説明

ボルデテラの検出アッセイ

IS481およびIS1001ゲノム挿入配列の存在を検出することによりそれぞれ百日咳菌およびパラ百日咳菌を検出するための方法および組成物が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,病原体の検出の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の本発明の背景に関する記載は,単に読者の本発明に関する理解を促進するために提供するものであり,本発明に対する従来技術を記述または構成すると認めるものではない。
【0003】
百日咳は,伝染性の強い呼吸系の疾病である。百日咳の症状としては,激しい咳および続く吸入フープ,時には嘔吐のエピソードがある。極端な場合には,これらの症状は低酸素症,永久脳障害,さらには死亡につながる。大部分の症例(80−98%)は,小さいグラム陰性の細菌である百日咳菌(Bordetella pertussis)により引き起こされるが,少ないが無視できない数の症例(2−20%)はパラ百日咳菌(Bordetella parapertussis)により引き起こされる(Mattoo et al.,Clin.Microbiol.Rev.,18:326−382,2005)。パラ百日咳菌により引き起こされる百日咳の症状は,典型的には百日咳菌により引き起こされるものより軽いが,臨床兆候のみに基づく鑑別診断は困難である。まれに,B.bronchisepticaまたはB.holmesiiの感染により引き起こされる百日咳様の症状がある。
【0004】
百日咳をその初期に診断することは,兆候および症状が他の一般的呼吸器疾患,例えば,風邪,インフルエンザ,または気管支炎と似ているため,困難である。伝統的には,百日咳を決定的に診断するために細菌の培養が用いられてきた。患者の鼻および/または喉から粘液を採取し,培養のために医学実験室に送る。陽性の結果は決定診断であると見なされるが,ボルデテラ属の培養には,診断が得られるまで典型的には5から7日間を要する。また,ボルデテラ属の細菌の培養は,細菌の難しい性質のため偽陰性の結果を生じやすい。
【0005】
抗体アッセイ,例えばELISAも,特徴的な細菌抗原を検出することによりボルデテラ種を診断するために用いられている。最も一般的には,ボルデテラ感染を示すために,百日咳毒素蛋白質の検出が用いられている。これらの抗体に基づくアッセイは良好な感度および特異度を有するが,これらは典型的には,非侵襲的に採取した粘膜サンプルではなく患者血液のサンプルを必要とし,さらに,感染が初期および/または回復期であることを必要とする。したがって,これらのアッセイは,疾病経過の適切な時に患者サンプルを取得しないと,偽陰性の結果を生じやすい。
【0006】
ボルデテラ感染を検出する別の方法としては,直接蛍光抗体(DFA)試験および種々のPCR系の方法がある。DFA試験は,非侵襲的に取得した粘膜サンプルを用いてボルデテラを検出することができるという利点を有するが,感度があまり高くない。PCR系のアッセイは広く用いられるようになってきている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】(Mattoo et al.,Clin.Microbiol.Rev.,18:326−382,2005)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明は,生物学的サンプルにおいて百日咳菌および/またはパラ百日咳菌の存在または非存在を判定するための組成物および方法を提供する。本発明は,単独で,または臨床症状または他の指標と組み合わせて,百日咳について個体を診断するために用いることができる。詳細には,本発明は,サンプル中で細菌の核酸の存在を検出することにより,百日咳を引き起こすことが知られている病原性細菌(ボルデテラ種)の検出を可能とする。検出の方法論は,細菌のゲノム中において細菌感染の有用な指標である特定の標的配列を発見したことに基づく。
【0009】
したがって,1つの観点においては,本発明は,生物学的サンプルにおいて,
(a)配列番号2またはその相補体と少なくとも95%同一である少なくとも14個の連続するヌクレオチドを有するIS481標的核酸,および
(b)配列番号8またはその相補体と少なくとも95%同一である少なくとも14個の連続するヌクレオチドを有するIS1001標的核酸
の存在または非存在を検出することにより,百日咳菌および/またはパラ百日咳菌の存在または非存在を判定する方法を提供し,ここで,前記IS481標的核酸の存在は百日咳菌の存在を示し,前記IS1001標的核酸の存在はパラ百日咳菌の存在を示す。
【0010】
ある態様においては,IS481標的核酸およびIS1001標的核酸の一方または両方を増幅する(例えばPCRにより)。
【0011】
別の態様においては,本発明の方法は下記の工程を含む:
(a)IS481標的核酸またはそのフラグメントを増幅するのに適した第1のプライマー対を用意し,およびIS1001標的核酸またはそのフラグメントを増幅するのに適した第2のプライマー対を用意し,
(b)IS481標的核酸がサンプル中に存在する場合には第1の反応生成物が生成し,IS1001標的核酸がサンプル中に存在する場合には第2の反応生成物が生成するのに適した条件下で,工程(a)のプライマー対を含むマルチプレックスプライマー伸張反応を実施し;そして
(c)配列番号2またはその相補体のヌクレオチド配列と少なくとも95%同一である少なくとも14個の連続するヌクレオチドを有する第1の反応生成物の存在または非存在を検出することにより,百日咳菌の存在または非存在を判定し,および/または,配列番号8またはその相補体のヌクレオチド配列と少なくとも95%同一である少なくとも14個の連続するヌクレオチドを有する第2の反応生成物の存在または非存在を検出することにより,パラ百日咳菌の存在または非存在を判定する。
【0012】
別の観点においては,本発明はまた,配列番号2またはその相補体の少なくとも14個の連続するヌクレオチドを有するIS481標的核酸の存在または非存在を検出することにより,生物学的サンプル中において百日咳菌の存在または非存在を判定する方法を提供する。
【0013】
1つの態様においては,百日咳菌を検出する方法は以下の工程を含む:
(a)IS481標的核酸またはそのフラグメントを増幅するのに適したプライマー対を用意し;
(b)IS481標的核酸が前記サンプル中に存在する場合には反応生成物が生成するのに適した条件下で工程(a)のプライマー対を含むプライマー伸張反応を実施し;そして
(c)配列番号2のヌクレオチド配列またはその相補体と少なくとも95%同一である少なくとも14個の連続するヌクレオチドを有する反応生成物の存在または非存在を検出することにより,百日咳菌の存在または非存在を判定する。
【0014】
別の観点においては,本発明はまた,配列番号8またはその相補体の少なくとも14個の連続するヌクレオチドを有するIS1001標的核酸の存在または非存在を検出することにより,生物学的サンプル中においてパラ百日咳菌の存在または非存在を判定する方法を提供する。
【0015】
1つの態様においては,パラ百日咳菌を検出する方法は,以下の工程を含む:
(a)IS1001標的核酸またはそのフラグメントを増幅するのに適したプライマー対を用意し;
(b)IS1001標的核酸が前記サンプル中に存在する場合には反応生成物が生成するのに適した条件下で工程(a)のプライマー対を含むプライマー伸張反応を実施し;そして
(c)配列番号8のヌクレオチド配列またはその相補体と少なくとも95%同一である少なくとも14個の連続するヌクレオチドを有する反応生成物の存在または非存在を検出することにより,パラ百日咳菌の存在を判定する。
【0016】
本発明のすべての観点の好ましい態様においては,IS481反応生成物は,配列番号2またはその相補体と少なくとも95%(例えば,少なくとも99%または100%)同一である少なくとも20,25,30,35,40,45,50,75,100,125,または140個の連続する核酸を含む。。別の好ましい態様においては,IS481反応生成物は,配列番号3またはその相補体の少なくとも15,20,25,30,35,40,45,50,75,または85個の連続する核酸と少なくとも95%(例えば少なくとも99%または100%)同一である。別の好ましい態様においては,IS481反応生成物は,約175,150,125,100,または75未満の核酸の長さである。
【0017】
別の好ましい態様においては,IS481プライマー(すなわち,IS481またはそのフラグメントを増幅するのに適したプライマー)の少なくとも1つは,配列番号4または5の配列またはその相補体を有する核酸を含む。1つの態様においては,IS481標的核酸は,オリゴヌクレオチドプローブを用いて検出される。オリゴヌクレオチドプローブは,好ましくは配列番号6または27の配列またはその相補体を有し,検出可能なように標識されている。別の好ましい態様においては,検出可能な標識は蛍光標識である。
【0018】
本発明のすべての観点の好ましい態様においては,IS1001反応生成物は,配列番号8またはその相補体と少なくとも95%(例えば,少なくとも99%または100%)同一である,少なくとも20,25,30,35,40,45,50,75,100,125,140,160,または180個の連続する核酸を含む。別の好ましい態様においては,IS1001反応生成物は,配列番号9またはその相補体の少なくとも15,20,25,30,35,40,45,50または70個の連続する核酸と少なくとも95%(例えば少なくとも99%または100%)同一である。別の好ましい態様においては,IS1001標的核酸は,約175,150,125,100,または75未満の核酸の長さである。
【0019】
別の好ましい態様においては,IS1001プライマー(すなわち,IS1001またはそのフラグメントを増幅するのに適当なプライマー)の少なくとも1つは,配列番号10または11の配列またはその相補体を有する核酸を含む。1つの態様においては,IS1001反応生成物は,オリゴヌクレオチドプローブを用いて検出する。オリゴヌクレオチドプローブは,好ましくは配列番号12の配列またはその相補体を有し,検出可能なように標識されている。別の好ましい態様においては,検出可能な標識は蛍光標識である。
【0020】
上述のいずれかの方法の別の好ましい態様においては,本発明の方法はさらにリアルタイムPCRを含む。別の態様においては,プライマーの少なくとも1つはスコーピオンプライマーである。好適なIS481スコーピオンプライマーとしては,例えば,配列番号13または28の配列またはその相補体を有する核酸プライマーが挙げられる。好適なIS1001スコーピオンプライマーとしては,例えば,配列番号14の配列またはその相補体を有する核酸プライマーが挙げられる。
【0021】
別の観点においては,本発明は,IS481標的核酸をコードする単離された核酸を提供する。IS481標的核酸は,配列番号2またはその相補体の少なくとも20(例えば,少なくとも25,30,35,40,45,50,75,100,125または140)個の連続するヌクレオチドと実質的に同一であり,1000ヌクレオチド未満(例えば,750,500,250,200,175,150,125,100,または75ヌクレオチド未満)の長さである。1つの態様においては,IS481標的核酸は配列番号3の少なくとも20個の連続するヌクレオチドと実質的に同一のヌクレオチド配列を含む。
【0022】
別の観点においては,本発明は,IS1001標的核酸をコードする単離された核酸を提供する。IS1001標的核酸は,配列番号8またはその相補体の少なくとも20(例えば,少なくとも25,30,35,40,45,50,75,100,125,150,または175)個の連続するヌクレオチドと実質的に同一であり,1000ヌクレオチド未満(例えば,750,500,250,200,175,150,125,100,または75ヌクレオチド未満)の長さである。1つの態様においては,IS1001標的核酸は,配列番号9の少なくとも20個の連続するヌクレオチドと実質的に同一のヌクレオチド配列を含む。
【0023】
別の観点においては,本発明は,IS481標的核酸またはIS1001標的核酸を増幅,および/または検出するのに適したオリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブを提供する。本発明のIS481プライマーおよびプローブは,10−50(例えば,12,14,16,18,20,22,25,30,35,40,または45)ヌクレオチドの長さであり,配列番号2の対応するヌクレオチド配列と実質的に同一(好ましくは100%同一)である。本発明のIS1001プライマーおよびプローブは,10−50(例えば,12,14,16,18,20,22,25,30,35,40,または45)ヌクレオチドの長さであり,配列番号8の対応するヌクレオチド配列と実質的に同一(好ましくは100%同一)である。好ましい態様においては,IS481プライマーおよびプローブは配列番号4−6または27のヌクレオチド配列を有する。別の好ましい態様においては,IS1001プライマーおよびプローブは配列番号10−12のヌクレオチド配列を有する。
【0024】
別の観点においては,本発明は,IS481標的核酸およびIS1001標的核酸を増幅および検出するためのスコーピオンプライマーを提供し,ここで,スコーピオンプライマーは,それぞれ個々にオリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブの要件を満たすオリゴヌクレオチドプローブ配列およびオリゴヌクレオチドプライマー配列を含む。好ましい態様においては,IS481スコーピオンプライマーは,配列番号13のヌクレオチド配列を有する。別の好ましい態様においては,IS1001スコーピオンプライマーは配列番号14のヌクレオチド配列を有する。
【0025】
別の観点においては,本発明は,
(a)配列番号2の配列またはその相補体を有する核酸に特異的にハイブリダイズする第1のプライマー対,および配列番号2の配列またはその相補体を有する核酸に特異的にハイブリダイズしうる第1のプローブ,および
(b)配列番号8の配列またはその相補体に特異的にハイブリダイズする第2のプライマー,および配列番号8の配列またはその相補体を有する核酸に特異的にハイブリダイズしうる第2のプローブ,
を含むキットを提供する。
【0026】
好ましい態様においては,第1のプライマー対および/または第1のプローブは,配列番号3の配列またはその相補体を有する核酸に特異的にハイブリダイズすることができる。第1のプライマー対の好ましいメンバーは配列番号4−5の配列またはその相補体を有しており,好ましい第1のプローブは配列番号6または27の配列またはその相補体を有する。
【0027】
別の好ましい態様においては,第2のプライマー対および/または第2のプローブは,配列番号9の配列またはその相補体を有する核酸に特異的にハイブリダイズすることができる。第2のプライマー対の好ましいメンバーは,配列番号10−11の配列またはその相補体を有しており,好ましい第2のプローブは配列番号12の配列を有する。
【0028】
好ましくは,プローブはさらに検出可能な標識(例えば蛍光標識)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は,GenBank受託番号M28220(配列番号1)で提供される百日咳菌IS481挿入配列のヌクレオチド配列である。
【図2】図2は,GenBank受託番号X66858(配列番号7)で提供されるパラ百日咳菌IS1001挿入配列のヌクレオチド配列である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の詳細な説明
本発明は,百日咳に最も一般的に関連する病原体である百日咳菌および/またはパラ百日咳菌を同定するのに適した方法,組成物,およびキットを提供する。本発明は,個体から得た生物学的サンプル中で,百日咳菌の挿入配列IS481および/またはパラ百日咳菌の挿入配列IS1001をリアルタイムPCRで検出することに基づく。これらの挿入配列は比較的高いゲノムコピー数を有するため,PCR系の診断アッセイに用いるのに有益である。百日咳菌ゲノムは,典型的には約100−200コピーのIS481配列を含む。そして,パラ百日咳菌ゲノムは,典型的には約20コピーのIS1001配列を含む。
【0031】
本明細書において用いる場合,特に記載しないかぎり,単数形“a,”“an,”および“the”には,複数形の参照が含まれる。すなわち,例えば,“an”オリゴヌクレオチドには複数のオリゴヌクレオチド分子が含まれ,“a”核酸は1またはそれ以上の核酸を表す。
【0032】
本明細書において用いる場合,“約”とは,プラスマイナス10%を意味する。
【0033】
本明細書において用いる場合,“増幅”または“増幅する”との用語は,標的核酸をコピーし,このことにより,選択された核酸配列のコピー数を増加させる方法を含む。増幅は指数関数的であっても直線的であってもよい。標的核酸はDNAであってもRNAであってもよい。このようにして増幅された配列は,“アンプリコン”または“増幅産物”を形成する。下記に記載される例示的方法はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いる増幅に関するものであるが,核酸を増幅するための多くの他の方法が当該技術分野において知られている(例えば,等温法,ローリングサイクル法等)。当業者は,これらの他の方法をPCR法の代わりに,または一緒に用いることができることを理解するであろう。例えば,Saiki,“Amplification of Genomic DNA”,PCR Protocols,Innis et al.,Eds.,Academic Press,San Diego,CA,1990,pp13−20;Wharam,et al.,Nucleic Acids Res.2001 Jun 1;29(11):E54−E54;Hafner,et al.,Biotechniques 2001 Apr;30(4):852−6,858,860;Zhong,et al.,Biotechniques 2001 Apr;30(4):852−6,858,860を参照。
【0034】
本明細書においてポリヌクレオチド(すなわち,ヌクレオチド,例えばオリゴヌクレオチドまたは標的核酸の配列)に関して用いる場合,“相補体”,“相補的な”または“相補性”との用語は,標準的なワトソンクリック塩基対形成規則を表す。一方の配列の5’末端が他方の3’末端と塩基対形成するような核酸配列の相補体は,“アンチパラレル関係”である。例えば,配列“5’−A−G−T−3’”は配列“3’−T−C−A−5’”と相補的である。天然の核酸中には一般に見いだされないある種の塩基も本明細書に記載される核酸に含まれ,これらには,例えば,イノシン,7−デアザグアニン,ロック核酸(LNA),およびペプチド核酸(PNA)がある。相補性は完全である必要はない。安定なデュープレックスは,ミスマッチした塩基対,縮重,またはマッチしていない塩基を含んでいてもよい。核酸技術の当業者は,例えば,オリゴヌクレオチドの長さ,オリゴヌクレオチドの塩基組成および配列,イオン強度およびミスマッチした塩基対の出現率等の多くの変数を考慮して,デュープレックスの安定性を経験的に判定することができる。相補的配列は,DNA配列またはその相補配列に相補的なRNAの配列であってもよく,cDNAであってもよい。本明細書において用いる場合,“実質的に相補的な”との用語は,2つの配列が特異的にハイブリダイズする(下記に定義される)ことを意味する。当業者は,実質的に相補的な配列は,その長さの全体にわたってハイブリダイズする必要がないことを理解するであろう。
【0035】
本明細書において,検出可能な標識からのシグナルを検出してサンプル中の標的核酸の存在を示す文脈において用いる場合,“検出する”との用語は,100%の感度および/または100%の特異度を与える方法である必要はない。よく知られるように,“感度”とは,その人が標的核酸配列を有している場合に試験が陽性である確率である“特異度”とは,その人が標的核酸配列を有していない場合に試験が陰性である確率である。少なくとも50%の感度が好ましいが,少なくとも60%,少なくとも70%,少なくとも80%,少なくとも90%および少なくとも99%の感度は明らかにより好ましい。少なくとも50%の特異度が好ましいが,少なくとも60%,少なくとも70%,少なくとも80%,少なくとも90%および少なくとも99%の感度は明らかにより好ましい。検出は,偽陽性および偽陰性についてのアッセイを包含する。偽陰性率は,1%,5%,10%,15%,20%またはそれより高く,偽陽性率は1%,5%,10%,15%,20%またはそれより高くてもよい。
【0036】
遺伝子フラグメントの文脈において“フラグメント”とは,少なくとも約20ヌクレオチド,少なくとも約25ヌクレオチド,少なくとも約30ヌクレオチド,少なくとも約40ヌクレオチド,少なくとも約50ヌクレオチド,または少なくとも100ヌクレオチドの,ヌクレオチド残基の配列を表す。フラグメントは,典型的には約400ヌクレオチド未満,約300ヌクレオチド未満,約250ヌクレオチド未満,約200ヌクレオチド未満,または150ヌクレオチド未満である。ある態様においては,フラグメントを種々のハイブリダイゼーション法またはマイクロアレイ法において用いて,特定の病原体を同定することができる。
【0037】
核酸(例えばオリゴヌクレオチド)に関して,“単離された”とは,天然にそれが生ずるゲノムの実質的な部分から分離されている核酸を意味する。例えば,合成的に(例えば,連続的な塩基の縮合)製造された核酸は単離されたものと考えられる。同様に,組換え的に発現された,プライマー伸張反応(例えばPCR)により製造された,または他の方法によりゲノムから切り出された核酸も,単離されたものと考えられる。
【0038】
本明細書において用いる場合,“マルチプレックスプライマー伸張反応”との用語は,同じ反応容器中で2またはそれ以上の標的核酸の相補的コピーを同時に生成することができるプライマー伸張反応を表す。各反応生成物は,別々のプライマー対を用いてプライミングされる。マルチプレックス反応はさらに,異なる検出可能成分で検出可能なように標識された,各産物に特異的なプローブを含んでいてもよい。好ましい態様においては,マルチプレックスプライマー伸張反応は,同じ反応容器中の2またはそれ以上の産物が増幅されるマルチプレックスPCRである。
【0039】
本明細書において用いる場合,“オリゴヌクレオチド”との用語は,デオキシリボヌクレオチド,リボヌクレオチドまたはこれらの任意の組み合わせから構成される短いポリマーを表す。オリゴヌクレオチドは,一般に,約10,11,12,13,14または15から約150ヌクレオチド(nt)の長さであり,より好ましくは約10,11,12,13,14,または15から約70nt,最も好ましくは約18から約26ntの長さである。ヌクレオチドの一文字コードは,the U.S.Patent Office Manual of Patent Examining Procedure,セクション2422,表1に記載されるとおりである。この点に関して,ヌクレオチドの表記において,“R”はプリン,例えばグアニンまたはアデニンを意味し,“Y”はピリミジン,例えばシトシンまたはチミジン(RNAの場合にはウラシル)を意味する。“M”はアデニンまたはシトシンを意味する。オリゴヌクレオチドは,プライマーとして,またはプローブとして用いることができる。
【0040】
標的核酸を特異的に増幅する(すなわち,特定の標的核酸配列を増幅する),または特異的に検出する(すなわち,特定の標的核酸配列を検出する)ためにプライマーまたはプローブとして用いられるオリゴヌクレオチドは,一般に,標的核酸に特異的にハイブリダイズすることができる。
【0041】
“病原体”とは,哺乳動物(例えばヒト)において百日咳または関連する状態を引き起こしうる任意の微生物を意味する。特定の病原体としては,例えば,百日咳菌およびパラ百日咳菌が挙げられる。
【0042】
本明細書において用いる場合,増幅用の“プライマー”とは,標的ヌクレオチド配列に相補的であり,DNAまたはRNAポリメラーゼの存在下でプライマーの3’末端へのヌクレオチドの付加を導くオリゴヌクレオチドである。最適な発現および増幅のためには,プライマーの3’ヌクレオチドは一般に,対応するヌクレオチド位置において標的配列と同一であるべきである。本明細書において用いる場合,“プライマー”との用語は,合成することができるすべての形のプライマーを含み,例えば,ペプチド核酸プライマー,ロック核酸プライマー,ホスホロチオエート修飾プライマー,標識したプライマー等が含まれる。本明細書において用いる場合,“フォワードプライマー”とは,dsDNAのアンチセンス鎖に相補的なプライマーである。“リバースプライマー”とは,dsDNAのセンス鎖に相補的なプライマーである。“プライマー対”とは,それぞれ同じ標的核酸に特異的なフォワードプライマーとリバースプライマーとの組み合わせを表す。
【0043】
プライマーは,典型的には約10から約100ヌクレオチドの長さであり,好ましくは約10から約60ヌクレオチドの長さであり,最も好ましくは約13から約25ヌクレオチドの長さ(例えば,13,15,17,19,21,または23ヌクレオチド長)である。最適なハイブリダイゼーションまたはポリメラーゼ連鎖反応増幅のための標準的な長さはない。特定のプライマー用途のための最適な長さは,H.Erlich(PCR Technology,Principles and Application for DNA Amplification,(1989))に記載されるようにして容易に決定することができる。
【0044】
標的核酸に特異的なオリゴヌクレオチド(例えば,プローブまたはプライマー)は,適当な条件下で標的核酸と“ハイブリダイズ”する。本明細書において用いる場合,“ハイブリダイゼーション”または“ハイブリダイズする”とは,所定のハイブリダイゼーション条件下でオリゴヌクレオチドの一本鎖が塩基対形成により相補鎖とアニーリングするプロセスを表す。
【0045】
“プライマー伸張反応”とは,オリゴヌクレオチドプライマーが標的核酸にハイブリダイズし,個々の相補的ヌクレオチドがポリメラーゼにより3’付加されることにより標的核酸の相補的コピーが生成される合成反応を意味する。好ましい態様においては,プライマー伸張反応はPCRである。
【0046】
本明細書において用いる場合,“サンプル”または“生物学的サンプル”との用語は,患者(例えばヒト患者)から得た臨床サンプルを表す。好ましい態様においては,サンプルは,被験者から採取した組織,体液,または微生物から得る。サンプルの起源としては,限定されないが,粘液,痰(処理済みまたは未処理),気管支肺胞洗浄液(BAL),気管支洗浄液(BW),血液(例えば,全血,血漿,および血清),体液,脳脊髄液(CSF),尿,血漿,血清,または組織(例えば,生検サンプル)が挙げられる。好ましいサンプル起源には,鼻咽頭スワブおよび/または咽頭スワブが含まれる。
【0047】
本明細書において用いる場合,“スコーピオンプライマー”とは,蛍光団/消光剤の対をもつヘアピン構造を含む5’伸張プローブテールを有する3’プライマーを含むオリゴヌクレオチドを表す。任意に,スコーピオンプライマーはさらに,プローブ成分をプライマー成分から離す増幅ブロッカー(例えば,ヘキサエチレングリコール(“HEG”)を含んでいてもよい。本明細書に詳細に記載されるように,Scorpion(商標)プライマーはスコーピオンプライマーの一例である。
【0048】
本明細書において用いる場合,“Scorpion(商標)検出システム”との用語は,リアルタイムPCRの方法を表す。この方法は,ポリメラーゼブロッキング基によりプローブ要素に共有結合したPCRプライマー要素を含む二官能性分子(本明細書において“Scorpion(商標)”と称する)を利用する。さらに,各Scorpion(商標)分子は,消光剤と相互作用してバックグラウンド蛍光を減少させる蛍光団を含む。
【0049】
“特異的ハイブリダイゼーション”とは,核酸配列が高度の相補性を共有することを示す。許容されるアニーリング条件では,特異的ハイブリダイゼーション複合体が形成され,続く洗浄段階の後にもハイブリダイズしたままである。核酸配列のアニーリングについての許容される条件は,当業者が日常的に決定することができ,例えば,約6×SSCの存在下で65℃で生ずる。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは,部分的には,洗浄工程を行う温度により表すことができる。そのような温度は,典型的には,所定のイオン強度およびpHにおける特定の配列の熱溶融点(Tm)より約5℃から20℃低いように選択される。Tmは50%の標的配列が完全にマッチしたプローブとハイブリダイズする温度(所定のイオン強度およびpHにおける)である。Tmを計算するための等式および核酸ハイブリダイゼーションの条件は当該技術分野において知られている。
【0050】
本明細書において用いる場合,オリゴヌクレオチドは,オリゴヌクレオチドと核酸とをアライメントさせたときにオリゴヌクレオチドが核酸の一部と少なくとも50%の配列同一性を有する場合,核酸に“特異的”である。核酸に特異的なオリゴヌクレオチドは,適切なハイブリダイゼーションまたは洗浄条件下で,目的とする標的にハイブリダイズすることができるが,目的としない核酸には実質的にハイブリダイズしないものである。より高いレベルの配列同一性が好ましく,例えば,少なくとも75%,少なくとも80%,少なくとも85%,少なくとも90%,少なくとも95%,より好ましくは少なくとも98%の配列同一性が好ましい。配列同一性は,当該技術分野においてよく知られるアルゴリズムを利用する市販のコンピュータプログラムをデフォルトの設定で用いることにより決定することができる。本明細書において用いる場合,“高い配列同一性”を有する配列は,アライメントしたヌクレオチド位置の少なくとも約50%,好ましくはアライメントしたヌクレオチド位置の少なくとも約60%,より好ましくはアライメントしたヌクレオチド位置の少なくとも約75%において同一のヌクレオチドを有する。
【0051】
本明細書において用いる場合,核酸に関して“実質的に同一”との用語は,参照核酸配列と少なくとも80%,85%,90%,95%,または99%の配列同一性を有するものである。比較する長さは,好ましくは核酸の全長であるが,一般に,少なくとも20ヌクレオチド,30ヌクレオチド,40ヌクレオチド,50ヌクレオチド,75ヌクレオチド,100ヌクレオチド,125ヌクレオチド,またはそれ以上である。
【0052】
オリゴヌクレオチドプライマーまたはプライマー対に関して“増幅するのに適した”とは,標的核酸に特異的にハイブリダイズし,標的核酸の相補的コピーが合成されるプライマー伸張反応の開始部位を与えることができるプライマーを意味する。
【0053】
本明細書において用いる場合,“標的核酸”または“標的配列”との用語は,増幅し検出すべき目的とするヌクレオチドのセグメントを含む配列を表す。増幅反応の間に生成した標的配列のコピーは,増幅産物,アンプリマーまたはアンプリコンと称される。標的核酸は,染色体のセグメント,遺伝子間配列を含むかまたは含まない完全な遺伝子,遺伝子間配列を含むかまたは含まない遺伝子のセグメントまたは一部,またはプローブまたはプライマーを設計する核酸の配列から構成されることができる。標的核酸は,野生型配列,変異,欠失または重複,タンデムリピート領域,目的とする遺伝子,目的とする遺伝子の領域またはその任意の上流または下流の領域を含んでいてもよい。標的核酸は,特定の遺伝子の代替配列またはアレルであってもよい。標的核酸は,ゲノムDNA,cDNA,またはRNAに由来するものでありうる。本明細書において用いる場合,標的核酸は,細胞から抽出されたDNAまたはRNAであってもよく,これらからコピーまたは増幅された核酸であってもよく,抽出され亜硫酸水素反応によりさらに変換された核酸を含んでいてもよい。
【0054】
本明細書において用いる場合,“TaqMan(登録商標)PCR検出システム”とは,リアルタイムPCRの方法を表す。この方法においては,増幅された核酸セグメントにハイブリダイズするTaqMan(登録商標)プローブをPCR反応混合物中に含める。TaqMan(登録商標)プローブは,プローブのいずれかの末端に,ドナーの蛍光が消光剤により取り込まれるよう十分に近接して,ドナーおよび消光剤蛍光団を含む。しかし,プローブが増幅されたセグメントとハイブリダイズすると,Taqポリメラーゼの5’−エキソヌクレアーゼ活性がプローブを切断し,このことによりドナー蛍光団が蛍光を放出できるようになり,これを検出することができる。
【0055】
生物学的サンプルの収集および調製
本発明の方法および組成物を用いて,個体から採取した生物学的サンプル中の病原体核酸を検出することにより,百日咳を引き起こす病原体を検出することができる。病原体検出用のサンプルには,適当な培地で成長してコロニーを形成した,単離された細菌の培養物も含まれ,ここで培養物は個体から採取した生物学的サンプルから調製したものである。
【0056】
核酸(DNAまたはRNA)は,当該技術分野においてよく知られる任意の方法にしたがってサンプルから単離することができる。必要な場合には,遠心分離等によりサンプルを収集または濃縮することができる。サンプルの細胞は,例えば,酵素,熱,界面活性剤,超音波処理,またはこれらの組み合わせによる処理により溶解することができる。溶解処理は,病原体に由来するDNAがサンプル中に存在する場合には,ポリメラーゼ連鎖反応を用いてこれを検出するのに十分な量のDNAを得るために実施する。
【0057】
DNAの単離にはDNA抽出の種々の方法が適している。好適な方法としてはフェノール・クロロホルム抽出が挙げられる。Maniatis et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2d,Cold Spring Harbor Laboratory Press,page 16.54(1989)を参照。多くの市販のキット,例えば,限定されないが,QIAamp(商標)ミニブラッドキット,Agencourt Genfind(商標),Roche Cobas(登録商標),Roche MagNA Pure(登録商標),またはEppendorf Phase Lock Gels(登録商標)を用いるフェノール・クロロホルム抽出によっても適切なDNAを得ることができる。
【0058】
標的核酸およびプライマー
本発明の種々の態様においては,本明細書に記載される方法においてオリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブを用いて,病原体の標的配列を増幅し検出する。ある態様においては,標的核酸には,百日咳菌のIS481挿入配列(およびそのフラグメント)およびパラ百日咳菌のIS1001挿入配列(およびそのフラグメント)が含まれる。さらに,プライマーを用いて,1またはそれ以上の対照核酸配列を増幅することもできる。本明細書に記載される標的核酸は,単一で,またはそれぞれの標的について個々の標識を用いるマルチプレックスのフォーマットで,検出することができる。
【0059】
当業者は,本明細書の開示に鑑みて,標的配列を増幅するのに適したプライマーを設計および製造することができる。本発明において用いる増幅プライマーの長さは,いくつかの因子,例えば,ヌクレオチド配列の種類,およびこれらの核酸がハイブリダイズする温度またはインビトロ核酸増幅の間に用いられる温度によって異なる。特定の配列の増幅プライマーの好ましい長さを決定する際に考慮すべき点は当業者によく知られている。
【0060】
核酸分子を増幅するプライマーは,例えば,OLIGO(MolecularBiologyInsights,Inc.,Cascade,CO)等のコンピュータプログラムを用いて設計することができる。増幅プライマーとして用いるべきオリゴヌクレオチドを設計する際に重要な点としては,限定されないが,増幅産物のサイズが検出(例えば,電気泳動またはリアルタイムPCRによる)を容易にするのに適当であること,プライマーの対のメンバーが同様の溶融温度を有すること,および各プライマーの長さ(すなわち,プライマーは,配列特異的にアニーリングして合成を開始するのに十分に長くなければならないが,オリゴヌクレオチド合成の間の忠実度が低下するほど長くてはならない)が挙げられる。典型的には,オリゴヌクレオチドプライマーは,15から35ヌクレオチドの長さである。
【0061】
ハイブリダイゼーションプローブとして用いるべきオリゴヌクレオチドの設計は,プライマーの設計と同様にして行うことができる。オリゴヌクレオチドプライマーと同様に,オリゴヌクレオチドプローブは通常は類似した溶融温度を有し,各プローブの長さは,配列特異的ハイブリダイゼーションが生ずるのに十分なものでなければならないが,合成の間に忠実度が低下するほど長くてはならない。オリゴヌクレオチドプローブは一般に15から60ヌクレオチドの長さである。
【0062】
ある態様においては,1またはそれ以上のヌクレオチド位置において縮重を有するプライマーの混合物を用意する。縮重プライマーは,標的配列中に変動性が存在する場合に,すなわち配列情報が不明瞭である場合に,PCRにおいて用いられる。典型的には,縮重プライマーは,約4未満,約3未満,好ましくは約2未満,最も好ましくは,約1未満のヌクレオチド位置において変動性を示す。
【0063】
好適な態様においては,PCRは,二官能性プライマー/プローブ組み合わせ(例えばScorpion(商標)プライマー)を用いて実施する。本発明において用いる場合,スコーピオンプライマーは,蛍光団/消光剤の対を有するヘアピン構造を含む5’側に延長されたプローブテールを有する3’プライマーを含む。ヘキサエチレングリコール(HEG)が含まれているため,PCRの間,ポリメラーゼは,プローブテールへと伸張することができないよう妨害されている。第1ラウンドの増幅の間,3’標的特異的プライマーは標的にアニーリングし,5’プローブ用の新たに合成された標的領域を有する,新たに合成された鎖中に,Scorpion(商標)が取り込まれるように伸張される。次のラウンドの変性およびアニーリングの間に,スコーピオンプライマーのヘアピンループのプローブ領域は標的にハイブリダイズし,したがって,蛍光団と消光剤とが分離され,測定可能なシグナルが生成する。そのようなプローブは,Whitcombe et al.,Nature Biotech 17:804−807(1999)に記載されている。
【0064】
核酸の増幅
核酸サンプルまたは単離された核酸は,当業者に知られる種々の方法により増幅することができる。好ましくは,PCRを用いて目的とする核酸を増幅する。簡単には,PCRにおいては,マーカー配列の反対側の相補鎖の領域に相補的な2つのプライマー配列を用意する。過剰のデオキシヌクレオチド三リン酸を,DNAポリメラーゼ,例えば,Taqポリメラーゼとともに反応混合物に加える。上述のようにテンプレートの配列が改変されている場合には,増幅混合物は,好ましくはUNGヌクレアーゼを含まない。
【0065】
標的配列がサンプル中に存在すると,プライマーは配列に結合し,ポリメラーゼによりヌクレオチドが付加されることによりプライマーは標的配列に沿って伸張する。反応混合物の温度を上昇または低下させることにより,伸張したプライマーはマーカーから解離して反応生成物を形成し,過剰のプライマーはマーカーおよび反応生成物に結合し,このプロセスが繰り返されて,増幅産物が生成する。サイクルのパラメータは,伸張すべき増幅産物の長さに基づいて様々でありうる。オリゴヌクレオチドプライマーおよび/またはプローブを利用して,内部陽性増幅対照(IPC)をサンプル中に含めることができる。IPCを用いて,変換プロセスおよびそれに続く増幅との両方をモニターすることができる。
【0066】
好適な態様においては,リアルタイムPCRは,PCR増幅産物の蓄積を検出することができる任意の適当な装置を用いて行う。最も一般的には,装置は1またはそれ以上の蛍光標識からの蛍光を検出することができる。例えば,装置(例えば,ABI Real−Time PCR System 7500(登録商標)配列検出器)におけるリアルタイム検出は,各PCRサイクルの間に蛍光をモニターし,レポーターシグナルの測定値またはRn値を計算する。閾値サイクルまたはCt値は,蛍光が閾値と交叉するときのサイクルである。閾値は,配列検出システムのソフトウエアにより,または手動で決定する。
【0067】
増幅した標的核酸の検出
核酸の増幅は,例えば,ゲル電気泳動,カラムクロマトグラフィー,プローブを用いるハイブリダイゼーション,配列決定,溶融曲線分析,または“リアルタイム”検出等の,当該技術分野においてよく知られる多くの方法のいずれかを用いて検出することができる。好ましい方法においては,目的とする2またはそれ以上のフラグメントからの配列を同じ反応容器で増幅する(すなわち,“マルチプレックスPCR”)。検出は,反応の終点を測定することにより,または“リアルタイム”で行うことができる。リアルタイム検出用には,プライマーおよび/またはプローブは,検出可能なように標識して,例えばプライマーが取り込まれたとき,またはプローブがハイブリダイズしたとき,および,反応の間の蛍光の変化をモニターしうる装置中で増幅されたときに,異なる蛍光が得られるようにすることができる。核酸増幅のリアルタイム検出方法はよく知られており,例えば,TaqMan(登録商標)システム,Scorpion(商標)プライマーシステム,および二本鎖核酸用のインターカレート色素の使用が挙げられる。
【0068】
終点検出においては,アンプリコン(単数または複数)は,まずアンプリコンをサイズ分離し,次にサイズ分離したアンプリコンを検出することにより,検出することができる。異なるサイズのアンプリコンの分離は,例えば,ゲル電気泳動,カラムクロマトグラフィー,またはキャピラリー電気泳動により行うことができる。これらのおよび他の分離法は当該技術分野においてよく知られている。一例においては,サイズが10塩基対またはそれ以上異なる約10から約150塩基対のアンプリコンは,例えば,4%から5%のアガロースゲル(約150から約300塩基対のアンプリコンについては2%から3%のアガロースゲル),または6%から10%のポリアクリルアミドゲルで分離することができる。分離した核酸は,次に臭化エチジウム等の色素で染色し,得られた染色されたバンド(単数または複数)のサイズを標準DNAラダーと比較することができる。
【0069】
ある態様においては,増幅された核酸は,特異的プローブを用いるハイブリダイゼーションにより検出する。増幅した標的配列の一部に相補的なプローブオリゴヌクレオチドを用いて,増幅したフラグメントを検出することができる。ハイブリダイゼーションは,リアルタイムで検出してもよく,非リアルタイムで検出してもよい。増幅した核酸は,標的配列のそれぞれについて同時に検出してもよく(すなわち,同じ反応容器中で),または別々に検出してもよい(すなわち,別々の反応容器中で)。好ましい態様においては,増幅されたDNAは,2またはそれ以上の区別しうるように標識された遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブを用いて同時に検出する。プローブの一方は第1の標的配列にハイブリダイズし,他方は第2の標的配列にハイブリダイズする。配列が改変された核酸については,標的は上鎖または下鎖から独立して選択することができる。すなわち,検出されるべきすべての標的は,上鎖,下鎖,または上鎖と下鎖標的の組み合わせを含むことができる。
【0070】
プローブは,当該技術分野において知られる方法により,検出可能なように標識することができる。有用な標識としては,例えば,蛍光色素(例えば,Cy5(登録商標),Cy3(登録商標),FITC,ローダミン,ランタニド蛍光体,テキサスレッド,FAM,JOE,Cal Fluor Red 610(登録商標),Quasar 670(登録商標)),放射性同位体(例えば,32P,35S,3H,14C,125I,131I),高電子密度試薬(例えば金),酵素(例えば,西洋ワサビペルオキシダーゼ,ベータ−ガラクトシダーゼ,ルシフェラーゼ,アルカリホスファターゼ),比色標識(例えば金コロイド),磁気標識(例えば,Dynabeads(商標)),ビオチン,ジゴキシゲニン,または抗血清またはモノクローナル抗体が利用可能なハプテンおよび蛋白質が挙げられる。他の標識としては,それぞれ対応するレセプターまたはオリゴヌクレオチド相補体と複合体を形成しうるリガンドまたはオリゴヌクレオチドが挙げられる。標識は,検出すべき核酸中に直接取り込ませてもよく,または検出すべき核酸にハイブリダイズまたは結合するプローブ(例えばオリゴヌクレオチド)または抗体に結合させてもよい。
【0071】
リアルタイムPCRの1つの一般的方法では,蛍光プローブ,例えば,TaqMan(登録商標)プローブ,分子ビーコン,およびスコーピオンを使用する。リアルタイムPCRは,最終的な増幅された産物の量を検出する他の形の定量的PCRより高い特異度,感度および再現性をもって,テンプレートの最初の量を定量する。リアルタイムPCRは,アンプリコンのサイズを検出しない。Scorpion(商標)およびTaqMan(登録商標)技術において用いられるプローブは,蛍光クエンチングの原理に基づいており,ドナー蛍光団とクエンチング成分とを含む。
【0072】
好ましい態様においては,検出可能な標識は蛍光団である。本明細書において用いる場合,“蛍光団”との用語は,特定の波長(励起周波数)の光を吸収し,次により長い波長(放射周波数)の光を放出する分子を表す。本明細書において用いる場合,“ドナー蛍光団”との用語は,消光剤成分と近接している場合に,放出エネルギーを消光剤に供与ないし移動させる蛍光団を意味する。消光剤成分にエネルギーを供与した結果,ドナー蛍光団それ自体は,近接して配置された消光剤成分が存在しない場合よりも少ない特定の放出周波数の光を放出する。
【0073】
本明細書において用いる場合,“消光剤成分”との用語は,ドナー蛍光団の近傍に位置して,ドナーにより生成された放出エネルギーを取り込み,エネルギーを熱またはドナーの放出波長より長い波長の光として消散させる分子を意味する。後者の場合,消光剤はアクセプター蛍光団であると考えられる。消光成分は,近接(すなわち衝突)クエンチングにより,またはフォスターないし蛍光共鳴エネルギー移動(“FRET”)により作用する。TaqMan(登録商標)プローブにおいては一般にFRETによる消光が用いられ,分子ビーコンおよびScorpion(商標)タイプのプローブにおいては近接消光が用いられる。
【0074】
好適な蛍光成分としては,当該技術分野において知られる下記の蛍光団が挙げられる:4−アセトアミド−4’−イソチオシアナトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸,アクリジンおよび誘導体(アクリジン,アクリジンイソチオシアネート),Alexa Fluor(登録商標)350,Alexa Fluor(登録商標)488,Alexa Fluor(登録商標)546,Alexa Fluor(登録商標)555,Alexa Fluor(登録商標)568,Alexa Fluor(登録商標)594,Alexa Fluor(登録商標)647(Molecular Probe),5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸(EDANS),4−アミノ−N−[3−ビニルスルホニル)フェニル]ナフタルイミド−3,5ジスルホネート(Lucifer Yellow VS),N−(4−アニリノ−1−ナフチル)マレイミド,アントラニルアミド,BODIPY(登録商標)R−6G,BOPIPY(登録商標)530/550,BODIPY(登録商標)FL,ブリリアントイエロー,クマリンおよび誘導体(クマリン,7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC,クマリン120),7−アミノ−4−トリフルオロメチルクマリン(クマリン151)),Cy2(登録商標),Cy3(登録商標),Cy3.5(登録商標),Cy5(登録商標),Cy5.5(登録商標),シアノシン,4’,6−ジアミニジノ−2−フェニルインドール(DAPI),5’,5"−ジブロモピロガロール−スルホネフタレイン(Bromopyrogallol Red),7−ジエチルアミノ−3−(4’−イソシアナトフェニル)−4−メチルクマリン,ジエチレントリアミン四酢酸,4,4’−ジイソチオシアナトジヒドロ−スチルベン−2,2’−ジスルホン酸,4,4’−ジイソチオシアナトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸,塩化5−[ジメチルアミノ]ナフタレン−1−スルホニル(DNS,塩化ダンシル),4−(4’−ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL),4−ジメチルアミノフェニルアゾフェニル−4’−イソチオシアネート(DABITC),Eclipse(商標)(Epoch Biosciences Inc.),エオシンおよび誘導体(エオシン,エオシンイソチオシアネート),エリスロシンおよび誘導体(エリスロシンB,エリスロシンイソチオシアネート),エチジウム,フルオレセインおよび誘導体(5−カルボキシフルオレセイン(FAM),5−(4,6−ジクロロトリアジン−2−イル)アミノフルオレセイン(DTAF),2’,7’−ジメトキシ−4’5’−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(JOE),フルオレセイン,フルオレセインイソチオシアネート(FITC),ヘキサクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(HEX),QFITC(XRITC),テトラクロロフルオレセイン(TET)),フルオレスカミン,IR144,IR1446,マラカイトグリーンイソチオシアネート,4−メチルウンベリフェロン,オルトクレゾールフタレイン,ニトロチロシン,パラローザニリン,フェノールレッド,B−フィコエリスリン,R−フィコエリスリン,o−フタルジアルデヒド,Oregon Green(登録商標),ヨウ化プロピジウム,ピレンおよび誘導体(ピレン,酪酸ピレン,酪酸スクシンイミジル1−ピレン),QSY(登録商標)7,QSY(登録商標)9,QSY(登録商標)21,QSY(登録商標)35(Molecular Probe),リアクティブレッド4(Cibacron(登録商標)ブリリアントレッド3B−A),ローダミンおよび誘導体(6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX),6−カルボキシローダミン(R6G),リサミンローダミンB塩化スルホニル,ローダミン(Rhod),ローダミンB,ローダミン123,ローダミングリーン,ローダミンXイソチオシアネート,スルホローダミンB,スルホローダミン101,スルホローダミン101の塩化スルホニル誘導体(テキサスレッド)),N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA),テトラメチルローダミン,テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC),リボフラビン,ロゾール酸,テルビウムキレート誘導体。
【0075】
他の蛍光ヌクレオチド類似体を用いてもよい。例えば,Jameson,278 Meth.Enzymol.363−390(1997);Zhu,22 Nucl.Acids Res.3418−3422(1994)を参照。米国特許5,652,099および6,268,132もまた,酵素的または化学的合成のいずれかにより核酸,例えば,DNAおよび/またはRNAまたはオリゴヌクレオチド中に取り込ませて蛍光オリゴヌクレオチドを作製するためのヌクレオシド類似体を記載する。米国特許5,135,717は,蛍光標識として用いるためのフタロシアニンおよびテトラベンズトリアザポルフィリン試薬を記載する。
【0076】
適当な消光剤は,特定の蛍光団の蛍光スペクトルに基づいて選択する。有用な消光剤としては,例えば,the Black Hole(商標)消光剤であるBHQ−1,BHQ−2,およびBHQ−3(Biosearch Technologies,Inc.),およびATTOシリーズの消光剤(ATTO540Q,ATTO580Q,およびATTO612Q;Atto−TecGmbH)が挙げられる。
【0077】
検出可能な標識は,核酸中に取り込ませるか,会合させるか,またはコンジュゲートさせることができる。標識は,種々の長さのスペーサーアームにより結合させて,立体傷害または他の有用なまたは望ましい特性に与える影響を低減させることができる。例えば,Mansfield,9 Mol.Cell.Probes 145−156(1995)を参照。検出可能な標識は,共有結合または非共有結合手段により,例えば,クレノーポリメラーゼを用いるランダム−プライマー標識による転写,またはニックトランスレーション,または増幅,または当該技術分野において知られる同等の方法により,核酸中に取り込ませることができる。例えば,ヌクレオチド塩基を検出可能な成分,例えば蛍光色素とコンジュゲートさせ,次これを核酸合成または増幅の間に核酸中に取り込ませる。
【0078】
スコーピオンプライマーを用いると,配列特異的プライミングおよびPCR産物の検出を単一の分子を用いて行うことができる。スコーピオンプライマーは,ハイブリダイズしていない状態ではステム・ループ構造を保持している。蛍光団は,5’末端に結合しており,3’末端に結合している成分によりクエンチされているが,好適な態様ではこの配置は逆でもよい。ステムおよび/またはループの3’部分はまた,プライマーの伸張産物に相補的な配列を含む。この配列は,特異的プライマーの5’末端に増幅可能でないモノマーを介して連結されている。プライマー成分の伸張後,特異的プローブ配列は伸張されたアンプリコン中のその相補体に結合することができ,このためヘアピンループが開く。このことにより蛍光の消光が妨害され,シグナルが観察される。特異的標的は,リバースプライマーおよびスコーピオンプライマーのプライマー部分により増幅され,伸張産物が生ずる。スコーピオンプライマーのプローブ要素が伸張産物に結合することにより,蛍光団が消光剤から離れ,蛍光シグナルが生成する。
【0079】
TaqMan(登録商標)プローブ(Heid,et al.,Genome Res 6:986−994,1996)は,Taqポリメラーゼの蛍光発生性5’エキソヌクレアーゼ活性を利用して,cDNAサンプル中の標的配列の量を測定する。TaqMan(登録商標)プローブは,通常は5’塩基またはその近傍に位置するドナー蛍光団,および典型的には3’塩基またはその近傍に位置するクエンチング成分を含むオリゴヌクレオチドである。消光剤成分は,TAMRA等の色素であってもよく,非蛍光分子,例えば,4−(4−ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL)であってもよい。Tyagi,et al.,16 Nature Biotechnology 49−53(1998)を参照。照射されると,励起された蛍光ドナーは,蛍光を発生するのではなく,FRETによりエネルギーを近傍のクエンチング成分に移動させる。すなわち,ドナーと消光剤とが近接することにより,ドナー蛍光の放出が妨害されるが,プローブは無傷のままである。
【0080】
TaqMan(登録商標)プローブは,PCR産物の内部領域にアニーリングするよう設計される。ポリメラーゼ(例えばリバーストランスクリプターゼ)がTaqMan(登録商標)プローブが結合したテンプレートを複製すると,その5’エキソヌクレアーゼ活性によりプローブが切断される。このことにより,消光剤(FRETなし)の活性が消失し,ドナー蛍光団は蛍光を放出し始め,これは各サイクルでプローブの切断速度と比例して増加する。PCR産物の蓄積は,レポーター色素の増加をモニターすることにより検出する(プライマーは標識されていないことに注意)。消光剤がアクセプター蛍光団である場合には,PCR産物の蓄積は,アクセプター蛍光団の蛍光の減少をモニターすることにより検出することができる。
【0081】
百日咳菌の検出
患者における百日咳菌の存在は,生物学的サンプル中のIS481挿入配列をコードする核酸またはその診断用フラグメントの存在を検出することにより判定することができる。百日咳菌IS481のヌクレオチド配列はGenbank受託番号M28220で与えられ,図1(配列番号1)に示される。
【0082】
好ましい態様においては,標的核酸は,IS481のヌクレオチド553−693またはそのフラグメントに対応し,以下に配列番号2として示される。
1 gcgccctggc caccgggtca cgggcaaccg acgcgatacc gttgaggggg ccggctggga
61 cttcgtcttc gtggccatcg atgaccacgc ccgcgtggcc ttcaccgaca tcccccccga
121 cgagcgcttc cccagcgccg t
配列番号2
【0083】
全長標的核酸配列,またはその任意の一部は,任意の適当なプライマーおよびプローブを用いて増幅し,検出することができる。1つの特に有用な標的核酸配列は,IS481のヌクレオチド580−665(配列番号3)を含み,これは,配列番号2のヌクレオチド28−113に対応する。有用なプライマーとしては,例えば,IS481のヌクレオチド580−597(配列番号4)および648−665(配列番号5)(上述の標的核酸中で下線で示される)またはその相補体に向けられたものが挙げられる。有用なプローブは,増幅されたIS481配列の任意の有用な領域,例えば,IS481のヌクレオチド623−642(配列番号6)およびヌクレオチド604−628(配列番号27)(それぞれ配列番号2のヌクレオチド71−90および52−76)またはその相補体に向けられたものである。
【0084】
配列番号6のプローブを用いるBLAST検索は,百日咳菌およびB.holmesiiのIS481標的核酸配列との完全なマッチを示した。さらに,Pseudomonas,fluorescensのゲノム中に18/20ヌクレオチドのマッチが,およびMagnaporthe,griseaおよびXanthomonas,oryzaeのゲノム中に17/20ヌクレオチドのマッチがある。下記に示されるように,P.fluorescens,M.grisea,およびX.oryzaeについては,配列番号4−5のプライマーとの有意な配列同一性はない。したがって,これらの種は,配列番号4−5の増幅プライマーを用いた場合には有意な偽陽性の原因ではないはずである。配列番号6のプローブの交叉反応性は,このレベルの非相同性でのハイブリダイゼーションを阻害するのに十分な高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件を用いることにより,低減または排除することができる。
【0085】
配列番号4−5のプライマー配列を用いるBLAST検索は,百日咳菌およびB.holmesiiのIS481標的核酸配列との完全なホモロジーを示した。B.holmesiiによるヒトの感染はまれであるが,本明細書に記載されるプライマーおよびプローブにより検出することができる。また,Bordetella avium,Methylobacillus flagellatus,Rhodococcus,およびRubrobacter xylanophilusのゲノム中の配列との15−17ヌクレオチドのマッチが見いだされた。しかし,これらの細菌および真菌は,ヒトに感染することは知られておらず,したがって偽陽性の診断結果の有意な原因ではないはずである。
【0086】
パラ百日咳菌の検出
患者におけるパラ百日咳菌の存在は,生物学的サンプル中のIS1001挿入配列をコードする核酸,またはその診断用フラグメントの存在を検出することにより,判定することができる。パラ百日咳菌IS1001のヌクレオチド配列は,Genbank受託番号X66858で与えられ,図2(配列番号7)に示される。
【0087】
好ましい態様においては,標的核酸はIS1001のヌクレオチド680−859またはそのフラグメントに対応し,下記に配列番号8として示す。
1 caattgccgc ctggggccgc ccaacgcatc aaggccgttg ccatcgacat gaccaccgcc
61 tacgagttGG AGATCCAGGC CCacagccca caggcggaga tcgtctatga cttgttccat
121 gtcgtggcca agtatggacg agaggtcatt gatcgggtgc gcgtggatca ggccaatcaa
配列番号8
【0088】
全標的核酸配列,またはその任意の一部は,任意の適切なプライマーおよびプローブを用いて増幅および検出することができる。1つの特に有用な標的核酸配列は,IS481のヌクレオチド730−802(配列番号9)を含み,これは配列番号8のヌクレオチド51−123に対応する。有用なプライマーとしては,例えば,IS1001のヌクレオチド730−747(配列番号10)および777−802(配列番号11)(上述の標的核酸中で下線で示す)またはその相補体に向けられたものが挙げられる。1つの有用なプローブは,IS1001のヌクレオチド748−761(配列番号12)(上述の標的核酸中で大文字で示す)またはその相補体に向けられたものである。
【0089】
配列番号10−11のプライマーを用いるBLAST検索は,パラ百日咳菌のIS1001標的核酸配列との完全なマッチを示した。さらに,配列番号10のプライマーは,Acanthostigma perpusillum,Rhodobacter sphaeroides,Bradyrhizobium japonicum,およびSalinibacter ruberのゲノム中に16ヌクレオチドおよび17ヌクレオチドのマッチを示した。配列番号11のプライマーは関連するいずれの種とも,短く有意ではないマッチしか示さなかった。
【実施例】
【0090】
実施例1:サンプルの収集およびDNA抽出.
合計で306個の鼻咽頭スワブサンプルを用意し,アッセイのバリデーション目的で試験した。306個のサンプルのうち,290個は患者から取得した実際の臨床標本であった。残りの16サンプルは“人為”(すなわち,陽性対照)パラ百日咳菌標本であった。人為標本は,病原体陰性の鼻咽頭スワブマトリクスを培養したパラ百日咳菌生物でスパイクすることにより調製した。
【0091】
患者から鼻咽頭スワブを採取し,ただちにチャコールを含むエイムス(Aimes)培地または液体バイアル運搬培地(MicroTest(商標)M4培地;Remel,Inc.)に入れ,運搬用に−20℃で凍結し,アッセイまで−20℃で保存した。
【0092】
下記に記載されるボルデテラ種アッセイ用には,鼻咽頭スワブサンプルからDNAを抽出した。簡単には,サンプルを融解し,200μlの各サンプルを1.5mlのエッペンドルフチューブに分注した。陽性対照DNA(上述を参照)を含むかまたはDNAなし(陰性対照)の200μlの希釈液を含む別のチューブを用意し,患者サンプルと同時に処理した。次に5μlの内部対照DNA(下記参照)を各サンプルに加えた。QIAamp(商標)ミニブラッドキット(Qiagen)を用いて製造元の指針にしたがってDNAを抽出した。
【0093】
内部対照(IC)DNAは,アッセイされた生物のいずれにも存在しないランダム配列のDNAフラグメントから構成される。5’リン酸を有する2つのオリゴヌクレオチド(pICF5’PおよびpICR5’p)をアニーリングさせ,生成物をpUC19のEcoRI部位にクローニングした。
【0094】
(pIC F 5'P): 5' リン酸-aaTTCGCCCT TTGTTTCGAC CTAGCTTGCC AGTTCGCAGAA TTTGTTGCTC GTCAGTCGTC GGCGGTTTTA agggcg (配列番号 15)
(pIC R 5'P): 5' リン酸-aattcgccct TAAAACCGCC GACGACTGAC GAGCAACAAA TTCTGCGAAC TGGCAAGCTA GGTCGAAACA AAGGGCG (配列番号 16)
【0095】
ICアンプリコンは,pUC19配列にアニーリングする以下のプライマーにより生成した。
フォワードプライマー (PUC-For): 5' GTTTTCCCAG TCACGACGTT GTA (配列番号 17)
リバースプライマー (PUC-Rev): 5' CACTTTATGC TTCCGGCTCG TA (配列番号 18)
IC アンプリコンの配列:
1 GTTTTCCCAG TCACGACGTT GTAAAACGAC GGCCAGTGAA TTCgccctta aaaccgccga
61 cgactgacga gcaacaaatt ctgcgaactg gcaagctagg tcgaaacaaa gggcggattc
121 GAGCTCGGTA CCCGGGGATC CTCTAGAGTC GACCTGCAGG CATGCAAGCT TGGCGTAATC
181 ATGGTCATAG CTGTTTCCTG TGTGAAATTG TTATCCGCTC ACAATTCCAC ACAACATACG
241 AGCCGGAAGC ATAAAGTG (配列番号 19)
【0096】
下線を付した配列は,pUC19のマルチクローニング部位(MCS)の一部である。小文字の配列は,2つの相補的オリゴヌクレオチドをアニーリングさせることにより生成した。ICアンプリコンは,pUC19配列にアニーリングする下記のプライマーにより生成した。
【0097】
すべてのアッセイについて,陽性および陰性対照を用意し,患者サンプルと同時にアッセイした。陽性対照DNAは,単一分子中にそれぞれ百日咳菌およびパラ百日咳菌のIS481およびIS1001標的領域を含む625bpのDNAフラグメントから構成される。陰性対照アッセイはDNAを含まないものである。
【0098】
陽性対照テンプレートを構築するためには,IS481およびIS1001の標的領域を増幅するようプライマーを設計し,これらをpUC19プラスミドにタンデムにクローニングした。IS481フォワードプライマーはEcoRI制限部位を加えるように設計し(IS481 EcoRI F),IS481リバースプライマーはBamHI制限部位を加えるように設計した(IS481 BamHI R)。次にこれらのプライマーを用いて,百日咳菌のIS481から237bpのアンプリコンを生成した。
IS481 EcoRI F: 5' agcagtgaat tcggtggtgc gctacgagca (配列番号 20)
IS481 BamHI R: 5' atatgcggat ccgccactgc gtccttgagga (配列番号 21)
【0099】
IS1001フォワードプライマーはBamHI制限部位を加えるように設計し(IS1001 BamHI F),IS1001リバースプライマーはPstI制限部位を加えるように設計した(IS1001 PstI R)。
IS1001 BamHI F: 5' atatgcggat ccataccgtc aagacgctgg aca (配列番号 22)
IS1001 PstI R: 5' tagcaactgc agcgatcaat gacctctcgt ccata (配列番号 23)
【0100】
これらのプライマーを用いて,パラ百日咳菌のIS1001から358bpのアンプリコンを生成した。
【0101】
次に,アンプリコンを精製し,予めEcoRIおよびPstIで消化したpUC19プラスミドにT4DNAリガーゼを用いて同時にライゲーションした。ライゲーションしたプラスミドでE.coliをトランスフォームし,次にアンピリシンを含むLB寒天上で選択成長させた。単一コロニーを選択し,DNAを調製した。このDNAを,SYBRグリーンリアルタイムPCRによるスクリーニングにおいてテンプレートDNAとして,IS481フォワードプライマーおよびIS1001リバースプライマーとともに用いた。陽性のSYBRグリーンPCR結果を示したプラスミドを次に配列決定して,タンデムに配置されたIS481およびIS1001標的(595bp),およびBamHI制限部位(6bp)を含む601bpの挿入物の存在を確認した。
【0102】
陽性対照のアンプリコンは,タンデムの601bpIS481/IS1001挿入物をテンプレートとして含むプラスミドをIS481 EcoRI FおよびIS1001 PstI Rプライマーとともに用いる増幅により生成した。付加された制限部位を含めて,陽性対照アンプリコンの合計サイズは625bpであり,以下のヌクレオチド配列を含む:
1 agcagtgaat tcggtggtgc gctacgagca tcaggccccc ggcgatctgc tgcacatcga
61 catcaagaag ctgggacgta tccagcgccc tggccaccgg gtcacgggca accgacgcga
121 taccgttgag ggggccggct gggacttcgt cttcgtggcc atcgatgacc acgcccgcgt
181 ggccttcacc gacatccccc ccgacgagcg cttccccagc gccgtccagt tcctcaagga
241 cgcagtggcg gatccatacc gtcaagacgc tggacaaggc tcggctgcgt gcgtcggtgc
301 gcgaaccgga ttggtccaag atcgagtatt tggcgatgga cgagtttgcc ctgcacaaag
361 ggcatcgcta cgcgacagtg gtggtcgatc cgatcggcag gcaggtgctg tggattggcc
421 caggacgctc acgcgagacg gcccgggcgt tcttcgaaca attgccgcct ggggccgccc
481 aacgcatcaa ggccgttgcc atcgacatga ccaccgccta cgagttggag atccaggccc
541 acagcccaca ggcggagatc gtctatgact tgttccatgt cgtggccaag tatggacgag
601 aggtcattga tcgctgcagt tgcta (配列番号 24)
【0103】
実施例2:ボルデテラ種のマルチプレックスPCR検出
最終PCR試薬溶液は,以下を含んでいた:Tris−HCl(pH9.0),MgCl2,KCl,EDTA,DTT,Tween20,(NH42SO4,グリセロール,dNTPs(dT,dA,dG,およびdC),およびFastStart DNAポリメラーゼ(商標)。
【0104】
10XPCRプライマー溶液は,百日咳菌,パラ百日咳菌,および内部対照についてのスコーピオンプライマーおよびリバースプライマーを含むよう調製した。10XPCRプライマー溶液中,百日咳菌のスコーピオンおよびリバースプライマーは2μMの最終濃度であり,パラ百日咳菌のスコーピオンおよびリバースプライマーは1.5μMの最終濃度であり,ICのスコーピオンおよびリバースプライマーは1μMの最終濃度であった。2つの異なる百日咳菌スコーピオンプライマーを個別に試験した。プライマー対は次のとおりである:
百日咳菌(IS481):
[Q]-GCGTGGTCATCGATGGCCACcacgct-[F]-tttttt-heg-ccgacgcgataccgttga(配列番号 13) および
[Q]-agcGGCCACGAAGACGAAGTCCCAGCCGct-[F]-heg-ccgacgcgataccgttga(配列番号 28); および
リバースプライマー: ggatgtcggtgaaggcca (配列番号 25)
パラ百日咳菌 (IS1001):
[Q]-accGGGCCTGGATCTCCcggt-[F]-heg-gaccaccgcctacgagtt(配列番号 14), および
リバースプライマー: gacatggaacaagtcatagacgatct (配列番号 26)
内部標準:
[Q]-TGCGAACTGGCAAGCT-[F]-heg-attcgccctttgtttcgaccta (配列番号 15), および
リバースプライマー: CCGACGACTGACGAGCAA (配列番号 16)
【0105】
上述の各スコーピオンプライマーについて,Q=消光剤,F=蛍光団,および“heg”=ヘキサエチレングリコールである。プローブ配列は大文字で示される。
【0106】
【表1】

【0107】
PCR反応溶液は,実施するサンプルアッセイあたり,12.5μlのPCR試薬溶液,2.5μlの10XPCRプライマー溶液,および5μlの無ヌクレアーゼ水を混合することにより作製した。
【0108】
マルチプレックスPCR検出アッセイは96ウエルプレートで実施した。各アッセイは,20μlのPCR反応溶液および5μlの抽出した核酸(すなわち,患者サンプル,陽性対照,または陰性対照)を含むものであった。プレートを密封し,2000xgで2分間遠心分離し,Applied Biosystems(ABI)7500リアルタイムPCR検出システムで測定した。PCR反応は以下のように行った:
段階1(1サイクル):10分間,95℃
段階2(45サイクル):工程1:95℃,15秒間
工程2:60℃,35秒間(工程2の間のデータ収集)
【0109】
データを収集し,患者サンプルを1またはそれ以上の病原種の存在について分析した。1またはそれ以上の病原種のいずれかについて陽性の結果を有する患者サンプルは,これらの種について陽性であると評点した。すべての病原体種について陰性の結果を有する患者サンプルは,内部対照標的核酸が検出され,陽性対照サンプルアッセイが百日咳菌およびパラ百日咳菌標的核酸の両方について陽性である場合に,陰性と評点した。
【0110】
実施例3:マルチプレックスPCRアッセイの結果の確認
上述のマルチプレックスアッセイの結果を,他の検出アッセイと比較した。すべてのサンプルのアリコートは,マルチプレックスアッセイの結果の確認のために2回目のアッセイを行った。百日咳菌は,IS481挿入配列中の異なる標的核酸ならびに別個の内部対照を検出するProPertussisアッセイ(Prodesse,Inc.)において評価した。パラ百日咳菌は,上述のスコーピオンおよびリバースプライマーのプライマーおよびプローブ領域と同一のプライマーおよびプローブを用いて,IS1001挿入配列についてTaqman(登録商標)スタイルのアッセイを用いて評価した。
【0111】
306個のサンプルをそれぞれ,マルチプレックスアッセイにおいて百日咳菌およびパラ百日咳菌について同時にアッセイした。さらに306個のサンプルは,ProPertussisアッセイを用いて1回,およびパラ百日咳菌Taqman(登録商標)アッセイを用いて1回アッセイした。百日咳菌アッセイ(マルチプレックスおよびProPertussis)については,37.0以下のCt値を陽性として評点した。パラ百日咳菌アッセイ(マルチプレックスおよびTaqman(登録商標))については,36.5以下のCt値を陽性として評点した。3つのサンプルについてのマルチプレックスアッセイは最初の反復で失敗し,2つのサンプルは繰り返し試験で失敗した。これはおそらく,臨床標本中の阻害物質が内部対照の失敗を引き起こしたためであろう。このため,下記に示される反復#1と#2の間では,合計が303から304に変わっている。さらに,百日咳菌についてのまたはパラ百日咳菌についての2つの試験の間で不一致であったすべてのサンプルは,マルチプレックス試験および比較試験の両方を用いて繰り返した。反復#2からの結果には,反復試験後のサンプル結果が含まれる。各アッセイの結果は以下のとおりである。
【0112】
【表2】

【0113】
マルチプレックスアッセイの百日咳菌成分は,ProPertussisアッセイと95.9%の陽性一致および96.4%の陰性一致を示した。
【0114】
【表3】

【0115】
マルチプレックスアッセイの百日咳菌成分はProPertussisアッセイと96.2%の陽性一致および99.6%の陰性一致を示した。
【0116】
【表4】

【0117】
【表5】

【0118】
マルチプレックスアッセイのパラ百日咳菌成分は,Taqman(登録商標)アッセイと97.8%の陽性一致および100%の陰性一致を示した。
【0119】
実施例4:ボルデテラマルチプレックスアッセイの交叉反応性
交叉反応性アッセイのためには,対照の鼻スワブ標本を試験生物の1つ(各生物についてn=5)でスパイクし,上述した方法にしたがってDNAを抽出した。ただし,S.aureusについては,S.aureus陽性であることが知られている臨床鼻スワブ標本を用いた(すなわち,S.aureusサンプルは人為ではなく真性物である)。各サンプルについてボルデテラマルチプレックスアッセイを行った。それぞれの場合について,百日咳菌の交叉反応性については37.0以下のCt値を陽性の結果とし,パラ百日咳菌の交叉反応性については36.5以下のCt値を陽性の結果とした。
【0120】
下記の種について交叉反応性は測定されなかった:
Bacillus cereus
Chlamydophila pneumoniae
Haemophilus influenzae
Klebsiella pneumoniae
Legionella pneumophila
Mycoplasma pneumoniae
Streptococcus pneumoniae
Staphylococcus aureus
Moraxella catarrhalis
インフルエンザ A
インフルエンザ B
RSV B
ヒトランダム対照DNA
【0121】
また,Haemophiluspara influenzaeを,5つの独立した人為鼻スワブサンプルを用いて交叉反応性について試験した。5つのサンプルのそれぞれは二重に試験した。試験したサンプルのうち2つは両方の複製物について百日咳菌についてやや陽性であった(それぞれのCt値は36.65および36.46)。陽性サンプルのそれぞれは,ProPertussisアッセイにおいて百日咳菌について陽性であった。H.parainfluenzaeを含むリストされた生物のいずれについても,パラ百日咳菌との交叉反応性は認められなかった。入り交じった陽性結果にもかかわらず,BLAST検索は,百日咳菌とパラ百日咳菌とH.parainfluenzaeについてのマルチプレックスPCRプライマーの間には相同性がないことを示した。
【0122】
特に明記しないかぎり,本明細書で用いられるすべての技術および科学用語は,本発明が属する分野の当業者が一般に理解するものと同じ意味をもつ。
【0123】
本明細書に例示的に記載される本発明は,本明細書に具体的に開示されていない任意の要素(単数または複数),制限(単数または複数)を適宜除いて実施することができる。したがって,例えば“・・・を含む”,“・・・を含有する”,“・・・が含まれる”等の用語は広範に,制限なしに理解すべきである。さらに,本明細書で用いられる用語および表現は,記述のための用語として使用するものであって制限を与えるものではなく,それらの用語および表現の使用に際しては,表示および記述する特徴の同等物またはその一部のいずれをも除外する意図はなく,特許請求の範囲に記載される本発明の範囲内で種々の改変が可能であることが認識される。
【0124】
すなわち,好ましい態様および選択可能な特徴によって本発明を具体的に開示してきたが,当業者は,本明細書に開示する本発明の改変,改善,および変更をなすことができ,それらの改変,改善,および変更は本発明の範囲内に含まれるとみなされる。本明細書に記載される物質,方法,および実施例は好ましい態様の代表的なものであり,例証であって,本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0125】
本発明について広範かつ一般的に記載した。包括的な開示に含まれる,より狭義の種および亜群もそれぞれ本発明の一部を為す。属(genus)から任意の対象を除去する条件付きまたは消極的制限を有する本発明の一般的な記述は,その除外された要素が具体的に本明細書に記載されているか否かに拘わらず,これに含まれる。
【0126】
さらに,本発明の特徴または観点がマーカッシュ群で記載されている場合,当業者に認識されるように,本発明はマーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーの亜群に関しても記載されている。
【0127】
本明細書に記載する全ての文献,特許出願,特許,および参照は,そのそれぞれが個々に参照により組み込まれたのと同程度に,その全体が参照により明確に本明細書に組み込まれる。不一致が生じる場合,定義を含む本明細書が優先する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的サンプル中における百日咳菌および/またはパラ百日咳菌の存在または非存在を同定する方法であって,
(a)配列番号2またはその相補体と少なくとも95%同一である少なくとも14個の連続するヌクレオチドを含むIS481標的核酸,および
(b)配列番号8またはその相補体と少なくとも95%同一である少なくとも14個の連続するヌクレオチドを含むIS1001標的核酸
の存在または非存在を検出することを含み,
ここで,前記IS481標的核酸の存在は百日咳菌の存在を示し,および前記IS1001標的核酸の存在はパラ百日咳菌の存在を示すことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記方法は,前記IS481標的核酸または前記IS1001標的核酸の少なくとも1つを増幅することを含む,請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記IS481標的核酸は,配列番号2と少なくとも95%同一である少なくとも20個の連続するヌクレオチドを含む,請求項1−2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記IS1001標的核酸は,配列番号8と少なくとも95%同一である少なくとも20個の連続するヌクレオチドを含む,請求項1−2のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記方法は,
(a)IS481標的核酸またはそのフラグメントを増幅するのに適した第1のプライマー対を用意し,およびIS1001標的核酸またはそのフラグメントを増幅するのに適した第2のプライマー対を用意し;
(b)IS481標的核酸が前記サンプル中に存在する場合には第1の反応生成物が生じ,および前記サンプル中にIS1001標的核酸が存在する場合には第2の反応生成物が生ずるのに適した条件下で,工程(a)のプライマー対を含むマルチプレックスプライマー伸張反応を実施し;そして
(c)配列番号2のヌクレオチド配列と少なくとも95%同一である少なくとも14ヌクレオチドを有する第1の反応生成物の存在または非存在を検出することにより百日咳菌の存在または非存在を判定し,および/または,配列番号8のヌクレオチド配列と少なくとも95%同一である少なくとも14ヌクレオチドを有する第2の反応生成物の存在または非存在を検出することによりパラ百日咳菌の存在または非存在を判定する,
の各工程を含む,請求項1−4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
第1の反応生成物は,配列番号3の配列またはその相補体からの少なくとも14個の連続するヌクレオチドを含む,請求項5記載の方法。
【請求項7】
第1のプライマー対の少なくとも1つのメンバーは,配列番号4または5の配列またはその相補体を含む,請求項6記載の方法。
【請求項8】
第1のプライマー対の少なくとも1つのプライマーは,配列番号13または28の配列またはその相補体を含む,請求項6記載の方法。
【請求項9】
第1の反応生成物は,配列番号6または27の配列またはその相補体を含むプローブを用いて検出される,請求項6記載の方法。
【請求項10】
プローブはさらに蛍光標識を含む,請求項9記載の方法。
【請求項11】
第2の反応生成物は,配列番号9の配列またはその相補体からの少なくとも14個の連続するヌクレオチドを含む,請求項5記載の方法。
【請求項12】
第2のプライマー対の少なくとも1つのプライマーは配列番号10または11の配列またはその相補体を含む,請求項11記載の方法。
【請求項13】
第2のプライマー対の少なくとも1つのプライマーは配列番号14の配列またはその相補体を含む,請求項11記載の方法。
【請求項14】
第2の反応生成物は配列番号12の配列またはその相補体を含むプローブを用いて検出される,請求項11記載の方法。
【請求項15】
プローブはさらに蛍光標識を含む,請求項14記載の方法。
【請求項16】
生物学的サンプル中における百日咳菌の存在または非存在を検出する方法であって,配列番号2の少なくとも14個の連続するヌクレオチドを含むIS481標的核酸の存在または非存在を検出することを含む方法。
【請求項17】
前記IS481標的核酸は,配列番号2の少なくとも20個の連続するヌクレオチドを含む,請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記方法は,
(a)IS481標的核酸またはそのフラグメントを増幅するのに適したプライマー対を用意し;
(b)IS481標的核酸が前記サンプル中に存在する場合に反応生成物が生ずるのに適した条件下で,工程(a)のプライマー対を含むプライマー伸張反応を実施し;そして
(c)配列番号2のヌクレオチド配列と少なくとも95%同一である少なくとも14ヌクレオチドを含む反応生成物の存在または非存在を検出することにより,百日咳菌の存在または非存在を判定する,
ことを含む,請求項16−17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
反応生成物は配列番号3の配列またはその相補体からの少なくとも14個の連続するヌクレオチドを含む,請求項18記載の方法。
【請求項20】
プライマー対の少なくとも1つのプライマーは配列番号4または5の配列またはその相補体を含む,請求項19記載の方法。
【請求項21】
プライマー対の少なくとも1つのプライマーは,配列番号13または28の配列またはその相補体を含む,請求項19記載の方法。
【請求項22】
反応生成物は配列番号6または27の配列またはその相補体を含むプローブを用いて検出される,請求項18−21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
プローブはさらに蛍光標識を含む,請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記方法はリアルタイムPCRを含む,請求項16−23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
生物学的サンプルにおけるパラ百日咳菌の存在または非存在を検出する方法であって,配列番号8の少なくとも14個の連続するヌクレオチドを有するIS1001標的核酸の存在または非存在を検出することを含む方法。
【請求項26】
前記IS1001標的核酸は,配列番号8の少なくとも20個の連続するヌクレオチドを含む,請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記方法は,
(a)IS1001標的核酸またはそのフラグメントを増幅するのに適したプライマー対を用意し;
(b)IS1001標的核酸が前記サンプル中に存在する場合に反応生成物が生ずるのに適した条件下で,工程(a)のプライマー対を含むプライマー伸張反応を実施し;そして
(c)配列番号8のヌクレオチド配列と少なくとも95%同一である少なくとも14ヌクレオチドを含む反応生成物の存在または非存在を検出することにより,パラ百日咳菌の存在を判定する,
ことを含む,請求項25−26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
反応生成物は配列番号9の配列またはその相補体からの少なくとも14個の連続するヌクレオチドを含む,請求項27記載の方法。
【請求項29】
プライマー対の少なくとも1つのプライマーは配列番号10または11の配列またはその相補体を含む,請求項27記載の方法。
【請求項30】
プライマー対の少なくとも1つのプライマーは配列番号14の配列またはその相補体を含む,請求項27記載の方法。
【請求項31】
反応生成物は配列番号12の配列またはその相補体を含むプローブを用いて同定される,請求項27−30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
プローブはさらに蛍光標識を含む,請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記方法はリアルタイムPCRを含む,請求項25−32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
配列番号2またはその相補体の少なくとも20個の連続するヌクレオチドと少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含み,前記核酸は200ヌクレオチド未満の長さである,単離された核酸。
【請求項35】
前記核酸は配列番号2またはその相補体の少なくとも20個の連続するヌクレオチドと同一のヌクレオチド配列を含む,請求項34記載の核酸。
【請求項36】
前記核酸は配列番号2またはその相補体の少なくとも40個の連続するヌクレオチドと同一のヌクレオチド配列を含む,請求項34−35のいずれかに記載の核酸。
【請求項37】
前記核酸は配列番号3と同一のヌクレオチド配列を含む,請求項34−36のいずれかに記載の核酸。
【請求項38】
前記核酸は配列番号3と同一のヌクレオチド配列からなる,請求項37記載の核酸。
【請求項39】
配列番号8またはその相補体の少なくとも20個の連続するヌクレオチドと少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を含み,および前記核酸は200ヌクレオチド未満の長さである,単離された核酸。
【請求項40】
前記核酸は配列番号8またはその相補体の少なくとも20個の連続するヌクレオチドと同一のヌクレオチド配列を含む,請求項39記載の核酸。
【請求項41】
前記核酸は配列番号8またはの少なくとも40個の連続するヌクレオチドその相補体と同一のヌクレオチド配列を含む,請求項39−40のいずれかに記載の核酸。
【請求項42】
前記核酸は配列番号9と同一のヌクレオチド配列を含む,請求項39−41のいずれかに記載の核酸。
【請求項43】
前記核酸は配列番号9と同一のヌクレオチド配列からなる,請求項42記載の核酸。
【請求項44】
(a)配列番号2の配列を有する核酸またはその相補体に特異的にハイブリダイズする第1のプライマー対,および配列番号2の配列またはその相補体を有する核酸に特異的にハイブリダイズしうる第1のプローブ;および
(b)配列番号8の配列またはその相補体に特異的にハイブリダイズする第2のプライマー対,および配列番号8の配列またはその相補体を有する核酸に特異的にハイブリダイズしうる第2のプローブ,
を含むキット。
【請求項45】
第1のプライマー対は配列番号3の配列またはその相補体を有する核酸に特異的にハイブリダイズすることができる,請求項44記載のキット。
【請求項46】
第1のプローブは配列番号3の配列またはその相補体を有する核酸に特異的にハイブリダイズすることができる,請求項44−45のいずれかに記載のキット。
【請求項47】
第1のプライマー対の少なくとも1つのメンバーは配列番号4または5,またはその相補体の配列を含む,請求項44−46のいずれかに記載のキット。
【請求項48】
第1のプローブは配列番号6または27またはその相補体の配列を含む,請求項44−47のいずれかに記載のキット。
【請求項49】
第2のプライマー対は配列番号9の配列またはその相補体を有する核酸に特異的にハイブリダイズすることができる,請求項44−48のいずれかに記載のキット。
【請求項50】
第2のプローブは配列番号9の配列またはその相補体を有する核酸に特異的にハイブリダイズすることができる,請求項44−49のいずれかに記載のキット。
【請求項51】
第2のプライマー対の少なくとも1つのメンバーは配列番号10または11,またはその相補体の配列を含む,請求項44−46および48−50のいずれかに記載のキット。
【請求項52】
第2のプローブは配列番号12またはその相補体の配列を含む,請求項44−48および50のいずれかに記載のキット。
【請求項53】
第1のプライマー対の少なくとも1つのメンバーはスコーピオンプライマーである,請求項44−52のいずれかに記載のキット。
【請求項54】
スコーピオンプライマーは配列番号13または28,またはその相補体の配列を有する,請求項53記載のキット。
【請求項55】
第2のプライマー対の少なくとも1つのメンバーはスコーピオンプライマーである,請求項44−54のいずれかに記載のキット。
【請求項56】
スコーピオンプライマーは配列番号14またはその相補体の配列を有する,請求項55記載のキット。
【請求項57】
第1のプローブおよび第2のプローブはさらに検出可能な標識を含む,請求項44−56のいずれかに記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−500085(P2011−500085A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531117(P2010−531117)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/079081
【国際公開番号】WO2009/055239
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(505063050)クエスト ダイアグノスティックス インヴェストメンツ インコーポレイテッド (20)
【Fターム(参考)】