説明

ホログラム記録再生装置

【課題】精度よく2値化が可能なホログラム記録再生装置を提供する。
【解決手段】複数の画像データを構成する各画素についての複数の画像データにわたる輝度信号を集計し、その平均値を算出する。そして、各画素の輝度信号の平均値をそれぞれ各画素について2値化を行う際の閾値として設定する。エンコードする際には、複数のページデータにわたって各画素の白黒比が1:1となるように変調を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホログラム記録再生装置に関し、所定の光学系を介してホログラム記録媒体に参照光を照射して得られた再生光の写像を示す画像データを取得し、当該画像データに基づいて電子データを再生するホログラム記録再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のホログラム再生装置として、再生時に画像データを2値化するときの閾値をブロックごとに調整するものが提案されている(特許文献1、参照。)。
かかるホログラム再生装置においては、ブロックに属する各画素の階調値の傾向に基づいて当該ブロックについての適正な閾値が設定される。従って、例えば画像データを得るための光学系に不均一さがある場合でも、精度よい2値化を実現することが可能であった。
【特許文献1】特開平11−272151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した技術においては、各ブロックを構成する各画素の階調値の傾向に基づいて閾値が設定されるため、ブロックを小さくすると適正な閾値を設定することができないという問題があった。すなわち、ブロックを小さくすると属する画素の数が少なくなるため、わずかな画素の階調値の傾向に基づいて閾値を設定しなければならず、ノイズの影響を受けやすくなるという問題があった。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、精度よく2値化が可能なホログラム記録再生装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために請求項2にかかる発明は、所定の光学系を介してホログラム記録媒体に参照光を照射して得られた再生光の写像を示す画像データを取得し、当該画像データに基づいて電子データを再生するホログラム記録再生装置において、上記電子データを複数の2値画素で構成されるページデータに変調するエンコード手段と、上記ページデータに基づいて信号光を生成し、当該信号光を上記参照光と干渉させつつ上記ホログラム記録媒体に照射して干渉パターンの記録を行う記録手段と、上記参照光を上記干渉パターンに照射して複数の多階調画素で構成される上記画像データを取得する再生手段と、上記画像データの各画素の各画像信号について所定の閾値に基づいて2値判定することによりページデータを復元する2値化手段と、上記ページデータに基づいて電子データを復調するデコード手段と、複数の上記画像データを取得し、上記画像データを構成する各領域についての複数の上記画像データにわたる上記画像信号の統計結果に基づいて、当該各領域についての上記閾値を設定する閾値設定手段とを具備する構成としてある。
【0005】
上記のように構成した請求項2の発明において、ホログラム記録媒体に所定の光学系を介して参照光を照射することにより、再生光の写像を示す画像データが取得される。この画像データに基づいてデコードを行うことにより電子データが再生される。エンコード手段は、記録時において記録しようとする上記電子データを複数の2値画素で構成されるページデータに変調する。記録手段は、上記ページデータに基づいて信号光を生成するとともに、上記信号光を上記参照光とが干渉した状態で、これらを上記ホログラム記録媒体に照射する。これにより、上記ホログラム記録媒体には干渉パターンが記録されることとなる。
【0006】
一方、再生時においては上記参照光を上記干渉パターンに照射して複数の多階調画素で構成される上記画像データが所定の撮像素子によって取得される。この画像データは多階調画素で構成され、2値化手段が上記画像データの各画素の各画像信号について所定の閾値に基づいて2値判定することにより、当該画像データがページデータに復元される。さらに、デコード手段は、上記ページデータに基づいて電子データを復調する。以上により、記録した上記電子データを読み取ることができる。閾値設定手段は、複数の上記画像データを取得し、上記画像データを構成する各領域についての複数の上記画像データにわたる上記画像信号の統計結果に基づいて、当該各領域についての上記閾値を設定する。すなわち、単一の上記画像データのみならず複数の上記画像データにわたる対象領域の上記画像信号の統計結果に基づいて上記閾値が設定される。
【0007】
さらに、請求項3にかかる発明は、上記領域は上記画像データを構成する各画素単位とされる構成としてある。
上記のように構成した請求項3の発明において、上記領域は上記画像データを構成する各画素単位とされるため、上記閾値は各画素ごとに設定されることとなる。
【0008】
また、請求項4にかかる発明において、上記エンコード手段は、各画素について画素値の度数が複数の上記ページデータにわたって略均等となるように変調を行うとともに、上記閾値設定手段は、各画素についての複数の上記画像データにわたる上記画像信号の平均値を上記閾値として設定する構成としてある。
上記のように構成した請求項4の発明では、上記ページデータは2値画素によって構成されるが、複数の上記ページデータにおける各画素の画素値の度数が略均一になるように上記ページデータが変調される。例えば、100ページの上記ページデータを取得した場合には、各画素における画素値(0,1)がほぼ50個ずつとなるように変調される。そして、上記閾値設定手段は、各画素についての複数の上記画像データにわたる上記画像信号の平均値を上記閾値として設定する。
【0009】
さらに、請求項5にかかる発明は、上記エンコード手段は、ダミー画素を上記ページデータに挿入することにより、各画素の画素値の度数が複数の上記ページデータにわたって略均等となるように変調を行う構成としてある。
上記のように構成された請求項5の発明では、各画素の画素値の度数が複数の上記ページデータにわたって略均等とするために、ダミー画素を上記ページデータに挿入する。
【0010】
さらに、請求項6にかかる発明は、上記エンコード手段は、複数の上記ページデータが上記光学系に対して回転するように変調を行う構成としてある。
上記のように構成された請求項6の発明では、複数の上記ページデータが上記光学系に対して回転するような変調が行われる。すなわち、複数の上記ページデータが上記光学系に対して単一の方向とならないように回転させられる。
【0011】
また、請求項7にかかる発明は、上記閾値設定手段は、再生対象とする上記干渉パターンの近くに記録された複数の上記干渉パターンについての上記画像データを取得し、上記画像データを構成する各領域についての複数の上記画像データにわたる上記画像信号の統計結果に基づいて、当該各領域についての上記閾値を設定する構成としてある。
上記のように構成した請求項7の発明では、再生するにあたり、再生対象とする上記干渉パターンの近くに記録された複数の上記干渉パターンについての上記画像データを取得する。そして、これらの画像データを対象とした上記統計結果に基づいて、当該各領域についての上記閾値を設定する。
【0012】
さらに、請求項8にかかる発明は、上記エンコード手段は、上記電子データを複数の2値信号の割合が均等な複数の画素で構成されたシンボルの組み合わせに変換するともに、同一のシンボルを構成する各画素を複数の上記ページデータに均等に分散させる構成としてある。
上記のように構成した請求項8の発明では、まず、上記電子データが複数の2値信号の割合が均等な複数の画素で構成されたシンボルの組み合わせに変換される。そして、各シンボルを構成する画素が複数の上記ページデータに均等に分散させられる。例えば、4画素で構成されるシンボルの各画素が、4ページのページデータに1画素ずつ分散させられる。
【0013】
以上の構成をさらに具体化したホログラム記録再生装置によっても本発明を実現することができ、その具体例として請求項1にかかる発明は、所定の光学系を介してホログラム記録媒体に参照光を照射して得られた再生光の写像を示す画像データを取得し、当該画像データに基づいて電子データを再生するホログラム記録再生装置において、記録する電子データを複数の2値画素で構成されるページデータに変調するとともに、複数の当該ページデータにわたる画素値の度数を各画素おいて略均等とし、各ページデータを上記光学系に対して回転させるエンコード手段と、上記ページデータに基づいて信号光を生成し、当該信号光を上記参照光と干渉させつつ上記ホログラム記録媒体に照射して干渉パターンの記録を行う記録手段と、上記参照光を上記干渉パターンに照射して各画素が多階調の画像信号を有する上記画像データを取得する再生手段と、上記画像データの各画素の各画像信号について所定の閾値に基づいて2値判定することによりページデータを復元する2値化手段と、上記ページデータに基づいて電子データを復調するデコード手段と、再生対象とする上記干渉パターンの近くに記録された複数の上記干渉パターンについての上記画像データを取得し、上記画像データを構成する各画素についての複数の上記画像データにわたる上記画像信号の平均値を当該画素についての上記閾値として設定する閾値設定手段とを具備する構成としてある。
かかる構成においても請求項2から請求項7の各発明の発明特定事項が含まれるため、請求項2から請求項7の各発明の単独または相乗的な作用効果が実現できることはいうまでもない。
【発明の効果】
【0014】
請求項1および請求項2の発明によれば、精度よくページデータヘの2値化が可能なホログラム記録再生装置を提供することができる。
請求項3の発明によれば、閾値を細かく設定することができる。
請求項4の発明によれば、簡易な演算によって閾値を求めることができる。
【0015】
請求項5の発明によれば、画素値を複数のページデータにわたって均等にすることができる。
請求項6の発明によれば、画素値が複数のページデータにわたって冗長となることが防止できる。
請求項7の発明によれば、再生時に最適な閾値を設定することができる。
請求項8の発明によれば、簡易な手法によって画素値を複数のページデータにわたって均等にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施形態について説明する。
(1)第1の実施形態:
(1−1)記録処理:
(1−2)再生処理:
(2)変形例:
【0017】
(1)第1の実施形態
図1は、本発明の第1の実施形態にかかるホログラム記録再生装置の概略構成を示している。同図において、ホログラム記録再生装置10はコントローラ11とレーザ光源12と対物レンズ13,18とビームスプリッタ14とハーフミラー15,16とDMD[Digital Micro Mirror Device]17と集光レンズ20と画像センサ21とから構成されている。
【0018】
コントローラ11は、画像センサ21から得られた画像データを例えば2進数の電子データにデコードするデコーダ11aと、デコーダ11aと逆の処理を行うエンコーダ11bと、所定の制御プログラムにしたがって各種制御処理を実行するマイコン11cと、レーザ光源12に対して駆動信号を送出するドライバ11dとから構成されている。画像センサ21は複数の光電素子がドットマトリクス状に配列したセンサであり、各光電素子に入射した光強度(輝度)に応じた電荷を生じさせ、当該電荷の量を多階調にデジタル化した輝度画像データをデコーダ11aに出力する。例えば、画像センサ21としてCCDセンサやCMOSセンサを利用することができる。
【0019】
レーザ光源12は、コヒーレントなレーザ光が生成可能であり、例えばYAGレーザ等の固体レーザや半導体レーザを使用することができる。ドライバ11dは、レーザ発振させるための駆動電流をレーザ光源12に供給する。レーザ光源12から出力されたレーザ光は対物レンズ13によって平行光に変換され、ビームスプリッタ14に入射する。ビームスプリッタ14は半反射面を有し、入射した平行光を直進光と屈曲光に分岐させる。ここにおける直進光は信号光であり、屈曲光が参照光となる。信号光はDMD17にて反射される。
【0020】
DMD17はエンコーダ11bから入力した画像データに基づきドットマトリクス状に配列したマイクロミラーの配向角を個別に制御する。各マイクロミラーは、後段のハーフミラー16に反射光を入射させる方向と、図示しない吸収体に反射光を入射させる方向のいずれかに配向角を切り換えることができる。従って、エンコーダ11bから入力した画像データに対応した信号光をハーフミラー16に出力することができる。
【0021】
一方、参照光は半反射面を有するハーフミラー15にて反射され、そのままハーフミラー16に導光される。ハーフミラー16は半反射面を有し、DMD17からの信号光を対物レンズ18に向けて反射させる。一方、ハーフミラー16に入射した参照光はハーフミラー16の半反射面を透過し、そのまま対物レンズ18に向けて直進する。このとき、信号光と再生光とが互いに干渉し、エンコーダ11bから入力した画像データが反映された2光束干渉光が生成される。この2光束干渉光は対物レンズ18にて集光させられ、ホログラム記録媒体にて干渉パターンとして結像される。
【0022】
ホログラム記録媒体は干渉パターンを屈折率(透過率)の変化として記録する感光記録層を有しており、例えば感光記録層としてニオブ酸リチウム単結晶、フォトポリマー等の感光材料を使用することができる。これにより、エンコーダ11bに入力した電子データに応じた干渉パターンをホログラム記録媒体に記録することができる。なお、ホログラム記録媒体はディスク状記録媒体であり、図示しないモータによって回転されることにより干渉パターンの結像位置を変えることができ、シフト多重により多量の電子データを記録することができる。
【0023】
電子データの再生を行う場合には、DMD17によるマイクロミラーの反射角の制御によって信号光が吸収体に吸収され、参照光のみがホログラム記録媒体に到達させられる。ホログラム記録媒体においては記録された干渉パターンが参照光の回折格子として作用し、この回折光が再生光として生成される。なお、回折格子としての干渉パターンによって回折が生じる波長の参照光が入力される必要があり、基本的には記録時の参照光と信号光と同一の波長を再生時にも使用する必要がある。
【0024】
本実施形態では、反射膜を有する反射式のホログラム記録媒体を使用しており、再生光がホログラム記録媒体を反射して、対物レンズ18に入射されることとなる。対物レンズ18にて平行光に変換された再生光はハーフミラー16を透過し、画像センサ21に再生光の写像が結像されることとなる。画像センサ21から得られた画像データは、所定の閾値を基準として2値判定を行うことによりページデータに変換され、さらにデコーダ11aによってもとの電子データが再現される。なお、以上説明したホログラム記録再生装置10の各光学系の配置や方式はあくまでも一例であり、他の形態のホログラム記録再生装置においても本発明を適用することができる。
【0025】
(1−1)記録処理
図2は、記録処理の流れを示している。同図において、ステップS100にて電子データが取得される。電子データはオンビット(1)とオフビット(0)が配列した2進数のデータであり、例えば図示しないハードディスク等の記録装置やネットーワーク等によって供給される。ステップS110においては、電子データを構成する各ビットがそれぞれシンボルに変換され、各シンボルを規則的に配列させることによりページデータが生成される。
【0026】
図3は、電子データが複数のページデータに変調される様子を模式的に説明している。同図左においては2進数の電子データを模式的に示し、同図右においては当該電子データに対応するページデータを示している。電子データにおけるオンビット(1)はページデータにおいて上下に白□黒■が配列するシンボルに変換され、オフビット(0)はページデータにおいて上下に黒■白□が配列するシンボルに変換される。そして、各シンボルを規則的に配列させることにより、電子データに対応したドットマトリクス状のページデータに変調(エンコード)される。
【0027】
ここでは、ページデータの実データ領域R1の左上隅から右に向かって電子データの各ビットに対応するシンボルが順に配列され、一行分(2画素で一行)がシンボルによって充填されると次の下の行にてシンボルが左から右に埋められる。また、各ページデータの実データ領域R1の外側において余白領域R2が設けられており、実データ領域R1において最初にシンボルが埋められる左上隅部の外側には基準位置を示すためのアライメントシンボルASが添付される。電子データが極めて小さい場合を除いて、電子データは複数のページデータに変調される。なお、ページデータを構成する画素は白□黒■いずれかの画像信号を有する2値画素である。
【0028】
ステップS120においては、各ページデータを90度単位でランダムに回転させる。例えば、各ページデータについて0〜3までの整数の乱数を発生させ、各乱数について0=0度回転(回転しない)、1=90度回転、2=180度回転、3=270度回転というように回転角を対応付けて回転させる。図4は、各ページデータがランダムに回転される様子を示している。上述したとおり左上隅部の外側の基準位置にアライメントシンボルASが添付されているため、回転させた場合も実データ領域R1における最初のシンボルがどの位置にあるかや、どの方向にシンボルが配列しているかを認識することができる。また、各ページデータおよび実データ領域R1は正方形であり、その中央を中心として回転させるため、回転させてもDMD17においてページデータおよび実データ領域R1が占める領域は変動しない。
【0029】
ステップS130においては、ステップS120において回転された複数のページデータの各画素について白黒比を取得する。図5は白黒比を模式的に説明している。同図において、各ページデータの実データ領域R1における左上隅の画素についての白黒比が取得されている。各ページデータは他のページデータと無関係に生成されているため、白黒比がどのようになっているかは不明である。
【0030】
しかし、各シンボルは必ず白□黒■で構成され各ページデータ内の白黒比が1:1であるとともに、ステップS120にてランダムに回転させているため、ある程度多い枚数のページデータを集計することにより、各画素の白黒比が1:1に収束していると考えられる。例えば、100ページのページデータの各画素が、白画素と黒画素の度数が約50個ずつあると考えることができる。ただし、確率的に不均一な画素も存在しうるため、ステップS130にて白黒比を算出する。
【0031】
ステップS140においては白黒比が不均一な画素があったか否かが判定され、白黒比が不均一な画素があった場合には、ステップS120にて行った回転をキャンセルし、ステップS150にてダミーシンボル(ダミー画素)をページデータに挿入する。例えば、100ページのページデータにおいて、白画素または黒画素の度数(当該画素が白画素または黒画素となっているページ数)が50±3個の範囲外となる画素が存在した場合には、不均一であると判定される。ダミーシンボルは、無意味なデータであり、所定の挿入規則にしたがって各ページデータに挿入される。
【0032】
挿入したダミーシンボルの挿入規則を特定するデータを所定のページデータに追記しておけば、後述するデコードの際にダミーシンボルを実データから除去することができる。ダミーシンボルは各シンボルの配列状況を変えることができ、かつ、デコードの際に除去することができればよく、種々の挿入手法を適用することができる。ダミーシンボルが挿入されると、再度、ステップS120に戻ってランダムに回転させられ、さらにステップS140にて白黒比が不均一な画素の有無が判定される。以上の処理を繰り返して行うことにより、最終的にすべての画素の複数のページデータにわたる白黒比が1:1となる回転角とダミーシンボルの組み合わせを得ることができる。
【0033】
白黒比が略均一となったことが確認されると各ページデータをDMD17に順次出力し、参照光と干渉させることにより干渉パターンをホログラム記録媒体に順次記録していく。例えば、ディスク状のホログラム記録媒体を回転させつつ記録を行うことにより、周方向に順次位置をずらして干渉パターンを記録していく。ステップS120にて回転させられた各ページデータは、回転させられた状態でDMD17に出力されるため、各ページデータが反映された信号光もDMD17やハーフミラー16や対物レンズ18や画像センサ21等の光学系に対して回転させられる。
【0034】
(1−2)再生処理
図6は、再生処理の流れを示している。同図において、ステップS200にてホログラム記録媒体における再生位置を取得する。例えば、ある電子ファイルの読み出しを指定されたとき、その電子ファイルの電子データに対応する干渉パターンが記録されたホログラム記録媒体の位置が取得される、図7は、ホログラム記録媒体における再生位置を模式的に示している。同図に示すように、ある電子ファイルの読み出しを指定した場合に、その電子ファイルの電子データに対応する複数の干渉パターン(●で模式的に示す。)の位置が取得され、これらがホログラム記録媒体の周方向に配列している。この場合、ホログラム記録媒体を回転させながら順次干渉パターンに再生光を照射することで、対象の電子ファイルを読み出すことができる。
【0035】
ステップS210においては、電子ファイルの電子データに対応する複数の干渉パターンに対して周方向に隣接する複数の干渉パターン(○で模式的に示す。)に対して参照光を順次照射し、その再生光の写像を順次画像センサ21にて撮像する。画像センサ21は、例えば各画素が256階調の多階調の画像信号(輝度信号)を有する画像データを各干渉パターンごとに生成する。例えば、○で示した200個の干渉パターンに対して参照光を照射した場合には、200個の画像データが生成されることとなる。
【0036】
ステップS220においては、複数の画像データの輝度信号の平均値を各画素について算出する。図8(a),8(b)は、ある画素についての複数の画像データにわたる輝度信号の統計結果をヒストグラムによって示している。同図において、縦軸は度数を示し、横軸は輝度信号を示している。このような統計結果がすべての画素ごとに得られることとなる。上述したとおり記録時において2値画素で構成されるページデータが、再生時に画像データとして再現されるため、白□画素に対応する輝度信号の集合と、黒■画素に対応する輝度信号の集合が形成されることとなる。
【0037】
また、各画素における白黒比が、ほぼ1:1となることが保証されているため、白□画素に対応する輝度信号の集合と黒■画素に対応する輝度信号の集合との度数がほぼ均等となる。そのため、すべての画像データにおける当該画素の画像信号を単純に加算し、画像データの個数で除算して得られる平均値は、白□画素に対応する輝度信号の集合と、黒■画素に対応する輝度信号の集合のほぼ中央の輝度となるということができる。従って、輝度信号がこの平均値よりも明るい画素は白□画素に対応すると判断することができ、輝度信号がこの平均値よりも暗い画素は黒■画素に対応すると判断することができる。この平均値を2値化の閾値として設定することにより、精度よい2値化を実現することができる。
【0038】
例えば、DMD17やハーフミラー16や対物レンズ18や画像センサ21からなる光学系にばらつきがあり、図9のように画像データの輝度特性に偏りが生じる場合がある。中央のエリアA1においては明るめの輝度分布となり、端のエリアA2においては暗めの輝度分布となることも考えられる。中央のエリアA1においては白黒画素のはっきりした明暗が捉えられ、輝度分布が図8(a)のようになる。端のエリアA2においては全体に暗く各集合の輝度差も小さい図8(b)のような輝度分布が得られる。
【0039】
このような場合であっても、各画素ごとに輝度信号の平均値を閾値として設定することにより、中央のエリアA1および端のエリアA2を構成する各画素について適切な2値化を行うことができる。さらに、各画素ごとに閾値を設定することにより、例えばある画素を担当するDMD17のマイクロミラーに不具合がある場合等においても当該画素の2値化に適した閾値を設定することができる。この各画素の閾値はマイコン11cが有するメモリに記憶される。
【0040】
ステップS230においては、ステップS200にて取得した再生対象の電子データに対応する複数の干渉パターン(図7で●で模式的に示す。)に順次参照光を照射し、順次画像センサ21にて撮像する。得られた画像データが順次デコーダ11aに入力され、当該デコーダ11aにて2値化してページデータに復元させられる。この2値化においては、画像データを構成する画素の輝度信号の階調値と、ステップS200にて設定された当該画素の閾値とを比較し、当該閾値よりも当該階調値が大きければ当該画素を白□画素と判定する。反対に当該閾値よりも当該階調値が小さければ当該画素を黒■画素と判定する。すべての画素において個別に閾値が設定されているため、順次マイコン11cのメモリから各画素に対応する閾値が取得され、比較に使用される。
【0041】
従って、図9に示すように画像データの輝度分布特性に偏りがある場合でも各画素について精度よく2値化を行うことができる。また、各閾値は複数の画像データに基づいて決定されるため、多くの輝度信号(サンプル数)による統計結果に基づき閾値を得ることができ、各閾値の統計的信頼性は高いものとなる。より信頼性の高い閾値を取得するならば、ステップS210にてより多くの干渉パターンを照射してサンプルとなる画像データの数を増やせばよい。ステップS210にてより多くの干渉パターンを照射してサンプルとなる画像データの数を増やせば、多数の画像データ全体における白黒比も確実に1:1に収束させることができ、より精度よく閾値を設定することができる。
【0042】
以上のようにして精度よくページデータの復元ができると、ページデータの電子データヘの復調がステップS240にて行われる。ステップS240においては、まずページデータを回転させてもとの方向に復元する。各ページデータにおいて左上隅にすべき位置の外側にアライメントシンボルASが添付されているため、このアライメントシンボルASが左上に来るように回転操作を行えばよい。次に、ダミーシンボルを除去する。ダミーシンボルは予め所定の規則にしたがって挿入されているため、ダミーシンボルを除去し実データのシンボルのみを抽出することができる。デコーダ11aは、各シンボルをその配列順にしたがってオンビット(1)とオフビット(0)に変換することにより、電子データを復調する。これにより、干渉パターンとして記録された電子データを精度よく再生することができる。
【0043】
(2)変形例
以上においてはページデータの回転とダミーシンボルの挿入によって各画素の複数のページデータにわたる白黒比を1:1にするようにしたが、他のエンコード手法によって白黒比を1:1とすることも可能である。図10は、変形例にかかるエンコードの流れを示している。同図においても、上述した実施形態と同様にオンビット(1)とオフビット(0)とからなる電子データが上下に白□黒■が配列するシンボルと、上下に黒■白□が配列するシンボルに変換される。
【0044】
次に各シンボルの上の画素だけを順番に配列することにより奇数ページのページデータを生成する。さらに、各シンボルの下の画素だけを奇数ページと同じ順番で配列することにより偶数ページのページデータを生成する。すなわち、白□黒■が1画素ずつで構成される各シンボルを2ページのページデータに分散させて配置する。これにより、連続する奇数ページと偶数ページにおいては必ず各画素が白□黒■を1画素ずつ有することとなり、複数のページデータを集計した場合、白黒画素の度数が均一となることが保証される。白黒比が必ず1:1となるシンボルが2画素よりも多くの画素によって構成される場合であっても、その画素数分のページデータに分散させることによって各画素の白黒比を1:1に保つことができる。
【0045】
また、上述した実施形態においては各画素ごとに閾値を設定するようにしたが、画像データを複数の領域に分割し、その領域ごとに閾値を設定するようにしてもよい。例えば、隣接する数画素ごとの領域を形成し、その領域ごとに閾値を設定するようにしてもよい。この場合も、各領域に含まれる画素の輝度信号の複数の画像データにわたる平均値を算出することにより、閾値を求めることができる。
【0046】
上記実施形態においては、ホログラム記録媒体の方式として反射型を採用したものを例示したが、透過型のホログラム記録媒体を用いたホログラム再生装置においても同様に本発明を適用することができる。さらに、上記実施形態では、信号光と参照光との2光束方式を適用したホログラム再生装置を例示したがコリニア方式を採用することも可能である。また、空間光変調器[SLM:Spatial Light Modulator]として、DMDを例示したが、液晶SLMや磁気光学空間変調器[MOSLM]等を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】ホログラム記録再生装置の概略ブロック図である。
【図2】記録処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】エンコードを説明する図である。
【図4】ページデータの回転を説明する図である。
【図5】白黒比を説明する図である。
【図6】再生処理のフローチャートである。
【図7】再生位置を示す図である。
【図8】画像信号のヒストグラムである。
【図9】画像データの偏りを示す図である。
【図10】変形例にかかるエンコードを説明する図である。
【符号の説明】
【0048】
10…ホログラム記録再生装置、11…コントローラ、11a…デコーダ、11b…エンコーダ、11c…マイコン、11d…ドライバ、12…レーザ光源、13…対物レンズ、14…ビームスプリッタ、15…ハーフミラー、16…ハーフミラー、17…DMD[Digital Micro Mirror Device]、18…対物レンズ、20…集光レンズ、21…画像センサ。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の光学系を介してホログラム記録媒体に参照光を照射して得られた再生光の写像を示す画像データを取得し、当該画像データに基づいて電子データを再生するホログラム記録再生装置において、
記録する電子データを複数の2値画素で構成されるページデータに変調するとともに、複数の上記ページデータにわたる画素値の度数を各画素おいて略均等とし、各ページデータを上記光学系に対して回転させるエンコード手段と、
上記ページデータに基づいて信号光を生成し、当該信号光を上記参照光と干渉させつつ上記ホログラム記録媒体に照射して干渉パターンの記録を行う記録手段と、
上記参照光を上記干渉パターンに照射して各画素が多階調の画像信号を有する上記画像データを取得する再生手段と、
上記画像データの各画素の各画像信号について所定の閾値に基づいて2値判定することによりページデータを復元する2値化手段と、
上記ページデータに基づいて電子データを復調するデコード手段と、
再生対象とする上記干渉パターンの近くに記録された複数の上記干渉パターンについての上記画像データを取得し、上記画像データを構成する各画素についての複数の上記画像データにわたる上記画像信号の平均値を当該画素についての上記閾値として設定する閾値設定手段とを具備することを特徴とするホログラム記録再生装置。
【請求項2】
所定の光学系を介してホログラム記録媒体に参照光を照射して得られた再生光の写像を示す画像データを取得し、当該画像データに基づいて電子データを再生するホログラム記録再生装置において、
上記電子データを複数の2値画素で構成されるページデータに変調するエンコード手段と、
上記ページデータに基づいて信号光を生成し、当該信号光を上記参照光と干渉させつつ上記ホログラム記録媒体に照射して干渉パターンの記録を行う記録手段と、
上記参照光を上記干渉パターンに照射して複数の多階調画素で構成される上記画像データを取得する再生手段と、
上記画像データの各画素の各画像信号について所定の閾値に基づいて2値判定することによりページデータを復元する2値化手段と、
上記ページデータに基づいて電子データを復調するデコード手段と、
複数の上記画像データを取得し、上記画像データを構成する各領域についての複数の上記画像データにわたる上記画像信号の統計結果に基づいて、当該各領域についての上記閾値を設定する閾値設定手段とを具備することを特徴とするホログラム記録再生装置。
【請求項3】
上記領域は上記画像データを構成する各画素単位とされることを特徴とする請求項2に記載のホログラム記録再生装置。
【請求項4】
上記エンコード手段は、
各画素について画素値の度数が複数の上記ページデータにわたって略均等となるように変調を行うとともに、
上記閾値設定手段は、
各画素についての複数の上記画像データにわたる上記画像信号の平均値を上記閾値として設定することを特徴とする請求項3に記載のホログラム記録再生装置。
【請求項5】
上記エンコード手段は、
ダミー画素を上記ページデータに挿入することにより、各画素の画素値の度数が複数の上記ページデータにわたって略均等となるように変調を行うことを特徴とする請求項4に記載のホログラム記録再生装置。
【請求項6】
上記エンコード手段は、
複数の上記ページデータが上記光学系に対して回転するように変調を行うことを特徴とする請求項4または請求項5のいずれかに記載のホログラム記録再生装置。
【請求項7】
上記閾値設定手段は、
再生対象とする上記干渉パターンの近くに記録された複数の上記干渉パターンについての上記画像データを取得し、上記画像データを構成する各領域についての複数の上記画像データにわたる上記画像信号の統計結果に基づいて、当該各領域についての上記閾値を設定することを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか一項に記載のホログラム記録再生装置。
【請求項8】
上記エンコード手段は、
上記電子データを複数の2値信号の割合が均等な複数の画素で構成されたシンボルの組み合わせに変換するともに、同一のシンボルを構成する各画素を複数の上記ページデータに均等に分散させることを特徴とする請求項4に記載のホログラム記録再生装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−171480(P2008−171480A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1625(P2007−1625)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】