説明

ボンディング装置

【課題】保持ツールの電子部品を吸着する吸着面において電子部品への加熱が阻害されることを防ぐ。
【解決手段】第1に、先端に電子部品4を吸着保持する保持ツール2と、この電子部品に光を照射する光照射手段5とを備え、ボンディング時にこの吸着保持された電子部品を前記光照射手段から照射された光で加熱するボンディング装置である。第2に、前記保持ツールが光を透過する部材で形成されると共に、電子部品を吸着する吸着面には、複数の凸部21が設けられ、電子部品はこの凸部に接して吸着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に光を照射することにより加熱して接合するボンディング装置の改良に関するものであり、主として電子部品を保持する保持ツールの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品にボンディングヘッドの内側からレーザを照射することにより加熱して接合するボンディング装置があった。この種のボンディング装置では、電子部品を吸着保持する保持ツールをレーザが透過可能なものとして、電子部品に対し直接レーザを照射し、電子部品を加熱する方式が知られている(特許文献1、該文献によれば保持ツールはボンディングツールと称されている)。この方式では、加熱時間が短くて済む上、特別な冷却手段も必要とせず、短時間で冷却することができるとされていた。
【0003】
しかし、レーザ照射が行われると、電子部品がレーザによって加熱される一方で、石英などで形成された保持ツールはレーザを透過するため、レーザによる昇温がない。このため保持ツール自体は、電子部品と比較して著しく温度が低い。従って、レーザによる電子部品への加熱が行われると同時に、電子部品と保持ツールとの接触面から保持ツールへの熱リークが生じ、電子部品の加熱が阻害されるという問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3195970号特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
石英のようなレーザ透過性を有する部材で形成された保持ツールにより保持された電子部品(例えばSiチップ)にレーザを照射して電子部品を昇温する場合、保持ツールからの熱流出によるロスを観察すると、このロスは、保持ツールと電子部品とが、べたに接触した場合の方が増大する。
【0006】
電子部品の加熱用として一般的に使われているセラミックヒータでは、熱伝導で電子部品を加熱するので、セラミックヒータと電子部品の接触を密にする必要がある。しかし、直接レーザによる加熱をする場合には、接触を密にする必要はない。電子部品の吸着ができれば良いので、保持ツールと電子部品の接触を、電子部品の吸着に必要な最小限度とし、熱抵抗を最大とするのが好ましい。
【0007】
これにより昇温した電子部品から流出する熱は、最小限に抑えることができる。そこで、第1の発明は、保持ツールの電子部品を吸着する吸着面に、複数の凸部を設け、電子部品がこの凸部に接して吸着されることにより、電子部品の加熱時には、保持ツールと電子部品との接触面を少なくして接触面からの熱流出を防ぎ、電子部品への加熱が阻害されることを防ごうとする。即ち、電子部品の高速加熱を目的とする。
【0008】
第2の発明は、高速加熱のみならず、高速冷却をも可能とする保持ツールの提供を目的とする。加熱冷却時間を短縮するには、加熱時に電子部品を吸着する保持ツールと電子部品との熱抵抗(熱絶縁)を最大にするようにし、冷却時に熱抵抗を最小にし、電子部品の温度を保持ツール側に高速に移動させることが理想である。しかし、両方を満足する方法は、精密に位置決めをし、加熱冷却時の位置変化のないように取り扱う場合には、非常に難しい。
【0009】
そこで、第2の発明は、第1の発明の保持ツールに、第1真空手段と接続され電子部品を吸着するための吸着口と、第2真空手段と接続され電子部品を冷却するための複数の冷却口とを形成し、第1の発明と同様、高速加熱を可能とすると共に、冷却口からの吸引による空気流により、高速冷却をも可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、第1の発明は、ボンディング装置に次の手段を採用する。
第1に、先端に電子部品を吸着保持する保持ツールと、この電子部品に光を照射する光照射手段とを備え、ボンディング時にこの吸着保持された電子部品を前記光照射手段から照射された光で加熱するボンディング装置である。
第2に、前記保持ツールが光を透過する部材で形成されると共に、電子部品を吸着する吸着面には、複数の凸部が設けられ、電子部品はこの凸部に接して吸着される。
【0011】
第2の発明は、第1の発明に次の手段を付加したボンディング装置である。
第1に、保持ツールには、第1真空手段と接続され電子部品を吸着するための吸着口と、第2真空手段と接続され電子部品を冷却するための複数の冷却口とが形成されている。
第2に、電子部品の加熱時には、第1真空手段でのみ電子部品の吸着を行い、電子部品の冷却時には、第2真空手段で外部流体を吸引する。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明は、保持ツールが電子部品を吸着する吸着面には、複数の凸部が設けられ、電子部品はこの凸部に接して吸着されることにより、電子部品の加熱時には、保持ツールと電子部品との接触面を少なくし、保持ツールとの接触面からの熱流出を防ぎ、電子部品への加熱が阻害されることのないボンディング装置となった。
【0013】
第2の発明の効果ではあるが、電子部品の冷却時には、第2真空手段で外部流体を吸引することにより、電子部品の冷却を促進するボンディング装置となった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るボンディング装置に用いられるボンディングヘッドの実施例を示す断面説明図
【図2】同ボンディングヘッド内の導光状態を示す断面説明図
【図3】保持ツールの第1実施例を示す平面説明図
【図4】同A−A線断面図
【図5】保持ツールの第2実施例を示す平面説明図
【図6】同A−A線断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に従って、実施例と共に本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明に係るボンディング装置に用いられるボンディングヘッドを示す断面説明図であり、同図に従って説明する。本実施例に係るボンディング装置は、電子部品をプリント基板に接合する装置である。実施例における電子部品は、ICチップ4である。
【0016】
ボンディング装置は、ボンディングヘッドと、光を発する光源と、導光手段とを有する。図1中符号3はボンディングヘッドであり、符号8は、ボンディングヘッド3のホルダであり、符号1は、ボンディングヘッド3の支持固定部材である。ボンディングヘッド3は、支持固定部材1により図示されていない昇降装置に装着されている。尚、図中符号9は、上部フランジである。
【0017】
ボンディングヘッド3は、その先端、具体的にはホルダ8の先端(図1及び図2では下方端部)に電子部品たるICチップ4を吸着保持する保持ツール2が装着されている。保持ツール2は、石英やサファイアといったLED光12を透過する部材を用いている。後述するが、図3及び図4には、保持ツール2の第1実施例が示されており、図5及び図6には、保持ツール30の第2実施例が示されている。
【0018】
図1中符号5は高出力UVーLED5であり、本発明における光照射手段となる。実施例での高出力UVーLED5は、紫外線領域の光を照射するものである。高出力UVーLED5は、複数個、ボンディングヘッド3のホルダ8の上部でホルダ8の周囲を囲むように配置され、上部フランジ9とホルダ8の間に発光部15をボンディングヘッド3の内方に向けて取り付けられている。
【0019】
高出力UVーLED5からボンディングヘッド3の内方へ照射されたLED光12を保持ツール2まで導光する導光手段として、アクシコンミラー6及びカライド7がある。アクシコンミラー6は円錐形で、テーパ部13即ち円錐面が鏡面とされており、ボンディングヘッド3のホルダ8の内部に頂部14を下方に向け、底円部を上部フランジ9に装着されて保持されている。
【0020】
アクシコンミラー6の下方には、カライド7が配置される。カライド7は、筒形で内側が鏡面の多重反射体であり、上部開口が円で、下方に行くに連れて徐々に縮径されると共に、下部開口が四角となる。このカライド7は入射する円形のLED光12を全反射し、縮小しながら、ICチップ4のサイズに相当する四角形のLED光12へと整形する。
【0021】
続いて、本発明の特徴となる保持ツール2及び保持ツール30の実施例について説明する。第1実施例の保持ツール2は、高速加熱を考慮したもので、石英やサファイアといったLED光12を透過する部材を用い、上部周囲に取付フランジ部23が設けられ、中央にはICチップ4を吸着保持するための吸引吸着口10が貫通して形成されており、ICチップ4の吸着保持側の面20には、複数の凸部21が形成されている。
【0022】
凸部21は同一の高さであり、実施例では、0.05mm〜0.2mm程度の高さを有し、幅は1mm〜1.5mm程度の凸部21である。尚、吸着保持側の面20の外周には、凸部21と同じ高さの真空封止リブ22が形成されており、吸引吸着口10からの真空吸引が凸部21の存在により漏れることがなく、確実にICチップ4を吸着保持側の面20に保持できるようになっている。
【0023】
第1実施例の保持ツール2が用いられるボンディングヘッド3のホルダ8には、図1に示すように、真空吸引手段11との接続口16が形成されている。ボンディングヘッド3は、ホルダ8の接続口16と保持ツール2の吸引吸着口10以外が密閉されている。そのため、真空吸引手段11を作動させると、ICチップ4は吸引吸着口10に働く吸引力により保持ツール2に吸着される。
【0024】
図5及び図6は、第2実施例の保持ツール30を示す図である。第1実施例の保持ツール2は、高速加熱を考慮したものであるが、第2実施例の保持ツール30は、高速加熱及び高速冷却を考慮したものである。
【0025】
第2実施例に係る保持ツール30は、第1実施例に係る保持ツール2と同様石英やサファイアといったLED光12を透過する部材を用いている。保持ツール30は上部周囲に取付フランジ部33が設けられ、中央にはICチップ4を吸着保持するための吸着口31が形成されている。ICチップ4の吸着保持側の面32には、高速加熱を達成するため、複数の凸部34が形成されている。凸部34の構成も、第1実施例である保持ツール2の凸部21と同様である。尚、吸着口31の周囲には、凸部34と同じ高さを有する吸着凸平面40が形成されている。
【0026】
凸部34のICチップ4が接着する面の面積は、保持ツール30の吸着保持側の面32の面積の1/4程度の面積となっているが、もっと接着する面積を減少させ、例えば、1/20程度であっても良く、その形状も適宜変更できるものである。又、凸部34の配置も適宜変更できるものであって、必ずしも図5に示されるように千鳥状としなくても良い。
【0027】
第2実施例に係る保持ツール30で、吸着口31は吸引路35の第1吸引口41を通じて第1真空手段36と接続されている。又、吸着保持側の面32には、凸部34に四方を囲まれる形で流体冷却口37が多数、保持ツール30を貫通して形成されている。流体冷却口37は、密閉されたホルダ8に開けられた第2吸引口38より第2真空手段39と接続されている。
【0028】
先ず、第1実施例に係る保持ツール2を用いてボンディングする場合の動作につき説明する。半導体チップ供給装置より供給されるICチップ4は、半田バンプを下方に位置させて供給される。ボンディングヘッド3が下降し、ICチップ4に当接する。この時、真空吸引手段11が作動しており、吸引吸着口10には吸着負圧が生じている。吸引吸着口10は凸部21より下方に位置しているが、真空封止リブ22がICチップ4に密着するため、該ICチップ4は上面を吸引され、保持ツール2に吸着されて取出される。同時に別設の駆動装置によりプリント基板がボンディング位置に供給される。
【0029】
保持ツール2をボンディング位置に移動させ、位置合わせを行った後、保持ツール2をICチップ4の半田バンプがプリント基板のリード線と接触するまで下降させる。この時点で、高出力UVーLED5よりLED光12の照射が開始される。図2は、本発明に係るボンディング装置に用いられるボンディングヘッド3内の導光状態を示す断面説明図である。
【0030】
高出力UVーLED5から水平出射されたLED光12はアクシコンミラー6で下方に向けて反射され、カライド7により、円形のLED光12から縮小し、均一なICチップ4のサイズに相当するLED光12へと整形される。整形されたLED光12は保持ツール2を透過して、ICチップ4に照射される。
【0031】
この時、保持ツール2は透過性のためLED光12による昇温がなく、ICチップ4のみが昇温する。しかし、高温度のICチップ4と低温度の保持ツール2との接触は、凸部21により接触面積を小とされているため、ICチップ4から保持ツール2への熱流出が小となり、高速加熱が可能となる。該照射によって半田バンプが溶けて、ICチップ4がプリント基板に溶着される。
【0032】
次に、第2実施例に係る保持ツール30を用いてボンディングする場合の動作につき説明する。加熱時の動作は、第1実施例に係る保持ツール2を用いた場合とほぼ同様である。保持ツール30の中央部に形成されている吸着口31から第1真空手段36により真空吸着を行ってICチップ4を吸着凸平面40に固定する点のみが相違している。固定後、保持ツール30の背面から直接LED光12による加熱を行い、ICチップ4の高速加熱ができる。
【0033】
ICチップ4の冷却は、ICチップ4を保持ツール30が吸着した状態で第2真空手段39により真空吸引をすることによりICチップ4と保持ツール30の吸着保持側の面32間に0.05〜0.2mmの隙間があり、この隙間から外気を勢いよく吸い込むため、空気流は乱流となり、ICチップ4や保持ツール30表面からの剥離が発生し、気体であっても高効率で冷却できる。尚、本実施例では、光照射手段としてLEDを使用したが、YAGレーザ等の固体レーザ、半導体レーザといったレーザや、キセノンランプといったランプを用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1・・・・・・・・支持固定部材
2、30・・・・・保持ツール
3・・・・・・・・ボンディングヘッド
4・・・・・・・・ICチップ
5・・・・・・・・高出力UVーLED
6・・・・・・・・アクシコンミラー
7・・・・・・・・カライド
8・・・・・・・・ホルダ
9・・・・・・・・上部フランジ
10・・・・・・・吸引吸着口
11・・・・・・・真空吸引手段
12・・・・・・・LED光
13・・・・・・・テーパ部
14・・・・・・・頂部
15・・・・・・・発光部
16・・・・・・・接続口
20、32・・・・吸着保持側の面
21、34・・・・凸部
22・・・・・・・真空封止リブ
23、33・・・・取付フランジ部
31・・・・・・・吸着口
35・・・・・・・吸引路
36・・・・・・・第1真空手段
37・・・・・・・流体冷却口
38・・・・・・・第2吸引口
39・・・・・・・第2真空手段
40・・・・・・・吸着凸平面
41・・・・・・・第1吸引口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に電子部品を吸着保持する保持ツールと、この電子部品に光を照射する光照射手段と、を備え、
ボンディング時に、この吸着保持された電子部品を前記光照射手段から照射された光で加熱するボンディング装置において、
前記保持ツールが光を透過する部材で形成されると共に、電子部品を吸着する吸着面には、複数の凸部が設けられ、電子部品はこの凸部に接して吸着されることを特徴とするボンディング装置。
【請求項2】
上記保持ツールには、第1真空手段と接続され電子部品を吸着するための吸着口と、第2真空手段と接続され電子部品を冷却するための複数の冷却口とが形成されており、
電子部品の加熱時には、第1真空手段でのみ電子部品の吸着を行い、電子部品の冷却時には、第2真空手段で外部流体を吸引することを特徴とする請求項1に記載のボンディング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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