説明

ボンディング装置および半導体装置の製造方法

【課題】キャピラリ寸法が小さくなっても充分な圧着面積を確保することにより、ボールボンディングにおける第2ボンドのボンディング不良を防止する。
【解決手段】ボンディング装置に設けられたキャピラリ8において、キャピラリ8の軸心に形成されたボンディングワイヤWを通す孔8aの最も小さい部分の直径をホール径H、孔8aの最先端部をチャンファ径CD、キャピラリ8の先端の外形径をチップ径Tとする。このキャピラリ8において、半導体チップに形成される電極のファインピッチ化に対応するように、ホール径Hは約φ33μm程度であり、チャンファ径CDは約φ48μm程度に形成されている。また、チップ径Tは約φ114μm程度に形成されており、第2ボンドにおけるプリント配線基板の電極のピッチ、電極サイズに見合ったサイズに形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤボンディングによる接続技術に関し、特に、半導体チップが搭載されたプリント配線基板におけるボールボンディングに有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信の1つとして、携帯電話が広く普及しており、その機能に対しても多様性が求められている。たとえば、携帯電話に用いられるRF(高周波)モジュールでは、小型化の要求が非常に強くなっている。
【0003】
このようなRFモジュールでは、半導体チップの電極とプリント配線基板に設けられた電極とをボンディングワイヤによって接続されているものが広く知られている。この場合、ボンディングワイヤによるボンディングは、たとえば、第1ボンドを電気トーチなどによりワイヤ先端に形成されたボールをキャピラリなどによって押しつける、いわゆるボールボンディングによって電気的に接続されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記のようなボールボンディングなどによりボンディング技術では、次のような問題点があることが本発明者により見い出された。
【0005】
すなわち、RFモジュールの小型化に伴い、該RFモジュールに搭載される半導体チップも小型化される傾向にあり、該半導体チップに設けられたパッドのファインピッチ化が進んでいる。
【0006】
ファインピッチ化されたパッドに合わせてキャピラリ寸法も小さくなる傾向にある。キャピラリの寸法が小さくなることによって、第2ボンド時におけるボンディングワイヤの圧着面積が小さくなってしまうという問題がある。
【0007】
これにより、第2ボンド時のワイヤはがれなどが発生してしまい、プリント配線基板の電極とボンディングワイヤとボンディング不良が生じてしまう恐れがある。
【0008】
本発明の目的は、キャピラリ寸法が小さくなっても充分な圧着面積を確保することにより、ボールボンディングにおける第2ボンドのボンディング不良を防止する技術を提供することにある。
【0009】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴については、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0011】
本発明は、先端部でボンディングワイヤを接続電極に圧着させて接続するキャピラリを備えたボンディング装置であって、該キャピラリは、ホール径、およびチャンファ径が第1ボンドにおいて接続される接続電極のピッチ、電極サイズに見合ったサイズに形成され、チップ径が第2のボンドにおいて接続される接続電極のピッチ、電極サイズに見合ったサイズに形成されたものである。
【0012】
また、本発明は、前記キャピラリが、第2のボンドにおいて接続される接続電極の表面荒さが2.5μm程度以上の場合にチップ径が102μm程度よりも大きく形成されているものである。
【0013】
さらに、本発明は、前記キャピラリにおけるホール径がφ38μm程度以下、チャンファ径がφ48μm以下であり、チップ径が102μm程度よりも大きいものである。
【0014】
また、本願のその他の発明の概要を簡単に示す。
【0015】
本発明は、半導体チップが実装されたプリント配線基板を準備する工程と、ホール径、およびチャンファ径が該半導体チップに形成された接続電極のピッチ、電極サイズに見合ったサイズに形成され、チップ径がプリント配線基板に形成された接続電極のピッチ、電極サイズに見合ったサイズに形成されたキャピラリを備えたボンディング装置によって半導体チップの接続電極とプリント配線基板の接続電極とをボンディングする工程とを有したものである。
【0016】
また、本発明は、半導体チップが実装され、第2のボンドにおいて接続され、表面荒さが2.5μm程度以上の接続電極が形成されたプリント配線基板を準備する工程と、ホール径、およびチャンファ径が半導体チップに形成された接続電極のピッチ、電極サイズに見合ったサイズに形成され、チップ径が102μm程度よりも大きいキャピラリを備えたボンディング装置によって半導体チップの接続電極とプリント配線基板の接続電極とをボンディングする工程とを有したものである。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0018】
(1)半導体チップを搭載したプリント配線基板におけるボンディングにおいて、半導体チップの接続電極、およびプリント配線基板の接続電極のいずれにも安定したボンディングを行うことができる。
【0019】
(2)上記(1)により、半導体チップを搭載したプリント配線基板を用いて構成した半導体装置などの信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0021】
図1は、本発明の一実施の形態によるボンディング装置の外観説明図、図2は、図1のボンディング装置によるボンディング終了後のプリント配線基板の構成を示した断面図、図3は、図2のボンディング装置に設けられたキャピラリの説明図、図4は、本発明の一実施の形態による第1ボンド時のキャピラリ先端部近傍の断面図、図5は、図4に続く第2ボンド時のキャピラリ先端部近傍の断面図である。
【0022】
本実施の形態において、ボンディング装置1は、たとえば、RFモジュール(半導体装置)などのボンディングに用いられる。ボンディング装置1は、図1に示すように、左側にローダ2が設けられている。ローダ2には、ボンディングされる半導体チップが搭載されたRFモジュールのプリント配線基板P(図2)が収納されている。
【0023】
ローダ2の右側には、基板搬送部3が設けられており、該基板搬送部3の右側には、アンローダ4が設けられている。基板搬送部3は、ローダ2からアンローダ4にかけてプリント配線基板Pを搬送する。この基板搬送部3の中央部には、ステージが設けられており、このステージにおいて、プリント配線基板Pの位置決めを行い、ワイヤボンディングを行う。アンローダ4は、ワイヤボンディングされたプリント配線基板Pを収納する。
【0024】
基板搬送部3のステージ上方には、ボンディングヘッド5が設けられている。ボンディングヘッド5は、キャピラリ8(図2、図3)などのプリント配線基板Pのボンディングを行う際のボンディングツールを装着した機構部である。
【0025】
基板搬送部3の下方には、操作パネル6が設けられており、該操作パネル6の下方には、制御部7が設けられている。操作パネル6は、ボンディングにおける加重や、ループコントロールなどのパラメータなどを入力する。
【0026】
ボンディングヘッド5の上方には、認識ユニット7aが設けられている。認識ユニット7aは、ボンディングのずれ量などを自動的に検出する。制御部7は、操作パネル6から入力されたパラメータや認識ユニット7aからの検出結果に基づいてボンディング装置1の制御を司る。
【0027】
図2は、ボンディング終了後のプリント配線基板Pの構成を示した断面図である。
【0028】
図示するように、プリント配線基板Pには、半導体チップCHが搭載されており、該半導体チップに形成された電極(接続電極)D1とプリント配線基板に形成された電極(接続電極)D2とがボンディングワイヤWを介して接続された構成となる。
【0029】
図3は、ボンディングヘッド5に設けられたキャピラリ8の説明図である。図3(a)は、キャピラリ8の全体図を示しており、図3(b)には、キャピラリ8の先端部近傍の拡大断面図を示している。
【0030】
キャピラリ8は、図3(a)に示すように、円錐形状からなり、軸心にボンディングワイヤW(図4、図5)を通す細孔を有し、該ボンディングワイヤWを加圧して電気的に接続固定を行う。
【0031】
キャピラリ8における軸心には、図3(b)に示すように、ボンディングワイヤWを通す孔8aが形成されており、その孔8aの最も小さい部分の直径をホール径Hとする。また、孔8aの最先端部をチャンファ径CD、キャピラリ8の先端の外形径をチップ径Tとする。
【0032】
ホール径Hとチャンファ径CDとは、第1ボンドにおけるボールボンディングの圧着に関係する寸法であり、チップ径Tは、第2ボンドにおけるボンディングの圧着に関係する寸法である。
【0033】
キャピラリ8において、ホール径Hは約φ33μm程度であり、チャンファ径CDは約φ48μm程度に形成されている。ホール径H、ならびにチャンファ径CDは、半導体チップに形成される電極のファインピッチ化に対応する寸法となっている。
【0034】
また、チップ径Tは約φ114μm程度に形成されており、ホール径H、およびチャンファ径CDに対する標準の径(たとえば、約φ102μm程度)よりも大きく形成されている。これにより、第2ボンドにおけるボンディングワイヤWの圧着面積を増加させることができる。
【0035】
次に、本実施の形態におけるキャピラリ8の作用について説明する。
【0036】
まず、第1ボンドにおいて、キャピラリ8の先端部から出たボンディングワイヤWが電気トーチによって溶融されてボールBが形成される。続いて、電気トーチによってボンディングワイヤWの先端部に形成されたボールBは、図4に示すように、キャピラリ8により半導体チップに形成された電極D1に押しつけられて接続が行われ、第1ボンドが終了となる。このとき、ボールBの圧着力が最適となるように、ホール径H、ならびにチャンファ径CDが形成されている。
【0037】
ここで、ホール径H、チャンファ径CDは、一例を示したものであり、これらホール径H、およびチャンファCH径は、第1ボンドの電極D1のピッチ、電極サイズに見合ったサイズに形成し、ボールBが充分に圧着すればよい。
【0038】
よって、電極D1がよりファインピッチ化された場合には、ホール径H、およびチャンファCH径もそれに見合って小さく形成されることになる。また、電極D1が大きくなると、ホール径H、およびチャンファCH径はそれに見合って大きく形成されることになる。
【0039】
次に、キャピラリ8は、プリント配線基板Pに形成された電極D2に移動し、第2ボンドに移行する。そして、図5に示すように、ボンディングワイヤWを該電極D2に押しつけることにより、該ボンディングワイヤWが接続され、第2ボンドが終了となる。
【0040】
このとき、ボンディングワイヤWは、キャピラリ8の最先端部によって押しつけられて圧着することになる。よって、キャピラリ8のチップ径Tが大きくなるとボンディングワイヤWを圧着する面積も増加することになるので、安定したボンディングが行われることになる。
【0041】
ここでも、チップ径は 一例を示したものであり、第2ボンドの電極D2のピッチ、電極サイズに見合ったサイズに形成し、ボンディングワイヤWが充分に圧着すればよい。よって、電極D2がより大きくなれば、チップ径Tもそれに見合って大きくなり、電極D2が小さくなれば、それに見合ってチップ径Tも小さく形成される。
【0042】
それにより、本実施の形態によれば、チップ径Tを大きく形成したキャピラリ8を用いることにより、半導体チップに形成された電極のファインピッチ化に対応しながら、第2のボンドの圧着を確実に行うことができる。
【0043】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、RFモジュールなどにおけるボンディング不良を低減し、ボンディング接続の信頼性を向上させることのできる技術に適している。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施の形態によるボンディング装置の外観説明図である。
【図2】図1のボンディング装置によるボンディング終了後のプリント配線基板の構成を示した断面図である。
【図3】図2のボンディング装置に設けられたキャピラリの説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態による第1ボンド時のキャピラリ先端部近傍の断面図である。
【図5】図4に続く第2ボンド時のキャピラリ先端部近傍の断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 ボンディング装置
2 ローダ
3 基板搬送部
4 アンローダ
5 ボンディングヘッド
6 操作パネル
7 制御部
8 キャピラリ
8a 孔
W ボンディングワイヤ
P プリント配線基板
H ホール径
CD チャンファ径
T チップ径
B ボール
D1,D2 電極(接続電極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部でボンディングワイヤを接続電極に圧着させて接続するキャピラリを備えたボンディング装置であって、
前記キャピラリは、
ホール径、およびチャンファ径が、第1ボンドにおいて接続される接続電極のピッチ、電極サイズに見合ったサイズに形成され、
チップ径が第2のボンドにおいて接続される接続電極のピッチ、電極サイズに見合ったサイズに形成されたことを特徴とするボンディング装置。
【請求項2】
請求項1記載のボンディング装置において、
前記キャピラリは、
前記第2のボンドにおいて接続される前記接続電極の表面荒さが2.5μm程度以上の場合に、チップ径が102μm程度よりも大きいことを特徴とするボンディング装置。
【請求項3】
請求項1記載のボンディング装置において、
前記キャピラリは、
ホール径がφ38μm程度以下、チャンファ径がφ48μm以下であり、チップ径が102μm程度よりも大きいことを特徴とするボンディング装置。
【請求項4】
半導体チップが実装されたプリント配線基板を準備する工程と、
ホール径、およびチャンファ径が、前記半導体チップに形成された接続電極のピッチ、電極サイズに見合ったサイズに形成され、チップ径が前記プリント配線基板に形成された接続電極のピッチ、電極サイズに見合ったサイズに形成されたキャピラリを備えたボンディング装置によって前記半導体チップの接続電極と前記プリント配線基板の接続電極とをボンディングする工程とを有したことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
半導体チップが実装され、第2のボンドにおいて接続され、表面荒さが2.5μm程度以上の接続電極が形成されたプリント配線基板を準備する工程と、
ホール径、およびチャンファ径が、前記半導体チップに形成された接続電極のピッチ、電極サイズに見合ったサイズに形成され、チップ径が102μm程度よりも大きいキャピラリを備えたボンディング装置によって前記半導体チップの接続電極と前記プリント配線基板の接続電極とをボンディングする工程とを有したことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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