説明

ホログラム情報記録再生装置

【課題】データ転送速度が早く、しかも大量のデータの記録・再生を行うことができ、しかも装置コストが比較的低いホログラム情報記録再生装置を提供すること。
【解決手段】時間制御部7は、所定の記録時間になるように、光源1に対して出射のタイミングを制御する。光源1から出射された光が、空間光変調器25でデータ変調される。記録されるデータは、多値化処理部7で多値化され、多値化されたデータのうちのデータを用いてデータ変調される。信号光Xと参照光Yが記録媒体3上で合波されてデータが記録される。参照光を照射して得られた再生光Zの回折強度の情報に基づいて多値データを決定する。これらの多値データは、多値化処理部7でディジタルデータに変換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホログラム情報記録再生装置に関し、特に装置環境に関係なく確実に情報を再生することができるホログラム情報記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、大量のデータを記録しておく媒体として、CD(コンパクトディスク)やDVD(ディジタルバーサタイルディスク)などの光記録媒体が広く利用されている。近年、高精細の動画像を記録したいという要望や、パーソナルコンピュータの発達によりさらに大量のデータを記録したいという要望があり、CDやDVDのような光記録媒体では、このような大量のデータを記録するために十分な高密度化を図ることができず、1枚のディスクにこれらの大量のデータを記録することができない。したがって、これらの大量のデータを記録するためには、複数のディスクを交換しながら記録しなければならない。近年、現在のCDやDVDなどに比べてかなりの大量のデータを記録することができるホログラム記録媒体が注目されている。
【0003】
ホログラム情報記録とは、ビーム光を互いにコヒーレントな2つの光に分波し、一方の光を空間光変調器でデータ変調して信号光とし、他方の光を参照光として記録媒体上で合波することにより、データを干渉縞として記録する方式である。そして、この記録媒体に記録時と同じ参照光を照射することにより、信号光を再生光として検出することができ、これによりデータを再生することができる。このホログラム情報記録再生においては、情報再生時の光の波長や照射角度が情報記録時の光の波長や照射角度と異なると信号光が再生されない。この性質を利用して、情報記録再生の光の波長や照射角度を変えて記録媒体の同じ領域にデータを多重して記録することが行われている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−216359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、情報記録再生の光の波長や照射角度を変えて記録・再生を行う場合(波長多重や照射角度多重)、波長や照射角度を高い精度で制御する必要があり、このため波長や照射角度の調整に時間がかかりデータ転送速度が低下するという問題がある。また、波長多重においては、広い波長可変範囲を有する光源を用意することが難しく、非常に高価であり、照射角度多重においては、照射角度を正確に制御するデバイスが非常に高価であるという問題もある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、データ転送速度が早く、しかも大量のデータの記録・再生を行うことができ、しかも装置コストが比較的低いホログラム情報記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のホログラム情報記録再生装置は、信号光及び参照光を出射する光源と、前記信号光及び参照光を記録媒体に照射する光学系と、前記参照光を前記記録媒体に照射した際に生じる再生光を検出する検出手段と、前記信号光の出射時間を制御する時間制御手段と、前記再生光の回折強度を測定し、測定された回折強度に基づいてデータ変換を行うデータ出力手段と、を具備することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、時間制御手段において回折強度に差がつくように設定された記録時間を管理しているので、回折強度に関連づけて多値化を実現することができる。このため、「0」、「1」の2値のディジタルデータを多値のデータとして記録することができる。その結果、記録容量が増大して大容量の記録媒体を実現することができる。また、この構成によれば、波長や照射角度で多重していないので、これらの調整に時間がかかることがなく、データ転送速度を向上させることができる。さらに、波長や照射角度の制御用のデバイスが不要であり、コスト的にも有利である。
【0009】
本発明のホログラム情報記録再生装置においては、前記記録媒体は基準回折強度を記録する少なくとも一つの強度モニタ領域を有し、前記データ出力手段は、前記強度モニタ領域の基準回折強度を用いてデータ変換を行うことが好ましい。
【0010】
この構成によれば、記録媒体が基準回折強度を記録する少なくとも一つの強度モニタ領域を有し、強度モニタ領域の基準回折強度を用いてデータ変換を行うので、情報再生の際に、参照光を記録媒体の記録領域に照射したときに、記録領域において回折強度に分布があっても、すなわち記録領域の周縁部と中心部とで回折強度が異なっていても、データを正確に再生することができる。
【0011】
本発明のホログラム情報記録方法は、多値データに対応した記録時間を準備する工程と、前記記録時間を管理しながら、信号光及び参照光を記録媒体に照射して前記記録媒体にデータを記録する工程と、を具備することを特徴とする。
【0012】
本発明のホログラム情報再生方法は、多値データに対応した記録時間でデータを記録した記録媒体に参照光を照射して得られる再生光の回折強度を測定する測定工程と、測定された回折強度をそれぞれの回折強度に対応するデータに変換するデータ変換工程と、を具備することを特徴とする。
【0013】
これらの方法によれば、回折強度に差がつくように記録時間を管理しているので、回折強度に関連づけて多値化を実現することができる。このため、「0」、「1」の2値のディジタルデータを多値のデータとして記録することができる。その結果、記録容量が増大して大容量の記録媒体を実現することができる。
【0014】
本発明のホログラム情報再生方法によれば、前記データ変換工程は、基準回折強度に基づいてそれぞれの回折強度に対応するデータに変換することが好ましい。
【0015】
この方法によれば、強度モニタ領域の基準回折強度を用いてデータ変換を行うので、情報再生の際に、参照光を記録媒体の記録領域に照射したときに、記録領域において回折強度に分布があっても、すなわち記録領域の周縁部と中心部とで回折強度が異なっていても、データを正確に再生することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、記録時間を管理しながら、信号光及び参照光を記録媒体に照射して記録媒体にデータを記録するので、回折強度に関連づけられたデータの多値化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明者は、ホログラム情報記録において、一つのデータを記録した後に別のデータを記録すると、先に記録していたデータの回折強度が下がることに着目し、情報記録時に、各データの回折強度に差がつくように各データの記録時間を制御することにより、データの多値化を実現できることを見出し、本発明をするに至った。
【0018】
すなわち、本発明の骨子は、記録時間を管理しながら、信号光及び参照光を記録媒体に照射して記録媒体にデータを記録することにより、回折強度に関連づけられたデータの多値化を実現することである。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るホログラム情報記録再生装置の概略構成を示す図である。図中1は、情報記録又は再生用の光を出射する光源を示す。光源1の後段(光路における光の進行方向上の先行する位置)には、光源1から出射された光を2つのコヒーレントな光に分波して、後段に位置する記録媒体3に照射する第1光学系2が配置されている。記録媒体3の後段には、再生光を受光する第2光学系4が配置されている。受光系4の後段には、再生光の回折強度を測定し、測定された回折強度に基づいてデータ変換を行うデータ出力部5が配置されている。光源1には、照射時間を管理して記録時間を制御する時間制御部6が接続されている。時間制御部6は、ディジタルデータを多値データに変換する多値化処理部7と接続されている。この多値データは後述する空間光変調器に出力される。
【0020】
光源1としては、所定の波長を有するレーザ光を出射する光源などのビーム状の光を出射する光源を用いることができる。例えば、光源1としては、半導体レーザなどを用いることができる。
【0021】
第1光学系2は、図1に示すように、光源1から出射されたビーム光の光路を変える第1ミラー21と、ビーム光のビーム径を拡大させるビームエキスパンダ22と、ビーム光を互いにコヒーレントな2つの光に分波するビームスプリッタ23と、分波された一方の光(参照光Y)の光路を変える第2ミラー24と、分波された他方の光(信号光X)にデータ変調を行う空間光変調器25と、データ変調された信号光を記録媒体3上に集光させるフーリエ変換レンズ26とを有する。ビームエキスパンダ22は、第1ミラー21で光路を変えられたビーム光を拡散させる第1レンズ22a及び拡散した光を平行光にする第2レンズ22bを有する。空間光変調器25は、例えば2次元配列空間ディジタルフィルタ(透過フィルタ)などで構成することができる。したがって、空間光変調器25でデータ変調された信号光は、2次元パターンを含む。
【0022】
記録媒体3には、ホログラムメモリ用の記録媒体を用いる。例えば、固定記録用ホログラム記録媒体の材料としては、銀塩感光材料、重クロム酸ゼラチン、フォトポリマーなどを用いることができ、書き換え用ホログラム記録媒体の材料としては、光誘起屈折材料、サーモプラスチックなどを用いることができる。
【0023】
第2光学系4は、情報再生用の光が記録媒体3に照射されて生じる再生光を透過させるフーリエ変換レンズ41と、フーリエ変換後の再生光を検出して再生信号を出力する光検出器42とを有する。光検出器42は、再生光の2次元パターンに対応する2次元の受光セルアレイを有しており、例えばPDアレイ、CCD素子アレイ、CMOS素子アレイなどで構成することができる。
【0024】
データ出力部5は、光検出器42で検出された再生光の回折強度を測定する強度測定部51と、この強度測定部51で測定された回折強度に基づいて多値データに変換するデータ変換部52とを有する。強度測定部51としては、光電変換可能な光検出器などを用いることができる。強度測定部51で測定された回折強度情報は、データ変換部52に出力される。データ変換部52においては、予め設定された多値データと回折強度との関係に基づいて強度測定部51からの回折強度情報から多値データに変換する。例えば、データ変換部52は、多値データと回折データとを関連づけたテーブルを備え、テーブルを参照して回折強度に対応する多値データを決定する。この多値データは、多値化処理部7に出力される。
【0025】
時間制御部6は、照射時間を管理して記録時間を制御する。ホログラム情報記録においては、図2に示すように、一つのデータを記録した後に別のデータを記録すると、先に記録していたデータの回折強度が下がる。すなわち、データAの記録に着目すると、記録時間T1では、回折強度がS1であるが、その後のデータB,C,Dの記録により回折強度がS1’に下がる。同様に、データBの記録に着目すると、記録時間T2では、回折強度がS2であるが、その後のデータC,Dの記録により回折強度がS2’に下がる。同様に、データCの記録に着目すると、記録時間T3では、回折強度がS3であるが、その後のデータDの記録により回折強度がS3’に下がる。
【0026】
したがって、この性質を利用して、各データの回折強度に差がつくように各データの記録時間を制御することによりデータの多値化を実現できる。時間制御部6は、予め前記のように設定された記録時間を管理して、この記録時間が実現できるように記録時間を制御する。具体的には、設定された記録時間に応じて光源1の切換えタイミングを制御する。なお、互いに異なる記録時間をどのような順序で管理するかについては、記録時間に対応するデータの記録順序などに応じて適宜決定する。
【0027】
多値化処理部7は、記録媒体3に記録するディジタルデータを回折強度に関連づけられた多値にデータ変換すると共に、再生光から測定された回折強度からデータ変換部52で変換された多値データをディジタルデータに変換する。
【0028】
次に、上記構成を有するホログラム情報記録再生装置による情報記録方法及び情報再生方法について説明する。
まず、ホログラム情報記録について説明する。本発明に係るホログラム情報記録方法においては、多値データに対応した記録時間を準備し、記録時間を管理しながら、分波した2つのコヒーレントな光を記録媒体で合波するように照射して記録媒体にデータを記録する。多値データと関連づけた記録時間は、予め設定することにより準備する。
【0029】
本実施の形態では、多値データとして、データA〜Dの4値のデータを用いる場合について説明する。なお、多値データとしては、4値のデータ以外の多値データを用いても良い。また、データの記録順序がA,B,C,Dの順序であるとする。この記録順序についても一例であり、適宜変更して実施することができる。
【0030】
まず、図2に示すデータAを記録する場合、時間制御部7がデータAに対応する記録時間T1を管理する。すなわち、時間制御部7は、記録時間T1になるように、光源1に対して出射のタイミングを制御する。光源1からビーム光が出射されると、このビーム光は、第1ミラー21でその光路がビームエキスパンダ22に向けられる。そして、ビーム光はビームエキスパンダ22の第1レンズ22aで拡散され、さらに第2レンズ22bで平行光に変えられる。この平行光はビームスプリッタ23で互いにコヒーレントな2つの光に分波されて一方の光が第2ミラー24に向けられ、他方の光が空間光変調器25に向けられる。
【0031】
第2ミラー24で反射された光は、記録媒体3上に参照光Yとして送られる。分波された他方の光は、空間光変調器25でデータ変調される。記録されるデータは、多値化処理部7で多値化され、多値化されたデータのうちのデータAを用いてデータ変調される。データ変調された光は、フーリエ変換レンズ26で信号光Xとして記録媒体3上に集光される。
【0032】
記録媒体3上に信号光Xと参照光Yとが合波されると、信号光Xと参照光Yが干渉して、周期的に光の回折強度が変わる干渉縞が記録媒体3上に形成される。この干渉縞は、合波する2つの光の波面の形状で決まるので、記録媒体3上では、合波する2つの光の波面の形状が情報として記録される。すなわち、記録媒体3上には、データ変調された波面を形成する信号光とデータ変調されていない波面を形成する参照光との間の干渉縞が記録される。このようにして記録媒体3上にデータAが記録される。このときのデータAの回折強度はS1である。
【0033】
次に、図2に示すデータBを記録する場合、時間制御部7がデータBに対応する記録時間T2を管理する。すなわち、時間制御部7は、記録時間T2になるように、光源1に対して出射のタイミングを制御する。そして、上記と同様にして光源1から出射された光が、空間光変調器25でデータ変調される。記録されるデータは、多値化処理部7で多値化され、多値化されたデータのうちのデータBを用いてデータ変調される。そして、信号光Xと参照光Yが記録媒体3上で合波されてデータBが記録される。このときのデータBの回折強度はS2である。このとき、データBの記録により、データAの回折強度はS1よりも低下する。
【0034】
次に、図2に示すデータCを記録する場合、時間制御部7がデータCに対応する記録時間T3を管理する。すなわち、時間制御部7は、記録時間T3になるように、光源1に対して出射のタイミングを制御する。そして、上記と同様にして光源1から出射された光が、空間光変調器25でデータ変調される。記録されるデータは、多値化処理部7で多値化され、多値化されたデータのうちのデータCを用いてデータ変調される。そして、信号光Xと参照光Yが記録媒体3上で合波されてデータCが記録される。このときのデータCの回折強度はS3である。このとき、データCの記録により、データAの回折強度はさらに低下し、データBの回折強度はS2よりも低下する。
【0035】
次に、図2に示すデータDを記録する場合、時間制御部7がデータDに対応する記録時間T4を管理する。すなわち、時間制御部7は、記録時間T4になるように、光源1に対して出射のタイミングを制御する。そして、上記と同様にして光源1から出射された光が、空間光変調器25でデータ変調される。記録されるデータは、多値化処理部7で多値化され、多値化されたデータのうちのデータDを用いてデータ変調される。そして、信号光Xと参照光Yが記録媒体3上で合波されてデータDが記録される。このときのデータDの回折強度はS4である。このとき、データDの記録により、データA及びデータBの回折強度はさらに低下し、データCの回折強度はS3よりも低下する。
【0036】
このようにしてデータA〜Dを記録媒体3上に記録すると、回折強度は、データAはS1’となり、データBはS2’となり、データCはS3’となる。このように、データA〜Cについての回折強度は低下するが、予め回折強度S1’,S2’,S3’,S4の間に強度差がつくように設定されているので、これにより記録媒体3に多値データを記録することができる。
【0037】
次に、ホログラム情報再生について説明する。本発明に係るホログラム情報記録方法においては、多値データに対応した記録時間でデータを記録した記録媒体に情報再生用の光を照射して得られる再生光の回折強度を測定し、測定された回折強度をそれぞれの回折強度に対応するデータに変換する。
【0038】
データを再生する場合において、光源1からビーム光が出射されると、ビーム光は、第1ミラー21でその光路がビームエキスパンダ22に向けられ、ビームエキスパンダ22の第1レンズ22aで拡散され、さらに第2レンズ22bで平行光に変えられる。この平行光はビームスプリッタ23を通って、フーリエ変換レンズ26で信号光Xとして記録媒体3上に集光される。
【0039】
記録媒体3に記録された干渉縞はブラッググレーティングとなっているので、参照光Yが照射されると、ブラッグ回折により信号光Xと同じ再生光Zが得られる。情報再生用の光の波長と情報記録用の光の波長が略同じであれば、これによりそのページに記録されたデータを再生することができる。この再生光Zは、フーリエ変換レンズ41を通して平行光にされ、光検出器42で検出される。光検出器42で検出された再生光Zは、データ出力部5の強度測定部51で回折強度が測定される。なお、本実施の形態においては、光検出器42で再生光Zを検出し、強度測定部51で再生光Zの回折強度を測定するような構成を採用しているが、本発明においては、光検出器42において回折強度まで測定するような構成であっても良い。
【0040】
測定された回折強度の情報は、データ変換部52に送られる。データ変換部52では、回折強度の情報に基づいて多値データを決定する。すなわち、予め回折強度と多値データとが関連づけられているので、その関係を用いて、測定された回折強度に多値データを割り当てる。例えば、回折強度がS1’の部分はデータAを割り当て、回折強度がS2’の部分はデータBを割り当て、回折強度がS3’の部分はデータCを割り当て、回折強度がS4の部分はデータDを割り当てる。これらの多値データは、多値化処理部7に送られる。多値化処理部7では、多値データをディジタルデータに変換する。なお、本実施の形態においては、強度測定とデータ変換とが別の処理部を構成するように説明しているが、これらの処理が一つの処理部で行われるように構成されても良い。
【0041】
上述したように、本実施の形態に係るホログラム情報記録再生装置においては、多値データに対応した記録時間を準備し、記録時間を管理しながら、分波した2つのコヒーレントな光を記録媒体で合波するように照射して記録媒体にデータを記録すると共に、この記録媒体に情報再生用の光を照射して得られる再生光の回折強度を測定し、測定された回折強度をそれぞれの回折強度に対応するデータに変換する。この場合、回折強度に差がつくように記録時間を管理しているので、回折強度に関連づけて多値化を実現することができる。このため、「0」、「1」の2値のディジタルデータを多値のデータとして記録することができる。その結果、記録容量が増大して大容量の記録媒体を実現することができる。また、本実施の形態に係る装置によれば、波長や照射角度で多重していないので、これらの調整に時間がかかることがなく、データ転送速度を向上させることができる。さらに、波長や照射角度の制御用のデバイスが不要であり、コスト的にも有利である。
【0042】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2に係るホログラム情報記録再生装置の概略構成を示す図である。図3において、図1と同じ部分については図1と同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0043】
図3に示す装置においては、記録媒体3が基準回折強度を検知するための少なくとも一つの強度モニタ領域を有している。この強度モニタ領域の基準回折強度の情報は、データ出力部5の強度測定部51に送られて、回折強度の決定に用いられる。
【0044】
情報再生の際に、参照光を記録媒体の記録領域に照射したとき、記録領域において回折強度に分布があると、すなわち記録領域の周縁部と中心部とで回折強度が異なると、データを読み誤る可能性がある。このため、図4に示すように、記録媒体3の記録領域31に基準回折強度を与える強度モニタ領域32を設ける。この強度モニタ領域32は、少なくとも一つあれば良く、その数には制限はない。また、強度モニタ領域32は、効率良く回折強度分布に対応するために、図4に示すように、中心部と周縁部に配置されていることが望ましい。なお、強度モニタ領域32は、多値データの多値数分の領域に区画されて、その個々の領域がそれぞれのデータに対応するように形成する。なお、強度モニタ領域32は、必ずしも多値数分設ける必要はなく、2つ又は3つであっても良く、データ精度が良ければ基準強度分1つであっても良い。
【0045】
次に、上記構成を有するホログラム情報記録再生装置による情報記録方法及び情報再生方法について説明する。本実施の形態では、多値データとして、データA〜Dの4値のデータを用い、データの記録順序がA,B,C,Dの順序であるとする。また、記録媒体3のそれぞれの強度モニタ領域32は、データA〜Dに対応するように4つの領域に区画されている。
【0046】
ホログラム情報記録では、図2に示すデータAを記録する場合、時間制御部7がデータAに対応する記録時間T1を管理する。すなわち、時間制御部7は、記録時間T1になるように、光源1に対して出射のタイミングを制御する。そして、光源1から出射された光が、空間光変調器25でデータ変調される。記録されるデータは、多値化処理部7で多値化され、多値化されたデータのうちのデータAを用いてデータ変調される。そして、信号光Xと参照光Yが記録媒体3上で合波されてデータAが記録される。このとき、記録媒体3の強度モニタ領域32の一番上の領域にも記録時間T1で記録が行われる。続けて、データB〜Dを記録媒体3の記録領域31に記録すると共に、強度モニタ領域32にも記録を行う。すなわち、強度モニタ領域32の上から二番目の領域に記録時間T2で記録が行われ、強度モニタ領域32の上から三番目の領域に記録時間T3で記録が行われ、強度モニタ領域32の一番下の領域に記録時間T4で記録が行われる。
【0047】
ホログラム情報再生では、光源1からビーム光を出射して、参照光Yを記録媒体3に照射して再生光Zを得る。この再生光Zは、フーリエ変換レンズ41を通して平行光にされ、光検出器42で検出される。光検出器42で検出された再生光Zは、データ出力部5の強度測定部51で回折強度が測定される。なお、本実施の形態においては、光検出器42で再生光Zを検出し、強度測定部51で再生光Zの回折強度を測定するような構成を採用しているが、本発明においては、光検出器42において回折強度まで測定するような構成であっても良い。
【0048】
測定された回折強度及び強度モニタ領域32の基準回折強度はデータ変換部52に送られる。データ変換部52では、測定された回折強度及び強度モニタ領域32の基準回折強度に基づいて多値データを決定する。すなわち、測定された回折強度及び強度モニタ領域32の基準回折強度を比較しながら、測定された回折強度に多値データを割り当てる。すなわち、強度モニタ領域32の基準回折強度と多値データとが関連づけられているので、その関係を用いて、測定された回折強度に多値データを割り当てる。具体的には、記録領域31で測定された回折強度は、その近くの強度モニタ領域32の基準回折強度と比較する。このとき、測定された回折強度と強度モニタ領域32のどの領域の基準回折強度とが近いかを決定し、決定した基準回折強度に対応する多値データを割り当てる。これらの多値データは、多値化処理部7に送られる。多値化処理部7では、多値データをディジタルデータに変換する。なお、本実施の形態においては、強度測定とデータ変換とが別の処理部を構成するように説明しているが、これらの処理が一つの処理部で行われるように構成されても良い。
【0049】
上述したように、本実施の形態に係るホログラム情報記録再生装置においては、記録媒体が基準回折強度を記録する少なくとも一つの強度モニタ領域を有し、強度モニタ領域の基準回折強度を用いてデータ変換を行うので、情報再生の際に、参照光を記録媒体の記録領域に照射したときに、記録領域において回折強度に分布があっても、すなわち記録領域の周縁部と中心部とで回折強度が異なっていても、データを正確に再生することができる。また、本実施の形態に係るホログラム情報記録再生装置においては、実施の形態1と同様に、回折強度に差がつくように記録時間を管理しているので、回折強度に関連づけて多値化を実現することができる。このため、「0」、「1」の2値のディジタルデータを多値のデータとして記録することができる。その結果、記録容量が増大して大容量の記録媒体を実現することができる。また、本実施の形態に係る装置によれば、波長や照射角度で多重していないので、これらの調整に時間がかかることがなく、データ転送速度を向上させることができる。さらに、波長や照射角度の制御用のデバイスが不要であり、コスト的にも有利である。また、さらに記録容量を増加させるために、角度多重、波長多重、位置多重などを組み合わせて構成しても良い。
【0050】
本発明は上記実施の形態1,2に限定されず、種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態1,2においては、多値データと回折強度とを関連づけた場合について説明しているが、本発明においては、回折強度の差が異なるように記録時間を管理して、多値データと回折強度の差とを関連づけても良い。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態1に係るホログラム情報記録再生装置の概略構成を示す図である。
【図2】回折強度と記録時間との関係を示す特性図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係るホログラム情報記録再生装置の概略構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係るホログラム情報記録再生装置の記録媒体を説明するための図である。
【符号の説明】
【0052】
1 光源
2 第1光学系
3 記録媒体
4 第2光学系
5 データ出力部
6 時間制御部
7 多値化処理部
21 第1ミラー
22 ビームエキスパンダ
23 ビームスプリッタ
24 第2ミラー
25 空間光変調器
26,41 フーリエ変換レンズ
31 記録領域
32 強度モニタ領域
42 光検出器
51 強度測定部
52 データ変換部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号光及び参照光を出射する光源と、前記信号光及び前記参照光を記録媒体に照射する光学系と、前記参照光を前記記録媒体に照射した際に生じる再生光を検出する検出手段と、前記信号光の出射時間を制御する時間制御手段と、前記再生光の回折強度を測定し、測定された回折強度に基づいてデータ変換を行うデータ出力手段と、を具備することを特徴とするホログラム情報記録再生装置。
【請求項2】
前記記録媒体は基準回折強度を記録する少なくとも一つの強度モニタ領域を有し、前記データ出力手段は、前記強度モニタ領域の基準回折強度を用いてデータ変換を行うことを特徴とする請求項1記載のホログラム情報記録再生装置。
【請求項3】
多値データに対応した記録時間を準備する工程と、前記記録時間を管理しながら、信号光及び参照光を記録媒体に照射して前記記録媒体にデータを記録する工程と、を具備することを特徴とするホログラム情報記録方法。
【請求項4】
多値データに対応した記録時間でデータを記録した記録媒体に参照光を照射して得られる再生光の回折強度を測定する測定工程と、測定された回折強度をそれぞれの回折強度に対応するデータに変換するデータ変換工程と、を具備することを特徴とするホログラム情報再生方法。
【請求項5】
前記データ変換工程は、基準回折強度に基づいてそれぞれの回折強度に対応するデータに変換することを特徴とする請求項4記載のホログラム情報再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−277840(P2006−277840A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−95900(P2005−95900)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】