説明

ホースバンド

【課題】ハウジングの製造作業を簡便化できるようにする。
【解決手段】ウォームと、該ウォームが回動自在に挿通されたハウジング20と、一端側32に前記ハウジング20が固定され、他端側に前記ウォームに噛合するウォーム溝が設けられ、前記他端側が前記一端側32の外側となるようにして前記ハウジング0に挿通されて円環状となった帯板30とを備えるホースバンドであって、前記ハウジング20の底部23における突き合わされた素材の一側端部21と他側端部22との夫々に設けられ、筒状のハウジング20の軸方向に突出する突片24と、前記帯板30に穿設され、前記素材の一側端部21の突片24及び他側端部22の突片24の両突片24を挿入する突片挿入部35とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の配管機器の接続口にホースを接続する際に用いられるホースバンドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
送風ファンや水道の蛇口等の各種配管機器に設けられた接続口にホースを接続するに際しては、接続口に装着したホースを締め付けることで接続口とホースとの接続を固定する器具、所謂「ホースクリップ」が用いられている。そして、ホースクリップの一種として、円環状の帯板を縮径させることでホースを締め付けるもの、所謂「ホースバンド」があり、ホースバンドの中には、図1に示すように、ウォーム10を備え、このウォーム10を回動させることで、ウォーム溝31が設けられた円環状の帯板30を縮径させるものがある。
【0003】
このようなウォーム10を用いたホースバンド1では、ウォーム10が回動自在に挿通されたハウジング20が帯板30に設けられているのであるが、このハウジング20は、金属板によって形成されているのが一般的である。ハウジング20の構成を具体的に説明すると、図5に示すように、ハウジング20は、金属板を素材として、この素材を曲げ成形、所謂「プレス成形」してなるものであり、素材の一側端部21と他側端部22とを突き合わせるように筒状に形成されている。そして、この筒状のハウジング20は、帯板30の一端側32に外嵌されて、帯板30に固定されている。また、ハウジング20は、素材の一側端部21と他側端部22とが突き合わされた部分が底部23となっており、この底部23が円環状の帯板30の内側となるように帯板30に外嵌されている。
【0004】
このようにハウジング20を金属板によって形成したホースバンド1では、ウォーム10を回動させて円環状の帯板30を縮径させ、これにより接続口に装着されたホースを強固に締め付けると、ハウジング20に多大な力が加わり、筒状のハウジング20の底部23において、素材の一側端部21と他側端部22との間隔が広がり、筒状のハウジング20が径方向に変形してしまう虞がある。よって、従来のホースバンド1においては、突き合わされた素材の一側端部21と他側端部22とを溶接していた(図5の符号「a」部分参照)。また、帯板30にハウジング20を固定するために、帯板30にハウジング20の底部23をスポット溶接することで、帯板30にハウジング20を固定していた(図5の符号「b」部分参照)。
【0005】
上記背景技術は、一般的になされている事項であり、本願出願人は、出願時において、この背景技術が記載された文献を特に知見していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のホースバンドでは、ハウジングの底部において、互いに突き合わされた素材の一側端部と他側端部とを溶接しなければならないため、ハウジングの製造作業が煩雑であった。また、帯板にハウジングを組付ける際には、帯板にハウジングをスポット溶接しなければならないため、帯板へのハウジングの組付作業も煩雑であった。
【0007】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、ハウジングの製造作業を簡便化できるようにすることを第一の課題とする。また、帯板へのハウジングの組付作業を簡便化できるようにすることを第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の採った主要な手段は、
「ウォームと、
該ウォームが回動自在に挿通されたハウジングと、
一端側に前記ハウジングが固定され、他端側に前記ウォームに噛合するウォーム溝が設けられ、前記他端側が前記一端側の外側となるようにして前記ハウジングに挿通されて円環状となった帯板と
を備えるホースバンドであって、
前記ハウジングは、金属板を素材として該素材の一側端部と他側端部とを突き合わせるように筒状に曲げ成形されてなると共に、前記素材の一側端部と他側端部とを突き合わせた部分を底部として該底部が円環状の帯板の内側となるように前記帯板の一端側に外嵌されてなるものであり、
前記ハウジングの底部における突き合わされた前記素材の一側端部と他側端部との夫々に設けられ、筒状のハウジングの軸方向に突出する突片と、
前記帯板に穿設され、前記素材の一側端部の突片及び他側端部の突片の両突片を挿入する突片挿入部と
を備えることを特徴とするホースバンド」
である。
【0009】
上記構成のホースバンドでは、金属板を素材として形成されたハウジングの底部において、素材の一側端部と他側端部との夫々に、筒状のハウジングの軸方向に突出する突片が設けられており、各突片は、帯板に穿設された突片挿入部に挿入されている。よって、ハウジングの底部において、素材の一側端部と他側端部とは、帯板の突片挿入部によってハウジングの径方向への移動が拘束されることになり、互いに突き合わされた一側端部と他側端部とが離間し難くなる。従って、ハウジングの製造に際して、素材の一側端部と他側端部とを溶接することを省略することができ、ハウジングの製造作業を簡便化することができる。
【0010】
上記手段において、
「前記帯板における前記ハウジングの固定部分に穿設され、前記ウォームを逃がす方形の逃がし孔を備え、
前記突片挿入部は、前記逃がし孔の端部により構成されている
ことを特徴とするホースバンド」
としてもよい。
【0011】
上記構成のホースバンドでは、ウォームを逃がす逃がし孔を用いて突片挿入部が構成されているため、逃がし孔とは別途に、帯板に突片挿入部を設ける必要がない。従って、突片挿入部を具備する帯板を簡単な構成によって実現することができる。
【0012】
上記手段において、
「前記ウォームは、工具が掛けられる頭部と、周面に螺旋状のウォーム歯が設けられた軸部とを有するものであると共に、前記頭部が前記ハウジングに接触する状態でハウジングに挿通されたものであり、
前記各突片は、前記ハウジングの底部における前記ウォームの頭部側の端部に設けられており、
前記突片挿入部は、前記逃がし孔における前記ウォームの頭部側の端部により構成されており、
前記逃がし孔における前記突片挿入部とは反対側の端部により構成され、前記ハウジングの底部における前記突片が設けられた側とは反対側の端部に当接して帯板に対してハウジングを位置決め固定する固定部を備える
ことを特徴とするホースバンド」
としてもよい。
【0013】
ウォームが、工具が掛けられる頭部を有し、この頭部がハウジングに接触する状態でハウジングに挿通されたホースバンドでは、帯板を強く締め付けると、ハウジングにおいて、ウォームの頭部側に、素材の一側端部と他側端部とを離間させる力が大きく加わり、ハウジングがウォームの頭部側にて変形し易いのであるが、上記構成のホースバンドでは、ハウジングの底部において、変形し易い側に突片を設けて素材の一側端部と他側端部とが離間し難くなるようにしているため、ハウジングの変形を的確に防止することができる。
【0014】
また、上記構成のホースバンドでは、帯板に固定部が設けられており、この固定部をハウジングの端部に当接させることで、帯板に対するハウジングの位置決め固定を行うことから、従来のホースバンドのようにスポット溶接を行う必要がなく、帯板にハウジングを簡便に固定することができる。従って、帯板へのハウジングの組付作業を簡便化することができる。
【0015】
また、突片挿入部が帯板の逃がし孔の端部を用いて構成されており、逃がし孔における突片挿入部とは反対側の端部を用いて固定部が構成されていることから、逃がし孔とは別途に、帯板に固定部を設ける必要がない。従って、固定部を具備する帯板を簡単な構成によって実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
上述した通り、本発明によれば、ハウジングの製造作業を簡便化することができる。特に、ハウジングの端部に当接してハウジングを位置決め固定する固定部を帯板が具備するホースバンドでは、帯板へのハウジングの組付作業を簡便化することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明に係るホースバンドの実施形態としての一例を詳細に説明する。
【0018】
図1に示すように、本発明に係るホースバンド1は、ウォーム10と、このウォーム10が回動自在に挿通されたハウジング20と、一端側32にハウジング20が固定され、他端側33にウォーム10に噛合するウォーム溝31が設けられ、他端側33が一端側32の外側となるようにしてハウジング20に挿通されて円環状となった帯板30とを備えている。
【0019】
なお、このようなホースバンド1は、送風ファンや送風ダクト等の気体の配管機器、水道の蛇口や油圧発生装置等の液体の配管機器等、流体の各種配管機器の接続口にホースを接続する際に用いられるものであり、図示は省略するが、各種配管機器の接続口に装着されたホースの外周に帯板30を周設し、ウォーム10を回動させ、円環状の帯板30を縮径させてホースを締め付けることで、接続口に装着されたホースを堅固に固定するものである。また、特に、例えば自動車のエアダクト等、激しい振動が生じる環境下の各種の配管において、接続口に装着されたホースが脱落したり緩みが生じたりしないようにホースを締め付けるために好適に用いることできるものである。
【0020】
ところで、図2に示すように、ハウジング20は、ウォーム10を回動自在に挿通させるものとして箱状に形成されているのであるが、一枚の金属板を素材として、曲げ成形、すなわち「プレス成形」によって形成されており、帯板30の一端側32及び他端側33を挿通可能なように、素材の一側端部21と他側端部21とを突き合わせるようにして筒状に形成されている。そして、素材の端部が突き合わされた部分を底部23として、この底部23が内側となるようにして帯板30の一端側32に外嵌され、帯板30に固定されている。次に、ハウジング20と帯板30との固定構造を以下に詳細に説明する。
【0021】
ハウジング20の底部23においては、素材の一側端部21と他側端部22との夫々に、筒状のハウジング20の軸方向(円環状の帯板30の周方向)に突出する突片24が設けられている。
【0022】
帯板30においては、ハウジング20の固定部分にウォーム10を逃がす方形の逃がし孔34が設けられており、この逃がし孔34における帯板30の周方向の端部によって突片挿入部35が構成されている。また、帯板30の逃がし孔34においては、上述の突片挿入部35とは反対側の端部によって固定部36が構成されている。
【0023】
帯板30の一端側32の先端からハウジング20を外嵌し、帯板30に対してハウジング20を固定位置までスライドさせて帯板30にハウジング20を組付けると、図3及び図4に示すように、ハウジング20の底部23の各突片24が帯板30の突片挿入部35に挿入される。これにより、ハウジング20の突き合わされた素材の一側端部21と他側端部22とが離間しないように拘束され、筒状となったハウジング20の径方向の変形が防止される。また、ハウジング20の突片が設けられた側とは反対側の端面が帯板30の固定部36の端面に当接する。これにより、帯板30に対してハウジング20が帯板30の周方向(ハウジング20の軸方向)に位置決め固定される。
【0024】
ところで、本例においては、ウォーム10として、スパナ等の工具が掛けられる六角部を有する頭部11と、外周に螺旋状のウォーム歯12が設けられた軸部13とを有するウォーム10を採用しており、ウォーム10をハウジング20に装着した状態では、ウォーム10の頭部11がハウジング20に接触する。より具体的には、ウォーム10の頭部11の座面(頭部11における軸部13側の端面)が、対向するハウジング20の端面に接触する。よって、ウォーム10を回動して帯板30を強固に締め付けると、ハウジング20においては、ウォーム10の頭部11が接触する部分に多大な力が加わり、ウォーム10の頭部11が接触する側の部分が反対側の部分よりも変形し易いのであるが、上述の突片24がウォーム10の頭部11側の端部に設けられており、この突片24が帯板30の突片挿入部35に挿入されてその移動が堅固に拘束されていることから、帯板30を強固に締め付けても、ハウジング20が変形し難くなっている。
【0025】
さらに、本例では、帯板30において、ハウジング20が固定される部分が、他の部分よりも円環状の帯板30の径方向に外側に膨出した膨出部37となっている。そして、膨出部37の膨出量は、ハウジング20の素材の厚さと略同一となっており、帯板30にハウジング20を組付けた状態では、ハウジング20の底部23が帯板30の膨出部37に収容される。これにより、円環状となった帯板30の内面に大きな凹凸を生じず、帯板30によってホースを締め付ける際に、帯板30の内周面全体に渡って均一な締め付け力を得ることができる。
【0026】
また、帯板30の逃がし孔37において、ウォーム10の頭部11側の端部によって突片挿入部35が構成されているのに対して、ウォーム10の頭部11とは反対側、換言すれば、ウォーム10の軸部13の先端側、の端部によって固定部36が構成されており、しかも、この固定部36は、膨出部37に張り出す舌片状に形成されている。そして、この舌片状の固定部36の前端面がハウジング20の底部23の端面に当接することで、膨出部37に収容されたハウジング20の底部23を、帯板30における突片挿入部35の両側の部位と固定部36の前端面との間にて挟持するようにして、帯板30に対してハウジング20が位置決め固定される。よって、帯板30の内面における固定部36とハウジング20との境界部分も大きな凹凸のない平坦な面となっており、この点からも、帯板30によってホースを締め付ける際に、帯板30の内周面全体に渡って均一な締め付け力を得ることができる。
【0027】
なお、図4では、帯板30の他端側33の図示を省略してあるが、帯板30の他端側33は、帯板30の一端側32とウォーム10との間、より具体的には、帯板30の膨出部37とウォーム10の軸部13との間、に位置して、ウォーム歯12にウォーム溝31が噛合するようにハウジング20に挿通されている。そして、ウォーム10を回動させると、帯板30の他端側33のハウジング20に対する位置が変化し、これにより、円環状の帯板30全体が拡径したり、縮径したりすることは、従来のホースバンドと同様である。
【0028】
また、帯板30のウォーム溝31は、帯板30を構成するステンレス鋼板等の素材を打ち抜いて貫通したスリット孔状に形成されたものであり、スリット孔状のウォーム溝31が帯板30の他端側33に、円環状の帯板30の周方向に等間隔で複数、連設されていることも、従来のホースバンドと同様である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ホースバンドの一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示したホースバンドのハウジングを帯板の内側から見た斜視図である。
【図3】図1に示したホースバンドを帯板の内側から見た要部平面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】従来のホースバンドのハウジングを帯板の内側から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ホースバンド
10 ウォーム
11 頭部
12 ウォーム歯
13 軸部
20 ハウジング
21 素材の一側端部
22 素材の他側端部
23 底部
24 突片
30 帯板
31 ウォーム溝
32 帯板の一端側
33 帯板の他端側
34 逃がし孔
35 突片挿入部
36 固定部
37 膨出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォームと、
該ウォームが回動自在に挿通されたハウジングと、
一端側に前記ハウジングが固定され、他端側に前記ウォームに噛合するウォーム溝が設けられ、前記他端側が前記一端側の外側となるようにして前記ハウジングに挿通されて円環状となった帯板と
を備えるホースバンドであって、
前記ハウジングは、金属板を素材として該素材の一側端部と他側端部とを突き合わせるように筒状に曲げ成形されてなると共に、前記素材の一側端部と他側端部とを突き合わせた部分を底部として該底部が円環状の帯板の内側となるように前記帯板の一端側に外嵌されてなるものであり、
前記ハウジングの底部における突き合わされた前記素材の一側端部と他側端部との夫々に設けられ、筒状のハウジングの軸方向に突出する突片と、
前記帯板に穿設され、前記素材の一側端部の突片及び他側端部の突片の両突片を挿入する突片挿入部と
を備えることを特徴とするホースバンド。
【請求項2】
前記帯板における前記ハウジングの固定部分に穿設され、前記ウォームを逃がす方形の逃がし孔を備え、
前記突片挿入部は、前記逃がし孔の端部により構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のホースバンド。
【請求項3】
前記ウォームは、工具が掛けられる頭部と、周面に螺旋状のウォーム歯が設けられた軸部とを有するものであると共に、前記頭部が前記ハウジングに接触する状態でハウジングに挿通されたものであり、
前記各突片は、前記ハウジングの底部における前記ウォームの頭部側の端部に設けられており、
前記突片挿入部は、前記逃がし孔における前記ウォームの頭部側の端部により構成されており、
前記逃がし孔における前記突片挿入部とは反対側の端部により構成され、前記ハウジングの底部における前記突片が設けられた側とは反対側の端部に当接して帯板に対してハウジングを位置決め固定する固定部を備える
ことを特徴とする請求項2に記載のホースバンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−192387(P2007−192387A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−13642(P2006−13642)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(391022197)株式会社加藤製作所 (15)
【Fターム(参考)】