説明

ボイラ燃焼灰の処理方法

【課題】ボイラから発生する未燃カーボンを含有する燃焼灰の処理と、廃棄物として処理されている使用済みチップ型電子部品梱包材の有効利用を課題とするものである。
【解決手段】未燃カーボンを含有するボイラ燃焼灰に使用済みチップ型電子部品梱包材を混合し、再度燃焼させるボイラ燃焼灰の処理方法であり、該使用済みチップ型電子部品梱包材には紙製のチップ型電子部品梱包材を30質量%以上含有し、該使用済みチップ型電子部品梱包材は1mm〜10mmの長さに破砕されて、ボイラ燃焼灰と混合し、燃焼する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボイラから発生する未燃カーボンを含有する燃焼灰の処理方法に関し、さらに詳しくは未燃カーボンを含有する燃焼灰と使用済みのチップ型電子梱包材を配合して再度燃焼させたボイラ燃焼灰の処理方法に関する。
【0002】
ボイラ設備では燃料によって差はあるものの、排出される燃焼灰中には未燃カーボンを含有しており、特に、燃料に重油、原油を燃料とした場合に、ボイラ設備中にある燃焼排ガス中に含まれる灰を捕集する電気集塵機で回収される灰には、未燃焼のカーボンが多量に含まれている。従来はこれらの燃焼灰は減容化されるとともに、一部は産業廃棄物として処理されているのが現状である。最近では、サーマルリサイクルの観点から、さまざまなものを燃料として使用するため、未燃カーボンを多量に含有する灰が排出されており、この未燃カーボンを再利用する技術として下記のような技術が開示されている。
【0003】
特開昭59−28505号公報(特許文献1)には重油、原油などの液体燃料を燃料としたボイラの電気集塵機から発生した重油灰の中に多量の未燃焼炭素分が含まれていることに注目し、水やバインダーを加えて造粒などの塊成化処理を施して、銑鉄製造用の高炉に再度燃焼する技術が開示されている、また特開昭59−27117号公報(特許文献2)には高温の溶融金属が貯えられた溶融炉内に重油灰を吹き込む方法が開示されている。しかしながら、これらの方法は、金属製造設備が必要であり、一般的に応用できる設備ではないことが問題である。
【0004】
更には、特開平11−101423号公報(特許文献3)には、ボイラ燃焼生成灰を造粒、乾燥させたる固形物化処理を行った後に燃焼させる方法が開示され、特開昭53−87580号公報(特許文献4)には粉炭重油に混合して燃焼させる技術が開示されている。
【0005】
さらに、特開昭62−16621号公報(特許文献5)には電気集塵機灰からバインダー共存下で未燃カーボンのみを分離造粒する技術などが開示されているが、いずれも未燃カーボンの燃焼のみを目的としたものであり、手間のかかる処理を必要とするものであり、現状では有害物質の除去、封鎖後に一部はセメント、土壌改良材に使われるほかは廃棄物として処理されているのが現状である。
【0006】
未燃カーボンを多量に含む燃焼灰中には乾燥固形分1kg当り、2,000〜5,000kcalの発熱量を有しており、これを産業廃棄物として処理することは資源の有効活用の面からも、また、廃棄物処理問題の観点からも好ましくない。このように大きな発熱量をもつ燃焼灰を有効に利用しないと液体燃料を燃焼させるボイラの運転コストが嵩むこととなるため問題である。
【0007】
ボイラから排出される燃焼灰は、装置によりサイクロンコレクター、電気集塵機等で乾式で回収される場合もあるが、環境面の問題から、有害物質の除去(脱硫対策、脱硝対策)のための処理により、湿式で回収される場合が多く、水分を含んだ状態で存在するため、濃縮や乾燥には手間もエネルギーも必要となり、廃棄物の処理としても問題となっている。
【0008】
一方、リサイクル/リユースが求められながら、現状では産業廃棄物として埋め立て処分されるか、または焼却処分されているものにチップ型電子部品梱包材がある。チップ型電子部品梱包材には部品をマトリクスに整列させるトレー、部品を筒状の中に一列に整列させるマガジンチューブ、部品をバラバラに袋或いは箱状に封入するバルク、部品をひとつひとつ個別しかも連続したテープを巻物にしたキャリアテープなどがある。
【0009】
中でもキャリアテープは、設備対応普及度、多様化、作業性、信頼性、省スペースという点で、最も優れたチップ型電子部品梱包材として大量に使用されている。キャリアテープは紙や合成樹脂等から構成され,チップ型電子部品を収納するキャビティを持つ幅8mm程度のテープ状の基材と、そのキャビティをふさぐカバーテープとからなるものである。使用方法としてはキャリアテープを巻いてテープリールにし、テープリールを電子部品自動装着装置に装填する。そしてテープリールからキャリアテープを引き出し、電子部品自動装着装置の所定位置にキャリアテープが送られると、カバーテープが剥離され、電子部品自動装着装置のマシンハンドがキャリアテープに形成されているキャビティ内の電子部品を保持してキャリアテープから取り出し、この電子部品を回路基板の所定の場所に装着する。電子部品が取り外された使用済みのキャリアテープは、移出口から排出され、排出されたキャリアテープは作業者が適宜切断するか、自動的に適当な長さに切断されて、廃棄物として処理されている。
【0010】
使用するチップ型電子部品により、紙製のものと合成樹脂製のものの両者を使用しているところがほとんどであり、いずれも廃棄物となり、混在した状態でしか回収できないのが殆どであるため、産業廃棄物として処理されているのが現状であった。これらの混在したキャリアテープを分別する技術しては比重差を用いる(ハイドロサイクロン)方法、あるいは、X線、赤外線などを用いる方法などが検討され、特開2006−314912号公報(特許文献6)には断裁されたキャリアテープ断裁片を振動ふるいによりプラスチック大片と小片と紙片に分ける装置が開示されているが、実用化されていないのが実状である。
【特許文献1】特開昭59−28505号公報
【特許文献2】特開昭59−27117号公報
【特許文献3】特開平11−101423号公報
【特許文献4】特開昭53−87580号公報
【特許文献5】特開昭62−16621号公報
【特許文献6】特開2006−314912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前述の上記従来技術の状況に鑑み、ボイラから発生する未燃カーボンを含有する燃焼灰の処理と、廃棄物として処理されている使用済みチップ型電子部品梱包材の有効利用を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記課題を解決するために、未燃カーボンを含有するボイラ燃焼灰に、使用済みチップ型電子部品梱包材をあらかじめ適当な大きさに破砕して、混合した固形物を固体燃料を燃焼させるボイラに投入して、再燃焼させることにより、エネルギーの有効利用と廃棄物処理の両者を達成したものであり、以下の発明を包含する。
(1)未燃カーボンを含有するボイラ燃焼灰に使用済みチップ型電子部品梱包材を混合し、再度燃焼させるボイラ燃焼灰の処理方法。
(2)前記使用済みチップ型電子部品梱包材には紙製のチップ型電子部品梱包材が30質量%以上含有する(1)記載のボイラ燃焼灰の処理方法。
(3)前記使用済みチップ型電子部品梱包材は1mm〜10mmの長さに破砕されて混合されている(1)または(2)のいずれか1項に記載のボイラ燃焼灰の処理方法。
(4)前記使用済みチップ型電子部品梱材が使用済みのキャリアテープである(1)〜(3)のいずれか1項に記載のボイラ燃焼灰の処理方法。
【0013】
(5)前記ボイラ燃焼灰は未燃カーボンをドライベースで10質量%以上含有する(1)記載のボイラ燃焼灰の処理方法。
(6)前記ボイラ燃焼灰は水分を20質量%以上含有する(1)又は(5)記載のボイラ燃焼灰の処理方法。
(7)再度燃焼させる際の燃焼温度が800〜1,100℃である(1)記載のボイラ燃焼灰の処理方法。
【発明の効果】
【0014】
ボイラ燃焼灰の処理が容易になるだけでなく、さらにエネルギーとして効率よく利用可能となり、廃棄物してしか処理されていなかった使用済みのチップ型電子部品梱包材を有効利用することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明で用いるボイラ燃焼灰は、どのような装置のボイラ、使用される燃料に制限はなく、未燃カーボンが含有されているものであればよい。使用済みチップ型電子部品梱包材を配合した後に再燃焼させるため、未燃カーボン分の多いものが好ましい。未燃カーボン分はドライベースで10質量%以上含有することがエネルギー効率の面から好ましい。未燃カーボンを多く含有するボイラ燃焼灰としては重油、原油などの液体燃料を原料としたボイラ設備の電気集塵機で捕集される燃焼灰(EP灰)や、古タイヤや木屑等様々な固形物を燃焼させる混燃ボイラの燃焼灰などを使用することが好ましい。
【0016】
特に未燃カーボンの含有量が多い重油や原油等の液体燃料を原料して燃焼させるボイラから発生する燃焼灰は比重が0.1程度と軽く、しかも微粉末状であることから飛散しやすくハンドリングが難しいために水分を加えて取り扱われている。
また、ボイラ燃焼灰の多くは環境保護の観点から、含有する重金属除去や脱硫、脱硝処理工程、飛散防止の点から水分を含んだ状態で取り扱われる。
本発明では上記ボイラ燃焼灰に使用済みチップ型電子部品梱包材を混合することにより、チップ型電子部品梱包材に燃焼灰中の水分を適度に吸収させ、ボイラ燃焼灰を飛散させることなく、効率的に取り扱えるようにしたものであり、燃焼灰に水分を20%以上含有する場合に本発明が有効である。
【0017】
本発明でボイラ燃焼灰に混合する使用済みチップ型電子部品梱包材は、不燃物を含まず、燃焼させて有害な物質を排出するものでなければ制限はない。ボイラ燃焼灰に混合可能で燃焼灰中の水分を吸収可能であればよい。
【0018】
使用済みチップ型電子部品梱包材の中でもキャリアテープといわれるものは、チップ型電子部品の大きさや用途により紙製のものと合成樹脂製のものがあり、チップ型電子部品梱包材として最も多く使用されているため、大量に発生するが両者が混在し、個別に回収することが困難で、産業廃棄物として処理するしかない状況にある。
紙製以外の合成樹脂製のものでは原料としてポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリウレタン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン、ポリカーボネート、ポリエステルスルホン、フェノールホルムアルデヒド、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、スチレンブタジエンゴム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が使用可能とされおり、中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン等が主に使用されており、これらは燃焼時に4500kcal/kg以上の熱量を発するため、これらの使用済みチップ型電子部品梱包材を、未燃カーボンを含有するボイラ燃焼灰と配合して、燃焼させることにより、発生するエネルギーが有効に利用できる。
【0019】
本発明では未燃カーボンを含有する燃焼灰は水分を20質量%以上含有しているため、配合するチップ型電子部品梱包材には紙製のチップ型電子部品梱包材を30質量%以上含有することが好ましい。紙製のチップ型電子部品梱包材が燃焼灰中に含まれる水分を吸収することで取り扱いが容易になるため30質量%未満では効果が少ないため好ましくない。
【0020】
また、使用済みチップ型電子部品梱包材は1mm〜10mmの大きさに切断あるいは破砕して混合することが好ましい。
使用済みの紙製のチップ型電子部品梱包材が、破砕されて1mm〜10mmの大きさになることによって、吸水する面積が増える点、微細な燃焼灰が表面に付着して飛散しない点で好ましい。更に面積を増やすためには2mm〜5mmが更に好ましい。破砕の方法に制限は無く、一般に廃棄物処理等に利用されている破砕機類などが使用でき、具体的には一軸破砕機、二軸破砕機などを用いて破砕することが可能である。その他、紙やプラスチック類を細かくするためのシュレッダー、粉砕機、等を使用することができるが、細かいサイズになっていれば良く、特に方法を限定するものではない。
【0021】
前記ボイラ燃焼灰と前記使用済みチップ型電子部品梱包材はボイラ燃焼灰有姿100質量部に対して20質量部〜100質量部の割合で混合することが好ましい。配合率が20質量部未満では灰中の残水分が多く扱いにくく、燃焼効率が悪くなるため好ましくない、また100質量部を超えて混合すると、均一に混合できず、また混合物の水分が低すぎて塊状になりやすいため好ましくない。
本発明では破砕したチップ型電子部品梱包材にボイラ燃焼灰が付着して飛散しないため、取り扱いが容易で、燃焼させたときにも凝集していないために燃焼効率がいいと考えられる。
本発明では、チップ型電子部品梱包材とボイラ燃焼灰を混合して再度燃焼させることにより、廃棄物の有効な処理とエネルギーを得ることが可能となる。
【0022】
再度燃焼させる装置については、固体燃料を燃焼できる燃焼装置であれば特に制限は無いが、燃焼温度は800℃〜1,100℃で燃焼することが好ましい。800℃未満では、一般的に知られている通りダイオキシン等の発生が懸念されるため好ましくない。
また1,100℃以上にしてもエネルギーの無駄であるし、炉が痛みやすく好ましくない。
燃焼後の焼却灰は未燃カーボン分を測定し、ドライベースで10質量%以上であれば再度使用済みの電子部品収納梱包材と配合して燃焼させ、未燃カーボン分が10質量%未満であれば、有害物質を除去・封鎖し、セメント材料、土壌改良材、等として利用することが好ましい。
本発明により、ボイラ燃焼灰に含まれる未燃カーボンが有効利用される。
【実施例】
【0023】
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<燃焼灰A>
未燃カーボン分を含む燃焼灰としては、重油焚きボイラにおいて、電気集塵機で集められた燃焼灰と脱硫装置として設けられたスクラバーを循環する水系タンクのスラリーを、固液体分離装置(フィルタープレス)にて処理したものを使用した。この燃焼灰の組成は、50質量%が水であり、残り50質量%の固形分のうちの半分(25質量%分)が未燃カーボンであり、残り半分の25質量%が灰分であった。
【0024】
<使用済みチップ型電子部品梱包材B>
使用済みチップ型電子部品梱包材としては、実際の電子部品実装機(マウンター)の下部のストックボックスに溜まった、使用済みキャリアテープ自動カット品を使用した。このカット品の性状は、紙とプラスチックの割合が質量比で60対40、テープの幅は紙・プラスチックとも8mm前後であり、カット幅長さは5mmであった。
【0025】
<燃焼テスト>
上記燃焼灰Aと、使用済みチップ型部品梱包材Bを、有姿質量で2kgと1kg取って混合し、双腕式ニーダー(混練機)でよく混合した。水分含有率を測定したところ、35質量%であった。このようにして調整したサンプルを合計50kg準備して、蒸気発生量7トン/時の能力を持つバイオマスボイラ(主燃料:木くず、建築廃材)を燃焼温度900℃にて運転中に投入したところ、特に、運転管理上のトラブル等なく、処理することが可能であった。
【0026】
本発明により、従来廃棄物として処理されていた燃焼灰の未燃カーボン、及び、焼却処理等されていた使用済みチップ型部品梱包材、を有効に活用することが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未燃カーボンを含有するボイラ燃焼灰に使用済みチップ型電子部品梱包材を混合し、再度燃焼させることを特徴とするボイラ燃焼灰の処理方法。
【請求項2】
前記使用済みチップ型電子部品梱包材には紙製のチップ型電子部品梱包材を30質量%以上含有することを特徴とする請求項1記載のボイラ燃焼灰の処理方法。
【請求項3】
前記使用済みチップ型電子部品梱包材は1mm〜10mmの長さに破砕されて混合されていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のボイラ燃焼灰の処理方法。
【請求項4】
前記ボイラ燃焼灰は未燃カーボンをドライベースで10質量%以上含有することを特徴とする請求1記載のボイラ燃焼灰の処理方法。
【請求項5】
前記ボイラ燃焼灰は水分を20質量%以上含有することを特徴とする請求項1又は4記載のボイラ燃焼灰の処理方法。
【請求項6】
再度燃焼させる際の燃焼温度が800〜1,100℃である請求項1記載のボイラ燃焼灰の処理方法。

【公開番号】特開2008−196764(P2008−196764A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31767(P2007−31767)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】