説明

ボンディング装置および半導体装置の製造方法

【課題】突出電極と端子電極との接合時の残留応力を抑制しつつ、接合強度を確保する。
【解決手段】突出電極5を配線パターン2に接合させる場合、突出電極5に超音波振動が
印加されている時に超音波振動の振幅と荷重との積が常に一定かつ超音波振動の印加開始
時より印加終了時の方が荷重が大きくなるように半導体チップ4にかかる荷重を制御する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボンディング装置および半導体装置の製造方法に関し、特に、突出電極を端子
電極に接合させる方法に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置では、半導体チップに形成された突出電極を基板配線に接続する場合
、突出電極を加熱しながら超音波振動を与えることにより、突出電極を基板配線に接合さ
せることが行われている。
また、例えば、特許文献1には、回路基板の電極に対するバンプの荷重を時間の経過に
伴い増大させる一方、接合部に加える超音波振動を接合初期に小さくしその後増大させる
ことにより、超音波振動付与直後にバンプの位置ずれが発生するのを防止するとともに、
バンプの拡散接合の面積を増大させて接合の信頼性を高める方法が開示されている。
【特許文献1】特開2003−168705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の突出電極を端子電極に接合させる方法では、荷重および超音波振
動の増大に伴って接合部への残留応力が大きくなり、インナーリードに亀裂が発生して断
線を引き起こしたり、バンプの破壊を招いたりするという問題があった。
そこで、本発明の目的は、突出電極と端子電極との接合時の残留応力を抑制しつつ、接
合強度を確保することが可能なボンディング装置および半導体装置の製造方法を提供する
ことである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様に係るボンディング装置によれば、端
子電極が形成された回路基板を支持するボンディングステージと、突出電極が形成された
半導体チップを保持するボンディングツールと、前記突出電極と前記端子電極を接合させ
る時に前記半導体チップに超音波振動を印加する超音波振動発生装置と、前記超音波振動
が印加されている時に前記超音波振動の振幅と荷重との積が常に一定かつ前記超音波振動
の印加開始時より印加終了時の方が荷重が大きくなるように前記半導体チップにかかる荷
重を制御する荷重制御装置とを備えることを特徴とする。
【0005】
これにより、接合部への残留応力の増大を抑制しつつ、突出電極を端子電極に徐々に食
い込ませることが可能となり、インナーリードの亀裂や断線を低減しつつ、突出電極と端
子電極との接合強度を確保することが可能となる。
【0006】
また、本発明の一態様に係る半導体装置の製造方法によれば、半導体チップに形成され
た突出電極と回路基板に形成された端子電極とを、超音波振動を印加しながら接合させる
半導体装置の製造方法において、前記超音波振動が印加されている時に超音波振動の振幅
と荷重との積が常に一定かつ前記超音波振動の印加開始時より印加終了時の方が荷重が大
きいことを特徴とする。
これにより、接合部への残留応力の増大を抑制しつつ、突出電極を端子電極に徐々に食
い込ませることが可能となり、インナーリードの亀裂や断線を低減しつつ、突出電極と端
子電極との接合強度を確保することが可能となる。
【0007】
また、本発明の一態様に係る半導体装置の製造方法によれば、前記超音波振動の印加開
始時から印加終了時にかけて前記超音波振動の振幅を漸減させるかまたは段階的に減少さ
せることを特徴とする。
これにより、突出電極を端子電極の接合する際に荷重を増大させた場合においても、超
音波振動の振幅と荷重との積を常に一定に保つことができ、接合部への残留応力の増大を
抑制しつつ、突出電極を端子電極に徐々に食い込ませることが可能となる。
【0008】
また、本発明の一態様に係る半導体装置の製造方法によれば、前記突出電極に荷重がか
かった状態で超音波振動を与えることを特徴とする。
これにより、突出電極が端子電極に食い込んだ状態で超音波振動の振幅のモーメントを
働かせることができ、突出電極を端子電極に効率よく接合させることが可能となるととも
に、超音波振動による突出電極の位置ずれを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る半導体装置およびその製造方法について図面を参照しな
がら説明する。
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す断面図、図1(
b)は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す平面図である。
図1において、絶縁性基材1上には、配線パターン2が形成されるとともに、端部が露
出したまま配線パターン2が覆われるようにソルダーレジスト3が形成されている。また
、半導体チップ4には突出電極5が形成されている。そして、突出電極5を配線パターン
2上に接合させることにより、半導体チップ4が絶縁性基材1上に実装されている。なお
、突出電極5を配線パターン2上に接合させる場合、突出電極5に荷重をかけながら突出
電極5に超音波振動を印加することができる。
【0010】
なお、絶縁性基材1としては、例えば、テープ基板またはフィルム基板を用いることが
でき、絶縁性基材1の材質としては、例えば、ポリイミド樹脂やアミドイミド樹脂、エス
テルイミド樹脂、エーテルイミド樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹
脂、ポリエチレン樹脂あるいはこれらの変性樹脂などを用いることができる。また、突出
電極5の材料としては、例えば、銅Cu、ニッケルNi、金Auなどを用いることができ
る。また、銅Cuで形成された突出電極5上には、ニッケルNi、錫Snまたは金Auな
どのキャップ層を形成してもよく、突出電極5上に形成されたキャップ層を介して半田層
を形成するようにしてもよい。
【0011】
また、突出電極5を配線パターン2に接合させる場合、ACF(Anisotropi
c Conductive Film)接合、NCF(Nonconductive F
ilm)接合、ACP(Anisotropic Conductive Paste)
接合、NCP(Nonconductive Paste)接合などの圧接接合を用いる
ようにしてもよいし、半田接合や合金接合などの金属接合を用いるようにしてもよい。
なお、配線パターンが形成された絶縁性基材1は、例えば、TAB(Tape Aut
omated Bonding)、TCP(Tape Carrier Package
)、COF(Chip On Film)などに用いることができる。
【0012】
図2は、本発明の一実施形態に係る突出電極と端子電極との接合方法を示す図である。
図2において、ボンディングステージ10上には絶縁性基材1が支持されている。なお
、ボンディングステージ10上で絶縁性基材1が支持する場合、ボンディングステージ1
0上に絶縁性基材1を吸着することにより、絶縁性基材1をボンディングステージ10上
に固定することができる。また、ボンディングステージ10上には、半導体チップ4を保
持するボンディングツール11が配置されている。そして、ボンディングツール11には
、半導体チップ4にかかる荷重を制御する荷重制御装置11bおよび半導体チップ4に超
音波振動を印加する超音波振動発生装置11aが接続されている。
【0013】
そして、突出電極5を配線パターン2に接合させる場合、配線パターン2が形成された
絶縁性基材1をボンディングステージ10上に搬送するとともに、突出電極5が形成され
た半導体チップ4をボンディングツール11にて保持する。そして、配線パターン2およ
び突出電極5の位置合わせを行うことにより、突出電極5の接合面を配線パターン2の接
合面上に配置し、図3に示すように、ボンディングツール11を降下させることにより、
突出電極5を配線パターン2に接合させる。
【0014】
そして、突出電極5を配線パターン2に接合させる場合、ボンディングツール11を介
して突出電極5に荷重をかけながら突出電極5に超音波振動を印加することができる。こ
こで、突出電極5を配線パターン2に接合させる場合、突出電極5に超音波振動が印加さ
れている時に超音波振動の振幅と荷重との積が常に一定かつ超音波振動の印加開始時より
印加終了時の方が荷重が大きくなるように半導体チップ4にかかる荷重を制御することが
できる。
これにより、突出電極5の接合部への残留応力の分散を図りつつ、突出電極5を配線パ
ターン2に徐々に食い込ませることが可能となり、配線パターン2の亀裂や断線を低減し
つつ、突出電極5と配線パターン2との接合強度を確保することが可能となる。
【0015】
図3は、本発明の一実施形態に係る超音波振動の振幅と荷重との関係を示す図である。
図3(a)において、突出電極5を配線パターン2に接合させる場合、時刻t1におい
て突出電極5に荷重をかけ、荷重を徐々に増大させながら、時刻t2において超音波振動
を与える。そして、超音波振動の振幅と荷重との積が常に一定になるように荷重を徐々に
増大させながら超音波振動の振幅を徐々に減少させ、時刻t3において超音波振動の印加
を停止した状態で突出電極5にかかる荷重を徐々に減少させ、時刻t4において荷重をゼ
ロにする。
【0016】
また、図3(b)において、突出電極5を配線パターン2に接合させる場合、時刻t1
1において突出電極5に荷重をかけ、荷重を徐々に増大させながら、時刻t12において
超音波振動を与える。そして、荷重および超音波振動の振幅を一定に保ったまま、時刻t
13において超音波振動の振幅と荷重との積が常に一定になるように荷重を徐々に増大さ
せながら超音波振動の振幅を徐々に減少させ、時刻t14において荷重および超音波振動
の振幅を一定に保つようにする。
【0017】
ここで、突出電極5に荷重がかかった状態で超音波振動を与えることにより、突出電極
5が配線パターン2に食い込んだ状態で超音波振動の振幅のモーメントを働かせることが
でき、突出電極5を配線パターン2に効率よく接合させることが可能となるとともに、超
音波振動による突出電極5の位置ずれを抑制することができる。また、超音波振動の振幅
と荷重との積が常に一定になるように荷重を徐々に増大させながら超音波振動の振幅を徐
々に減少させることにより、突出電極5の接合部付近の局所的な応力を小さくすることが
でき、超音波振動に起因する断線を抑制することができる。
【0018】
なお、上述した半導体装置は、例えば、液晶表示装置、携帯電話、携帯情報端末、ビデ
オカメラ、デジタルカメラ、MD(Mini Disc)プレーヤ、ICカード、ICタ
グなどの電子機器に適用することができ、電子機器の小型・軽量化を可能としつつ、電子
機器の信頼性を向上させることができる。
また、上述した実施形態では、半導体チップの実装方法を例にとって説明したが、本発
明は、必ずしも半導体チップの実装方法に限定されることなく、例えば、弾性表面波(S
AW)素子などのセラミック素子、光変調器や光スイッチなどの光学素子、磁気センサや
バイオセンサなどの各種センサ類などの実装方法に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す図。
【図2】本発明の一実施形態に係る突出電極と端子電極との接合方法を示す図。
【図3】本発明の一実施形態に係る超音波振動の振幅と荷重との関係を示す図。
【符号の説明】
【0020】
1 絶縁性基材、2 配線パターン、3 ソルダーレジスト、4 半導体チップ、5
突出電極、10 ボンディングステージ、11 ボンディングツール、11a 超音波振
動発生装置、11b 荷重制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子電極が形成された回路基板を支持するボンディングステージと、
突出電極が形成された半導体チップを保持するボンディングツールと、
前記突出電極と前記端子電極を接合させる時に前記半導体チップに超音波振動を印加す
る超音波振動発生装置と、
前記超音波振動が印加されている時に前記超音波振動の振幅と荷重との積が常に一定か
つ前記超音波振動の印加開始時より印加終了時の方が荷重が大きくなるように前記半導体
チップにかかる荷重を制御する荷重制御装置とを備えることを特徴とするボンディング装
置。
【請求項2】
半導体チップに形成された突出電極と回路基板に形成された端子電極とを、超音波振動
を印加しながら接合させる半導体装置の製造方法において、
前記超音波振動が印加されている時に超音波振動の振幅と荷重との積が常に一定かつ前
記超音波振動の印加開始時より印加終了時の方が荷重が大きいことを特徴とする半導体装
置の製造方法。
【請求項3】
前記超音波振動の印加開始時から印加終了時にかけて前記超音波振動の振幅を漸減させ
るかまたは段階的に減少させることを特徴とする請求項2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記突出電極に荷重がかかった状態で超音波振動を与えることを特徴とする請求項2ま
たは3記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate