説明

ボンディング装置およびボンディング方法

【課題】カットクランパの部品寿命を適切に推定して、ボンディング動作における放電異常の発生を有効に防止することができるボンディング装置およびボンディング方法を提供することを目的とする。
【解決手段】キャピラリの下方に設けられたトーチロッドとワイヤとの間に放電を発生させてワイヤの下端部にボールを形成してボンディングするボンディング装置において、タイミングt1〜t2における放電電圧値V2が警告設定値を超えたならば警告を発する放電電圧値警告手段を備える。警告設定値を変化させながら放電を反復して発生させる過程において放電電圧値警告手段によって警告が発せられたときの警告設定値Vthnを検出して記憶し、この警告設定値Vthnに余裕値を加算した電圧値を放電異常しきい値として設定し、自動生産において放電異常の発生が報知されたならば、カットクランパの状態を確認する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャピラリから繰り出されるワイヤを放電により溶融させて対象物にボンディングするボンディング装置およびボンディング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子を基板の回路電極と電気的に接続する方法としてワイヤボンディングが広く用いられている。このワイヤボンディングでは、半導体素子の外部接続用電極に金線などのワイヤの一端部をキャピラリによって圧着し、この圧着された状態のワイヤをキャピラリを移動させることにより基板の回路電極上のボンディング点まで引き回してボンディングする。このワイヤボンディング動作においては、ワイヤは連続した線として供給されるため、ワイヤを1ボンディング動作ごとに切断する必要がある。このワイヤの切断は、キャピラリの上方に配設されたカットクランパによってワイヤをクランプした状態でキャピラリを引き上げ、ボンディング点の直上位置でワイヤを引きちぎることによって行われる(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−94545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ワイヤのクランプはカットクランパの先端部でワイヤを挟み込むことによって行われるため、カットクランパの先端部においてワイヤに直接接触する部分は、ワイヤと高頻度で当接することによって異物付着や電触により損耗する。このためカットクランパに先端部には、交換自在のパッドが装着され、パッドが長時間の使用により損耗した場合には、新しいパッドと交換する作業が行われる。
【0004】
しかしながら、上述の特許文献例に示す装置を含め、従来のボンディング装置においては、カットクランパに使用される交換部品の寿命判定は専らマシンオペレータの経験に基づく勘に依存しており、必ずしも適正な交換時期に部品交換が行われるとは限らなかった。このため、カットクランパが損耗した状態でボンディング作業を継続することによって生じる放電異常の発生を有効に防止することが困難であった。
【0005】
そこで本発明は、カットクランパの部品寿命を適切に推定して、ボンディング動作における放電異常の発生を有効に防止することができるボンディング装置およびボンディング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のボンディング装置は、キャピラリから繰り出されるワイヤを放電により溶融させて対象物にボンディングするボンディング装置であって、前記キャピラリの上方に設けられ前記ワイヤをクランプすることによって前記ワイヤを保持するとともに、保持したワイヤを引き上げることにより前記ワイヤを切断するカットクランパと、前記キャピラリの下方に設けられたトーチロッドと前記ワイヤとの間に前記カットクランパを介して放電電圧を印加することにより前記トーチロッドと前記ワイヤの下端部との間に放電を発生させる放電発生手段と、前記放電電圧を測定する放電電圧測定手段と、所定のタイミングにおける前記放電電圧測定手段の測定値が警告設定値を超えたならば警告を発する放電電圧値警告手段とを備え、前記放電電圧の異常検出のための放電異常しきい値を前記警告設定値として設定し、前記警告により前記放電の発生状態もしくは前記カットクランパによるワイヤのクランプ状態が異常である旨の報知を行う。
【0007】
本発明のボンディング方法は、キャピラリの上方に設けられワイヤをクランプすることによって前記ワイヤを保持するとともに、保持したワイヤを引き上げることにより前記ワイヤを切断するカットクランパと、前記キャピラリの下方に設けられたトーチロッドと前記ワイヤとの間に前記カットクランパを介して放電電圧を印加することにより前記トーチロッドと前記ワイヤの下端部との間に放電を発生させる放電発生手段と、前記放電電圧を測定する放電電圧測定手段と、所定のタイミングにおける前記放電電圧測定手段の測定結果が警告設定値を超えたならば警告を発する放電電圧値警告手段とを備えたボンディング装置によって、前記キャピラリから繰り出されるワイヤを放電により溶融させて対象物にボンディングするボンディング方法であって、前記放電電圧の異常検出のための放電異常しきい値を前記警告設定値として設定し、前記警告により前記放電の発生状態もしくは前記カットクランパによるワイヤのクランプ状態が異常である旨の報知を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、所定のタイミングにおける放電電圧測定手段の測定値が警告設定値を超えたならば警告を発する放電電圧値警告手段を備え、放電電圧の異常検出のための放電異常しきい値を警告設定値として設定することにより、放電発生手段による放電発生状態もしくはカットクランパによるクランプ状態が異常である旨の報知を行うことができ、ボンディング動作における放電異常の発生を有効に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態のワイヤボンディング装置の斜視図、図2は本発明の一実施の形態のワイヤボンディング装置の制御系の構成を示すブロック図、図3は本発明の一実施の形態のワイヤボンディング装置の記憶部に記憶されるデータおよびプログラムを示す図、図4は本発明の一実施の形態のボンディング装置における放電電圧の異常検出の説明図、図5は本発明の一実施の形態のワイヤボンディング装置における放電異常しきい値の自動設定処理のフロー図、図6は本発明の一実施の形態のワイヤボンディング装置による自動生産動作のフロー図である。
【0010】
まず、図1を参照してボンディング装置の全体構造を説明する。基台1の上面には、基板2が載置されている。基板2には、ボンディング対象のチップ(半導体素子)3が搭載されている。チップ3の周辺にはボンディング点である回路電極5が多数形成されており、ワイヤボンディング動作においては、ワイヤをボンディングの対象物としてのチップ3の外部接続用電極と回路電極5とにボンディングする。これにより、チップ3は回路電極5と接続される。
【0011】
基板2上には押さえ板6が配設されている。押さえ板6はシリンダ7のロッド7aに連結されており、ロッド7aが引き込むと基板2は押さえ板6で押さえつけられて固定される。基台1の側方には、Xモータ10X、Yモータ10Yによって駆動される可動テーブル10が設置されており、可動テーブル10上には駆動ボックス11が設けられている。可動テーブル10が作動することにより、駆動ボックス11はX方向、Y方向に水平移動する。
【0012】
駆動ボックス11からはホーン12が前方へ延出しており、ホーン12の先端部にはキャピラリ13が保持されている。キャピラリ13には、ボンディングに用いられるワイヤ15が挿通する。ワイヤ15はスプール14に卷回された状態で供給され、スプール14から繰り出されたワイヤ15はテンション付与部17、カットクランパ16を経てキャピラリ13に挿通する。カットクランパ16はキャピラリ13の上方に設けられ、駆動ボックス11からワイヤ15に向かって水平に延出した2つのアームを備えている。これらのアームが開閉動作を行うことにより、ワイヤ15をパッド16a(図2参照)によって両側から挟み込んで保持する。キャピラリ13およびカットクランパ16は、駆動ボックス
11内に設けられたZ軸昇降機構によって昇降可能となっている。
【0013】
キャピラリ13の下方にはトーチロッド19が設けられており、トーチロッド19の先端部はキャピラリ13の下端部に近接している(図2参照)。トーチロッド19は、キャピラリ13の下端部から繰り出されるワイヤ15の下端部との間で放電を発生させることにより、ワイヤ15の下端部を溶融させて金属のボール15a(図2参照)を形成する。そしてキャピラリ13を下降させてボール15aをチップ3の接続用電極に押し付けることにより、ワイヤ15はこの接続用電極にボンディングされる。
【0014】
この後、キャピラリ13をカットクランパ16とともに上昇させることにより、ワイヤ15は引き上げられて切断され、これにより1つのワイヤボンディング動作が完了する。このワイヤボンディング動作において、カットクランパ16はキャピラリ13の上方に設けられワイヤ15をクランプすることによってワイヤ15を保持するとともに、保持したワイヤ15を引き上げることによりワイヤ15を切断する機能を有している。そして可動テーブル10を作動させて駆動ボックス11を水平移動させ、キャピラリ13やトーチロッド19を複数の接続用電極の位置に順次移動させて、前述のワイヤボンディング動作を反復実行することにより、チップ3を対象としたワイヤボンディング作業が完了する。
【0015】
次に図2を参照して、ワイヤボンディング装置の制御系の構成を説明する。図2において、キャピラリ13を上下に挿通するワイヤ15は、キャピラリ13の上方においてカットクランパ16のパッド16aによって両側から挟み込まれて保持されている。キャピラリ13の下方には、トーチロッド19が位置している。パッド16aおよびトーチロッド19はトーチ電源20に電気的に接続されており、トーチ電源20を駆動することにより、ワイヤ15とトーチロッド19との間には、放電電圧が印加される。
【0016】
これにより、ワイヤ15の下端部とトーチロッド19との間には放電が発生し、前述のようにワイヤ15の下端部にボール15aが形成される。すなわち、トーチ電源20は、キャピラリ13の下方に設けられたトーチロッド19とワイヤ15との間にカットクランパ16を介して放電電圧を印加することにより、トーチロッド19とワイヤ15の下端部との間に放電を発生させる放電発生手段となっている。トーチ電源20によって印加される放電電圧は、放電電圧測定手段21によって測定される。
【0017】
制御部22は、図1に示すワイヤボンディング装置の各部を制御してワイヤボンディング動作を実行させるほか、記憶部23に記憶された処理プログラムを実行することにより、後述する放電電圧の異常監視のために必要な処理を行う。これらの処理実行に際しては、記憶部23に記憶されたデータが参照される。表示部24は表示パネルなどの表示手段であり、操作・入力部25はキーボードやタッチパネルなどの入力手段である。表示部24は、操作・入力部25による操作コマンドや各種データの入力に際して案内画面を表示するとともに、以下に説明する放電電圧値の警告が表示される。
【0018】
次に図3を参照して、記憶部23に記憶されるデータおよびプログラムについて説明する。記憶部23はデータ記憶部23a、プログラム記憶部23bより構成されており、データ記憶部23aには警告設定値26a、しきい値設定用データ26bが、またプログラム記憶部23bには、放電電圧値警告プログラム27a、警告設定値掃引プログラム27b、しきい値設定プログラム27cがそれぞれ記憶されている。
【0019】
警告設定値26aは、トーチ電源20によってワイヤ15とトーチロッド19との間に放電電圧を印加して放電を発生させる際に、警告を発生すべき放電電圧値として設定されるデータである。また、しきい値設定用データ26bは後述するしきい値設定に用いられる初期電圧値Vth0、刻み電圧値ΔVおよび余裕値Vmgnである。ここで、ワイヤボ
ンディング動作における放電電圧の時間的変化のパターンについて図4を参照して説明する。図4は、ワイヤボンディング動作におけるトーチロッド19とワイヤ15との間の電位差と、トーチロッド19とワイヤ15との間の放電によって流れる電流の時間的変化を示している。ここで電圧については、縦軸下方が電位差が増大する方向を示している。
【0020】
ワイヤボンディング動作が開始され、タイミングt0にて放電電圧が印加されると、電位差は急速に第1電圧値V1まで増大する。そしてタイミングt1にてワイヤ15とトーチロッド19との間での放電が開始し、電位差は第2電圧値V2(以下、「放電電圧値V2」という)まで低下して所定の電流値Iで放電が発生する。この放電はタイミングt2まで持続し、この放電によりワイヤ15の下端部が溶融してボール15aが形成される。
【0021】
このときワイヤ15の下端部に正常なボール15aを形成して良好なボンディング品質を確保するには、放電電圧値V2を適正電圧値に保つことが求められるため、ボンディング動作時にはタイミングt1からタイミングt2の間の所定のタイミングにて放電電圧値V2を監視して、放電電圧値V2が許容範囲を外れた場合には警告を発するようにしている。この警告は、制御部22が放電電圧値警告プログラム27aを実行することにより行われる。
【0022】
すなわち、放電電圧値警告プログラム27aは、ワイヤ15とトーチロッド19との間に放電が発生しているタイミングにおける放電電圧測定手段21の測定値が、警告設定値26aを超えた場合に、表示部24に警告を表示させるための処理を行うプログラムであり、制御部22が放電電圧値警告プログラム27aを実行することにより実現される機能は、所定のタイミングにおける放電電圧測定手段の測定値が警告設定値を超えたならば警告を発する放電電圧値警告手段となっている。
【0023】
上述の放電電圧値V2を対象とした警告において、放電電圧の異常検出のために予め定められた放電異常しきい値を、前述の警告設定値として設定することにより、警告によって放電の発生状態もしくはカットクランパ19によるワイヤ15のクランプ状態が異常である旨の報知を行うことが可能となっている。なお、この報知ないし警告は、警告表示であっても、警報音であってもまたはこれらの両方であってもよい。
【0024】
ここでワイヤボンディング装置においては、放電電圧値V2は固定値ではなくトーチロッド19などの経時変化に伴って変化し、その電位差が徐々に増加する傾向にある。またボンディング条件の設定に伴って放電条件を変更した場合には、放電電圧値V2も変更される。このため放電電圧値V2の異常を監視するための放電異常しきい値は、放電電圧値V2の経時変化あるいは変更に伴って随時更新されるのが望ましい。
【0025】
本実施の形態に示すワイヤボンディング装置は、放電異常の報知のためのしきい値を自動設定する機能を備えており、この自動設定処理は、制御部22がしきい値設定用データ26bを用いて、警告設定値掃引プログラム27b、しきい値設定プログラム27cを実行することにより行われる。
【0026】
すなわち、警告設定値を予め定められた初期電圧値Vth0から所定の刻み電圧値ΔVだけ電位差を逐次下げる警告値掃引を行いながら、警告設定値を変更する毎にワイヤ15とトーチロッド19との間に実際に放電を発生させる。そしてこの処理を、放電電圧値V2が警告設定値を超えた旨の警告が発せられるまで繰り返し実行する。これにより、当該時点における放電電圧値V2を警告設定値を介して間接的に求めることができ、放電電圧値V2をオシロスコープなどの計測装置によって実測することなく放電異常しきい値を更新することが可能となっている。
【0027】
警告値掃引は、制御部22が警告設定値掃引プログラム27bを実行することにより行われる。したがって、制御部22が警告設定値掃引プログラム27bを実行することにより実現される機能は、警告設定値の電位差を刻み電圧値ΔVだけ徐々に減少させて所定の掃引パターンで変化させる警告設定値掃引手段となっている。
【0028】
この放電異常しきい値自動設定処理について、図5のフローに沿って図4を参照して説明する。この処理は、制御部22がしきい値設定プログラム27cを実行することにより行われるものである。したがって、制御部22がしきい値設定プログラム27cを実行することにより実現される機能は、警告設定値を変化させながら放電を反復して発生させる過程において放電電圧値警告手段によって警告が発せられたときの警告設定値を検出して記憶し、この警告設定値に基づいて前記放電電圧の異常検出のためのしきい値を設定するしきい値設定手段となっている。
【0029】
自動設定処理が開始されるとまず、しきい値設定用データ26bを読み込む(ST1)。これにより、警告値掃引に用いられる初期電圧値Vth0(ここでは例えば550V)、刻み電圧値ΔV(ここでは例えば10V)およびしきい値設定に用いられる余裕値Vmgn(ここでは例えば30V)が読み込まれる。次いで、警告設定値を初期電圧値Vth0に設定する(ST2)。そして所定回数の放電およびボンディングを実行し(ST3)、この放電過程において放電電圧値V2が警告設定値を超えたときに発せられる警告が発生したか否かを判断する(ST4)。ここで警告発生がない場合には、警告設定値の電位差を刻み電圧値ΔVだけ下げ(すなわち図4に示すように、初期電圧値Vth0より電位差がΔVだけ低いVth1に設定し(ST5)、(ST3)に戻って再度放電およびボンディングを実行する。
【0030】
そして警告設定値の電位差を刻み電圧値ΔVだけ逐次下げる警告値掃引を行う過程で、(ST4)において警告発生が確認されたならば、このときの警告設定値Vthnを検出して記憶する。放電異常しきい値は、この警告設定値Vthnに基づいて設定される。すなわち現在の警告設定値Vthnより、所定の余裕値Vmgnだけ電位差が高い電圧値を放電異常しきい値として設定する(ST6)。設定された放電異常しきい値は、データ記憶部23aに放電異常の監視用のしきい値として設定された警告設定値26aとして記憶される。したがって、データ記憶部23aは、放電異常しきい値を記憶する記憶手段となっている。ここで現在の警告設定値Vthnより余裕値Vmgnだけ電位差が高い電圧値を実際の放電異常しきい値として用いることにより、放電電圧の多少の変動によって不必要に警告が頻発する事態を避けることができる。
【0031】
すなわち本実施の形態に示すボンディング方法においては、警告設定値を変化させながら放電を反復して発生させる過程において、放電電圧値警告手段によって警告が発せられたときの警告設定値を検出して記憶し、この警告設定値に基づいて放電電圧の異常検出のための放電異常しきい値を設定するようにしている。これにより、従来装置において放電異常しきい値を更新設定するために必要とされた放電電圧の実測、例えばオシロスコープによって放電電圧の波形を取得した結果に基づいてしきい値を設定する方法と比較して、簡便な方法で放電異常しきい値の更新を随時行うことができるようになっている。
【0032】
次に、このようにして設定されたしきい値によって放電電圧を監視しながら実行される自動生産動作について、図6を参照して説明する。まず自動生産が開始され(ST11)、対象の基板2が基台1上に搬入・位置決めされる。次いで、ワイヤ15とトーチロッド19との間に放電を発生させる(ST12)。このとき、放電電圧値V2が放電異常しきい値を超えたか否かを判断し(ST13)、超えている場合には装置を停止して警告を発生する(ST14)。
【0033】
この警告発生を承けて、マシンオペレータは放電異常の状況を確認して必要な処置を行う。すなわち、放電電圧が放電異常しきい値を超える現象の原因の大部分は、ワイヤ15とトーチロッド19との間のギャップが不適正であること、あるいはカットクランパ16によるワイヤ15のクランプ状態の異常に起因することが経験により知られており、これらを確認することにより、放電異常の原因を除去することができる。
【0034】
そして(ST13)にて放電電圧値V2が放電異常しきい値を超えていないならば、正常な放電が行われてボール15aが形成されたと判断して、キャピラリ13を下降させてボンディングを行う(ST15)。次いで当該ボンディングが最後のボンディングか否かを判断し(ST16)、最後でなければ次のボンディングへ移行して(ST17)、(ST12)以降のステップを反復実行する。そして(ST16)にて最後のボンディングであることを確認して、自動生産を終了する(ST18)。
【0035】
そして上述の自動生産を反復して実行する過程において、所定のインターバルにて図5に示す放電異常しきい値の自動設定を実行する。そして放電異常しきい値自動設定処理において最終的に検出された警告電圧値Vthn(当該時点における放電電圧値V2に対応した電圧値)が、予め設定された許容上限値を超えたことが確認されたならば、カットクランパ16の部品寿命が尽きたと判断して、パッド16aの交換を行う。これにより、トーチロッド19などの経時変化に起因して放電特性が変動したような場合においても、その時点における放電電圧値V2に応じた放電異常しきい値によって放電状態を監視することができるとともに、カットクランパ16の部品寿命到来の推定を合理的に行うことができる。
【0036】
上記説明したように、本発明のボンディング装置およびボンディング方法においては、所定のタイミングにおける放電電圧測定手段の測定値が警告設定値を超えたならば警告を発する放電電圧値警告手段を備え、放電電圧の異常検出のための放電異常しきい値を警告設定値として設定するようにしている。これにより、放電発生手段による放電発生状態もしくはカットクランパによるクランプ状態が異常である旨の報知を行うことができる。
【0037】
これにより、マシンオペレータは放電異常の発生を確実に察知して適切な処置を行うことが可能となる。特にカットクランパによるクランプ状態の異常は、従来は外部から観察することが困難であるため、カットクランパにおいてワイヤと直接接触するパッドの寿命による損耗が原因で放電異常が生じている場合においても、その状態を知ることが困難であった。
【0038】
これに対し、本発明のボンディング装置では、警告を受けたマシンオペレータがカットクランパの状態を確認することにより、ワイヤに接触するパッドの表面状態を把握することができ、パッドの清掃などの処置の要否を的確に判断することができる。さらに放電異常しきい値の自動設定において検出された最終的な警告設定値Vthnに基づいてパッド交換を必要とするか否かを合理的に判断することができる。したがって、カットクランパが部品寿命により損耗した状態でボンディング作業を継続することによる放電異常の発生を有効に防止することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のボンディング装置およびボンディング方法は、ボンディング動作における放電異常の発生を有効に防止することができるという効果を有し、ワイヤボンディング装置やバンプボンディング装置などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施の形態のワイヤボンディング装置の斜視図
【図2】本発明の一実施の形態のワイヤボンディング装置の制御系の構成を示すブロック図
【図3】本発明の一実施の形態のワイヤボンディング装置の記憶部に記憶されるデータおよびプログラムを示す図
【図4】本発明の一実施の形態のボンディング装置における放電電圧の異常検出の説明図
【図5】本発明の一実施の形態のワイヤボンディング装置における放電異常しきい値の自動設定処理のフロー図
【図6】本発明の一実施の形態のワイヤボンディング装置による自動生産動作のフロー図
【符号の説明】
【0041】
2 基板
3 チップ
13 キャピラリ
15 ワイヤ
15a ボール
16 カットクランパ
19 トーチロッド
20 トーチ電源(放電発生手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャピラリから繰り出されるワイヤを放電により溶融させて対象物にボンディングするボンディング装置であって、
前記キャピラリの上方に設けられ前記ワイヤをクランプすることによって前記ワイヤを保持するとともに、保持したワイヤを引き上げることにより前記ワイヤを切断するカットクランパと、
前記キャピラリの下方に設けられたトーチロッドと前記ワイヤとの間に前記カットクランパを介して放電電圧を印加することにより前記トーチロッドと前記ワイヤの下端部との間に放電を発生させる放電発生手段と、
前記放電電圧を測定する放電電圧測定手段と、
所定のタイミングにおける前記放電電圧測定手段の測定値が警告設定値を超えたならば警告を発する放電電圧値警告手段とを備え、
前記放電電圧の異常検出のための放電異常しきい値を前記警告設定値として設定し、前記警告により前記放電の発生状態もしくは前記カットクランパによるワイヤのクランプ状態が異常である旨の報知を行うことを特徴とするボンディング装置。
【請求項2】
前記警告設定値を所定の掃引パターンで変化させる警告設定値掃引手段と、前記警告設定値を変化させながら前記放電を反復して発生させる過程において前記放電電圧値警告手段によって警告が発せられたときの警告設定値を検出し、この警告設定値に基づいて前記放電異常しきい値を設定するしきい値設定手段と、前記放電異常しきい値を記憶する記憶手段とを備えたことを特徴とする請求項1記載のボンディング装置。
【請求項3】
キャピラリの上方に設けられワイヤをクランプすることによって前記ワイヤを保持するとともに、保持したワイヤを引き上げることにより前記ワイヤを切断するカットクランパと、前記キャピラリの下方に設けられたトーチロッドと前記ワイヤとの間に前記カットクランパを介して放電電圧を印加することにより前記トーチロッドと前記ワイヤの下端部との間に放電を発生させる放電発生手段と、前記放電電圧を測定する放電電圧測定手段と、所定のタイミングにおける前記放電電圧測定手段の測定結果が警告設定値を超えたならば警告を発する放電電圧値警告手段とを備えたボンディング装置によって、前記キャピラリから繰り出されるワイヤを放電により溶融させて対象物にボンディングするボンディング方法であって、
前記放電電圧の異常検出のための放電異常しきい値を前記警告設定値として設定し、前記警告により前記放電の発生状態もしくは前記カットクランパによるワイヤのクランプ状態が異常である旨の報知を行うことを特徴とするボンディング方法。
【請求項4】
前記警告設定値を変化させながら前記放電を反復して発生させる過程において前記放電電圧値警告手段によって警告が発せられたときの警告設定値を検出し、この警告設定値に基づいて前記放電異常しきい値を設定することを特徴とする請求項3記載のボンディング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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