説明

ボルトの軸力測定方法およびボルト

【課題】ボルトの軸力測定方法で、ボルト頭部と超音波付与手段との密着を高めるため研削加工等行う必要がなく、また、ボルト頭部にカップラントオイルを塗布した場合では、回転により前記オイルが当接面から流れ出ることのない超音波の伝達性を効果的に向上させたボルトの軸力測定方法を提供する。
【解決手段】ボルト締結時に、ボルト9に超音波を付与して、該ボルト9に発生する軸力の測定を行うボルト9の軸力測定方法であって、前記ボルト9の頭部9aに凹部9cを形成する工程と、該凹部9cにオイル16を貯溜する工程と、前記凹部9cの底面に超音波送受信プローブ12を当接して、該超音波送受信プローブ12によりボルト内部へ超音波を付与し、付与した超音波の反射波を用いてボルト9の軸力を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルト締結時に、ボルトに超音波を付与して、該ボルトに発生する軸力の測定を行うボルトの軸力測定方法、およびボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ボルトやナット等を被締結部材に締結する際の締め付け力を適正に制御するために、締め付けトルクが所定値になったときに、締め付け完了とするインパクトレンチ等が広く用いられている。
しかし、前記インパクトレンチ等を用いた場合に、ボルト・ナットの噛み合わせが不良であったり、異物を噛み込んだりしたときには、締め込みが完了していなくても締め付けトルクが設定値まで上昇してしまい、締め付けが完了したと誤判断してしまうことがある。
【0003】
前述の締め付け完了時期の誤判定を防止するため、前記締め付けトルクに代えて、又はこれに加えて、ボルト又はナットを被締結部材に締め付けたときにボルトの軸部に発生する引張り力(ボルト軸力)を参照して、締め込みの完了を検知することが行われることがある。
このようにボルトの軸部に発生するボルト軸力を用いて締結力を制御する場合、該ボルトの頭部に超音波付与手段を当接させ、ボルトの頭部とねじ先端部との間における超音波の往復伝播時間を測定することで、該ボルトの軸力を算出している(特許文献1参照)。
【0004】
このように、ボルトの頭部に超音波付与手段を当接させて、該超音波付与手段からボルト内へ向けて超音波を付与する場合、超音波付与手段からボルト内部へ伝播した超音波が、ボルトの軸線に対して大きく傾いたり、乱反射したりすることを抑制して高精度なボルト軸力の測定を行うためには、ボルト頭部における超音波付与手段が当接する面は、平面度や超音波付与手段に対する垂直度の精度が高いことが好ましい。
従って、このボルト頭部の平面度および垂直度を高めたボルトが考案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−141241号公報
【特許文献2】特許第3660881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のごとく、頭部における超音波付与手段が当接する面の平面度や垂直度を高精度に形成したボルトとすることで、ボルト内部での超音波の傾きや乱反射を防止することができるが、前記ボルト頭部の超音波付与手段が当接する面は、パンチによる鍛造加工にて形成されていたので、超音波付与手段からの超音波を効率良くボルトへ伝播させるだけの表面粗さを得ることができなかった。
つまり、ボルト頭部における超音波付与手段が当接する面の表面粗さがさほど小さくないため、超音波付与手段とボルト頭部の当接面との密着度合いが低くなり、超音波が超音波付与手段からボルト頭部へ伝播する際に大きく減衰してしまう結果となる。
このように、超音波がボルト頭部へ伝播する際に減衰すると、ボルトのねじ先端部からの反射波の音圧レベルが低くなって測定が困難となったり、測定精度が低下したりすることとなる。
【0006】
超音波付与手段からボルト頭部への超音波の伝達性を向上させるためには、ボルト頭部における超音波付与手段が当接する面の表面粗さを、研削加工や研磨加工により小さくして、超音波付与手段に対する密着度合いを高めることが考えられるが、研削加工や研磨加工を行うとボルトの加工工数が増して、該ボルトがコストアップすることとなる。
【0007】
また、ボルト頭部の当接面にカップラントオイルを塗布して、該当接面と超音波付与手段との間の隙間をカップラントオイルにより埋めて超音波の伝達性を向上させることが考えられる。
しかし、図9に示すように、ボルト109の頭部109aの当接面109fはフラットに形成されているため、ボルト締結時の回転により、該当接面109fに塗布したカップラントオイルが当接面から流れ出してしまい、当接面109fと超音波付与手段112との間の隙間を充分に埋めることができず、超音波の伝達性を効果的に向上させることができない。
また、超音波付与手段112のボルト109の頭部109aの当接面109fへの当接位置がずれる恐れがある。
【0008】
そこで、本発明においては、ボルトのコストアップを抑えながら、超音波付与手段からボルトへの超音波の伝達性を効果的に向上させることができるボルトの軸力測定方法およびボルトを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するボルトの軸力測定方法およびボルトは、以下の特徴を有する。
即ち、請求項1記載のごとく、ボルト締結時に、ボルトに超音波を付与して、該ボルトに発生する軸力の測定を行うボルトの軸力測定方法であって、前記ボルトの頭部に凹部を形成する工程と、該ボルト頭部の凹部に液体を貯溜する工程と、前記ボルト頭部の凹部底面に超音波付与手段を当接して、該超音波付与手段によりボルト内部へ超音波を付与し、付与した超音波の反射波を用いてボルトの軸力を測定する工程とを備える。
これにより、締結時の回転動作によってもカップラントオイルとして作用する液体が、ボルト頭部がフラットに形成されていた場合のように該液体が周囲へ流出することがなく、ボルト頭部の凹部に貯溜された状態を維持して、超音波付与手段とボルトとの間の隙間を充分に埋めることとなるため、効率の良い安定した超音波の伝播を実現することが可能となる。
【0010】
また、請求項2記載のごとく、前記ボルト頭部の凹部の周面は、底部へ向けて縮径するテーパー形状に形成されている。
これにより、超音波付与手段がボルト頭部の凹部に当接する際、周面のテーパー形状に案内されて確実に凹部の底面に当接することが可能となり、効率の良い超音波の伝播が実現される。
また、ボルトの頭部から付与される超音波を、ねじ先端部に形成される平坦面へ確実に到達させることが可能となり、反射波の音圧レベルを高くすることができる。
【0011】
また、請求項3記載のごとく、前記ボルト頭部の凹部は、鍛造加工にて形成される。
これにより、該凹部の底面を研磨加工や切削加工した場合のように、ボルトをコストアップさせることなく、容易に超音波の伝播効率を向上させることができる。
【0012】
また、請求項4記載のごとく、頭部へ超音波付与手段が当接され、該超音波付与手段から付与される超音波を用いて軸力が測定されるボルトであって、前記頭部には凹部が形成され、前記凹部に液体を貯溜した状態で、該凹部底面に前記超音波付与手段が当接される。
このように、締結時の回転動作によってもカップラントオイルとして作用する液体が、ボルト頭部がフラットに形成されていた場合のように該液体が周囲へ流出することがなく、ボルト頭部の凹部に貯溜された状態を維持して、超音波付与手段とボルトとの間の隙間を充分に埋めることとなるため、効率の良い安定した超音波の伝播を実現することが可能となる。
【0013】
また、請求項5記載のごとく、前記ボルト頭部の凹部の周面は、底部へ向けて縮径するテーパー形状に形成されている。
これにより、超音波付与手段がボルト頭部の凹部に当接する際、周面のテーパー形状に案内されて確実に凹部の底面に当接することが可能となり、効率の良い超音波の伝播が実現される。
また、ボルトの頭部から付与される超音波を、ねじ先端部に形成される平坦面へ確実に到達させることが可能となり、反射波の音圧レベルを高くすることができて、ボルトの軸力測定の信頼性を向上することができる。
【0014】
また、請求項6記載のごとく、前記ボルト頭部の凹部は、鍛造加工にて形成される。
これにより、該凹部の底面を研磨加工や切削加工した場合のように、ボルトをコストアップさせることなく、容易に超音波の伝播効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、超音波付与手段とボルトとの間の隙間を充分に埋めることができて、効率の良い安定した超音波の伝播を実現することが可能となる。
また、ボルトの軸力測定の信頼性を向上することができる。
さらに、ボルトをコストアップさせることなく、容易に超音波の伝播効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0017】
本発明にかかるボルトの軸力測定方法を実行するために用いられるボルト締結システムの例について説明する。
図1に示すボルト締結システムは、例えば、エンジン8のシリンダブロック8aとシリンダヘッド8bとをボルト9により締結する際に用いられるものであり、ボルト9の締結動作を行うとともに、該ボルト9の頭部に超音波を付与し、ボルト9のねじ先端部にて反射して帰ってきた超音波を検出するナットランナ1と、該ナットランナ1にて検出された超音波の反射波が入力され、入力された超音波からナットランナ1により締結されているボルト9の軸力を算出する演算装置2と、該演算装置2にて算出されたボルト9の軸力データが入力され、入力された軸力データに基づいてナットランナ1のボルト締結動作を制御する制御装置3と、該制御装置3によるナットランナ1の制御状態を表示する表示機4と、前記制御装置3の制御条件の設定や変更等の各種操作を行う操作盤5とを備えている。
【0018】
前記ナットランナ1は、その先端部(図1における下端部)にソケット11を備えている。
図2に示すように、前記ソケット11は、ボルト9の頭部9aに係合可能な係合穴11aを備えており、該係合穴11aをボルト9の頭部9aに係合させた状態でソケット11を回転駆動させることにより、ボルト9がエンジン8のシリンダブロック8aに締結される。
前記ソケット11の係合穴11内には超音波送受信プローブ12が設けられており、該係合穴11がボルト9の頭部9aに係合した状態となると、超音波送受信プローブ12がボルト9の頭部9aに当接するように構成されている。
【0019】
超音波送受信プローブ12には、ナットランナ1の内部または外部に設けられる超音波発生装置13が接続されており、該超音波発生装置13にて発生した超音波が超音波送受信プローブ12を通じてボルト9内に頭部9aから付与される。
頭部9aから付与された超音波は、ねじ先端部9bで反射した後に頭部9aへ戻り、超音波の反射波は超音波送受信プローブ12にて受信される。
【0020】
超音波送受信プローブ12にて受信された超音波の反射波は前記演算装置2に入力され、演算装置2では、超音波送受信プローブ12が超音波を送信してから、該超音波がボルト9の頭部9aからねじ先端部9bまでを往復して、該超音波送受信プローブ12により受信されるまでの時間を計測し、計測した時間に基づいてボルト9の軸力を算出するようにしている。
【0021】
つまり、図3に示すように、超音波が超音波送受信プローブ12によりボルト9へ送信されてから、該ボルト9内を往復して受信されるまでの超音波の伝播時間は、締結される前のボルト9については伝播時間Toとなる。これに対して、締結された後のボルト9では、前記伝播時間Toよりも伝播時間差ΔTだけ長い伝播時間Tpとなる。
このように、締結前のボルト9の伝播時間Toと、締結後のボルト9の伝播時間Tpとの間に伝播時間差ΔTが生じるのは、締結によりボルト9に軸力が発生することにより、該ボルト9内を伝播する超音波の速度が遅くなることと、締結によりボルト9が伸びて長くなることによる。
【0022】
そして、締結前のボルト9の伝播時間Toと締結後のボルト9の伝播時間Tpとの伝播時間差ΔTが、該ボルト9に発生している軸力に比例するため、演算装置2では、該演算装置2に予め記憶されている伝播時間差ΔTと軸力との関係(図4参照)を用いて、計測した伝播時間差ΔTからボルト9の軸力を算出するように構成している。
なお、ボルト9に発生する軸力は、「軸力=K・ΔT(Kはボルト固有の定数)」にて表わされる。
【0023】
なお、伝播時間差ΔTを計測する場合は、ボルト9の締結作業を行う際に締結前のボルト9の伝播時間Toと締結後のボルト9の伝播時間Tpとの両方を計測してもよく、締結前のボルト9の伝播時間Toはボルト9の締結作業を行う前に予め計測して演算装置2に記憶させておき、ボルト9の締結作業を行う際には締結後のボルト9の伝播時間Tpのみを計測するように構成してもよい。
【0024】
演算装置2にて算出されたボルト9の軸力データは制御装置3に入力され、該制御装置3は、入力された軸力データに基づいて、ナットランナ1におけるソケット11の回転動作を制御し、算出された軸力データの値が予め設定された一定値に達すると、締結終了としてソケット11の回転動作を停止する。
【0025】
このように、本ボルト締結システムにおいては、ナットランナ1によりボルト9を締結する際に、該ボルト9に超音波を付与して、付与した超音波の反射波を検出することにより、ボルト9に発生している軸力を算出し、算出した軸力に基づいてナットランナ1によるボルト9の締結動作を制御して、該ボルト9が所定の軸力にて締結されるようにしている。
【0026】
また、前記本ボルト締結システムにより軸力を測定されながら締結されるボルト9は、次のように構成されている。
つまり、図5に示すように、ボルト9の頭部9aにおける、超音波送受信プローブ12との当接面(図5における上面)には、凹部9cが形成されている。
【0027】
そして、超音波送受信プローブ12が当接され、ナットランナ1のソケット11により回転駆動される際の凹部9cにはオイル16が貯溜されており、超音波送受信プローブ12とボルト9の頭部9aとは該オイル16を介して密着している。
このように、オイル16はカップラントオイルとして作用し、凹部9cにオイル16を貯溜した状態で超音波送受信プローブ12を当接させることで、超音波送受信プローブ12からボルト9へ付与される超音波が、減衰を抑えられつつ効率良く伝播することとなっている。
【0028】
なお、ボルト9を締結する際に頭部9aの凹部9cに貯溜するオイル16としては、例えばエンジン8に適用される潤滑油を用いることができるが、これに限らず、その他のオイルやオイル以外の水等の液体、さらにはグリス等のペースト様の液体を凹部9cに貯溜することもできる。
【0029】
前記ボルト9の頭部9aにおける凹部9cは、該ボルト9の成形工程にて次のように形成されている。
つまり、ボルト9は、図6(a)に示すような円柱状部材である素材状態のボルト9の上端部を、図6(b)に示すように第1軸パンチ21にてパンチングした後、図6(c)に示すように第2軸パンチ22により頭部9aを形成し、さらに図6(d)に示すように第3軸パンチ23によるパンチングにて頭部9aの上面に凹部9cを形成することで、成形されている。
【0030】
このように、超音波送受信プローブ12が当接する頭部9aの上面に凹部9cを形成したボルト9は、前記本ボルト締結システムにより締結される際には、次のような手順にて締結が行われる。
つまり、ボルト9をボルト締結システムにより締結する場合は、図7(a)に示すように、該ボルト9には、前述のボルト成形工程にて凹部9cが形成され、次に、図7(b)に示すように、形成された凹部9cにオイル16が貯溜される。
さらに、ボルト9においては、凹部9cにオイル16が貯溜された状態の頭部9aにナットランナ1のソケット11が係合され、頭部9aにソケット11が係合することで、該頭部9aの凹部9cに超音波送受信プローブ12が当接する。
【0031】
その後、超音波送受信プローブ12からボルト9内部へ超音波が付与され、付与された超音波がねじ先端部9bにて反射して戻ってきた反射波を該超音波送受信プローブ12にて受信し、受信した反射波を用いて、前述のごとく演算装置2および制御装置3により、ナットランナ1により締結されるボルト9の軸力が計測され、計測した軸力に基づいてナットランナ1の動作が制御されることとなる。
【0032】
図5に示すように、締結時に軸力が計測される前記ボルト9の頭部9aに形成される凹部9cは、該頭部9a上面の略中央部に形成されており、該凹部9cの底面形状は超音波送受信プローブ12の当接面形状と略同じ形状に形成されている(例えば、超音波送受信プローブ12の当接面形状が円形であれば、凹部9cの底部も円形に形成される)。
また、前記凹部9cの周面9dは、底部へ向けて縮径するテーパー形状に形成されている。これにより、超音波送受信プローブ12がボルト9の頭部9aの凹部9cに当接する際、周面9dのテーパー形状に案内されて確実に凹部9cの底面に当接することが可能となり、効率の良い超音波の伝播が実現される。
【0033】
また、図8に示すように、ボルト9のねじ先端部9bにおける中央部には、付与された超音波を軸方向からずらすことなく反射するための平坦面9eが形成されているが、超音波送受信プローブ12を周面9dのテーパー面の案内により凹部9cの底面に確実に当接させることにより、頭部9aから付与される超音波を確実に平坦面9eへ到達させることが可能となり、反射波の音圧レベルを高くすることができて、ボルトの軸力測定の信頼性を向上することができる。
【0034】
また、ボルト9の頭部9aに凹部9cを形成して、該凹部9cにオイル16を貯溜させた状態で該ボルト9を締結することで、締結時の回転動作によってもカップラントオイルとして作用するオイル16が、ボルト9の頭部9aがフラットに形成されていた場合のように周囲へ流出することがなく、該凹部9cに貯溜された状態を維持して、超音波送受信プローブ12とボルト9との間の隙間を充分に埋めることとなるため、効率の良い安定した超音波の伝播を実現することが可能となっている。
【0035】
この場合、オイル16を貯溜する凹部9cは、ボルト9を成形する一連の工程の中でパンチングにて形成しているので、該凹部9cを形成する手間は殆どかかっておらず、凹部9cの底面を研磨加工や切削加工する必要もないので、ボルト9をコストアップさせることなく、容易に超音波の伝播効率を向上させることができる。
ただし、凹部9cの底面を研磨や切削して、該底面の平面度を高めたり表面粗さを小さくしたりしたボルト9を用いた場合でも、効率の良い安定した超音波の伝播を実現することができる。
【0036】
なお、テーパー面に形成される凹部9cにおける周面9dの傾斜度合いは、貯溜するオイル16の粘度、締結時におけるボルト9の回転速度や時間等といった各種の締結条件に応じて適宜設定することができる。
【0037】
例えば、オイル16の粘度が低かったり、ボルト9の回転速度が速かったりした場合は、周面9dの傾斜を大きく(周面9dが垂直に近くなる方向の角度に)設定することで、オイル16の周囲への流出を防いで締結終了まで該オイル16を凹部9cに貯溜させておくことができる。
逆に、オイル16の粘度が高かったり、ボルト9の回転速度が遅かったり場合は、周面9dの傾斜を小さく(周面9dが水平に近くなる方向の角度に)設定することも可能である。
【0038】
また、頭部9aに形成される凹部9dの深さ寸法dも、前述のボルト9の締結条件に応じて適宜設定することが可能であるが、例えば1.0mm〜2.0mm程度の寸法に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】ボルトの軸力測定方法を実行するために用いられるボルト締結システムを示す全体図である。
【図2】超音波の送受信が行われるナットランナのソケット部を示す側面断面図である。
【図3】締結前のボルトにおける超音波の伝播時間と締結後のボルトにおける超音波の伝播時間とを示す図である。
【図4】締結前後のボルトでの超音波の伝播時間差と軸力との関係を示す図である。
【図5】軸力を測定されながら締結されるボルトの頭部を示す側面断面図である。
【図6】頭部に凹部が形成されるボルトの成形工程を示す側面断面図である。
【図7】ボルトがボルト締結システムにより締結される際の手順を示す側面断面図である。
【図8】ボルトのねじ先端部を示す側面断面図である。
【図9】従来のボルトの締結時に、頭部にカップラントオイルを塗布して回転させた場合の様子を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 ナットランナ
2 演算装置
3 制御装置
8 エンジン
8a シリンダブロック
8b シリンダヘッド
9 ボルト
9a 頭部
9b ねじ先端部
9c 凹部
9d 周面
11 ソケット
12 超音波送受信プローブ
13 超音波発生装置
16 オイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルト締結時に、ボルトに超音波を付与して、該ボルトに発生する軸力の測定を行うボルトの軸力測定方法であって、
前記ボルトの頭部に凹部を形成する工程と、
該ボルト頭部の凹部に液体を貯溜する工程と、
前記ボルト頭部の凹部底面に超音波付与手段を当接して、該超音波付与手段によりボルト内部へ超音波を付与し、付与した超音波の反射波を用いてボルトの軸力を測定する工程と、
を備えることを特徴とするボルトの軸力測定方法。
【請求項2】
前記ボルト頭部の凹部の周面は、底部へ向けて縮径するテーパー形状に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のボルトの軸力測定方法。
【請求項3】
前記ボルト頭部の凹部は、鍛造加工にて形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のボルトの軸力測定方法。
【請求項4】
頭部へ超音波付与手段が当接され、該超音波付与手段から付与される超音波を用いて軸力が測定されるボルトであって、
前記頭部には凹部が形成され、
前記凹部に液体を貯溜した状態で、該凹部底面に前記超音波付与手段が当接される、
ことを特徴とするボルト。
【請求項5】
前記ボルト頭部の凹部の周面は、底部へ向けて縮径するテーパー形状に形成されている、
ことを特徴とする請求項4に記載のボルト。
【請求項6】
前記ボルト頭部の凹部は、鍛造加工にて形成されることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のボルト。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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