路20と、インクタンク1内に進入してインクタンク1の内部空間14とインク流路20とを連通させるニードル状接続管8とを有しており、ニードル状接続管8は、少なくとも一部が円弧状に曲がっている。さらに、ホルダー10はタンク支持部材6を有しており、タンク支持部材6は、インクタンク1を支持した状態で、ニードル状接続管8の円弧状に曲がった部分の曲率中心Cを中心として揺動することによって、インクタンク1をホルダー10に装着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク滴を吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録ヘッドを保持するホルダーおよびそれを含むインク供給機構と、そのインク供給機構を備えたインクジェット記録装置と、インクタンク装着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体のインクをインクジェット記録ヘッドから記録媒体に向けて吐出することによって、記録媒体にインクを付着させて画像を記録するインクジェット記録装置がある。
【0003】
このようなインクジェット記録装置において、インクタンクがインクジェット記録ヘッドに対して着脱可能に取り付けられた構成のものがある。具体的には、インクを収容しているインクタンクを、インクジェット記録ヘッドを保持するホルダーに装着して、インクタンク内のインクをホルダー内のインク流路を通じてインクジェット記録ヘッドへ供給するインク供給機構が実用化されている。このようなインク供給機構のホルダーは、一般的に、底部に記録ヘッドを保持している。また、ホルダーはニードル状(針状)接続管を有している。インクタンクのインク供給口を塞いでいる弾性体からなるタンクシール部材にニードル状接続管が突き刺されることによって、このニードル状接続管を介してインクタンクの内部とホルダー内のインク流路とが連通する。また、タンクシール部材の弾性力によってニードル状接続管の外周が弾性的に締め付けられて、インク漏れが生じないように封止される。
【0004】
複数のインクタンクがホルダーに取り付けられる構成の場合には、インクの交換や補充は、各インクタンクをそれぞれ個別にホルダーから取り外したり、ホルダーに装着したりすることによって行われる。このインクタンクの装着や取り外しの作業は、通常、ユーザーによって行われるが、インクタンクの着脱時にインクタンクのインク供給口とホルダーのニードル状接続管の相対位置がずれてインク漏れを生じる恐れがある。最悪の場合には、インクタンクからのインク漏れによってインクジェット記録装置本体とインクジェット記録ヘッドの電気接点がショートして、電気的な故障を生じる可能性もある。また、タンクシール部材は、ニードル状接続管の外周を弾性力によって締め付けるため、ニードル状接続管とインク供給口の位置ずれが生じると、ニードル状接続管をインク供給口内に挿入する際に必要な力が著しく大きくなり、操作性を低下させてしまう。
【0005】
そこで、特許文献1には、ニードル状接続管とタンクシール部材からなるジョイント構造を含むインク供給機構において、インクタンクとホルダーの接合部の位置決め精度の向上を図り、位置ずれを防止する構成が提案されている。
【特許文献1】特開平3−184873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されている構成は、インクタンクの外形をガイドすることによってインクタンク全体の挿入時の位置を規制し、それによってインクタンクとホルダーの接合部の位置合わせを行うものである。従って、インクタンク全体のガイドを設けるためにホルダーの構成が複雑になり、インク供給機構の大型化を招く。さらに、ガイドとニードル状接続管の相対位置精度によっては、インクタンクの挿入時および取り外し時に非常に大きな力が必要になってしまう可能性がある。
【0007】
また、インクタンクからホルダーへのインク供給と同時にインクタンク内へ空気を取り入れる、いわゆる気液交換を行うために、空気を取り込む流路をニードル状接続管内に設ける場合には、円滑なインク供給を行うために、よどみない空気導入が行われなければならない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、インクタンクと、インクジェット記録ヘッドに接続されたニードル状接続管との容易かつ高精度の位置決めが行えるホルダーおよびそれを含むインク供給機構と、そのインク供給機構を含むインクジェット記録装置と、インクタンク装着方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明のもう1つの目的は、インクタンクからホルダーへのインク供給と同時に、インクタンク内へ円滑に空気を取り入れて良好な気液交換を行うことが可能なホルダーおよびそれを含むインク供給機構と、そのインク供給機構を含むインクジェット記録装置と、インクタンク装着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のホルダーは、インクジェット記録ヘッドを保持するとともにインクタンクを搭載可能であり、インクタンク内のインクをインクジェット記録ヘッドに供給するためのインク流路を有するホルダーであって、インクタンク内に進入してインクタンクの内部空間とインク流路とを連通させるニードル状接続管を有し、ニードル状接続管は、少なくとも一部が円弧状に曲がっていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のインク供給機構は、前記した構成のホルダーと、ホルダーに着脱可能なインクタンクとを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、構成を複雑にすることなく、インクタンクと、インクジェット記録ヘッドを保持するホルダーとの接合部の相対的な位置決めを容易かつ高精度に行うことができる。また、インクタンクをホルダーに装着する際に必要な力を小さく抑え、インクタンクの装着時の操作性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を示す斜視図である。本実施形態の記録装置150は、シリアルスキャン方式のインクジェット記録装置であり、本発明の主な特徴部分であるインク供給機構154と、このインク供給機構154のホルダー10を保持するキャリッジ153と、キャリッジ153を移動させる駆動機構と、記録用紙P等の記録媒体を搬送する搬送機構と、ヘッド回復機構158を有している。まず、この記録装置150の基本的な構成と基本的な動作について説明する。
【0015】
駆動機構は、後述するインク供給機構154が搭載されるキャリッジ153を、矢印Aで示される主走査方向に移動自在に支持するガイド軸151,152と、キャリッジ153に対して、主走査方向に往復移動するための駆動力を付与する、図示しないキャリッジモータおよびその駆動力を伝達するベルト等の駆動力伝達機構を有している。
【0016】
搬送機構は、送りローラ156等の搬送ローラを含み、プラテン157上の記録用紙Pを、キャリッジ153に保持されているインクジェット記録ヘッド21のインク吐出口の形成面の前方を通過させて、矢印Bで示される副走査方向に搬送するものである。
【0017】
ヘッド回復機構158は、キャリッジ153の移動領域の端部(図1の左側)の、キャリッジ153に保持されているインクジェット記録ヘッド21のインク吐出口形成面と対向する位置に設けられている。詳述しないが、ヘッド回復機構158は、インクジェット記録ヘッド21のインク吐出口のキャッピングが可能なキャップと、そのキャップ内を負圧にすることができる吸引ポンプなどから構成されている。
【0018】
インク供給機構154は、図2〜3に示すように、主にホルダー10とインクタンク1とから構成されており、ホルダー10はインクジェット記録ヘッド21を保持している。インクジェット記録ヘッド21は、電気熱変換体が発生する熱エネルギーを利用してインクを吐出するものであってもよい。その場合には、電気熱変換体の発熱によってインクに膜沸騰を生じさせ、その発泡エネルギーによって、インク吐出口からインクを吐出することができる。ただし、インクジェット記録ヘッド21のインク吐出方式は、このような電気熱変換体を用いた方式のみに限定されず、例えば、圧電素子を用いてインクを吐出する方式等であってもよい。
【0019】
記録装置150の記録動作について簡単に説明する。まず、記録媒体である記録用紙Pが、記録装置150の前端部に設けられた挿入口155から挿入されると、図示しない搬送ローラ等によって記録装置150の内奥部まで搬送され、そこで搬送方向が反転させられて送りローラ156によって、矢印Bで示される副走査方向に搬送される。矢印B方向に搬送された記録用紙Pは、記録開始位置に到達すると一旦停止し、キャリッジ153が駆動機構によって、矢印Aで示される主走査方向に移動しつつ、インクジェット記録ヘッド21がプラテン157上の記録用紙Pに向かってインクを吐出することによって、1行分の画像記録を行う。1行分の画像記録が完了したら、送りローラ156等の搬送機構が記録用紙Pを1行分のピッチだけ副走査方向に搬送して停止する。そして、キャリッジ153が主走査方向に再度移動しつつインクジェット記録ヘッド21が1行分の記録を行う。このように、1行分のピッチずつ記録用紙Pを副走査方向へ搬送することと、キャリッジ153を主走査方向に移動しつつ1行分の記録を行うこととを交互に繰り返すことによって、記録用紙Pの記録領域全体に画像記録する。
【0020】
記録用紙Pへの画像記録完了後、またはその他の適宜のタイミングで、インクジェット記録ヘッド21の回復処理が行われる。すなわち、インクジェット記録ヘッド21を一時的に移動領域の端部(図1の左側)まで移動させて、インク吐出口を、ヘッド回復機構158のキャップによって覆う。それから、キャップ内を負圧にすることによって、インク吐出口からインクジェット記録ヘッド21の内部のインクを吸引排出させる。また、キャップ内に向かってインク吐出口からインクを吐出させる、いわゆる予備吐出処理を行ってもよい。いずれの場合も、インクジェット記録ヘッド21内のごみや気泡や固化したインクを除去することによって、インクジェット記録ヘッド21を、良好なインク吐出が可能な状態に維持することができる。
【0021】
次に、本発明の主な特徴部分であるインク供給機構154について、図2〜5を参照して詳細に説明する。
【0022】
インクタンク1は、インクを収容する内部空間14と、底面に位置するインク供給口2と、一側面に設けられている第1係合部3と、他の側面に設けられている弾性変形可能なラッチレバー5を有している。ラッチレバー5には第2係合部4が設けられている。インク供給口2は弾性体からなるタンクシール部材11によって塞がれている。インクタンク1の内部空間14の底部には、インク滴をトラップする、例えば繊維状の液体吸収体からなるインクトラップ材17が配設されている。
【0023】
ホルダー10は、本体部分7とタンク支持部材6とからなり、タンク支持部材6は、図示しないヒンジ機構等によって、図示されている位置Cを揺動中心として本体部分7に対して相対的に揺動可能である。本体部分7は、インクジェット記録ヘッド21を保持しており、インクジェット記録ヘッド21の内部に連通しているインク流路20と、インク流路20と連通し、インクタンク1の装着時にタンクシール部材11を貫通してインク供給口2内に進入するニードル状接続管8と、インクタンク1の装着時に第2係合部4を係止する凹部である第2係止部9を有している。タンク支持部材6は、インクタンク1の装着時に第1係合部3を係止する凹部である第1係止部13と、ニードル状接続管8の外周面に密着する弾性体からなるニードルシール部材15を有している。
【0024】
ホルダー10の本体部分に設けられているニードル状接続管8は、図示されているように、円弧状に曲がった形状を有している。この円弧状に曲がった形状の曲率中心は、タンク支持部材6の揺動中心と同じ位置Cである。従って、本明細書中では「揺動中心C」または「曲率中心C」という表現も用いる。
【0025】
図4に示すように、ニードル状接続管8の内部には、ニードル仕切り壁18によって仕切られた2系統の流路8a,8bが設けられている。第1流路8aは、インクタンク1からホルダー10のインク流路20へインクを供給するものであり、第2流路8bは、インクタンク1の内部空間14へ外部から空気を取り入れるためのものであり、これによって、インクタンク1からのインクの供給と同時にインクタンク1内へ空気を取り入れて内圧の変動を抑える、いわゆる気液交換を行うことができる。ニードル状接続管8の先端近傍には、両流路8a,8bにそれぞれ開口16a,16bが設けられている。好ましくは、空気を取り入れるための第2流路8bが、ニードル状接続管8の曲率半径が大きい側にあり、その第2流路8bの、空気導入用の開口16bが、ニードル状接続管8の、曲率半径が最も大きい稜線上にある。一般に、ニードル状接続管8の曲率半径が大きい側は、曲率半径が小さい側よりも上方に位置するので、第2流路8bおよび空気導入用の開口16bがニードル状接続管8の曲率半径が大きい側に存在すると、インクより軽い空気のインクタンク1内への排出が円滑に行われ易い。
【0026】
図2には、インクタンク1がホルダー10に装着されて、図1に示すようにキャリッジ153に搭載されて記録動作を行うことが可能な状態が示されている。この時、タンク支持部材6と本体部分7とが実質的に一体化して1つの筐体を構成して、インクタンク1をホルダー10に装着させている。この状態では、第1係合部3および第2係合部4が、第1係止部13および第2係止部9に嵌合して係止されて位置決めされるとともに、弾性変形したラッチレバー5の弾性力によって、第1係合部3および第2係合部4が第1係止部13内および第2係止部9内から簡単に脱出しないように付勢されている。
【0027】
また、ニードル状接続管8がタンクシール部材11を貫通して、インク供給口2からインクタンク1の内部空間14内に進入している。従って、前記したような記録動作(インク吐出動作)や回復処理によってインクジェット記録ヘッド2内のインクが消費されるのに伴って、インクタンク1の内部空間14に収容されたインクが、インク供給口2から、ホルダー10のニードル状接続管8(第1流路8a)およびインク流路20を介して、インクジェット記録ヘッド21に供給される。なお、インク流路20中に配設されているフィルター22によって、インク中のごみや気泡がトラップされて、インクジェット記録ヘッド21まで送られるのが防げる。
【0028】
図3には、インクタンク1がホルダー10に装着される前の状態が示されている。図示されているのは、タンク支持部材6が本体部分7に対して相対的に揺動して離れており、第1係合部3が第1係止部13に嵌合して係止されてインクタンク1がタンク支持部材6に支持されている状態である。タンク支持部材6のラッチレバー5は弾性変形していない初期状態である。また、ホルダー10の本体部分7のニードル状接続管8は、インクタンク1のタンクシール部材11に突き刺さってインク供給口2内に僅かに進入している。そして、ニードル状接続管8の開口16a,16bは、タンク支持部材6のニードルシール部材15によって一時的にシールされている。
【0029】
インクタンク1をホルダー10に装着する際には、図3に示す状態から、タンク支持部材6を揺動中心Cを中心として揺動させる。タンク支持部材6の揺動運動に伴って、ラッチレバー5が本体部分7の壁に沿って摺動しながら徐々に弾性変形し、ラッチレバー5上の第2係合部4が本体部分7の第2係止部9に対向する位置に到達し、第2係止部9に嵌合して係止された時点で、タンク支持部材6の揺動運動は停止し、図2に示すようにインクタンク1がホルダー10に装着される。ニードル状接続管8のインク供給口2内への進入に伴って、開口16a,16bはニードルシール部材15から離れて、インクタンク1の内部においてシールが解除される。
【0030】
このようにして、インクタンク1の内部空間14が、インク供給口2内に進入したニードル状接続管8(第2流路8b)とホルダー10のインク流路20とを介して、インクジェット記録ヘッド21の内部と連通することによって、インクの供給路が形成される。ニードル状接続管8の外周は、インク供給口2のタンクシール部材11と、ホルダー10のニードルシール部材15とによって弾性的に締め付けられて、インクが漏れないようにシールされている。
【0031】
なお、図4に示すようにニードル状接続管には2系統の流路8a,8bが設けられているため、一方の流路、好ましくは曲率半径の小さい側の第1流路8aは、前記したようにインクタンク1からインクジェット記録ヘッド21へのインクの供給路として機能し、他方の流路、好ましくは曲率半径の大きい側の第2流路8bは、外部からインク流路20を介してインクタンク1への空気の導入路として機能する。従って、インクタンク1から開口16aを通って流出したインク量に対応する空気が、開口16bからインクタンク1の内部空間14内へ導入され、いわゆる気液交換が円滑に行われる。特に、ニードル状接続管8の円弧状に形成された部分の、曲率半径の大きい側の開口16bが空気導入口であるため、インクタンク1の内部空間14内への空気の導入が円滑に行われる。それによって、インクをインクジェット記録ヘッド21へよりよどみなく供給することが可能である。
【0032】
タンク支持部材6の揺動運動において、揺動中心Cが、ニードル状接続管8の円弧状に曲がっている部分の曲率中心と一致しているため、タンク支持部材6の揺動運動に合わせて、ニードル状接続管8はインク供給口2内へ円滑に進入する。すなわち、タンク支持部材6およびインクタンク1の揺動の軌跡と、ニードル状接続管8の円弧状に曲がった形状が実質的に一致しているので、ニードル状接続管8が曲がっているにもかかわらず、図3に示す装着前の状態から図2に示す装着状態に至る途中に、ニードル状接続管8は常にタンクシール部材11に対して一定の角度、好ましくは直角を保ったまま進入する。従って、この間にタンクシール部材11には、ニードル状接続管8によって変形させられる力がほとんどかからない。この構成によると、インクタンク1装着時に必要な力が小さくて済み、操作性が向上する。さらに、インクタンク1の押下部12を押し下げると、てこの原理を利用してインクタンク1装着時に必要な力をさらに低減することができ、操作性をさらに向上させることが可能である。
【0033】
仮に、タンク支持部材8の揺動運動の揺動中心Cが、ニードル状接続管8の円弧状に曲がっている部分の曲率中心と一致していなければ、タンク支持部材6の揺動運動の方向と、ニードル状接続管8がタンクシール部材11を貫通してインク供給口2内へ進入する方向とが異なってしまう。従って、ニードル状接続管8がタンクシール部材11に対する角度を変えながら進入することになり、タンクシール部材11は、ニードル状接続管8の進入角度が変わるごとに変形させられ、その変形させる力がタンク支持部材6の揺動運動の抵抗となる。その結果、タンク支持部材6の揺動運動はあまり円滑ではなく、インクタンク1の装着時に大きな力が必要であり、操作性があまり良くない。
【0034】
図5は、インクタンク1のインクが殆ど使い尽くされて、インクタンク1がホルダー10から取り外される状態を示している。インクタンク1の取り外し動作は、ユーザーがラッチレバー5を弾性変形させて第2係合部4を第2係止部9から脱出させ、このラッチレバー5側を上方に引き上げるようにして、インクタンク1およびタンク支持部材6を、揺動中心Cを中心として揺動させることによって行われる。後で行われるインクタンク1の装着動作を容易にするために、図5に示す状態からインクタンク1を取り外した後に、図示しないばね等の弾性部材の付勢力によって、タンク支持部材6を本体部分7に対して揺動した状態に保持する構成としてもよい。この場合、ニードル状接続管8の開口16a,16bはニードルシール部材15によって常に封止されたままである。
【0035】
インクタンク1内のインクを全て使い切ってからインクを取り外すことが望ましいが、一般的には、インクタンク1の内部空間14に多少のインクが使われずに残ってしまい、図5に示すようにインクタンク1の内部底面に微量のインク滴19が存在する。本実施形態では、インクタンク1の内部のインクトラップ材17が、この残留したインク滴19を吸い取ることによって、取り外されたインクタンク1から外部にインク滴19が垂れて周囲を汚すことが防げる。インクトラップ材17は、インクタンク1を傾けつつ取り外す際に下側に位置するように配置されており、インク滴19を効率よく吸収できる。
【0036】
このインクタンク1の取り外し動作も、前記した装着動作と同様に、タンク支持部材6の揺動中心Cと、ニードル状接続管8の円弧状に曲がっている部分の曲率中心が一致しており、タンク支持部材6およびインクタンク1の揺動の軌跡と、ニードル状接続管8の円弧状に曲がった形状が実質的に一致しているので、比較的小さな力で容易に行える。
【0037】
なお、インクトラップ材17を設ける代わりに、インクタンク1の内部に溝や壁を設けて、残留したインク滴19をトラップする構成にしてもよい。
【0038】
以上説明した実施形態では、ニードル状接続管8が全て円弧状に曲がった形状であったが、ニードル状接続管8の一部分のみが円弧状に曲がっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の要部を示す斜視図である。
【図2】本発明のインク供給機構の、インクタンクをホルダーに装着した状態を示す断面図である。
【図3】図2に示すインク供給機構の、インクタンクをホルダーに装着する前の状態を示す断面図である。
【図4】図2に示すインク供給機構のニードル状接続管の拡大断面図である。
【図5】図2に示すインク供給機構の、インクタンクをホルダーから取り外す状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 インクタンク
2 インク供給口
3 第1係合部
4 第2係合部
5 ラッチレバー
6 タンク支持部材
7 本体部分
8 ニードル状接続管
8a 第1流路
8b 第2流路
9 第2係止部
10 ホルダー
11 タンクシール部材
13 第1係止部
14 内部空間
16a、16b 開口
20 インク流路
21 インクジェット記録ヘッド
150 インクジェット記録装置
153 キャリッジ
154 インク供給機構
C 揺動中心(曲率中心)
P 記録用紙(記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット記録ヘッドを保持するとともにインクタンクを搭載可能であり、前記インクタンク内のインクを前記インクジェット記録ヘッドに供給するためのインク流路を有するホルダーにおいて、
前記インクタンク内に進入して前記インクタンクの内部空間と前記インク流路とを連通させるニードル状接続管を有し、該ニードル状接続管は、少なくとも一部が円弧状に曲がっていることを特徴とするホルダー。
【請求項2】
前記ニードル状接続管は、前記インクタンクからのインクを前記ホルダーの前記インク流路に供給するための第1流路と、前記インクタンク内へ空気を導入するための第2流路とを備えており、前記円弧状に曲がった部分の曲率半径の大きい側に空気導入用の開口が設けられている、請求項1に記載のホルダー。
【請求項3】
請求項1または2に記載のホルダーと、該ホルダーに着脱可能な前記インクタンクとを有するインク供給機構。
【請求項4】
前記インクタンクは、前記インクタンクを前記ホルダーに対して相対的に、前記ニードル状接続管の前記円弧状に曲がった部分に沿って移動させる動作によって、前記ホルダーに装着可能である、請求項3に記載のインク供給機構。
【請求項5】
前記ホルダーは、前記インクタンクを支持し揺動可能なタンク支持部材を有しており、
前記タンク支持部材は、前記インクタンクを支持した状態で、前記ニードル状接続管の前記円弧状に曲がった部分の曲率中心を中心として揺動することによって、前記インクタンクを前記ホルダーに装着させる、請求項4に記載のインク供給機構。
【請求項6】
前記タンク支持部材は、前記インクタンクの非装着時に前記ニードル状接続管の開口をシールするニードルシール部材を含む、請求項5に記載のインク供給機構。
【請求項7】
前記インクタンクは、一側面に設けられている第1係合部と、該第1係合部と異なる面に設けられているラッチレバーと、該ラッチレバーに設けられている第2係合部と、底面に設けられているインク供給口とを有しており、
前記ホルダーは、前記インクタンクの装着時に前記第2係合部を係止する第2係止部を有し、前記タンク支持部材は、前記インクタンクの装着時に前記第1係合部を係止する第1係止部を有し、前記ニードル状接続管は、前記インクタンクの装着時に前記インク供給口内に進入する、請求項5または6に記載のインク供給機構。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれか1項に記載のインク供給機構と、
該インク供給機構の前記ホルダーが取り付けられるキャリッジと、
記録媒体を、前記キャリッジに取り付けられた前記ホルダーに保持された前記インクジェット記録ヘッドの対向位置を通って搬送可能な搬送機構とを有するインクジェット記録装置。
【請求項9】
インクタンクを、少なくとも一部が円弧状に曲がっているニードル状接続管を有するとともにインクジェット記録ヘッドを保持するホルダーに、前記ニードル状接続管が前記インクタンク内に進入するように装着するインクタンク装着方法であって、
前記インクタンクを前記ホルダーに対して相対的に、前記ニードル状接続管の前記円弧状に曲がっている部分に沿って揺動させることによって、前記インクタンクを前記ホルダーに装着することを特徴とするインクタンク装着方法。
【請求項10】
前記インクタンクを、前記ホルダーに設けられているタンク支持部材に取り付け、
前記インクタンクが取り付けられた前記タンク支持部材を、前記ニードル状接続管の前記円弧状に曲がった部分の曲率中心を中心として揺動させることによって、前記インクタンクを前記ホルダーに装着する、請求項9に記載のインクタンク装着方法。
【請求項11】
前記ニードル状接続管がインクタンク内に進入する前には、前記ホルダーに設けられたニードルシール部材によって前記ニードル状接続管の開口をシールする、請求項9または10に記載のインクタンク装着方法。
【請求項12】
請求項1または2に記載のホルダーに装着可能なインクタンクであって、前記ニードル状接続管が挿入されるインク供給口と、該供給口部に配されるシール部材とを有し、インクタンク内部にインクを収納することを特徴とするインクタンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−150804(P2006−150804A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−346140(P2004−346140)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】