説明

ボクセル配列可視化装置

【課題】 PET、SPECTなど核医学診断等により得られたボクセル配列を少ない処理負荷で、好適に可視化することが可能なボクセル配列可視化装置を提供する。
【解決手段】 ボクセル配列可視化装置は、設定されたパラメータに従って視点角を算出し(S1)、ボクセル配列を3次元座標系へ配置した後(S2)、算出した視点角に従って回転を行う(S3)。さらに、視点角に対応して設けられた輝度フレームとZバッファを利用して、Zバッファ法によりボクセル配列の投影処理を行った後(S4)、陰影付加処理を行い(S5)、表示出力手段に合わせて階調変換を行う(S6)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてPET、SPECTなど核医学診断等により得られたボクセル配列構成のボリュームデータを可視化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体内部の3次元的な構造を生体外から非侵襲的にセンシングして画像再構成により断面像を作成する映像化手法が主として医療分野で実用化されている。このような映像化手法には、生体外からX線を照射し、各組織のX線透過率をセンシングして画像を作成するCT(Computed Tomography)、生体外から高周波磁場を照射し、各組織の水分子から放射される電波をセンシングして画像を作成するMRI(Magnetic Resonance Imaging)、生体内に放射性化合物(トレーサ)を注入し、特定の組織に蓄積される化合物から放射されるガンマ線をセンシングして画像を作成するSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)またはPET(Positron Emission Tomography)の3通りがある。
【0003】
CTとMRIは組織のX線透過率や水分子の密度の相違から形状を映像化することができ、いわば生体内地図を作成するのに適している。これに対して、PET/SPECTは、特定の組織に蓄積される化合物の定量値を映像化することができ、地図に例えれば、地区別の交通量分布図を作成するのに適している。
【0004】
上記映像化手法は、いずれも断面像を作成でき、スキャニングヘッドを移動させたり、センサを多列化することにより、連続した複数の断面像で構成されるボクセル画像を作成でき、更に、一定時間ごとに反復スキャンすればボクセル動画も作成できる。しかし、収集された膨大な断面像が並べられても、生体内の立体構造を一瞥するのは難しい。そこで、CT、MRIについては、ボクセル画像に対してボリュームレンダリングを行い、可視化する手法が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
そのため、PETについては、CTまたはMRIで形状を描写した上に、PETの定量値を重ねる合成手法が開発され、PET−CTという双方の画像を同時にスキャニングできる装置も開発された(特許文献2参照)。
【特許文献1】特公平7−120434号公報
【特許文献2】特表2005−518915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のようなボリュームレンダリングをPET/SPECTから得られた情報に対して適用した場合、形状に関する情報が欠落しているため、従来の位置関係を把握し難い映像になってしまうという問題がある。また、このボリュームレンダリングの標準的なアルゴリズムであるレイキャスティング法は計算負荷が大きいという問題もある。
【0007】
また、上記特許文献2のような合成手法は非常に計算負荷が大きく、リアルタイム再生を行うためには専用のミニスーパーコンピュータを必要とする(PETとCTの装置自体が大掛かりなため、現状、計算負荷はあまり問題視されていない。)。上記特許文献2のような合成手法は、CT等の情報がなく、PET単独の情報しか得られない場合には、人体の形状を把握可能に映像化することは困難であるという問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、PET、SPECTなど核医学診断等により得られたボクセル配列を少ない処理負荷で、好適に可視化することが可能なボクセル配列可視化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明では、3次元座標系にボクセル値が定義されたボクセル配列に対して、指定されたアングルで前記ボクセル配列を2次元平面に投影した投影画像データを作成するための可視化装置であって、2次元座標系に輝度値と深さZ値を蓄積するための輝度値バッファおよびZバッファを同一の画素サイズで設定する画像バッファ設定手段と、前記ボクセル配列のボクセルに対して指定されたアングルで3次元座標系上で回転処理を実行する回転処理手段と、回転処理実行後の(x,y,z)座標に対応する各ボクセル値V(x,y,z)について、z値がZバッファに記録された値よりも視点に近い値を有する場合に限り当該z値でZバッファを更新しながら、前記輝度値バッファ上の対応するピクセル(x,y)に各z値に応じたボクセル値を反映させる処理を実行し、前記輝度値バッファのピクセル値V(x,y)を算出する投影処理手段と、前記投影処理手段により算出された前記輝度値バッファ上の各ピクセル値を表示手段の出力階調に合わせるために所定の演算を行う階調変換手段を有するボクセル配列可視化装置を提供する。
【0010】
本発明によれば、ボクセル配列を2次元平面に投影する際に、2次元平面と直行するz軸方向の値を保持するZバッファを用意し、投影するボクセルのz値がZバッファに記録された値よりも視点に近い値を有する場合に限り当該z値でZバッファを更新しながら、ボクセルのz値が視点に近い値を有する場合と、視点から遠い値を有する場合により反映させる度合いを変えて、ボクセル値をピクセル値に反映させるようにしたので、少ない処理負荷で高速にボリュームデータを投影した投影画像を作成することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、少ない処理負荷で高速にボリュームデータを投影した投影画像を作成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(1.装置構成)
まず、本発明に係るボクセル配列可視化装置の構成について説明する。図1は本発明に係るボクセル配列可視化装置の構成図である。図1において、10はボクセル配列記憶手段、20はボクセル変換処理部、30はピクセル変換処理部、40は画像表示手段、50はパラメータ設定手段である。
【0013】
ボクセル配列記憶手段10は、PET、SPECTなどの核医学診断装置により得られた三次元配列(ボクセル配列)のボリュームデータを記憶したものであり、コンピュータに内蔵または接続されたハードディスク等の記憶装置で実現される。ボクセル変換処理部20は、ボクセル配列を三次元のまま変換処理するものであり、空間内配置手段21、視点角算出手段22、回転処理手段23を有している。ピクセル変換処理部30は、ボクセル配列を二次元に変換して、二次元画像として処理するものであり、投影処理手段31、陰影処理手段32、階調変換手段33を有している。画像表示手段40は、ピクセル変換処理部30により得られた結果である輝度フレームデータを表示出力するものであり、液晶ディスプレイその他の表示出力装置により実現される。パラメータ設定手段50は、ボクセル配列に対する処理を特定するためのパラメータを設定するものであり、キーボード、マウス等により実現される。図1に示したボクセル配列可視化装置は、現実には汎用のコンピュータに専用のプログラムを組み込むことにより実現される。
【0014】
ボクセル配列記憶手段10に記憶されたボクセル配列のボリュームデータについて説明する。ボリュームデータは、PET、SPECTなどの核医学診断装置により人体を撮像することにより得られたボクセル配列データである。本実施形態で用いるボリュームデータは、128×128×47画素で、時系列に61回撮像して得られたものとなっている。図2に、本実施形態で用いるボリュームデータの構成を模式的に示す。図2の例では、1つの矩形がXY断面における断面画像を示している。例えば人体頭部の場合、このXY断面画像が同一時刻(T)においてZ軸方向(通常、人体の体軸方向)に47個存在し、このXYZのボクセル配列(三次元配列)が異なる61の時点(T)に対応する数だけ存在する。したがって、時刻Tを特定すると、その時刻における128×128×47ボクセルのボクセル配列が得られることになる。
【0015】
(2.処理動作)
次に、本発明に係るボクセル配列可視化装置の処理動作について説明する。まず、利用者は、パラメータ設定手段50を利用してパラメータの設定を行う。具体的なパラメータとして、ボリュームデータの時刻Tと視点角の設定を行う。時刻Tは、処理対象とすべきボリュームデータを特定するものである。例えば、図2の例では、時刻Tを特定することにより、61個の三次元配列の中から処理対象とする三次元配列が1つに定まる。視点角パラメータとしては、XY平面での回転角Rxy、XZ平面での回転角Rxz、YZ平面での回転角Ryzの3種を設定する。視点角パラメータは、初期位置の視点角、最終位置の視点角を指定するとともに、初期位置から最終位置までのフレーム数を指定することにより設定される。
【0016】
図3は、パラメータ設定後の、ボクセル配列可視化装置の処理動作の概要を示すフローチャートである。パラメータが設定されると、ボクセル配列可視化装置では、まず、視点角算出手段22が、設定されたパラメータに従って視点角を算出する。具体的には、初期フレームを1、視点角パラメータをRxy1、Rxz1、Ryz1とし、最終フレームをFm(指定されたフレーム数)、視点角パラメータをRxy2、Rxz2、Ryz2とした場合、視点角算出手段22は、以下の〔数式1〕に従った処理を実行することにより、各フレームFにおける視点角Rxy、Rxz、Ryzを算出する。
【0017】
〔数式1〕
Rxy=(Rxy2−Rxy1)・(F−1)/(Fm−1)+Rxy1
Rxz=(Rxz2−Rxz1)・(F−1)/(Fm−1)+Rxz1
Ryz=(Ryz2−Ryz1)・(F−1)/(Fm−1)+Ryz1
【0018】
なお、〔数式1〕において、Fはフレーム番号を示す変数であり、1〜Fmの範囲の整数値をとる。最初は、1フレーム目の視点角を算出することになるので、視点角算出手段22は、F=1として、上記〔数式1〕に従った処理を実行し、視点角Rxy、Rxz、Ryzを算出する。
【0019】
パラメータ設定手段50により視点角Rxy、Rxz、Ryzの設定が行われたら、次に、空間内配置手段21が、ボリュームデータの3次元座標系(3次元空間内)への配置を行う(S2)。具体的には、ボクセル配列のサイズを(Sx,Sy,Sz)、Z軸方向のXY座標に対するスケーリング比率をγとすると、時刻TのSx×Sy×Sz個全てのボクセル(x,y,z)を、以下の〔数式2〕のようにして変換し、配置する。
【0020】
〔数式2〕
(x,y,z)→(x−Sx/2,y−Sy/2,(z−Sz/2)γ)
【0021】
〔数式2〕の例では、ボクセル配列の中央が(0,0,0)の原点に位置するように配置を行っている。また、z座標については係数γを乗じているが、これは、スキャナ装置のベッド移動方向の検出器の分解能が断面方向の分解能と一致せず、一般に前者が後者に比べ粗くなることから、ボクセル配列の各ボクセルを空間的に歪の無い立方体形状に見せるため、z値のとり得る範囲をx座標、y座標と合わせるためのものである。例えば、128×128×47ボクセルのボクセル配列を用いる場合、γ=2程度に設定する。γ=2に設定することにより、x、yとの比率は、128:94となり、完全ではないが、各ボクセルは立方体に近い状態となる。ただし、本例のようにスキャンされたボクセル配列が頭部である場合、全体のボクセル配列自体は頭部の幾何形状と相似形になり、γ係数を乗じた後のボクセル配列の形状は一般にZ方向に長めの直方体になる。また、本例のように、128×128×47ボクセルであっても、z方向を、x,y方向と同じ間隔で表示する必要性がなければ、スケーリング比率γを乗じなくても良い。通常、PET、SPECTなどの核医学診断装置により得られたボリュームデータは、x,y,zの各座標が1以上の整数値として設定されているため、本実施形態では、上記〔数式2〕に従った処理を実行しているが、ボクセル配列記憶手段10に記憶されたボリュームデータの中心が(0,0,0)に設定されていれば、上記〔数式2〕に従った処理を実行する必要はない。
【0022】
次に、ボクセル配列回転手段23が、視点位置の変更に伴うボクセル配列の回転を行う(S3)。具体的には、時刻TのSx×Sy×Sz個全てのボクセルV(x,y,z)に対して、設定されたXY面、XZ面、YZ面での回転角Rxy、Rxz、Ryz(各角度の単位をラジアンとする)を用いて、以下の〔数式3〕に従った処理を実行することにより変換する。なお、〔数式3〕第1式における(x,y,z)は〔数式2〕による座標変換後のものであり、第2式における(x,y,z)は第1式による座標変換後のものであり、第3式における(x,y,z)は第2式による座標変換後のものである。したがって、〔数式3〕に示す3つの式の処理順序により処理結果が異なる。本実施形態では、以下に示した第1式(XY平面での回転)、第2式(XZ平面での回転)、第3式(YZ平面での回転)の順序で実行を行うが、必ずしもこの順序で実行する必要はなく、他の順序で実行しても良い。
【0023】
〔数式3〕
(x,y,z)→(x・cosRxy+y・sinRxy,−x・sinRxy+y・cosRxy,z)
(x,y,z)→(x・cosRxz+z・sinRxz,y,−x・sinRxz+z・cosRxz)
(x,y,z)→(x,y・cosRyz+z・sinRyz,−y・sinRyz+z・cosRyz)
【0024】
ボクセル配列回転手段23による回転処理を実行することにより、ボクセル変換処理部20による処理が終わったら、次に、ピクセル変換処理部30による処理を開始する。まず、投影処理手段31が、3次元のボクセル配列を2次元のフレームに投影する処理を行う(S4)。具体的には、ボクセル配列アドレスのフレームアドレスへの変換と、Zバッファ法の実行を行う。フレームアドレスへの変換は、レンダリングするフレームサイズSfx×Sfyに対応させるため、Sfx×Sfyの輝度フレームB(x´,y´)(整数値)とZバッファZ(x´,y´)(実数値)をコンピュータのメモリ内に準備する。輝度フレームBの各ピクセルの輝度値は初期状態では、全ピクセルにおいてB(x´,y´)=0、ZバッファZの各ピクセルの値は初期状態では、全ピクセルにおいてZ(x´,y´)=−∞とする。なお、“−∞”は、理論的な値であり、現実に初期設定する際には、Z(x´,y´)として絶対値が十分に大きい負値を設定する。
【0025】
輝度フレームB、ZバッファZの初期設定が終わったら、投影処理手段31は、以下の〔数式4〕に従った処理を実行し、三次元座標値上のボクセル配列の各ボクセル(x,y,z)に対応するフレームアドレス(x´,y´)を求める。フレームアドレスは、輝度フレームB、ZバッファZにおいて共通である。
【0026】
〔数式4〕
(x,y,z)→(x+Sfx/2,y+Sfy/2,z)
【0027】
輝度フレームB、ZバッファZのフレームアドレスは、ともにx座標、y座標が0以上の整数値であるため、上記〔数式4〕においては、それぞれSfx/2、Sfy/2を加算している。したがって、x´=x+Sfx/2、y´=y+Sfy/2となる。
【0028】
さらに、投影処理手段31は、0〜1の実数値をとる透過率αを定義して、Sx×Sy×Sz個全てのボクセル(x´,y´,z)に対して、いわゆるZバッファ法を実行する。具体的には、投影処理手段31は、以下の〔数式5〕に従った処理を実行する。
【0029】
〔数式5〕
1)z>Z(x´,y´)の場合
B(x´,y´)←αB(x´,y´)/(z−Z(x´,y´))2+V(x´,y´,z)
Z(x´,y´)←z
2)z<Z(x´,y´)の場合
B(x´,y´)←B(x´,y´)+αV(x´,y´,z)/(z−Z(x´,y´))2
3)z=Z(x´,y´)の場合
B(x´,y´)←B(x´,y´)+V(x´,y´,z)
【0030】
上記〔数式5〕から明らかなように、ZバッファZ(x´,y´)については、z>Z(x´,y´)の場合、すなわち三次元空間におけるボクセルが、ZバッファZ(x´,y´)に記録されているz座標値よりもz軸方向において手前側(視点側)にあるときだけ、そのボクセルのz座標値により更新される。したがって、ZバッファZ(x´,y´)の値は、常に大きい値に更新されていく。z≦Z(x´,y´)の場合には、ZバッファZ(x´,y´)の値は、更新されない。
【0031】
続いて、陰影処理手段32が、陰影付加処理を行う(S5)。具体的には、輝度フレームのSfx×Sfyの全ピクセルに対して、ZバッファZ(x´,y´)を参照してシェーディング輝度L(x´,y´)を計算し、既に計算されている輝度フレームBの各ピクセル(x´,y´)の値に乗算して、輝度フレームBの各ピクセル(x´,y´)の値を更新することにより陰影を付加する。
【0032】
ここで、シェーディング輝度L(x´,y´)の算出手法について説明する。ZバッファZ(x´,y´)のある点P(x´,y´)のシェーディング輝度L(x´,y´)を算出する場合を考えてみる。このとき、点Pのx軸方向の両隣、y軸方向の両隣の点を、そのz値を含めて三次元表現した点P-1,0(x´−l,y,zl)、P+1,0(x´+l,y´,zr)、P0,+1(x´,y´+l,zu)、P0,-1(x´,y´−l,zd)の4点を定義する。そして、x軸方向の2点のベクトルU=P+1,0−P-1,0=(2,0,zr−zl)、y軸方向の2点のベクトルV=P0,+1−P0,-1=(0,2,zu−zd)を算出する。
【0033】
点Pにおける法線ベクトルNは、上記ベクトルUとベクトルVの外積として求められる。したがって、N=U×V=(−2(zr−zl),−2(zu−zd),4)=(zl−zr,zd−zu,2)となる。一方、シェーディング輝度L(x´,y´)と平行光源ベクトル、法線ベクトルの間では、以下の〔数式6〕に示す関係が成り立つ。なお、平行光源ベクトルは、事前に設定されるものであり、本実施形態では、(1,1,1)として設定されている。
【0034】
〔数式6〕
L(x´,y´)・cosθ=(平行光源ベクトルと法線ベクトルNの内積)
【0035】
上記の例では、L(x´,y´)・cosθ=(zl−zr+zd−zu+2)/[(zl−zr)2+(zd−zu)2+4)]1/2/31/2となる。したがって、シェーディング輝度計算手段33は、この数式に従った処理を実行することにより、各ピクセル(x´,y´)におけるシェーディング輝度L(x´,y´)を算出する。上述のように、シェーディング輝度計算手段33は、算出された各ピクセル(x´,y´)のシェーディング輝度L(x´,y´)を、輝度フレームB上の各ピクセル(x´,y´)の輝度値に乗じ、輝度フレームB上の各ピクセル(x´,y´)の輝度値を、陰影を含む値として更新する。
【0036】
次に、階調変換手段32が、輝度フレームの階調変換を行う(S6)。具体的には、輝度フレームBのSfx×Sfyの各ピクセル値B(x´,y´)に対して、適当な係数βを設定し、以下の〔数式7〕に従った処理を実行し、0〜255の値をもつ256階調の整数値に変換する。βの具体的な決定は、実際にボリュームデータの表示出力を数回行い、輝度フレームB上の画素(x´,y´)の大部分の画素が256未満となるように経験的に探し出すことにより行う。また、幾つかの画素は256を超えてもよいが、それらの画素値は一律255に制限する。
【0037】
〔数式7〕
B(x´,y´)>0の場合、B(x´,y´)=256・β・B(x´,y´)+1
B(x´,y´)≦0の場合、B(x´,y´)=0
【0038】
このようにして輝度フレームB上のピクセルに得られた輝度値の集合が、投影画像データとなる。得られた投影画像データは、画像表示手段40に表示され、ボリュームデータが投影された状態が確認できる。1つの視点角における投影処理が終わったら、ボクセル配列可視化装置は、全ての視点角について処理を終了したかどうかを判断する。具体的には、フレームの番号を示すFが指定されたフレーム数Fmに達したかどうかを判断する。判断の結果、FがFm未満である場合、Fの値を1つ加算した後S1に戻り、次のフレームの処理を行う。
【0039】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、シェーディング輝度計算手段33により、シェーディング輝度L(x´,y´)を計算し、これを輝度フレームの各画素値B(x´,y´)に乗じるようにしたが、必ずしもシェーディング輝度L(x´,y´)を乗じなくても良い。シェーディング輝度を乗じた場合、陰影が付加され、より立体的な投影画像の作成が可能となるが、陰影が付加されなくても、本発明のボクセル配列可視化装置は、ボクセル配列から投影データを高速に作成するという効果を有する。
【0040】
また、上記実施形態では、視点角を変化させて投影する処理を順次行うことにより、ある固定した位置の配置されたボクセル配列を、周りを動きながら見ているような映像が得られることになる。この場合、各フレームの投影処理が遅くなると、動きが鈍い動画になるため、本発明による高速な処理が効果を発揮する。視点角を変化させず、指定された1つの視点角だけで表示した場合であっても、従来の投影処理に比べて、ボクセル配列から投影データを高速に作成するという効果は得られる。
【0041】
(3.時系列のデータ全体を処理対象とする場合)
上記実施形態では、時刻Tを特定した場合のボクセル配列を処理対象とした場合について説明したが、図2に示したような時系列のボクセル配列セット全てを処理対象とすることも可能である。この場合、フレーム1として時刻T=1のボクセル配列を投影して可視化し、フレーム2として時刻T=2のボクセル配列を投影して可視化するというように、順にフレームFmとして時刻T=Fm(図2の例では61)のボクセル配列を投影して可視化する処理までを行う。視点角は上記実施形態のように、変化させても良いし、固定させておいても良い。
【0042】
ボクセル配列セット全てを処理対象とする場合、基本的な処理の流れは、図3のフローチャートに示したものと同様であるが、S6の階調変換処理の後、処理全体を終了するかどうかの判断は、全時刻Tのボクセル配列の処理を終えたかどうかにより行われる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係るボクセル配列可視化装置の構成図である。
【図2】本実施形態で用いるボリュームデータの構成を模式的に示す図である。
【図3】ボクセル配列可視化装置の処理動作の概要を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
10・・・ボクセル配列記憶手段
20・・・ボクセル変換処理部
21・・・空間内配置手段
22・・・視点角算出手段
23・・・ボクセル配列回転手段
30・・・ピクセル変換処理部
31・・・投影処理手段
32・・・陰影処理手段
33・・・階調変換手段
40・・・画像表示手段
50・・・パラメータ設定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元座標系にボクセル値が定義されたボクセル配列に対して、指定された視点角に従って前記ボクセル配列を2次元平面に投影した投影画像データを作成するための可視化装置であって、
2次元座標系に輝度値を蓄積するための輝度フレームと、
前記輝度フレームと同一のピクセルサイズであって、深さZ値を蓄積するためのZバッファと、
前記ボクセル配列に対して、指定された視点角で3次元座標系上で回転処理を実行するボクセル配列回転手段と、
回転処理実行後の(x,y,z)座標に対応する各ボクセル値V(x,y,z)について、z値がZバッファに記録された値よりも視点に近い値を有する場合に限り当該z値でZバッファを更新しながら、前記輝度フレームの対応するピクセル(x´,y´)に各z値に応じたボクセル値を反映させる処理を実行し、前記輝度フレームの各ピクセルの輝度値V(x´,y´)を算出する投影処理手段と、
前記投影処理手段により算出された前記輝度フレームの各ピクセルの輝度値を表示手段の出力階調に合わせるために所定の演算を行う階調変換手段と、
を有することを特徴とするボクセル配列可視化装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記投影処理手段により得られた輝度フレームの各ピクセルの輝度値について、当該ピクセルおよび周辺ピクセルの前記Zバッファの値に基づいて法線ベクトルを算出し、事前に設定された平行光源ベクトルとの内積として算出される当該画素の陰影輝度値を乗じる陰影処理手段をさらに有し、陰影処理手段による処理後の輝度フレームの各ピクセルの輝度値に対して、前記階調変換手段が処理を行うものであることを特徴とするボクセル配列可視化装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記投影処理手段は、前記輝度フレーム上の対応するピクセル(x,y)に各z値に応じたボクセル値を反映させる際に、その時点におけるZバッファの値と前記z値の距離に基づいて反映させる値を定めることを特徴とするボクセル配列可視化装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかにおいて、
前記視点角は、三次元座標系においてXY平面上の回転角、XZ平面上の回転角、YZ平面上の回転角の3種類の角度を設定することにより指定され、前記ボクセル配列回転手段は、設定された順序に従って前記3平面上の回転を順次行うことを特徴とするボクセル配列可視化装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかにおいて、
前記視点角を時系列に連続的に変化させて複数指定する視点角算出手段をさらに有し、
指定された視点角について前記ボクセル配列回転手段が処理を実行することを特徴とするボクセル配列可視化装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかにおいて、
あらかじめ時系列に複数セットのボクセル配列が定義されたボクセル配列セットの中から指定された時刻の範囲内で複数セットのボクセル配列を順次抽出し、前記抽出した複数の各ボクセル配列に対して処理を実行し、各ボクセル配列に対する輝度値を順次算出することを特徴とするボクセル配列可視化装置。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1から請求項6のいずれかに記載のボクセル配列可視化装置として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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