説明

ボビン処理部

【課題】ボビン処理部のボビン処理装置に物体の有無を検出するセンサを設け、トレイやボビンの検出に応じてボビン処理装置を作動させる構成においては、このセンサがトレイやボビン以外の物体を検出してボビン処理装置を誤動作させてしまう虞がある。
【解決手段】コントローラ8は、ボビン抜取り装置23について、当該ボビン抜取り装置23に対応して設けられる主センサ6・7と、主センサ6・7の前記搬送経路における上流側に配置される副センサ6とが、主センサ6・7に対応する検出位置P4から副センサ6に対応する検出位置P3までの主ボビン搬送ライン12の長さに応じた時間差で、トレイ5もしくはボビン3・4の存在を検出したときに、当該ボビン抜取り装置23を作動させる作動制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ボビン上の糸をパッケージに巻き取る巻取部に至る搬送経路に沿って、ボビンを載置可能なトレイを搬送するトレイ搬送装置と、前記搬送経路上を搬送される前記ボビンに処理を施すボビン処理装置と、前記搬送経路上に複数配置される検出位置のそれぞれに対応して配置され、前記トレイもしくは前記ボビンの有無を検出するセンサと、前記ボビン処理装置を作動および停止させる制御装置と、を備えるボビン処理部に関する。
【背景技術】
【0002】
精紡ボビンに処理を施した後、それらのボビンをトレイに載せた状態で巻取部に搬送するボビン処理部には、ボビンの搬送経路に沿って、各種のボビン処理装置が配置されている。各種のボビン処理装置には、前記トレイより前記ボビンを抜き取るボビン抜取り装置、前記トレイに前記ボビンを載せるボビン投下装置、前記トレイ上の前記ボビンより糸端を取り出す口出し装置、などがある。特許文献1には、ボビン処理部の一例として処理ステーションSが記載されている。特許文献2にはボビン処理部およびボビン処理部に係るトレイ搬送システムが、特許文献3にはボビン処理部Cが記載されている。また、特許文献4には、ボビン処理部に配置されるボビン処理装置であるボビン抜取装置が記載されている。
【特許文献1】特開平11−106138号公報
【特許文献2】特開平9−110305号公報
【特許文献3】特開2003−321162号公報
【特許文献4】特開昭63−182423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ボビン処理部に備えるボビン処理装置、例えばボビン抜取り装置には、ボビンやトレイの検出手段として光電センサを備えている。そして、このボビン抜取り装置にトレイやトレイに載置されたボビンが到達したことを光電センサで検出すると、このボビン抜取り装置が作動するように構成されている。
ところが、光電センサのように、物体の有無のみを検出するセンサでは、トレイおよびボビンと工具や人の手とを区別することができないため、作業員がボビン抜取り装置に残っている風綿等のゴミを工具を用いて、もしくは手で取り除こうとしたときに、工具や手が光電センサに検出されることがある。そして、この検出に応じてボビン抜取り装置が作動すると、工具や手が挟まれることがある。この結果、誤動作によるボビン処理部全体の稼動効率を低下を招いてしまう。
【0004】
つまり、解決しようとする問題点は、ボビン処理部のボビン処理装置に物体の有無を検出するセンサを設け、トレイやボビンの検出に応じてボビン処理装置を作動させる構成においては、このセンサがトレイやボビン以外の物体を検出してボビン処理装置を誤動作させてしまう虞がある点である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
請求項1に記載のボビン処理部は、
ボビン上の糸をパッケージに巻き取る巻取部に至る搬送経路に沿って、ボビンを載置可能なトレイを搬送するトレイ搬送装置と、
前記搬送経路上を搬送される前記ボビンに処理を施すボビン処理装置と、
前記搬送経路上に複数配置され、前記トレイもしくは前記ボビンの有無を検出するセンサと、
前記ボビン処理装置を作動および停止させる制御装置と、
を備えるボビン処理部であって、
前記制御装置は、少なくとも一つの前記ボビン処理装置について、前記センサのうち当該ボビン処理装置に対応して設けられる主センサと、前記センサのうち前記主センサの前記搬送経路における上流側に配置される副センサとが、前記主センサから前記副センサまでの前記搬送経路の長さに応じた時間差で、前記トレイもしくは前記ボビンの存在を検出したときに、当該ボビン処理装置を作動させる作動制御を行う、ものである。
【0007】
以上構成により、次の作用がある。
主センサおよび副センサにより、搬送経路上を搬送される物品が搬送経路の長さに応じた時間差で検出された場合のみ、主センサに対応して設けられているボビン処理装置が作動される。
【0008】
請求項2に記載のボビン処理部は、請求項1において、次の構成としたものである。
前記副センサが前記主センサの隣に配置されている、ものである。
【0009】
請求項3に記載のボビン処理部は、請求項1又は請求項2において、次の構成としたものである。
前記トレイ搬送装置は、前記トレイの搬送速度を可変に構成されると共に、
前記制御装置は、前記搬送速度の変更に応じて前記時間差を変更する、ものである。
【0010】
請求項4に記載のボビン処理部は、請求項1から請求項3のいずれかにおいて、次の構成としたものである。
前記トレイより、前記ボビンを把持手段により把持して抜き取るボビン抜取り装置とした、ものである。
【0011】
請求項5に記載のボビン処理部は、請求項1から請求項3のいずれかにおいて、次の構成としたものである。
前記ボビン処理装置を、前記トレイに前記ボビンを載せるボビン投下装置とした、ものである。
【0012】
請求項6に記載のボビン処理部は、請求項1から請求項3のいずれかにおいて、次の構成としたものである。
前記ボビン処理装置を、前記トレイ上の前記ボビンより糸端をエア吸引手段により吸引して取り出す口出し装置とした、ものである。
【0013】
請求項7に記載のボビン処理部は、請求項1から請求項6のいずれかのいずれかにおいて、次の構成としたものである。
前記ボビンにICタグを設けると共に、
前記主センサが対応して設けられる前記ボビン処理装置に、前記ボビン内のICタグを検出するタグ読取装置を備え、
前記制御装置は、前記タグ読取装置が前記ICタグを読み取らない場合は、該タグ読取装置を備える前記ボビン処理装置における前記作動制御を許可しない、ものである。
【0014】
以上構成により、次の作用がある。
主センサおよび副センサにより、搬送経路上を搬送される物品が搬送経路の長さに応じた時間差で検出された場合であっても、当該物品がICタグを備えたボビンでない場合には、主センサに対応して設けられているボビン処理装置は作動されない。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
請求項1の記載の発明においては、
搬送経路上を搬送される物品を検出した上でボビン処理装置を作動させることができる。このため、工具や作業者の手など、トレイやボビン以外の物品を検出してボビン処理装置を誤作動させることがない。
【0017】
請求項2に記載の発明においては、
制御装置の処理負担を下げることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明においては、
搬送速度の変更にも対応して、ボビン処理装置の誤作動を防止できる。
【0019】
請求項4に記載の発明においては、
誤作動すると、工具等のボビン以外の物品が把持手段に挟み込まれる不具合が発生する虞があるが、このような不具合の発生が防止される。
【0020】
請求項5に記載の発明においては、
誤作動すると、ボビンの受け皿となるトレイがない状態でボビンが投下されることになり、トレイに載置されないボビンが搬送経路に沿って搬送される不具合が発生する虞があるが、このような不具合の発生が防止される。
【0021】
請求項6に記載の発明においては、
誤作動すると、糸以外の物品がエア吸引手段に吸引される不具合が発生する虞があるが、このような不具合の発生が防止される。
【0022】
請求項7に記載の発明においては、
搬送経路上をボビン以外の物品が搬送されてきた場合には、当該物品を検出してもボビン処理装置を作動させることがないので、ボビン処理装置の誤作動をより一層防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0024】
図1には、自動ワインダー100を図示している。自動ワインダー100は、巻取部1と、ボビン処理部2とから構成される。
【0025】
巻取部1は、実ボビン3に巻き付けられている紡績糸を、別のボビン上に巻き返して、紡績糸の製品パッケージを製造する装置である。この巻取部1には、巻取ユニット10が複数備えられている。各巻取ユニット10は一錘の巻き返しを担当する装置であり、二個以上の実ボビン3を原料として一つのパッケージを製造する。
【0026】
ボビン処理部2は、巻取部1より排出される空ボビン4を回収すると共に、巻取部1に向けて実ボビン3を供給する手段である。ここで、実ボビン3は、糸を巻き付けるための筒体と、この筒体に巻き付けられた紡績糸とを合わせたものを指している。また、紡績糸が巻き付けられていない筒体そのものを、空ボビン4とする。このボビン処理部2には、実ボビン3および空ボビン4に種々の処理を施すボビン処理装置23・24・25・26・27とが、備えられている。
【0027】
巻取部1とボビン処理部2との間では、実ボビン3および空ボビン4が受け渡される。このため、巻取部1およびボビン処理部2には、実ボビン3や空ボビン4の搬送手段として、実ボビン3や空ボビン4をトレイ5に載せた状態で搬送するトレイ搬送装置30(図示は図8)が設けられている。トレイ搬送装置30の構成については後述する。
【0028】
図1に示すように、巻取部1やボビン処理部2には、トレイ5の搬送経路として、実ボビン搬送ライン11、空ボビン搬送ライン12、主ボビン搬送ライン21、戻りボビン搬送ライン22が形成されている。
【0029】
実ボビン搬送ライン11は、巻取部1内に形成される搬送経路であって、図1において一点鎖線で図示されている。実ボビン搬送ライン11は、ボビン処理部2から供給された実ボビン3を各巻取ユニット10に供給するための経路である。この実ボビン搬送ライン11は、循環経路となっている。これは、巻取ユニット10において実ボビン3が不足していない場合に、この循環経路内で実ボビン3を循環させて蓄えておくためである。
【0030】
空ボビン搬送ライン12は、巻取部1内に形成される搬送経路であって、図1において破線で図示されている。空ボビン搬送ライン12は、巻取ユニット10から排出された空ボビン4を、ボビン処理部2に排出するための経路である。この空ボビン搬送ライン12は、一直線状の搬送経路である。
【0031】
主ボビン搬送ライン21は、ボビン処理部2内に形成される搬送経路であって、図1において二点鎖線で図示されている。この主ボビン搬送ライン21は、巻取部1から排出された空ボビン4を搬送し、途中で空ボビン4を実ボビン5に置換して、この実ボビン3を巻取部1に向けて搬送する経路である。主ボビン搬送ライン21は、概略的にはU字状に形成されている。ここで、主ボビン搬送ライン21の始端部(図1の二股の下側の左端)は、空ボビン搬送ライン12の終端部(図1の右端)に接続されており、主ボビン搬送ライン21の終端部(図1の二股の上側の左端)は、実ボビン搬送ライン11の始端部(図1の右端)に接続されている。また、この主ボビン搬送ライン21に沿って、前記各種のボビン処理装置23・24・25・26・27が、この順で配置されている。そして、主ボビン搬送ライン21上を搬送されるボビン3・4が、ボビン処理装置23・24・25・26・27により処理を受ける。
【0032】
戻りボビン搬送ライン22は、ボビン処理部2内に形成される搬送経路であって、図1において破線で図示されている。この戻りボビン搬送ライン22は、ボビン処理装置25・26・27で口出し処理に失敗した実ボビン3や、何らかの事情でボビン処理装置25・26・27に搬送された空ボビン4を、再処理させるための経路である。ここで、実ボビン3の口出し処理の成否は、ボビン処理装置25・26・27で検出可能である。また、空ボビン4であるか実ボビンであるかの判別は、ボビンの太さ(ボビンが筒体のみか否か)を検出するセンサ(図示せず)により、行われる。このセンサは、ボビン投下装置24の下流側かつボビン処理装置25・26・27の上流側位置に配置される。この戻りボビン搬送ライン22は、主ボビン搬送ライン21の終端部と始端部とを接続するバイパス経路となっている。
【0033】
図2を用いて、トレイ搬送装置30の構成を説明する。トレイ搬送装置30は、ライン11・12・21・22(図1)に沿ってトレイ5を搬送させる手段である。このトレイ搬送装置30は、丸ベルトコンベア40および平ベルトコンベア50・60により構成される。以下で説明するが、ライン11・12・21・22と、コンベア40・50・60のそれぞれとは、一対一対応しているわけではなく、一つのラインが複数のコンベアにより構成されるなど、複雑な関係となっている。
【0034】
丸ベルトコンベア40は、主ボビン搬送ライン21および戻りボビン搬送ライン22の大部分でトレイ5を搬送する駆動手段である。この丸ベルトコンベア40は、丸ベルト41と、この丸ベルトに巻回される駆動プーリ42および複数の従動プーリ43と、駆動プーリ42を駆動するモータ44と、から構成される。ここで、丸ベルト41は、平ベルトと異なり、複数のプーリを経由して屈曲した経路を形成した場合であっても、駆動可能である。このため、モータ44の駆動により駆動プーリ42が回転すると、丸ベルト41の全体が駆動される。
【0035】
平ベルトコンベア50は、空ボビン搬送ライン12の全体と、主ボビン搬送ライン21の一部分(始端部)と、戻りボビン搬送ライン22の一部分とで、トレイ5を搬送する駆動手段である。この平ベルトコンベア50は、平ベルト51と、この平ベルト51に巻回される駆動プーリ52および従動プーリ(図示せず)と、駆動プーリ52を駆動するモータ53と、から構成される。
【0036】
平ベルトコンベア60は、実ボビン搬送ライン11の全体と、主ボビン搬送ライン21の一部分(終端部)とで、トレイ5を搬送する駆動手段である。この平ベルトコンベア60は、並列に配置される一対の平ベルト61・61と、各平ベルト61にそれぞれ巻回される駆動プーリ62および従動プーリ(図示せず)と、駆動プーリ62・62を駆動するモータ63と、から構成される。
【0037】
巻取ユニット10における実ボビン3の取り込みおよび空ボビン4の排出について説明する。巻取ユニット10は、実ボビン搬送ライン11上から当該巻取ユニット10の内部へ実ボビン3を載せたトレイ5を導入する装置と、当該巻取ユニット10の内部から空ボビン搬送ライン12上へ空ボビン4を載せたトレイ5を排出する装置と、を備えている。そして、各巻取ユニット10は、実ボビン搬送ライン11から実ボビン3を取り込み、当該実ボビン3の紡績糸をすべてパッケージに巻き返して空ボビン4が生成されると、その空ボビン4を空ボビン搬送ライン12に排出する。
【0038】
図1に示すボビン処理部2に備えるボビン処理装置23・24・25・26・27について説明する。これらのボビン処理装置は、ボビン抜取り装置23、ボビン投下装置24、バンチ巻き解除装置25、糸端処理装置26、口出し装置27である。これらのボビン処理装置23・24・25・26・27は、主ボビン搬送ライン21に沿って配置されている。また、ボビン3・4およびトレイ5は、図示しないストッパーにより、トレイ搬送装置30の駆動を停止することなく、各ボビン処理装置による処理前に各ボビン処理装置に対して位置決めされる。
【0039】
図3を用いて、ボビン抜取り装置23を説明する。ボビン抜取り装置23は、空ボビン4の載置されたトレイ5から空ボビン4を抜取って回収する装置である。このボビン抜取り装置23には、トレイセンサ6およびボビンセンサ7、プロ−ベルト231、抜取りレバー232、残糸付きボビンシュート233、空ボビンシュート234、残糸検出センサ235、が設けられている。
【0040】
プロ−ベルト231は、無端状に接続されたループ状のベルトであり、長手方向が上下方向を向くように配置されている。このプロ−ベルト231は、ボビン抜取り装置23において、空ボビン4を搬送する手段である。抜取りレバー232は、ボビン抜取り装置23のフレーム230に揺動自在に設けられたアームであり、この抜取りレバー232の先端には抜出しプーリー232aが設けられている。この抜取りレバー232は、抜出しプーリー232aを搬送経路上のトレイ5上の空ボビン4に当ててプロ−ベルト231側へ移動させて、空ボビン4をトレイ5より抜取ってプロ−ベルト231へと送る手段である。ここで、プロ−ベルト231および抜取りレバー232は、トレイ5上のボビン4を把持する把持手段を構成している。残糸検出センサ235は、プロ−ベルト231に沿って上側へ搬送される空ボビン4のうち、糸を巻き付ける筒体上に若干糸が残っているボビンを検出する検出手段である。また、残糸付きボビンシュート233および空ボビンシュート234は、プロ−ベルト231による空ボビン4の搬送経路上に配置されている。そして、残糸検出センサ235で残糸が検出された空ボビン4は、残糸付きボビンシュート233より残糸付きボビン用の回収箱に排出され、それ以外の空ボビン4は空ボビンシュート234より空ボビン4用の回収箱に排出される。
【0041】
トレイセンサ6はトレイ5の有無を検出するセンサであり、ボビンセンサ7はボビン3・4の有無を検出するセンサである。そして、主ボビン搬送ライン21を搬送されるボビン3・4付きトレイ5は、プロ−ベルト231とプーリー232aとの間に位置するときに、ボビン抜取り装置23に備えるトレイセンサ6およびボビンセンサ7により検出される。このようにボビン抜取り装置23に備えるトレイセンサ6およびボビンセンサ7の検出信号に基づいて、ボビン3・4付きトレイ5がボビン抜取り装置23に到達したことが、ボビン抜取り装置23やコントローラ8(図8)の側で特定される。
【0042】
図4を用いて、ボビン投下装置24を説明する。ボビン投下装置24は、ボビンの載置されていないトレイ5上に実ボビン3を落下させて、トレイ5に実ボビン3を載置させる装置である。このボビン投下装置24には、図示しないボビン供給装置より、実ボビン3が供給される。このボビン投下装置24は、ボビン供給装置に接続された搬送ガイド241と、姿勢変更ガイド242と、シュート243・243と、フィードローラ244と、プッシャー245と、天尻判別フィーラー246と、を備えている。また、図示しないが、シュート243の下方に位置するトレイ5を検出するためのトレイセンサ6およびボビンセンサ7も、備えられている。
【0043】
ボビン投下装置24において、実ボビン3は、搬送ガイド241から姿勢変更ガイド242を経てシュート243・243より下方に投下されて、シュート243・243の下方に位置するトレイ5上に載置される。シュート243・243のそれぞれは、コーン状円筒体を軸方向で二分割した各分割片を指している。ここで、搬送ガイド241は、実ボビン3の蓄えられたボビン供給装置から姿勢変更ガイド242に至る、実ボビン3の搬送経路を構成している。フィードローラ244は、搬送ガイド241に沿って実ボビン3を搬送する手段である。プッシャー245は、搬送ガイド241から姿勢変更ガイド242へ実ボビン3を送り出す手段である。天尻判別フィーラー246は、プッシャー245により姿勢変更ガイド242へ送られる実ボビン3の姿勢、すなわち実ボビン3の筒体の上下が適切か否かを検出する。姿勢変更ガイド242は、シュート243・243へ送る実ボビン3の姿勢を変更する手段であり、天尻判別フィーラー246が検出した実ボビン3の姿勢に応じて、天尻レバー242a・242aの傾斜角度を変更して、実ボビン3のトレイ5に対する上下姿勢が適切となるようにする。
【0044】
主ボビン搬送ライン21を搬送されるトレイ5は、シュート243・243の直下に位置するときに、ボビン投下装置24に備えるトレイセンサ6により検出される。このようにボビン投下装置24に備えるトレイセンサ6の検出信号に基づいて、トレイ5がボビン投下装置24に位置することが、ボビン投下装置24やコントローラ8(図8)の側で特定される。なお、正常な状態では、ボビン投下装置24には、ボビン抜取り装置23でボビン3・4が抜取られた空のトレイ5が搬送されてくるものである。したがって、トレイ5がボビン投下装置24に到達した時点でボビンセンサ7がボビン3・4を検出するような場合は、コントローラ8(図8)は、ボビン投下装置24を作動させない。
【0045】
次に、口出し処理に係るバンチ巻き解舒装置25、糸端処理装置26、口出し装置27について説明する。概略的には、バンチ巻き解舒装置25は、実ボビン3に巻かれているボトムバンチのバンチ巻きy2を解舒する装置である。糸端処理装置26は、実ボビン3の糸層表面に巻かれたバックワインド糸y1を切断して、そのバックワインド糸y1の尻糸側(下側)を除去する装置である。また、口出し装置27は、バックワインド糸y1の巻取側(上側)を実ボビン3の筒体内に引き込むという口出し処理を行う装置である。
【0046】
ここで、バックワインド糸y1やボトムバンチ等は次のことを意味する。
実ボビン3は、筒体の下部から上部までトラバースしながら巻かれて製造される。糸が筒体に巻き上がると、巻き上がった糸層表面を上から下に向けて螺旋状に糸を巻き付けて、糸を筒体の下端部まで案内する。この螺旋状に巻き付ける糸をバックワインド糸y1と呼ぶ。また、筒体の根元には、巻きあがった紡績糸が解けないようにバンチ巻きy2で巻き付けられるが、このように巻き付けられた状態をボトムバンチが形成されたと呼ぶ。
【0047】
図5を用いて、バンチ巻き解舒装置25を説明する。このバンチ巻き解舒装置25には、サクションケース250と、エアダクト251と、ロータリーカッター252と、トレイ回転ローラ253と、が備えられている。サクションケース250には、ボビンの搬送経路側に吸引口250aが形成されている。また、図示しないが、吸引口250aの正面位置に停止したトレイ5およびボビン3・4を検出するためのトレイセンサ6およびボビンセンサ7も、備えられている。
【0048】
バンチ巻き解舒装置25で処理を受ける実ボビン3は、サクションケース250の吸引口250aの正面位置で停止する。このとき、実ボビン3を支持するトレイ5にトレイ回転ローラ253が接しており、トレイ回転ローラ253を回転させると実ボビン3が連動して回転する。また、サクションケース250の内部は、エアダクト251に接続される吸引手段の駆動により、負圧とされている。そして、吸引口250aよりサクションケース250の内部に、実ボビン3に形成されたボトムバンチのバンチ巻きが吸引される。吸引されたバンチ巻きは、サクションケース250の内部に配置されるロータリーカッター252により切断される。以上のようにして、実ボビン3に巻かれているボトムバンチのバンチ巻き糸が解舒される。
【0049】
図5を用いて、糸端処理装置26を説明する。糸端処理装置26は、バンチ巻き解舒装置25と同様の装置である尻糸除去部28と、糸を切断するサーチャー29とを備えている。尻糸除去部28と、サーチャー29とは、実ボビン3の搬送経路を挟んで対向する位置に配置されている。尻糸除去部28には、サクションケース280と、エアダクト281と、ロータリーカッター282と、トレイ回転ローラ283と、が備えられている。サクションケース280には、ボビンの搬送経路側に吸引口280aが形成されている。また、図示しないが、吸引口280aの正面位置に停止したトレイ5およびボビン3・4を検出するためのトレイセンサ6およびボビンセンサ7も、備えられている。
【0050】
糸端処理装置26で処理を受ける実ボビン3は、サクションケース280の吸引口280aの正面位置で停止する。まず、サーチャー29により、実ボビン3のバックワインドy1が切断される。次いで、実ボビン3を支持するトレイ5を、トレイ回転ローラ253により回転させる。また、サクションケース280の内部は、エアダクト281に接続される吸引手段の駆動により、負圧とされている。そして、吸引口280aよりサクションケース280の内部に、実ボビン3に形成されたバックワインド糸y1の尻糸側が吸引される。吸引されたバックワインド糸y1は、サクションケース280の内部に配置されるロータリーカッター282により切断される。以上のようにして、バックワインド糸y1の尻糸側が実ボビン3より除去される。
【0051】
図5を用いて、口出し装置27を説明する。この口出し装置27には、サクションパイプ271、シャッターカッター272、サクションパイプ273が備えられている。また、図示しないが、口出し装置27の正面位置に停止したトレイ5およびボビン3・4を検出するためのトレイセンサ6およびボビンセンサ7も、備えられている。
【0052】
サクションパイプ271には上下スライド自在に構成される筒体274が接続されている。この筒体274は、口出し装置27の正面に停止した実ボビン3の直上方に位置する。そして、サクションパイプ271に接続されるエア吸引手段を駆動させると共に筒体274を下降させて、実ボビン3のバックワインド糸y1の巻取側をサクションパイプ271に吸引させる。その後、シャッターカッター272を作動させて、サクションパイプ271内に吸引されたバックワインド糸y1を切断して定長とする。一方、サクションパイプ273は、口出し装置27の正面に停止した実ボビン3の直下方に位置している。そして、シャッターカッター272によりバックワインド糸y1が定長に切断された後、サクションパイプ273に接続される吸引手段を駆動させると、バックワインド糸y1が実ボビン3の筒体内に引き込まれる。このように、定長のバックワインド糸y1を実ボビン3の筒体内に引き込む処理を、口出し処理という。
【0053】
主ボビン搬送ライン21を搬送されるボビン3・4付きトレイ5は、筒体274の直下に位置するときに、口出し装置27に備えるトレイセンサ6およびボビンセンサ7により検出される。このようにボビン口出し装置27に備えるトレイセンサ6およびボビンセンサ7の検出信号に基づいて、ボビン3・4付きトレイ5が口出し装置27に到達したことが、口出し装置27やコントローラ8(図8)の側で特定される。
【0054】
口出し処理の成功は、ボビン処理装置25・26・27による処理がすべて適切に行われる必要があり、ボビン処理装置25・26・27のいずれかでの処理が不適切の場合、口出し処理が失敗することになる。この口出し処理の失敗は口出し装置27で検出可能である。そして、口出し処理が失敗した場合にのみ、主ボビン搬送ライン21上を搬送されている実ボビン3が、戻りボビン搬送ライン22へと送られる。
【0055】
図6を用いて、トレイ5もしくはボビン3・4の検出位置について説明する。巻取部1およびボビン処理部2に備える搬送経路(ライン11・12・21・22)には、トレイ5もしくはボビン(実ボビン3または空ボビン4)の有無を検出するための検出位置が設けられている。このような検出位置は、前記搬送経路に沿って複数設けられている。以下、ボビン処理部2におけるトレイ5やボビン3・4の検出について説明する。主ボビン搬送ライン21上には、ボビンの検出位置P1〜P15が設けられている。また、戻りボビン搬送ライン22上には、ボビンの検出位置P16・P17が設けられている。
【0056】
トレイセンサ6およびボビンセンサ7について説明する。検出位置P1〜P17のそれぞれには、トレイ5もしくはボビン3・4の有無を検出するセンサが設けられている。前述したように、トレイ5の有無を検出するセンサがトレイセンサ6であり、ボビン3・4の有無を検出するセンサがボビンセンサ7である。ここで、各検出位置には、トレイセンサ6およびボビンセンサ7の少なくとも一方が配置される。また、一つの検出位置にトレイセンサ6およびボビンセンサ7の双方が配置される場合もある。
【0057】
検出位置P1〜P17の一部は、ボビン処理装置23・24・25・26・27のそれぞれに対応して設けられている。各検出位置にはトレイセンサ6又はボビンセンサ7の少なくとも一方が配置されているので、各ボビン処理装置に対応してトレイセンサ6又はボビンセンサ7が必ず配置されている。各ボビン処理装置に対応して設けられる検出位置は、当該ボビン処理装置においてボビンの処理を開始する処理位置となっている。各ボビン処理装置は、当該ボビン処理装置の処理位置を通過したボビンまたはトレイ5に対して、適宜処理を行う。
【0058】
具体的には、ボビン抜取り装置23に対応して検出位置P4が設けられている。ボビン投下装置24に対応して検出位置P6が設けられている。バンチ巻き解舒装置25に対応して検出位置P9が設けられている。糸端処理装置26に対応して検出位置P11が設けられている。口出し装置27に対応して検出位置P13が設けられている。本実施の形態では、これらのボビン処理装置に対応する検出位置には、ボビン投下装置24に係る検出位置P6を除いて、トレイセンサ6およびボビンセンサ7の双方が配置されている。ボビン投下装置24に係る検出位置P6には、トレイセンサ6のみ配置される。また、検出位置P1〜P17のうち、ボビン処理装置23・24・25・26・27に対応していない検出位置には、ボビンセンサ7は配置されず、トレイセンサ6のみが配置されている。
【0059】
トレイセンサ6およびボビンセンサ7は、搬送経路上の検出位置における物体の有無を検出する手段としている。そして、トレイセンサ6やボビンセンサ7による物体の有無検出情報に基づいて、その検出位置にボビンまたはトレイ5が存在するか否かを、ボビン処理部2に備えるコントローラ8(図8)が判断するものとしている。
【0060】
トレイセンサ6やボビンセンサ7の構成としては、接触式の検出装置であっても、非接触式の検出装置であってもよい。非接触式の検出装置とする場合、例えば、光電センサそのものでトレイセンサ6やボビンセンサ7を構成する。また、接触式の検出装置とする場合、例えば、検出対象物と接触する揺動自在なフィーラーアームを設けると共に、このフィーラーアームの揺動を有無を光電センサにより検出するようにして、トレイセンサ6やボビンセンサ7を構成する。
【0061】
ボビン処理装置23〜27の作動制御について説明する。前述したように、ボビン処理装置23〜27のそれぞれに対応して、当該ボビン処理装置の処理位置に搬送されてきたボビン3・4やトレイ5の有無を検出するセンサ6・7が設けられている。ここで、各ボビン処理装置を、当該ボビン処理装置に対応するセンサ6・7の検出信号に基づいて作動させるとすると、誤作動を引き起こす可能性がある。前述したように、センサ6・7は、物体の有無を検出するセンサであって、その物体がボビン3・4やトレイ5でない場合にも作動する虞がある。例えば、センサ6・7は、メンテナンスをしようとする作業者の手を検出して、検出信号を発信する可能性がある。これは、センサ6・7が、単に搬送経路上の検出位置における物体の有無を検出する手段であって、トレイ5(ボビン3・4)の存在自体を検出する手段ではなく、トレイ5(ボビン3・4)と、風綿除去用の工具や作業者の手などとの区別がつかないことによる。
【0062】
具体的には、ボビン3・4付きトレイ5(もしくはトレイ5のみ)がセンサ6・7により検出される箇所のうち、次のような箇所には工具や作業者の手が挿入される場合がある。この場合、ボビン処理装置に備えるセンサ6・7の検出信号のみに基づいてトレイ5(ボビン3・4)が到達したと判断すると、ボビン処理装置の誤作動が発生する可能性がある。当該箇所は、(1)ボビン抜取り装置23においてプロ−ベルト231とプーリー232aとの間、(2)ボビン投下装置24においてシュート243・243の直下、(3)口出し装置27において筒体274の直下、である。
【0063】
ボビン抜取り装置23が誤作動すると、誤作動の原因となった工具や作業者の手などが、ボビンの把持手段(プロ−ベルト231および抜取りレバー232(プーリー232a))に挟み込まれる不具合が発生する虞がある。ボビン投下装置24が誤作動すると、実ボビン3の受け皿となるトレイ5がない状態で実ボビン3が投下されることになり、トレイ5に載置されない実ボビン3が搬送経路(ライン21)に沿って搬送される不具合が発生する虞がある。口出し装置27が誤作動すると、バックワインド糸y1以外の物品がエア吸引手段(サクションパイプ271に接続されるエア吸引手段)に吸引される不具合が発生する虞がある。
【0064】
そこで、ボビン処理部2に備える制御装置(コントローラ8:図8)は、物体の有無を検出するセンサであるセンサ6・7の検出信号を利用しながら、搬送経路上を搬送されるボビン3・4またはトレイ5を、それ以外の物品(メンテナンスにおける工具や作業者の手など)と区別して適確に検出することができるように構成されている。
【0065】
搬送経路上を搬送されるボビン3・4またはトレイ5の適確な検出は、概略的には、次のようにして行われる。ボビン3・4またはトレイ5は、トレイ搬送装置30により、搬送経路(ライン21・22)上を搬送される。搬送速度の変更や駆動停止等が発生することなく、一定の搬送速度でトレイ搬送装置30が駆動されたとすると、初期位置とするいずれかの検出位置の通過時刻がわかっていれば、ボビン3・4またはトレイ5が各検出位置に到達する時刻を特定することができる。このような関係を利用して、搬送経路上で相対的に上流および下流に位置する異なる二箇所の検出位置で、ボビン3・4またはトレイ5が一定の時間差をもって検出された場合に、当該下流の検出位置にボビン3・4またはトレイ5が間違いなく到達したことが検出された、とするものである。
【0066】
図7には、搬送経路上の特定の二箇所にあるセンサからの検出信号の発信時刻を示す図を示している。具体的には、特定の二箇所のセンサとは、主ボビン搬送ライン21上の検出位置P3・P4(図6)に配置されるトレイセンサ6・6である。特に、検出位置P4に配置されるトレイセンサ6を主センサとし、検出位置P3に配置されるトレイセンサ6を副センサとする。ここで、主センサ(検出位置P4に配置されるトレイセンサ6)は、ボビン抜取り装置23に備えられる(に対応して設けられる)センサである。
【0067】
図7には、主センサ(検出位置P4のトレイセンサ6)における物品の検出時刻が点列で示されるとともに、副センサ(検出位置P3のトレイセンサ6)における物品の検出時刻が点列で示されている。主ボビン搬送ライン21上で、副センサ(検出位置P3のトレイセンサ6)の下流位置に、主センサ(検出位置P4のトレイセンサ6)が配置されている。ここで、一定の搬送速度でトレイ搬送装置30が駆動されたとすると、主ボビン搬送ライン21を搬送される各トレイ5は、それぞれ、検出位置P3・P4の副センサ6および主センサ6において一定の時間差Dをもって検出されることになる。そこで、図7において、主センサ6の検出時刻と副センサ6の検出時刻とが一定の時間差Dである検出信号の組については、関連していることがわかるように、検出時刻を示す点同士を線分で接続している。
【0068】
主センサおよび副センサで一定の時間差Dでもって検出される物品は、主ボビン搬送ライン21を搬送されるトレイ5であると考えられる。これに対して、図7の点Qのように、主センサ6の検出信号はあるが、この検出信号に一定の時間差Dをもって対応する副センサ6の検出信号がない場合、その主センサ6が検出した物品は、主ボビン搬送ライン21を搬送される物品であるとは考えられない。このような場合は、例えば、工具や作業者が誤ってボビン抜取り装置23に差し出した手が、このボビン抜取り装置23に備えられているトレイセンサ6(主センサ)に検出されてしまったような場合であると考えられる。
【0069】
このように、二つの検出信号の発信に基づいて、その発信時刻に一定の時間差があるかどうかを判定することで、主センサおよび副センサが検出した物品が、正しく搬送経路上を搬送される物品(すなわちボビン3・4やトレイ5)であるか、それ以外の物品であるかを判別することができる。
【0070】
図8を用いて、ボビン処理装置23〜27の作動制御機構を説明する。この作動制御機構は、ボビン処理部2に備えるコントローラ8と、検出位置P1〜P17のそれぞれに対応して配置されるセンサ6・7の全体と、搬送経路(ライン21・22)に沿って配置されるボビン処理装置23〜27と、トレイ搬送装置30に備えるモータ44・53・63の回転速度を検出する速度センサ9・9・9と、から構成される。また、コントローラ8と各センサ6・7、コントローラ8と各ボビン処理装置23〜27、コントローラ8と各速度センサ9は、それぞれ信号線を介して信号伝達可能に接続されている。
【0071】
コントローラ8は、各ボビン処理装置の作動および停止を制御する。この作動制御は、各ボビン処理装置に対応する検出位置に配置されるセンサと、搬送経路におけるその上流位置に配置されるセンサとの二つの検出信号を利用して、次のようにして行われる。
【0072】
前述したように、作動対象となっているボビン処理装置に対応して設けられるセンサを主センサとし、主センサの上流位置に配置されるセンサを副センサとする。例えば、作動対象がボビン抜取り装置23である場合、主センサはボビン抜取り装置23に対応する検出位置P4に対応して配置されているセンサ6・7が該当する。また、副センサは、例えば、検出位置P4の上流側に位置する検出位置P3に対応して配置されるトレイセンサ6である。なお、副センサは、主センサの配置される検出位置の隣の検出位置である必要はなく、主センサの検出位置よりも上流の検出位置に対応して配置されるものであれば良い。この場合例えば、検出位置P3よりも上流位置にある検出位置P2に配置されるトレイセンサ6を副センサとしてもよい。
【0073】
次いで、主センサに対応する検出位置から副センサに対応する検出位置までの搬送経路の長さに応じた時間差を算出する。搬送経路上で相対的に上流及び下流に位置する二つの検出位置間の長さ(実際にトレイ5が搬送される際の搬送長さ)は、搬送経路および検出位置のレイアウトより特定することができる。したがって、トレイ搬送装置30によるトレイ5の搬送速度が分かっていれば、前述の搬送経路の長さに応じた時間差を、算出することが可能である。
【0074】
また、搬送経路を搬送されるトレイ5の搬送速度は、モータ44・53・63の回転速度を検出する速度センサ9の検出値に基づいて、特定することが可能である。なお、各コンベア40・50・60によるトレイ5の搬送速度は同一となるように、各モータ44・53・63の回転速度は制御されるものとする。
【0075】
そして、コントローラ8は、主センサと副センサとが、主センサおよび副センサのそれぞれに対応する検出位置間の搬送経路の長さに応じた時間差で、物品の検出信号を発信した場合に、トレイ5もしくはボビン3・4の存在を検出したと判定する。そして、この場合に処理装置を作動させる。
【0076】
例えば、ボビン抜取り装置23の場合であれば、コントローラ8は、検出位置P3に対応するトレイセンサ6でトレイ5が検出され、その後一定の時間差で、検出位置P4に対応するトレイセンサ6でトレイ5が検出されると、ボビン抜取り装置23を作動させる。ここで、この一定の時間差は、正副センサ間の搬送経路の長さに応じた時間差であって、検出位置P3から検出位置P4までのトレイ5の搬送時間を指している。この搬送時間は、正副センサ間の搬送距離と搬送速度とにより決まる。また、検出位置P4はボビン抜取り装置23に対応する検出位置であり、この検出位置に配置されるセンサが主センサである。
【0077】
コントローラ8が、前述の作動制御(時間差のある二つの検出信号の発信を利用してボビン処理装置を作動させる制御)を行う対象とするボビン処理装置は、ボビン処理装置23〜27のすべてとしている。なお、前述の作動制御を、ボビン処理装置23〜27のすべてに対して行う必要はない。特定のボビン処理装置に対してのみ前述の作動制御を行うようにし、その他のボビン処理装置に対しては、従来通り、当該ボビン処理装置に対応する検出位置でボビン3・4またはトレイ5が検出された場合に当該ボビン処理装置を作動させるようにしても良い。これは、例えば、メンテナンスにおける工具や作業者の手の検出位置への進入などの虞が低い場合には、ボビン処理装置の誤作動の発生する虞がないので、前述の作動制御をコントローラ8に行わせる必要がないためである。
【0078】
トレイ搬送装置30によるトレイ5の搬送速度は、ボビン3・4の処理状況等に応じて、可変に構成されている。この搬送速度が変化すると、前述の搬送経路の長さに応じた時間差も変化する。そこで、コントローラ8は、速度センサ9の検出値に基づいて特定される搬送速度の変化に応じて、搬送経路の長さに応じた時間差が適切な時間差となるように再計算し、その適切とされる時間差で前述の作動制御を行う。
【0079】
以上の説明においては、搬送経路の長さに応じた時間差は、トレイ5がまったく停止されることなく、トレイ搬送装置30によって連続的に搬送された場合の搬送時間として説明している。しかし正確には、トレイ5は各ボビン処理装置において処理を受ける際には、当該ボビン処理装置で停止させられて処理を受けるため、副センサおよび主センサでの検出時刻の時間差が、単に、トレイ搬送装置30によって連続的に搬送された場合の搬送時間に一致すれば、搬送経路上を搬送されるトレイ5(又はボビン3・4)が正しく検出されたとすると、問題がある。そこで、搬送経路の長さに応じた時間差は、より詳しくは、トレイ搬送装置30によって連続的に搬送された場合の搬送時間に、各ボビン処理装置での処理時間を加味して規定する。
【0080】
また、以上の説明においては、基本的に、副センサが主センサの隣に位置する場合を前提として説明を行っている。特に、副センサが主センサの隣に位置する場合は、副センサでのトレイ5(もしくはボビン3・4)の検出終了時点から主センサでのトレイ5(もしくはボビン3・4)の検出開始時点までの時間差を、副センサおよび主センサでの検出時刻の時間差とすれば、搬送経路の長さに応じた時間差について、ボビン処理装置での処理時間を無視することができる。したがって、コントローラ8において、搬送経路の長さに応じた時間差の算出等の処理が容易となる。なお、前述したように、副センサは、主センサに対して、搬送経路における上流側にあるセンサであればよく、必ずしも主センサの隣に配置する必要はない。副センサが主センサの隣ではなく、主センサに対して一又は複数のセンサを挟んだ上流側に配置される場合は、前述したように、搬送経路の長さに応じた時間差を、トレイ搬送装置30によって連続的に搬送された場合の搬送時間に、各ボビン処理装置での処理時間を加味して算出するものとする。
【0081】
また、搬送経路(ライン21・22)上でトレイ5を搬送するトレイ搬送装置30の駆動は、必ずしも常時行われるものではなく、ボビン3・4の搬送の必要性に応じて行われるものである。したがって、例えば、巻取部1において、実ボビン3が余っている状態(すべての巻取ユニット10に実ボビン3が供給されている状態)では、トレイ搬送装置30の駆動を停止させる場合がある。
【実施例2】
【0082】
次に、実施例2について説明する。実施例2においては、ボビンの筒体にICタグが備えられると共に、ボビン処理部に備える各ボビン処理装置23〜27にICタグリーダーが備えられる構成となっている。そして、ボビン処理装置23〜27の作動制御機構を統括するコントローラが、主センサおよび副センサによる検出情報だけでなく、ICタグリーダーによる検出情報をも加味して、ボビン(トレイ5)と、それ以外の物品との判別を行うようにしている。実施例2のボビン処理部と、実施例1のボビン処理部との相違点は、以上の点のみであり、その他の構成においては、両実施例において同一である。したがって、以下では、同一部分については説明を省略するとともに、同一部材については同符号を用いるものとする。
【0083】
図9に示すように、搬送経路(ライン21・22)に沿って配置されるボビン処理装置23〜27のそれぞれには、ICタグリーダー19が備えられている。また、ボビン3・4の筒体には、ICタグリーダー19で読み取り可能なICタグが内蔵されている。ICタグリーダー19でボビン内のICタグを検出可能な距離は、センサ6・7と比べて長い距離となっている。このため、ボビンがボビン処理装置に通過する際に接近するだけで、そのボビン内のICタグが、通過する対象のボビン処理装置に備えるICタグリーダー19により読み取られる。
【0084】
図9を用いて、実施例2におけるボビン処理装置23〜27の作動制御機構を説明する。この作動制御機構は、ボビン処理部に備えるコントローラ108と、検出位置P1〜P17のそれぞれに対応して配置されるセンサ6・7の全体と、搬送経路(ライン21・22)に沿って配置されるボビン処理装置23〜27と、ボビン処理装置23〜27のそれぞれに備えられるICタグリーダー19の全体と、トレイ搬送装置30に備えるモータ44・53・63の回転速度を検出する速度センサ9・9・9と、から構成される。また、コントローラ108と各センサ6・7、コントローラ108と各ボビン処理装置23〜27、コントローラ108と各速度センサ9は、それぞれ信号線を介して信号伝達可能に接続されている。
【0085】
コントローラ108は、各ボビン処理装置の作動および停止を制御する。この作動制御は、各ボビン処理装置に対応する検出位置に配置されるセンサ(主センサ)と、搬送経路におけるその上流位置に配置されるセンサ(副センサ)との二つの検出信号を利用すると共に、各ボビン処理装置に備えるICタグリーダー19による読取結果をも利用して、行われる。
【0086】
コントローラ108は、次の二段階の判定を共に合格した場合のみ、ボビン処理装置を作動させる。第一段階の判定は、主センサと副センサとが、主センサおよび副センサのそれぞれに対応する検出位置間の搬送経路の長さに応じた時間差で、物品の検出信号を発信したか否かの判定である。前述した実施例1における判定と同様であり、時間差をもって二ヶ所で検出信号が発信された場合に、トレイ5もしくはボビン3・4の存在が検出されたと、コントローラ108は判断する。
【0087】
次に、第二段階の判定として、コントローラ108は、ICタグリーダー19の読取結果に基づいて、主センサに対応するボビン処理装置に、ボビンが正しく到着しているか否かを判定する。ICタグリーダー19は、ICタグを内蔵したボビンが接近してきて通信範囲内に存在する場合のみ、そのICタグの読取が可能である。このため、この第二段階の判定により、ボビン処理装置に、間違いなくボビンが到着しているか(接近しているか)否かが特定される。そして、コントローラ108は、この第二段階の判定に合格しない場合は、第一段階の判定に合格していたとしても、そのボビン処理装置の作動を許可しない。このようにして、ボビン処理装置の誤作動をより一層防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】自動ワインダーを示す全体平面図である。
【図2】自動ワインダーに備えるトレイ搬送装置の構成を示す平面図である。
【図3】ボビン抜取り装置を示す斜視図である。
【図4】ボビン投下装置を示す斜視図である。
【図5】口出し処理に係るバンチ巻き解舒装置、糸端処理装置、口出し装置を示す斜視図である。
【図6】ボビン処理部に配置されるトレイやボビンの検出位置および当該検出に係るセンサのレイアウトを示す平面図である。
【図7】搬送経路上の特定の二箇所にあるセンサからの検出信号の発信時刻を示す図である。
【図8】ボビン処理部に備えるボビン処理装置の作動制御機構を示すブロック図である(実施例1)。
【図9】ボビン処理部に備えるボビン処理装置の作動制御機構を示すブロック図である(実施例2)。
【符号の説明】
【0089】
1 巻取部
2 ボビン処理部
3 実ボビン
4 空ボビン
5 トレイ
6 トレイセンサ
7 ボビンセンサ
8 コントローラ
23 ボビン抜取り装置
24 ボビン投下装置
25 バンチ巻き解舒装置
26 糸端処理装置
27 口出し装置
30 トレイ搬送装置
P1〜P17 検出位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビン上の糸をパッケージに巻き取る巻取部に至る搬送経路に沿って、ボビンを載置可能なトレイを搬送するトレイ搬送装置と、
前記搬送経路上を搬送される前記ボビンに処理を施すボビン処理装置と、
前記搬送経路上に複数配置され、前記トレイもしくは前記ボビンの有無を検出するセンサと、
前記ボビン処理装置を作動および停止させる制御装置と、
を備えるボビン処理部であって、
前記制御装置は、少なくとも一つの前記ボビン処理装置について、前記センサのうち当該ボビン処理装置に対応して設けられる主センサと、前記センサのうち前記主センサの前記搬送経路における上流側に配置される副センサとが、前記主センサから前記副センサまでの前記搬送経路の長さに応じた時間差で、前記トレイもしくは前記ボビンの存在を検出したときに、当該ボビン処理装置を作動させる作動制御を行う、
ボビン処理部。
【請求項2】
前記副センサが前記主センサの隣に配置されている、
請求項1に記載のボビン処理部。
【請求項3】
前記トレイ搬送装置は、前記トレイの搬送速度を可変に構成されると共に、
前記制御装置は、前記搬送速度の変更に応じて前記時間差を変更する、
請求項1又は請求項2に記載のボビン処理部。
【請求項4】
前記ボビン処理装置を、
前記トレイより、前記ボビンを把持手段により把持して抜き取るボビン抜取り装置とした、
請求項1から請求項3のいずれかに記載のボビン処理部。
【請求項5】
前記ボビン処理装置を、前記トレイに前記ボビンを載せるボビン投下装置とした、
請求項1から請求項3のいずれかに記載のボビン処理部。
【請求項6】
前記ボビン処理装置を、前記トレイ上の前記ボビンより糸端をエア吸引手段により吸引して取り出す口出し装置とした、
請求項1から請求項3のいずれかに記載のボビン処理部。
【請求項7】
前記ボビンにICタグを設けると共に、
前記主センサが対応して設けられる前記ボビン処理装置に、前記ボビン内のICタグを検出するタグ読取装置を備え、
前記制御装置は、前記タグ読取装置が前記ICタグを読み取らない場合は、該タグ読取装置を備える前記ボビン処理装置における前記作動制御を許可しない、
請求項1から請求項6のいずれかに記載のボビン処理部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−247517(P2008−247517A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88681(P2007−88681)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】