説明

ホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物

【課題】
接着硬化時間が短く、安定な接着性能を得ることができ、ホルムアルデヒド放散量を十分に低減することができると共に、粘度の変化が少ないホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物を提供する。
【解決手段】
ホルムアルデヒド樹脂の水溶液と、ホルムアルデヒドと反応する高級脂肪酸により被覆された酸アンモニウム塩からなるホルムアルデヒド捕捉剤とを含む。前記ホルムアルデヒド樹脂は、ホルムアルデヒドとアミノ化合物とが縮合した樹脂である。前記ホルムアルデヒド捕捉剤は、全量に対して0.5〜30重量%の範囲の前記高級脂肪酸により前記酸アンモニウム塩が被覆されている。前記高級脂肪酸は、40〜120℃の範囲の融点を備える。前記ホルムアルデヒド樹脂の水溶液の固形分100重量部に対して、前記ホルムアルデヒド捕捉剤を0.5〜15重量部の範囲で含む。前記高級脂肪酸は、110〜200℃の範囲の温度でホルムアルデヒドと反応する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合板、パーティクルボード、MDF等の木質材料に用いられるホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、合板、パーティクルボード、MDF等の木質材料に用いられる木質用接着剤として、ホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物が知られている。前記ホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物は、尿素、メラミン、ベンゾグアナミン等のアミノ化合物またはフェノール、レゾルシノール等のフェノール化合物から選択される1種以上の化合物と、ホルムアルデヒドとを縮合させて得られるホルムアルデヒド樹脂の水溶液である。前記ホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物は、安価であり、常態での接着強度はもちろん、耐水接着強度及び耐熱接着強度においても、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン形接着剤に比較して優れた性能を有している。
【0003】
ところが、前記ホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物を用いた前記木質材料からは、ホルムアルデヒドが放出され、シックハウス症候群や化学物質過敏症等の健康問題を引き起こす原因となるので、社会問題となっている。
【0004】
そこで、平成15年2月27日、合板の日本農林規格に、ホルムアルデヒド放散量(以下、F放散量という)として、従来より厳しい、F放散量が平均0.3mg/L、最大値0.4mg/L以下の性能区分が設けられた。前記性能区分は、表示マークF☆☆☆☆で表わされる。
【0005】
前記性能区分F☆☆☆☆を満足させるために、前記ホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物を用いた木質材料からのF放散量を低減する方法として、パラフィンワックスなどのワックス類で被覆された亜硫酸水素ナトリウム等からなるアルデヒド捕捉剤を含むホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、前記アルデヒド捕捉剤を含む前記ホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物は、ホルムアルデヒド放散量を十分に低減することができないという不都合がある。
【特許文献1】特開2007−38661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、係る不都合を解消して、接着硬化時間が短く、安定な接着性能を得ることができ、ホルムアルデヒド放散量を十分に低減することができると共に、粘度の変化が少ないホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物は、ホルムアルデヒド樹脂の水溶液と、ホルムアルデヒドと反応する高級脂肪酸により被覆された酸アンモニウム塩からなるホルムアルデヒド捕捉剤とを含むことを特徴とする。
【0009】
前記木質材料から放出されるF放散量を低減する方法として、前記ホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物において、前記ホルムアルデヒド樹脂を形成するホルムアルデヒドに対して、アミノ化合物、またはフェノール化合物等の量を多くし、ホルムアルデヒドのモル比を小さくする方法がある。しかしながら、この方法では、前記ホルムアルデヒド樹脂におけるホルムアルデヒドのモル比が小さくなるため、前記接着剤組成物の接着硬化に必要な時間が長くなり、また高温多湿の環境において接着性能の低下が大きくなる。
【0010】
これに対して、本発明のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物によれば、ホルムアルデヒドと反応する高級脂肪酸により被覆された酸アンモニウム塩からなるホルムアルデヒド捕捉剤を含んでいる。従って、前記ホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物において、前記ホルムアルデヒド樹脂を形成するホルムアルデヒドのモル比を小さくすることなく、F放散量を低減することができ、接着硬化時間を短くすることができると共に、安定な接着性能を得ることができる。しかも、本発明のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物によれば、前記酸アンモニウム塩と、該酸アンモニウム塩を被覆する前記高級脂肪酸との両方がホルムアルデヒド捕捉剤として作用するため、十分にF放散量を低減することができる。また、前記酸アンモニウム塩は、前記ホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物の硬化を促進するので、接着硬化時間を更に短くすることができる。
【0011】
ところで、前記酸アンモニウム塩は、そのまま前記ホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物に配合すると、該接着剤組成物の粘度が急激に上昇するおそれがある。しかし、本発明によれば、前記ホルムアルデヒド捕捉剤は、酸アンモニウム塩が前記高級脂肪酸により被覆されているので、前記接着剤組成物の粘度の急激な上昇を避けることができる。
【0012】
また、本発明のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物において、前記ホルムアルデヒド樹脂としては、例えば、ホルムアルデヒドと、アミノ化合物とが縮合した樹脂を挙げることができる。
【0013】
また、本発明のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物において、前記ホルムアルデヒド捕捉剤は、全量に対して0.5〜30重量%の範囲の前記高級脂肪酸により前記酸アンモニウム塩が被覆されていることが好ましい。前記高級脂肪酸が0.5重量%未満であると、前記酸アンモニウム塩を十分に被覆することができないことがある。また、前記高級脂肪酸が30重量%を超えても、それ以上の効果は望めない。
【0014】
また、本発明のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物において、前記高級脂肪酸は、40〜120℃の範囲の融点を備えることが好ましい。前記高級脂肪酸の融点が40℃未満であると、熱を加えることなく、室温で溶融するおそれがある。また、前記高級脂肪酸の融点が120℃を超えると、前記酸アンモニウム塩に被覆することが困難になることがある。
【0015】
本発明のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物は、前記ホルムアルデヒド樹脂の水溶液の固形分100重量部に対して、前記ホルムアルデヒド捕捉剤を、0.5〜15重量部の範囲で含むことが好ましい。前記ホルムアルデヒド捕捉剤が0.5重量部未満であると、十分なホルムアルデヒド捕捉効果が得られないことがある。また、前記ホルムアルデヒド捕捉剤が15重量部を超えると、前記ホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物の粘度が急激に上昇することがある。
【0016】
本発明のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物において、前記高級脂肪酸は、例えば、110〜200℃の範囲の温度でホルムアルデヒドと反応するものを用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本実施形態について詳細に説明する。
【0018】
本実施形態のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物は、ホルムアルデヒド樹脂の水溶液と、ホルムアルデヒドと反応する高級脂肪酸により被覆された酸アンモニウム塩からなるホルムアルデヒド捕捉剤とを含むホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物である。
【0019】
本実施形態のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物において、前記ホルムアルデヒド樹脂は、ホルムアルデヒドと、アミノ化合物、例えば、尿素、エチレン尿素、メラミン、グアニジン等から選択される1種以上の化合物とが縮合した樹脂を用いることができる。
【0020】
本実施形態のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物において、前記ホルムアルデヒド樹脂は、前記アミノ化合物の代わりに、フェノール化合物、例えばフェノール、レゾルシノール等から選択される1種以上の化合物を用いてもよい。また、前記アミノ化合物の代わりに、該アミノ化合物と前記フェノール化合物との両方を用いた樹脂であってもよい。
【0021】
本実施形態のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物において、ホルムアルデヒド樹脂を形成するホルムアルデヒドと、アミノ化合物またはフェノール化合物のモル比は、特に制限されず、該ホルムアルデヒドを基準として、0.5〜2.5の範囲とすることができる。
【0022】
また、本実施形態において、前記ホルムアルデヒド樹脂は、ポリビニルアルコール等のアルコール類で変性されたものであってもよい。
【0023】
本実施形態のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物において、前記ホルムアルデヒド樹脂の水溶液の固形分は、特に制限されず、例えば、該水溶液量の全量に対して30〜80重量%の範囲とすることができる。
【0024】
本実施形態のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物において、前記酸アンモニウム塩としては、無機酸アンモニウム塩、有機酸アンモニウム塩を挙げることができる。
【0025】
前記無機酸アンモニウム塩としては、例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、第1リン酸アンモニウム、第2リン酸アンモニウム、第3リン酸アンモニウム、臭化アンモニウム、フッ化アンモニウム、硫化アンモニウム、トリポリリン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム等を挙げることができる。
【0026】
前記有機酸アンモニウム塩としては、飽和モノカルボン酸、飽和ジカルボン酸、飽和トリカルボン酸、不飽和カルボン酸、芳香族カルボン酸、複素環カルボン酸等のアンモニウム塩を挙げることができる。前記飽和モノカルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ペンタ酸、ヘキ酸、ペプタン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリル酸、ステアリン酸等を挙げることができる。前記飽和ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、酒石酸、リンゴ酸等を挙げることができる。前記飽和トリカルボン酸としては、例えば、クエン酸等を挙げることができる。前記不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、プロピオン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、オレイン酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができる。前記芳香族カルボン酸としては、例えば、アトロバ酸、ケイ皮酸等を挙げることができる。前記複素環カルボン酸としては、例えば、ニコチン酸、イソニコチン酸、フロ酸、テノ酸等を挙げることができる。
【0027】
本実施形態のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物において、前記酸アンモニウム塩は、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウムのいずれかであることがより好ましく、これらを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
本実施形態のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物において、前記高級脂肪酸は、常温で固体であり、加熱すると低粘度の液体になると共に、ホルムアルデヒドと反応する高級脂肪酸である。前記高級脂肪酸の融点は、特に制限されないが、40〜120℃であることが好ましく、このような高級脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。前記飽和脂肪酸としては、例えば、トリデシル酸、ラウリン酸、ペンタデシル酸、ミリスチン酸、ダチュリン酸、バルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸またはメリシン酸等を挙げることができる。前記不飽和脂肪酸としては、例えば、エライジン酸、イソオレイン酸、フラシジン酸、セラコレイン酸、エレオステアリン酸等を挙げることができる。前記高級脂肪酸は、前記飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸の1種以上を適宜混合して用いてもよい。
【0029】
本実施形態のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物において、前記高級脂肪酸は、例えば、ホルムアルデヒドと、110〜200℃の範囲の温度で反応するものを用いることができる。
【0030】
本実施形態のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物においては、前記高級脂肪酸の使用量は、特に限定されないが、該ホルムアルデヒド捕捉剤の全量に対して、0.5〜30重量%であることが好ましく、1〜18重量%であることがより好ましい。
【0031】
前記酸アンモニウム塩を前記高級脂肪酸により被覆する方法は、特に限定されないが、例えば、該酸アンモニウム塩の粒子を、攪拌混合機、例えば、スーパーミキサー、ハイスピードミキサー、プラネターリーミキサー、リボンブレンダー等で攪拌し、その後、そこに予め溶解した該高級脂肪酸を攪拌しつつ添加する方法、または該酸アンモニウム塩の粒子と顆粒粒子状の高級脂肪酸とを常温にて混合した後、攪拌混合しながら所定温度まで昇温する方法を挙げることができる。
【0032】
本実施形態のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物は、前記ホルムアルデヒド樹脂の水溶液の固形分100重量部に対して、前記ホルムアルデヒド捕捉剤を0.5〜15重量部の範囲で含むことが好ましく、1〜8重量部の範囲で含むことがより好ましい。
【0033】
また、本実施形態のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物は、その作用効果を損なわない範囲で、必要に応じてホルムアルデヒドと反応しないワックス、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、油脂硬化油、またはポリエチレンワックス等を前記高級脂肪酸と配合し、共に被覆剤として用いてもよい。
【0034】
また、本実施形態のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物は、必要に応じ、増量剤または充填剤を配合してもよい。
【0035】
前記増量剤は、従来から木質用接着剤に配合されているもの、例えば、小麦粉、澱粉類粉、大豆粉、血粉等を挙げることができ、これらを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記充填剤は、例えば、木粉、クルミ粉、椰子粉等の有機質充填剤、クレー、カオリンクレー、焼成クレー、酸性白土、活性白土、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、珪藻土、セピライト、パーライト、ゼオライト、石膏、焼石膏、シリカ等の無機質充填剤を挙げることができ、これらを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
また、本実施形態のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物は、更に、必要に応じて、水性ラテックス形樹脂またはエマルジョン形樹脂を配合してもよい。前記水性ラテックス形樹脂またはエマルジョン形樹脂と、本実施形態のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物とを配合することにより、該接着剤組成物の塗布性を向上させることができると共に、前記充填剤及び増量剤との混合安定性を向上させることができる。
【0038】
前記水性ラテックス形樹脂またはエマルジョン形樹脂としては、例えば、スチレン、スチレン誘導体、ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレン、アクロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチルビニルエーテル、アクリルアミド、イソブテン等の群から選択される1種の不飽和単量体からなる重合体、または、該群から選択される2種類以上の不飽和単量体からなる共重合体を挙げることができる。
【0039】
前記重合体または共重合体は、前記不飽和単量体と、ヒドロキシル基、カルボキシル基またはアミド基を有する不飽和単量体の1種以上とが共重合した、共重合水性ラテックス形樹脂または共重合エマルジョン形樹脂であってもよい。
【0040】
前記ヒドロキシル基を有する不飽和単量体としては、アリルアルコール、2−ヒドロキシルエチルメタアクリレート、2−ヒドロキシルエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、多価アルコール類のモノアリルエーテル等を挙げることができる。
【0041】
前記カルボキシル基を有する不飽和単量体としては、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、シトラコン酸、シトラコン酸モノエステル、メタコン酸、メタコン酸モノエステル等のエチレン性不飽和ジカルボン酸またはそのエステル、クロトン酸、アクリル酸、メタアクリル酸のモノカルボン酸等を挙げることができる。
【0042】
前記アミド基を有する不飽和単量体としては、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタアクリルアミド等を挙げることができる。
【0043】
また、本実施形態のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物は、その作用効果を損なわない範囲で、一般にホルムアルデヒド樹脂系接着剤を硬化させるための触媒として用いられる酸性物質と、ホルムアルデヒドと反応して酸性物質を生成する酸アンモニウム塩を高級脂肪酸等にて被覆したホルムアルデヒド捕捉剤とを、必要に応じて併用することができる。
【0044】
前記酸性物質としては、例えば、塩酸、パラトルエンスルホン酸、ギ酸、クエン酸、乳酸、フタル酸、コハク酸、シュウ酸等を挙げることができ、これらを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
また、本実施形態のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物は、その作用効果を損なわない範囲で、必要に応じて、公知のホルムアルデヒド捕捉剤を更に用いることができる。
【0046】
前記公知のホルムアルデヒド捕捉剤としては、ヒドラジド化合物、ジアゾール化合物、トリアゾール化合物、チアジアゾール化合物、ジアジン化合物、トリアジン化合物、ピリダジン化合物、尿素二量体非環状尿素複合体等の尿素または尿素誘導体、無機酸アンモニウム塩、有機酸アンモニウム塩、亜硫酸塩を挙げることができる。
【0047】
前記ヒドラジド化合物としては、例えば、カルボヒドラジド、ラウリン酸ヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ヒドラジド等を挙げることができる。前記ジアゾール化合物としては、例えば、3−メチル−5−ピラゾロン、1,3−ジメチル−5−ピラゾロン、3,5−ジメチルピラゾール等を挙げることができる。前記トリアゾール化合物としては、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール等を挙げることができる。前記チアジアゾール化合物としては、例えば、2−アミノ−5−エチル−1,3,4−チアジアゾール、5−アミノ−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール等を挙げることができる。前記ジアジン化合物としては、例えば、1,3−ジアジン、2−アミノ−4,6−ジメチル−1,3−ジアジン等を挙げることができる。前記トリアジン化合物としては、例えば、3−アミノ−5,6−ジメチル−1,2,4−トリアジン、3−ヒドロキシ−5,6−ジフェニル−1,2,4−トリアジン等を挙げることができる。前記ピリダジン化合物としては、例えば、6−メチル−8−ヒドロキシトリアゾロピリダジン、4−5−ジクロロ−3−ピリダジン等を挙げえることができる。前記尿素二量体非環状尿素複合体等の尿素または尿素誘導体としては、例えば、尿素、メチル尿素、エチル尿素、ジメチル尿素、ジエチル尿素、グアニル尿素、アセチル尿素、チオ尿素、グアニルチオ尿素、エチレン尿素環状尿素縮合体、アラントレイン環状尿素縮合体、ビウレット等を挙げることができる。
【0048】
前記無機酸アンモニウム塩としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等を挙げることができる。前記有機酸アンモニウム塩としては、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、マレイン酸アンモニウム、フタル酸アンモニウム等を挙げることができる。
【0049】
尚、前記無機酸アンモニウム塩、有機酸アンモニウム塩は、本実施形態のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物の作用効果を損なわない範囲であれば、前記高級脂肪酸等により被覆されていなくてもよい。
【0050】
前記亜硫酸塩としては、亜硫酸ソーダ、重亜硫酸ソーダ等を挙げることができる。
【0051】
本実施形態のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物は、合板製造用接着剤、パーティクルボード製造用接着剤及びMDF製造用接着剤に好適であり、合板、パーティクルボード及びMDF等へ木質材、紙等を接着する二次加工用接着剤にも好適である。更に、木工用、集成材用、紙用、繊維加工用としても有用である。
【0052】
次に、本発明の実施例及び比較例を示す。
【実施例1】
【0053】
本実施例では、まず、塩化アンモニウム1980gを20リットルのスーパーミキサーに投入し、1000r.p.m.の回転数で攪拌下、80℃まで昇温した後、該回転数で攪拌下、予め溶融させた20gのステアリン酸(花王株式会社製:商品名、ゴム用ルナックS−50、融点58〜65℃)を滴下した。ステアリン酸の全量を滴下後、さらに80℃で10分間、1000r.p.m.の回転数で攪拌を行い、塩化アンモニウム表面にステアリン酸を均一に被覆させた。被覆処理が終了した後、攪拌回転数を600r.p.m.に落とし、処理品が固まらないよう注意しながら、室温まで冷却することで、全量に対して1重量%のステアリン酸で被覆された塩化アンモニウムからなるホルムアルデヒド捕捉剤を調製した。
【0054】
次に、メラミン・ユリア共縮合ホルムアルデヒド樹脂水溶液(株式会社オーシカ製:商品名、大鹿レヂンPWP731、不揮発分57重量%、23℃における粘度0.19Pa・s)100重量部に、前記ステアリン酸で被覆された塩化アンモニウムからなるホルムアルデヒド捕捉剤2.73重量部(全塩化アンモニウム2.7重量部)、小麦粉(日清製粉株式会社製:商品名、赤花)18重量部、水10重量部を攪拌混合し、23℃における粘度3.2Pa・sの木質用接着剤組成物を調製、製糊した。
【0055】
前記木質用接着剤組成物は、前記メラミン・ユリア共縮合ホルムアルデヒド樹脂水溶液の固形分100重量部に対し、前記ステアリン酸で被覆された塩化アンモニウムからなるホルムアルデヒド捕捉剤4.8重量部を含む。
【0056】
次に、本実施例で得られた木質用接着剤組成物130gを直径57mm、高さ70mmのポリエチレン容器に入れ、35℃恒温水槽に該ポリエチレン容器内の該木質用接着剤組成物の液面が該水槽の水面より1〜2cm低くなるように保持した。
【0057】
前記35℃恒温水槽に保持したときの本実施例の木質用接着剤組成物の35℃における粘度(Pa・s)の経時変化を0分後、30分後、60分後、90分後に、BH型単一円筒回転粘度計(回転数:20r.p.m.、スピンドル番号4号、5号、6号)にて測定した。測定結果を表1に示す。
【0058】
次に、含水率5〜8重量%のラワン材からなる、それぞれ0.7mm、1.7mm、0.7mmの厚さの3枚の単板をこの順に重ね、被接着材の重ね合せ面の両面に本実施例で得られた木質用接着剤組成物を310g/m(両面)の塗布量で塗布した。前記のように重ねられた単板を20℃で10分以内の閉鎖堆積、20℃で1MPaの冷圧下にて20分、125℃で1MPaの熱圧下に60秒の条件にて接着して合板を製造し、該合板を接着性能及びホルムアルデヒド放散量評価のための試験板とした。接着性能は、JIS K 6851に規定する接着剤の木材引張せん断接着強さ試験方法に基づいて、前記試験板から所定の形状及び寸法を有する試験片を調製し、該試験片の常態強度、スチーミング処理試験強度を、毎分6000Nの荷重速度で測定することで評価した。前記常態強度は、前記試験片を測定室内温度20℃の条件で測定した。また、前記スチーミング処理強度は、前記試験片を室温の水中に2時間浸せきした後、120±3℃で3時間スチーミングを行い、これを室温の水中にさめるまで浸せきし、濡れたままの状態で、測定室内温度20℃の条件で測定した。接着強さ(MPa)の測定結果を表2に示す。また、木部において破断した面積の接着面の面積に対する百分率を材破断率(%)としてカッコ内に示す。
【0059】
次に、合板の日本農林規格(普通合板の規格)によるホルムアルデヒド放散量試験に基づいて、前記試験板から所定の寸法を有する試験片を調製した。次に、合板の日本農林規格(普通合板の規格)によるホルムアルデヒド放散量試験に基づいて前記試験片のホルムアルデヒド放散量(mg/L)を測定した。試験結果を表2に示す。
【実施例2】
【0060】
本実施例では、全量に対して5重量%のステアリン酸で被覆された塩化アンモニウムからなるホルムアルデヒド捕捉剤2.84重量部(全塩化アンモニウム2.7重量部)を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして、木質用接着剤組成物を調製、製糊した。
【0061】
前記木質用接着剤組成物は、前記メラミン・ユリア共縮合ホルムアルデヒド樹脂水溶液の固形分100重量部に対し、前記ステアリン酸で被覆された塩化アンモニウムからなるホルムアルデヒド捕捉剤5.0重量部を含む。
【0062】
次に、本実施例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして、35℃に保持したときの粘度の経時変化を測定した。測定結果を表1に示す。
【0063】
次に、本実施例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして試験板を製造し、該試験板から調製した試験片の常態強度、スチーミング処理試験強度を測定した。接着強さ(MPa)の測定結果を表2に示す。また、木部において破断した面積の接着面の面積に対する百分率を材破断率(%)としてカッコ内に示す。
【0064】
次に、本実施例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして前記試験片のホルムアルデヒド放散量(mg/L)を測定した。測定結果を表2に示す。
【実施例3】
【0065】
本実施例では、全量に対して10重量%のステアリン酸で被覆された塩化アンモニウムからなるホルムアルデヒド捕捉剤3.00重量部(全塩化アンモニウム2.7重量部)を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして、木質用接着剤組成物を調製、製糊した。
【0066】
前記木質用接着剤組成物は、前記メラミン・ユリア共縮合ホルムアルデヒド樹脂水溶液の固形分100重量部に対し、前記ステアリン酸で被覆された塩化アンモニウムからなるホルムアルデヒド捕捉剤5.3重量部を含む。
【0067】
次に、本実施例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして、35℃に保持したときの粘度の経時変化を測定した。測定結果を表1に示す。
【0068】
次に、本実施例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして試験板を製造し、該試験板から調製した試験片の常態強度、スチーミング処理試験強度を測定した。接着強さ(MPa)の測定結果を表2に示す。また、木部において破断した面積の接着面の面積に対する百分率を材破断率(%)としてカッコ内に示す。
【0069】
次に、本実施例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして前記試験片のホルムアルデヒド放散量(mg/L)を測定した。測定結果を表2に示す。
【実施例4】
【0070】
本実施例では、全量に対して18重量%のステアリン酸で被覆された塩化アンモニウムからなるホルムアルデヒド捕捉剤3.30重量部(全塩化アンモニウム2.7重量部)を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして、木質用接着剤組成物を調製、製糊した。
【0071】
前記木質用接着剤組成物は、前記メラミン・ユリア共縮合ホルムアルデヒド樹脂水溶液の固形分100重量部に対し、前記ステアリン酸で被覆された塩化アンモニウムからなるホルムアルデヒド捕捉剤5.8重量部を含む。
【0072】
次に、本実施例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして、35℃に保持したときの粘度の経時変化を測定した。測定結果を表1に示す。
【0073】
次に、本実施例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして試験板を製造し、該試験板から調製した試験片の常態強度、スチーミング処理試験強度を測定した。接着強さ(MPa)の測定結果を表2に示す。また、木部において破断した面積の接着面の面積に対する百分率を材破断率(%)としてカッコ内に示す。
【0074】
次に、本実施例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして前記試験片のホルムアルデヒド放散量(mg/L)を測定した。測定結果を表2に示す。
[比較例1]
本比較例では、ホルムアルデヒド捕捉剤の代わりに、高級脂肪酸による被覆処理を全く施さない塩化アンモニウム2.7重量部とステアリン酸0.3重量部を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして木質用接着剤組成物を調製、製糊した。本比較例において、塩化アンモニウムとステアリン酸とは、単に混合されているに過ぎない。
【0075】
次に、本比較例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして、35℃に保持したときの粘度の経時変化を測定した。測定結果を表1に示す。
【0076】
次に、本比較例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして試験板を製造し、該試験板から調製した試験片の常態強度、スチーミング処理試験強度を測定した。接着強さ(MPa)の測定結果を表2に示す。また、木部において破断した面積の接着面の面積に対する百分率を材破断率(%)としてカッコ内に示す。
【0077】
次に、本比較例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして前記試験片のホルムアルデヒド放散量(mg/L)を測定した。測定結果を表2に示す。
[比較例2]
本比較例では、ホルムアルデヒド捕捉剤の代わりに、高級脂肪酸による被覆処理を全く施さない塩化アンモニウム2.7重量部を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして木質用接着剤組成物を調製、製糊した。
【0078】
次に、本実施例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして、35℃に保持したときの粘度の経時変化を測定した。測定結果を表1に示す。
【0079】
次に、本比較例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして試験板を製造し、該試験板から調製した試験片の常態強度、スチーミング処理試験強度を測定した。接着強さ(MPa)の測定結果を表2に示す。また、木部において破断した面積の接着面の面積に対する百分率を材破断率(%)としてカッコ内に示す。
【0080】
次に、本比較例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして前記試験片のホルムアルデヒド放散量(mg/L)を測定した。測定結果を表2に示す。
【実施例5】
【0081】
本実施例では、全量に対して10重量%の、ラウリン酸(和光純薬工業株式会社製、試薬1級、融点42〜46℃)で被覆された塩化アンモニウムからなるホルムアルデヒド捕捉剤3.0重量部(全塩化アンモニウム2.7重量部)を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして、木質用接着剤組成物を調製、製糊した。
【0082】
前記木質用接着剤組成物は、前記メラミン・ユリア共縮合ホルムアルデヒド樹脂水溶液の固形分100重量部に対し、前記ラウリン酸で被覆された塩化アンモニウムからなるホルムアルデヒド捕捉剤5.3重量部を含む。
【0083】
次に、本実施例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして、35℃に保持したときの粘度の経時変化を測定した。測定結果を表1に示す。
【0084】
次に、本実施例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして試験板を製造し、該試験板から調製した試験片の常態強度、スチーミング処理試験強度を測定した。接着強さ(MPa)の測定結果を表2に示す。また、木部において破断した面積の接着面の面積に対する百分率を材破断率(%)としてカッコ内に示す。
【0085】
次に、本実施例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして前記試験片のホルムアルデヒド放散量(mg/L)を測定した。測定結果を表2に示す。
【実施例6】
【0086】
本実施例では、全量に対して10重量%のベヘン酸(和光純薬工業株式会社製、化学用、融点74〜80℃)を用い、100℃で10分間、1000r.p.m.で攪拌を行ったこと以外は実施例1と全く同一にして、全量に対して10重量%のベヘン酸で被覆された塩化アンモニウムからなるホルムアルデヒド捕捉剤を調製した。前記ホルムアルデヒド捕捉剤3.0重量部(全塩化アンモニウム2.7重量部)を用いた以外は、実施例1と全く同一にして木質用接着剤組成物を調製、製糊した。
【0087】
前記木質用接着剤組成物は、前記メラミン・ユリア共縮合ホルムアルデヒド樹脂水溶液の固形分100重量部に対し、前記ベヘン酸で被覆された塩化アンモニウムからなるホルムアルデヒド捕捉剤5.3重量部を含む。
【0088】
次に、本実施例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして、35℃に保持したときの粘度の経時変化を測定した。測定結果を表1に示す。
【0089】
次に、本実施例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして試験板を製造し、該試験板から調製した試験片の常態強度、スチーミング処理試験強度を測定した。接着強さ(MPa)の測定結果を表2に示す。また、木部において破断した面積の接着面の面積に対する百分率を材破断率(%)としてカッコ内に示す。
【0090】
次に、本実施例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして前記試験片のホルムアルデヒド放散量(mg/L)を測定した。測定結果を表2に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
表1から、全量に対して1〜18重量%のステアリン酸で被覆されている塩化アンモニウムからなるホルムアルデヒド捕捉剤を、前記メラミン・ユリアホルムアルデヒド樹脂水溶液の固形分100重量部に対して4.8〜5.8重量部含む実施例1〜4の木質用接着剤組成物によれば、ステアリン酸と単に混合されているだけである塩化アンモニウムを含む比較例1の木質用接着剤組成物及びステアリン酸で全く被覆されていない塩化アンモニウムを含む比較例2の木質用接着剤組成物に比較して、糊液粘度の経時変化が緩やかであることが明らかである。
【0093】
また、表1から、全量に対して10重量%のラウリン酸で被覆されている塩化アンモニウムからなるホルムアルデヒド捕捉剤を含む実施例5の木質用接着剤組成物及び全量に対して10重量%のベヘン酸で被覆されている塩化アンモニウムからなるホルムアルデヒド捕捉剤を含む実施例5の木質用接着剤組成物によっても、比較例1及び比較例2の木質用接着剤組成物に比較して、糊液粘度の経時変化が緩やかであることが明らかである。
【0094】
【表2】

【0095】
表2から、全量に対して1〜18重量%のステアリン酸、ラウリン酸またはベヘン酸で被覆されている塩化アンモニウムからなるホルムアルデヒド捕捉剤を、前記メラミン・ユリア共縮合ホルムアルデヒド樹脂水溶液の固形分100重量部に対して4.8〜5.8重量部含む実施例1〜6の木質用接着剤組成物によれば、ステアリン酸と単に混合されているだけである塩化アンモニウムを含む比較例1の木質用接着剤組成物及びステアリン酸で全く被覆されていない塩化アンモニウムを含む比較例2の木質用接着剤組成物に比較して、F放散量を低減することができると共に、優れた接着強度を得ることができることが明らかである。
【実施例7】
【0096】
本実施例では、全量に対して10重量%のステアリン酸で被覆された塩化アンモニウムからなるホルムアルデヒド捕捉剤1.00重量部(全塩化アンモニウム0.9重量部)を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして、木質用接着剤組成物を調製、製糊した。
【0097】
前記木質用接着剤組成物は、前記メラミン・ユリア共縮合ホルムアルデヒド樹脂水溶液の固形分100重量部に対し、前記ステアリン酸で被覆された塩化アンモニウムからなるホルムアルデヒド捕捉剤1.7重量部を含む。
【0098】
次に、本実施例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして、35℃に保持したときの粘度の経時変化を測定した。測定結果を表3に示す。
【0099】
次に、本実施例で得られた木質用接着剤組成物を用い、熱圧温度を120℃とした以外は、実施例1と全く同一にして試験板を製造し、該試験板から調製した試験片の常態強度、スチーミング処理試験強度を測定した。接着強さ(MPa)の測定結果を表4に示す。また、木部において破断した面積の接着面の面積に対する百分率を材破断率(%)としてカッコ内に示す。
【0100】
次に、本実施例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして前記試験片のホルムアルデヒド放散量(mg/L)を測定した。測定結果を表4に示す。
[比較例3]
本比較例では、ホルムアルデヒド捕捉剤の代わりに、ステアリン酸による被覆処理を全く施さない塩化アンモニウム0.9重量部を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして木質用接着剤組成物を調製、製糊した。
【0101】
次に、本比較例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして、35℃に保持したときの粘度の経時変化を測定した。測定結果を表3に示す。
【0102】
次に、本比較例で得られた木質用接着剤組成物を用い、熱圧温度を120℃とした以外は、実施例1と全く同一にして試験板を製造し、該試験板から調製した試験片の常態強度、スチーミング処理試験強度を測定した。接着強さ(MPa)の測定結果を表4に示す。また、木部において破断した面積の接着面の面積に対する百分率を材破断率(%)としてカッコ内に示す。
【0103】
次に、本比較例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして前記試験片のホルムアルデヒド放散量(mg/L)を測定した。測定結果を表4に示す。
【0104】
【表3】

【0105】
表3から、実施例3の木質用接着剤組成物に対して、前記ホルムアルデヒド捕捉剤の量を1/3とした実施例7の木質用接着剤組成物によれば、ステアリン酸で全く被覆されていない塩化アンモニウムを該ホルムアルデヒド捕捉剤に含まれる塩化アンモニウムと同一量含む比較例3の木質用接着剤組成物に比較して、糊液粘度の経時変化が緩やかであることが明らかである。
【0106】
【表4】

【0107】
表4から、実施例3の木質用接着剤組成物に対して、前記ホルムアルデヒド捕捉剤の量を1/3とした実施例7の木質用接着剤組成物によれば、ステアリン酸で全く被覆されていない塩化アンモニウムを該ホルムアルデヒド捕捉剤に含まれる塩化アンモニウムと同一量含む比較例3の木質用接着剤組成物に比較して、F放散量を低減することができると共に、優れた接着強度を得ることができることが明らかである。
【実施例8】
【0108】
本実施例では、ユリアホルムアルデヒド樹脂水溶液(株式会社 オーシカ製:商品名、大鹿レヂン283S、不揮発分49重量%、23℃における粘度0.32Pa・s)100重量部に、実施例1で得られたステアリン酸で被覆された塩化アンモニウムからなるホルムアルデヒド捕捉剤3.0重量部、小麦粉(日清製粉株式会社製:商品名、赤花)20重量部、水10重量部、粒状尿素2.7重量部を攪拌混合し、23℃における粘度3.0Pa・sの木質用接着剤組成物を調製、製糊した。
【0109】
前記木質用接着剤組成物は、前記ユリアホルムアルデヒド樹脂水溶液の固形分100重量部に対し、前記ステアリン酸で被覆された塩化アンモニウムからなるホルムアルデヒド捕捉剤6.1重量部を含む。
【0110】
次に、本実施例で得られた木質用接着剤組成物を用い、熱圧温度を115℃としたこと以外は、実施例1と全く同一にして接着性能及びホルムアルデヒド放散量評価のための試験板を製造した。接着性能は、JIS K 6851に規定する接着剤の木材引っ張りせん断接着強さ試験方法に基づいて、前記試験板から、所定の形状及び寸法を有する試験片を調製し、該試験片の常態強度、温冷水浸せき試験強度を、毎分600Nの荷重速度で測定することにより評価した。前記常態強度は、前記試験片を測定室内温度20℃の条件で測定した。また、前記温冷水浸せき試験強度は、前記試験片を60±3℃の温水中に3時間浸せきした後、室温の水中にさめるまで浸せきし、濡れたままの状態で、測定温度20℃の条件下で測定した。接着強さ(MPa)の測定結果を表5に示す。また、木部において破断した面積の接着面の面積に対する百分率を材破断率(%)としてカッコ内に示す。
【0111】
次に、本実施例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして前記試験片のホルムアルデヒド放散量(mg/L)を測定した。測定結果を表6に示す。
[比較例4]
本比較例では、ホルムアルデヒド捕捉剤の代わりに、高級脂肪酸による被覆処理を全く施さない塩化アンモニウム2.7重量部を用いたこと以外は、実施例8と全く同一にして木質用接着剤組成物を調製、製糊した。
【0112】
次に、本比較例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例8と全く同一にして試験板を製造し、該試験板から調製した試験片の常態強度、温冷水浸せき試験強度を測定した。接着強さ(MPa)の測定結果を表5に示す。また、木部において破断した面積の接着面の面積に対する百分率を材破断率(%)としてカッコ内に示す。
【0113】
次に、本比較例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして前記試験片のホルムアルデヒド放散量(mg/L)を測定した。測定結果を表5に示す。
【0114】
【表5】

【0115】
表5から、全量に対して1重量%のステアリン酸で被覆されている塩化アンモニウムからなるホルムアルデヒド捕捉剤を、前記ユリアホルムアルデヒド樹脂水溶液の固形分100重量部に対して6.1重量部含む実施例8の木質用接着剤組成物によれば、高級脂肪酸で全く被覆されていない塩化アンモニウムを該ホルムアルデヒド捕捉剤に含まれる塩化アンモニウムと同一量含む比較例4の木質用接着剤組成物に比較して、F放散量を低減することができると共に、優れた接着強度を得ることができることが明らかである。
[参考例1]
本参考例では、メラミン・ユリア共縮合ホルムアルデヒド樹脂水溶液(株式会社 オーシカ製:商品名、大鹿レジンPWP731、不揮発分57重量%、23℃における粘度0.19Pa・s)100重量部に、40メッシュ全通ステアリン酸1.5重量部、小麦粉(日清製粉社製:商品名、赤花)18重量部、水10重量部を攪拌混合し、23℃における粘度3.2Pa・sの木質用接着剤を調製、製糊した。
【0116】
次に、本比較例で得られた木質用接着剤を用い、熱圧温度を135℃としたこと以外は、実施例1と全く同一にして、試験板を製造し、該試験板から調製した試験片の常態強度、スチーミング処理試験強度を測定した。接着強さ(MPa)の測定結果を表6に示す。また、木部において破断した面積の接着面の面積に対する百分率を材破断率(%)としてカッコ内に示す。
【0117】
次に、本比較例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして前記試験片のホルムアルデヒド放散量(mg/L)を測定した。測定結果を表6に示す。
[比較参考例1]
本比較参考例では、40メッシュ全通ステアリン酸1.5重量部の代わりに、40メッシュ全通パラフィンワックス(日本精蝋株式会社製:商品名、HNP−5、融点62℃)1.5重量部を用いたこと以外は参考例1と全く同一にして木質用接着剤組成物を調製、 製糊した。
【0118】
次に、本比較参考例で得られた木質用接着剤を用い、熱圧温度を135℃としたこと以外は、実施例1と全く同一にして、試験板を製造し、該試験板から調製した試験片の常態強度、スチーミング処理試験強度を測定した。接着強さ(MPa)の測定結果を表6に示す。また、木部において破断した面積の接着面の面積に対する百分率を材破断率(%)としてカッコ内に示す。
【0119】
次に、本比較参考例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして前記試験片のホルムアルデヒド放散量(mg/L)を測定した。測定結果を表6に示す。
[比較参考例2]
本比較参考例では、40メッシュ全通ステアリン酸を全く用いないこと以外は参考例1と全く同一にして、木質用接着剤組成物を調製、製糊した。
【0120】
次に、本比較参考例で得られた木質用接着剤を用い、熱圧温度を135℃としたこと以外は、実施例1と全く同一にして、試験板を製造し、該試験板から調製した試験片の常態強度、スチーミング処理試験強度を測定した。接着強さ(MPa)の測定結果を表6に示す。また、木部において破断した面積の接着面の面積に対する百分率を材破断率(%)としてカッコ内に示す。
【0121】
次に、本比較参考例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして前記試験片のホルムアルデヒド放散量(mg/L)を測定した。測定結果を表6に示す。
[参考例2]
本参考例では、塩化アンモニウム1.0重量部を更に配合したこと以外は参考例1と全く同一にして、23℃における粘度3.0Pa・sの木質用接着剤組成物を調製、製糊した。本比較例において、塩化アンモニウムとステアリン酸とは、単に混合されているに過ぎない。
【0122】
次に、本参考例で得られた木質用接着剤を用い、熱圧温度を135℃としたこと以外は、実施例1と全く同一にして、試験板を製造し、該試験板から調製した試験片の常態強度、スチーミング処理試験強度の測定をした。接着強さ(MPa)の測定結果を表6に示す。また、木部において破断した面積の接着面の面積に対する百分率を材破断率(%)としてカッコ内に示す。
【0123】
次に、本参考例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして前記試験片のホルムアルデヒド放散量(mg/L)を測定した。測定結果を表6に示す。
[比較参考例3]
本比較参考例では、比較参考例1の木質用接着剤に塩化アンモニウム1.0重量部を更に配合したこと以外は比較参考例1と全く同一にして、23℃における粘度3.0Pa・sの木質用接着剤組成物を調製、製糊した。
【0124】
次に、本比較参考例で得られた木質用接着剤を用い、熱圧温度を135℃としたこと以外は、実施例1と全く同一にして、試験板を製造し、該試験板から調製した試験片の常態強度、スチーミング処理試験強度の測定をした。接着強さ(MPa)の測定結果を表6に示す。また、木部において破断した面積の接着面の面積に対する百分率を材破断率(%)としてカッコ内に示す。
【0125】
次に、本比較参考例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして前記試験片のホルムアルデヒド放散量(mg/L)を測定した。測定結果を表6に示す。
[比較参考例4]
本比較参考例では、比較参考例2の木質用接着剤組成物に塩化アンモニウム1.0重量部を更に配合したこと以外は、実施例6と全く同一にして、23℃における粘度3.0Pa・sの木質用接着剤組成物を調製、製糊した。
次に、本比較参考例で得られた木質用接着剤を用い、熱圧温度を135℃としたこと以外は、実施例1と全く同一にして、試験板を製造し、該試験板から調製した試験片の常態強度、スチーミング処理試験強度の測定をした。接着強さ(MPa)の測定結果を表6に示す。また、木部において破断した面積の接着面の面積に対する百分率を材破断率(%)としてカッコ内に示す。
【0126】
次に、本比較参考例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして前記試験片のホルムアルデヒド放散量(mg/L)を測定した。測定結果を表6に示す。
[参考例3]
本参考例では、ステアリン酸を1.0重量部配合したこと以外は、参考例1と全く同一にして、23℃における粘度3.2Pa・sの木質用接着剤組成物を調製、製糊した。
【0127】
次に、本参考例で得られた木質用接着剤を用いて、熱圧温度を150℃としたこと以外は、実施例1と全く同一にして、試験板を製造し、該試験板から調製した試験片の常態強度、スチーミング処理試験強度の測定をした。接着強さ(MPa)の測定結果を表6に示す。また、木部において破断した面積の接着面の面積に対する百分率を材破断率(%)としてカッコ内に示す。
【0128】
次に、本参考例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして前記試験片のホルムアルデヒド放散量(mg/L)を測定した。測定結果を表6に示す。
[比較参考例5]
本比較参考例では、パラフィンワックス1.0重量部を配合したこと以外は、比較参考例1と全く同一にして、23℃における粘度3.2Pa・sの木質用接着剤組成物を調製、製糊した。
【0129】
次に、本比較参考例で得られた木質用接着剤を用いて、熱圧温度を150℃としたこと以外は、実施例1と全く同一にして、試験板を製造し、該試験板から調製した試験片の常態強度、スチーミング処理試験強度の測定をした。接着強さ(MPa)の測定結果を表6に示す。また、木部において破断した面積の接着面の面積に対する百分率を材破断率(%)としてカッコ内に示す。
【0130】
次に、本比較参考例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして前記試験片のホルムアルデヒド放散量(mg/L)を測定した。測定結果を表6に示す。
[比較参考例6]
本比較参考例では、比較参考例2と全く同一にして、23℃における粘度3.0Pa・sの木質用接着剤組成物を調製、製糊した。
【0131】
次に、本比較参考例で得られた木質用接着剤を用いて、熱圧温度を150℃としたこと以外は、実施例1と全く同一にして、試験板を製造し、該試験板から調製した試験片の常態強度、スチーミング処理試験強度の測定をした。
【0132】
接着強さ(MPa)の測定結果を表6に示す。また、木部において破断した面積の接着面の面積に対する百分率を材破断率(%)としてカッコ内に示す。
【0133】
次に、本比較参考例で得られた木質用接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして前記試験片のホルムアルデヒド放散量(mg/L)を測定した。測定結果を表6に示す。
【0134】
【表6】

【0135】
表6から、前記メラミン・ユリア共縮合ホルムアルデヒド樹脂水溶液100重量部に対してステアリン酸1.5重量部を含む参考例1の木質用接着剤組成物によれば、熱圧温度135℃で合板を製造したときに、該メラミン・ユリア共縮合ホルムアルデヒド樹脂水溶液100重量部に対してパラフィンワックス1.5重量部を含む比較参考例1の木質用接着剤組成物及び該メラミン・ユリア共縮合ホルムアルデヒド樹脂水溶液のみからなる比較参考例2の木質用接着剤組成物に比較して、F放散量を低減することができ、ステアリン酸が前記熱圧温度でホルムアルデヒドと反応していることが明らかである。
【0136】
一方、比較参考例1の木質用接着剤組成物は、比較参考例2の木質用接着剤組成物に比較して、F放散量がほぼ同等であり、パラフィンワックスはホルムアルデヒドと反応していないことが明らかである。
【0137】
また、表6から、前記メラミン・ユリア共縮合ホルムアルデヒド樹脂水溶液100重量部に対してステアリン酸1.5重量部及び塩化アンモニウム1重量部を含む参考例2の木質用接着剤組成物によれば、熱圧温度135℃で合板を製造したときに、該メラミン・ユリア共縮合ホルムアルデヒド樹脂水溶液100重量部に対してパラフィンワックス1.5重量部及び塩化アンモニウム1重量部を含む比較参考例3の木質用接着剤組成物及び該メラミン・ユリア共縮合ホルムアルデヒド樹脂水溶液100重量部に対して塩化アンモニウム1重量部を含む比較参考例4の木質用接着剤組成物に比較して、F放散量を低減することができ、ステアリン酸がホルムアルデヒドと反応していることが明らかである。
【0138】
一方、比較参考例3の木質用接着剤組成物は、比較参考例4の木質用接着剤組成物に比較して、F放散量がほぼ同等であり、パラフィンワックスはホルムアルデヒドと反応していないことが明らかである。
【0139】
さらに、表6から、前記メラミン・ユリア共縮合ホルムアルデヒド樹脂水溶液100重量部に対してステアリン酸1.0重量部を含む参考例3の木質用接着剤組成物によれば、熱圧温度150℃で合板を製造したときに、該メラミン・ユリア共縮合ホルムアルデヒド樹脂水溶液100重量部に対してパラフィンワックス1.0重量部を含む比較参考例5の木質用接着剤組成物及び該メラミン・ユリア共縮合ホルムアルデヒド樹脂水溶液のみからなる比較参考例6の木質用接着剤組成物に比較して、F放散量を低減することができ、ステアリン酸が前記熱圧温度でホルムアルデヒドと反応していることが明らかである。
【0140】
このとき、参考例3の木質用接着剤組成物によれば、ステアリン酸の量が参考例1の木質用接着剤組成物の2/3であるにも関わらず、参考例1の木質用接着剤組成物よりもF放散量を低減することができる。従って、ステアリン酸は、前記熱圧温度を135℃よりも150℃とすることにより、さらにホルムアルデヒドと反応しやすくなるものと考えられる。
【0141】
一方、比較参考例5の木質用接着剤組成物は、比較参考例6の木質用接着剤組成物に比較して、F放散量がほぼ同等であり、パラフィンワックスはホルムアルデヒドと反応していないことが明らかである。
【実施例9】
【0142】
本実施例では、実施例7で得られた木質用接着剤組成物を用いて、熱圧時間を40秒としたこと以外は、実施例1と全く同一にして、試験板を製造し、該試験板から調製した試験片の常態強度、スチーミング処理試験強度の測定をした。接着強さ(MPa)の測定結果を表7に示す。また、木部において破断した面積の接着面の面積に対する百分率を材破断率(%)としてカッコ内に示す。
【0143】
次に、本実施例で得られた前記試験板を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして前記試験片のホルムアルデヒド放散量(mg/L)を測定した。測定結果を表7に示す。
[比較例5]
本比較例では、比較例3で得られた木質用接着剤組成物を用いて、熱圧時間を40秒としたこと以外は、実施例1と全く同一にして、試験板を製造し、該試験板から調製した試験片の常態強度、スチーミング処理試験強度の測定をした。接着強さ(MPa)の測定結果を表7に示す。また、木部において破断した面積の接着面の面積に対する百分率を材破断率(%)としてカッコ内に示す。
【0144】
次に、本比較例で得られた前記試験板を用いたこと以外は、実施例1と全く同一にして前記試験片のホルムアルデヒド放散量(mg/L)を測定した。測定結果を表7に示す。
【0145】
【表7】

【0146】
表7から、実施例3の木質用接着剤組成物に対して、前記ホルムアルデヒド捕捉剤の量を1/3とした実施例7(実施例9)の木質用接着剤組成物によれば、熱圧時間を40秒としても、ステアリン酸で全く被覆されていない塩化アンモニウムを該ホルムアルデヒド捕捉剤に含まれる塩化アンモニウムと同一量含む比較例3(比較例5)の木質用接着剤組成物に比較して、優れた接着強度を得ることができ、接着硬化時間を短くすることができることが明らかである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルムアルデヒド樹脂の水溶液と、
ホルムアルデヒドと反応する高級脂肪酸により被覆された酸アンモニウム塩からなるホルムアルデヒド捕捉剤とを含むことを特徴とするホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物。
【請求項2】
前記ホルムアルデヒド樹脂は、ホルムアルデヒドとアミノ化合物とが縮合した樹脂であることを特徴とする請求項1記載のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物。
【請求項3】
前記ホルムアルデヒド捕捉剤は、全量に対して0.5〜30重量%の範囲の前記高級脂肪酸により前記酸アンモニウム塩が被覆されていることを特徴とする請求項1または2記載のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物。
【請求項4】
前記高級脂肪酸は、40〜120℃の範囲の融点を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物。
【請求項5】
前記ホルムアルデヒド樹脂の水溶液の固形分100重量部に対して、前記ホルムアルデヒド捕捉剤を0.5〜15重量部の範囲で含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物。
【請求項6】
前記高級脂肪酸は、110〜200℃の範囲の温度でホルムアルデヒドと反応することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のホルムアルデヒド樹脂系木質用接着剤組成物。

【公開番号】特開2009−35654(P2009−35654A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202274(P2007−202274)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000205742)株式会社オーシカ (40)
【出願人】(598039965)白石工業株式会社 (12)
【出願人】(507262202)太陽化学工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】