説明

ホースの製造方法

【課題】製造時に、スパイラル状に編上げられた2層の補強層のうちの2層目のずれを防止し、ホースの外観不良や性能低下の無い高品質のホースを得る。
【解決手段】複数の凸部34を有する未加硫ゴムからなる内面層12を押し出し、その外周に第1の補強糸14Aを螺旋状に巻回して第1の補強層14を形成する。凸部34の第1の補強糸14Aで押されていない部分では、第1の補強層14の外側に凸部34が突出するようにする。次に、第1の補強層14の外周に第2の補強糸16Aを螺旋状に巻回して第2の補強層16を形成し、その上に未加硫ゴムを押し出して外面層18を形成する。第2の補強層16が未加硫ゴムの吐出圧力によって力を受けるが、第2の補強層16が第1の補強層14より突出した凸部34に接触しているので、第2の補強層16がずれることが阻止され、高品質のホース10が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホースの製造方法にかかり、内面層の外側にスパイラル状に補強糸を巻回して形成された補強層を2層有するホースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホースを製造する際に、外表面が平滑状態である内面層を形成し、その内面層の上に複数本の補強糸をスパイラル状に相反する方向で補強層を2層編み上げる方法で製造されるホースが従来よりある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、2層目にスパイラル状に編み上げる補強層は、1層目のスパイラル状に編み上げられた補強層の上にあるため、補強糸のコードサイズが高い場合、または編み上げる張力が低い場合に、2層目の補強層が1層目の補強層から滑る様にずれ易くなる問題がある。
【0004】
そのため、外面層を補強層の上に被覆する際、吐出圧力で2層目の補強層がずれてしまい、外観不良やホースの性能低下を引き起こす。
そこで、2層目の補強層のずれを防止するために、編上げ張力を高くすると、ホースの捩れ等が生じ、外観不良やホースの性能低下を引き起こす。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、補強糸のコードサイズや編上げる張力によらず、スパイラル状に編上げられた2層の補強層のうちの2層目のずれを防止し、外観不良や性能低下の無い高品質のホースを得られるホースの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のホースの製造方法は、未加硫のゴム組成物で、長手方向に沿って延びる複数の凸部を外周面に備える筒状の内面層を形成する内面層形成工程と、前記内面層の外周に第1の補強糸を螺旋状に巻回し、前記第1の補強糸の接触している部分では前記凸部を押し潰し、前記第1の補強糸の接触していない部分では、前記第1の補強糸の内面層径方向外側の端部を通る仮想円よりも前記凸部が前記仮想円の径方向外側へ突出するように第1の補強層形成する第1補強層形成工程と、前記第1の補強層の外周に、前記第1の補強糸とは反対方向に第2の補強糸を螺旋状に巻回して前記仮想円よりも径方向外側へ突出した前記凸部に接触するように第2の補強層を形成する第2補強層形成工程と、前記第2の補強層の外側に、未加硫のゴム組成物で外面層を形成する外面層形成工程と、前記未加硫ゴムを加硫する加硫工程と、を有することを特徴としている。
【0007】
次に、請求項1に記載のホースの製造方法の作用を説明する。
先ず、最初の内面層形成工程では、未加硫のゴム組成物で、長手方向に沿って延びる複数の凸部を外周面に備える筒状の内面層を形成する。このような内面層は、例えば、ゴム押出機を用いて連続的に成形することができる。
【0008】
次に、第1補強層形成工程では、内面層の外周に第1の補強糸を螺旋状に巻回して第1の補強層を形成する。第1の補強糸を内面層の外周に巻回することで、内面層の凸部は第1の補強糸で押された部分が潰れる。また、凸部において、第1の補強糸で押されていない部分では、第1の補強糸よりも凸部の頂部が外側へ突出する。
【0009】
次の第2補強層形成工程では、第1の補強層の外周に第2の補強糸を、第1の補強糸とは反対方向に螺旋状に巻回して第2の補強層を形成する。ここで、第2の補強糸は、第1の補強層よりも突出した凸部(未加硫ゴム組成物)と接触する。
【0010】
次の外面層形成工程では、第2の補強層の外側に、未加硫のゴム組成物で外面層を形成する。
最後の加硫工程で内面層、及び外面層のゴム組成物を加硫することで、ゴム組成物、及び第1の補強層、及び第2の補強層が一体化してホースが完成する。
【0011】
前述した外面層形成工程では、外面層を、例えば、ゴム押出機を用いて未加硫のゴム組成物を第2の補強層の上に押出して外面層を形成するが、このとき、第2の補強層は、未加硫のゴム組成物の吐出圧力によって、第1の補強層からずらされる方向の力を受ける。特に、補強糸のコードサイズが高い場合や、第2の補強糸を編み上げる際の張力が低い場合には、第2の補強層がずれ易い。
【0012】
しかしながら、本発明では、第2の補強層が第1の補強層より突出した凸部の未加硫のゴム組成物に接触しているので、外面層形成工程において、第1の補強層に対して第2の補強層がずれることを、第2の補強層に接触した凸部が阻止する。このため、第2の補強層のずれを防止するために、第2の補強層を形成する際の編み上げ張力を高くする必要はなく、外観不良やホースの性能低下を引き起こすことが無い。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のホースの製造方法において、前記凸部の高さ寸法を、前記第1の補強糸の径寸法よりも大きく設定した、ことを特徴としている。
凸部の高さ寸法を、第1の補強糸の径寸法よりも大きく設定することで、凸部を第1の補強層よりも外側へ確実に突出させることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のホースの製造方法において、前記凸部の数を4以上とした、ことを特徴としている。
凸部の数が3以下であると、第2の補強層への凸部の接触が減少し、ずれ防止効果が不十分となる場合がある。なお、凸部は周方向に等間隔に設けることが好ましい。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のホースの製造方法において、前記凸部の底部の幅をe1、前記凸部の数をN、前記凸部を除いた前記内面層の外径をDとしたときに、F=(e1×N)/Dπ=0.25〜0.60を満足する、ことを特徴としている。
【0016】
Fが0.25未満であると、第2の補強層への凸部の接触が減少し、ずれ防止効果が不十分となる場合がある。
Fが0.6を超えると、第1の補強層の形成時に、凸部を十分に押し潰すことができなくなる。したがって、第1の補強層の第1の補強糸から凸部を十分に突出させることができず、第2の補強層への凸部の接触が減少し、ずれ防止効果が不十分となる場合がある。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のホースの製造方法において、前記第1の補強層の径方向最外部分を通る仮想円から径方向外側へ突出する前記凸部の突出寸法が、0.5mm以上である、ことを特徴としている。
【0018】
第1の補強層の径方向最外部分を通る仮想円よりも外側へ突出する凸部の突出寸法が0.5mm未満では、第2の補強層への凸部の接触が減少し、ずれ防止効果が不十分となる場合がある。したがって、凸部の突出寸法を0.5mm以上とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明のホースの製造方法によれば、ホースの外観不良や性能低下を防止することができる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
先ず、図1にしたがって、ホース10の構造を説明する。
図1に示すように、ホース10は、最内側に内面層12を備えており、内面層12の外側には、第1の補強層14、第2の補強層16、及び外面層18が設けられている。
本実施形態の内面層12、及び外面層18の材質はゴムである。
【0021】
第1の補強層14は、複数(本実施形態では12本)の第1の補強糸14Aを内面層12の外周に螺旋状に巻回することで形成されている。また、第2の補強層16は、同じく複数本(本実施形態では12本)の第2の補強糸16Aを内面層12の外周に、第1の補強糸14Aと反対方向に螺旋状に巻回することで形成されている。
【0022】
次に、このホース10を製造するためのホース製造装置20の概略構成を図2にしたがって説明する。
図2に示すように、ホース製造装置20は、第1の押出機22、第1の補強層形成装置24、第2の補強層形成装置26、第2の押出機28を備えている。
第1の押出機22には、マンドレル30が備えられており、第1の押出機22から未加硫のゴム組成物が連続的に押し出され、マンドレル上に内面層12が形成される(本発明の内面層形成工程)。
【0023】
図3に示すように、第1の押出機22から押し出される内面層12の外周面には、長手方向に沿って延びる複数の凸部34が周方向に等間隔で形成されている。
凸部34の断面形状は、図3に示すような上辺を底辺よりも短くした台形でも良く、図示はしないが、底辺と上辺を同じ長さにした四角形や、三角形、半円形等であっても良い。
【0024】
内面層12は、第1の補強層形成装置24へ搬送され、第1の補強層形成装置24では、内面層12の外周に第1の補強糸14Aが螺旋状に巻回されて第1の補強層14が形成される(本発明の第1の補強層形成工程)。このとき、内面層12の凸部34は、第1の補強糸14Aで押された部分が潰れる。また、図4に示すように、凸部34の第1の補強糸14Aで押されていない部分では、第1の補強層14の径方向最外部分よりも凸部34の頂部が径方向外側へ突出するようにしている。
【0025】
第1の補強層14の径方向最外部分よりも凸部34の頂部を径方向外側へ突出させるためには、凸部34の高さ寸法e3を、第1の補強糸の径寸法よりも大きく設定することが好ましい。
【0026】
なお、本実施形態の内面層12の内径dは9mmである。内面層12の外側を補強する第1の補強糸14Aの材質としては、例えば、ナイロン、ポリエステル、ビニロン等の有機繊維や綿等を用いることができ、その太さ(直径)は、0.3〜1.0mm程度が好ましい。また、内面層長手方向に対する第1の補強糸14Aの角度は、40〜60度が好ましい。
【0027】
第1の補強糸14Aの太さを0.3〜1.0mmとした場合、第1の補強層14の径方向最外部分を通る仮想円よりも凸部34の頂部が径方向外側へ突出するように凸部34の高さ寸法e3(図3参照)を0.5〜1.5mmの範囲内で調整することが好ましい。
また、図4に示すように、第1の補強層14の径方向最外部分を通る仮想円から径方向外側へ突出する凸部34の突出寸法hを、0.5mm以上とすることが好ましい。
【0028】
図3に示すように、凸部34の底部の幅をe1、凸部34の数をN、凸部34を除いた内面層12の外径をDとしたときに、N≧4、及びF=(e1×N)/Dπ=0.25〜0.60を満足することが好ましい。
【0029】
第1の補強層14の形成された内面層12は、第2の補強層形成装置26へ搬送される。第2の補強層形成装置26では、第1の補強層14の外周に、第1の補強糸14Aと同様の第2の補強糸16Aが、第1の補強糸14Aとは逆方向に螺旋状に巻回されて第2の補強層16が形成される(本発明の第2の補強層形成工程)。このとき、第1の補強層14から突出している凸部34が、第2の補強糸16Aに接触する(押されて潰れる。)。なお、内面層長手方向に対する第2の補強糸16Aの角度は、40〜60度が好ましい。
【0030】
第2の補強層16の形成された内面層12は、第2の押出機28へ搬送される。第2の補強層16の外周には、第2の押出機28から未加硫のゴム組成物が押し出され、第2の補強層16の外周に外面層18が形成される(本発明の外面層形成工程)。
【0031】
ここで、未加硫のゴム組成物が第2の補強層16の外周に押し出される際に、第2の補強層16は、未加硫のゴム組成物の吐出圧力によって、第1の補強層14からずらされる方向の力を受けるが、第2の補強層16が第1の補強層14より突出した凸部34(未加硫のゴム組成物)に接触しているので、第2の補強層16が第1の補強層14に対してずれることが阻止される。
【0032】
外面層18が形成された後、未加硫のゴム組成物を公知の方法によって加硫することで、製品としてのホース10が得られる。
本実施形態のホースの製造方法によれば、第2の補強層16のずれを防止するために、第2の補強層16を形成する際の第2の補強糸16Aの編み上げ張力を高くする必要がないため、外観不良やホース10の性能低下を引き起こすことは無い。
なお、上記実施形態では、マンドレル30を用いてホース10を製造したが、従来周知のホースの製造方法と同様にマンドレル30を用いずにホース10を製造しても良い。
【0033】
(試験例)
本発明の効果を確かめるために、従来技術によるホースの製造方法、及び本発明のホースの製造方法によってそれぞれホースを製造し、外面層の被覆による第2の補強層の糸ずれを調べた。糸ずれの調査は、製造されたホースの外面層を除去して目視にて行った。
なお、ホースの諸元、及び検証結果は以下の表1に記載する通りである。
【0034】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】ホースの分解斜視図である。
【図2】ホースの製造装置の概略構成を示す側面図である。
【図3】内面層の斜視図である。
【図4】内面層の外周付近の断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10 ホース
12 内面層
14 第1の補強層
14A 第1の補強糸
16 第2の補強層
16A 第2の補強糸
18 外面層
22 第1の押出機
28 第2の押出機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未加硫のゴム組成物で、長手方向に沿って延びる複数の凸部を外周面に備える筒状の内面層を形成する内面層形成工程と、
前記内面層の外周に第1の補強糸を螺旋状に巻回し、前記第1の補強糸の接触している部分では前記凸部を押し潰し、前記第1の補強糸の接触していない部分では、前記第1の補強糸の内面層径方向外側の端部を通る仮想円よりも前記凸部が前記仮想円の径方向外側へ突出するように第1の補強層形成する第1補強層形成工程と、
前記第1の補強層の外周に、前記第1の補強糸とは反対方向に第2の補強糸を螺旋状に巻回して前記仮想円よりも径方向外側へ突出した前記凸部に接触するように第2の補強層を形成する第2補強層形成工程と、
前記第2の補強層の外側に、未加硫のゴム組成物で外面層を形成する外面層形成工程と、
前記未加硫ゴムを加硫する加硫工程と、
を有する、ことを特徴とするホースの製造方法。
【請求項2】
前記凸部の高さ寸法を、前記第1の補強糸の径寸法よりも大きく設定した、ことを特徴とする請求項1に記載のホースの製造方法。
【請求項3】
前記凸部の数を4以上とした、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のホースの製造方法。
【請求項4】
前記凸部の底部の幅をe1、前記凸部の数をN、前記凸部を除いた前記内面層の外径をDとしたときに、F=(e1×N)/Dπ=0.25〜0.60を満足する、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のホースの製造方法。
【請求項5】
前記第1の補強層の径方向最外部分を通る仮想円から径方向外側へ突出する前記凸部の突出寸法が、0.5mm以上である、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のホースの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−168104(P2007−168104A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364900(P2005−364900)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】