説明

ボリア・アルミナ触媒を用いた酸化的脱水素化法

本発明は、アルキル置換された芳香族炭化水素出発化合物を、それぞれ、対応するアルケニル置換された芳香族炭化水素生成物にオキシ脱水素化するプロセスであって、ボリア・アルミナ触媒の存在下において、脱水素化条件で、出発化合物と酸化剤を接触させる工程を有してなり、このボリア・アルミナ触媒が共沈法により調製されるものであるプロセスに関する。この共沈法は、有機媒質中のアルミニウム塩の溶液を調製し、この溶液に、ホウ素化合物を加え、次いで、先の工程において得られた混合物にアンモニアガスを加えて、沈殿物および/またはゲルを形成する各工程を有してなる。このプロセスによって、高い選択率で、エチルベンゼンのスチレンへのオキシ脱水素化が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキル置換された芳香族炭化水素出発化合物を対応するアルケニル置換された芳香族炭化水素生成物に酸化的脱水素化するプロセスであって、共沈法により調製されたボリア・アルミナ触媒の存在下において、脱水素化条件で、出発化合物と酸化剤を接触させる工程を有してなるプロセスに関する。より詳しくは、本発明は、エチルベンゼンのスチレンへの酸化的水素化(oxidative dehydrogenation)法に関する。本発明はさらに、そのボリア・アルミナ触媒を製造する共沈法に関する。
【背景技術】
【0002】
そのようなプロセスが非特許文献1から公知である。この文献には、ホウ素原子のアルミニウム原子に対する比が0.1か0.15である、以後、ボリア・アルミナ触媒と称するホウ素修飾酸化アルミニウム触媒の存在下における、エチルベンゼンの酸化的水素化(オキシ脱水素化(oxydehydrogenation)とも呼ばれる)によりスチレンを生成するプロセスが開示されている。この触媒は、適切な酸(例えば、ホウ酸)による予め形成されたアルミナの含浸法により調製され、次いで、4時間に亘り500℃でか焼された。
【0003】
スチレンは、非常に重要な芳香族炭化水素化合物であり、合成ゴム、ABSおよびポリスチレンのためのモノマー並びに原料として広く用いられている。従来、スチレンは、約600℃での酸化鉄系触媒に蒸気を過剰に流すことによるエチルベンゼンの非酸化的脱水素化によって、工業的に製造されており、転化率は約60%であり、選択率は約90%であった。あるいは、スチレンへのエチルベンゼンの酸化的脱水素化(ODEB)は、当該技術分野における公知の反応である。炭化水素が酸素分子と反応させられる酸化的脱水素化では、非酸化的脱水素化とは対照的に、実質的に定量的な転化が達成可能になる。
【0004】
リン酸塩、アルミナ、バナジウムおよび炭素に基づく触媒、炭素担持触媒または金属が添加されたアモルファス酸化チタン触媒を含む、アルキル置換芳香族化合物の対応するアルケニル置換芳香族化合物へのオキシ脱水素化のための多数の触媒が、当該技術分野において用いられてきた。例えば、特許文献1には、触媒としての金属リン酸塩の使用が開示されている。特許文献2には、オキシ脱水素化触媒としての無機固形物上に担持された炭素の使用が教示されている。さらに、特許文献3は、粘土、ゼオライトおよびTi、Zr、Zn、Th、Mg、Ca、Ba、SiおよびAlの酸化物を含む担体に施された、V、Cr、Mn、Fe、Co、Pb、Bi、Mo、UおよびSnからなる群より選択される還元性金属の酸化物の使用に関する。特許文献4には、アルキル芳香族化合物の接触オキシ脱水素化に適した分子ふるい炭素が開示されている。
【0005】
触媒担体として、または触媒として使用する、ボリア・アルミナ組成物が、従来技術に記載されてきた。例えば、特許文献5および6には、適切な溶媒と水の存在下における水酸化アルミニウムおよび水酸化ホウ素の加水分解を含む共沈法により調製されたボリア・アルミナ担体が開示されており、得られた沈殿物は、濾過され、乾燥され、か焼され、少量の触媒材料と組み合わされ、さらに、炭化水素転化プロセス、例えば、石油系原料の水素化分解のための触媒として用いられる。特許文献7には、アルミニウムとホウ素の比が異なる、一連のボリア・アルミナ触媒が開示されており、それらの触媒は、硝酸アルミニウム、ホウ酸、蒸留水および水酸化アンモニウムから調製され、そのように得られた沈殿物は、水で洗浄され、乾燥され、600℃でか焼された。これらの触媒は、炭化水素の改質に利用された。特許文献8は、アルミニウムにホウ素化合物を含浸させることにより調製されたボリア・アルミナ系触媒に関する。非特許文献2において、アルミナ・ボリア触媒は、化学蒸着により調製され、次いで、それらの活性が、エタンからエチレンへの酸化反応において、多孔質と非多孔質のアルミナ上の含浸触媒と比較された。非特許文献3は、沈殿法により合成されたホウ酸アルミニウム触媒に関し、ここでは、硝酸アルミニウムとホウ酸の水溶液が、炭酸アンモニウム溶液またはアンモニア溶液中に入れられた。非特許文献4は、共沈法により調製されたホウ酸アルミニウム・アルミナ触媒に関し、ここでは、水酸化アンモニウムの水溶液が、硝酸アルミニウムとホウ酸の混合水溶液に加えられ、得られた沈殿物が、脱イオン水で洗浄され、乾燥させ、600〜1100℃でか焼された。
【0006】
エチルベンゼンのスチレンへの酸化的脱水素化法にボリア・アルミナ触媒を使用することが、非特許文献5からも公知である。この文献には、アルミナに硫酸、リン酸またはホウ酸を含浸させ、X(X=B、S、P、Cl)とアルミニウムとの比を0.05とすることによって、その触媒を製造するプロセスが開示されている。
【0007】
本出願の脈絡の中で、以下の定義が用いられる。活性は、使用する特定の反応条件(温度、圧力、接触時間など)で炭化水素反応体を生成物に転化する触媒の能力を表す。選択率は、典型的に、転化された反応体の量に対する、所望の生成物または得られた生成物の量を称する。より詳しくは、エチルベンゼンのオキシ脱水素化法において、活性は、通常、特定の反応条件での、所定のエチルベンゼンの供給量の転化量を称し、典型的に、エチルベンゼンの消失基準で測定され、供給されたエチルベンゼンのモルパーセントで表される。選択率は、消失したエチルベンゼンの量に対する、特定の活性または反応条件で得られたスチレンのモルパーセントとして表され、収率は、通常、モルパーセント基準で表される、供給されたエチルベンゼンのモル数で割られた、生成されたスチレンのモル数として記載される。
【0008】
エチルベンゼンのスチレンへのオキシ脱水素化に用いられる、非特許文献6から公知のボリア・アルミナ触媒の欠点は、スチレンに対する選択率が低いことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4255283号明細書
【特許文献2】米国特許第3497564号明細書
【特許文献3】米国特許第5895829号明細書
【特許文献4】米国特許第4652690号明細書
【特許文献5】米国特許第3993557号明細書
【特許文献6】米国特許第3954670号明細書
【特許文献7】米国特許第5880051号明細書
【特許文献8】米国特許第3018244号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】publication W. Kania, M. Sopa - "Oxidative dehydrogenation of ethyl-benzene to styrene and modified alumina", Polish J. Chem, 67 (1993), 419-423
【非特許文献2】G. Colorio et al. - "Partial oxidation of ethane over alumina-boria catalysts", Applied Catalysis A: General 137 (1996), 55-68
【非特許文献3】A. Douy - "Aluminium borates: synthesis via a precipitation process and study of their formation by DSC analysis", Solid State Sciences 7 (2005), 117-122
【非特許文献4】S.A. El-Hakam, E. A. El-Sharkawy - "Structural characterization and catalytic properties of aluminium borates-alumina catalysts", Material Letters 36 (1998), 167- 173
【非特許文献5】R. Fiedorow et al. - "Activity of alumina promoted by inorganic acids in the process of oxidative dehydrogenation of ethyl- benzene", Bull, de I'Acad. Polonaise 8 (1978), vol. XXVI
【非特許文献6】Polish J. Chem., 67, 419-423 (1993) document
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の課題は、アルカリ芳香族または脂肪族炭化水素の酸化的脱水素化における選択率が改善された触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、本発明により、アルキル芳香族炭化水素をオキシ脱水素化するプロセスであって、ボリア・アルミナ触媒が、以下の:
a) 有機媒質中のアルミニウム塩の溶液を調製し、
b) この溶液にホウ素化合物を加え、
c) 工程b)において得られた混合物にアンモニアガスを加えて、沈殿物および/またはゲルを形成する、
各工程を含む共沈法により調製されるものであるプロセスによって達成される。
【0013】
確かに、欧州特許出願公開第0194828A2号明細書には、共沈法により調製されたボリア・アルミナ触媒を用いてクメンをメチルスチレンに(オキシ)脱水素化するプロセスが既に開示されているが、この文献において、ボリア・アルミナ触媒は、水酸化アンモニウム溶液を用いることによって、水性媒質中で調製されたものである。その上、この文献には、ホウ酸アルミニウムが不十分な(オキシ)水素化触媒であることを、この触媒を上述したプロセスに使用すると転化率および選択率が低くなるという理由で、明らかに述べることによって、本発明とは異なることを教示している。
【0014】
本発明によるプロセスは、アルキル芳香族炭化水素の酸化的脱水素化において高い選択率を示すことが分かった。本発明による酸化的脱水素化プロセスの別の利点は、このプロセスは、蒸気を用いずに、比較的低い反応装置の温度で実施することができ、その結果、エネルギー消費を少なくできることである。
【0015】
本発明によるプロセスにおいて、少なくとも1つの脱水素化可能なアルキル置換基を有するどのような芳香族炭化水素も、出発化合物として使用できる。適切な例としては、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、第2ブチルベンゼンなどの一置換芳香族化合物;エチルトルエン、ジエチルベンゼン、t−ブチルエチルベンゼンなどの二置換芳香族化合物;エチルキシレンなどの三置換芳香族化合物;エチルナフタレン、メチルエチルナフタレン、ジエチルナフタレンなどの縮合環芳香族化合物などが挙げられる。この反応において特に好ましい芳香族反応体はエチルベンゼンであり、これは、工業的に重要なスチレンに容易に転化される。
【0016】
本発明によるプロセスにおいて、利用される酸化剤は、純粋な酸素、二酸化炭素、酸化窒素または空気であってよい。その酸化剤は、有利な選択率を与えるので酸素であることが好ましい。反応装置に供給される酸化剤のアルキル芳香族化合物に対するモル比は、0.1から10までに及んでよく、0.8から1が好ましい。
【0017】
本発明によるプロセスは、400℃より高い温度で行ってよく、450℃より高い温度が好ましく、470℃より高い温度がより好ましく、475℃より高い温度が最も好ましい。高温で反応速度が増すが、温度が高すぎると、選択率が低くなってしまう。したがって、反応温度は、600℃より低く、550℃より低いことが好ましく、510℃より低いことがより好ましい。
【0018】
本発明によるプロセスにおいて、Wがグラムで表された触媒の質量であり、Fが毎秒のmlで表された(圧力と温度の標準条件で測定される)反応装置に進入する反応混合物の流量である、W/Fと定義された接触時間は、0.2から1.2g秒/mlの範囲内にあってよく、0.5から0.8g秒/mlが好ましい。
【0019】
本発明による酸化的脱水素化反応は、蒸気の存在下で行っても、蒸気のない状態で行ってもよい。蒸気のアルキル芳香族炭化水素に対する比は、0から10まで様々であってよい。
【0020】
本発明によるプロセスは、固定床または流動床反応装置を含む適切な種類の様々な反応装置で実施することができる。流動床反応装置で動作されるプロセスが、選択率に悪影響を及ぼし得るホットスポットを防ぐという利点のために、好ましい。
【0021】
本発明による酸化的脱水素化プロセスは、従来技術に用いられるような予め形成された固体アルミナの含浸とは対照的に、
(a) 有機媒体中のアルミニウム塩の溶液を調製し、
(b) この溶液にホウ素化合物を加え、
(c) 工程(b)において得られた混合物にアンモニアガスを加えて、沈殿物および/またはゲルを形成する、
各工程を含む共沈法により調製されたボリア・アルミナ触媒の存在下で行われる。この共沈法において、有機媒体中のアルミニウム塩の溶液はホウ素化合物と混合され、必要に応じて条件を変えた後またはさらに別の化合物を加えた後に、B−Al沈殿物および/またはゲルが形成される。
【0022】
有機媒質中に溶解させられる任意のアルミニウム塩を、共沈法に使用することができる。適切な例は、アルミニウムのハロゲン化物、水酸化物、炭酸塩または硝酸塩である。容易に入手でき、有機媒質中の可溶性が高く、選択率の高い触媒が得られるので、硝酸アルミニウムを使用することが好ましい。
【0023】
溶液は、アルミニウム塩を有機媒質中に溶解させることによって調製される。本明細書の脈絡の中で、「有機媒質」は、含水量が、ホウ素塩を溶解させるのに必要な最少量に限定される媒質であると理解される。共沈法に、先に定義されたような任意の有機媒質を使用することができる。本発明に使用できる有機媒質の例には、アルコール、アセトンなどのケトン、酢酸エチルなどのエステルのような溶媒がある。
【0024】
アルコールが好ましく、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、第2ブチルアルコール、ペンタノール−1、ペンタノール−2、3−メチルブタノール−1、2−メチルブタノール−3、ペンタノール−3、ヘキサノール、様々なメチルペンタノール、様々なジメチルブタノール、様々なヘプチルアルコールまたは様々なオクチルアルコールなどの1から20の炭素原子を有するアルコールがより好ましい。エタノールが、非毒性であり、環境にやさしく、アルミニウム塩がこの溶媒中に高可溶性であるので、最も好ましい有機媒質である。
【0025】
ボリア・アルミナ触媒を製造するのに適したホウ素化合物としては、四ホウ酸アンモニウム四水和物などの様々な塩、トリイソプロポキシホウ素などのホウ素アルコキシドまたはホウ酸が挙げられる。好ましいホウ素化合物はホウ酸である。
【0026】
ホウ素化合物は、固体または溶液として加えてもよい。その溶液は、ホウ素塩を有機媒質中、あるいは水中または水と有機媒質との混合物中に溶解させることによって調製され、このように調製された溶液の含水量は、ホウ素塩を溶解させるのに必要な最少量に限定される。
【0027】
溶液または固体として使用されるホウ素化合物およびアルミニウム塩溶液は、所望の溶解を完了するのに必要な十分な時間、通常は、1から2時間に亘り、撹拌することによって混合される。
【0028】
アンモニアまたはホスフィンなどの塩基性ガスが、沈殿物および/またはゲルを形成するのに十分な量で混合物に加えられる。好ましい塩基性ガスはアンモニアである。沈殿および/または完全なゲル化は、6および7の間のpHで行われることが好ましい。
【0029】
反応が完了した後、形成された沈殿物またはゲルを洗浄し、乾燥させ、その後、か焼してよい。乾燥時間は、溶媒の残りを完全に確実に除去するために、3から10時間に亘り、70から120℃、好ましくは100から110℃に及んでよい。か焼温度は、最適な性能を示す触媒を得るために、好ましくは少なくとも500℃、より好ましくは少なくとも600℃またはさらには少なくとも700℃であるが、好ましくは900℃未満、より好ましくは850℃未満である。
【0030】
本発明はまた、各工程および優先傾向が上述したようなものである、ボリア・アルミナ触媒を製造する共沈法に関する。
【0031】
さらに、本発明は、上述した共沈法により得られるようなボリア・アルミナ触媒に関する。このボリア・アルミナ触媒は、アルカリ芳香族炭化水素をオキシ脱水素化するプロセスにおいて改善された挙動を示す。この触媒は、0.01から1.0、好ましくは0.05から0.8、より好ましくは0.1から0.5、最も好ましくは0.2から0.3の比で、ホウ素およびアルミニウムを含有する。
【実施例】
【0032】
本発明を、以下の非限定的実験を参照してさらに説明する。
【0033】
実施例1
73.5837gの硝酸アルミニウム(AN)を196mlのエタノール中に溶解させ、1時間に亘り撹拌した。次いで、2.4258gのホウ酸を25mlの再蒸留水(DDW)中に溶解させることによって調製されたホウ酸溶液を加え、この混合物を1時間に亘り撹拌した。これにアンモニアガスを通した時に、この溶液はどろっとしたペーストになり、pHは6.2であった。100mlのエタノールを加えて、ペーストを溶解させ、約90℃で還流させながら一晩放置した。得られたゲルを3時間に亘り110〜120℃で空気乾燥させた。この触媒サンプルの半分の量を20時間に亘り600℃でか焼した(実施例1a)。触媒サンプルの残りの半分の量を20時間に亘り800℃でか焼した(実施例1b)。
【0034】
実施例2
73.5837gの硝酸アルミニウム(AN)を196mlのエタノール中に溶解させ、1時間に亘り撹拌した。次いで、3.0322gのホウ酸を25mlのDDW中に溶解させることによって調製されたホウ酸溶液を加え、この混合物を1時間に亘り撹拌した。これにアンモニアガスを通した時に、この溶液はどろっとしたペーストになり、pHは8より高かった。氷酢酸を加えて、pHを約6に調節した。次いで、100mlのエタノールを加えて、ペーストを溶解させ、約90℃で還流させながら一晩放置した。得られたゲルを3時間に亘り110〜120℃で空気乾燥させた。このサンプルを20時間に亘り800℃でか焼した。
【0035】
比較実験A
25gの中性アルミナ(Acros;200から300μmの粒径)を15分間に亘り25mlのホウ酸溶液(25mlのDDW中に1.5161gのH3BO3)中に浸漬し、その後、2時間に亘り沸騰させた。その後、サンプルを110℃で一晩乾燥させ、6時間に亘り800℃でか焼した。
【0036】
比較実験B
20gのアルミニウムイソプロポキシドを48.96mlのDDW中に溶解させ、この混合物を1時間に亘り80〜85℃で撹拌した。pHが8.3から3.7まで減少するまで、1MのHNO3を加えた。この混合物を約95℃で一晩還流させ、2時間に約90〜95℃で空気乾燥させた。このサンプルを5時間に亘り660℃で、次いで、2時間に亘り800℃でか焼した。冷却後、得られたアルミナを粉砕し、粒径が0.5から1mmのアルミナ2.8333gにホウ素を含浸させた。含浸については、上述のように得られた1.833gのアルミナ(粒径=0.5〜1mm)を4mlのホウ酸溶液(ホウ酸を溶解させるために50℃に加熱された4mlのDDW中0.1718gのH3BO3)中に浸漬し、その後、2時間に亘り100℃で加熱し、炉内で一晩乾燥させた。サンプルは、使用前に4時間に亘り500℃でか焼した。
【0037】
比較実験C
187.565gのAl(NO33・9H2Oを250mlの再蒸留水(DDW)中に溶解させて、2Mの硝酸アルミニウム溶液を得た。この硝酸アルミニウム溶液に1.5458gのH3BO3を加えた。この混合物を1.5時間に亘り撹拌し、その後、14.31mlの酢酸を加えた。pHは1未満であった。次いで、濃アンモニア溶液を、ビュレットを用いて滴下した。ゾルが形成されるのを観察したときにアンモニアの添加を停止したところ、pHは6.3に達していた。この混合物を約95℃で還流しながら一晩放置した。還流を停止させた後、pHは4.3であった。次いで、この内容物を、ゲルが形成されるまで、約2時間に亘り空気中で加熱した。このゲルを110℃で真空炉内で一晩乾燥させ、その後、5時間に亘り800℃でか焼した。
【0038】
調製された触媒を、エチルベンゼン(EB)のスチレンへの酸化的脱水素化プロセスにおいて試験した。エチルベンゼンを、29.1sccmの流量で反応装置に供給し、0.25gのボリア・アルミナ触媒の存在下で、酸素と接触させた時に、対応するスチレンに酸化的に脱水素化した。酸素のEBに対するモル比は0.9であった。その他の条件には、4:1のH2O/EB比および0.52g秒/mlの接触時間があった。触媒サンプルは、440から527℃の反応装置の温度で試験した。表1に示された選択率のデータは、少なくとも3時間に亘り運転した触媒活性の安定化後に測定した。その結果は、含浸法により調製されたボリア・アルミナ触媒(比較実験A〜C)を使用したオキシ脱水素化プロセスに関して得られたスチレンの選択率よりも、有機媒質中の共沈により調製されたボリア・アルミナ触媒を使用し、NH3ガスを用いた(実施例1a、1bおよび2)オキシ脱水素化プロセスに関して得られたスチレンの選択率のほうがずっと高いことを示す。その上、水およびアンモニア溶液中の硝酸アルミニウム溶液を用いた共沈法により調製された触媒(比較実験C)は、エタノールおよびアンモニアガス中の硝酸アルミニウムを用いた共沈により得られた触媒(実施例1a、1bおよび2)よりも、選択率がずっと低かった。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル置換された芳香族炭化水素出発化合物を対応するアルケニル置換された芳香族炭化水素生成物にオキシ脱水素化するプロセスであって、ボリア・アルミナ触媒の存在下において脱水素化条件で、前記出発材料および酸化剤を接触させる工程を有してなるプロロセスにおいて、前記ボリア・アルミナ触媒が、
a) 有機媒質中のアルミニウム塩の溶液を調製し、
b) 該溶液にホウ素化合物を加え、
c) 工程b)において得られた混合物にアンモニアガスを加えて、沈殿物および/またはゲルを形成する、
各工程を含む共沈法により調製されたものであることを特徴とするプロセス。
【請求項2】
前記有機媒質がエタノールであることを特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
前記アルミニウム塩が硝酸アルミニウムであり、前記ホウ素化合物がホウ酸であることを特徴とする請求項1または2記載のプロセス。
【請求項4】
工程c)における混合物のpHが6から7の範囲にあることを特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項5】
前記沈殿物を600〜850℃の温度でか焼する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載のプロセス。
【請求項6】
前記出発材料がエチルベンゼンであり、前記生成物がスチレンであることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載のプロセス。
【請求項7】
前記酸化剤が酸素であることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載のプロセス。
【請求項8】
前記接触させる工程が、475から510℃の温度で行われることを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載のプロセス。
【請求項9】
ボリア・アルミナ触媒を製造する共沈方法であって、
a) 有機媒質中のアルミニウム塩の溶液を調製し、
b) 該溶液にホウ素化合物を加え、
c) 工程b)において得られた混合物にアンモニアガスを加えて、沈殿物および/またはゲルを形成する、
各工程を有してなる方法。
【請求項10】
前記有機媒質がエタノールであることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記アルミニウム塩が硝酸アルミニウムであり、前記ホウ素化合物がホウ酸であることを特徴とする請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
工程c)における混合物のpHが6から7の範囲にあることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記沈殿物を600〜850℃の温度でか焼する工程をさらに含むことを特徴とする請求項9から12いずれか1項記載の方法。
【請求項14】
請求項9から13いずれか1項記載の方法により得られるボリア・アルミナ触媒。
【請求項15】
0.1から10の比でホウ素およびアルミニウムを含有することを特徴とする請求項14記載のボリア・アルミナ触媒。

【公表番号】特表2010−527948(P2010−527948A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508742(P2010−508742)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004098
【国際公開番号】WO2008/141827
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(502132128)サウディ ベーシック インダストリーズ コーポレイション (109)
【Fターム(参考)】