説明

ボンディング装置及びボンディング装置のオフセット量補正方法

【課題】簡便な方法で、カメラの光軸が傾いている場合でも良好なボンディングを行う。
【解決手段】基準部材が視野内の中心となるようにボンディングヘッドの位置を調整した後、ボンディングヘッドをマイナスX方向にオフセット量だけ移動させてボンディングツールと基準部材との第1の画像を取得し、この画像から第1のズレ量を取得し、基準部材を上昇させた後、基準部材が視野内の中心となるようにボンディングヘッドをプラスX方向に移動させた後、ボンディングヘッドをマイナスX方向にオフセット量だけ移動させてボンディングツールと基準部材との第2の画像を取得し、第2の画像からボンディングツールと基準部材との第1の方向の第2のズレ量を取得し、第1のズレ量と第2のズレ量との差と基準部材のZ方向の移動量に基づいてオフセット量を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンディング装置の構造及びそのボンディング装置の撮像装置とボンディングツールとのオフセット量の補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程において、回路基板に取り付けられた半導体チップの電極であるパッドと回路基板の電極であるリードとをワイヤで接続するワイヤボンディングが行われ、これにはワイヤボンディング装置が用いられる。
【0003】
これらの装置は半導体チップの表面の画像を撮像するカメラを備えている。カメラはその光軸がキャピラリからXまたはY方向あるいはXYの両方向に一定の距離だけオフセットしてボンディングヘッドに取り付けられている。ボンディングの際には、半導体チップの取り付けられた基板をボンディングステージの上に吸着固定した後、カメラによって半導体チップ表面の特徴的な回路パターン等の画像を取得し、その取得した画像から半導体チップの位置及び、半導体チップの上に配置されているパッドの位置を取得する。そして、オフセット量だけボンディングヘッドを移動させ、キャピラリをパッドの位置に合わせてボンディングを行うものが多い。
【0004】
このようなボンディング装置では、カメラは半導体チップの表面あるいは回路基板の表面に対してその光軸が垂直となるように取り付けられているので、半導体チップの表面と回路基板の表面とに高さ方向の段差があった場合でも、キャピラリとのオフセット量は変化せず、ボンディング位置の高さにかかわらずキャピラリの位置をパッドの上に正確に位置させることが出来るよう構成されている。また、運転中の温度変化などによってカメラの光軸とキャピラリとのオフセット量にズレが発生した場合等にそのズレを検出し、オフセット量を補正する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかし、カメラの光軸を半導体チップや回路基板の表面に対して垂直に取り付けるには、カメラをボンディングヘッドに組み付ける際に時間を掛けて調整することが必要であるが、カメラの光軸を半導体チップや回路基板に対して完全に垂直にすることは困難で、通常は垂直に対して多少の誤差を含んでいる。このため、半導体チップとリードのように高さに段差がある場合にはいずれかの面でカメラの光軸とキャピラリとのオフセット量を決めて、そのオフセット量に基づいてキャピラリを移動させると、他方の面にあるボンディング対象の上にキャピラリを移動する際にカメラの光軸の傾きに対応する位置誤差が生じてしまい、正確にボンディング対象の上にキャピラリを移動することが出来ないという問題があった。そこで、チップ側のオフセット量とリード側のオフセット量の2つのオフセット量を備え、チップ側のボンディングの際にはチップ側のオフセット量を用いてキャピラリの位置を移動させ、リード側のボンディングの際には、リード側のオフセット量を用いてキャピラリを移動させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3416091号明細書
【特許文献2】特許第2757127号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、近年、半導体チップを複数枚積層した積層デバイスが増加してきている。このような積層デバイスでは、厚さが厚いことから積層デバイスの最上面のパッドとリードとの間の段差が大きくなり、カメラの光軸が積層デバイスに対して傾いている場合には、いずれかの面を基準にカメラの光軸とキャピラリとのオフセット量を決めた場合、キャピラリの位置の誤差が大きくなってしまい、良好なボンディングが出来ない場合が多くなってくる。また、積層デバイスでは、複数段に積層された半導体チップの中間の高さにある半導体チップのパッドにボンディングする場合がある。このような場合には、特許文献1,2に記載された従来技術では、カメラの光軸の傾きによって生ずるキャピラリの位置誤差或いはオフセット量のズレを補正することができないという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に記載された従来技術では、積層デバイスの複数段にボンディングを行う場合には、各段で半導体チップの表面にキャピラリによって目印をつけ、その目印に対してカメラを移動させる動作を行わせなければならず、オフセット量の調整に手間が係るという問題があった。
【0009】
本発明は、簡便な方法で、カメラの光軸が傾いている場合でも良好なボンディングを行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のボンディング装置は、ボンディングヘッドと、ボンディングツールと、撮像装置と、基準部材と、光学部材と、ボンディングヘッドと基準部材の移動を行う制御部と、を含み、ボンディングヘッドは、XY方向に自在に移動可能で、ボンディングツールは、ボンディングヘッドに取り付けられてボンディング対象にボンディングを行い、撮像装置は、ボンディングツールからX及び/又はY方向に所定の距離だけオフセットされてボンディングヘッドに取り付けられ、基準部材は、支持台に取り付けられてXY方向と垂直なZ方向に移動可能で、光学部材は、支持台の所定位置に配置され、ボンディングツールおよび基準部材の像光を反射させて撮像装置に導く反射面を含み、制御部は、第1の位置にある基準部材が撮像装置の視野内の所定位置となるようにボンディングヘッドの位置を調整した後、ボンディングヘッドを第1の方向にオフセット量だけ移動させて光学部材を介してボンディングツールと基準部材との第1の画像を取得する第1の画像取得手段と、第1の画像からボンディングツールと基準部材との第1の方向の第1のズレ量を取得する第1のズレ量取得手段と、基準部材を第1の位置よりもZ方向の位置の異なる第2の位置に移動させた後、基準部材が撮像装置の視野内の所定位置となるようにボンディングヘッドを第1の方向と反対方向の第2の方向に移動させた後、ボンディングヘッドを第1の方向にオフセット量だけ移動させて光学部材を介してボンディングツールと基準部材との第2の画像を取得する第2の画像取得手段と、第2の画像からボンディングツールと基準部材との第1の方向の第2のズレ量を取得する第2のズレ量取得手段と、第1のズレ量取得手段により得られた第1のズレ量と第2のズレ量取得手段により得られた第2のズレ量との差と基準部材のZ方向の移動量に基づいてボンディング対象のZ方向位置に対するオフセット量を補正するオフセット量補正手段と、を含むこと、を特徴とする。
【0011】
本発明のボンディング装置のオフセット量補正方法は、XY方向に移動自在のボンディングヘッドと、ボンディングヘッドに取り付けられ、ボンディング対象にボンディングを行うボンディングツールと、ボンディングツールからX及び/又はY方向に所定の距離だけオフセットされてボンディングヘッドに取り付けられる撮像装置と、支持台に取り付けられ、XY方向と垂直なZ方向に移動可能な基準部材と、支持台の所定位置に配置され、ボンディングツールおよび基準部材の像光を反射させて撮像装置に導く反射面を含む光学部材とを含むボンディング装置を準備する工程と、第1の位置にある基準部材が撮像装置の視野内の所定位置となるようにボンディングヘッドの位置を調整した後、ボンディングヘッドを第1の方向にオフセット量だけ移動させて光学部材を介してボンディングツールと基準部材との第1の画像を取得する第1の画像取得工程と、第1の画像からボンディングツールと基準部材との第1の方向の第1のズレ量を取得する第1のズレ量取得工程と、基準部材を第1の位置よりもZ方向の位置の異なる第2の位置に移動させた後、基準部材が撮像装置の視野内の所定位置となるようにボンディングヘッドを第1の方向と反対方向の第2の方向に移動させた後、ボンディングヘッドを第1の方向にオフセット量だけ移動させて光学部材を介してボンディングツールと基準部材との第2の画像を取得する第2の画像取得工程と、第2の画像からボンディングツールと基準部材との第1の方向の第2のズレ量を取得する第2のズレ量取得工程と、第1のズレ量取得工程により得られた第1のズレ量と第2のズレ量取得工程により得られた第2のズレ量との差と基準部材のZ方向の移動量に基づいてボンディング対象のZ方向位置に対するオフセット量を補正するオフセット量補正工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、簡便な方法で、カメラの光軸が傾いている場合でも良好なボンディングを行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態におけるワイヤボンディング装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態におけるワイヤボンディング装置の光学部材を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態における光学部材の平面と側面と各光路を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態におけるワイヤボンディング装置のオフセット量の補正の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態におけるワイヤボンディング装置のボンディングヘッドとキャピラリと基準ピンとの移動を示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態におけるワイヤボンディング装置でカメラの視野の中心に基準ピンを合わせた画像を示す説明図である。
【図7】本発明の実施形態におけるワイヤボンディング装置で基準ピンとキャピラリとがカメラの視野に入った状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本実施形態のワイヤボンディング装置10は、X軸モータ18とY軸モータ19とによってXY方向に自在に移動するXYテーブル11と、XYテーブル11によってXY方向に自在に移動するボンディングヘッド12と、キャピラリ14が先端に取り付けられた超音波トランスデューサ13aと、超音波トランスデューサ13aのフランジ部13bが固定されるボンディングアーム13と、ボンディングヘッド12に取り付けられ、ボンディングアーム13をZ軸方向に駆動するZ軸モータ20と、ボンディングヘッド12に取り付けられた撮像装置であるカメラ16と、光学部材21とを備えている。図1において、ボンディングアーム13の軸方向がY方向、水平面内でY方向に直角方向がX方向、XY方向と直角方向の上下方向がZ方向である。
【0015】
ボンディングアーム13の先端に取り付けられたキャピラリ14は先端が細くなった円錐形で、キャピラリ14の先端は、Z軸モータ20とボンディングアーム13によってリードフレーム32またはリードフレーム32に取り付けられた半導体チップ33に対して接離方向に動作する。キャピラリ14はボンディングアーム13の後端に取り付けられた超音波振動子によってY方向に振動する。キャピラリ中心軸15は、キャピラリ14の先端が半導体チップ33又はリードフレーム32の表面に対して垂直に接する様に配置されている。また、キャピラリ14の先端は、Z軸モータ20とボンディングアーム13によってリードフレーム32、半導体チップ33の各表面とその表面が平行になるよう配置されている光学部材21の支持台28に対しても接離方向に移動する。
【0016】
カメラ16は鏡筒16aと、鏡筒16aの中に取り付けられたレンズやミラー光学系と光学系によって結像した画像を電気信号に変換するCCD或いはCMOS等の撮像素子を含んでおり、光学系の中心軸であるカメラ光軸17は撮像素子の中心を通る線で、取得画像の中心位置を通る線である。カメラ光軸17は撮像する半導体チップ33あるいはリードフレーム32の表面に対して略垂直であると共に光学部材21の支持台28の表面に対して略垂直になるように配置されている。
【0017】
図2に示すように、キャピラリ中心軸15とカメラ光軸17とはいずれも光学部材21の支持台28の表面に略垂直となるように配置されているので、キャピラリ中心軸15とカメラ光軸17とは略平行となっている。そして、図1に示すように、カメラ光軸17は、キャピラリ中心軸15からX方向オフセット量Xw、Y方向オフセット量Ywだけ離れて配置されている。キャピラリ14はボンディングアーム13を介してボンディングヘッド12に取り付けられており、カメラ16はボンディングヘッド12に固定されているので、キャピラリ中心軸15とカメラ光軸17とは常にX方向オフセット量Xw、Y方向オフセット量Ywを含むオフセット量Wだけ離れてXY方向に同時に移動する。
【0018】
図2及び図3(a)に示すように、光学部材21の支持台28にはプリズム24,25,27、ハーフミラー26、および照明用の光源としてのレーザダイオード22,23と、基準ピン30とが設置されている。
【0019】
図3(a)に示すように、プリズム24は基準ピン30に対してY方向のマイナス側に、またプリズム25はプリズム24に対してX方向マイナス側に、それぞれ設置されている。基準ピン30のX方向マイナス側にはハーフミラー26が、またX方向プラス側にはレーザダイオード22が設置されており、基準ピン30を挟んでプリズム24の反対側にはレーザダイオード23が設置されている。レーザダイオード22,23はそれぞれ平行光を生ずるように設定されている。ハーフミラー26のX方向マイナス側にはプリズム27が設置されている。プリズム27の反射面の中心と基準ピン30との間隔dwは、カメラ16のカメラ光軸17とキャピラリ14のキャピラリ中心軸15とのX方向のオフセット量Xwと略等しくなっている。
【0020】
プリズム24の反射面は、X方向(すなわち、レーザダイオード22とハーフミラー26とのなす方向)に対し−45°の角度で交差しており、他方プリズム25の反射面とハーフミラー26の反射面とは互いに平行とし、いずれもX方向に対し45°の角度で交差している。プリズム27の反射面は、図3(b)に示すように水平方向であるXY平面に対して45°の角度で交差している。レーザダイオード23からの光はレーザダイオード23からマイナスY方向に進み、プリズム24,25で反射してプラスY方向に進み、ハーフミラー26の反射面で反射してマイナスX方向に進んでプリズム27の反射面に至る。他方、レーザダイオード22からの光はレーザダイオード22からマイナスX方向に進み、ハーフミラー26を透過してプリズム27の反射面に至る。そして両レーザダイオード22,23からの光はプリズム27の反射面でZ方向に反射してカメラ16に導かれる。なお、プリズム24,25,27に代えてミラー等の鏡面体を用いてもよい。
【0021】
図3(b)に示すように、キャピラリ14を基準ピン30の近傍に配置させ、レーザダイオード23を点灯させると、カメラ16は、X方向面内のキャピラリ14の先端部分と、基準ピン30との画像を取得することができ、その画像を処理することによってキャピラリ14のキャピラリ中心軸15と基準ピン30の中心軸31とのX方向のズレを検出することが出来る。また、キャピラリ14を基準ピン30の近傍に配置させ、レーザダイオード22を点灯させると、カメラ16は、Y方向面内のキャピラリ14の先端部分と、基準ピン30との画像を取得することができ、その画像を処理することによってキャピラリ14のキャピラリ中心軸15と基準ピン30の中心軸31とのY方向のズレを検出することができる。
【0022】
基準ピン30は、キャピラリ14の先端と略同様の直径の円錐台形状の部材で、図示しない駆動機構によってZ方向に進退して、その頂部の高さを調整することができるように構成されている。また、図3(a)に示すように、基準ピン30の頂部には基準ピンの中心軸31の位置を示す中心マーク31aが設けられている。
【0023】
図1に示すように、XYテーブルを駆動するX軸モータ18、Y軸モータ19及びボンディングアーム13を駆動するZ軸モータ20、レーザダイオード22,23、カメラ16、はそれぞれ制御部60のX軸モータ駆動インターフェース65、Y軸モータ駆動インターフェース66、Z軸モータ駆動インターフェース67、レーザダイオード駆動インターフェース62,63、カメラ駆動インターフェース64に接続されている。各インターフェース62〜67はデータバス68を介して信号処理を行うCPU61に接続されている。また、図示しない基準ピン30の駆動機構もインターフェースを介してCPU61に接続されている。また、制御部60のCPU61には、データバス68を介して動作プログラムやデータを記憶するメモリ70が接続されている。メモリ70には、後で説明するワイヤボンディング装置10のボンディング動作の制御を行うボンディング制御プログラム71と、その制御用データであるボンディング制御用データ72と、カメラ16によって第1の画像を取得する第1の画像取得プログラム73と、取得した第1の画像から第1のズレ量を取得する第1のズレ量取得プログラム74と、カメラ16によって第2の画像を取得する第2の画像取得プログラム75と、取得した第2の画像から第1のズレ量を取得する第2のズレ量取得プログラム76と、が格納されると共に、取得した各データを格納する取得データ格納領域77を備えている。以上説明したように、制御部60は内部に信号処理を行うCPU61とメモリ70とを含むコンピュータである。なお、図1において、各機器と制御部60との間の一点鎖線は信号線を示している。
【0024】
以上のように構成されたワイヤボンディング装置10の動作について図4から図7を参照しながら説明する。以下、説明する実施形態では、カメラ16のカメラ光軸17は、支持台28の表面に対して傾いて取り付けられている。
【0025】
制御部60は、基準ピン30の頂部の高さを第1の高さである初期高さにあるかどうかを確認する。基準ピン30の頂部の高さが初期高さとなっていない場合には、駆動機構を動作させ、基準ピン30の高さを初期高さにする。以下の説明では、この初期高さにある状態の基準ピンには符号301を付して基準ピン301として説明する。
【0026】
制御部60は、図4のステップS101に示すように、ボンディングヘッド12の初期位置合わせを行う。図6に示すように、カメラ16の視野41の中のX方向のカーソル線42とY方向のカーソル線43との交点である中心44に基準ピン301の中心マーク31aが来るようにボンディングヘッド12を移動させる。そして、基準ピン301の中心マーク31aが視野41の中心44に一致したら、或いは、所定の誤差範囲に入ったら、ボンディングヘッド12の移動を停止する。なお、基準ピン301の中心マーク31aを合わせる位置は中心44でなくとも所定の位置であれば良い。
【0027】
図5の実線で示すように、ボンディングヘッド12の初期位置合わせが終了すると、カメラ16は基準ピン301の略真上に位置している。カメラ光軸17は、基準ピン301の頂部の中心マーク31aを通り、基準ピン301の中心軸31から角度θだけ傾いている。また、キャピラリ14は、基準ピン301の中心軸31からX方向に実際のX方向オフセット量Xwだけ離れたところに位置している。この位置に移動した際のキャピラリは符号141を付して、キャピラリ141として以下説明する。
【0028】
図4のステップS102に示すように、制御部60は、ボンディングヘッド12をマイナスX方向に向けて、メモリ70のボンディング制御用データ72に格納されているX方向の設定オフセット量Xだけ移動させる。すると、図5に示すように、ボンディングヘッド12の移動と共にカメラ16とキャピラリ14もマイナスX方向に設定オフセット量Xだけ移動する。カメラ16のカメラ光軸171、キャピラリ141は図5の点線で示すように移動して、それぞれカメラ光軸172、キャピラリ142の位置になる。この状態で、キャピラリ142のキャピラリ中心軸152は基準ピン301の中心軸31とX方向に距離ΔXだけずれた位置となっている。これは、制御部60のメモリ70のボンディング制御用データ72に格納されているX方向の設定オフセット量Xと実際のX方向オフセット量Xwとの間にズレがあるためである。距離ΔXは、第1のズレ量となる。制御部60は、レーザダイオード22を消灯させた状態で光学部材21のレーザダイオード23を点灯させる。すると、レーザダイオード23から放射された光は、図3に示すように、基準ピン301の周辺を通過してプリズム24に入射し、プリズム25とハーフミラー26とプリズム27によって光路を変更されてカメラ16に入射し、図7に示すカメラ16の視野45には、基準ピン301とキャピラリ142との画像が映し出される。基準ピン301とキャピラリ142はそれぞれレーザダイオード22からの光をさえぎるので黒い画像として映し出される。制御部60は、図4のステップS103に示すように、基準ピン301とキャピラリ142の画像を取得して(第1の画像取得工程)、図4のステップS104に示すように、二値化処理などのデータ処理を行い、それぞれの中心軸31,152の位置を求め、その間の距離ΔXを取得する(第1のズレ量取得工程)。距離ΔXの取得は撮像素子に映し出された画像間の画素数数を数えることによって求めることとしても良い。制御部60は、取得した第1のズレ量である距離ΔXをメモリ70の取得データ格納領域77に格納する。
【0029】
図4のステップS105示すように、制御部60は、図示しない駆動機構によって基準ピン301の高さを図5に示すように、高さHだけ上昇させる。高さが上昇した基準ピン301には符号302を付して基準ピン302とし、高さが上昇した中心マーク31aには符号31a´を付して中心マーク31a´として以下説明する。
【0030】
制御部60は、図4のステップS106及び図6に示すように、カメラ16の視野41の中のX方向のカーソル線42とY方向のカーソル線43との交点である中心44に基準ピン302の中心マーク31a´が来るようにボンディングヘッド12を移動させる。そして、基準ピン302の中心マーク31a´が視野41の中心44に一致したら、或いは、所定の誤差範囲に入ったら、ボンディングヘッド12の移動を停止する。すると、図5に示すように、ボンディングヘッド12の移動と共にカメラ16とキャピラリ14もプラスX方向に距離Xだけ移動する。カメラ16のカメラ光軸172、キャピラリ142は移動してそれぞれ図5の一点鎖線で示すように、カメラ光軸173、キャピラリ143の位置になる。カメラ光軸173は頂部の高さが上昇した基準ピン302の頂部の中心マーク31a´を通る位置に移動してきている。図5に示すように、このカメラ光軸173の位置はボンディングヘッド12を初期位置に合わせた際のカメラ光軸171よりもX方向のプラス側によった位置となっている。これは、カメラ光軸171,173は基準ピン301,302の中心軸31に対して角度θだけ傾いているため、カメラ光軸172からカメラ光軸173までボンディングヘッド12を移動させるには、ボンディングヘッド12を設定オフセット量Xに距離ΔX=H×tanθを加えた距離だけ移動させる必要があるからである。この距離ΔXは、カメラ光軸17の傾きによって生じる実際のオフセット量Xwと設定オフセット量Xとのズレ量である。また、カメラ光軸173が基準ピン302の中心マーク31a´を通る位置にある場合には、キャピラリ143はキャピラリ中心軸153が基準ピン302の中心軸31から実際のX方向オフセット量Xwだけ離れたところに位置している。この位置は、先に説明したキャピラリ141のキャピラリ中心軸151の位置からX方向に距離ΔXだけ離れた位置である。
【0031】
図4のステップS107に示すように、制御部60は、再びボンディングヘッド12をマイナスX方向に向けて、X方向の設定オフセット量Xだけ移動させる。すると、図5に示すように、ボンディングヘッド12の移動と共にカメラ16とキャピラリ143もマイナスX方向にX方向の設定オフセット量Xだけ移動する。カメラ16のカメラ光軸173、キャピラリ143は移動してそれぞれ図5の2点鎖線で示すようにカメラ光軸174、キャピラリ144の位置になる。この状態で、キャピラリ144のキャピラリ中心軸154は基準ピン302の中心軸31とX方向に距離ΔXだけずれた位置となっている。この距離ΔXは、先に制御部60が取得した、X方向の設定オフセット量Xと実際のX方向オフセット量Xwとの間にズレ量である距離ΔXと先に説明したカメラ光軸17の傾きによって生じるX方向の設定オフセット量Xと実際のX方向オフセット量Xwのズレ量である距離ΔXとの合計距離となっている。
【0032】
図4のステップS108に示すように、制御部60は、再びレーザダイオード22を消灯させた状態で光学部材21のレーザダイオード23を点灯させ、先に説明したのと同様の方法で、図7の視野45に映しだされた基準ピン302とキャピラリ144の画像を取得して(第2の画像取得工程)、図4のステップS109に示すように、二値化処理などのデータ処理を行い、それぞれの中心軸31,154の位置を求め、その間の距離ΔXを取得する。距離ΔXの取得は撮像素子に映し出された画像間の画素数数を数えることによって求めることとしても良い。制御部60は、取得した距離ΔXをメモリ70の取得データ格納領域77に格納する。そして、制御部60は、カメラ光軸17の傾きによって生じるオフセット量Xwのズレ量である距離ΔXをΔX=ΔX−ΔXとして取得する(第2のズレ量取得工程)。距離ΔXは、第2のズレ量である。
【0033】
先に説明したように、カメラ光軸の傾き角度θは、距離ΔXと基準ピン30のZ方向の移動高さHとから、θ=tan−1(ΔX/H)として表せる。また、単位高さ当たりのX方向ズレ量ΔXは、ΔX=ΔX/Hとして表される。したがって、設定オフセット量Xの基準となっているZ方向位置とボンディングしようとする半導体チップ33のパッドの高さとの段差hに、単位高さ当たりのX方向ズレ量ΔXを掛け合わせて高さによるオフセット量の補正値ΔXを、ΔX=h×ΔX=h×(ΔX/H)として求めることができる(オフセット量補正工程)。
【0034】
そして、ボンディングの際には、図4のステップS110に示すように、制御部60は、カメラ16によって検出した半導体チップ33のパッド位置に対して、メモリ70のボンディング制御用データ72に格納されているX方向の設定オフセット量XにX方向の設定オフセット量Xと実際のX方向オフセット量Xwとの間のズレ量である距離ΔXを加え、さらに、高さによるオフセット量の補正値ΔXを加えた補正後オフセット量X´=X+ΔX+ΔXだけボンディングヘッド12を移動させると、カメラ光軸17が傾いて取り付けられていても、その傾きによって発生する位置誤差を補正して、キャピラリ14のキャピラリ中心軸15を正確に半導体のパッドの位置に移動させることができる。
【0035】
以上の実施形態の説明では、X方向の設定オフセット量Xの補正について説明したが、Y方向の設定オフセット量Yの補正も同様に行うことができる。この場合は、光学部材21のレーザダイオード23を消灯して、レーザダイオード22を点灯させて基準ピン30とキャピラリ14との画像を取得する。
【0036】
以上述べたように、本実施形態は、簡便な方法で、カメラ光軸17の傾きによって生じるキャピラリ14とカメラ光軸17との設定オフセット量と実際のオフセット量とのズレを補正することができ、ボンディング精度を向上させることができる。また、積層デバイスのように厚さが厚く最上面の半導体チップのパッドとリードとの間の段差が大きい場合でも、設定オフセット量をカメラ光軸17の傾きに応じて補正できるので、キャピラリの位置の誤差を小さくして良好なボンディングが出来る。さらに、複数段に積層された半導体チップの中間の高さにある半導体チップのパッドにボンディングする場合でも、各段のボンディング高さを入力すれば簡単に各段の高さに応じて設定オフセット量補正でき、キャピラリの位置の誤差を小さくして精度の良いボンディングが出来る。また、光学部材21によって設定オフセット量の補正量を決定することが出来るので、経時的に設定オフセット量と実際のオフセット量との間にズレが生じた場合でも、ワイヤボンディング装置10を停止させずに設定オフセット量の補正量を再度調整することができることからボンディングの作業効率を向上させることができる。
【0037】
以上の実施形態は本発明をワイヤボンディング装置10に適用した場合について説明したが、ボンディングツールからオフセットしてカメラをボンディングヘッドに取り付けているバンプボンディング装置、ダイボンディング装置など他の形式のボンディング装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 ワイヤボンディング装置、11 XYテーブル、12 ボンディングヘッド、13 ボンディングアーム、13a 超音波トランスデューサ、13b フランジ部、14,141,142,143,144 キャピラリ、15,151,152,153,154 キャピラリ中心軸、16 カメラ、16a 鏡筒、17,171,172,173,174 カメラ光軸、18 X軸モータ、19 Y軸モータ、20 Z軸モータ、21 光学部材、22,23 レーザダイオード、24,25,27 プリズム、26 ハーフミラー、28 支持台、30,301,302 基準ピン、31 中心軸、31a,31a´ 中心マーク、32 リードフレーム、33 半導体チップ、41,45 視野、42,43 カーソル線、44 中心、50 ワイヤ、60 制御部、61 CPU、62,63 レーザダイオード駆動インターフェース、64 カメラ駆動インターフェース、65 X軸モータ駆動インターフェース、66 Y軸モータ駆動インターフェース、67 Z軸モータ駆動インターフェース、68 データバス、70メモリ、71 ボンディング制御プログラム、72 ボンディング制御用データ、73 第1の画像取得プログラム、74 第1のズレ量取得プログラム、75 第2の画像取得プログラム、76 第2のズレ量取得プログラム、77 取得データ格納領域、dw 間隔、h 段差、W オフセット量、X 設定オフセット量、X 距離、Xw X方向オフセット量、Yw Y方向オフセット量、ΔX ズレ量、ΔX〜ΔX 距離、ΔX 補正値、θ 角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボンディング装置であって、
ボンディングヘッドと、
ボンディングツールと、
撮像装置と、
基準部材と、
光学部材と、
ボンディングヘッドと基準部材の移動を行う制御部と、を含み、
ボンディングヘッドは、XY方向に自在に移動可能で、
ボンディングツールは、ボンディングヘッドに取り付けられ、ボンディング対象にボンディングを行い、
撮像装置は、ボンディングツールからX及び/又はY方向に所定の距離だけオフセットされてボンディングヘッドに取り付けられ、
基準部材は、支持台に取り付けられ、XY方向と垂直なZ方向に移動可能で、
光学部材は、支持台の所定位置に配置され、ボンディングツールおよび基準部材の像光を反射させて撮像装置に導く反射面を含み、
制御部は、
第1の位置にある基準部材が撮像装置の視野内の所定位置となるようにボンディングヘッドの位置を調整した後、ボンディングヘッドを第1の方向にオフセット量だけ移動させて光学部材を介してボンディングツールと基準部材との第1の画像を取得する第1の画像取得手段と、
第1の画像からボンディングツールと基準部材との第1の方向の第1のズレ量を取得する第1のズレ量取得手段と、
基準部材を第1の位置よりもZ方向の位置の異なる第2の位置に移動させた後、基準部材が撮像装置の視野内の所定位置となるようにボンディングヘッドを第1の方向と反対方向の第2の方向に移動させた後、ボンディングヘッドを第1の方向にオフセット量だけ移動させて光学部材を介してボンディングツールと基準部材との第2の画像を取得する第2の画像取得手段と、
第2の画像からボンディングツールと基準部材との第1の方向の第2のズレ量を取得する第2のズレ量取得手段と、
第1のズレ量取得手段により得られた第1のズレ量と第2のズレ量取得手段により得られた第2のズレ量との差と基準部材のZ方向の移動量に基づいてボンディング対象のZ方向位置に対するオフセット量を補正するオフセット量補正手段と、
を含むこと、を特徴とするボンディング装置。
【請求項2】
ボンディング装置のオフセット量補正方法であって、
XY方向に移動自在のボンディングヘッドと、ボンディングヘッドに取り付けられ、ボンディング対象にボンディングを行うボンディングツールと、ボンディングツールからX及び/又はY方向に所定の距離だけオフセットされてボンディングヘッドに取り付けられる撮像装置と、支持台に取り付けられ、XY方向と垂直なZ方向に移動可能な基準部材と、支持台の所定位置に配置され、ボンディングツールおよび基準部材の像光を反射させて撮像装置に導く反射面を含む光学部材とを含むボンディング装置を準備する工程と、
第1の位置にある基準部材が撮像装置の視野内の所定位置となるようにボンディングヘッドの位置を調整した 後、ボンディングヘッドを第1の方向にオフセット量だけ移動させて光学部材を介してボンディングツールと基準部材との第1の画像を取得する第1の画像取得工程と、
第1の画像からボンディングツールと基準部材との第1の方向の第1のズレ量を取得する第1のズレ量取得工程と、
基準部材を第1の位置よりもZ方向の位置の異なる第2の位置に移動させた後、基準部材が撮像装置の視野内の所定位置となるようにボンディングヘッドを第1の方向と反対方向の第2の方向に移動させた後、ボンディングヘッドを第1の方向にオフセット量だけ移動させて光学部材を介してボンディングツールと基準部材との第2の画像を取得する第2の画像取得工程と、
第2の画像からボンディングツールと基準部材との第1の方向の第2のズレ量を取得する第2のズレ量取得工程と、
第1のズレ量取得工程により得られた第1のズレ量と第2のズレ量取得工程により得られた第2のズレ量との差と基準部材のZ方向の移動量に基づいてボンディング対象のZ方向位置に対するオフセット量を補正するオフセット量補正工程と、
を含むことを特徴とするボンディング装置のオフセット量補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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