説明

ホースバンド

【課題】ハウジングが金属板を素材としてプレス成形してなるホースバンドであって、溶接を要せずに簡便に製造することができるホースバンドを提供する。
【解決手段】頭部及び軸部を有し、軸部の外周にウオーム歯が形成されてなるスピンドル60と、金属板を素材として、金属板の一側端部と他側端部とが互いに対向するように略筒状にプレス成形されてなり、スピンドル60の軸部を挿通してスピンドルを回動自在に支持するハウジング70と、一端側82にスピンドル60の軸部を挿通させる挿通部が設けられ、この一端側82がスピンドル60の頭部とハウジング70の端面との間に介在される一方で、他端側83にウォーム歯に噛合するウォーム溝81が設けられ、この他端側がスピンドル60の軸部とハウジング70の底部との間に挿通され、一端側82が外側となり他端側83が内側となるようにして円環状になる帯板80とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の配管機器の接続口にホースを接続する際に用いられるホースバンドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
送風ファンや水道の蛇口等の各種配管機器に設けられた接続口にホースを接続するに際しては、接続口に装着したホースを締め付けることで接続口とホースとの接続を固定する器具、所謂「ホースクリップ」が用いられている。そして、ホースクリップの一種として、円環状の帯板を縮径させることでホースを締め付けるもの、所謂「ホースバンド」があり、ホースバンドの中には、図4に示すように、ウオーム歯(図示しない)を有するスピンドル10を備え、このスピンドル10を回動させることで、ウォーム溝31が設けられた円環状の帯板30を縮径させるものがある。
【0003】
このようなウォーム10を用いたホースバンド1では、スピンドル10を回動自在に支持するハウジング20が帯板30に一体的に設けられているのであるが、このハウジング20は、金属板によって形成されているのが一般的である。
【0004】
ハウジング20の構成を具体的に説明すると、図5に示すように、ハウジング20は、金属板を素材として、この素材を曲げ成形、所謂「プレス成形」してなるものであり、素材の一側端部21と他側端部22とを突き合わせるように略筒状に形成されている。そして、この略筒状のハウジング20は、帯板30の一端側32に外嵌されて、帯板30に固定されている。また、ハウジング20は、素材の一側端部21と他側端部22とが突き合わされた部分が底部23となっており、この底部23が円環状の帯板30の内側となるように帯板30に外嵌されている。
【0005】
このようにハウジング20を金属板によって形成したホースバンド1では、スピンドル10を回動させて円環状の帯板30を縮径させ、これにより接続口に装着されたホースを強固に締め付けると、スピンドル10の頭部が接触するハウジング20の端面に多大な力が加わり、略筒状のハウジング20の底部23において、素材の一側端部21と他側端部22との間隔が広がり、略筒状のハウジング20が径方向に変形してしまう虞がある。よって、従来のホースバンド1においては、突き合わされた素材の一側端部21と他側端部22とを溶接していた(図5の符号「a」部分参照)。また、帯板30にハウジング20を固定するために、帯板30にハウジング20の底部23をスポット溶接することで、帯板30にハウジング20を固定していた(図5の符号「b」部分参照)。
【0006】
上記背景技術は、一般的になされている事項であり、本願出願人は、出願時において、この背景技術が記載された文献を特に知見していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のホースバンドでは、ハウジングの底部において、互いに突き合わされた素材の一側端部と他側端部とを溶接しなければならないため、ハウジングの製造作業が煩雑であった。また、帯板にハウジングを組付ける際には、帯板にハウジングをスポット溶接しなければならないため、帯板へのハウジングの組付作業も煩雑であった。よって、従来のホースバンドは、その製造作業が煩雑なものであった。
【0008】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、ハウジングが金属板を素材としてプレス成形してなるホースバンドであって、溶接を要せずに簡便に製造することができるホースバンドの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の採った主要な手段は、
「頭部及び軸部を有し、前記軸部の外周にウオーム歯が形成されてなるスピンドルと、
金属板を素材として、該金属板の一側端部と他側端部とが互いに対向するように略筒状にプレス成形されてなり、前記スピンドルの前記軸部を挿通して該スピンドルを回動自在に支持するハウジングと、
一端側に前記スピンドルの前記軸部を挿通させる挿通部が設けられ、該一端側が前記スピンドルの前記頭部と前記ハウジングの端面との間に介在される一方で、他端側に前記ウォーム歯に噛合するウォーム溝が設けられ、該他端側が前記スピンドルの前記軸部と前記ハウジングの底部との間に挿通され、前記一端側が外側となり前記他端側が内側となるようにして円環状になる帯板と
を備えることを特徴とするホースバンド」
である。
【0010】
上記構成のホースバンドでは、スピンドルの頭部とハウジングの端面との間に帯板の一端側が介在されているため、頭部とハウジングの端面とが直接、接触することがない。よって、スピンドルを回動させて円環状の帯板を縮径させ、これにより接続口に装着されたホースを強固に締め付けても、回動するスピンドルの頭部から略筒状に形成されたハウジングの端面に、ハウジングを径方向に変形させる力が加わらない。このため、上記構成のホースバンドでは、素材の一側端部と他側端部とを相互に離間しないように溶接する必要がなく、ハウジングを形成するに際して、溶接作業を省略することができる。
【0011】
また、帯板の一端側が、その挿通部にスピンドルの軸部を挿通した状態でスピンドルの頭部とハウジングの端面との間に介在されることから、帯板の一端側にスピンドル及びハウジングが組付けられることになる。よって、帯板にハウジングを固定するための溶接作業を省略することもできる。
【0012】
このように、上記構成のホースバンドでは、ハウジングが金属板を素材としてプレス成形してなるホースバンドであっても、溶接を要せずに簡便に製造することができる。また、ハウジングに帯板を挿通させて帯板とハウジングとを固定する必要がないため、ハウジングに挿通させる必要がない分だけ、帯板の全長を短くすることができ、帯板の材料を低減させることもできる。
【0013】
上記手段において、
「前記ハウジングは、素材としての金属板の一側端部と他側端部とが互いに対向する部分を底部とするものであり、
前記底部において、金属板の一側端部と他側端部とは、所定間隔で互いに離間している
ことを特徴とするホースバンド」
としてもよい。
【0014】
本発明に係るホースバンドでは、ハウジングに支持されたスピンドルの軸部とハウジングの底部との間に帯板の他端側が挿通されるため、ホースを締め付けた状態では、帯板の他端側の裏面とハウジングの底部の内面とが接触する。ここで、帯板が厚さの薄い素材から形成されており、ウオーム溝が貫通状に形成されている場合には、スピンドルのウオーム歯の山の頂部が帯板の裏面から突出してハウジングの底部に接触するといった支障を生じる虞がある。
【0015】
上記構成のホースバンドでは、ハウジングの底部において、ハウジングを構成する金属板の一側端部と他側端部とが所定間隔で互いに離間しているため、ハウジングの底部に、スピンドルのウオーム歯が接触しないように所定幅の逃がしが形成されることになる。よって、上述の支障が生じることを防止できる。また、金属板によって略筒状のハウジングを形成するに際して、金属板の一側端部と他側端部とを突き合わせずに、所定間隔で離間させるため、ハウジングの材料を低減することもできる。
【発明の効果】
【0016】
上述した通り、本発明によれば、ハウジングが金属板を素材としてプレス成形してなるホースバンドであって、溶接を要せずに簡便に製造することができるホースバンドを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明に係るホースバンドの実施形態としての一例を詳細に説明する。
【0018】
なお、本発明に係るホースバンドは、送風ファンや送風ダクト等の気体の配管機器、水道の蛇口や油圧発生装置等の液体の配管機器等、流体の各種配管機器の接続口にホースを接続する際に用いられるものであり、図示は省略するが、各種配管機器の接続口に装着されたホースの外周に装着されて、ホースを締め付けることで接続口に装着されたホースを堅固に固定するものである。また、特に、例えば自動車のエアダクト等、激しい振動が生じる環境下の各種の配管において、接続口に装着されたホースが脱落したり緩みが生じたりしないようにホースを締め付けるために好適に用いることできるものである。
【0019】
図1に示すように、本発明に係るホースバンド50は、ウオーム歯63(図2参照)を有するスピンドル60と、このスピンドルを回転自在に支持するハウジング70と、他端側に上記ウオーム歯63に噛合するウオーム溝81を有し、一端側82が外側になり、他端側83が内側なるようにして円環状になる帯板80とを備えている。
【0020】
次に、スピンドル60、ハウジング70及び帯板80を、図2に基づいて詳細に説明する。
【0021】
スピンドル60は、頭部61と軸部62とを有しており、上記ウオーム歯63は、軸部62の外周に螺旋状に形成されている。また、頭部61には、スパナ等の工具を掛けることができる工具掛け(本例では六角形状の工具掛け)が設けられており、スピンドル60は、工具によって回動操作される。
【0022】
ハウジング70は、適宜形状に打抜形成された金属板を素材として、金属板の一側端部72aと他側端部72bとが対向するようにプレス成形によって略筒状に形成されてなるものである。ここで、金属板の一側端部72aと他側端部72bとが対向する部分によって、ハウジング70の底部72(ホースバンド50の内側となる部分)が構成されている。また、金属板の一側端部72aと他側端部72bとは、所定間隔で離間するようにして互いに対向しており、金属板の一側端部72aと他側端部72bとの間隙によって、詳細は後述するウオーム歯63の逃がし73が形成されている。また、ハウジング70の長さ方向の両端面には、スピンドル60の軸部62を挿通させる半円弧状の挿通部71が設けられており、スピンドル60は、その軸部62がハウジング70の挿通部71に挿通されて、ハウジング70に回動自在に支持される。
【0023】
一端側82と他端側83とが重ね合わされて円環状となる帯板80は、一端側82が径方向にて外方に延出するように屈曲形成されており、この一端側82に、スピンドル60の軸部61を回動自在に挿通する挿通部84が設けられている。そして、帯板80の一端側82にスピンドル60を挿通させた上で、このスピンドル60にハウジング70を装着することで、帯板80の一端側82にスピンドル60及びハウジング70が組付けられる。このように組付られた状態では、帯体80の一端側がスピンドル60の頭部61とハウジング70の端面との間に介在された状態となる。
【0024】
スピンドル60の頭部61とハウジング70の端面との間に介在された帯板80の一端側82は、帯板80を締め付ける方向にスピンドル60を回動させた際に、スピンドル60の頭部61をその表面にて滑らせることで、スピンドル60の頭部61から加わる摩擦力がハウジング70の端面に伝わらないようにするものであり、所謂「座金」として機能する。特に、スピンドル60と共に回動することのない座金として機能する。
【0025】
ところで、本例では、帯板80の一端側に設けられた挿通部84を、スピンドルのウオーム歯63の山径よりも小径で、谷径よりも大径の円形状に形成してあり、帯板80の一端側82にスピンドル60を組付ける場合には、スピンドル60の軸部62の先端から、スピンドル60を回しながら帯板80の挿通部84に挿通させる構造となっている。よって、帯板80の挿通部84にスピンドル60を挿通させると、スピンドル60が帯板80から不用意に脱落することがない。また、スピンドル60の頭部61から多大な摩擦力が加わっても、帯板80の一端側82の貫通部84周りに変形が生じ難い。
【0026】
なお、帯板80の挿通部84については、円形状ではなく、U字状等のように一側が開放された形状に形成してもよい。このように、帯板80の挿通部84を一側が開放された形状に形成することで、帯板80にスピンドル60を組付ける際に、開放された側から挿通部84にスピンドル60を装着することができ、帯板80に対するスピンドル60の組付作業を簡便化することができる。
【0027】
以上のように構成された本例のホースバンド50では、図3に示すように、帯板80の一端側82にスピンドル60と共に組付けられたハウジング70に、帯板80の他端側83が挿通されて、帯板80全体が円環状のものとなる。そして、スピンドル60を回動操作することで、ハウジング70に対する帯板80の他端側83の位置を調節して、円環状となった帯板80の径を変動させるのであるが、このホースバンド50では、従来のものとは異なり、帯板80の一端側82の内側に他端側83が潜り込む。よって、本例では、ハウジング70の長さ方向におけるハウジング70の端面(挿通部71が設けられた部分の端面)と底部72の端面との間隔について、スピンドル60の軸部62の基端側の間隔を先端側の間隔よりも大きくしてある。これにより、帯板80の一端側82の内側に他端側83を円滑に潜り込ませることができる。
【0028】
また、本例では、帯板80が、板厚0.5mm程度の厚さが薄い金属板から形成されており、ウオーム溝81は、帯板80を打ち抜いて貫通したスリット孔状に形成されている。よって、帯板80の他端側83を、ハウジング70内におけるスピンドル60の軸部62とハウジング70の底部72との間に、ガタツキのないように挿通させようとすると、ウオーム歯63の谷部とハウジング70の底部72の内面との間の寸法を、帯板80の板厚よりも若干大き目程度に設定しなければならず、このように設定すると、ウオーム歯63の頂部がハウジング70の底部72の内面に干渉してしまう。
【0029】
そこで、本例では、ハウジング70の底部72に所定幅の逃がし73を設けることで、ウオーム歯63の頂部がハウジング70の底部72の内面に干渉することがないようにしてある。なお、逃がし73が、ハウジング70の素材である金属板の一側端部72aと他側端部72bとの間隙によって形成されていることは上述の通りである。
【0030】
ところで、本例のホースバンド50では、ハウジング70の底部72が円環状の帯板80の内側に位置する。よって、ハウジング70の底部72の外面が、締め付けるホースの周面に接触することになる。ここで、ハウジング70の底部72を平面状に形成してもよいが、ホースの外周に倣う方向に湾曲する曲面状に形成すると、換言すれば、ハウジング70の底部72を、ハウジング70の長さ方向において、中央部分がスピンドル60の軸部62に近づき、両端部分がスピンドル60の軸部62から遠ざかるように湾曲する曲面状に形成すると、ホースに加わる締め付け力を、ホースの外周全体に渡って均一な締め付け力に近づけることができ、好適である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るホースバンドの一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示したホースバンドにおける帯板の一端側の部分を内側から見た分解斜視図である。
【図3】図1に示したホースバンドのハウジング部分の断面正面図である。
【図4】従来のホースバンドを示す斜視図である。
【図5】従来のホースバンドのハウジングをホースバンドの内側から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
50 ホースバンド
60 スピンドル
61 頭部
62 軸部
63 ウォーム歯
70 ハウジング
71 挿通部
72 底部
72a 素材の一側端部
72b 素材の他側端部
73 逃がし
80 帯板
81 ウオーム溝
82 帯板の一端側
83 帯板の他端側
84 挿通部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部及び軸部を有し、前記軸部の外周にウオーム歯が形成されてなるスピンドルと、
金属板を素材として、該金属板の一側端部と他側端部とが互いに対向するように略筒状にプレス成形されてなり、前記スピンドルの前記軸部を挿通して該スピンドルを回動自在に支持するハウジングと、
一端側に前記スピンドルの前記軸部を挿通させる挿通部が設けられ、該一端側が前記スピンドルの前記頭部と前記ハウジングの端面との間に介在される一方で、他端側に前記ウォーム歯に噛合するウォーム溝が設けられ、該他端側が前記スピンドルの前記軸部と前記ハウジングの底部との間に挿通され、前記一端側が外側となり前記他端側が内側となるようにして円環状になる帯板と
を備えることを特徴とするホースバンド。
【請求項2】
前記ハウジングは、素材としての金属板の一側端部と他側端部とが互いに対向する部分を底部とするものであり、
前記底部において、金属板の一側端部と他側端部とは、所定間隔で互いに離間している
ことを特徴とする請求項1に記載のホースバンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−333078(P2007−333078A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165560(P2006−165560)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(391022197)株式会社加藤製作所 (15)
【Fターム(参考)】