説明

ホースガイド装置

【課題】動力噴霧機のホースによって容易に農薬等の液体を噴霧することができるホースガイド装置を提供することを課題としている。
【解決手段】運搬車11に搭載した動力噴霧機1のホース巻取り装置9から延び出るホース3をガイドすることができるホースガイド装置7に、運搬車11の車輪29による踏み付けによってホースガイド装置7を地表面上又は地表面に近接する位置に固定する固定手段28を設けた。またホースガイド装置7に、ホースガイド装置7内において移動するホース3が通過する洗浄液26が収容された洗浄槽12等からなる洗浄手段を一体的に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬等の液体を畑等に噴霧する動力噴霧機のホース巻取り装置から延び出るホースをガイドすることが可能なホースガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来農薬等の液体をホースに送り出して噴霧する動力噴霧機が公知となっている(例えば特許文献1,2参照)。上記動力噴霧機には、ホースの巻き取り及び繰り出しを行うホース巻取り装置が備えられている。特に特許文献1には、ホース巻取り装置から延び出るホースをガイドするホースガイド装置が記載されている。
【0003】
上記動力噴霧機の本体(特許文献1においてはホース巻取り装置を含む)は、運搬車に搭載されたままであり、動力噴霧機の本体や場合によってはホース巻取り装置を運搬車から降ろす重労働を行うことなく圃場に農薬等の液体を容易に噴霧することができるように構成されている。
【特許文献1】特開2003−235431
【特許文献2】特開平9−135654
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし動力噴霧機の本体を運搬車に搭載したまま圃場に向かってホースを供給すると、ホースは地表面より大きく離れた高所から送り出される。このため運搬車から引き出されたホースが揺れたり弛んだりして作物に接し、作物を傷める場合があるという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明のホースガイド装置は、運搬車11に搭載した動力噴霧機1のホース巻取り装置9から延び出るホース3のガイドが可能なホースガイド装置7であって、該ホースガイド装置7に、運搬車11の車輪29による踏み付けによってホースガイド装置7を地表面上又は地表面に近接する位置に固定する固定手段28を設けたことを第1の特徴としている。
【0006】
第2にホースガイド装置7に、ホース3の洗浄を行う洗浄手段を一体的に設けたことを特徴としている。
【0007】
第3に洗浄手段が、ホースガイド装置7内において移動するホース3が通過する洗浄液26が収容された洗浄槽12からなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
以上のように構成される本発明のホースガイド装置によると、運搬車に動力噴霧機の本体とホース巻取り装置とを搭載したまま農薬等の噴霧作業を行う場合、運搬車の近傍においてホースが地表面の近傍に下げられ、地表面に近接した状態で圃場に向かって引き出される。
【0009】
これによりホースが円滑に移動する他、農薬等の噴霧作業中に、圃場に向かって引き出されるホースが揺れたり弛んだりして作物に接するという不都合を防止することができ、動力噴霧機の本体やホース巻取り装置を運搬車から降ろすことなく、ホースの接触による作物の傷みを防止しながら容易且つ円滑に農薬等の噴霧作業を行うことができる。
【0010】
このときホースガイド装置は、固定手段によって位置が固定されて設置される。固定手段は、運搬車の車輪による踏み付けによってホースガイド装置を地表面上又は地表面に近接する位置に固定する。このためホースガイド装置の位置固定及び固定解除は、運搬車の移動による固定手段の踏み付け及び踏み付け解除によって簡単に行うことができ、特にアスファルト等の硬質な地表面にもホースガイド装置を容易に位置固定して設置することができる。
【0011】
ホースガイド装置に、ホースの洗浄を行う洗浄手段を一体的に設けることによって、ホースガイド装置においてホースの洗浄等を行うことができ、ホースの衛生管理を容易に行うことができる他、ホースの洗浄装置を別に設ける必要がないという効果がある。またホース巻取り装置より下手側の装置でホースの洗浄が行われるため、ホースによりホース巻取り装置を汚す等の不都合も防止することができる。
【0012】
そして洗浄手段を、ホースガイド装置内において移動するホースが通過する洗浄液が収容された洗浄槽から構成することによって、洗浄手段を簡単に構成することができる他、洗浄液の交換を容易に行うことができ、且つ洗浄液の機能を変更することによって洗浄機能を容易に変更することができるという利点がある。例えば洗浄液を洗浄のほか、殺菌や消毒機能を有するものとすることによって、洗浄手段をホースの殺菌や消毒を行うことができるものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明のホースガイド装置を使用した動力噴霧機による農薬等の液体の噴霧作業状態を示す。上記動力噴霧機1は、圃場に噴霧する液体(本実施形態においては農薬)を収容したタンク2と、タンク2内の農薬をホース3に送り出す本体4と、ホース3の先端に設けられ、農薬を噴霧するノズル6とからなる。
【0014】
本発明のホースガイド装置7は、ホース3の動力噴霧機1の本体4から延び出る部分をガイドする。ホース3のホースガイド装置7から延び出る部分をガイドするターンローラ8も使用されている。
【0015】
動力噴霧機1の本体4には、ホース3の巻き取り及び繰り出しを行うホース巻取り装置9が内装されている。ホース3はホース巻取り装置9からホースガイド装置7に向かって延び出る。動力噴霧機1の本体4及びタンク2は運搬車である軽トラック11の荷台に搭載されている。ノズル6は所定の幅に一度に農薬の噴霧を行うことができるように約6m程度のブームタイプとなっている。
【0016】
図1に示されるように、ノズル6を2人の作業者A,Bが持ち、ホース巻取り装置9によってホース3を繰り出したり巻き取ったりしながら圃場内を順次往復して農薬の散布作業を行うことができる。なおノズル6は、散布場所や作業に応じて動力移動式等の様々なタイプのものを使用することができる。またタンク2内に収容する液体に応じて様々な液体の噴霧を行うこともできる。例えばタンク2内に水を収容することによって散水作業を行うこともできる。
【0017】
動力噴霧機1の本体4は、エンジン等の動力を用いてタンク2内の農薬をホース3に圧送する従来公知のものであり、詳細な説明は割愛する。ホース巻取り装置9は、ホース3の送り出しや巻取りを、電動モータや動力噴霧機1のエンジン等の動力によって行うことができる従来公知のものである。
【0018】
このためホース巻取り装置9はスイッチの入り切りによって電動モータや電磁弁等を作動させ、ホース3の送り出し、巻取り及び停止操作を行うことが可能となっている。ただしホース3の送り出し、巻取り及び停止作動は従来公知となっているため詳細な説明は割愛する。
【0019】
ホースガイド装置7は、図2に示されるように、上方が開口した平面視で長方形をなすケース12に、プーリ13が自由回転自在に軸支されて構成されている。プーリ13は、ケース12の1組の対向する周壁12a,12bに軸支されている。プーリ13の回動支点軸はケース12における他の1組の対向する周壁12c,12dに対して平行となっている。
【0020】
プーリ13には周面を挟んでフランジ14が設けられている。図3に示されるように、ホース3は、両フランジ14の間に通されてプーリ13の周面に摺接する。ホースガイド装置7は、プーリ13の自由回転によってホース3の移動を案内する。ホース3は、ケース12におけるプーリ13を支持していない両周壁12c,12dの上方を通過してホースガイド装置7を出入りする。
【0021】
図3に示されるように、ケース12におけるプーリ13を支持していない両周壁12c,12d及び底面12eには、自由回転自在にローラ16が軸支されている。ローラ16はケース12内に位置している。ローラ16の回転軸心は、プーリ13の回転軸心に対して平行となっている。ホース3はローラ16とプーリ13との間を通過する。
【0022】
ホース3のノズル6側に位置するローラ16aのフレーム17には、スプリング18が設けられている。該ローラ16aはスプリング18によってプーリ13側に付勢されている。図4に示されるように、上記ローラ16aが取り付けられている周壁12dには、ローラ16aに対向するようにリミットスイッチ19が取り付けられている。
【0023】
リミットスイッチ19はホース巻取り装置9のホース3の送り出し及び停止操作を行うスイッチとなっている。リミットスイッチ19のオンによって、ホース巻取り装置9がホース3の引き出し状態に駆動される。
【0024】
ホース3を引き出すために、ホース3をノズル6側から引っ張ると、ホース3が上記ローラ16aをスプリング18の付勢力に抗して押し込み、リミットスイッチ19をオンする。これによりホース巻取り装置9がホース3の引き出し状態に駆動され、ホース巻取り装置9によってホース3が自動的に引き出される。上記ホース3の引っ張りを停止すると、リミットスイッチ19がオフとなり、ホース3の引き出しが停止される。
【0025】
ローラ16aが設けられた周壁12dには、ホース3のガイド体21が設けられている。ガイド体21は、四角形をなす枠体22からなる。該枠体22はステー23を介して上記周壁12dに固定されている。枠体22はケース12の上方に配置される。ホース3は枠体22内を通過する。
【0026】
枠体22の4つの周壁には、ローラ24が自由回転自在に軸支されている。各ローラ24は対応する周壁に沿って設けられている。各ローラ24の回転軸心は対応する周壁に対して平行となっている。各ローラ24は枠体22内に配置されている。ホース3の引き出し及び巻き取りに伴ってホース3がローラ24に接すると、ローラ24が自由回転してホース3の引き出し又は巻き取りを円滑にガイドする。
【0027】
図3に示されるように、ケース12内にはプーリ13の回動支点軸の近傍まで洗浄液26が収容されている。このためホース3はホースガイド装置7において必ず洗浄液26を通過する。ホース3は引き出し又は巻き取り時に上記洗浄液26によって洗浄される。洗浄の効果は洗浄液に依存する。洗浄液が殺菌や消毒効果を有する場合はホース3は洗浄液によって洗浄,殺菌,消毒が行われる。
【0028】
ケース12には洗浄液26内に位置するようにブラシ27が自由回転自在に設けられている。該ブラシ27は洗浄液26内においてホース3に接し、ホース3の泥落し等を行う。ホース3はブラシ27によって擦られながら洗浄液26によって洗浄されるため、泥等が効率よくこそぎ落とされる。
【0029】
ローラ16が設けられた両周壁12c,12dのうちホース3のホース巻取り装置9側の周壁12cの外側には、ホースガイド装置7の位置を固定する固定板28が設けられている。固定板28は一枚の板の折り曲げによって形成されている。固定板28は、軽トラック11のタイヤ29が収容されるタイヤ収容部31を備えている。
【0030】
該タイヤ収容部31は、山形に折り曲げられた山折部32に挟まれて形成されている。軽トラック11のタイヤ29が山折部32を乗り越えることによって、図5に示されるように、タイヤ29がタイヤ収容部31に収容される。一方タイヤ収容部31から山折部32を乗り越えることによってタイヤ29はタイヤ収容部31から容易に脱出することができる。
【0031】
軽トラック11のタイヤ29がタイヤ収容部31内に位置している状態では、固定板28をタイヤ29が踏み付けている状態となり、ホースガイド装置7が位置固定される。この状態でケース12はタイヤ29の近傍に位置する。これによりホースガイド装置7が、軽トラック11の近傍であって、且つ地表面上に位置固定されて設置される。
【0032】
本ホースガイド装置7は地面に差し込むようなタイプではなく、ホースガイド装置7の位置固定及び固定解除は、軽トラック11のタイヤ29による固定板28の踏み付け(タイヤ29をタイヤ収容部31内に収容する)及び踏み付け解除によって行われる。このためホースガイド装置7の位置固定及び固定解除は、軽トラック11の移動によって簡単に行うことができ、アスファルト等の硬質な地表面にも容易に位置固定して設置することができる。
【0033】
ターンローラ8は、図1に示されるように、地表面に設置されるスタンド33の上端に設けられたリング状のフレーム34に複数のローラ36が自由回転自在に軸支された構造となっている。フレーム34は一部が切欠きが設けられている。該切欠きを介してフレーム34内にホース3を挿入することができる。
【0034】
ホースガイド装置7から延びるホース3を切欠きからフレーム34内に挿入してターンローラ8にセットすると、ホース3はホースガイド装置7とターンローラ8との間において地表面の近傍で概ね水平となる。ホース3を引き出すとホース3はターンローラ8のいずれかのローラ36に接し、ローラ36の自由回転によって移動が円滑に案内される。
【0035】
ターンローラ8は農薬の噴霧場所、例えば畑の縁の低位置(地表面近傍)に設置される。必要に応じて複数のターンローラ8を設置することもできる。複数のターンローラ8を設置した場合は、所定のターンローラ8と他のターンローラ8との間にホース3が張られることになる。
【0036】
本ホースガイド装置7によって、軽トラック11の荷台にホース巻取り装置9を含む動力噴霧機1の本体4を搭載したまま農薬の噴霧作業を行う場合、軽トラック11の近傍においてホース3が地表面の近傍に下げられ、地表面の近傍に位置するターンローラ8に向かって引き出され、軽トラック11の近傍から畑の縁まで地表面の近傍においてホース3が移動する。
【0037】
これにより地表面から大きく離れた高所となる軽トラック11の荷台からターンローラ8に向かって直接ホース3を繰り出す場合のように、農薬の噴霧作業中にホース3が揺れたり弛んだりして作物に接するという不都合を防止することができ、ホース3の接触による作物の傷みを防止することができる。
【0038】
このため軽トラック11を畑やハウスの近傍に停車させて、ホース巻取り装置9から繰り出すホース3の長さを短くして、上記ホース3と作物との接触を防止しながら、農薬の噴霧作業をトラブルなく容易に行うことができる。
【0039】
なおホース巻取り装置9から繰り出されたホース3はホースガイド装置7において洗浄液26によって洗浄等がなされ、ホース3の衛生管理を容易に行うことができる。またホースガイド装置7がホース3の洗浄装置を兼ねるため、洗浄装置を各別に設ける必要がない。
【0040】
そしてホース巻取り装置9とは別のホース巻取り装置9より下手側(ノズル6側)の装置でホース3の洗浄が行われるため、ホース3によりホース巻取り装置9を汚す等の不都合も防止することができる。なおケース12内の洗浄液26の交換は、洗浄液26をケース12から流し出し、新たな洗浄液を補給することによって容易に行われる。洗浄機能はケース12内に入れる洗浄液の変更により容易に変更することができる。
【0041】
なお本ホースガイド装置7は、動力噴霧機1から延び出るホース専用の装置である必要はなく、動力噴霧機1から延び出るホースをガイドすることができるものであればいかなるタイプのホースガイド装置にも適用することができる。
【0042】
図6に示されるように、固定板28に下端部が屈曲したゲート状のパイプからなる支持フレーム37を介して、平面視略U字状をなすパイプからなるメインフレーム38を取り付け、該メインフレーム38にプーリ13を軸支して取り付け、メインフレーム38にU字状のパイプからなるスタンド39を取り付けてにホースガイド装置7を構成することもできる。
【0043】
図7に示されるように、ホース3のノズル6側を案内するローラ16aとリミットスイッチ(図示せず)とガイド体22はメインフレーム38に取り付けられたステー23に設けられている。なお図7において図2〜図6と同一符号は同一部品を示し、その機能も同一であるため、詳細な説明は割愛する。この場合は、洗浄液内にホース3を通すことはできないが、簡単な構成で安価にホースガイド装置7を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】動力噴霧機による農薬の噴霧作業状態を示す概要図である。
【図2】ホースガイド装置の斜視図である。
【図3】ホースガイド装置の背面透視図である。
【図4】ホースガイド装置の平面図である。
【図5】ホースガイド装置の側面透視図である。
【図6】他のホースガイド装置の斜視図である。
【図7】他のホースガイド装置の背面透視図である。
【符号の説明】
【0045】
1 動力噴霧機
3 ホース
7 ホースガイド装置
9 ホース巻取り装置
11 軽トラック(運搬車)
12 ケース(洗浄槽)
26 洗浄液
28 固定板(固定手段)
29 運搬車の車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬車(11)に搭載した動力噴霧機(1)のホース巻取り装置(9)から延び出るホース(3)のガイドが可能なホースガイド装置(7)であって、該ホースガイド装置(7)に、運搬車(11)の車輪(29)による踏み付けによってホースガイド装置(7)を地表面上又は地表面に近接する位置に固定する固定手段(28)を設けたホースガイド装置。
【請求項2】
ホースガイド装置(7)に、ホース(3)の洗浄を行う洗浄手段を一体的に設けた請求項1のホースガイド装置。
【請求項3】
洗浄手段が、ホースガイド装置(7)内において移動するホース(3)が通過する洗浄液(26)が収容された洗浄槽(12)からなる請求項2のホースガイド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−204236(P2006−204236A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−23118(P2005−23118)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(595078781)
【出願人】(504315163)関東甲信越三菱農機販売株式会社 (1)
【Fターム(参考)】