説明

ボックス配設装置及び配線用ボックス

【課題】配線用ボックスをボックス固定具の固定部にビスで固定した後に配線用ボックスの位置調整を行う必要がある場合、その位置調整を簡便に行うこと。
【解決手段】配線用ボックス12とボックス固定具13とからなるボックス配設装置11において、配線用ボックス12は底壁21の周縁から側壁22a〜22dが立設された有底箱状に形成され、側壁22a及び側壁22cにはボス部25が突出形成されている。また、ボックス固定具13は、軽量形鋼材Pに取り付けられる取付部14及び、該取付部14から延設されるとともにビスVが強制的に螺入されるビス孔16が貫通形成され、配線用ボックス12が固定される固定片15とを備えている。そして、配線用ボックス12の底壁21には、ビスVを挿通させつつ固定片15のビス孔16に強制的に螺入させるための挿通孔26が貫設されているとともに、該挿通孔26は長孔状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の造営材を間隔をおいて立設し、前記複数の造営材を挟むように壁材を立設してなる間仕切壁内に設置されるボックス配設装置及び配線用ボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に軽量間仕切壁は、間隔をおいて立設された複数の軽量形鋼材(造営材)を挟むように壁材が立設されて構築されるものである。この軽量間仕切壁を構築するには、まず、略コ字状をなす長尺状のランナーを、天井と床のそれぞれに該ランナーの開口が互いに対向するように固定する。次に、上下両ランナーの内側に各軽量形鋼材の上下両端部をそれぞれ差し込み、次いで、立設される壁材に合わせて軽量形鋼材をランナーの長さ方向へスライド移動させて位置調整し、その調整された位置で壁材を軽量形鋼材及びランナーに固定することにより、軽量間仕切壁が構築される。このような軽量間仕切壁に配線用ボックスを設置するための固定具として、軽量形鋼材に取り付けられるボックス固定具が提案されている(例えば、特許文献1。)。
【0003】
特許文献1のボックス固定具は、軽量形鋼材にビスによって取り付けられる取付部と、軽量形鋼材に取り付けた状態で該取付部から軽量形鋼材の立設方向に対し交差する方向へ延びる細長板状をなし、前記配線用ボックスが取り付けられる固定部とを備えている。固定部には、延設方向に沿って連続又は断続してビス孔が長孔状に形成されている。そして、ビスを配線用ボックスの底壁に設けられた挿通孔に挿通させつつ、ビス孔に強制的に螺入させることで、配線用ボックスを固定部に固定することができる。また、ビス孔が長孔状に形成されていることで、ビス孔へのビスの螺入位置を変更することで配線用ボックスの取付け位置を固定部の延設方向に対して変更可能となっている。配線用ボックスをボックス固定具に固定した後は、軽量形鋼材の両面に壁材を立設して軽量間仕切壁を形成する。軽量間仕切壁に配線器具を設置するには、壁材の配線用ボックスに対応した位置に配線孔を貫設して、配線用ボックスを壁材の表側に臨ませ、配線器具の設置を行う。
【特許文献1】特開平10−219887
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、貫設した配線孔と軽量間仕切壁内の配線用ボックスの位置がずれてしまっている場合、壁裏側にある配線用ボックスの位置調整をする必要がある。しかしながら、配線用ボックスの挿通孔は丸孔に形成されている。また、ビスは固定部のビス孔に強制的に螺入されて移動不能に固定されている。したがって、配線用ボックスを固定部にビスで固定した後に配線用ボックスの位置を調整するには、ビスを固定部のビス孔及び配線用ボックスの挿通孔から抜き取らなければならなかった。
【0005】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、配線用ボックスをボックス固定具の固定部にビスで固定した後に配線用ボックスの位置調整を行う必要がある場合、その位置調整を簡便に行うことができるボックス配設装置及び配線用ボックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数の造営材を間隔をおいて立設し、前記複数の造営材を挟むように壁材を立設してなる間仕切壁内に配線用ボックスを配設するために形成されるボックス配設装置であって、底壁の周縁から側壁が立設されて有底箱状に形成され、対向する一対の前記側壁の内面に、それぞれ前記側壁に対して垂直となるように前記配線用ボックスの内側に向かってボス部が突出形成された前記配線用ボックスと、前記造営材に取り付けられる取付部を有し、さらに、前記取付部から延設されるとともにビスが強制的に螺入されるビス孔が形成され、前記配線用ボックスが固定される固定部を有するボックス固定具とからなり、前記配線用ボックスの前記底壁には、前記ビスを、前記底壁を貫通させて前記固定部の前記ビス孔に螺入させる挿通孔が貫設され、前記挿通孔は、前記配線用ボックスが前記固定部に固定された状態において、前記造営材に取り付けられた取付部からの前記固定部の延設方向に沿って細長に延びるように長孔状に形成されていることを要旨とした。
【0007】
請求項6に記載の発明は、複数の造営材を間隔をおいて立設し、前記複数の造営材を挟むように壁材を立設してなる間仕切壁内に配設される配線用ボックスであって、前記造営材に取り付けられる取付部と、前記取付部から延設され、ビスが強制的に螺入されるビス孔が形成された固定部とを有するボックス固定具の前記固定部に固定されて前記間仕切壁内に配設されるとともに、底壁の周縁から側壁が立設されて有底箱状に形成され、対向する一対の前記側壁の内面に、それぞれ前記側壁に対して垂直となるように前記配線用ボックスの内側に向かってボス部が突出形成されており、さらに前記底壁には、前記ビスを、前記底壁を貫通させて前記固定部の前記ビス孔に螺入させる挿通孔が貫設されるとともに、前記挿通孔は、長孔状に形成されていることを要旨とした。
【0008】
請求項1及び請求項6に記載の発明によれば、挿通孔からビス孔にビスが強制的に螺入され、ビスが固定部に対し移動不能に固定されていても、挿通孔が長孔状に形成されていることから、ビスが底壁を貫通していても配線用ボックスを長孔の延びる方向に沿って移動させることができる。したがって、配線用ボックスを固定部にビスで固定した後に配線用ボックスの位置調整を行う必要がある場合、ビスをビス孔に螺入したまま調整作業を行うことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のボックス配設装置において、前記挿通孔は、前記側壁からの前記ボス部の突出方向に対して直交する方向に沿って細長に延びるように形成されていることを要旨とした。
【0010】
これによれば、側壁からのボス部の突出方向に対して直交する方向、すなわち固定部の延設方向に沿って配線用ボックスの位置調整を行うことができる。一般に、配線用ボックスは、一対の突出部が上下に位置するように固定部に固定される。このため、ボス部の突出方向に対して直交する方向に挿入孔が延びることにより、挿通孔は左右方向へ延びることとなる。よって、配線用ボックスを左右方向へ移動させて位置調整を行うことができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のボックス配設装置において、前記挿通孔は、前記側壁からの前記ボス部の突出方向に対して直交する方向に沿って断続的に複数形成されていることを要旨とした。
【0012】
これによれば、配線用ボックスを、複数の挿通孔にビスをそれぞれ挿通させつつ、該ビスをビス孔に螺入して固定できる。このため、ビスによって配線用ボックスを固定部に固定する際、配線用ボックスを複数のビスで固定部に支持された状態とすることができる。よって、例えば1本のビスで配線用ボックスを固定部に固定する場合のように、1本のビスを回転中心として配線用ボックスが回転されることを防止できる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のボックス配設装置において、前記挿通孔は、前記側壁からの前記ボス部の突出方向に沿った前記配線用ボックスの長さの中央に形成されていることを要旨とした。
【0014】
これによれば、挿通孔から固定部のビス孔にビスを螺入するだけで、ボス部の突出方向に沿った配線用ボックスの長さの中央に固定部が配置された状態で、配線用ボックスを固定部に固定することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のボックス配設装置において、前記配線用ボックスの前記底壁には、前記取付部からの前記固定部の延設方向に延びる側縁に係合して、該延設方向に沿った前記配線用ボックスの移動をガイドするガイド部が形成されていることを要旨とした。これによれば、固定部の延設方向に沿って配線用ボックスを移動させるとき、配線用ボックスをガイド部によってガイドすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、配線用ボックスをボックス固定具の固定部にビスで固定した後に配線用ボックスの位置調整を行う必要がある場合、その位置調整を簡便に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を具体化したボックス配設装置及び配線用ボックスの一実施形態を図1〜図6にしたがって説明する。なお、以下の説明において、図1に示す矢印Y1の方向を上下方向とし、図1に示す矢印Y2の方向を左右方向とする。
【0018】
まず、間仕切壁としての軽量間仕切壁Wについて説明する。図1に示すように、軽量間仕切壁Wは、天井と床に固定される上下一対のランナー(いずれも図示せず)と、該ランナー間に立設された複数の造営材としての軽量形鋼材P(図1では1本の軽量形鋼材Pのみ図示)と、該軽量形鋼材Pを挟むようにして立設される壁材Waとから構築されている。前記壁材Waは石膏ボードが用いられる。前記ランナーは長尺状をなすとともに、ランナーの長さ方向に対して直交する断面視がコ字状をなし、長さ方向へ延びる開口を有する。そして、ランナーが天井と床それぞれに固定された状態では、両ランナーの開口が互いに対向している。前記軽量形鋼材Pは、薄鋼板からなり、軽量形鋼材Pの立設方向(矢印Y1に示す上下方向)に対して直交する方向(矢印Y2に示す左右方向)への平断面視が略C字状をなすC型鋼である。
【0019】
上記軽量間仕切壁W内において、軽量形鋼材Pの側面にはボックス固定具13が取り付けられるとともに、ボックス固定具13には配線用ボックス12が固定されて、配線用ボックス12が軽量間仕切壁W内に配設されている。そして、配線用ボックス12とボックス固定具13によって、軽量間仕切壁W内に配線用ボックス12を配設するためのボックス配設装置11が形成されている。
【0020】
次に、上記軽量間仕切壁Wに配線用ボックス12を配設するために、前述の軽量形鋼材Pに取り付けられるボックス固定具13について詳細に説明する。
図1及び図4に示すように、ボックス固定具13は、薄鋼板を折り曲げて細長板状に形成されている。該ボックス固定具13の一端には、矩形板状の取付部14が設けられるとともに、前記取付部14の一側縁からは細長板状をなす固定部としての固定片15が取付部14に対し直交するように延設されている。取付部14には、複数の固定孔14aが貫通形成(本実施形態では2つ)されている。ここで、取付部14から固定片15が延設される方向を、固定片15の延設方向(図4において矢印Y3に示す方向)とし、該延設方向に直交する方向(図4において矢印Y4に示す方向)を固定片15の幅方向とする。なお、ボックス固定具13を軽量形鋼材Pに取り付けた状態において、図4の矢印Y3,矢印Y4に示す方向は、それぞれ図1の矢印Y2,矢印Y1に示す方向と同一となる。
【0021】
該固定片15の延設方向へ延びる両側縁には、リブ15aが折り曲げ形成されている。固定片15及びリブ15aによって、側面視凸台形の雄型形状をなしている。固定片15には、固定片15の延設方向へ延びる複数のビス孔16(本実施形態では2つ)がスリット状に形成されているとともに、各ビス孔16は固定片15の幅方向に沿った長さの中央に形成されている。図5(a)に示すように、各ビス孔16の固定片15の幅方向に沿った長さは、ビス軸Vaの直径よりも僅かに狭く形成されている。そして、各ビス孔16は、固定片15に配線用ボックス12を固定するために、ビスVが螺入されるようになっている(図1及び図5参照)。
【0022】
また、図1に示すように、上記構成のボックス固定具13は、前記取付部14の固定孔14aから軽量形鋼材Pの側面としての柱側面Paにタッピンねじ17をねじ込むことにより、該軽量形鋼材Pに取り付けることができるようになっている。この取付け状態では、固定片15が軽量形鋼材Pの立設方向に対して直交する方向(矢印Y2の方向)へ延びるようになっている。
【0023】
次に、配線用ボックス12について詳細に説明する。図2及び図3に示すように、合成樹脂製の配線用ボックス12は、四角板状をなす底壁21と、該底壁21の四側周縁から立設された側壁22a〜22dとから有底四角箱状に形成されている。ここで、配線用ボックス12は、図1に示すように、底壁21の外面側の面をボックス固定具13の固定片15に当接させた状態で固定されるとともに、その固定された状態で側壁22aが上に、側壁22cが下に、側壁22bが右に、側壁22dが左に配設される。
【0024】
図2及び図3(b)に示すように、側壁22a〜22dには、丸孔状をなす接続孔23がそれぞれ2つずつ穿設されている。底壁21には、その中央に1つの接続孔23が穿設され、さらに2つの接続孔23が前記中央の接続孔23を中心とした点対称となるように、かつ、底壁21の略対角線上に位置するように穿設されている。接続孔23は、未使用の場合は閉鎖部材24によって閉鎖されている。また、対向する側壁22a及び側壁22cの内面には、それぞれボス部25が、側壁22a又は側壁22cに対して垂直となるように配線用ボックス12の内側に向かって突出するように形成されている。なお、以下の説明において、側壁22a及び側壁22cからボス部25が突出する方向を、ボス部25の突出方向とする。ボス部25の突出方向は、配線用ボックス12をボックス固定具13に固定した状態で上下方向(図1で矢印Y1に示す方向)となる。そして、該ボス部25に取り付けられたボックスカバー(図示せず)に配線器具(図示せず)が取り付けられ、該配線器具が配線用ボックス12に取り付けられる。
【0025】
図3(a)に示すように、底壁21には、底壁21の中央に配設された接続孔23を挟んで対向するように、2つの挿通孔26が長孔状に貫設されている。また、2つの挿通孔26はいずれも、側壁22b又は側壁22dが立設されている底壁21の2つの縁辺の中点を結ぶ直線上に配置されているとともに、該直線に沿って細長に延びるように配設されている。つまり、挿通孔26は底壁21の、ボス部25の突出方向に沿った配線用ボックス12の長さの中央に形成されているとともに、ボス部25の突出方向に対して直交する方向に沿って細長に延びるように形成されている。
【0026】
このような位置に形成された挿通孔26は、図1に示すように、配線用ボックス12がボックス固定具13に固定された状態で左右方向(矢印Y2の方向)に延びるように配設されている。すなわち、挿通孔26は、固定片15の延設方向に沿って延びるように配設されている。また、挿通孔26は、配線用ボックス12がボックス固定具13に固定された状態で軽量形鋼材Pの立設方向(矢印Y1の方向)に沿った配線用ボックス12の長さの中央に配設されている。すなわち、固定片15の延設方向に対して直交する方向に沿った配線用ボックス12の長さの中央に配設されている。図5(a)に示すように、各挿通孔26の短辺方向に沿った幅は、配線用ボックス12をボックス固定具13に固定する際に使用するビスVのビス軸Vaの直径よりも僅かに大きく形成されている。
【0027】
図2及び図3(b)に示すように、底壁21の外面側には、ガイド部としての位置決め部27が凹設されているとともに、該位置決め部27は側壁22bが立設された縁辺から側壁22dが立設された縁辺まで一定の幅で細長帯状に延びるように形成されている。ここで、位置決め部27の長さ方向を長辺方向とし、該長辺方向に直交する方向を短辺方向とする。
【0028】
位置決め部27において、底壁21に形成された2つの挿通孔26は、該位置決め部27の短辺方向に沿った長さの中央にそれぞれ配設されるように形成されている。本実施形態において、各挿通孔26は、底壁21における側壁22a,側壁22c側の縁辺からの距離が等しい位置にある直線上に配設されている。そのため、位置決め部27も、底壁21における側壁22a,22c側の縁辺からの距離が等しい位置に配設されることになる。
【0029】
また、位置決め部27は、位置決め部27の外面側に開口する幅より底部27aの幅のほうが狭くなるよう、テーパ部27bによって開口から底部27aに向けて短辺方向の長さが減少させられるように形成されている。つまり、位置決め部27は、テーパ部27b及び底部27aによって側面視台形となっている。位置決め部27を形成する底部27aの短辺方向に沿った長さは、前記ボックス固定具13の固定片15の幅方向に沿った長さより僅かに広く形成されている。さらに、固定片15の両側縁に形成されたリブ15aの傾斜角度は、位置決め部27のテーパ部27bの傾斜角度と略同一としてある。すなわち、位置決め部27を側面視凹台形の雌型形状とした場合、固定片15及びリブ15aは該形状に対応する側面視凸台形の雄型形状をなして、位置決め部27とリブ15aを備えた固定片15は係合可能に形成されている。
【0030】
次に、ボックス配設装置11を用いて配線用ボックス12を軽量間仕切壁W内に配設する方法について説明する。なお、軽量間仕切壁Wは複数の軽量形鋼材Pを立設してなるが、図1においては1本の軽量形鋼材Pのみを図示する。
【0031】
まず、略コ字状をなす長尺状のランナーを、天井と床のそれぞれに該ランナーの開口が互いに対向するように固定する(いずれも図示せず)。そして、上下両ランナーの内側に軽量形鋼材Pの上下両端部をそれぞれ差し込んで立設する。このとき、該軽量形鋼材Pはランナーに対して固定されず、ランナーの長さ方向(図1において矢印Y2で示す左右方向)へスライド移動可能に支持されている。また、このとき、軽量形鋼材Pの柱側面Paが同じ方向に向けられるとともに、前記壁材Waが設置される側の柱側面Pbは、それぞれ同一平面上に配置される。
【0032】
図1に示すように、軽量形鋼材Pの柱側面Paには、ボックス固定具13の取付部14がタッピンねじ17によって取り付けられる。なお、取付部14は、固定片15に配線用ボックス12を固定したとき、該配線用ボックス12の開口端が軽量形鋼材Pにて1つの壁材Waが設置される側の柱側面Pbと略同一平面上に位置するように、柱側面Paへの取付け位置が調整して取り付けられる。また、ボックス固定具13は、固定片15が設計図で指定された配線孔における軽量形鋼材Pの立設方向に沿った長さの中央に位置するように、取付部14の柱側面Paへの取付け位置が調整して取り付けられる。この取付け状態において、ボックス固定具13の固定片15は、軽量形鋼材Pの立設方向に対して直交する方向(図1において矢印Y2で示す左右方向)へ延びるようになっている。また、壁材Waが設置された後は、固定片15は壁材Waの壁面に対して平行をなすように該壁面に沿って延びるようになっている。
【0033】
次に、図1に示すように、配線用ボックス12をボックス固定具13の固定片15に固定する。まず、ボス部25が設けられた側壁22a及び側壁22cをそれぞれ上下に配置し、かつ、挿通孔26を左右方向へ延びるように配置した状態で、位置決め部27の長辺方向と、固定片15の延設方向とを一致させ、嵌め込むようにして該位置決め部27のテーパ部27bと固定片15のリブ15aとを係合させる。この状態では、固定片15のビス孔16と、配線用ボックス12の挿通孔26とは、同一直線上に配置されることになる。
【0034】
図1、図5(a)及び図5(b)に示すように、ドライバといった工具を使用して、ビスVを挿通孔26に挿通させつつ、ビス軸Vaをビス孔16内で螺入方向へ回転させる。すると、図5(a)及び図5(b)に示すように、ビス孔16の幅はビス軸Vaの直径よりも狭く形成されていることから、ビス軸Vaはビス孔16に強制的に螺入されることとなる。続けて、図5(b)に示すように、さらにドライバを操作してビスVの座面によって配線用ボックス12の底壁21が、固定片15に密着された状態になるまでビスVを螺入させる。また、もう1つの挿通孔26に対しても、同様にビスVを挿通させつつ、ビスVをビス孔16に螺入させる。以上で、配線用ボックス12をボックス固定具13(固定片15)に固定する作業が終了する。
【0035】
次いで、立設される壁材Waに合わせて軽量形鋼材Pをランナーの長さ方向へスライド移動させて位置調整した後、図1に示すように、その調整された位置で壁材Waを軽量形鋼材P及びランナーにビス(図示せず)で固定することにより、軽量間仕切壁Wを構築する。
【0036】
そして、柱側面Pb側に立設された壁材Waの、配線用ボックス12が固定された場所に対応する位置に配線孔(図示せず)を貫設して、配線用ボックス12を壁材Waの表側に臨ませる。この際、軽量間仕切壁W内に配設された配線用ボックス12の位置からずれた位置に、配線孔を設けてしまう場合がある。また、壁材Waを軽量形鋼材P及びランナーに固定する際、軽量形鋼材Pがランナーに沿ってスライド移動し、該軽量形鋼材Pに固定された配線用ボックス12が、設計図で指定された位置から移動してしまうことがある。このため、設計図で指定された位置に配線孔を貫設すると、該配線孔の位置から配線用ボックス12がずれてしまっている場合がある。
【0037】
その他、壁材Waを立設した後に設計変更がなされ、配線用ボックス12の配設位置を変更しなくてはならない場合も考えられる。この場合にも、貫設する配線孔と配線用ボックス12の位置がずれてしまうことになる。
【0038】
このように配線用ボックス12と配線孔の位置がずれてしまっている場合には、以下に述べる手順にしたがって配線用ボックス12の位置調整を行う。すなわち、ドライバといった工具を配線孔の開口部から配線用ボックス12内に差し込み、図5(c)に示すように、ビスVをビス孔16への螺入方向とは逆に回転させて緩め、ビスVの座面と固定片15との間に底壁21の厚みより広い隙間を形成する。そして、図6に示すように、配線用ボックス12を挿通孔26に沿って固定片15の延設方向(図1において矢印Y2で示す左右方向)、すなわちボス部25の突出方向に対して直交する方向に移動させて、配線孔と配線用ボックス12の位置を一致させる。このとき、位置決め部27と固定片15とが係合していることによって、配線用ボックス12の移動は固定片15の延設方向に沿ってガイドされる。なお、配線用ボックス12の位置調整は、ビスVを配線用ボックス12の底壁21を貫通させた状態、かつビスVがビス孔16に対して移動不能に螺入された状態のまま行う。そして、位置調整後はドライバといった工具を使用して再びビスVをビス孔16に螺入させて、配線用ボックス12を固定片15に固定する。次いで、配線器具の設置を行う。
【0039】
したがって、本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)挿通孔26は、ボス部25の突出方向に対して直交する方向に沿って細長に延びるように形成されている。すなわち、配線用ボックス12がボックス固定具13の固定片15に固定された状態において、軽量形鋼材Pに取り付けられた取付部14からの固定片15の延設方向に沿って細長に延びるように形成されている。これにより、挿通孔26からビス孔16にビスVが強制的に螺入され、ビスVが固定片15に対して移動不能に固定されていても、ビスVが底壁21を貫通した状態のまま、配線用ボックス12を挿通孔26の延びる方向、すなわち固定片15の延設方向に沿って移動させることができる。したがって、配線用ボックス12をボックス固定具13の固定片15にビスVで固定した後に、配線用ボックス12の位置調整を行う必要がある場合、ビスVをビス孔16に螺入したまま調整作業を行うことができる。なお、本実施形態のボックス配設装置11を用いない場合、壁材Waを立設後、貫設した配線孔と配線用ボックス12の位置を調整する際にはビスVをビス孔16から完全に抜き取る必要があった。また、ビスVを全てビス孔16から抜き取ってしまうと、配線用ボックス12がボックス固定具13に対して固定されていない状態となり、2枚の壁材Waを立設して構築された軽量間仕切壁W内に落下してしまう虞があった。本実施形態のボックス配設装置11を用いれば、そのような虞がなく簡便にその位置調整を簡便に行うことができる。
【0040】
(2)配線用ボックス12の底壁21には、ボス部25の突出方向に対して直交する方向に沿って2つの挿通孔26を設けた。これにより、配線用ボックス12は、2つの挿通孔26をそれぞれ貫通するようにビスVが挿通されつつ、ビスVがビス孔16に螺入されて固定される。したがって、1つのビスVを回転中心として配線用ボックス12が回転されることを防止できる。
【0041】
(3)底壁21の位置決め部27と、リブ15aを備えた固定片15とを係合させて、配線用ボックス12を配設するようにした。これにより、固定片15の延設方向に沿って配線用ボックス12を移動させるとき、配線用ボックス12を位置決め部27によってガイドすることができる。したがって、配線用ボックス12の位置調整が容易になる。
【0042】
(4)挿通孔26を位置決め部27の短辺方向に沿った長さの中央に形成するとともに、ビス孔16を固定片15の幅方向に沿った長さの中央に形成した。これにより、固定片15と位置決め部27を係合させるだけで、挿通孔26とビス孔16の位置を一致させることができる。したがって、ビスVを挿通孔26に挿通させつつビス孔16に螺入させやすくなり、配線用ボックス12をボックス固定具13の固定片15に簡便に取り付けることができる。
【0043】
(5)挿通孔26は、ボス部25の突出方向に沿った配線用ボックス12の長さの中央に設けた。これによれば、配線用ボックス12を固定片15に安定した状態で固定できる。また、ボックス固定具13を、固定片15が設計図で指定された配線孔における軽量形鋼材Pの立設方向に沿った長さの中央に位置するように、軽量形鋼材Pに取り付けることで、配線用ボックス12を設計図で指定された位置に容易に配設することができる。
【0044】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 本実施形態では、軽量形鋼材PとしてC型鋼を用いたが、断面四角枠状をなす角型鋼を用いてもよい。また、造営材として軽量形鋼材Pにかえて、木柱を用いてもよい。
【0045】
○ 位置決め部27は削除してもよい。
○ 配線用ボックス12の底壁21は、配線用ボックス12の底面全体に形成されていなくてもよい。例えば、底壁21を挿通孔26の延びる方向に沿って一定の幅で細長帯状に形成してもよい。このようにしても、挿通孔26の延びる方向に対して配線用ボックス12の位置調整をすることができる。
【0046】
○ 挿通孔26は、ボス部25の突出方向に沿って細長に延びる形状としてもよい。このように形成することで、固定片15の延設方向に対して直交する方向(図1の矢印Y1に示す上下方向)に位置調整をすることができる。この場合、位置決め部27はないほうが好ましい。
【0047】
○ 挿通孔26はボス部25の突出方向に対して直交する方向に沿って細長に延びる形状ではなく、2つの長孔を直交させるように組み合わせた十字状に貫設してもよい。このように構成することで、配線用ボックス12は、固定片15の延設方向に沿うように位置調整できるほか、固定片15の延設方向に対して直交する方向(図1の矢印Y1に示す上下方向)にも位置調整をすることができる。この場合、位置決め部27はないほうが好ましい。
【0048】
○ 挿通孔26は配線用ボックス12に1つだけ設けるようにしてもよい。このように構成しても、挿通孔26の延びる方向に対して配線用ボックス12の位置調整をすることができる。
【0049】
○ 挿通孔26は、3つ以上設けてもよく、また、同一直線上に配置されていなくてもよい。すなわち、長孔状に形成された複数の挿通孔26が平行に形成されておればよい。このように構成しても、挿通孔26の延びる方向に対して配線用ボックス12の位置調整をすることができる。
【0050】
○ 挿通孔26は、ボス部25の突出方向に沿った配線用ボックス12の長さの中央に配設しなくてもよい。この場合、挿通孔26の位置変更にあわせて位置決め部27の配設位置も変更するのが好ましい。
【0051】
○ 1つの挿通孔26に対して複数のビスVを挿通させつつ、ビス孔16に螺入させてもよい。
○ 位置決め部27は、位置決め部27の短辺方向に沿った長さの中央以外の箇所に、挿通孔26が配置されるように形成してもよい。この場合、固定片15の幅方向に対するビス孔16の位置を、位置決め部27の短辺方向に対する挿通孔26の位置に対応させることが好ましい。
【0052】
○ 位置決め部27は、テーパ部27bを削除して、開口する幅と底部27aの幅を同一としてもよい。この場合、固定片15が位置決め部27に対応した形状となるよう、リブ15aは固定片15の幅方向に対して直角に折り曲げて形成するのが好ましい。
【0053】
○ 位置決め部27は、ボス部25の突出方向に対して直交する方向に沿うように延設され、底壁21の外面側に固定片15の幅方向に沿った長さに対応した距離だけ相互に離間させて形成された2本の凸条としてもよい。また、凸条に代えて突起を設けてもよい。このように構成しても、位置決め部27は固定片15と係合してガイドできる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】ボックス配設装置の使用状態を示す斜視図。
【図2】配線用ボックスを示す斜視図。
【図3】(a)は配線用ボックスを示す正面図、(b)は(a)のA−A線断面図。
【図4】ボックス固定具を示す斜視図。
【図5】(a)〜(c)は、ビスの螺入状態を示す模式断面図。
【図6】配線用ボックスの位置調整を示す模式正面図。
【符号の説明】
【0055】
11…ボックス配設装置、12…配線用ボックス、13…ボックス固定具、14…取付部、15…固定部としての固定片、16…ビス孔、21…底壁、22a〜22d…側壁、25…ボス部、26…挿通孔、27…ガイド部としての位置決め部、V…ビス、P…造営材としての軽量形鋼材、Pa…側面としての柱側面、W…間仕切壁としての軽量間仕切壁、Wa…壁材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の造営材を間隔をおいて立設し、前記複数の造営材を挟むように壁材を立設してなる間仕切壁内に配線用ボックスを配設するために形成されるボックス配設装置であって、
底壁の周縁から側壁が立設されて有底箱状に形成され、対向する一対の前記側壁の内面に、それぞれ前記側壁に対して垂直となるように前記配線用ボックスの内側に向かってボス部が突出形成された前記配線用ボックスと、
前記造営材に取り付けられる取付部を有し、さらに、前記取付部から延設されるとともにビスが強制的に螺入されるビス孔が形成され、前記配線用ボックスが固定される固定部を有するボックス固定具とからなり、
前記配線用ボックスの前記底壁には、前記ビスを、前記底壁を貫通させて前記固定部の前記ビス孔に螺入させる挿通孔が貫設され、
前記挿通孔は、長孔状に形成されていることを特徴とするボックス配設装置。
【請求項2】
前記挿通孔は、前記側壁からの前記ボス部の突出方向に対して直交する方向に沿って細長に延びるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のボックス配設装置。
【請求項3】
前記挿通孔は、前記側壁からの前記ボス部の突出方向に対して直交する方向に沿って断続的に複数形成されていることを特徴とする請求項2に記載のボックス配設装置。
【請求項4】
前記挿通孔は、前記側壁からの前記ボス部の突出方向に沿った前記配線用ボックスの長さの中央に形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のボックス配設装置。
【請求項5】
前記配線用ボックスの前記底壁には、前記取付部からの前記固定部の延設方向に延びる側縁に係合して、該延設方向に沿った前記配線用ボックスの移動をガイドするガイド部が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のボックス配設装置。
【請求項6】
複数の造営材を間隔をおいて立設し、前記複数の造営材を挟むように壁材を立設してなる間仕切壁内に配設される配線用ボックスであって、
前記造営材に取り付けられる取付部と、前記取付部から延設され、ビスが強制的に螺入されるビス孔が形成された固定部とを有するボックス固定具の前記固定部に固定されて前記間仕切壁内に配設されるとともに、
底壁の周縁から側壁が立設されて有底箱状に形成され、対向する一対の前記側壁の内面に、それぞれ前記側壁に対して垂直となるように前記配線用ボックスの内側に向かってボス部が突出形成されており、さらに前記底壁には、前記ビスを、前記底壁を貫通させて前記固定部の前記ビス孔に螺入させる挿通孔が貫設されるとともに、前記挿通孔は、長孔状に形成されていることを特徴とする配線用ボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−44883(P2009−44883A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207972(P2007−207972)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】