説明

ホールプラグ

【課題】高い抜去力を実現しつつ、ホールプラグを金型から離型する際の係止爪への負荷を軽減する。
【解決手段】ホールプラグ1の脚部3が、内筒11と、内筒を囲繞する外筒12と、これらを連結するリブ15と、外筒の外周面に設けられ、脚部がボディパネル21の孔22に挿入された際にその周縁に係止される係止爪14とを有するものとし、上記リブを、係止爪の位置に対応して配置し、脚部の挿入方向から見た場合に、ホールプラグの径方向に対して傾斜させた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のボディパネル等の板状部材に設けられた孔を閉塞するためのホールプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のボディパネルには、作業・点検、ワイヤハーネス等の配線および部材の取り付け等に用いられる孔が設けられている。これらの孔は、使用しない場合には、水等の侵入を防止するために樹脂製のホールプラグによって閉塞されるのが一般的である。このホールプラグについては、装着作業性や止水(防水)性の向上等を目的として種々の技術が開発されている。
【0003】
例えば、中央に盲孔が設けられるとともに、取付孔に係止される係止爪が全外周に設けられた挿入部と、この挿入部の上端に連接された非挿入部とを備え、挿入部は、非挿入部の周縁に設けられた環状の円弧状溝を有し、円弧状溝には、所定間隔で周方向に複数配置された径方向に沿って延在する隔壁部が設けられているホールプラグが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、例えば、頭部と、この頭部の裏面から突設され、板状部材の孔に挿入される脚部とを備え、脚部は、頭部の裏面からそれぞれ起立する板状の複数の起立板をもって筒形状をなすように形成され、各起立板部の基端部には、頭部と協働して板状部材の孔の周縁部を挟持する係合段部が形成され、各起立板部の内側には、その径方向内方への撓みを抑制する波状の板材からなる支持部が設けられたホールプラグが知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭61−59067号公報
【特許文献2】特開2004−162808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載の従来技術では、円弧状溝に設けられた隔壁部がリブとして作用することで、ホールプラグの取付時には挿入部の過度の変形が防止され、また、取付後においては、高い抜去力(孔から外れることを防止するため保持力)が実現されるとともに、挿入部を取付孔に密接させて止水性が高まるという利点がある。しかしながら、上記隔壁部は、ホールプラグの径方向に沿って直線状に設けられているためその周辺の係止爪が内側に変形し難くなり、ホールプラグの製造の際に金型の無理抜き(即ち、ホールプラグの成形後に係止爪を弾性変形させながら金型から取り出すこと)を行うと、場合によっては係止爪に過度の力が作用して係止爪が破損してしまうという課題があった。
【0006】
この点に関し、上記特許文献2に記載の従来技術では、支持部(上記隔壁部に相当)は波状の板材からなるため、この板材のばね性により、金型の無理抜き時における径方向内方に向かう撓み力を抑制でき、係止爪が保護されるという利点がある。しかしながら、波状の支持部はその機能を果たすために長手方向の寸法を比較的大きく確保する必要があり、これにより、起立板部と支柱部との間隔も支持部を収容可能な程度に広く確保する必要が生じるため、ホールプラグの設計の自由度が損なわれるとともにその小型化が阻害されるという課題があった。また、特許文献2の従来技術では、板状部材の孔の内周面に密接する起立板部は、周方向に所定間隔で複数配置される構成であるため、高い止水性を確保することが難しいという課題もあった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みて案出されたものであり、高い抜去力を実現しつつ、成形品を金型から離型する際の係止爪への負荷を軽減することを可能としたホールプラグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、頭部(2)と、当該頭部から突設された脚部(3)とを備え、板状部材(21)に設けられた孔(22)に前記脚部を挿入することによって当該孔を閉塞するホールプラグ(1)であって、前記脚部は、第1壁(11)と、前記第1壁に対向する第2壁(12)と、前記第1壁と前記第2壁とを連結するリブ(15)と、前記第2壁の外周面に設けられ、前記脚部が前記孔に挿入された際に当該孔の周縁に係止される係止爪(14)とを有し、前記リブは、前記係止爪の位置に対応して配置され、前記脚部の挿入方向から見た場合に、ホールプラグの中心から前記係止爪の中心に向かう方向に対して傾斜している構成とする。
【0009】
また、第2の発明として、前記リブは、前記脚部の挿入方向から見た場合に、前記係止爪の中心からオフセットした位置で前記第2壁に対して接続されている構成とすることができる。
【0010】
また、第3の発明として、前記第1壁は、その一端側で前記頭部に接続されるとともに、その他端側で前記第2壁に接続され、前記第2壁は筒状を呈する構成とすることができる。
【0011】
また、第4の発明として、前記第2壁の上部に連接されるとともに、前記脚部が前記孔に挿入された際に前記板状部材に当接するフランジ部(4)を更に備えた構成とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
上記第1の発明によれば、第1壁と前記第2壁とを連結するリブを、脚部の挿入方向から見て、ホールプラグの中心から係止爪の中心に向かう方向に対して傾斜させて設けることで、ホールプラグの高い抜去力を実現しつつ、ホールプラグを金型から離型する際の係止爪への負荷を軽減することが可能となる。また、係止爪側からの押圧に対してリブが容易に弾性変形するため、リブ自体の破損を防止できるという利点もある。
【0013】
上記第2の発明によれば、係止爪が容易に内側(リブ側)へ変位可能となり、ホールプラグを金型から離型する際の係止爪およびリブへの負荷をより効果的に軽減することができる。
【0014】
上記第3の発明によれば、簡易な構成により、板状部材の孔に脚部が挿入された際に当該孔の内周面に第2壁の外周面を密接させることが可能となり、ホールプラグの高い止水性を実現することができる。
【0015】
上記第4の発明によれば、簡易な構成により、ホールプラグの止水性をより効果的に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下では、特に断り書きのない限り、方向を示す用語「上」および「下」は、図4に示したホールプラグ1に従うものとする(即ち、頭部2側が上側、脚部3側が下側となる。)。
【0017】
図1および図2はそれぞれ本発明に係るホールプラグを上側および下側から見た斜視図であり、図3はホールプラグの平面図であり、図4は図3中のIV−IV線部分断面図であり、図5は係止爪およびリブの詳細構成を示す部分拡大図である。なお、図5は、ホールプラグを下側から見た場合の構成を示している。
【0018】
図1および図2に示すように、ホールプラグ1は、自動車のボディパネル(板状部材)21に設けられた孔22(図6参照)を閉塞するためのものであり、円形の平板からなる頭部2と、この頭部2の周縁から下方に突設された脚部3と、この脚部3の周縁から斜め下方に延設されたフランジ部4とを備え、これら各部2〜4が合成樹脂材料によって一体形成されている。
【0019】
脚部3は、図4にも示すように、頭部2の下面に接続された内筒(第1壁)11と、この内筒11を囲繞する外筒(第2壁)12とを有する。内筒11と外筒12とは、略円筒状を呈し、互いの下端部が接続されている。これにより、脚部3は略U字状の断面を有し、頭部2の周辺には環状溝13が形成される。外筒12の外径の大きさは、脚部3が挿入される孔の径に基づき設定される。また、外筒12の外周面には、ホールプラグ1が孔22(図6参照)に挿入された際にその孔22の周縁に係止される係止爪14が突設されている。係止爪14は、周方向に略等間隔で複数(ここでは、5つ)配置されている。
【0020】
環状溝13内には、内筒11の外周面と外筒12の内周面とを連結する複数(ここでは、5つ)のリブ15が設けられている。各リブ15は、各係止爪14の位置に対応して配置されており、図5にも示すように、外筒12に対し、係止爪14が突設された位置の裏側に接続されている。平面視(孔に対する脚部3の挿入方向から見た場合)において、内筒11と外筒12との間で略直線的に延在する各リブ15は、その中心線Aが、ホールプラグ1の中心Oから係止爪14の中心Pに向かう軸線Q(径方向)に対して傾斜するように設けられている。本実施形態では、リブ15の傾斜の程度を示す角度θは45°に設定されている。また、平面視において、各リブ15の中心Bは係止爪14の中心Pから周方向の一方側にオフセットした位置で外筒12に対して接続されている。
【0021】
フランジ部4は、図4に示すように、内周縁が外筒12の上端縁に接続され、脚部3がボディパネル21の孔22(図6参照)に挿入された際に、その先端部(外周縁)がボディパネル21の表面に当接する。
【0022】
図6はホールプラグをボディパネルに装着する様子を示す模式的断面図である。ボディパネル21に対するホールプラグ1の装着時には、使用者は、図6(A)に示すように、ボディパネル21に設けられた孔22にホールプラグ1の脚部3を挿入する。脚部3は、外筒12の最大外径(係止爪14の先端を基準としたもの)が孔22の径よりも大きく設定されている。使用者がホールプラグ1を挿入方向に押し込むと、各係止爪14が孔22の内周面によって内向きに押圧され、これにより、脚部3は、その下部側が弾性変形して内側に変位することで孔22に挿入される。
【0023】
この場合、係止爪14を裏側(内側)から支持するリブ15は、径方向に対して傾斜して設けられているため、係止爪14が押圧された際に容易に弾性変形する。これにより、環状溝13の幅(内筒11と外筒12との距離)が比較的小さい場合でも、脚部3(係止爪14およびその周辺部位)の必要な変位量を確保することが可能である。さらに、リブ15は、係止爪14の中心からオフセットした位置で外筒12に対して接続されているため、図5に示したように、係止爪14の裏側の環状溝13内に所定のクリアランス(リブ15が存在しない領域G)が形成され、係止爪14およびその周辺部位の変位量をより大きく確保することが可能となっている。
【0024】
脚部3が所定位置まで挿入されてホールプラグ1の装着が完了すると、図6(B)に示すように、脚部3は、図6(A)の変形状態から概ね元の状態に回復し、係止爪14が孔22の周縁部(ここでは、ボディパネル21の端面21a)に係止された状態となる。このとき、リブ15の弾性回復力により、外筒12の外周面が孔22の内周面に衝当する。これにより、使用者は良好な節度感が得られて装着作業性が向上するとともに、高い抜去力が実現される。また、このとき、外筒12の外周面が孔22の内周面に密着した状態となるため、良好な止水性が得られる。図4に示したように、内筒11の厚みは比較的大きく、外筒12の厚みは比較的小さく設定されており、これにより、変形容易な外筒12により孔22に対する密着性を高めつつ、変形し難い内筒11によりリブ15により係止爪14を安定的に支持することを可能としている。
【0025】
また、図6(B)に示す装着完了状態では、フランジ部4は、その先端部がボディパネル21の上面21bに当接し、係止爪14との間にボディパネル21を挟持した状態となる。これにより、ホールプラグ1のボディパネル21に対する装着状態が安定的に保持される。フランジ部4は、図4に示したように、外側に向かって先細り状の断面を有しているため、その先端(自由端)側はボディパネル21の上面21bに沿って容易に弾性変形し、これにより、上面21bとの接触面積が大きくなって高い密着性(即ち、止水性)が得られる。
【0026】
図7はホールプラグを成形する際の金型の概略構成を示す模式図である。ホールプラグは、周知の方法に従って、金型31のキャビティC内に周知の熱可塑性樹脂(ポリエチレン等)を射出することによって一体成形される。上述のように、ホールプラグは、リブを径方向に対して傾斜させた構成としたため、その成形品を金型31から無理抜きにより離型する際には、外筒における係止爪およびその周辺部位が内側に容易に変位して、係止爪が受ける負荷(せん断力等)が軽減される。これにより、成形時における係止爪の破損を防止することができる。また、係止爪側からの押圧に対してリブが容易に弾性変形するため、リブ自体の破損を防止できる。この場合、上述のように、リブが、係止爪の中心からオフセットした位置で外筒に対して接続される構成としたため、無理抜き時における係止爪およびその周辺部位の変位量をより大きく確保することが可能となり、係止爪およびリブが受ける負荷はより効果的に軽減されるという利点がある。
【0027】
なお、上記金型からの離型時における係止爪の破損防止効果は、ボディパネルの孔に一旦装着したホールプラグを取り外す際にも、同様に得られるものである。即ち、上記構成のホールプラグは、再利用する際にも良好な装着性を維持できる(係止爪の破損等により係止力が低下することはない)という利点がある。
【0028】
本発明を特定の実施形態に基づいて詳細に説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。例えば、本発明に係るホールプラグのリブは、少なくともホールプラグの中心から係止爪の中心に向かう方向に対して傾斜している限りにおいて、その他の形状、数量、配置等は、種々の変更が可能である。また、リブが連結する2つの壁(実施形態における内筒11および外筒12)は、必ずしも筒状である必要はない。また、本発明に係るホールプラグは、上述のボディパネルに限らず任意の板状部材に設けられた孔を装着対象とすることができる。上記実施形態では、係止爪が係止される孔の周縁部はL字状断面を有するものとしたが、係止爪を係止可能な程度に、ボディパネルの板厚を増大させた構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るホールプラグの斜視図
【図2】図1のホールプラグを下側から見た斜視図
【図3】ホールプラグの平面図
【図4】図3中のIV−IV線部分断面図
【図5】ホールプラグの係止爪およびリブの詳細構成を示す部分拡大図
【図6】ホールプラグをボディパネルに装着する様子を示す模式的断面図
【図7】ホールプラグを成形する際の金型の概略構成を示す模式図
【符号の説明】
【0030】
1 ホールプラグ
2 頭部
3 脚部
4 フランジ部
11 内筒(第1壁)
12 外筒(第2壁)
13 環状溝
14 係止爪
15 リブ
21 ボディパネル(板状部材)
22 孔
31 金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部と、当該頭部から突設された脚部とを備え、板状部材に設けられた孔に前記脚部を挿入することによって当該孔を閉塞するホールプラグであって、
前記脚部は、
第1壁と、
前記第1壁に対向する第2壁と、
前記第1壁と前記第2壁とを連結するリブと、
前記第2壁の外周面に設けられ、前記脚部が前記孔に挿入された際に当該孔の周縁に係止される係止爪と
を有し、
前記リブは、前記係止爪の位置に対応して配置され、前記脚部の挿入方向から見た場合に、ホールプラグの中心から前記係止爪の中心に向かう方向に対して傾斜していることを特徴とするホールプラグ。
【請求項2】
前記リブは、前記脚部の挿入方向から見た場合に、前記係止爪の中心からオフセットした位置で前記第2壁に対して接続されていることを特徴とする、請求項1に記載のホールプラグ。
【請求項3】
前記第1壁は、その一端側で前記頭部に接続されるとともに、その他端側で前記第2壁に接続され、
前記第2壁は筒状を呈することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のホールプラグ。
【請求項4】
前記第2壁の上部に連接されるとともに、前記脚部が前記孔に挿入された際に前記板状部材に当接するフランジ部を更に備えたことを特徴とする、請求項3に記載のホールプラグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−90991(P2010−90991A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261574(P2008−261574)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】