説明

ボイラシステム

【課題】一部のボイラが運転不能になったとしても、蒸気などの供給を安定して継続できるボイラシステムを提供する。
【解決手段】複数台のボイラとその各燃焼位置との組み合わせからなる燃焼パターンが設定されているボイラ群と、ボイラ群で発生した蒸気の圧力である蒸気圧を測定する蒸気圧測定手段と、蒸気圧測定手段によって測定された蒸気圧に基づいて、蒸気圧が所定の蒸気圧制御範囲に収まるように、燃焼パターンを選択する台数制御手段と、運転不能なボイラを検出する不能ボイラ検出手段と、を備えるボイラシステムであって、蒸気圧制御範囲は、複数の蒸気圧帯に区分されており、各蒸気圧帯には、それぞれ対応する燃焼パターンが設定されており、台数制御手段は、不能ボイラ検出手段によって運転不能なボイラが検出された場合に、複数の蒸気圧帯を変更することなく、運転不能なボイラの優先順位を最下位に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の段階的な燃焼位置を有するボイラを複数台有するボイラ群を備えるボイラシステムにおいて、一部のボイラが運転不能になったとしても、蒸気などの供給を安定して継続できるボイラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、段階的な燃焼位置を有するボイラを複数台有するボイラ群と、複数の蒸気圧帯に区分された蒸気圧制御範囲(図3参照)に蒸気圧が収まるように制御する台数制御手段と、を備えるボイラシステムにおいて、燃焼可能なボイラを減らしたときに蒸気圧帯の数を減らすボイラシステムが記載されている。図3は、1号機〜3号機の3台のボイラの燃焼パターン及び優先順位と蒸気圧制御範囲の蒸気圧帯との関係を示す図である。図6は、従来技術においてボイラの2号機が運転停止になった場合における各ボイラの燃焼パターン及び優先順位と蒸気圧制御範囲の蒸気圧帯との関係を示す図である。
【0003】
図3に示すように、燃焼停止位置(−)、低燃焼位置(L)及び高燃焼位置(H)の3位置制御が可能な1号機〜3号機の3台のボイラを備えたボイラシステムにおいては、蒸気圧制御範囲は、7つの蒸気圧帯に区分されている。このボイラシステムおいて、2号機のボイラが運転停止となった場合には、図6に示すように、蒸気圧帯の数を5つに減らし、その代わりに、蒸気圧帯の幅を大きくする。このボイラシステムによれば、蒸気圧制御範囲を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−20041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のボイラシステムは、以下の問題点を有する。例えば、蒸気などを使用する設備(以下「蒸気使用設備」ともいう)には、それぞれ要求される蒸気圧の範囲がおおよそ定まっている。蒸気使用設備へ蒸気などを安定して供給するために、要求される蒸気圧の範囲に対応して、隣接する2つ蒸気圧帯が設定されていることが多い。その場合、隣接する2つ蒸気圧帯の間で燃焼パターンが相互に移行する。
【0006】
しかし、一部のボイラが運転不能となり、蒸気圧帯の数が減り、蒸気圧帯の幅が大きくなると、要求される蒸気圧の範囲と蒸気圧帯との対応関係にずれが生じる。そのため、燃焼パターンが相互に移行する条件もずれてしまう。従って、一部のボイラが運転不能になった場合に、蒸気使用設備への蒸気などの供給を安定して継続できないことがある。
【0007】
本発明は、複数の段階的な燃焼位置を有するボイラを複数台有するボイラ群を備えるボイラシステムにおいて、一部のボイラが運転不能になったとしても、蒸気などの供給を安定して継続できるボイラシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数の段階的な燃焼位置を有するボイラを複数台有し、複数台の前記ボイラにそれぞれ優先順位が設定されたボイラ群であって、複数台の前記ボイラとその各燃焼位置との組み合わせからなる燃焼パターンが設定されているボイラ群と、前記ボイラ群で発生した蒸気の圧力である蒸気圧を測定する蒸気圧測定手段と、前記蒸気圧測定手段によって測定された蒸気圧に基づいて、蒸気圧が所定の蒸気圧制御範囲に収まるように、前記燃焼パターンを選択する台数制御手段と、運転不能な前記ボイラを検出する不能ボイラ検出手段と、を備えるボイラシステムであって、前記蒸気圧制御範囲は、複数の蒸気圧帯に区分されており、各蒸気圧帯には、それぞれ対応する前記燃焼パターンが設定されており、前記台数制御手段は、前記不能ボイラ検出手段によって運転不能な前記ボイラが検出された場合に、前記複数の蒸気圧帯を変更することなく、運転不能な前記ボイラの優先順位を最下位に設定するボイラシステムに関する。
【0009】
また、ボイラシステムが予備の前記ボイラを有する場合には、運転不能な前記ボイラの優先順位を最下位に設定することで、運転不能な前記ボイラを予備のボイラに設定することになることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の段階的な燃焼位置を有するボイラを複数台有するボイラ群を備えるボイラシステムにおいて、一部のボイラが運転不能になったとしても、蒸気などの供給を安定して継続できるボイラシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るボイラシステム1の概略を示す図である。
【図2】実施形態の台数制御装置3の機能的構成を示す機能ブロック図である。
【図3】各ボイラの燃焼パターン及び優先順位と蒸気圧制御範囲の蒸気圧帯との関係を示す図である。
【図4】実施形態においてボイラの2号機が運転不能になった場合における各ボイラの燃焼パターン及び優先順位と蒸気圧制御範囲の蒸気圧帯との関係を示す図である。
【図5】実施形態に係るボイラシステム1の動作を示すフローチャートである。
【図6】従来技術においてボイラの2号機が運転停止になった場合における各ボイラの燃焼パターン及び優先順位と蒸気圧制御範囲の蒸気圧帯との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るボイラシステム1について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るボイラシステム1の概略を示す図である。図2は、実施形態の台数制御装置3の機能的構成を示す機能ブロック図である。図3は、各ボイラの燃焼パターン及び優先順位と蒸気圧制御範囲の蒸気圧帯との関係を示す図である。図4は、実施形態においてボイラの2号機が運転不能になった場合における各ボイラの燃焼パターン及び優先順位と蒸気圧制御範囲の蒸気圧帯との関係を示す図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のボイラシステム1は、複数(3台)のボイラ20を含むボイラ群2と、ボイラ20において生成された蒸気を集合させる蒸気集合部としての蒸気ヘッダ6と、蒸気圧測定手段としての蒸気圧センサ7と、台数制御手段としての台数制御装置3と、を備える。台数制御装置3は、不能ボイラ検出手段として機能する状態取得部43(図2参照)を有している(詳細は後述)。
【0014】
蒸気ヘッダ6の上流側は、蒸気管11を介してボイラ群2(各ボイラ20)に接続されている。蒸気ヘッダ6の下流側は、蒸気管12を介して蒸気使用設備18に接続されている。蒸気ヘッダ6は、ボイラ群2で発生させた蒸気を集合させて貯留することにより各ボイラ20の相互の圧力差及び圧力変動を調整し、圧力が調整された蒸気を蒸気使用設備18に供給するようになっている。
【0015】
蒸気圧センサ7は、信号線13を介して、台数制御装置3に電気的に接続されている。蒸気圧センサ7は、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧(ボイラ群2で発生した蒸気の圧力)を測定し、測定した蒸気圧に係る信号(蒸気圧信号)を、信号線13を介して台数制御装置3に送信する。
【0016】
本実施形態のボイラシステム1は、ボイラ群2で発生させた蒸気を、蒸気ヘッダ6を介して、蒸気によって運転される蒸気使用設備18に供給可能とされている。
ボイラシステム1において要求される負荷(要求負荷)は、台数制御時においては、蒸気圧センサ7が測定する蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧(物理量)により代用されている。
【0017】
蒸気使用設備18の需要の増大により負荷が増加し、供給蒸気量が不足すれば、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧が減少することになる。一方、蒸気使用設備18の需要の低下により負荷が減少し、供給蒸気量が過剰になれば、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧が増加することになる。このため、蒸気圧センサ7からの蒸気圧信号により負荷の変動をモニターすることができる。ボイラシステム1は、この蒸気圧に基づいて蒸気使用設備18の消費蒸気量に対応する蒸発量を算出するようになっている。
【0018】
ボイラ20は、複数の段階的な燃焼位置を有する段階値制御ボイラから構成されている。段階値制御ボイラとは、燃焼を選択的にオン/オフしたり、炎の大きさを調整すること等により燃焼量を制御して、選択された燃焼位置に応じて燃焼量を段階的に増減可能なボイラである。
【0019】
各燃焼位置における燃焼量は、制御対象とされる蒸気ヘッダ6における蒸気圧(制御対象)の圧力差に対応する量の蒸気を発生するように、設定されている。
段階値制御ボイラからなる3台のボイラ20には、それぞれ、各燃焼位置における燃焼量及び燃焼能力(高燃焼状態における燃焼量)が、等しく設定されている。
【0020】
本実施形態におけるボイラ20は、
1)燃焼停止状態(燃焼停止位置:0%)
2)低燃焼状態(低燃焼位置:50%)
3)高燃焼状態(高燃焼位置:100%)
の3段階の燃焼状態(燃焼位置、負荷率)に制御可能とされるいわゆる3位置制御とされている。
この場合、高燃焼状態の燃焼量を1.0と捉えれば、各ボイラ20の燃焼量は0.5刻みで変更することができることになる。
【0021】
なお、N位置制御とは、段階値制御ボイラの燃焼量を、燃焼停止状態を含めてN位置に段階的に制御可能なことを表す。燃焼位置の個数は、2位置(つまり、オン/オフのみ)、4位置(燃焼停止位置、低燃焼位置、中燃焼位置及び高燃焼位置)、又は5位置以上でもよい。
【0022】
ボイラ群2には、各ボイラ20とその各燃焼位置との組み合わせからなる燃焼パターンが設定されている。本実施形態においては、図3に示すように、燃焼パターンは、ボイラを高燃焼状態とする場合を「H」、低燃焼状態とする場合を「L」、燃焼停止状態とする場合を「−」として示す。燃焼パターンは、蒸気圧センサ7にて検出される蒸気圧が高くなるほど燃焼量が小さいパターンが選択され、蒸気圧が低下するほど燃焼量が大きいパターンが選択される。図3に示すように、蒸気圧制御範囲を7つの蒸気圧帯に区分し、蒸気圧帯ごとに、対応する燃焼パターンを、言い換えると燃焼状態(燃焼位置)を設定しておき、蒸気圧がどの圧力帯に対応するかによって燃焼量を決定する。燃焼パターンは、7つの蒸気圧帯に対応して、7つ設定される。
【0023】
複数台のボイラ20には、それぞれ優先順位が設定されている。本実施形態においては、図3に示すように、3台のボイラ20のうち、1号機の優先順位が第1位、2号機の優先順位が第2位、3号機の優先順位が第3位に設定されている。7つの蒸気圧帯において、最上位の蒸気圧帯においては、全てのボイラ20が燃焼停止状態「−」であり、最下位の蒸気圧帯においては、全てのボイラ20が高燃焼状態「H」である。最上位の蒸気圧帯から最下位の蒸気圧帯に向けて、1号機から3号機の順で、「−」→「L」→「H」に燃焼状態が変更される。
【0024】
本実施形態においては、優先順位が高いボイラが低燃焼状態「L」から高燃焼状態「H」に変更された後に、次に順位が高いボイラが燃焼停止状態「−」から低燃焼状態「L」に変更される。なお、優先順位が高いボイラが燃焼停止状態「−」から低燃焼状態「L」に変更された後で且つ高燃焼状態「H」に変更される前に、次に順位が高いボイラが燃焼停止状態「−」から低燃焼状態「L」に変更されてもよい。
【0025】
ボイラ20は、燃焼が行われるボイラ本体21と、各ボイラ20の燃焼位置(燃焼状態)を制御するローカル制御部25と、各ボイラ20の内部の蒸気圧を測定するローカル蒸気圧測定部27と、を有する。
【0026】
ローカル制御部25は、各ボイラ20を制御し、要求される負荷に応じて燃焼位置(燃焼状態)を変更させることが可能とされている。ローカル制御部25は、台数制御時には、台数制御装置3による台数制御信号に基づいて各ボイラ20を制御し、一方、ローカル制御時には、ボイラ20を直接、制御する。
【0027】
ローカル蒸気圧測定部27は、例えば、蒸気圧センサ及び蒸気圧スイッチから、又は蒸気圧スイッチのみから構成され、各ボイラ20の内部の蒸気圧を測定する。ローカル蒸気圧測定部27は、各ボイラ20のローカル制御を行う際に用いられる蒸気圧を測定する。
【0028】
各ボイラ20は、信号線16を介して、台数制御装置3に電気的に接続されている。ローカル制御部25は、台数制御時において台数制御装置3で用いられる信号を、信号線16を介して台数制御装置3に送信する。台数制御装置3で用いられる信号としては、例えば、ボイラ20に要求される負荷などの信号、ボイラ20の実際の燃焼状態、その他のデータが挙げられる。また、ローカル制御部25は、制御対象のボイラ20が運転可能であるときには、運転可能であることを示す信号(運転可能信号)を、信号線16を介して台数制御装置3に送信する。この運転可能信号は、ボイラ20が運転可能な状態であるか又は運転不能な状態であるかを、不能ボイラ検出手段としての状態取得部43が検出するために、利用される(詳細は後述)。
【0029】
台数制御が行われる場合には、ローカル制御部25は、蒸気圧センサ7により測定される蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧が高くなったときには燃焼位置を低い方に移行させて(燃焼停止位置への移行を含む)、蒸発量を減少させ、一方、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧が低くなったときには燃焼位置を高い方に移行させて、蒸発量を増加させるように、各ボイラ20の燃焼位置を制御する。
【0030】
ローカル制御が行われる場合には、ローカル制御部25は、ローカル蒸気圧測定部27により測定されるボイラ20の内部の蒸気圧が高くなったときには燃焼位置を低い方に移行させて(燃焼停止位置への移行を含む)、蒸発量を減少させ、一方、ボイラ20の内部の蒸気圧が低くなったときには燃焼位置を高い方に移行させて、蒸発量を増加させるように、各ボイラ20の燃焼位置を制御する。
【0031】
台数制御装置3は、信号線16を介して、各ボイラ20に電気的に接続されている。台数制御装置3は、ボイラ20が高いボイラ効率(燃焼効率)で運転されるように、各ボイラ20の台数制御を行う。なお、各ボイラ20にローカル制御が行われる場合には、台数制御装置3による台数制御は行われない。
【0032】
台数制御装置3は、各ボイラ20から受信される要求負荷などの信号に基づいて、ボイラ群2の必要燃焼量及び必要燃焼量に対応する各ボイラ20の燃焼状態を算出し、各ボイラ20のローカル制御部25に台数制御信号を送信する。これにより、台数制御装置3は、各ボイラ20の燃焼量を制御し、ボイラ群2の台数制御を行うようになっている。
【0033】
台数制御装置3は、信号線13を介して、蒸気圧センサ7からの蒸気圧信号を受信する。台数制御装置3は、蒸気圧センサ7からの蒸気圧信号に基づいて、要求負荷に対応する必要な燃焼量を設定し、その必要燃焼量に従って各ボイラ20に燃焼位置の変更を指示し、3台のボイラ20の燃焼量を制御する。
【0034】
詳述すると、台数制御装置3は、蒸気圧センサ7によって測定された蒸気圧に基づいて、蒸気圧が所定の蒸気圧制御範囲(図3参照)に収まるように、燃焼パターンを選択する。台数制御装置3は、要求負荷の変動により燃焼量が不足している場合には、燃焼停止位置から低燃焼位置、又は低燃焼位置から高燃焼位置に燃焼位置を引き上げる指示を、ボイラ20に行う。要求負荷の変動により燃焼量が過剰になっている場合には、高燃焼位置から低燃焼位置、低燃焼位置から燃焼停止位置、又は高燃焼位置から燃焼停止位置に燃焼位置を引き下げる指示を、ボイラ20に行う。
【0035】
なお、ボイラ20の燃焼又はその停止は、仮想ボイラ単位で扱うこともできる。仮想ボイラとは、ボイラにおける燃焼位置(燃焼量)の違い(低燃焼位置、中燃焼位置、高燃焼位置など)をそれぞれ独立したボイラとみなし、それぞれの蒸発量をボイラに仮想したものである。例えば、オン/オフボイラ(2位置ボイラ)であれば、仮想ボイラは、1台であり、実際の物理的なボイラ数と一致する。また、3位置ボイラは、物理的に1台であっても、低燃焼量ボイラと、(高燃焼量−低燃焼量)ボイラとの2台であると、仮想的に数えることができる。4位置ボイラは、低燃焼量ボイラ、(中燃焼量−低燃焼量)ボイラ、(高燃焼量−中燃焼量)ボイラの3台であると、仮想的に数えることができる。よって、3位置ボイラが低燃焼状態であれば、その低燃焼量ボイラに対して燃焼指示を行っていると、制御上扱うことができ、一方、その(高燃焼量−低燃焼量)ボイラに対して燃焼停止指示を行っていると、制御上扱うことができる。
【0036】
制御部4は、各ボイラ20のローカル制御部25と信号線16を介して接続されている。制御部4は、信号線16を介して各ボイラ20のローカル制御部25に各種の指示を行ったり、ローカル制御部25から各種のデータを受信したりして、3台のボイラ20に対して上述の制御を行う。各ボイラ20のローカル制御部25は、台数制御装置3から燃焼位置の変更指示の信号を受けると、その指示に従って当該ボイラ20を制御する。複数のボイラを備えたボイラシステムの負荷量から定めた必要燃焼量に対して、実際の燃焼量が不足していれば、ボイラ20に燃焼指示を行い、実際の燃焼量が過剰であれば、ボイラ20に燃焼停止指示を行う。
【0037】
図1に示すように、台数制御装置3は、制御部4と記憶部5とを備える。
図2に示すように、記憶部5は、ボイラ管理テーブル51と優先順位テーブル52とを備える。ボイラ管理テーブル51は、台数制御装置3(制御部4)の制御により各ボイラ20に対して行われた指示や、各ボイラ20から受信した燃焼状態(燃焼位置)などの情報を格納する。優先順位テーブル52は、各ボイラ20の間の優先順位の設定の情報をボイラ20ごとに格納する。
【0038】
優先順位は、燃焼指示や燃焼停止指示を行うボイラを選択するために用いられる。優先順位は、例えば整数値を用いて、数値が小さいほど優先順位が高くなるよう設定することができる。図3に示すように、ボイラ20の1号機〜3号機のそれぞれに「1」〜「3」の優先順位が割り当てられている場合、1号機の優先順位が最も高く、3号機の優先順位が最も低い。
【0039】
このような優先順位の設定の他に、記憶部5は、各種入力装置(不図示)から入力された制御目標値や制御幅のようなパラメータ、動作設定のデータ等の各種データを格納する。このデータは、優先順位を変更するローテーションに関する設定データも含む。その設定データは、ローテーションの間隔や実行時刻などのデータを有する。ローテーションにより、例えば1号機〜3号機の優先順位が逆順に変更される。優先順位の変更は、このようなローテーションに加え、全ブロー実施により該当ボイラの優先順位が繰り上げられる場合や、優先順位の高いボイラが運転不能状態から復帰した場合などに行われる。
【0040】
図2に示すように、制御部4は、蒸気圧信号受信部41と、燃焼量演算部42と、状態取得部43と、優先順位変更部44と、候補ボイラ決定部45と、対象ボイラ選択部46と、燃焼位置指示部47と、を備える。
【0041】
蒸気圧信号受信部41は、ボイラシステム1(ボイラ群2)の負荷を表す蒸気圧信号を蒸気圧センサ7から受信する。
燃焼量演算部42は、蒸気圧センサ7からの蒸気圧信号に基づいて、その蒸気圧に対応する必要燃焼量を演算する。
【0042】
状態取得部43は、ボイラ20の燃焼状態(燃焼位置)のデータを各ボイラ20のローカル制御部25から取得し、ボイラ20の実際の燃焼位置をボイラ管理テーブル51に書き込む。
また、状態取得部43は、運転不能なボイラ20を検出する不能ボイラ検出手段として機能する。前述の通り、制御対象のボイラ20が運転可能な状態であるときには、ローカル制御部25は、運転可能であることを示す信号(運転可能信号)を送信する。状態取得部43は、運転可能信号の受信が有るときには、それに対応するボイラ20が運転可能であることを検出し、一方、運転可能信号の受信が無いときには、それに対応するボイラ20が運転不能であることを検出する。また、状態取得部43は、ボイラ20の運転可能信号を優先順位変更部44へ出力する。
【0043】
優先順位変更部44は、ローテーションに関する設定などに従って優先順位テーブル52のデータを書き換え、優先順位の設定を変更する。また、優先順位変更部44は、状態取得部43によって運転不能なボイラ20が検出された場合に、複数(本実施形態においては7つ)の蒸気圧帯を変更することなく、運転不能なボイラ20の優先順位を最下位に設定する(図3、図4参照)。
【0044】
候補ボイラ決定部45は、ボイラ20の燃焼位置に基づいて、各ボイラ20のうち燃焼位置を変更する候補ボイラを決定する。候補ボイラ決定部45は、ボイラ管理テーブル51から各ボイラ20の燃焼位置を読み出す。本実施形態においては、候補ボイラ決定部45は、要求負荷の変動により燃焼位置の変更の必要が生じたときに、候補ボイラを決定する。例えば、各ボイラ20の燃焼位置から得られるシステム全体の燃焼量と燃焼量演算部42からの燃焼量とを単位時間ごとに比較することで、候補ボイラ決定部45は、燃焼位置の変更の必要が生じたか否かを判断する。
【0045】
要求負荷の変動により燃焼量の不足が生じ、燃焼位置を引き上げる必要が生じたときには、候補ボイラ決定部45は、燃焼位置が高燃焼位置以外のボイラ20を引き上げ候補ボイラとして決定する。ここでは、燃焼位置が燃焼停止位置又は低燃焼位置のボイラ20が引き上げ候補ボイラとして決定される。仮想ボイラ単位では、燃焼位置が燃焼停止位置又は低燃焼位置にあるボイラのいずれもが、燃焼指示の可能なボイラとなる。
【0046】
一方、要求負荷の変動により燃焼量が過剰となり、燃焼位置を引き下げる必要が生じたときには、候補ボイラ決定部45は、燃焼位置が燃焼停止位置以外のボイラ20を引き下げ候補ボイラとして決定する。すなわち、燃焼位置が低燃焼位置又は高燃焼位置のボイラ20が引き下げ候補ボイラとして決定される。仮想ボイラ単位では、燃焼位置が低燃焼位置又は高燃焼位置にあるボイラのいずれもが、燃焼停止指示の可能なボイラとなる。
各ボイラ20の間の優先順位が変更されても、要求負荷の変動により燃焼位置の変更の必要が生じなければ、候補ボイラは、決定されない。候補ボイラ決定部45は、候補ボイラを決定すると、その候補ボイラを特定するデータを対象ボイラ選択部46に出力する。
【0047】
対象ボイラ選択部46は、候補ボイラ間の優先順位を比較することによって、燃焼位置を変更する対象ボイラを候補ボイラから選択する。対象ボイラ選択部46は、候補ボイラの優先順位を優先順位テーブル52から読み出す。対象ボイラ選択部46は、優先順位の値を読み出すと、それらの値を比較する。要求負荷の変動により燃焼位置を引き上げる必要が生じたときには、対象ボイラ選択部46は、読み出した値の小さい順に、引き上げ対象ボイラを選択する。また、要求負荷の変動により燃焼位置を引き下げる必要が生じたときには、対象ボイラ選択部46は、読み出した値の大きい順に、引き下げ対象ボイラを選択する。
【0048】
優先順位が変更されてから対象ボイラを選択する場合には、その選択に、変更後の優先順位が用いられる。対象ボイラ選択部46は、対象ボイラを選択すると、その対象ボイラを特定するデータを燃焼位置指示部47に出力する。
【0049】
燃焼位置指示部47は、対象ボイラについて燃焼位置を変更する指示を行って、当該対象ボイラの燃焼位置を引き上げるか又は引き下げる。対象ボイラ以外のボイラについては、その燃焼位置を維持する。仮想ボイラ単位では、燃焼位置指示部47は、燃焼指示又は燃焼停止指示を送信する。
【0050】
燃焼位置指示部47は、各ボイラ20に指示を送信すると共に、その指示をボイラ管理テーブル51に書き込む。ボイラ20のローカル制御部25は、その指示に従ってボイラ20の燃焼位置を制御し、それによって、ボイラシステム1の負荷に応じた蒸気量の調整が行われる。
【0051】
次に、本実施形態のボイラシステム1において、運転不能なボイラが検出された場合の制御について、図5を参照しながら説明する。図5は、実施形態に係るボイラシステム1の動作を示すフローチャートである。
【0052】
図5に示すように、ステップST1において、優先順位変更部44は、状態取得部43からのボイラ20の運転可能信号の有無を監視する。優先順位変更部44が、状態取得部43からのボイラ20の運転可能信号を受信している場合には、運転不能なボイラ20が検出されない(NO)状態である。処理は、ステップST1へ戻り、優先順位変更部44は、状態取得部43からのボイラ20の運転可能信号の有無の監視を継続する。一方、優先順位変更部44が、状態取得部43からのボイラ20の運転可能信号を受信していない場合(NO)には、運転不能なボイラ20が検出された(YES)状態である。処理は、ステップST2へ進む。
【0053】
ステップST2において、優先順位変更部44は、状態取得部43から運転可能信号を受信しないボイラ20を「運転不能なボイラ」と決定する。本実施形態においては、2号機が「運転不能なボイラ」であると決定される。
【0054】
ステップST3において、優先順位変更部44は、優先順位を変更するボイラを決定する。優先順位変更部44は、「運転不能なボイラ」と「運転不能なボイラ」よりも優先順位が低いボイラとを、「優先順位を変更するボイラ」と決定し、この決定に従って、優先順位テーブル52のデータを書き換え、優先順位の設定を変更する。
本実施形態においては、図3に示すように、2号機よりも優先順位が低いボイラは、3号機であるため、優先順位変更部44は、2号機を「優先順位を最下位に変更するボイラ」に決定し、3号機を「優先順位を繰り上げるボイラ」に決定する。優先順位変更部44は、優先順位テーブル52のデータを書き換え、図4に示すように、優先順位の設定を、1号機が第1位、3号機が第2位、2号機が第3位に変更する。
【0055】
これにより、運転不能なボイラが検出された場合の処理は、終了する。そして、新しい優先順位に基づいて、ボイラシステム1の運転が継続される。
なお、優先順位変更部44は、蒸気圧制御範囲の蒸気圧帯の数及び大きさを変更しない。また、蒸気圧が下から2番目の蒸気圧帯又は最下位の蒸気圧帯に位置したとしても、2号機は運転不能であるため、2号機の燃焼位置が実際に低燃焼状態(L)又は高燃焼状態(H)になることはない。
【0056】
本実施形態のボイラシステム1によれば、例えば、次の効果が奏される。
本実施形態のボイラシステム1は、蒸気圧センサ7によって測定された蒸気圧に基づいて、蒸気圧が所定の蒸気圧制御範囲に収まるように、燃焼パターンを選択する台数制御装置3と、運転不能なボイラ20を検出する状態取得部43と、を備え、台数制御装置3は、状態取得部43によって運転不能なボイラ20が検出された場合に、複数の蒸気圧帯を変更することなく、運転不能なボイラ20の優先順位を最下位に設定する。
【0057】
そのため、本実施形態によれば、一部のボイラ(2号機)が運転不能となっても、運転不能なボイラ(2号機)の優先順位が最下位に設定されるだけであり、複数の蒸気圧帯の数及び幅の大きさは変更されない。そのため、要求される蒸気圧の範囲と蒸気圧帯との対応関係にずれが生じないため、燃焼パターンが相互に移行する条件がずれることはない。従って、一部のボイラが運転不能になった場合であっても、蒸気使用設備18への蒸気などの供給を安定して継続することができる。
【0058】
以上、好適な実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0059】
例えば、夜間など時間帯により、ボイラシステムの負荷が定常的に低下したり、季節や時間帯によって負荷量が異なるために、一時的に燃焼が不要なボイラが生じたりする場合がある。このため、省エネ、省力化や制御性の向上を目的として、設置されたボイラの一部を制御対象(使用)ボイラとし、残りのボイラを予備ボイラとするようにしてもよい。例えば、ボイラシステム1(ボイラ群2)が5台のボイラ20を備えており、最大燃焼台数が3台に設定されていれば、5台のボイラ20のうち、優先順位の高い3台のボイラが制御対象ボイラとして設定され、優先順位の低い2台のボイラが予備ボイラとして設定される。
このような予備のボイラを有するボイラシステムに本発明を適用する場合には、運転不能なボイラの優先順位を最下位に設定することは、運転不能なボイラを予備のボイラに設定することになる。
【0060】
蒸気集合部は、集合させた蒸気を貯留する蒸気ヘッダ6に制限されず、例えば、単に蒸気を集合させるだけの蒸気集合管でもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 ボイラシステム
2 ボイラ群
4 台数制御装置(台数制御手段)
7 蒸気圧センサ(蒸気圧測定手段)
20 ボイラ
43 状態取得部(不能ボイラ検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の段階的な燃焼位置を有するボイラを複数台有し、複数台の前記ボイラにそれぞれ優先順位が設定されたボイラ群であって、複数台の前記ボイラとその各燃焼位置との組み合わせからなる燃焼パターンが設定されているボイラ群と、
前記ボイラ群で発生した蒸気の圧力である蒸気圧を測定する蒸気圧測定手段と、
前記蒸気圧測定手段によって測定された蒸気圧に基づいて、蒸気圧が所定の蒸気圧制御範囲に収まるように、前記燃焼パターンを選択する台数制御手段と、
運転不能な前記ボイラを検出する不能ボイラ検出手段と、
を備えるボイラシステムであって、
前記蒸気圧制御範囲は、複数の蒸気圧帯に区分されており、各蒸気圧帯には、それぞれ対応する前記燃焼パターンが設定されており、
前記台数制御手段は、前記不能ボイラ検出手段によって運転不能な前記ボイラが検出された場合に、前記複数の蒸気圧帯を変更することなく、運転不能な前記ボイラの優先順位を最下位に設定する
ボイラシステム。
【請求項2】
ボイラシステムが予備の前記ボイラを有する場合には、運転不能な前記ボイラの優先順位を最下位に設定することで、運転不能な前記ボイラを予備のボイラに設定することになる
請求項1に記載のボイラシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−72609(P2013−72609A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213338(P2011−213338)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】