説明

ホログラム記録材料

【課題】記録層の作成時に、溶媒への溶解及び乾燥工程を必要としないホログラム記録材料用樹脂、及び本樹脂を用いたホログラム記録媒体を提供することにある。
【解決手段】下記式(1):
【化1】


[式中、Rは炭素数2〜8のアルキレン基、Rは水素原子またはメチル基、mは正の整数である]
で示される繰り返し単位を有するビニル系重合体を含有することを特徴とするホログラム記録材料用樹脂、ならびに記録層が、該樹脂を形成させて得られるホログラム記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高感度で、化学的に安定である屈折率変調重合体組成物からなるホログラム記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラムは、三次元立体像の記録、再生が可能なため、その優れた意匠性、装飾性効果を活かして、書籍、雑誌等の表紙、POP等のディスプレイ、ギフト等に利用されている。また、サブミクロン単位での微細な情報記録が可能なため、有価証券、クレジットカード、プリペイドカード等の偽造防止用のマーク等にも応用されている。
【0003】
ホログラムは干渉縞の記録形態により幾つかの種類に分類される。近年、干渉縞を記録層内部の屈折率差で記録するいわゆる体積ホログラムが、その高い回折効率や優れた波長選択性により、多用途に応用されつつある。このような体積ホログラムを記録する感光材料としては、従来からハロゲン化銀や重クロム酸ゼラチンが使用されてきたが、これらは、湿式現像や煩雑な現像定着処理を必要とすることからホログラムを工業的に生産するには不適当であり、記録後も吸湿などにより像が消失するなどの問題点を有している。
これに対して、近年研究が盛んになってきた、モノマーの移動による生ずる屈折率差を利用したホログラム記録方式は、現像工程を必要とせず生産性が極めて優れる体積型位相ホログラム記録材料として注目されている。この方式は、現像液に浸漬する必要が無いことから乾式のホログラム記録材料と呼ばれている。
乾式のホログラム記録材料として、デュポン社のオムニデックス(商品名)に代表されるようなラジカル重合性モノマー、熱可塑性バインダー樹脂、光ラジカル重合開始剤、増感色素を主成分とするものが知られている。ホログラム記録用感光性組成物をフイルム状にした後、干渉露光により情報を記録する。光が強く照射された部分ではラジカル重合が進む。ラジカル重合が進むと、光が弱く照射された部分から光が強く照射された部分にラジカル重合性モノマーが拡散して濃度勾配ができる。すなわち干渉光の強弱に応じて、ラジカル重合成モノマーの密度差が生じ、屈折率の差ができる。
【0004】
その後、ポリマーマトリックスを改良したホログラム記録媒体が提案されている。たとえば特許文献1には、三次元架橋ポリマーマトリックス中に重合性モノマーを分散させたホログラム記録媒体が開示されている。一方、特許文献2には、青色レーザー光に対して高感度を示す光ラジカル重合開始剤を含有するホログラム記録媒体も提案されている。しかしこれらの技術は、特に重要な性能である屈折率変調という点で前述の従来技術には及ばなかった。
【0005】
【特許文献1】特開11−352303号公報
【特許文献2】米国特許第6,780,546号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した状況の下、本発明が解決すべき課題は、記録層の作成時に、溶媒への溶解及び乾燥工程を必要としないホログラム記録材料用樹脂を提供することにある。また、本発明の別の目的は、本樹脂を用いたホログラム記録媒体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、上記の課題を解決するため、鋭意検討した結果、側鎖にラジカル重合性の(メタ)アクリロイル基を有するビニル系重合体と重合開始剤を混合すると、レーザー光の干渉露光により上記ラジカル重合性の側鎖(メタ)アクリロイル基が架橋反応して密度変化が大きくなり、これにより屈折率を効率的に変化させることができると共に、この変化後の透明性にも優れるホログラム記録材料が得られることにより本発明に至った。
即ち本発明は、下記式(1):
【0008】
【化1】

【0009】
[式中、Rは炭素数2〜8のアルキレン基、Rは水素原子またはメチル基、mは正の整数である]
で示される繰り返し単位を有するビニル系重合体を含有するホログラム記録材料用樹脂である。
【0010】
また、本発明は、基体と基体上に形成された記録層を有し、該記録層が、上記式(1)の材料から形成されているホログラム記録媒体でもある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、側鎖にラジカル重合性の(メタ)アクリロイル基を有するビニル系重合体に重合開始剤を加えて、レーザーにより屈折率を効率的に変調(変化)させることができると共に、この変調後の透明性にも優れる、つまりレーザーにより回折効率の高い透明なホログラム記録材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
≪ホログラム記録材料用樹脂≫
本発明のホログラム記録材料用樹脂(以下、単に「本樹脂」ともいう)は、
下記一般式(1):
【0013】
【化1】

【0014】
[式中、Rは炭素数2〜8のアルキレン基、Rは水素原子またはメチル基、mは正の整数である]
で示される繰り返し単位を有するビニル系重合体を含有することを特徴とする。
【0015】
<ビニル系重合体>
本発明の樹脂において、上記式(1)で示されるビニル系重合体の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは10〜100質量%、より好ましくは20〜100質量%、さらに好ましくは40〜100質量%である。ビニル系重合体の配合量が10質量%未満であると、架橋密度が低下するので密度変化や屈折率変化の低下となることがある。
【0016】
上記式(1)で示されるビニル系重合体は、低分子量成分が増加すると透明カバー層の強度が低下することがある。ビニル系重合体の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500以上、より好ましくは1,000〜100,000、さらに好ましくは2,000〜50,000の範囲内である。ビニル系重合体の数平均分子量(Mn)が500未満であると、同様に密度変化や屈折率変化の低下となることがある。ここで、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、THFを移動相とし、温度40℃、流速0.3mL/minの条件下で、東ソー株式会社製のカラム TSK−gel SuperHM−H 2本、TSK−gel SuperH2000 1本を用い、東ソー株式会社製のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置 HLC−8220GPCにより求め、標準ポリスチレン換算した値である。
【0017】
上記式(1)において、Rで表される炭素数2〜8のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、シクロヘキシレン基、1,4−ジメチルシクロヘキサン−α,α’−ジイル基、1,3−ジメチルシクロヘキサン−α,α’−ジイル基、1,2−ジメチルシクロヘキサン−α,α’−ジイル基、1,4−ジメチルフェニル−α,α’−ジイル基、1,3−ジメチルフェニル−α,α’−ジイル基、1,2−ジメチルフェニル−α,α’−ジイル基などが挙げられる。Rで表される置換基は、上記式(1)中にm個存在するが、同一であっても異なっていてもよい。
【0018】
上記式(1)において、mは正の整数、好ましくは1〜20の整数、より好ましくは1〜10の整数、さらに好ましくは1〜5の整数である。
【0019】
<ビニル系重合体の調製>
上記式(1)で示されるビニル系重合体は、下記式(2):
【0020】
【化2】

[式中、R、Rおよびmは上記式(1)と同意義である]
で示される異種重合性単量体を、従来から知られているカチオン重合により調整することが可能であり、又、特開2006−241189号明細書に記載された方法でリビングカチオン重合することにより、容易に調製することもできる。このとき、上記式(2)で示される異種重合性単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。後者の場合、得られる共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、ブロック共重合体またはその組合せのいずれであってもよい。また、グラフト共重合体であってもよい。
【0021】
上記式(2)で示される異種重合性単量体の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)イソプロポキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)イソプロポキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−[2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エトキシ]エチル、(メタ)アクリル酸2−[2−{2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}エトキシ]エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−[2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エトキシ]エトキシ)エチル;などが挙げられる。これらの異種重合性単量体のうち、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−{2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ}エチルが好適である。
【0022】
上記式(2)で示される異種重合性単量体は、従来公知の方法を用いて、製造することができる。例えば、上記式(2)において、Rがエチレン基、mが1である場合、(メタ)アクリル酸の金属塩と、2−ハロゲノエチルビニルエーテルとを縮合させるか、(メタ)アクリル酸メチルと、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルとをエステル交換させるか、あるいは、(メタ)アクリル酸ハライドと、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルとを縮合させることにより、製造することができる。また、上記式(2)において、Rがエチレン基、mが2である場合、(メタ)アクリル酸の金属塩と、2−(2−ハロゲノエトキシ)エチルビニルエーテルとを縮合させるか、(メタ)アクリル酸メチルと、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルビニルエーテルとをエステル交換させるか、あるいは、(メタ)アクリル酸ハライドと、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルビニルエーテルとを縮合させることにより、製造することができる。
【0023】
上記式(1)で示されるビニル系重合体がカチオン重合可能な単量体に由来する構造単位を有する共重合体である場合、かかる共重合体は、上記式(2)で示される異種重合性単量体と、カチオン重合可能な単量体とを、カチオン重合あるいはリビングカチオン重合することにより、容易に調製することができる。このとき、上記式(2)で示される異種重合性単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。得られる共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、ブロック共重合体またはその組合せのいずれであってもよい。また、グラフト共重合体であってもよい。
【0024】
カチオン重合可能な単量体としては、例えば、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのビニルエーテル化合物;スチレン、4−メチルスチレン、3−メチルスチレン、2−メチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、4−メトキシスチレン、4−クロロメチルスチレンなどのスチレン誘導体;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物;イソプロペニルスチレン、ケイ皮酸2−ビニロキシエチル、ソルビン酸2−ビニロキシエチルなどのジビニル化合物やトリビニル化合物;などが挙げられる。これらのカチオン重合可能な単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのカチオン重合可能な単量体のうち、イソブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル化合物が好適である。
【0025】
上記式(2)で示される異種重合性単量体は、ラジカル重合性またはアニオン重合性の(メタ)アクリロイル基と、カチオン重合性のビニルエーテル基とを同時に有するので、重合方法を選択することにより、(メタ)アクリロイル基またはビニルエーテル基をペンダント基として有する重合体が得られる。本発明では、上記式(2)で示される異種重合性単量体のビニルエーテル基を、単独で、あるいは、カチオン重合可能な単量体と共に、カチオン重合あるいはリビングカチオン重合させることにより、(メタ)アクリルロイル基をペンダント基として有する上記式(1)で示されるビニル系重合体が得られる。
【0026】
上記式(2)で示される異種重合性単量体と、カチオン重合可能な単量体とをカチオン重合あるいはリビングカチオン重合する場合、単量体のモル比(カチオン重合可能な単量体/上記式(2)で示される異種重合性単量体)は、好ましくは0.1〜10、より好ましくは0.5〜5、さらに好ましくは0.8〜2の範囲内である。
【0027】
本発明の樹脂は、上記式(1)の他に重合性を有する単量体、オリゴマー、ポリマー、重合開始剤等を含んでも良い。
【0028】
重合性単量体としては、上記式(1)で示されるビニル系重合体と共硬化可能なものである限り、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、スチレン、ビニルトルエン、4−t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、4−クロロスチレン、4−メチルスチレン、4−クロロメチルスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン系単量体;フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリルなどのアリルエステル系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、等の1官能(メタ)アクリレート化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ペンタシクロペンタデカンジメタノールルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリル酸付加物等の2官能(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の(メタ)アクリレート化合物、などの(メタ)アクリル酸系誘導体;トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテルなどのビニルエーテル系単量体;トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メチロールメラミンのアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテルのアジピン酸エステル、アリルアセタール、メチロールグリオキザールウレインのアリルエーテルなどのアリルエーテル系単量体;マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどのマレイン酸エステル系単量体;フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチルなどのフマル酸エステル系単量体;4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、などの1,3−ジオキソラン系単量体;(メタ)アクリロイルモルホリン;N−ビニルホルムアミド;N−ビニルピロリドン;などが挙げられる。これらの重合性単量体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合性単量体のうち、(メタ)アクリル系エステル化合物が好適で、さらに環構造置換基を有する(メタ)アクリル系エステル化合物が好適である。
【0029】
重合性単量体の配合量は、樹脂組成物の合計量に対して、好ましくは0〜70質量%、より好ましくは0〜40質量%である。重合性単量体の配合量が70質量%を超えると、硬化収縮が大きくなり、内部歪や硬化物の反りが大きくなることがある。
【0030】
重合開始剤としては、上記式(1)で示されるビニル系重合体がラジカル重合性の(メタ)アクリロイル基を有するので、例えば、紫外線の照射により重合開始ラジカルを発生する光重合開始剤;などが挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、連鎖移動剤、光増感剤、光増感色素、光重合促進剤などをさらに添加することも好ましい。
【0031】
光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジルー2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマーなどのアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾイン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリドなどのベンゾフェノン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリドなどのチオキサントン類;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、などが挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの光重合開始剤のうち、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アシルホスフィンオキシド類が好適であり、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オンが特に好適である。
【0032】
重合開始剤の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは0.05〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは0.2〜10質量%である。重合開始剤の配合量が0.05質量%未満であると、組成物が充分に硬化しないことがある。逆に、重合開始剤の配合量が20質量%を超えると、硬化物の物性がさらに向上することはなく、むしろ悪影響を及ぼす上、経済性を損なうことがある。
【0033】
重合開始剤として、光重合開始剤を用いる場合には、光励起により生じた励起状態から光重合開始剤に励起エネルギーを移し、光重合開始剤の分解を促進して有効にラジカルを発生させることができる光増感剤を用いることができる。光増感剤としては、例えば、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどを挙げることができる。これらの光増感剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0034】
光増感剤の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは0.05〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは0.2〜10質量%の範囲内である。光増感剤の配合量がこのような範囲内であれば、組成物の硬化性、硬化物の物性、経済性の点で好ましい。
【0035】
重合開始剤として、光重合開始剤を用いる場合には、光重合開始剤の分解を促進して有効にラジカルを発生させることができる光重合促進剤を用いることができる。光重合促進剤としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸−2−n−ブトキシエチル、安息香酸2−ジメチルアミノエチル、N,N−ジメチルパラトルイジン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンなどを挙げることができる。これらの光重合促進剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの光重合促進剤のうち、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンが好適である。
【0036】
光重合促進剤の配合量は、組成物の合計量に対して、好ましくは0.05〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは0.2〜10質量%の範囲内である。光重合促進剤の配合量がこのような範囲内であれば、組成物の硬化性、硬化物の物性、経済性の点で好ましい。
【0037】
光重合開始剤、光増感剤、光重合促進剤などを組み合わせて配合する場合、その配合量の合計量は、組成物の合計量に対して、好ましくは0.05〜20質量、より好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは0.2〜10質量の範囲内である。重合開始剤などの組合せ配合量の合計量がこのような範囲内であれば、組成物の硬化性、硬化物の物性、経済性の点で好ましい。
【0038】
本発明の樹脂組成物は、好ましくは、重合性単量体以外の溶剤を含まないことが好ましいが、必要により添加してもよい。溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼンなどの芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族または脂環式炭化水素;四塩化炭素、クロロホルム、二塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼンなどのニトロ化合物;ジエチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミルなどのエステル類;ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;などを使用することができる。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、さらに必要に応じて、添加物として、非反応性樹脂(例えば、アクリル系樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂など)、着色顔料、可塑剤、重合禁止剤、光安定剤、酸化防止剤、難燃化剤、艶消し剤、染料、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤、分散剤、スリップ剤、表面改質剤、揺変化剤、揺変助剤などを添加することができる。これらの添加物の存在は、特に本発明の効果に影響を及ぼすものではない。これらの添加物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0040】
添加物の配合量は、添加物の種類や使用目的、組成物の用途や使用方法などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。例えば、非反応性樹脂、着色顔料、可塑剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、艶消し剤、染料、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤、分散剤、スリップ剤、表面改質剤、撥水剤、撥油剤、揺変化剤、揺変助剤、等である。配合量は、樹脂組成物の合計量に対して、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは0.2〜5質量%の範囲内である。
【0041】
例えば、紫外線による硬化の場合、波長150〜450nmの範囲内の光を含む光源を用いればよい。このような光源としては、例えば、太陽光線、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライド灯、ガリウム灯、キセノン灯、キセノン・フラッシュ灯、カーボンアーク灯などが挙げられる。これらの光源と共に、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱などによる熱の併用も可能である。照射積算光量は、好ましくは0.1〜10J/cm、より好ましくは0.15〜8J/cm、さらに好ましくは0.2〜5J/cmの範囲内である。
【0042】
≪硬化物≫
本発明の硬化物は、樹脂組成物または該組成物を含む材料を硬化させて得られる。ここで、「硬化物」とは、流動性の無い物質を意味する。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0044】
まず、ビニル系重合体の数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)の測定について説明する。
【0045】
<数平均分子量および分子量分布>
ビニル系重合体の数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算で求めた。測定条件は、以下の通りであった。
移動相:THF、温度:40℃、流速:0.3mL/min;
カラム:TSK−gel SuperHM−H 2本
TSK−gel SuperH2000 1本(いずれも東ソー株式会社製);計測機器:HLC−8220GPC(東ソー株式会社製)。
【0046】
次に、ビニル系重合体の粘度の測定について説明する。
<粘度>
粘度は、RB80型粘度計(型式「RB80L」:東機産業(株)製)を用いて測定した。なお、測定温度は25℃である。
【0047】
次に、実施例で用いるビニル系重合体の製造例1〜7について説明する。
【0048】
≪製造例1≫
攪拌棒、温度計、滴下ライン、窒素/空気混合ガス導入管を取り付けた4つ口フラスコにトルエン41gを加えた。VEEA50g、酢酸エチル10gとリンタングステン酸10mgの混合溶解物をそれぞれ2時間かけて滴下し室温にて重合を行った。重合終了後はトリエチルアミンを加えて反応を終了した。次いで、エバポレーターで濃縮した後、ビニル系重合体(PVEEA)を得た。単量体の反応率は、反応停止後の混合液をガスクロマトグラフィー(GC)で分析することにより、99.5%であることが判明した。また、得られたビニル系重合体の数平均分子量(Mn)は2,520、分子量分布(Mw/Mn)は1.75であった。さらに、得られたポリビニルエーテル重合体のH−NMR測定(測定溶媒:重水素化クロロホルム、測定機器:Varian社製の400MHz H−NMR UNITYplus400)を行ったところ、アクリロイル基が残存し、選択的にビニルエーテル基が重合しており、側鎖にラジカル重合可能な二重結合を有するアクリロイル基ペンダント型重合体であることが確認された。
【0049】
≪製造例2≫
攪拌棒、温度計、滴下ライン、窒素/空気混合ガス導入管を取り付けた4つ口フラスコにトルエン60g、VEEA34.3g、N−ビニルカルバゾール(NVCz)15.7gを加えた。酢酸エチル6gとリンタングステン酸6mgの混合溶解物を6分割し、30分毎に加えて重合を行った。重合終了後はトリエチルアミンを加えて反応を終了した。次いで、エバポレーターで濃縮した後、ビニル系重合体(P(VEEA/NVCz))を得た。単量体の反応率は、反応停止後の混合液をガスクロマトグラフィー(GC)で分析することにより、99.0%であることが判明した。また、得られたビニル系重合体の数平均分子量(Mn)は3,270、分子量分布(Mw/Mn)は2.46であった。
【0050】
次に、本ビニル系重合体を用いた評価方法について説明する。
【0051】
<回折効率>
記録材料用樹脂層を波長514.5nmのArレーザーを用いて、二光束干渉露光を行った。露光する2本のビーム間角度は記録媒体入射前で30度に設定した。二光束干渉露光と同時に波長632.8nmのHeNeレーザーで回折効率をモニターした。
【0052】
≪実施例1≫
製造例1で得られたビニル系重合体PVEEA、100質量部、光重合開始剤ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム(商品名「イルガキュア784」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)2質量部を混合・攪拌して、樹脂組成物を調製した。
【0053】
スライドガラスの両端に、スペーサーとして厚さ50μmのPETフィルムを貼り、さらにスライドガラスをかぶせてサンプルセルとした。このサンプルセルの一端を上記混合物に接触させ、毛細管現象によりセル内に上記樹脂組成物を導入し、記録層を形成した。形成した記録層を波長514.5nmのアルゴンイオンレーザーにより二光束干渉露光を行った。
【0054】
その結果、回折効率は最大で71%であった。レーザーにより二光束干渉露光を行ったところは透明であった。
【0055】
≪実施例2≫
製造例2で得られたビニル系重合体(P(VEEA/NVCz))、100質量部、光重合開始剤ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム(商品名「イルガキュア784」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)2質量部を混合・攪拌して、樹脂組成物を調製した。
【0056】
以下、実施例1と同様に試験サンプルを作成し、評価を行った。
【0057】
その結果、回折効率は最大で80%であった。レーザーにより二光束干渉露光を行ったところは透明であった。
≪比較例1≫
PBuVE(ポリブチルビニルエーテル)、100質量部、光重合開始剤ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム(商品名「イルガキュア784」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)2質量部を混合・攪拌して、樹脂組成物を調製した。
【0058】
以下、実施例1と同様に試験サンプルを作成し、評価を行った。
その結果、回折効率は0.1%以下であった。
【0059】
以上の実施例および比較例の結果から、側鎖にラジカル重合性の(メタ)アクリロイル基を有するビニル系重合体を用いることで、レーザーにより回折効率の高い透明なホログラム記録材料が得られるものであることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
記録層の作成時に、溶媒への溶解及び乾燥工程を必要としないホログラム用組成物を提供できるので、ホログラム記録媒体用材料用として極めて有用であるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】

[式中、Rは炭素数2〜8のアルキレン基、Rは水素原子またはメチル基、mは正の整数である]
で示される繰り返し単位を有するビニル系重合体を含有することを特徴とするホログラム記録材料用樹脂。
【請求項2】
基体と基体上に形成された記録層を有し、該記録層が、請求項1記載の材料から形成されていることを特徴とするホログラム記録媒体。

【公開番号】特開2008−224805(P2008−224805A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59674(P2007−59674)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】