説明

ホースの製造方法

【課題】ホースが配設される状況、ホースに要求される条件に良好に対応できるようにする。
【解決手段】複数の供給部からそれぞれ供給された構成素材1,2を、成形用回転軸上に螺旋状に捲回して、これら捲回部を軸心方向に並設し、隣接する捲回部において、幅方向の対応する端部を固着することで、管壁部を構成する。少なくとも一つの供給部を、他の供給部に対し、成形用回転軸の軸心方向に相対的に進退させることで、これら供給部から供給された各構成素材1,2における捲回部の、径方向に関する相対的な位置関係を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図5〜図7に示すように、排水ホースとしては、合成樹脂により形成されて、可撓性を有するものがある。これら排水ホースの管壁部は、本体11と、本体11に螺旋状に備えられた単一の補強線材12から成り、用途等に応じて、補強線材12が、ホース全長にわたり、径方向に関して、本体11の内部、外周面又は内周面の何れかに配設されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−350561号公報
【特許文献2】特開2001−179822号公報
【特許文献3】特開2001−108162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
補強線材12が本体11の内部に配置された図5に示すホースでは、
イ.ホース内周面を凹凸のない滑らかな湾曲面とできて、補強線材12がホース内部を 通過する水流に悪影響を及ぼさない、
ロ.補強線材12がホース外部のものに引っ掛かる惧れもない、
ハ.ホースの屈曲性が比較的良好で、比較的曲がり易い、
ニ.補強線材12が本体11の内部に配置されているので、外観体裁が良好である
等の利点がある。
【0005】
ところで、ホースは、その外部のものと接触する可能性があるが、補強線材12が本体11の内部に配置されたホースでは、本体21における、補強線材12を覆被している部分の肉厚が薄いため、この覆被部分がホース外部のものと擦れた場合には、覆被部分が補強線材12から剥離して、補強線材12が外部に露出し易いとの問題があった。
【0006】
これに対し、補強線材12が本体11の外周面に配置された図6に示すホースでは、
イ.ホース内周面を凹凸のない滑らかな湾曲面とできて、補強線材12がホース内部を 通過する水流に悪影響を及ぼさない、
ロ.補強線材12が本体11の内部に配置されたホースが有する問題点はない
等の利点がある。
【0007】
然しながら、図6に示す上記ホースでは、
α.補強線材12がホース外部のものに引っ掛かり易い、
β.補強線材12が本体11の外周面に配置されているので、ホースの外観体裁が悪い
との問題があった。
【0008】
一方、補強線材12が本体11の内周面に配置された図7に示すホースでは、
イ.ホースの屈曲性が良好で、曲がり易い、
ロ.補強線材12が本体11の内部や外周面に配置されたホースが有する問題点はない
等の利点がある。
【0009】
然しながら、図7に示す上記ホースでは、
α.補強線材12により、ホース内周面に凹凸が生じ、補強線材12がホース内部を通 過する水流に悪影響を及ぼす場合がある、
β.本体11と補強線材12の溶着が不十分な場合には、両者間に隙間が生じる惧れが ある
との問題があった。
【0010】
上記のように、補強線材12がホース全長にわたって本体11に備えられた従来のホースでは、何れのタイプのものも、問題があったのが実情である。
【0011】
本発明は、上記問題を解決できるホースの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明のホースの製造方法の特徴とするところは、複数の供給部からそれぞれ供給された構成素材を、成形用回転軸上に螺旋状に捲回して、これら捲回部を軸心方向に並設し、隣接する捲回部において、幅方向の対応する端部を固着することで、管壁部を構成するホースの製造方法において、少なくとも一つの供給部を、他の供給部に対し、成形用回転軸の軸心方向に相対的に進退させることで、これら供給部から供給された各構成素材における捲回部の、径方向に関する相対的な位置関係を変更する点にある。
尚、供給部が、A.半溶融状態の合成樹脂から成る構成素材を連続的に押し出す押出機の成形ノズル、又は、B.予め成形された構成素材を巻き取って成る巻取部とされることもある。
又、2つの供給部の進退により、イ.各供給部から供給された構成素材の捲回部の一方が、他方に対し、径方向内方に配置された第1構成形態と、ロ.両構成素材の捲回部の径方向に関する位置が同一とされた第2構成形態と、ハ.上記一方の捲回部が、他方の捲回部に対し、径方向内外に配置された第3構成形態の何れかが選択可能とされることもある。
更に、第2構成形態で、各構成素材の捲回部が、軸心方向に、交互に配置されることもある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ホースの製造途中で、必要に応じて、各構成素材の捲回部の径方向に関する相対的な位置関係を変更できて、管壁部に、各構成素材の捲回部の径方向に関する相対的な位置関係が他の部分とは異なる部分を配設できるので、ホースが配設される状況、ホースに要求される条件に良好に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す半断面図である。
【図2】図1のホースの製造方法を示す説明図である。
【図3】図1のホースの製造方法を示す説明図である。
【図4】図1のホースの製造方法を示す説明図である。
【図5】従来一例を示す半断面図である。
【図6】従来一例を示す半断面図である。
【図7】従来一例を示す半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を排水ホースに適用した実施の形態の一例を図1〜図4の図面に基づき説明する。図1は排水ホースを示し、排水ホースは、合成樹脂により一体形成されて、可撓性を有し、横断面円形とされている。合成樹脂としては、EVA樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のオレフィン系合成樹脂、又は、塩化ビニール樹脂等が使用される。
【0016】
排水ホースの管壁部は第1・第2構成素材1,2から成る。これら構成素材1,2は一定幅の帯状とされ、螺旋状に捲回されて、各構成素材1,2の捲回部が軸心方向に並設されている。排水ホースの管壁部は、軸心方向に並設(連設)され且つ一体形成された第1〜第3並設部3〜5を有する。各構成素材1,2は、下記のように、押出機における、供給部として例示されるノズルから連続して、供給される。尚、供給部を、予め形成した各構成素材1,2を巻き取って成る巻取部とすることもある。
【0017】
第1並設部3は、第1構成形態として示されるもので、第1構成素材1が管壁部の内周部を構成すると共に、第2構成素材2が管壁部の外周部を構成し、両構成素材は径方向に並設されて、溶着(「融着」と言うこともある。以下、同様。)されている。このようにして、第1構成素材1の捲回部の径方向外方に、第2構成素材2の捲回部が配設されている。第1構成素材1の隣接する捲回部においては、幅方向の対応する端部が重ね合わされ、溶着されることで、一体化されている。同様に、第2構成素材2の隣接する捲回部においては、幅方向の対応する端部が重ね合わされ、溶着されることで、一体化されている。
【0018】
第2並設部4は、第2構成形態として示されるもので、第1・第2構成素材1,2の各捲回部が軸心方向に交互となるように並設されている。このようにして、両構成素材1,2の捲回部の径方向に関する位置は(略)同一とされている。これら構成素材1,2の隣接する捲回部においては、幅方向の対応する端部が重ね合わされ、溶着されることで、一体化されている。
【0019】
第3並設部5は、第3構成形態として示されるもので、第1構成素材1が管壁部の外周部を構成すると共に、第2構成素材2が管壁部の内周部を構成し、両構成素材1,2は径方向に並設されて、溶着され、一体化されている。このようにして、第1構成素材1の捲回部の径方向内方に、第2構成素材2の捲回部が配設されている。第1構成素材1の隣接する捲回部においては、幅方向の対応する端部が重ね合わされ、溶着されることで、一体化されている。同様に、第2構成素材2の隣接する捲回部においては、幅方向の対応する端部が重ね合わされ、溶着されることで、一体化されている。
【0020】
次に、図2〜図4の図面に基づき、上記排水ホースの製造方法を説明する。尚、図2〜図4は断面図ではないが、分かり易くするために、これら図面では、第1構成素材1には、右上がりの斜線から成るハッチングを施し、第2構成素材2には、左上がりの斜線から成るハッチングを施している。
【0021】
まず、排水ホースの管壁部の第1並設部3を製造して、第1構成形態を構成する場合には、図2に示すように、第1構成素材用の押出機の成形ノズル7を、第2構成素材用の押出機の成形ノズル8よりも先行させ、右側に大きく離間させて、配置する。そして、第1構成素材用の押出機の成形ノズル7から、半溶融状態の塩化ビニール樹脂等から成る一定幅の帯状の第1構成素材1を連続状に押し出して、成形用回転軸9上に螺旋状に捲回し、隣接する捲回部において、幅方向の対応する端部を重ね合わせ、一体に溶着することで、管壁部の内周部を形成する。
【0022】
これと同時に、第2構成素材用の押出機の成形ノズル8から、半溶融状態の塩化ビニール樹脂等から成る一定幅の帯状の第2構成素材2を連続状に押し出し、第1構成素材1により形成された管壁部の内周部上に螺旋状に捲回して、この内周部に溶着すると共に、第2構成素材2の隣接する捲回部において、幅方向の対応する端部を重ね合わせ、一体に溶着することで、管壁部の外周部を形成する。
【0023】
尚、図2〜図4では、第1構成素材用の押出機の成形ノズル7を、成形用回転軸9よりも、紙面の下側に配置し、第2構成素材用の押出機の成形ノズル8を、成形用回転軸9よりも、紙面の上側に配置している。これは、視覚的に分かり易くするために、便宜上、配置したもので、実際には、例えば、両成形ノズル7,8を、成形用回転軸9の軸心を中心とする周方向に関し、接近させて、配置することもある。即ち、両成形ノズル7,8の配置は、ホースの製造状況、製造条件に合わせて、適宜変更される。
【0024】
又、排水ホースの管壁部の第2並設部4を製造して、第2構成形態を構成する場合には、図3に示すように、第1構成素材用の押出機の成形ノズル7を、成形用回転軸9の軸心方向に相対的に移動させ、第2構成素材用の押出機の成形ノズル8に接近させて、その若干後方側、即ち、左側に配置する。そして、第1構成素材用の押出機の成形ノズル7から、第1構成素材1を連続状に押し出して、成形用回転軸9上に螺旋状に捲回し、その捲回部を間隔を置いて軸心方向に並設する。
【0025】
これと同時に、第2構成素材用の押出機の成形ノズル8から、第2構成素材2を連続状に押し出し、成形用回転軸9上における、第1構成素材1の隣接する捲回部間に螺旋状に捲回して、これにより、各構成素材1,2の捲回部を軸心方向に交互に並設する。そして、隣接する捲回部において、幅方向の対応する端部を重ね合わせ、一体に溶着することで、管壁部を形成する。
【0026】
更に、排水ホースの管壁部の第3並設部5を製造して、第3構成形態を構成する場合には、図4に示すように、第1構成素材用の押出機の成形ノズル7を、成形用回転軸9の軸心方向に相対的に移動させ、第2構成素材用の押出機の成形ノズル8から更に後退させて、大きく離間させる。そして、第2構成素材用の押出機の成形ノズル8から、第2構成素材2を連続状に押し出して、成形用回転軸9上に螺旋状に捲回し、隣接する捲回部において、幅方向の対応する端部を重ね合わせ、一体に溶着することで、管壁部の内周部を形成する。
【0027】
これと同時に、第1構成素材用の押出機の成形ノズル7から、第1構成素材1を連続状に押し出し、第2構成素材2により形成された管壁部の内周部上に螺旋状に捲回して、この内周部に溶着すると共に、第1構成素材1の隣接する捲回部において、幅方向の対応する端部を重ね合わせ、一体に溶着することで、管壁部の外周部を形成する。
【0028】
尚、排水ホースの製造の都合により、各並設部3〜5の境界部では、何れの並設部3〜5にも属さない若干乱れた部分が生じることもあるが、これは、排水ホースに大きな影響を与えるものではない。
【0029】
上記構成例によれば、排水ホースの製造途中で、必要に応じて、各構成素材1、2の捲回部の径方向に関する相対的な位置関係を変更でき、例えば、管壁部に第1〜第3並設部3〜5を適宜配設できるので、排水ホースが配設される状況、排水ホースに要求される条件に良好に対応できる。
【0030】
尚、上記構成例では、構成素材を2つとしたが、構成素材を3つ以上としてもよく、その場合には、各供給部を、他の供給部に対して、成形用回転軸の軸心方向に相対的に進退させることもある。又、上記構成例では、構成素材を溶着したが、例えば、接着剤等を使用して、固着することもある。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、電気洗濯機やエアコン等の(延長用)排水ホース、或いは、地中埋設用の排水ホース等の製造方法に適用できる。
【符号の説明】
【0032】
1,2 第1・第2構成素材
3〜5 第1〜第3並設部
7,8 成形ノズル(供給部)
9 成形用回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の供給部からそれぞれ供給された構成素材を、成形用回転軸上に螺旋状に捲回して、
これら捲回部を軸心方向に並設し、
隣接する捲回部において、幅方向の対応する端部を固着することで、
管壁部を構成するホースの製造方法において、
少なくとも一つの供給部を、他の供給部に対し、成形用回転軸の軸心方向に相対的に進退させることで、
これら供給部から供給された各構成素材における捲回部の、径方向に関する相対的な位置関係を変更するホースの製造方法。
【請求項2】
供給部が、
A.半溶融状態の合成樹脂から成る構成素材を連続的に押し出す押出機の成形ノズル、 又は、
B.予め成形された構成素材を巻き取って成る巻取部
とされた請求項1記載のホースの製造方法。
【請求項3】
2つの供給部の進退により、
イ.各供給部から供給された構成素材の捲回部の一方が、他方に対し、径方向内方に配 置された第1構成形態と、
ロ.両構成素材の捲回部の径方向に関する位置が同一とされた第2構成形態と、
ハ.上記一方の捲回部が、他方の捲回部に対し、径方向内外に配置された第3構成形態の何れかが選択可能とされた請求項1又は2記載のホースの製造方法。
【請求項4】
第2構成形態で、各構成素材の捲回部が、軸心方向に、交互に配置される請求項3記載のホースの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−77896(P2012−77896A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226406(P2010−226406)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000114994)エバック株式会社 (41)
【Fターム(参考)】