説明

ボイラーからのNOx排出物を還元するための反応炉システム(装置)

工業用及び商業用ボイラーからの排気流を処理するのに還元剤を使用してNO還元のためのゼオライト系SCR触媒が提供される。反応炉システムはモジュール方式の触媒カセットに配置されたゼオライト系触媒を有し、そこではゼオライト系SCR触媒カセットを含む反応炉が工業用及び/又は商業用ボイラーから出る排気に垂直方向で配置される。前記触媒は低温から中温で還元剤により窒素酸化物を窒素に選択的に還元する。前記反応炉は高いNO転化及びとても低いアンモニアスリップを引き起こし幅広いボイラーの燃焼条件に対して活発である。低NO及び/又は超低NOバーナーを伴うボイラーは標準的な従来型のバーナーに置き換えられることができる。低NO及び超低NOバーナーを伴うボイラーはまたこのゼオライト系SCR触媒反応炉に取り付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、商業用及び工業用のボイラーからのNO排出物を還元するために使用される反応炉(ボイラーの出口と排気筒の間、又は排気筒中に配置される)である。この反応炉システム(装置)は還元剤をボイラーの排気に添加し、次にこの排気と還元剤の混合物は特定のタイプの選択接触還元触媒(以下、「SCR」と云う。)を通過させる。
【背景技術】
【0002】
ボイラー
ボイラーは主に蒸気発生の目的で様々な工業用途及び商業用途において使用される。工業用のボイラーは食品加工工場、印刷業、化学処理プラント、発電所、及び精製用途における使用を包含するが、これらに限定されるものではない。一部の商業用ボイラーの用途は病院、大学、大きなショッピングモール、事務所、及び空港を含むがこれらに限定されるものではない。二つのタイプのボイラーは蒸気或いは温水の目的のため、工業用途と商業用途において使用される。これらは煙管ボイラー及び水管ボイラーである。本発明はこのどちらか一方のタイプのボイラーにおいて使用される。
【0003】
このようなボイラーは様々なタイプの化石燃料を燃焼することができるが、一方で、天然ガスが燃料源として増加している。天然ガスは多くの他の燃料より数倍も清浄であるが、そのようなボイラーの内部での天然ガスの燃焼は多量な汚染排出物の生成をもたらす。NOとNOの両方が生成され、「NO」或いは「窒素酸化物」と総合的に呼ばれる。アメリカ及び世界中の様々な規制当局がこのような工業用及び商業用のボイラーからの排出物削減に対する切迫した必要性を増加させている。
【0004】
ボイラーの使用が直面している他の問題はエネルギーコストの上昇である。ボイラーの効率を増加しながら、エネルギーコストを減少させる方法を探すことが大きな利点となる。
【0005】
バーナー
このようなボイラーを伴って使用されるバーナーと関連した付随的な問題がある。ボイラーの中で使用される従来或いは標準的なバーナーが高い信頼性を有することは、よく知られている。しかし、これらは多量のNO生成を引き起こす。一部の環境制限が30ppm以下NOであるにもかかわらず、標準的なバーナーを伴うボイラーは通常80−120ppmのNOを生成する。カリフォルニアのような州では、そのような工業用及び商業用ボイラーからのNO排出物制限が5ppm以下まで引き下げられる見通しである。
【0006】
ボイラーからのNO排出物問題を解決するために、ボイラー産業及びその顧客は標準的なバーナーの使用から低いNO及び超低いNOバーナーの使用へ移行している。低いNO及び超低いNOバーナーはバーナーからのNO還元を30ppm未満及び9ppm以下まで可能にするが、それらは大変高価である。同じ効率を実現するために過剰な燃料を燃焼し、それにより燃焼された排気中の全CO含有量が増加する。更に、これらのバーナーは頻繁なメンテナンスを必要とし、操作するのが容易ではない。ボイラー及びバーナーの製造業者及びその顧客は、標準的なバーナーと比較して低いNOバーナーがより少ないNO排出物を生成することから、たとえ高価でも低いNOバーナーの使用を徐々に受け入れている。これはエネルギーコスト及びより低いボイラー効率の犠牲を払うが、排ガス法の順守に役立つ。低いNOバーナーを使用すると約30−60ppmのNOを生成する。NO規制はNO排出物をほとんどの場合30ppm以下及び一部の場合で9ppm以下に更に減少させるので、高価な超低NOバーナーの使用が推奨されている。表1は工業用及び商業用ボイラーで通常使用される異なるタイプのバーナーの様々な特徴の比較を示す。
【表1】

【0007】
また問題のある低いNO及び超低いNOバーナーは約30%の排ガス再循環(排ガス再循環を「FGR」、排気再循環を「EGR」と以後呼ぶ)と一般的に関連がある。排気がファンの使用により内部に引き込まれ、追加電力を消費する。一般的な電力消費は標準バーナーより30−40%の範囲でより高くなる。
【0008】
要約すると、低い及び超低いNOバーナーのデメリットは、これらは高価であり、より多くの燃料が必要で、標準バーナーと同じ性能を実現するには大過剰のOが必要とされ、弱い火炎安定性を有し、より高いFGRを有し、より多くのCOを生成し、そしてより頻繁なメンテナンスを要することである。
【0009】
SCR触媒
本発明はボイラーの末端においてゼオライト系SCR触媒(下記で定義される)を利用し排気中のNOを還元する。
【0010】
ゼオライト系SCR触媒はガスタービンのような様々な固定発電装置のための排出物削減において使用されるが、標準ボイラーには使用されない。ほとんどの工業用ボイラーはエコノマイザーを有し、それが無ければ排出されるであろう熱を可能な限り利用する。そのため低温でも良く機能できるSCR触媒がボイラー用途にとって不可欠である。このボイラーのエコノマイザーの端部の一般的な排気温度は400°F台で、このエコノマイザーの前では600°F位の高さである。ボイラーの排気筒の温度は通常約200−350°Fである。
【0011】
従来のSCR触媒はバナジア及び/又はチタニアに基づいている(以後「従来型SCR触媒」と云う。)。イマナリ(US特許4833113、本明細書に参照として含まれる)は、例えばチタニウムの酸化物、タングステンの酸化物、及びバナジウムの酸化物を含んでなるSCR触媒を説明している。V/TiO及び修正V/TiOのような従来型SCR触媒は、500°F〜800°Fの温度範囲で、より好ましくは700°F〜800°Fの温度範囲で最大の性能を有する。しかし、工業用及び商業用ボイラーの排気はそれよりずっと低温である。従って、高い性能のSCR触媒に対しては、ボイラーとエコノマイザー設備(設置)に依存する全温度(300°F−600°F)において十分に機能することができ、かつ、厳しいボイラーの排気条件に耐えることができることが、強く必要とされる。
【0012】
更に、水蒸気の大過剰(20%)、ボイラーの排気の低温、及びアルカリ金属、SOなどの汚染物質の存在(当技術分野で周知のように)、これら全てが従来の触媒(従来型SCR触媒を含むがこれに限定されるものではない)の性能をとりわけ低温で低下させる。
【0013】
バーン(US特許4961917、本明細書に参照として含まれる)は、アンモニア、窒素酸化物及び酸素を、鉄或いは銅促進ゼオライト触媒の上を通過させNOの還元に選択的な触媒作用を及ぼす方法を開示している。バーンのこれらの触媒及び従来型SCR触媒は、本明細書の後半で定義しているように、ゼオライト系SCR触媒から明確に除外される。このフレッシュ銅促進触媒は優れた活性を有する。しかしこの銅触媒は特に加速処理された時、非活性化する。この鉄触媒は銅触媒よりはるかに安定しているが、それは、工業用及び商業用ボイラーで生じる、要求された300°F−600°Fの温度よりかなり高い温度、約660°F−932°Fで最大の活性を有する。SCR触媒に対して、300°F−600°Fの温度領域でよく機能できることが強く必要とされている。
【0014】
工業用及び商業用ボイラーの他の特徴は、それが約10%−20%の水蒸気及び約1%−8%のOを含むことである。この水蒸気の量はディーゼルエンジン、ガスタービン、ガスエンジンなど他のいかなる固定源のボイラーより多い。Oの量はまたそのような固定源と比較したときより少ない。このことが、温度や排気組成のような厳しい条件で機能するために、従来型SCR触媒に難題を課している。
【0015】
この工業用及び商業用ボイラーに関する他の問題は、それらのターンダウン(turn-down:燃焼負荷)特性である。蒸気発生要求に応じて、工業用及び商業用ボイラーは最高点火条件、最低点火条件、或いはその間のいかなる点火条件のいずれかで運転できる。この工業用及び/又は商業用ボイラーの運転は通常様々な負荷条件で実行され、ボイラーが運転している間、点火条件の温度に様々な変化をもたらす。点火条件におけるこの温度変化がボイラーの排気中の様々な温度差をもたらす。工業用及び商業用ボイラーは最高点火条件で約600°Fと最低点火条件で約400°F以下の間で通常運転できる。このボイラーを通り抜ける排気量もまた点火条件が異なるように異なる。低い点火条件はボイラーからのより少量の排気をもたらす。高い点火条件はボイラーからの多量の排気ガスをもたらす。そのため触媒がボイラーの点火条件の全範囲にわたって優れたNO転化活性を有することが重要である。ボイラー排気筒のSCR反応炉における触媒量の一定量に対して、このことは触媒が低点火条件では低空間速度で、高点火条件では高空間速度で運転することを意味する。空間速度は、立法フィート中の触媒量により分割されたSCFH(標準立法フィート毎時)におけるSCR反応炉を通過する排気量として定義される。そのような計算で、空間速度に対する単位はhr−1である。
【0016】
NO還元の目的のため工業用及び商業用ボイラー後方に位置するSCR触媒の或る種(ゼオライト系SCR触媒ではないが)の装置が商業化されている。CRI触媒会社、シェルグループの一つが2001年7月、ブリュッセルで行われた焼却及び燃焼排ガスの処理技術に関する第三回国際シンポジウムで論文を発表した。その中で彼らはNO還元の目的のためSCR触媒を含むDeNOシステムを説明している。この反応炉はボイラーの下流に配置され、このボイラーの排気筒がSCR反応炉に置き換えられ或いは修正される。アンモニアはこのSCR反応炉の前で注入され、触媒は還元剤を利用してNO還元を可能にする。このシステムの一つの欠点はボイラーの排気筒の温度が400°Fをめったに超えないことである。大幅なNOx還元を達成するために、相当量の触媒が使用される必要がある。又、多くの触媒が使用されるとき、大型SCR反応炉の存在のため、その触媒が過剰な背圧を引き起こす。煙管ボイラー或いは水管ボイラーの背圧は水柱圧の3インチをめったに超えない。煙管ボイラーにとってより重要なことは、水柱の1インチ以下くらいの背圧損失を有することが望ましい。
【発明の概要】
【0017】
本発明はボイラー排気からのNOを除去する、より安価で、より信頼でき、そして燃費の良い方法である。本発明はゼオライト系SCR触媒技術を使用して後端柱燃焼排出システム付きボイラーの使用である。このシステムは、排気と還元剤の混合物(以後、「混合物」と云う。)がゼオライト系SCR触媒を通過する前或いはその間に、ボイラーからの排気中に還元剤を導入することを備えてなる。この触媒は必要に応じて層として設計されてよい。
【0018】
ゼオライト系SCR触媒は、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、ニオブ、銀、ガリウム、カドミウム及びこれらの混合物からなる群の少なくとも一種を含んでなる第一成分と;セリウム、ランタニド、ランタニドの混合物、これらの混合物からなる群の少なくとも一種を含んでなる第二成分と;ゼオライトと;及び一種の酸素貯蔵物質と;を含んでなると定義される。。ランタニド(或いは「Lan:ラン」)はY、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Ho或いはYbを意味することと定義される。
【0019】
必要に応じて、実施態様は一つ以上のエコノマイザーを含む。ゼオライト系SCR触媒はエコノマイザーの中、エコノマイザーの上流或いは下流に配置されてよい。
【0020】
このゼオライト系SCR触媒を使用することにより、顧客は高コストでメンテナンスを要する低いNO及び/又は超低いNOバーナーを回避できる。このゼオライト系SCR触媒と組み合わせれば、代わりに標準バーナーを使用することができる。そのような組合せが、還元剤の化学量論的量の投入によって、例えばアンモニアを無制限に使用することにより、ほぼ無視出来る量にまで多量のNOを還元することが可能となる。排出物削減が達成されるだけでなく、このゼオライト系SCR触媒との組合せで標準バーナーを使用することで、効率の利点、省エネ及びコスト削減もまた達成できる。ボイラーが既に低いNOバーナーを有し、この低いNOバーナーが達成できるより更に低いNO排出物が要求された場合(例えば30ppm以下のNO)、ゼオライト系SCR触媒は、ゼオライト系SCR触媒を伴わない超低いNOバーナーと比較して、効率の利点、省エネ及びコスト削減に加え、そのようなNO還元を可能にする。ボイラーが既に9ppmNOを発生する超低いNOバーナーを有し、規制がより超低いNOバーナーにより達成されるレベル以下を強制する場合、ゼオライト系SCR触媒はそのようなNO還元を可能にする。
【0021】
ゼオライト系SCR触媒が、NO還元目的のため還元剤(好ましくはアンモニアを無制限に)を使用するボイラーの排気中で見られる、低温から中温(約300°F−約600°F)においてよく機能できる。この触媒は、この混合物がボイラーから出た後、触媒を通過する時、約300°F−約600°Fの温度範囲でNOレベルを5ppmレベル以下まで削減できる。
【0022】
使用される還元剤は、どれも知られた還元剤或いはNOを還元させる還元剤の組合せ、好ましくは無制限なアンモニアである。アンモニアはいずれかの知られた方法により排気中に導入される。アンモニアは無水アンモニア、アンモニア水、水酸化アンモニウム、ギ酸アンモニウム、尿素又はそれからアンモニアを発生できるいかなる化合物から生成される。ゼオライト系SCR触媒の前でアンモニアを形成する他の知られた方法がまた適宜に使用される。例えば無制限に、好適な触媒と結合した炭化水素(例えば無制限なエタノール)をNO還元のためアンモニアを生成する目的でゼオライト系触媒の上流で使用することができる。そのような状況で、アンモニアは好適な触媒部位で排気と一緒に炭化水素の反応により生成される。排気流中のエタノールからアンモニアを生成する代表的な触媒は銀系触媒である。(本明細書に参照として含まれるUS特許6284211参照)
【0023】
標準バーナーを伴った先行技術における通常のボイラー装置において、排気中にNOが約80−120ppm存在する。先行技術において、これが、超低いNOバーナーの場合とは異なり(そこでは30%FGRが必要である)10%FGRの使用によりNOを40−60ppmまで削減できる。
【0024】
標準バーナーを使用することにより、本発明は、本明細書の背景技術において明記した低いNO及び超低いNOバーナーと関連付けられる全てのデメリットを極端に排除する。NO還元のためゼオライト系SCR触媒システムを伴わない超低いNOバーナーと比較して、ゼオライト系SCR触媒システムを伴う低NOバーナーを選択することにより、特定の効果を受け取ることが可能である。
【0025】
ゼオライト系SCR触媒付き反応炉を取り付け、エコノマイザーの前に、中に、或いは後ろに還元剤を導入すると90%以上のNO転化が可能である。そのためNOを一桁の数字まで削減することができる。
【0026】
本発明は、還元剤と排気を接触させ、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、ニオブ、銀、ガリウム、カドミウム及びこれらの混合物からなる群の少なくとも一種を含んでなる第一成分と;セリウム、ランタニド、ランタニドの混合物、及びこれらの混合物からなる群の少なくとも一種を含んでなる第二成分と、少なくとも一種の酸素貯蔵物質と;及び少なくとも一種のゼオライトを含んでなる触媒の存在下で、この混合物をさらす(placing:置く)ことにより排気中のNOを選択的に還元する。
【0027】
一の実施態様において、ゼオライト系SCR触媒は、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、ニオブ、銀、ガリウム、カドミウム及びこれらの混合物からなる群の少なくとも一種を含んでなる第一成分;セリウム、ランタニド、ランタニドの混合物、及びこれらの混合物からなる群の少なくとも一種を含んでなる第二成分と、少なくとも一種のゼオライトと、及び少なくとも一種の酸素貯蔵物質を含んでなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は主Y軸に示されたNO転化対X軸に示された温度のプロットを示す。また副Y軸に示されているのはX軸の温度の関数としてのNHスリップである。データは5000hr−1から40、000hr−1までの範囲の様々な空間速度で集められた。
【図2】図2は煙管ボイラーを伴って使用される本発明の一の実施態様を示す。
【図3】図3は水管ボイラーを伴って使用される本発明の一の実施態様を示す。
【図4】図4はカセットの第一の実施態様を示す。
【発明の詳細な説明】
【0029】
工業用及び商業用ボイラーからの排気は窒素酸化物を含む。これは低過剰酸素(通常約1%〜約10%)及び多量の水蒸気(約20%)を含む。この排気中の窒素酸化物は、ゼオライト系SCR触媒の存在下で無制限のアンモニアのような還元剤と排気を接触させることにより取り除かれる。還元剤は窒素酸化物と共に反応し窒素と水を形成する。
【0030】
排気中の水蒸気は、触媒を非活性化してNO転化を下げる。しかし、ボイラーの条件下で、ゼオライト系SCR触媒は水蒸気からの非活性化がほとんどない又は全くないように見える。工業用及び商業用ボイラーは通常約20%の水蒸気を有する。
【0031】
工業用及び商業用ボイラーからの排気は約300〜約600°Fの低温度である。そのためSCR触媒の低温活性は工業用及び商業用ボイラーの用途において重要である。本発明の実施態様によるゼオライト系SCR触媒は、低温で優れたNO転化活性を有する。
【0032】
ボイラーの燃料として使用される天然ガス中に存在する硫黄は低水準ではあるが、著しく低温でSCR触媒性能に影響を与えている可能性がある。2006年及び2007年にPG&Eにより製造された天然ガスは15ppmの最大限度硫黄レベルを有した。クレーバーブルックスの排気物ガイド(本明細書で参照として含める)は工業用及び商業用ボイラーの排気中に存在する硫黄が約0.34ppmであると説明している。本発明によるゼオライト系SCR触媒を伴う反応炉のシステムは硫黄と大過剰の水蒸気の存在下でさえ低温で優れたNO転化活性を有する。
【0033】
アルコン(本明細書で参照として含まれるUS特許4912776)によれば、NOの還元には必要としないが、NOの還元には酸素の存在が必要と考えられている。アルコンはまたNOの還元がNOの還元より実行するのがより容易であることを主張している。ボイラーの排気は集合的にNOと呼ばれるNO及びNOの両方を有する。NO中のNO成分は工業用及び商業用ボイラーの排気中に約90%〜約100%の範囲で存在する。
【0034】
アルコンはこの証拠がSCR過程に対して二段階過程を支えていると考えられ、そこでは次のような反応が平行に起こっていると述べている。
NO+1/2O→NO
6NO+8NH→7N+12H
【0035】
SCR触媒は、低いNO/NO比より高いNO/NO比において、NO転化に対してより低い活性を有することは良く知られている。ボイラーのオフガス中のNOの約10%だけがNOである。従って、高いNO/NO比でSCR触媒の低温活性は重要な要素である。ゼオライト系SCR触媒はより好ましく機能する。メカニズムに制限されることなく、ゼオライト及びOSMと共に第一及び第二成分が、NO還元の過程における第一段階として特に低温でNOをNOに転化することを可能とする。より多くのNOが形成されるにつれて、未処理ボイラー排気と比較される時、NO/NO比が減少する。NOはNOより直ちに減少する。そのため低温活性はゼオライト系SCR触媒によって改善される。
【0036】
本発明の実施態様によるゼオライト系SCR触媒は先行技術の触媒より低温でより高い活性を有する。本発明のゼオライト系SCR触媒はまた先行技術の触媒より高い水熱安定性を有する。ボイラーの排気は通常相当量の水を含んでいる。そのため水熱安定性はこれらボイラーの用途において重要な要因である。
【0037】
ゼオライト系SCR触媒
ゼオライト系SCR触媒の第一成分及び第二成分がお互いに相乗効果を有する。この相乗効果が低温で高いNO転化を提供することを促す。第一成分及び第二成分の間の相乗効果がまた水熱加速処理及び硫黄加速処理に向けてゼオライト系SCR触媒を安定させることを促す。
【0038】
第一成分
ゼオライト系SCR触媒の第一成分は銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、ニオブ、銀、ガリウム、カドミウム及びこれらの混合物を少なくとも一種、好ましくはマンガン及び/又は銅を含んでなる。
【0039】
本発明のゼオライト系SCR触媒は第一成分の約1重量%〜約20重量%、より好ましくは第一成分の約3重量%〜約15重量%、及び最も好ましくは第一成分の約5重量%〜約8重量%を含んでなり、そこでは第一成分の重量%が前記金属に基づいて計算される。
【0040】
第二成分
ゼオライト系SCR触媒の第二成分はセリウム、ランタニド、ランタニドの混合物、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一種の成分、好ましくはセリウムを含んでなる。
【0041】
本発明のゼオライト系SCR触媒は第二成分の約2重量%〜約50重量%、より好ましくは第二成分の約5重量%〜約30重量%、及び最も好ましくは第二成分の約5重量%〜約25重量%を含んでなり、そこでは第二成分の重量%が前記金属に基づいて計算される。
【0042】
ゼオライト
ゼオライト系SCR触媒が少なくとも一種のゼオライトを含んでなる。
ゼオライトはZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−18、ZSM−23、ゼオライトベータ、ZSM−型ゼオライト、MCM−型ゼオライト、モルデナイト、フォージャサイト、フェリエライト(フェリエ沸石)、及びこれらの混合物からなる群から、好ましくはZSM−5が選択される。
【0043】
ゼオライトはHフォーム、Naフォーム、アンモニアフォーム、或いはこれらの混合物、好ましくはゼオライトのHフォーム状である。
【0044】
ゼオライトはまた第一成分及び/又は第二成分と全て或いは一部イオン交換される。ゼオライトのSiO/Al比率は、約1〜約500、より好ましく約10〜約150、及び最も好ましくは約30〜約70(好ましくは約40)と幅広い。理論に縛られたくないが、約10以上のSiO/Al比率を有するゼオライトは触媒の水熱安定性を強化するのに有益であると考えられる。
【0045】
一の実施態様において、第一成分、第二成分、或いは第一成分及び第二成分の両方の全て或いは一部は、ゼオライト及びゼオライトの混合物の中に浸透させる或いはイオン交換させうる。一の実施態様において、第一成分及び/又は第二成分の一部はゼオライト又はゼオライトの混合物の中でイオン交換され、及び第一成分及び/又は第二成分の一部はゼオライト又はゼオライトの混合物中に浸透されてよい。
【0046】
ゼオライト系SCR触媒は約10重量%ゼオライト〜90重量%ゼオライト、より好ましくは約20重量%ゼオライト〜約90重量%ゼオライト、及び最も好ましくは約40重量%ゼオライト〜約80重量%ゼオライトを含んでよい。
【0047】
酸素貯蔵物質
ゼオライト系SCR触媒は少なくとも一種の酸素貯蔵物質を含んでなる。酸素貯蔵物質は酸化セリウム系物質を含んでよい。酸素貯蔵物質は酸素の豊富な供給流から酸素を取り込み、酸素の不足した供給流に酸素を与えることができる。酸素貯蔵物質はまた第一成分及び/又は第二成分に対する担体として使用される。
【0048】
酸化セリウム系物質の全表面積は一般に、酸化セリウム系物質が約800℃以上の温度に加熱されたとき減少する。一種以上の金属酸化物が酸化セリウム系物質に添加されると、高温に曝される間、酸化セリウム系物質の焼結の程度が減少する。この酸化セリウム系物質に添加される望ましい金属酸化物は、例えば、ZrO、Al、La、或いは他の希土類金属酸化物の一種以上のものである。希土類金属はスカンジウム及びイットリウム及び原子番号57から71の元素として定義される。本発明の第一の実施態様において、酸素貯蔵物質はCe1−aZr又はCe1−c−dZrLanの化学式による組成物を有する酸化セリウム系物質である。
【0049】
他の実施態様において、酸素貯蔵物質はCe0.24Zr0.66La0.040.06(CZLY)、Ce0.24Zr0.67Ln0.09(CZL),Ce0.68Zr0.32(CZO)、Ce0.24Zr0.67Nd0.09(CZN)或いはCe0.6Zr0.3Nd0.05Pr0.05(CZNP)の化学式を有する。他の酸素貯蔵物質もまた適合する。
【0050】
ゼオライト系SCR触媒は約10重量%〜約90重量%酸素貯蔵物質、より好ましくは約20重量%〜約70重量%酸素貯蔵物質、及び最も好ましくは約30重量%〜約60重量%酸素貯蔵物質を含んでなる。酸素貯蔵物質の重量%は前記酸化物に基づく。
【0051】
理論に限定されたくないが、酸素貯蔵物質はNOをNOに酸化する能力を改善することにより、ゼオライト系SCR触媒の性能を強化できると考えられる。NOはNOよりアンモニア或いは他の還元剤によりすばやく反応する。そのためNOをNOに酸化する触媒の能力を強化することが触媒の活性を改善し、アンモニアによるNOの選択的還元に触媒作用を及ぼす。酸素貯蔵物質はまた酸素貯蔵物質を含んでなる選択的ウオッシュコート(下記に示される)に対する水性スラリーのレオロジーを改善する。
【0052】
無機酸化物
ゼオライト系SCR触媒はまたアルミナ、シリカ、チタニア、シリカーアルミナ、ジルコニア及び合成物、そしてこれらの混合物からなる群から選択された無機酸化物を少なくとも一種、好ましくはアルミナを含んでなる。この無機酸化物は例えばウオッシュコートの一部として使用される。
【0053】
一の実施態様において、酸素貯蔵物質量と無機酸化物量の合計は酸素貯蔵物質だけに対して前もって与えられる量であってよい。無機酸化物が酸素貯蔵物質とは異なる機能を有するものであってよいが、他の無機酸化物が酸素貯蔵物質の代わりに全て或いは一部が用いられてもよい。もし触媒がモノリス上に被覆される場合、無機酸化物は任意のウオッシュコートに対して水性スラリーのレオロジーを改善し、基材へのウオッシュコート接着を強化しうる。
【0054】
ゼオライト系SCR触媒組成
ゼオライト系SCR触媒は基材を含んでなる。本明細書で使用されているように、基材は触媒を担持するための当技術分野で周知のいかなる担体構造であってもよい。本発明の第一の実施態様において、この基材はビーズ或いはペレット或いは押し出し物状であってよい。このビーズ或いはペレットはアルミナ、シリカアルミナ、シリカ、チタニア、これらの混合物、或いはいかなる好適な物質から形成されてよい。本発明の他の実施態様において、この基材はハニカム担体であってよい。このハニカム担体はセラミックハニカム担体或いは金属ハニカム担体であってよい。このセラミックハニカム担体は、例えば、シリマナイト、ジルコニア、葉長石、リシア輝石、ケイ酸マグネシウム、ムライト、アルミナ、コージライト(MgAlSi18)、他のアルミノケイ酸塩物質、炭化ケイ素、或いはこれらの組合せから形成されてよい。他のセラミック担体もまた適合されてよい。
【0055】
もしこの担体が金属ハニカム担体なら、この金属は、耐熱系金属合金、とりわけ、鉄が実質的な或いは主要な成分である合金であってよい。この金属担体の表面は約1000℃以上の上昇温度で酸化され、合金の表面上に酸化層を形成することにより合金の耐食性を改善してよい。この合金の表面上の酸化層がまたモノリス担体の表面へのウオッシュコート接着を強化してよい。好ましくは、金属或いはセラミックのどちらかの基材は三次元の担体構造を提示する。
【0056】
本発明の一の実施態様において、この基材はモノリス担体でこのモノリスを通って延びる複数のきめ細かい平行な流路を有してよい。この流路はいかなる好適な断面形状及び大きさを有することができる。この流路は他の形も好適であるが、例えば、台形、長方形、正方形、正弦曲線、六角形、楕円形、又は円形である。ほとんどの通路は使用されないが、このモノリスは断面の平方インチ当たり約9〜約1200以上のガス注入口の穴或いは通路を含む。
【0057】
この基材はまた微粒子にとっていかなる好適なフィルターになりうる。基材の一部の好適な形状は織りフィルター、とりわけ織りセラミック繊維フィルター、金網、円板型フィルター、セラミックハニカムモノリス、セラミック或いは金属発泡体、ウオールフローフィルター、及び他の好適なフィルターを包含してよい。ウオールフローフィルターは自動車の排ガス触媒に対するハニカム基材と類似している。これらは、ウオールフローフィルターのチャンネルが注入口及び排気口に交互に差し込まれる通常の自動車排ガス触媒を形成するのに使用されるハニカム基材とは異なり、そのため、排気が、ウオールフローフィルターの注入口から排気口まで進みながら、ウオールフローフィルターの多孔質ウオールを通って進むことを強いられる。
【0058】
ウオッシュコート
一の実施態様において、本発明の少なくとも一部の触媒はウオッシュコート状で基材上に配置される。
【0059】
一の実施態様において、ウオッシュコートは、水中にゼオライト及び/又はOSMを浮かせ水性スラリーを形成し、ウオッシュコートとして基材上に水性スラリーを配置する(配置は堆積、接着、硬化、浸漬、塗付及び噴霧を含むがこれに限定されるものではない)ことにより基材上に形成される。他の実施態様において、このウオッシュコートは、アルミナ、シリカ、チタニア、シリカーアルミナ、ジルコニア及び固溶体及びこれらの組合せからなる群から選択された無機酸化物を少なくとも一種を更に含んでよい。
【0060】
他の実施態様において、第一及び/又は第二成分の塩のような他の成分が所望によりこの水性スラリーに添加されてよい。酸又は塩基溶液、或いは様々な塩或いは有機化合物のような他の化合物がこの水性スラリーに添加され、スラリーのレオロジーを調整してよい。このレオロジーを調整するために使用される化合物の一部の例は、水酸化アンモニウム、水酸化アルミニウム、酢酸、クエン酸、テトラエチルアンモニウム水酸化物、他のテトラアルキルアンモニウム塩、酢酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、グリセロール、ポリエチレングリコール及び他の好適なポリマーのような商業ポリマーを含むがこれらに限定されるものではない。
【0061】
一の実施態様において、第一成分、第二成分、又は第一成分及び第二成分の両方が、例えば硝酸塩、酢酸塩或いは他の塩及び/又はこれらの混合物のような酸化物或いは他の化合物として水性スラリーに添加されてよい。このスラリーはいかなる好適な方法において基材上に配置されてよい。もし、この基材が平行な流路を伴うモノリス担体であるなら、ウオッシュコートはこの路の壁に形成されてよい。この流路を通るガスはウオッシュコート上で担持される物質と同様に路の壁上のウオッシュコートと接触してもよい。
【0062】
酸素貯蔵物質がウオッシュコートスラリーのレオロジーを強化しうると考えられている。酸素貯蔵物質の存在によりウオッシュコートスラリーの強化されたレオロジーがこの基材へのウオッシュコートスラリーの接着を強化しうる。
【0063】
一の実施態様において、ウオッシュコートはこの基材上にゼオライト及び酸素貯蔵物質を堆積するスラリーにより形成されてよい。このウオッシュコートはまた、アルミナ、シリカ、チタニア、シリカーアルミナ、ジルコニア及び固溶体、化合物及びこれらの混合物からなる群から選択される無機酸化物を少なくとも一種含んでもよい。第一成分及び/又は第二成分の水溶性の前駆体塩を含んでなる溶液が、ウオッシュコートが基材上に配置された後、このウオッシュコートの中で含浸及び/又はイオン交換されてよい。別の実施態様において、第一及び/又は第二成分の塩がこのウオッシュコートのための水性スラリーに添加されてよい。もう別の実施態様において、第一成分及び第二成分の少なくとも一種が酸化物としてこのウオッシュコートの水性スラリーに添加されてよい。
【0064】
一の実施態様において、この基材、ウオッシュコート、及び含浸或いはイオン交換された溶液(第一成分及び/又は第二成分の水溶性の前駆体塩を含んでなる)は、このウオッシュコート及び/又はこの溶液がこの基材に添加される前或いは後に、触媒化合物を形成するために焼成されてよい。一の実施態様において、このウオッシュコート及び含浸或いはイオン交換された溶液は焼成前に乾燥されてよい。
【0065】
触媒カセット及びゼオライト系SCR触媒反応炉
望ましい実施態様において、ハニカム触媒(望ましくは被覆され、焼成された)は触媒カセット中で形成される。図4で示されるような第一の実施態様において、触媒カセット(8)を形成する個別のハニカム触媒はカセット内部の空間(9)の中に保持される触媒成分と呼ばれる。この触媒カセットの寸法は、ボイラーの排気必要条件及び反応炉空間必要条件に依存する一種以上の触媒成分から定めることができる。いくつかのカセットは層の内部で互いに隣接或いは積み上げられて使用されてよい。複合層が反応炉で使用されるが、一種以上の層が一度に取り除かれ及び/又は置き換えられるように、この層はモジュール式である。このカセットはモジュール式なので、複合カセットが各層で使用されるが、一以上のカセットが一度に取り除かれ及び/又は置き換えられる。或る実施態様において、一以上のカセット及び/又は一以上の層の除去、置換、及び/又は修繕は、ボイラーが作動している間行われる。一以上のカセット及び/又は層が、全反応炉を分解することなく接続され、取り除かれ、加えられ、及び/又は置き換えられるようにこの反応炉は建設されてよい(例えばモジュールユニットのように)。
【0066】
ゼオライト系SCR触媒層の奥行きは性能及び圧力低下の必要条件に依存しあらゆる箇所で3〜120”(インチ)である。より望ましくはゼオライト系SCR触媒の奥行きは3〜36”(インチ)である。一(種)以上の層は順番に或いは互いに隣接して反応炉の中で使用されてよい。もし必要なら、このSCR触媒カセットは、ボイラーが作動していないとき、その場で容易に取り除かれ及び保管される。このカセットは12”又は6”又は3”(インチ)の厚さのいずれかである一つ以上の触媒成分を含んでなる。各触媒成分の一般的な断面は6”x6”(インチ)であるが限定されるわけではない。この触媒成分は一般的に平方インチ当たり至る所で10セル〜800セルを持つ被覆されたハニカム基材である。この触媒成分はいかなる形のなかにも押出される。例えば、触媒が好適な大きさのハニカムの中に押出され、カセットはそのような押出されたハニカムから形成される。ビーズ或いはペレットはそのようなゼオライト系SCR触媒から製造され、ゼオライトSCR触媒を形成するためにカセットの中に詰め込まれる。
【0067】
一の実施態様において、この反応炉は、排気流がこの触媒カセットに実質的に垂直になるように配置される。この反応炉は、用途の必要により決定されるように、水平或いは垂直に或いはどの方向へも配置される。一の実施態様において、この反応炉はボイラーの排気筒或いは排気の進路のいかなる場所にも配置される。
【0068】
一の実施例において、触媒カセットの寸法は1フィート幅x8フィート長さx0.5フィート深さである。この触媒カセットはゼオライト系SCR触媒反応炉を形成する容器の中に包含される。ゼオライト系SCR触媒反応炉はいくつかの触媒カセットを有することができる。触媒の量は、ボイラーの排気からの排出物を減少させるのに要するゼオライト系SCR反応炉の寸法により決定される。触媒カセットの数はどのボイラーに対しても、即ち一般的なボイラーの用途に対しても限定されないが、望ましくは2或いは3の触媒カセットが使用される。このモジュール方式のやり方が取り付けの容易さ及び置換の容易さを可能にする。またこの触媒カセットは、ボイラーが作動していないとき容易に取り除かれ、適切に保存される。触媒カセットの追加層は、触媒活性が時間とともに減少するにつれて、今後付け加えることができ、存在するシステムの性能の耐用年数を延ばし、或いは新しい規制上の要件を満たすようにNO排出物を減少させる。
【0069】
図2に示された一の実施態様において、ゼオライト系SCR触媒(1)は煙管ボイラー(2)と共に使用される。ゼオライト系SCR触媒(1)を含む反応炉(6)は排気筒(4)に配置され、排気がゼオライト系SCR触媒に達する前に排気管(5)の中に還元剤が注入される。ゼオライト系SCR触媒はカセット(3)の中に形成され、複合カセット及び/又は複合層は単一反応炉で使用される。もし一のカセットが置き換える必要があるなら、全ての触媒を取り除く必要がないようにこのことが役立つ。全反応炉を分解することなく、一つ以上のカセット及び/又は層が接続、除去、追加及び/又は置換されるためにこの反応炉が建設されてよい(例えばモジュールユニットのように)。
【0070】
図3に示される他の実施態様において、ゼオライト系SCR触媒(1)が水管ボイラー(7)と共に使用される。ゼオライト系SCR触媒(1)を含む反応炉(6)はボイラー(7)の後ろであるが排気筒(4)の前に配置され、排気がゼオライト系SCR触媒に達する前に還元剤は排気管(5)中に注入される。ゼオライト系SCR触媒はカセット(3)に形成され、複合カセット及び/又は複合層は単一反応炉で使用されてよい。もし一つのカセットを置き換える必要があるなら、全触媒を取り除く必要がないようにこのことが役立つ。
【0071】
NOを取り除くための方法
一の実施態様において、ボイラーからの排気は、十分な還元剤、望ましくはアンモニアの存在下でゼオライト系SCR触媒と接触され、ボイラーの排気中に含まれるNOを望ましいレベルまで還元させる。排気がゼオライト系SCR触媒と接触する前或いは排気がゼオライト系SCR触媒と接触する時、還元剤が排気管中に導入される。排気がゼオライト系SCR触媒反応炉に達する前或いは達する時、静的ミキサー、フロー偏向翼及び/又は他の装置が排気と還元剤を混ぜるために使用される。このゼオライト系SCR触媒はボイラーの出口からボイラーの排気筒の末端部までの至る所(位置)に配置される。一の実施態様において、ゼオライト系SCR触媒はボイラーの排気筒に配置される。他の実施態様において、ゼオライト系SCR触媒はエコノマイザーの中に配置される。他の実施態様において、ゼオライト系SCR触媒はエコノマイザーの後ろに配置される。他の実施態様において、ゼオライト系SCR触媒はボイラーのエコノマイザーの前に配置される。ボイラーの出口穴、エコノマイザー、排気筒、及びいかなる接続ダクト工事、或いはこれらの組合せのいずれかがゼオライト系SCR触媒を配置するために改良され、一つ以上の配置が単一の実施態様において使用されてよい。
【0072】
一の実施態様において、アンモニア/NOのモル比は約0.01〜約2.5の範囲で、より望ましくは約0.7〜約2の範囲で、そして最も望ましいのは約0.8〜約1.2の範囲である。低いアンモニア/NOの比は一般に排気中の過剰なアンモニアを最小限に抑えるために好まれる。排気中の過剰なアンモニアは健康或いは臭気問題のため望ましくない。
【0073】
ゼオライト系SCR触媒を通過する排気と還元剤の空間速度は約1000hr−1〜約180,000hr−1の範囲で、より望ましくは約1000hr−1〜約90,000hr−1の範囲で、そして最も望ましくは約1000hr−1〜約60,000hr−1の範囲である。
【0074】
排気及び還元剤がゼオライト系SCR触媒と約140℃〜約700℃で、より望ましくは約150℃〜約600℃で、及び最も望ましくは約150℃〜約500℃で接触される。
【0075】
もし排気の温度が約150℃未満なら、窒素酸化物の還元が低くなる。約500℃超過の温度でアンモニアは酸化される。もしアンモニアが酸化されると、窒素酸化物を還元する排気中のアンモニア還元剤が不十分になる。
【0076】
もし過剰なアンモニアが排気中に存在するなら、少なくとも一部の過剰なアンモニアは、本発明の実施態様に従って触媒により窒素に酸化される。
【0077】
次の実施例は本発明の要旨を説明する意図を持っているが限定されるものではない。当然のことながら、当業者にとって知られている他の方法が代わりに使用されてもよい。
【0078】
実施例1
様々な空間速度でのNO転化及びNHスリップ
スラリーは、水と共に50%HZSM−5ゼオライトと50%酸素貯蔵物質との組成により調整された。これがウオッシュコートを形成した。このウオッシュコートは210cpsiのセラミックハニカム基材上に被覆され、210cpsiのセラミックハニカム基材上のウオッシュコートのリットル当たり200グラムの充填を行った。この湿ったウオッシュコートされた基材のチャンネルはエアナイフを使用して空気を吹き込むことにより除去された。ウオッシュコートされた基材を550℃で4時間燃焼し焼結されウオッシュコートされた基材を得た。硝酸セリウム、硝酸マンガン及び硝酸銅の混合物溶液が作られ、ウオッシュコートされたハニカム基材に含浸させた。硝酸セリウム、硝酸マンガン及び硝酸銅の溶液は、最終含浸ハニカム触媒上にリットル当たり20グラムのセリウム充填、リットル当たり12.5グラムのマグネシウム充填、及びリットル当たり5.25グラムの銅充填となるように作成された。この触媒は40ppmNO、40ppmNH、50ppmCO、10%CO、20%HO及び残部Nの蒸気を使用して、ボイラーの排気条件で試験した。NO転化及びNHスリップに関しての結果を、350°F(176.6℃)における空間速度の関数として表2に示す。
【表2】

【0079】
図1及び表2に示されるように、温度が350°F以上で、空間速度が15、000hr−1以下だった時、この触媒を使用しながら90%以上のNO転化が達成された。空間速度が15、000hr−1〜40、000hr−1に増加するにつれて、NO転化は90%以上〜75%以上に下がった。温度が350°F未満で、空間速度が40、000hr−1以上又はそれに相当する時だけ、0.2ppm超過のアンモニアスリップがよく見られた。ほとんどの工業用及び商業用のボイラーは350°F以上の排気温度を有する。
【0080】
表3はボイラーの排気条件で実施例1に記載された触媒を使用して行われた活性試験の結果を示す。触媒活性を試験するために使用された蒸気は再び40ppmNO、40ppmNH、50ppmCO、10%CO、20%HO及び残部Nであった。「合格/否」の基準は触媒活性を決定するために使用された。触媒を経て観測されたNO転化及びNHスリップが5ppm以下NO及び5ppm以下NHだった時、この活性試験に「合格」が付与された。この「合格」の基準はNOとNHスリップの両方が単独で5ppm以下であるようにする。言い換えると、この活性試験の結果が6ppmNOで2ppmNHスリップで、或いは他の試験でNOが2ppmであったが、NHが6ppmであったら、どちらの場合も試験の結果は「否」が付与される。
【表3】

【0081】
実施例2
硫黄加速処理(試験)した触媒上で様々な温度及び空間速度でのNO転化及びNHスリップ
ボイラーの排気は主にSOとして硫黄化合物を含む。ボイラーの排気中のSOの量はボイラー中で燃焼させる燃料のタイプに依存する。パイプラインの天然ガスは工業用及び商業用ボイラーにおいてよく使用される燃料である。PG&Eのような天然ガスの供給者は天然ガス中に存在する硫黄の量の情報を提供する。ここ何年或いは2006年及び2007年において、PG&Eは全最大硫黄量が3ppm〜15ppmの範囲であるパイプラインの天然ガスを提供した。工業用及び商業用のボイラーの製造者、クレーバーブルックスは、排出物のレファレンスガイドを出版し、硫黄を含む天然ガスが工業用及び商業用ボイラーで燃焼される時、ボイラーの排気中のSOの濃度が約0.34ppmになることをその中で述べている。試験は、実施例1で記載された触媒を使用し、1ppmSOに更に20%HO、40ppmNO、40ppmNH、50ppmCO、10%CO及び残部Nからなる蒸気を使用しながら硫黄加速処理に触媒を曝して行われた。活性データは、上記で述べた硫黄加速処理に触媒を100時間曝した後、様々な空間速度及び温度で集められた。表4は200℃(392°F)でそのように硫黄加速処理した後得られた結果を示す。
【表4】

【0082】
ゼオライト系SCR触媒は、先行技術の触媒よりアンモニアによるNOの選択的還元に対しより高い活性を有する。更に、本発明の実施態様による触媒は、タイム−オン−ストリームSO加速処理に触媒を曝した後でさえ、様々な温度で高いNO転化活性を有する。
【0083】
ゼオライト系SCR触媒は、工業用及び商業用ボイラーに好適ではあるが、NOを含む他のガス流、とりわけ低温の排気流又は用途の作動中に大きな温度変化がある場合の排気流の何れかに適用される。そのような適用の一部の例は、ディーゼルエンジンが動力供給する車両からの排気、ガスタービンからの排気、ディーゼル発電機からの排気、発電所からの排気、化学プラントからの排気、及び他の好適な適用を含むが、これらに限定するものではない。
【0084】
本発明は、この本質的特質から離れることなく他の特定の形態においても具体化されうる。記載された実施態様は、例示するものとしてだけであり、全ての態様において熟考されるものであり、限定して解釈されるものではない。従って、本発明の範囲は本明細書における記述と供に、添付された特許請求の範囲により明示されている。特許請求の範囲における均等の意味及び範囲内にある全ての改変は、特許請求の範囲内において採用されるべきものとされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラーと、及び
ゼオライト系SCR触媒とを備えてなり、
前記ボイラーが前記触媒の上流に存在する、反応炉システム。
【請求項2】
一つ以上のエコノマイザーを更に備えてなる、請求項1に記載された反応炉システム。
【請求項3】
前記触媒が前記エコノマイザーの中に配置されてなる、請求項2に記載された反応炉システム。
【請求項4】
前記触媒が前記エコノマイザーの上流に配置されてなる、請求項2に記載された反応炉システム。
【請求項5】
前記触媒が前記エコノマイザーの下流に配置されてなる、請求項2に記載された反応炉システム。
【請求項6】
前記ボイラーの下流にボイラー排気筒を更に備えてなり、及び
前記触媒が前記ボイラーの出口と前記排気筒の末端の間の位置に配置されてなる、請求項1に記載された反応炉システム。
【請求項7】
前記触媒が前記排気筒の中に配置されてなる、請求項6に記載された反応炉システム。
【請求項8】
前記ボイラーの下流に、一つ以上の還元剤を導入するための、一つ以上の注入口を更に備えてなる、請求項1に記載された反応炉システム。
【請求項9】
前記注入口が前記触媒の上流に存在する、請求項8に記載された反応炉システム。
【請求項10】
前記還元剤がアンモニアを含んでなる、請求項8に記載された反応炉システム。
【請求項11】
前記還元剤が一つ以上の炭化水素を含んでなる、請求項8に記載された反応炉システム。
【請求項12】
前記還元剤がアンモニア及び一つ以上の炭化水素を含んでなる、請求項8に記載された反応炉システム。
【請求項13】
前記還元剤がエタノールを含んでなる、請求項8に記載された反応炉システム。
【請求項14】
前記触媒が、
第一成分と、第二成分と、
ゼオライトと、及び
一種の酸素貯蔵物質を含んでなり、
前記第一成分が、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、ニオブ、銀、ガリウム、カドミウム及びこれらの混合物からなる群の少なくとも一つを含んでなり、
前記第二成分が、セリウム、ランタニド、ランタニドの混合物、及びこれらの混合物からなる群の少なくとも一つを含んでなる、請求項1に記載された反応炉システム。
【請求項15】
前記触媒が、
約1重量%〜約20重量%の第一成分と、
約2重量%〜約35重量%の第二成分と、
約10重量%〜約90重量%のゼオライトと、及び
約10重量%〜約90重量%の酸素貯蔵物質を含んでなり、
前記第一成分及び第二成分の重量%が前記金属に基づいてなるものである、請求項14に記載された反応炉システム。
【請求項16】
前記ゼオライトが、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−18、ZSM−23、MCM−ゼオライト、モルデナイト、フォージャサイト、フェリエライト、ゼオライトベータ及びこれらの混合物からなる群から選択されてなる、請求項14に記載された反応炉システム。
【請求項17】
前記ゼオライトが、アルミナに対するシリカのモル比が約1超過である、請求項14に記載された反応炉システム。
【請求項18】
前記ゼオライトが、アルミナに対するシリカのモル比が約1〜約100である、請求項14に記載された反応炉システム。
【請求項19】
前記酸素貯蔵物質が、Ce1−aZr及びCe1−c−dZrLanからなる群から選択されてなり、
Lanが、Y、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Ho、Yb及びこれらの混合物からなる群から選択されてなる、請求項14に記載された反応炉システム。
【請求項20】
無機酸化物を更に含んでなる、請求項14に記載された反応炉システム。
【請求項21】
前記第一成分が銅及びマンガンの組合せであり、
前記第二成分がセリウムであり、
前記ゼオライトがZSM−5であり、及び
前記OSMがCeZrNdPr酸化物である、請求項14に記載された反応炉システム。
【請求項22】
前記ゼオライトが、アルミナに対するシリカのモル比が約1〜約100である、請求項21に記載された反応炉システム。
【請求項23】
前記ボイラーが工業用ボイラーを備えてなる、請求項1に記載された反応炉システム。
【請求項24】
前記ボイラーが商業用ボイラーを備えてなる、請求項1に記載された反応炉システム。
【請求項25】
前記ボイラーがバーナーを使用する、請求項1に記載された反応炉システム。
【請求項26】
前記バーナーが低NOバーナーである、請求項25に記載された反応炉システム。
【請求項27】
前記バーナーが超低NOバーナーである、請求項25に記載された反応炉システム。
【請求項28】
前記触媒が押し出し触媒を含んでなる、請求項1に記載された反応炉システム。
【請求項29】
前記触媒が少なくとも一つの押し出し成分を含んでなる、請求項1に記載された反応炉システム。
【請求項30】
前記ゼオライトが押し出されたものである、請求項14に記載された反応炉システム。
【請求項31】
前記触媒が被覆された触媒を含んでなる、請求項1に記載された反応炉システム。
【請求項32】
前記触媒がビーズを含んでなる、請求項1に記載された反応炉システム。
【請求項33】
前記触媒がペレットを含んでなる、請求項1に記載された反応炉システム。
【請求項34】
前記触媒が一つ以上のカセットの中に配置されてなる、請求項1に記載された反応炉システム。
【請求項35】
前記無機酸化物が、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、及びシリカ−アルミナ溶液、これらの合成物及び混合物からなる群から選択さてなれる、請求項20に記載された反応炉システム。
【請求項36】
前記触媒が少なくとも一つの基材上に配置されてなり、
前記基材が少なくとも一つのカセットの中に形成されてなる、請求項14に記載された反応炉システム。
【請求項37】
前記バーナーが燃料を使用する、請求項25に記載された反応炉システム。
【請求項38】
前記燃料が天然ガスを含んでなる、請求項37に記載された反応炉システム。
【請求項39】
NOを還元する方法であって、
ボイラーからの排気を還元剤と接触させ、及び
触媒の存在の下に、前記排気と還元剤をさらしてなることを含んでなるものであり、
前記触媒が、第一成分と、第二成分と、ゼオライトと、及び
少なくとも一種の酸素貯蔵物質を含んでなり、
前記第一成分が、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、ニオブ、銀、ガリウム、カドミウム及びこれらの混合物からなる群の少なくとも一種を含んでなり、
前記第二成分が、セリウム、ランタニド、ランタニドの混合物、及びこれらの混合物からなる群の少なくとも一種を含んでなるものである、NOを還元する方法。
【請求項40】
前記接触が開始する時、前記排気の温度が約140℃〜約700℃であり、及び
前記排気及び還元剤が共に、アンモニア/NOモル比が約0.01〜約2.0である、請求項39に記載された方法。
【請求項41】
前記触媒が、
約1重量%〜約20重量%の第一成分と、
約2重量%〜約35重量%の第二成分と、
約10重量%〜約90重量%の少なくとも一種のゼオライトと、及び
約10重量%〜約90重量%の酸素貯蔵物質を含んでなり、前記第一成分及び第二成分の重量%は前記金属に基づく請求項39に記載された方法。
【請求項42】
前記ゼオライトが、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−18、ZSM−23、MCM−ゼオライト、モルデナイト、フォージャサイト、フェリエライト、ゼオライトベータ及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項39に記載された方法。
【請求項43】
前記酸素貯蔵物質がCe1−aZr及びCe1−c−dZrLanからなる群から選択されてなり、
Lanが、Y、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Ho、Yb及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項39に記載された方法。
【請求項44】
前記第一成分がマンガン及び銅であり、
前記第二成分がセリウムであり、及び
前記ゼオライトがZSM−5である、請求項39に記載された方法。
【請求項45】
ガス流及びアンモニアを、少なくとも一種の無機酸化物と接触させることを更に含んでなり、
前記無機酸化物が、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、及びシリカーアルミナ溶液、及びこれらの合成物からなる群から選択されてなるものである、請求項39に記載された方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2011−523008(P2011−523008A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507460(P2011−507460)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/002678
【国際公開番号】WO2009/137008
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(590004718)ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー (152)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】