説明

ボトル

【課題】減圧吸収性能を向上させる。
【解決手段】底部14の底壁部19が、外周縁部に位置する接地部18と、接地部にボトル径方向の内側から連なり上方に向けて延びる立ち上がり周壁部21と、立ち上がり周壁部の上端部からボトル径方向の内側に向けて突出する環状の可動壁部22と、可動壁部にボトル径方向の内側から連なり上方に向けて延びる陥没周壁部23と、を備え、可動壁部が、立ち上がり周壁部に接続される外端部から陥没周壁部に接続される内端部に向かうに従い漸次下方に向けて延在すると共に、陥没周壁部を上方に向けて移動させるように外端部を中心に回動自在に配設され、接地部から可動壁部の最下端部までの高さH1が、接地部から可動壁部の外端部までの高さH2の35%以上65%以下とされているボトル1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、合成樹脂材料で有底筒状に形成されたボトルとして、例えば下記特許文献1に示されるように、底部の底壁部が、外周縁部に位置する接地部と、該接地部にボトル径方向の内側から連なり上方に向けて延びる立ち上がり周壁部と、該立ち上がり周壁部の上端部からボトル径方向の内側に向けて突出する可動壁部と、該可動壁部のボトル径方向の内端部から上方に向けて延びる陥没周壁部と、を備え、可動壁部が陥没周壁部を上方に向けて移動させるように、立ち上がり周壁部との接続部分を中心に回動することにより、ボトル内の減圧を吸収する構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−126184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のボトルでは、ボトル内の減圧吸収性能を向上させることに対して改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、ボトル内の減圧吸収性能を向上させることができるボトルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
(1)本発明に係るボトルは、合成樹脂材料で有底筒状に形成されたボトルであって、底部の底壁部は、外周縁部に位置する接地部と、該接地部にボトル径方向の内側から連なり上方に向けて延びる立ち上がり周壁部と、該立ち上がり周壁部の上端部からボトル径方向の内側に向けて突出する環状の可動壁部と、該可動壁部にボトル径方向の内側から連なり上方に向けて延びる陥没周壁部と、を備え、前記可動壁部は、前記立ち上がり周壁部に接続される外端部から前記陥没周壁部に接続される内端部に向かうに従い漸次下方に向けて延在すると共に、前記陥没周壁部を上方に向けて移動させるように前記外端部を中心に回動自在に配設され、前記接地部から前記可動壁部の最下端部までの高さは、前記接地部から前記可動壁部の前記外端部までの高さの35%以上65%以下とされていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るボトルによれば、ボトル内の減圧時、可動壁部の回動によって陥没周壁部が上方に移動することで減圧を吸収することができる。特に、可動壁部は外端部から内端部に向かうに従い漸次下方に延在しているうえ、接地部から可動壁部の最下端部までの高さが接地部から外端部までの高さの65%以下とされて外端部と最下端部との高低差が大きく確保されているので、内容物の充填時に該可動壁部を下方に向けて回動させ易い。そのため、ボトル内の容積を増大させて充填直後の減圧吸収容量を高めることができ、これにより減圧吸収性能を向上させることができる。
また、接地部から前記最下端部までの高さが接地部から外端部までの高さの35%以上とされて、前記最下端部と接地部との距離が十分に確保されているので、内容物の充填に伴って可動壁部が下方に回動した際、この最下端部が接地部よりも下方に飛び出してしまい難く、接地面への接触を回避し易い。従って、例えば高温充填した場合であっても、可動壁部の上記飛び出しを抑制しながら充填作業を確実に行うことができる。
【0008】
(2)上記本発明に係るボトルにおいて、前記可動壁部の最下端部の前記接地部からの高さが3mm以上とされていても良い。
【0009】
この場合には、可動壁部の最下端部を接地面から十分に上方に離間させることが可能になり、上記飛び出しをより一層確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るボトルによれば、ボトル内の減圧吸収性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態におけるボトルの側面図である。
【図2】図1に示すボトルの底面図である。
【図3】図2に示すA−A線に沿ったボトルの断面図である。
【図4】本発明に係る変形例を示すボトルの底面図である。
【図5】図4に示すB−B線に沿ったボトルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態に係るボトルを説明する。
本実施形態に係るボトル1は、図1から図3に示すように、口部11、肩部12、胴部13及び底部14を備え、これらがそれぞれの中心軸線を共通軸上に位置した状態でこの順に連設された概略構成とされている。
【0013】
以下、前記共通軸をボトル軸Oといい、ボトル軸O方向に沿って口部11側を上側、底部14側を下側という。また、ボトル軸Oに直交する方向をボトル径方向といい、ボトル軸O回りに周回する方向をボトル周方向という。
なお、ボトル1は、射出成形により有底筒状に形成されたプリフォームがブロー成形されて形成され、合成樹脂材料で一体に形成されている。また、口部11には、図示されないキャップが螺着される。更に、口部11、肩部12、胴部13及び底部14は、それぞれボトル軸Oに直交する横断面視形状が円形状とされている。
【0014】
肩部12と胴部13との接続部分には、第1環状凹溝16が全周に亘って連続して形成されている。
胴部13は筒状に形成されていると共に、ボトル軸O方向の両端部同士の間がこれら両端部より小径に形成されている。この胴部13には、ボトル軸O方向に間隔を開けて複数の第2環状凹溝15が形成されている。図示の例では、ボトル軸O方向に等間隔を開けて第2環状凹溝15が4つ形成されている。各第2環状凹溝15は、胴部13の全周に亘って連続して形成された溝部とされている。
【0015】
胴部13と底部14との接続部分には、第3環状凹溝20が全周に亘って連続して形成されている。
底部14は、上端開口部が胴部13の下端開口部に接続されたヒール部17と、ヒール部17の下端開口部を閉塞し、且つ外周縁部が接地部18とされた底壁部19と、を備えるカップ状に形成されている。
【0016】
ヒール部17のうち、上記接地部18にボトル径方向の外側から連なるヒール下端部27は、該ヒール下端部27に上方から連なる上ヒール部28より小径に形成されている。
なお、この上ヒール部28は、胴部13のボトル軸O方向の両端部と共にボトル1の最大外径部とされている。
【0017】
また、ヒール下端部27と上ヒール部28との連結部分29は、上方から下方に向かうに従い漸次縮径されており、これによりヒール下端部27が上ヒール部28より小径とされている。また、上ヒール部28には、第3環状凹溝20と略同じ深さの第4環状凹溝31が全周に亘って連続して形成されている。
【0018】
底壁部19は、図3に示すように、接地部18にボトル径方向の内側から連なり上方に向けて延びる立ち上がり周壁部21と、立ち上がり周壁部21の上端部からボトル径方向の内側に向けて突出する環状の可動壁部22と、可動壁部22にボトル径方向の内側から連なり上方に向けて延びる陥没周壁部23と、を備えている。
【0019】
接地部18は、接地面Gに対して例えば環状に線接触している。立ち上がり周壁部21は、下方から上方に向かうに従い漸次縮径している。
可動壁部22は、下方に向けて突の曲面状に形成されると共に、立ち上がり周壁部21に接続される外端部から陥没周壁部23に接続される内端部に向かうに従い漸次下方に向けて延在している。
【0020】
なお、本実施形態では、可動壁部22と立ち上がり周壁部21とが上方に向けて突の曲面部25を介して連結されていると共に、可動壁部22と陥没周壁部23とが下方に向けて突の曲面部26を介して連結されている。また、上記曲面部25が可動壁部22の外端部となり、上記曲面部26が可動壁部22の内端部でかつ最下端部となっている。
そして、可動壁部22は、陥没周壁部23を上方に向けて移動させるように、外端部である上記曲面部25を中心に回動自在とされている。
【0021】
また、可動壁部22の外端部である曲面部25及び内端部である曲面部26は、共に接地面Gから離間している。この際、接地部18から内端部である曲面部26までの高さH1は、3mm以上とされている。また、この高さH1は、接地部18から外端部である曲面部25までの高さH2の35%以上65%以下とされている。
【0022】
陥没周壁部23は、ボトル軸Oと同軸に配設されると共に、上方から下方に向かうに従い漸次拡径しながら多段に形成されている。陥没周壁部23の上端部には、ボトル軸Oと同軸に配置された円板状の頂壁24が接続されており、陥没周壁部23及び頂壁24の全体で有頂筒状をなしている。
【0023】
本実施形態の陥没周壁部23は、可動壁部22のボトル径方向の内端部から上方に向かうに従い漸次縮径された下筒部23aと、上端部が上記頂壁24の外周縁部に連設され、下方に向かうに従い漸次拡径されると共に下方に向けて突の曲面状に形成された上筒部23bと、これら両筒部23a、23bを連結する段部23cと、を備えており、2段筒状に形成されている。
【0024】
下筒部23aは、横断面視円形状に形成され、上記曲面部26を介して可動壁部22に連結されている。上筒部23bには、ボトル径方向の内側に向けて張り出す張出部23dが形成されている。この張出部23dは、上筒部23bの上端部を除くボトル軸O方向のほぼ全長に亘って形成されており、図2に示すようにボトル周方向に複数連ねられて形成されている。
なお図示の例では、ボトル周方向に隣り合う張出部23d同士は、ボトル周方向に間隔を開けて配置されている。
【0025】
そして、上筒部23bの横断面視形状は、張出部23dが形成されることにより、下方から上方に向かうに従い多角形状から円形状に変形しており、上筒部23bの上端部における横断面視形状は円形状となっている。上筒部23bのうち、横断面視形状が多角形状とされた部分では、張出部23dが多角形状の辺部とされ、ボトル周方向で隣り合う張出部23d同士の間に位置する間部分23eが、多角形状の角部となっている。
なお、図示の例では、多角形状が略正三角形状の場合を例に挙げているが、この場合に限定されるものではない。
【0026】
このように構成されたボトル1内が減圧すると、曲面部25を中心にして可動壁部22が上方に向かって回動することで、可動壁部22は陥没周壁部23を上方に向けて持ち上げるように移動する。即ち、減圧時にボトル1の底壁部19を積極的に変形させることで、ボトル1の内圧変化(減圧)を吸収することができる。
【0027】
特に、この可動壁部22は、外端部である曲面部25から内端部である曲面部26に向かうに従い漸次下方に延在しているうえ、接地部18から内端部である曲面部26までの高さH1が接地部18から外端部である曲面部25までの高さH2の65%以下とされて高低差が大きく確保されているので、内容物の充填時に可動壁部22を下方に向けて回動させ易い。そのため、ボトル1内の容積を増大させて充填直後の減圧吸収量を高めることができ、これにより減圧吸収性能を向上させることができる。
【0028】
しかも、前記高さH1が前記高さH2の35%以上とされて、可動壁部22の内端部である曲面部26と接地部18との距離が十分に確保されているので、内容物の充填に伴って可動壁部22が下方に回動した際、曲面部26が接地部18よりも下方に飛び出してしまい難く、接地面Gへの接触を回避し易い。従って、高温充填した場合であっても、曲面部26の上記飛び出しを抑制しながら充填作業を確実に行うことができる。
さらに、可動壁部22の内端部である曲面部26が接地部18から上方に3mm以上離間しているので、曲面部26を接地面Gから上方に十分に離間させることが可能になり、上記飛び出しをより一層確実に抑制することができる。
【0029】
なお、上記実施形態では、可動壁部22の内端部である曲面部26が該可動壁部22において最も接地面Gに近い最下端部である場合を例に挙げたが、可動壁部22の形状によってはボトル径方向の略中間部分が最下端部となる場合も考えられる。このような場合には、この最下端部までの高さが上記H1となる。
【0030】
また、本実施形態のボトル1は、内容量が1リットル以下、接地径が85mm以下とされ、且つ80℃以上(詳しくは80℃から95℃の温度範囲、より詳しくは87℃程度の充填温度)で内容物を充填作業する際に用いられるボトルに好適である。
【0031】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0032】
例えば、上記実施形態において、図4及び図5に示すように、可動壁部22に、ボトル軸Oを中心として複数のリブ40を放射状に形成しても構わない。即ち、各リブ40はボトル周方向に沿って等間隔に配設されている。
なお、図示の例では、リブ40は上方に向けて曲面状に窪んだ複数の凹部40aがボトル径方向に沿って断続的に、且つ直線状に延在して形成され、これによりリブ40はボトル径方向に沿う縦断面視形状が波形状に形成されている。また、各凹部40aはそれぞれ同形同大に形成されており、ボトル径方向に沿って等間隔に配置されている。そして、複数のリブ40各々において、複数の凹部40aが配設されているボトル径方向に沿う各位置は同じになっている。
【0033】
このように、可動壁部22に複数のリブ40を形成することで、可動壁部22の表面積を増加させて受圧面積を増すことができるので、可動壁部22をボトル1の内圧変化により速やかに対応して変形させることができる。
【0034】
更には、図4及び図5に示すように、立ち上がり周壁部21に凹凸部41を全周に亘って形成しても構わない。なお、凹凸部41は、ボトル径方向の内側に向けて突の曲面状に形成された凸部41aが、ボトル周方向に間隔を開けて複数配設されることで構成されている。
このように、凹凸部41を形成することで、例えば、立ち上がり周壁部21に入射する光が凹凸部41によって乱反射されたり、或いはボトル1内の内容物が凹凸部41内にも満たされたりすること等によって、内容物が充填されたボトル1の底部14を見たときに違和感を覚え難い。
【0035】
また、上記実施形態において、立ち上がり周壁部21は、例えばボトル軸O方向に沿って平行に延在させる等、適宜変更しても良い。また、可動壁部22は、例えば平面状若しくは上方に向けて窪む凹曲面状に形成する等、適宜変更しても良い。
【0036】
また、上記実施形態では、上筒部23bを下方に向けて突の曲面状に形成したが、この形状に限られるものではない。
また、上記実施形態では、ボトル周方向に隣り合う張出部23d同士がボトル周方向に間隔を開けて配置されているものとしたが、これに限られるものではなく、例えば張出部23d同士がボトル周方向に間隔を開けずに配置され、互いに直接連結されていても良い。この場合、上筒部23bのうち、張出部23dが配設された部分における横断面視形状が円形状となっていても良く、上筒部23bの横断面視形状がボトル軸O方向の全長に亘って円形状となっていても良い。
また、張出部23dは必須ではなく具備しなくとも良い。更に、陥没周壁部23は、2段筒状に形成されているものとしたが、3段以上の筒状に形成されていても、多段状に形成されていなくても良い。
【0037】
また、ボトル1を形成する合成樹脂材料は、例えばポリエチレンテレフタレートや、ポリエチレンナフタレート、非晶性ポリエステル等、またはこれらのブレンド材料等、適宜変更しても良い。更に、ボトル1は単層構造体に限らず中間層を有する積層構造体としても良い。なお、中間層としては例えばガスバリア性を有する樹脂材料からなる層、再生材からなる層、若しくは酸素吸収性を有する樹脂材料からなる層等が挙げられる。
【0038】
また、上記実施形態では、肩部12、胴部13及び底部14のそれぞれのボトル軸Oに直交する横断面視形状を円形状としたが、これに限らず例えば、多角形状にする等適宜変更しても良い。
【符号の説明】
【0039】
O…ボトル軸
1…ボトル
14…底部
18…接地部
19…底部の底壁部
21…立ち上がり周壁部
22…可動壁部
23…陥没周壁部
25…曲面部(可動壁部の外端部)
26…曲面部(可動壁部の内端部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂材料で有底筒状に形成されたボトルであって、
底部の底壁部は、
外周縁部に位置する接地部と、
該接地部にボトル径方向の内側から連なり上方に向けて延びる立ち上がり周壁部と、
該立ち上がり周壁部の上端部からボトル径方向の内側に向けて突出する環状の可動壁部と、
該可動壁部にボトル径方向の内側から連なり上方に向けて延びる陥没周壁部と、を備え、
前記可動壁部は、前記立ち上がり周壁部に接続される外端部から前記陥没周壁部に接続される内端部に向かうに従い漸次下方に向けて延在すると共に、前記陥没周壁部を上方に向けて移動させるように前記外端部を中心に回動自在に配設され、
前記接地部から前記可動壁部の最下端部までの高さは、前記接地部から前記可動壁部の前記外端部までの高さの35%以上65%以下とされていることを特徴とするボトル。
【請求項2】
請求項1に記載のボトルにおいて、
前記可動壁部の最下端部の前記接地部からの高さは、3mm以上とされていることを特徴とするボトル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−49468(P2013−49468A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188613(P2011−188613)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】