説明

ボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験装置

地盤内の任意の位置の土層の動的繰り返し荷重に対する動的な強度および変形特性を簡易な方法で得ることができるボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験方法および試験装置を提供する。
3室構成を基本とする測定用セルを用い、中間土層J2を挟んで上下の土層J1,J3に交互に動的な繰り返し荷重を載荷し、中間土層J2にどういう影響があるかを圧力と変位の関係から分析する。
試験手順は、中間土層が破壊するまで繰り返し荷重を載荷し、破壊強度を測定する。また、液状化の有無についても分析する。
破壊現象が出ない場合には、動的試験終了後に静的荷重をかけて動的荷重を受けた後の地盤の基本特性(強度および変形特性)および変位特性を測定する。
測定用セルは5室構成とし、上下の土層J1,J3の上方および下方に隣接する土層J4,J5についても、中間土層J2と同様に静的荷重を載荷することが好ましい。
この上下の土層J4,J5に静的荷重を載荷することにより、上下の土層J1,J2の崩れを防止すると共に、上下の土層に対して動的繰り返し荷重を安定して作用させることができる。さらに、土層J4,J5についても、動的繰り返し荷重をかけた際の変位と圧力の関係を測定し、中間土層と対比させることにより地盤の特性を分析することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震荷重,交通荷重、機械荷重等の動的繰り返し荷重が作用した場合の地盤の原位置での特性を検査するボーリング孔を利用した地盤の液状化および動的特性(強度,変形特性)試験方法および試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の地盤検査は、所定の深さまでボーリングをし、ボーリング孔内に測定用セルとしての検出ゾンデを降ろし、検出ゾンデを膨らませて孔壁に水平荷重を載荷し、荷重に対する孔壁の変位から地盤の静的な強度および変形特性を検出するようになっていた。
【0003】
しかし、従来の地盤検査では静的な特性を検出しているだけで、地震荷重,交通荷重,機械荷重等のような動的繰り返し荷重に対する地盤の強度や変形特性といった動的特性の評価をすることができなかった。地震の際には、地盤に加わる力が静的には破壊しない大きさであったとしても、徐々にあるいは急激に歪みが大きくなって破壊に至るものと考えられ、動的繰り返し荷重に対する地盤の特性を調査することはきわめて重要である。地震の際には地盤内には水平,上下およびねじり方向に複雑な力が作用するものと考えられ、このような複雑な力が作用した際の原位置での地盤の動的な特性を知ることはきわめて重要であるにも拘わらず、従来は原位置の地盤内で測定し評価する方法が確立されていない。
【0004】
従来の液状化の判定方法としては、たとえば、地盤全体の特性傾向を判定するもの(特許文献1参照)、地震発生時に液状化を検知するもの(特許文献2参照)等があるが、いずれも地盤中の土層そのものの動的特性を直接的に試験するものではなかった。
【0005】
土層自体の動的繰り返し荷重に対する動的な特性を知る方法としては、現在、ボーリングして乱さない状態での土のサンプルを採取して、これを試験室に持ち込んで土質試験をして求めている。しかしサンプルを乱さない状態(自然に堆積しているそのままの状態)で採取すること自体が非常に困難であるばかりでなく、採取したサンプルは地下の圧力がかかった状態でないこともあって、実際の自然状態での特性を求めることは不可能である。
また、非常に締まりのない砂層あるいは礫などを混入する土層、砂礫など粒径の大きい土層または風化岩、軟岩などの場合は乱さない状態でのサンプリングも不可能であり、したがって室内での土質試験は不可能である。
以上から現状では非常に限られた条件での特性しか直接的に求めることができないのが実情である。
【特許文献1】特開平7−3760号公報
【特許文献2】特開平7−109725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、地盤の動的繰り返し荷重に対する動的な変形特性を直接知ることの重要性に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、乱さない状態での土のサンプルを必要とすることなく、原位置での地盤の動的な強度および変形特性を簡易な方法で得ることができるボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験方法および試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験方法は、地盤に設けたボーリング孔の孔壁の試験対象土層に動的繰り返し荷重を載荷して孔壁の変位を測定し地盤の動的特性を求めることを特徴とする。特に地盤の液状化についても知ることができる。
ここで、動的繰り返し荷重とは、周期的に変動する荷重全体を含める意味で、比較的振動数が高い変動荷重(振動)から、手動でも操作できるようなゆっくりした変動荷重も含まれる。
動的特性とは、動的繰り返し荷重を加えた際の荷重と変位の関係そのものであり、たとえば、動的繰り返し荷重の大きさ,繰返し回数および変位の関係から変形特性を把握し、降伏荷重と破壊荷重といった強度および変形係数を求めたり、これらの結果を系統立てて解析をすることで土層の動的な特性を評価できる。
【0008】
特に、ボールリング孔の孔壁の孔軸方向の複数の領域に交互に動的繰り返し圧縮荷重を載荷することが効果的である。このようにすれば、荷重の載荷領域の中間土層に揺れと孔軸と交差する方向のせん断力を交互に繰り返し作用させることが可能となり、土層に対して地震の際と同様の力を加えることができる。
動的繰り返し試験を行った中間土層はもっともダメージを受ける部分であり、この部分に静的な圧縮荷重を載荷して静的な強度を測定すれば、どの程度ダメージを受けているか、その度合いを知ることができる。
また、ボーリング孔の孔壁の一つの領域に交互に振動または動的繰り返し荷重を載荷し、繰り返し加重の大きさ,振動または繰返し回数および変位の関係から、地盤の動的特性を知ることもできる。
動的繰り返し荷重は、孔軸と直交する方向に載荷される圧縮荷重と、孔軸を中心とする回転方向に載荷されるねじりせん断荷重と、孔軸と平行方向に載荷されるせん断荷重の3つの荷重のうちの一つ、または少なくとも2種類の荷重を組み合わせた組み合わせ荷重である。
【0009】
本発明のボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験装置は、地盤に設けたボーリング孔内に挿入されると共に圧力媒体の圧力によって孔壁を押圧する測定用セルと、測定用セル内の圧力媒体の圧力を周期的に変動させることが可能な圧力調整手段と、前記孔壁の変位を検出するための変位検出手段と、を備えていることを特徴とする。
測定用セルはボーリング孔の孔軸方向に沿って孔壁を押圧する複数の加圧部を有し、圧力調整手段は複数の加圧部に交互に動的繰り返し圧力を加える。
測定用セルは複数の室に区分されて加圧部を構成し、圧力調整出段は複数の室内の圧力媒体に交互に動的繰り返し圧力を加える。
圧力調整手段は、中間室を隔てて上下の室には交互に動的繰り返し圧力を加え、中間室には変動しない一定の静的な圧力を加える。
測定用セルを孔壁に密接させた状態で測定用セルに孔軸回りに動的繰り返し荷重を加えるトルク発生手段と、該トルク発生手段によって加えた動的繰り返し荷重による孔壁の回転変位を検出する変位検出手段と、を備えていることを特徴とする。
測定用セルを孔壁に密接させた状態で測定用セルに孔軸と平行方向に動的繰り返し荷重を加えるせん断荷重発生手段と、せん断荷重による孔壁の軸方向変位を検出する変位検出手段と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の試験装置の他の態様としては、ボーリング孔内に挿入される測定用セルが、互いに独立した加圧室を備えた複数のセル部に区分され、各セル部の加圧室内に充填される液体の液圧を制御して対応する土層に独立して荷重を載荷する構成で、セル部は、静的荷重を載荷する中間セル部と、該中間セル部の上下に位置し土層に対して動的繰り返し荷重を載荷する上部動的セル部および下部動的セル部を備えたボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験装置において、前記上部動的セル部の上方および下部動的セル部下方に、土層に静的荷重を載荷する上部ガードセル部と下部ガードセル部を設けたことを特徴とする。
【0011】
測定用セルは、中間セル部に対応する土層の間隙水圧を検出する間隙水圧検出手段を備えていることを特徴とする。
間隙水圧検出手段は、中間セル部表面を構成するゴム状膜部材に圧力導入部を備えていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の他の態様としては、ボーリング孔内に挿入される測定用セルが、互いに独立した加圧室を備えた複数のセル部に区分され、各セル部の加圧室内に充填される液体の液圧を制御して対応する土層に独立して荷重を載荷するボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験装置において、各セル部は互いに独立して交換可能に連結されていることを特徴とする。
【0013】
各セル部は、セル本体と、該セル本体の外周に被着される筒状のゴム状膜部材とを備え、セル本体とゴム状膜部材の間に液体が充填される加圧室が形成される構成となっていることが好適である。
【0014】
各セル本体の間にはゴム状膜部材の端部が密接するシール板が介装されていることが好ましい。
【0015】
加圧室内の液圧を加圧する手段は、液体を加圧するシリンダと、シリンダロッドのストロークを検出するストローク検出手段とを有し、シリンダストロークから荷重を載荷した土層の孔壁の変位を測定する構成となっている。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、地下のサンプルを取り出すことなく、原位置で試験できるので、自然状態での土層の動的繰り返し荷重に対する強度および変形特性を求めることができる。
特に、非常にゆるい砂層あるいは礫などの混入でサンプリングが不可能な土層、砂礫層など粒径の大きい土層または風化岩、軟岩などでも測定が可能であり、利用範囲が広がる。
また、従来のサンプル試験に対して短時間で試験が可能なために、経済的である。
【0017】
特に、ボールリング孔の孔壁の孔軸方向の複数の領域に交互に動的繰り返し圧縮荷重を載荷することにより、載荷領域の境界部に実際の地震の横揺れに似た形の繰り返しせん断力を加わえることができ、動的繰り返し圧縮荷重に対する特性と同時に、せん断力に対する特性についても試験することができる。液状化はせん断力によって生じやすくなるので、液状化の判定に有効である。境界部が崩れると圧縮荷重載荷領域にも液状化が拡がり、変位が大きく変化するため液状化が判定できる。
また、ボールリング孔の孔壁の一領域に動的繰り返し荷重をかける場合でも、データの解析手法により、種々の地盤の特性を検討できる。
この場合には、孔軸と直交する方向に載荷される圧縮荷重と、孔軸を中心とする回転方向に載荷されるねじりせん断荷重と、孔軸と平行方向に載荷されるせん断荷重の3つの荷重のうちの一つ、または少なくとも2種類の荷重を組み合わせた組み合わせ荷重を載荷して試験することにより、ねじられながら圧縮やせん断荷重が作用するような実際に即した動的繰り返し荷重に対する試験を行うことができる。
【0018】
また、上記した本発明のより具体的な態様の試験装置は、上部動的セル部の上方および下部動的セル部下方に上部ガードセル部および下部ガードセル部を設けたので、動的繰り返し荷重が作用する上下の土層に隣接する上方および下方の隣接土層についても、動的繰り返し荷重をかけた際の変位と圧力の関係を測定し、中間土層と対比させることにより地盤の特性を分析することができる。また、上部セル部および下部セル部で動的繰り返し荷重を載荷する際に、上部ガードセル部と下部ガードセル部によって土層の崩れを防止すると共に、上下の土層に対して動的繰り返し荷重を安定して作用させることができる。
【0019】
この態様の試験装置において、中間セル部に対応する土層の間隙水圧を検出する間隙水圧検出手段を設けることにより、上部動的セル部および下部動的セル部で載荷された動的繰り返し荷重の影響を受ける中間の土層の間隙水圧の変化を直接検出することができる。
【0020】
また、中間セル部表面を構成するゴム状膜部材に間隙水圧検出手段の圧力導入部を設けることにより、中間土層の間隙水圧を直接検出することができる。
【0021】
さらに、本発明の他の態様の試験装置においては、測定用セルを構成するセル部を互いに独立して交換可能に連結したので、部品の交換等のメンテナンス作業を、セル部単位で行うことができる。
【0022】
また、セル部が、セル本体と、セル本体の外周に被着される筒状のゴム状膜部材とを備え、セル本体とゴム状膜部材の間に液体が充填される加圧室を形成することにより、ゴム状膜部材の交換作業がきわめて容易となる。
【0023】
さらに、各セル本体の間にはゴム状膜部材の端部が密接するシール板を介装することにより、ゴム状膜部材のシール性を高めることができる。
また、上記加圧室内の液圧を加圧する手段は液体を加圧するシリンダを備え、シリンダロッドのストロークを検出するストローク検出手段を設け、シリンダストロークから荷重を載荷した土層の孔壁の変位を測定する構成となっている。変位検出のための水位計の併用も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に本発明の最良の形態について、図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0025】
図1(A)は本発明の実施例1に係る地盤の液状化および動的特性試験装置の模式図である。
この地盤の液状化および動的特性試験装置は、地盤に設けたボーリング孔100内に挿入されると共に圧力媒体としての水203などの液体が満たされた測定用セルとしてのゴムゾンデ201と、ゴムゾンデ201内の水203の圧力を周期的に変動させる圧力調整手段としての圧力制御弁205と、ゴムゾンデ201からの圧力による孔壁の変位を検出するための変位検出手段としての変位センサ208と、を備えている。
【0026】
図示例では、水203は地上の水タンク2内に貯留され、水タンク202内のヘッドスペースに圧力供給部204から高圧気体を供給して水タンク202内の水203を加圧しており、圧力制御弁205はこの高圧気体の圧力を制御している。場合によっては、高圧気体の制御ではなく、水圧を直接調整する構成としてもよい。
また、水タンク202とゴムゾンデ201は連結管206によって連結されており、変位センサ208は、水タンク202の液面を検出し、液面高さから孔壁の変位が求められる。変位変化は、変位センサ208による検出に限らず、水タンク202に設けた不図示の目盛りによって目視で、または水タンク202底部に配置される圧力センサ265によって計測するようにしてもよい。
【0027】
ゴムゾンデ201は縦方向には固定で横方向にのみ膨張収縮するようになっており、ボーリング孔100の孔壁に密着するゴムチューブ等の中空の可撓性部材を備えている。

圧力供給部204は、たとえば、高圧窒素ガス等の圧力源と、圧力源から供給されるガス圧を一定に保つレギュレータバルブ等から構成される。圧力源としては、高圧ガスではなくコンプレッサ等を用いることもできる。
【0028】
圧力制御弁205にはサーボ弁が用いられ、図1(B)に示すように、指令信号に応じて圧力を制御可能となっており、図2(A)に示すように、所定の周期でもって圧力が変動するようにプログラムされたコンピュータ207からの制御信号に基づいて圧力制御弁205のバルブ駆動部51を制御し、たとえばバルブの開度を変えることにより出力圧を周期的に変化させる。出力圧は圧力センサ252によって検出され、サーボアンプ253にフィードバックされ、指令信号に正確に追従するように制御される。
【0029】
次に、上記試験装置による試験手順を説明する。
原理的には、予想される降伏荷重または非液状化限界荷重(Pl)を何段階かに分けて載荷し、各荷重ごとプラスαの動的繰り返し荷重を繰返しかけて、地盤の変位量を測定する。以下、同様に載荷荷重を上げていき地盤が破壊されるまで試験を続行し、動的繰り返し荷重の大きさと変位量の関係から、動的特性を求める。図示例では、動的繰り返し荷重は正弦波であるが、波形については限定されるものではないし、衝撃な荷重を加えてもよい。
動的繰り返し荷重の振動または繰返し回数としては、地震の振動または繰返し回数などを考慮して設定されるが、0.1〜1[Hz]程度に設定することが好適である。
この実施例1では、動的特性の指標として、降伏荷重Pyと破壊荷重Plそして変形係数を求める。
【0030】
以下、具体的な試験手順を説明する。
i)試験の設定
ゴムゾンデ201をボーリング孔100の試験対象土層まで降ろし、ゴムゾンデ201が孔壁に密着して変位が安定するまでゴムゾンデ201に静的な圧力(乱れの要素の無い圧力)を加えて膨らませ、変位が安定した時点の圧力を初期圧P0とする。
予想される破壊荷重または非液状化限界荷重Plを設定し、初期圧P0との差圧をN段階に分け、荷重増分(ΔP)=(Pl−P0)/Nを決め、各荷重段階で、動的繰り返し荷重をn回、または一定時間Tn加えて試験する。
予想される破壊荷重または非液状化限界荷重は、試験目的に応じて、高く設定してもよいし、低く設定してもよく、必要に応じて任意に設定される。たとえば、重要な地盤の試験の場合には高く見積もって試験を行う。非液状化限界荷重とはこれ以上荷重をかけても液状化しないであろうと予想される荷重の意味であり、地盤に応じて判断される。
動的繰り返し荷重を載荷する回数,時間については種々設定可能であり、たとえば、地震の際の揺れている時間などを考慮して決められる。この例では荷重段階は10段階とし、動的繰り返し荷重を20回または120秒間を限度として試験した。地震の際の揺れは長くても120秒程度であり、この程度かければ地震の際の地盤の特性が把握できるし、それ以上となると試験時間が長くなりすぎるからである。
【0031】
ii)第1荷重段階
まず、動的繰り返し荷重(P0〜P0+α)段階を20回または120秒間載荷し、それぞれの変位量を読み取る。動的繰り返し荷重のαはΔPを越えない範囲とすることが好適で、αをほぼΔPと等しくすることが好ましい。
【0032】
iii)第k荷重段階
以下、段階的に荷重を大きくして、試験を繰り返す。
たとえば、k番目の荷重段階の場合には、荷重(Pk)を
(P0+(k−1)*ΔP)まで大きくし、動的繰り返し荷重(Pk+α)を20回または120秒間載荷して変位を測定する。
このようにして測定したデータを、図2(B)にモデル的に示すようにグラフ化する。このグラフは各荷重段階での最終変位r1,r2,r3・・・を記入している。
本実施例の場合、圧力センサによって読み取られたデータはコンピュータに読み込まれ、自動的にデータが処理され、降伏荷重Pyと破壊荷重Plおよび変形係数を求める。変形係数とはグラフで見れば、降伏荷重Pyに至るまでの直線部分の勾配である。
【0033】
繰返し回数nが増えるに従って変位量rが増大し、これらの結果を系統立てて解析することで地盤の強度,動的変形特性を知ることができる。
すなわち、種々の土質の試験結果を比較しながら、液状化を起こし易いかどうか等の判定が可能となる。
砂質地盤の場合には急激に破壊され、荷重と変位の関係が急激に極限状態に陥る傾向がでると想定される。この急激な変化の度合いを見ることで液状化の度合いの判断も可能である。
また、粘土質地盤の場合、極限状態に陥る過程もややゆっくりと出ることが想定される。この傾向を見ることで動的特性の度合いの判定も可能である。
また、動的な繰り返し荷重を受けることで急激に強度の低下する性質の高い土ほど早く極限状態が現れ、強度低下率の度合いの判定も可能となる。
【0034】
iv) 測定中での注目点
変位の変化に常に注意を払い、比例的な変化から変化が急になりだした時点を記録しておく。変位が急激に変化した時点を降伏状態として測定を終了するか、破壊荷重を確認して終了する。
ゴムゾンデ201の圧力をP0以下に戻してから、ゴムゾンデ201を引き上げる。引き上げる際の抵抗に注目する。引き抜くのが大変な場合は液状化して孔が崩れている可能性がある。
なお、上記実施例では、荷重と変位の関係をグラフ化しているが、図3(A)乃至(D)に示すように、各荷重段階の繰返し回数nと変位rの関係をグラフ化して振動または繰返し回数に対する特性を評価することも可能である。このグラフは、各荷重段階での動的繰り返し荷重に対する変位のピーク値(動的繰り返し荷重の各ピーク値に対応する)をプロットしたものである。動的繰り返し荷重が加わる毎に徐々に土層に歪みが蓄積されて変位が大きくなっていく。図3(A)乃至(C)の第1段,第2段,第3段の変位が増大する度合い(グラフの勾配)は等しく、降伏段階で変位の勾配が大きくなり(図3(D))、土層が破壊に至る段階では、図3(E)に示すように、変位が急激に変化する。このようなデータをとることにより、各土層の動的繰り返し荷重に対する強度,動的変形特性を知ることができる。
また、荷重を加える時間と変位の関係をグラフ化してその特性を評価してもよく、必要に応じて種々の特性を求めることが可能である。
【0035】
上記実施例1では、動的繰り返し荷重は孔壁に対して孔軸と直交する方向(水平方向)に載荷する圧縮荷重としたが、動的繰り返し荷重としては、孔壁に対して孔軸を中心とする回転方向に載荷するねじりせん断荷重とすることもできるし、孔壁に対して孔軸と平行方向に載荷するせん断荷重とすることもできる。
たとえば、ねじりせん断振動試験を行う場合には、図1に示すように、基本的には上記実施例の測定用セル201を孔壁に密接させた状態で測定用セル201に孔軸回りに動的繰り返し荷重を加えるトルク発生装置209と、このトルク発生装置209によって加えた動的繰り返し荷重による孔壁の回転変位を検出する変位検出手段としての変位検出部210と、を設ければよい。
【0036】
また、せん断振動試験を行う場合には、測定用セル201を孔壁に密接させた状態で測定用セル201に孔軸と平行方向に動的繰り返し荷重を加えるせん断荷重を加えるせん断荷重発生装置211とせん断荷重による孔壁の軸方向変位を検出する変位検出手段としての変位検出部212と、を備えた構成とすればよい。
上記トルク発生装置209およびせん断荷重発生装置211としては種々の構成が可能であるが、油圧あるいは空気圧等の流体圧を用いた装置が好適であり、油圧や空気圧を利用したアクチュエータと、サーボ弁などの油圧あるいは空気圧制御弁によって構成することができる。
【実施例2】
【0037】
次に本発明の実施例2について説明する。
図7は本発明のボーリング孔を利用した原位置における地盤の液状化および動的特性試験方法が適用される試験装置の概略構成が示されている。
上記実施例1では、ゴムゾンデによって一つの土層に動的繰り返し試験を行うようにしたが、この実施例2では、上下段の土層J1,J3に交互に動的繰り返し荷重を掛けて不動の中間土層J2の上下にせん断力を作用させるようにしたものである。
すなわち、ボーリング孔100内に挿入され孔軸方向に第1,第2,第3室111,112,113の3室に区分され圧力媒体としての水等の液体が満たされた複数の加圧部を備えた測定用セルとしてのゴムゾンデ110と、このゴムゾンデ110の加圧部を構成する第1室111と第3室113の水に交互に圧力を加えて交互に膨張,収縮させる第1,第3圧力調整部121,123と、第2室112内の水圧を調整する圧力調整部122と、を備えている。
【0038】
ゴムゾンデ110は、図5および図6に示すように、円筒形状の本体部114と、本体部114の外周に被着される可撓性部材である筒状のゴム部材115と、から構成されている。ゴム部材115は、第1,第2,第3室111,112,113の全長を覆い、第1室111と第2室112の境界部、第2室112と第3室113の境界部を締め付け部材116で締め付けて3室に区分してもよいし、第1,第2,第3室111,112,113の各室毎に取り付けてもよいし、種々の構造を選択することができる。以下、第1室111に対応するゴム部材を115A,第2室112に対応するゴム部材を115B、第3室113に対応するゴム部材を115Cとする。これらゴム部材115A,115B,115Cと第1室,第2室112,第3室111,113により加圧部が構成される。
中間の第2室112(ゴム部材115B)の長さL2は、ほぼゴムゾンデ110の直径D程度に設定しておくことが好ましい。第2室112(ゴム部材115B)の長さL2があまり狭いと早い段階から破壊が始まるし、あまり広いと影響が出にくいからである。
また、第1,第3室111,113(ゴム部材115A,115C)の長さL1,L3は、Dの1.5から2.5倍程度がよく、2倍程度が最適である。また、Dは5cmから20cm程度に設定することが好ましい。もちろんは、寸法はこの寸法に限定されるわけではない。この程度の大きさにすれば、ゴム部材115の第1,第3室の111,113に対応するゴム部材115A,115Cが球状に膨らみ、中間土層J2に対し上下から圧縮する方向の力が働く。
【0039】
第1,第3圧力調整部121,123は、図7に示すように、圧力源としての高圧のガスボンベ120Aと、ガスボンベ120Aから供給されるガスを定圧にして一定量貯留するガスタンク120Bと、ガスタンク120Bからの圧力で作動する水圧シリンダ121C,123Cと、を備えている。ガスタンク120Bと水圧シリンダ121C,123Cの間には圧力を逃がすバルブ121E,123Eと、圧力を供給するバルブ121D,123Dが設けられ、これらのバルブ121D,121E;123D,123Eを調整することで、ゴムゾンデ110の第1,第3室111,113に動的繰り返し圧力を加えるようになっている。
たとえば、バルブ121D,123Dを圧力制御弁とし、バルブ121E,123Eを閉じた状態で、バルブ121D,123Dによって水圧シリンダ121C,123Cに供給するガス圧を制御して、水圧シリンダ121C,123Cを介して第1,第3室111,113に交互に荷重を加えればよい。図6ではバルブ121D,123Dを手動バルブのシンボルで記載しているが、電気的に制御される圧力制御弁等、種々のバルブを適用可能である。試験終了後、バルブ121E,123Eを開いて水圧シリンダ121C,123Cからガス圧を抜く。この例では圧力媒体としては水であり、ゴム部材115A,115Cは水圧によって膨張,収縮する。
【0040】
第2圧力調整部122は水圧シリンダは設けないで、水3を地上の水タンク122C内に貯留し、水タンク122C内のヘッドスペースにガスボンベ122Aから高圧ガスを供給して水タンク122C内の水を加圧し、圧力制御弁122Dによってこの高圧気体の圧力を制御している。もっとも、第1,第3圧力調整部121,123と同様に水圧シリンダを用いてもよい。
水圧シリンダ121Cとゴムゾンデ110の第1室111とは第1通路131により、水タンク120Cと第2室112とは第2通路132により、水圧シリンダ123Cと第3室113とは第3通路133により連通されている。これら第1,第2,第3通路131,132,133はゴムゾンデ110が取り付けられるボーリングロッド140に設けられる。
【0041】
また、ゴムゾンデ110の第1室111,第3室113によって圧縮される上段土層J1,下段土層J3の変位を検出する変位検出手段として、水圧シリンダ121C,123Dに、ピストンの変位を検出する変位センサ151,152が設けられている。このピストンの変位からゴムゾンデ110のゴム部材115A,115Cの変位量、すなわち孔壁の変位が測定される。
また、ゴムゾンデ110の第2室112によって圧縮される中間土層J2の変位を検出する変位検出手段として、水タンク122C内の水位の変化を変位センサ153が設けられている。この水位の変位量から第2室112のゴム部材115Bの変位量、すなわち孔壁の変位が測定される。この孔壁の変位変化は、変位センサ153に検出に限らず、水タンク122Cに設けた不図示の目盛りによって目視で、または水タンク122C底部に配置される圧力センサ165によって計測するようにしてもよい。 さらに、ゴムゾンデ110の下端部には液状化の発生を検証するための間隙水圧計150が設けられる。この間隙水圧計150は、図6(A)に示すように、セルの側面、たとえば第2室112のゴム部材115Bの中央や下端部側面に設けてもよい。また、孔壁に粘土膜があって水圧が測定できない可能性があるので、図6(B)に示すように、下端面110C面に設けてもよい。この下端面110Cにはゴムゾンデ110をボーリング孔100内に降ろしていく途中でゾンデ110によって削られて土が付着する場合があるので、下端面の凹部110Dの奥に取付けることが望ましい。
【0042】
次に、実施例2についての試験方法について、図4を参照して説明する。
試験は、上下段の土層J1,J3に動的繰り返し荷重を交互に加えてその変位をリアルタイムで測定し、その後に中間土層J2の静的載荷試験を行って静的強度を測定する。
上下段個々の土層J1,J3への動的繰り返し荷重の載荷試験自体は、実施例1と全く同様であり、予想される降伏荷重または非液状化限界荷重(Pl)をN段階に分けて載荷し、各荷重ごとプラスαの動的繰り返し荷重をn回または所定時間Tnかけて、地盤の変位量rを測定し、各段階の動的繰り返し荷重載荷毎に中間土層J2の静的強度を測定する。
【0043】
以下、具体的な試験手順を説明する。
ボーリング孔100を検査すべき地層の深さまで掘削し、ボーリングロッド140によってゴムゾンデ110をボーリング孔100内の所定深さ位置まで挿入し、以下の手順で試験を行う。
i)試験の設定
ゴムゾンデ110の第2室112に圧力を供給して、中間土層J2に静的な圧縮荷重を載荷し、中間土層J2の初期強度を測定する。具体的には静的な状態での「荷重P〜変位r曲線」を求める。
この時点で、ゴムゾンデ1が孔壁に密着して変位が安定する初期圧P0が求めらる。予想される破壊荷重または非液状化限界荷重をPlとし、初期圧P0との差圧をN段階に分け、荷重増分(ΔP)=(Pl−P0)/Nを決め、ゴムゾンデ110の第1室111,第3室113に各荷重段階で動的繰り返し荷重をn回、または一定時間Tn交互に加えて試験する。動的繰り返し試験の前に、ゴムゾンデ110の第1室111,第3室113に初期圧P0を加えておく。
【0044】
ii)第1荷重段階
第1荷重段階は、第1室111および第3室113に、P0〜P0+αの大きさの動的繰り返し荷重をn回交互に載荷し、第1室111および第3室113に対応する上段土層J1および下段土層J3の変位を測定し、実施例1と同様に荷重と変位の関係をリアルタイムで監視しデータをコンピュータに蓄積し、グラフ化する。この場合も、荷重段階は10段階程度とし、動的繰り返し荷重を20回または120秒間を限度とする。この場合の載荷荷重は、図4(E)に示すような立ち上がりが急激な衝撃荷重とする。衝撃荷重は急激に立ち上がった後一定時間t0荷重を維持して確実に土層を圧縮し、その後荷重が低下する。第1室111と第3室113の一方に荷重が加わる時には他方には荷重が加わらないように、交互に荷重が加えられる。荷重の低下開始時点は、他方の室への荷重の立ち上がり前となっているが、点線で記載したように他方の室への荷重立ち上がり時点と同時としてもよい。
【0045】
上段土層J1の上下両端部および下段土層J3の上下両端部には圧縮とともに剪断力が作用し、特に中間土層J2については上下の土層J1,J3が交互に圧縮されることから揺れながら剪断力が作用することになり(図4(A)〜(C)中の×印)、地震の際と同様のダメージが土層に加わる。ゴムゾンデ110の形状が、第2室112の長さL2がゴムゾンデ110の直径D程度となっているので、破壊に至る現象を適切に捉えることができ、第1,第3室111,113の長さL1,L3がDの2倍程度となっているので、ゴム部材115A,115Cが球状に膨らむので変位が大きくなり、しかも圧縮力の分力が直接中間土層J2に対して作用し、土層に対する荷重の影響を高めることができる。
iii)動的繰り返し荷重試験後
再び第2室J2に圧力を供給して中間土層J2に静的な圧縮荷重を載荷し、中間土層J2の強度測定を行い、初期強度からどの程度低下したかのデータを得る。
このサイクルを1サイクルとし、載荷荷重をΔP毎、順次大きくして動的繰り返し試験を行い、基本的には土層の破壊が生じるまで行う。
【0046】
図8には、中間土層J2の静的強度試験の試験結果モデルを示している。
図8(A)は、縦軸を中間土層J2に加える静的荷重P、横軸を時間としたグラフ、図8(B)は、縦軸を荷重を加えられた中間土層J2の変位r、横軸を時間としたグラフである。また、図8(C)乃至(F)は、図8(A),(B)に示す、各段階での中間土層J2の荷重と変位の関係を示すグラフである。
図8(A),(B)に示すように、まず、動的繰り返し試験を行う前の中間土層の初期強度を測定する。
ゴムゾンデ110の第2室112のゴム部材115Bがボーリング孔100の孔壁に密着するまでは圧力が上がらず変位だけが大きくなり、孔壁に密着すると圧力が急激に増大し、逆に変位の変化は小さくなって初期圧力P0に達し、荷重に対する変位の変化が安定する。この安定した領域で荷重をP0+δまで増大させて変位を検出し、図8(C)に示すように、初期段階の中間土層の荷重−変位曲線(横軸を荷重、縦軸を変位)を作成する。この荷重−変位曲線の勾配を変形係数とする。測定後、荷重をP0(0)に戻す。荷重をP0に戻しても、中間土層J2に永久歪みが残るので、変位は元には戻らない。圧力増分δの大きさは、上下段土層J1,J3に加える動的繰り返し荷重の振幅の数分の1程度とし、荷重と変位の関係が分かる程度であればよい。
【0047】
次に、上下段土層J1,J3に対して1回目の動的繰り返し試験を行なった後に、中間土層J1の静的な強度試験を行う。
圧力をかけても荷重P0はゴムゾンデのゴム部材115Bが初期圧力測定時の永久歪みの分だけ膨らむまで荷重が上昇せず変位だけが大きくなり、永久歪みを吸収した時点で圧力が急激に増大し、逆に変位の変化は小さくなって試験開始荷重P0(1)に達し、この安定した領域で荷重をP0(1)+δまで増大させて変位を検出し、1回目の動的繰り返し試験後の中間土層の荷重−変位曲線を作成し(図8(D)参照)、グラフの勾配を変形係数とする。測定後、荷重を試験開始荷重P0(1)まで戻す。荷重をP0(1)に戻しても、中間土層J2に永久歪みが残るので変位は試験開始時点の変位まで戻らない。
【0048】
以下、同様に上下段土層J1,J3の動的繰り返し試験後に、中間土層J2の静的強度試験を行う。弾性領域では、荷重−変位曲線から得られる変形係数はほぼ等しい。
何回目かの動的繰り返し試験後(k回目)、中間土層J2が降伏状態となった場合には、まず、試験開始荷重(P0(k))に達した後、(P0(k)+δ)まで荷重が増大するのに時間がかかり、なかなか荷重が上がらないで変位が大きく増大していく。この時の荷重−変位曲線は勾配が急になる(図8(E)参照)。
さらに、中間土層J2が破壊した場合(m回目、図では降伏段階の次段として記載している)、荷重は破壊荷重Plをピークとして低下していき、地下水圧などのある圧力まで降下した時点で一定となる。変位は破壊荷重近くから急激に増大し(図8(B))、荷重−変位曲線は、図8(F)に示すように、圧力が低下してもさらに変位が増大するグラフ形状となる。
【0049】
上段および下段土層J1,J3の動的繰り返し荷重に対する変位のデータ、および中間土層J2の静的荷重に対する変位のデータを合わせて、動的繰り返し荷重に対する動的な変形特性を判断し、降伏点や破壊点等の強度を求める。
また、土層の液状化は剪断力が上下から作用する中間土層J2で生じるものと想定され、液状化が生じると、図8に示す測定データの変位が急激に大きくなるので液状化が生じたことが分かる。また、間隙水圧計150による間隙水圧が一定となることによっても液状化を検証でき、液状化が生じたかどうかを2重に検証することができる。
このように、本実施例2によれば、実施例1のようなねじりせん断試験や軸方向せん断試を行うことなく、上下段の土層への単純な圧縮荷重の交互載荷によってせん断力を中間土層に加えることができ、簡易な構成で、確実に、短時間に、かつ低コストで、精度の高い土層の動的特性試験を行うことができる。
【0050】
上記実施例2では、ゴムゾンデに静的な荷重を載荷する不動部を設けたが、不動部を設けないで上下の動的繰り返し荷重載荷部のみによって構成し、上下段土層の変形のみ注目してもよい。上下段土層の境界部には剪断力が作用しており、液状化が発生すると上下段土層に波及するからである。
また、動的繰り返し荷重を上下2段としたが、上下3段以上としてもよく、その場合には各動的繰り返し荷重載荷部の中間に不動部を設ければよい。
【0051】
動的繰り返し荷重としては、孔軸と直交する方向に載荷される圧縮荷重と、孔軸を中心とする回転方向に載荷されるねじりせん断荷重と、孔軸と平行方向に載荷されるせん断荷重の3つの荷重のうち、それぞれ単独に載荷することもできるし、少なくとも2種類の荷重を組み合わせた組み合わせて載荷することもできる。
【0052】
なお、上記実施例1,2では、ボーリング孔100を垂直に掘った場合を例にとって説明したが、たとえば水平に掘る場合や、斜めに掘った場合についても適用可能である。
また、測定用セルとしては、ゴムゾンデ110,1の代わりに、金属製の載荷板を油圧等によって加圧するピストンジャッキ等を用いてもよく、土層に応じて適切な測定用セルが選択される。
【実施例3】
【0053】
次に、本発明のボーリング孔を利用した原位置における地盤の液状化および動的特性試験装置の実施例3について説明する。
上記実施例2の試験装置は、ボーリング孔内に挿入される測定用セルが、互いに独立した加圧室を備えた複数のセル部に区分され、各セル部の加圧室内に充填される液体の液圧を制御して対応する土層に独立して荷重を載荷し、載荷した荷重と孔壁の変位を測定する構成となっている。セル部は、静的荷重を載荷する中間セル部と、中間セル部の上下に位置する上部動的セル部および下部動的セル部の3室構造で、中間土層を挟んで上下の土層に交互に動的な繰り返し荷重を載荷し、中間土層にどういう影響があるかを圧力と変位の関係から分析するようになっている。
【0054】
しかし、動的繰り返し荷重を載荷した影響は、中間土層だけでなく、上部動的セル部と下部動的セル部の上方および下方に隣接する土層にもおよんでいる。また、地盤によっては上下の動的セル部に隣接する部分が崩れて正確なデータが採取できない可能性がある。
また、各セル部を構成するゴム状弾性膜は消耗品で交換が必要となり、現場でのメンテナンス性も重要なテーマである。
この実施例3の課題は、上下の動的セル部の上方および下方隣接部についても動的繰り返し荷重の影響を測定可能とし、しかも土層の崩れを防止し得る構造の試験装置を提供することにある。
また、メンテナンス性のよい試験装置を提供することにある。
【0055】
図9は本発明の実施例3に係るボーリング孔を利用した地盤の液状化および動的特性試験装置の模式図である。
すなわち、ボーリング孔100内に挿入される測定用セル1が、静的荷重を載荷する中間セル部11と、中間セル部11の上下に位置し土層に対して動的繰り返し荷重を載荷する上部動的セル部12および下部動的セル部13を備えている。この上部動的セル部12の上方および下部動的セル部13下方に、土層に静的荷重を載荷して土層の崩れを押さえる上部ガードセル部14と下部ガードセル部15が設けられている。
【0056】
上記各セル部11,12,13,14,15は互いに独立した加圧室11a,12a,13a,14a,15aを備えており、加圧室内11a,12a,13a,14a,15aに充填される水の水圧を制御して対応する土層J1,J2,J3,J4,J5に独立して荷重を載荷し、載荷した荷重と孔壁の変位を測定するようになっている。
【0057】
各セル部11,12,13,14,15は、図10(A)に示すように、長さが異なるだけで基本的に同一構造で、円柱形状のセル本体31と、このセル本体31の外周に被着される筒状のゴム状膜部材32とを備え、セル本体31とゴム状膜部材32の間に液体が充填される加圧室11a,12a,13a,14a,15aが形成される構成となっている。ゴム状膜部材32は円筒形状で、上下両端にセル本体の端面に係合する環状の内向き突部32aが設けられている。各セル部の長さは、たとえば、全体を90cm程度とすると、中間セル部11,上部および下部ガードセル部15をそれぞれ10cm程度とし、上部,下部動的セル部14,15をそれぞれ30cm程度の割合で区分けしてもよいし、中間セル部11と上部および下部動的セル部12,13をそれぞれ均等に15cm程度とし、上部,下部ガードセル部14,15をそれぞれ22.5cm程度と大きめの割合で区分けしてもよく、荷重,土質等に応じて最適な寸法が選択される。
【0058】
各セル部11,12,13,14,15は互いに独立して交換可能に連結されている。この実施例では、セル本体31の中心に貫通孔31aが設けられ、この貫通孔31aに心棒16が串刺し状に挿通され、上端が心棒16に設けられたストッパ17に下方から突き当たり、下端がナット18によって締め付け固定されている。心棒16の上端にはボーリングロッドに固定するための継手部16aとなっている。
【0059】
隣り合う各セル本体31,31の間には薄肉の固定リング33が介装され、図10(C)に示すように、ゴム状膜部材32の端部に位置する内向き突部32aをシール板33とセル本体31の端面との間に軸方向に締め付け固定している。シール板33は円板形状で、その中心に心棒16が挿通される貫通孔33aが形成されている。
【0060】
また、ゴム状膜部材32の内向き突部32aの上下両側面には、セル本体31の端面に設けられた環状溝31bに係合する係合突起32bと、シール板33に設けられた環状突起33cに係合する係合溝32cが設けられている。
また、上部ガードセル部14は上部固定板34を介してストッパ部16aに当接し、下部ガードセル部15は下部固定板35を介してナット17に係合している。固定板34,35にも図示しないがゴム状膜部材32の内向き突部32aに設けられた係合突起32cが係合する環状溝が設けられている。
【0061】
セル本体31には、図10(A),(B),図11(B),(C)に示すように、各セル部11,12,13,14,15の加圧室内に充填するための通水路11b,12b,13b,14b,15bと、各加圧室11a,12a,13a,14a,15a内の圧力を検出する圧力検出器41,42,43,44,45に圧力を導入するための圧力導入路41a,42a,43a,44a,45aが設けられている。上部固定板34には、5つの圧力検出器41,42,43,44,45と、5つの通水路11b,12b,13b,14b,15bのポートとが設けられている。図10(A)は各セル部に対応する通水路,圧力導入路を含む面で断面としたもので、各セル部で断面の位相が異なる。各ポートにはポンプユニットに連結するためのパイプが接続され、各圧力検出器41,42,43,44,45には電気信号を送信するための電線が接続される。この圧力検出器41,42,43,44,45は、まとめて一つのユニット部品としておくことが好ましい。
【0062】
下位のセル部への通水路および圧力導入通路は上位のセル部のセル本体を通過する構成で、最上位の上部ガードセル部14のセル本体32には、5つの通水路11b,12b,13b,14b,15bと、5つの圧力導入路41a,42a,43a,44a,45aが設けられ、以下、下位のセル部については順番に通水路および圧力導入路が一つずつ減っていき、最下位の下部ガードセル部15のセル本体32には1つの通水路15bと一つの圧力導入路45aが設けられている。
【0063】
また、上下のセル部を跨って延びる通水路および圧力導入路の場合には、図10(C)に示すように、上位のセル本体32と下位のセル本体32の通水路13bおよび圧力導入路(不図示)が、シール板33に設けられた接続ポート33dを介して接続されている。シール板33と上下のセル本体32,32端面との隙間は、接続ポート33dの上下開口部は取り囲むように配置されるOリング等のシール部材33eによってシールされる。また、各通水路および圧力導入路間の位置決めを行うために、一方のセル本体32の端面には位置決めピン33fが突設され、他方のセル本体32の端面には位置決めピン33fが差し込まれるピン穴33gが設けられている。
【0064】
また、中間セル部11によって荷重が載荷される中間土層J1の液状化の発生を検証するために、図11(A),(D)に示すように、中間セル部11に対応する土層の間隙水圧を検出する間隙水圧検出器20を設けることができる。図示例では、間隙水圧検出器20は上部固定板34に設けられ、中間セル部11表面を構成するゴム状膜部材31に圧力導入口21が設けられ、圧力導入口21と間隙水圧検出器20間が圧力導入路22によって接続されている。圧力導入口21には異物の進入を阻止するためにポーラスストーン等が装着される。この間隙水圧検出器20についても、圧力検出器41〜45と一緒にまとめて一つのユニット部品とすることができる。
間隙水圧検出器20の構造は、検出器の受圧部自体を中間セル部11に配置し、電線を測定用セル内を通すようにしてもよいし、無線方式としてもよく、必要に応じて種々の構成を採用することができる。
【0065】
図12は上記測定用セル1を制御する制御構成の一例を示している。
すなわち、各セル部11,12,13,14,15の加圧室11a,12a,13a,14a,15aに水を送り込む5つのポンプユニット51,52,53,54,55と、ポンプユニット51,52,53,54,55を駆動するための高圧のボンベやコンプレッサ等の空圧源60と、空圧源60からの空気圧を調圧する調圧器57と、各ポンプユニット51および調圧器57を制御する制御ボックス58と、各ポンプユニット51,52,53,54,55に対応する水タンク59と、制御ボックス58に電気的に接続され計測データの処理,表示等を行う専用ソフトが組み込まれたコンピュータ50と、を備えている。各ポンプユニット51,52,53,54,55はそれぞれのフレームに組み付けられ、上下5段に段積みして用いられる。水タンクは一つでもよい。
【0066】
図13にはポンプユニットの構成例を例示している。各ポンプユニット51,52,53,54,55はすべて同一の構成なので、ここでは一つのポンプユニット51についてのみ説明し、他のポンプユニットについての説明は省略する。
すなわち、ポンプユニット51は、図13(A)に示すように、一対の第1シリンダ71と第2シリンダ72のシリンダロッド73が連結され、各シリンダ71,72のシリンダロッド73に対して反対側のシリンダ室内に水が収納され水室71a,72aとなっている。第1シリンダ71の水室71aは第1水路81を通じて測定用セルの対応する通水路に接続され、第1水路81には水路を開閉する第1開閉弁91が設けられている。また、水室71aは第1水路81から分岐する第2水路82を介して水タンク59にも接続され、第2水路82には水路を開閉する第2開閉弁92が設けられている。
【0067】
また、他方の第2シリンダ72の水室72aが第3水路83を通じて測定用セル1の対応する通水路に接続され、第3水路83には水路を開閉する第3開閉弁93が設けられている。また、水室72aは第3水路83から分岐する第4水路84を通じて水タンク59に接続され、第4水路84には水路を開閉する第4開閉弁94が設けられている。
第1水路81と第3水路83はそれぞれ第1開閉弁91および第3開閉弁93の下流側にて合流し、第1−第3合流水路85を通じて測定用セル1側に接続される。第2水路82と第4水路84は第2開閉弁92と第4開閉弁94の下流側にて合流し、第2−第4合流水路86を通じて水タンク59に接続される。
第1開閉弁91と第3開閉弁93は空圧源60から供給される空気圧によって駆動されるもので、駆動用の空気圧は、図13(B)に示すように、第1バルブ制御用電磁弁96によって開閉駆動される。第2開閉弁92と第4開閉弁94も空気圧によって駆動されるもので、図13(C)に示すように、第2バルブ制御用電磁弁97によって開閉駆動される。
【0068】
また、第1シリンダ71および第2シリンダ72のロッド側のシリンダ室は空気室71b,72bとなっており、この空気室71b,72bにシリンダ駆動用電磁弁74および第1通気路76,第2通気路77を通じて空気圧が選択的に導入される。シリンダ駆動用電磁弁は5ポート3位置制御の制御弁で、第1シリンダ加圧位置と、中立位置と、第2シリンダ加圧位置の3つの制御位置を備えている。
第1シリンダ加圧位置は、1シリンダ71の空気室71bに導入し第2シリンダ72の空気室72b内の空気を排気する。第2シリンダ加圧位置は、空気圧を第2シリンダの空気室72bに導入し第1シリンダ71の空気室71b内の空気を排気する。
【0069】
たとえば、測定用セル1の加圧室を加圧する場合には、シリンダ駆動用電磁弁74を第1シリンダ加圧位置に切り換えると共に、第1バルブ制御用電磁弁96をオン、第2バルブ制御用電磁弁96をオフとし、第1開閉弁91と第4開閉弁94を開き、第2開閉弁92と第3開閉弁93を閉じる。コンプレッサ等の空圧源からは第1通気路76を通じて第1シリンダ71の空気室71bに空気圧が供給され、第1シリンダ771の水室71aが圧縮される。第2,第3開閉弁92,93は閉じているので、第1シリンダ71の水室71a内の水は第1通水路81および第1−第3合流水路85を通じて測定用セル1の加圧室に流入して加圧室を加圧する。このとき、他方の第2シリンダ72の水室72aは容積が拡張するので、第2−第4合流水路86および第4合流水路84を通じて水タンク59から水が吸引されて流れ込む。
【0070】
次いで、シリンダ駆動用電磁弁74を第2シリンダ加圧位置に切り換えると共に、第1バルブ制御用電磁弁96をオフ、第2バルブ制御用電磁弁96をオンとし、第1開閉弁91と第4開閉弁94を閉じ、第2開閉弁92と第3開閉弁93を開く。コンプレッサ等の空圧源60からは第2通気路77を通じて第2シリンダ72の空気室72bに空気圧が供給され、第2シリンダ72の水室72aが圧縮される。第1,第4開閉弁91,94は閉じているので、第2シリンダ72の水室72a内の水は第3水路83および第1−第3合流水路85を通じて測定用セル1の加圧室に流入し加圧室を加圧する。このとき、他方の第1シリンダ71の水室71aは容積が拡張するので、第2−第4合流水路86および第2水路82を通じて水タンク59から水が吸引されて流れ込む。
この動作を繰り返すことで、徐々に測定用セル内の加圧室の圧力を増大させていく。
【0071】
測定用セル1の加圧室内の圧力を減少させる場合には、シリンダ駆動用電磁弁74を切換えて第2シリンダ72の空気室に空気圧を供給する。すると、シリンダロッド73は図中右側に移動し、測定用セル1の加圧室内の水が吸引されて第1シリンダ71の水室内に戻り、第2シリンダ72の水室内の水がタンク59内に戻される。
測定用セル1の加圧室を減圧する場合には、シリンダ駆動用電磁弁74を第2シリンダ加圧位置に切り換えると共に、第1バルブ制御用電磁弁96をオン、第2バルブ制御用電磁弁96をオフとし、第1開閉弁91と第4開閉弁94を開き、第2開閉弁92と第3開閉弁93を閉じる。コンプレッサ等の空圧源60からは第2通気路77を通じて第2シリンダ72の空気室72bに空気圧が供給され、第2シリンダ72の水室72aが圧縮される。第2,第3開閉弁92,93は閉じているので、第2シリンダ72の水室72a内の水は第4通水路84および第2−第4合流水路86を通じて水タンク59に戻される。
【0072】
このとき、他方の第1シリンダ71の水室71aは容積が拡張するので、第1−第3合流水路85および第1合流水路81を通じて測定用セル1の加圧室内の水が吸引されて水室71a内に流れ込む。
次いで、シリンダ駆動用電磁弁74を第1シリンダ加圧位置に切り換えると共に、第1バルブ制御用電磁弁96をオフ、第2バルブ制御用電磁弁96をオンとし、第1開閉弁91と第4開閉弁94を閉じ、第2開閉弁92と第3開閉弁93を開く。コンプレッサ等の空圧源60からは第1通気路76を通じて第1シリンダ71の空気室71bに空気圧が供給され、第1シリンダ71の水室71aが圧縮される。第1,第4開閉弁91,94は閉じているので、第1シリンダ71の水室71a内の水は第2水路82および第2−第4合流水路86を通じて水タンク59内に戻される。このとき、他方の第2シリンダ72の水室72aは容積が拡張するので、第1−第3合流水路85および第3水路83を通じて測定用セル1の加圧室内の水が吸引されて流れ込む。
この動作を繰り返すことで、徐々に測定用セル1内の加圧室の圧力を減少させていく。
【0073】
また、各ポンプユニットには、シリンダロッド73のストロークを検出するストロークセンサ75が設けられ、このストロークセンサ75によってシリンダロッド73のストロークから、測定用セル1の加圧室に流出入する水の量を演算するようになっている。加圧時には第1,第2シリンダ71,72のストローク量を加算し、減圧時には第1,第2シリンダ71,72のストローク量を減算して、測定用セルに流出入する水量の変化を演算し、水量の変化から孔壁の変位を演算する。
ポンプユニットによる加圧,減圧の制御は、目標とする圧力の変動曲線を時系列に設定し、所定時間毎に目標とする圧力となるように、圧力検出器からの検出データをフィードバックして電磁弁74,96,97の開閉タイミングを制御する。
圧力は、段階的に基準圧力を大きくし、各段階毎に基準圧力を中心として上下に周期的に変動するように設定する。波形は正弦波的に変動するように設定してもよいし、矩形波状に変動するように設定してもよいし、必要に応じて種々の波形を設定可能である。コンピュータは、圧力検出器からの検出データをフィードバックして電磁弁74,96,97の開閉タイミングを演算して開閉の指令信号を発し、加圧する際には上記加圧動作を、減圧する際には減圧動作をして変動曲線に倣って圧力制御をする。
【0074】
制御の方式としては、圧力をフィードバックするのではなく、ストロークを基準にして制御するようにしてもよい。
【0075】
なお、減圧時に急激に圧力が低下すると水中に気泡が発生して応答が悪くなるので、速度(流量)をコントロールするために、図16に示すように、第1−第3合流水路85と第2−第4合流水路86に逆止弁61付きの絞り弁62を配置してもよい。逆止弁61と絞り弁62は並列に配置される。
測定用セル1に通じる第1−第3合流水路85に配置する逆止弁61は、測定用セル1への流入方向には流通を許容し、測定用セル1からの流出方向には流通を阻止する構成となっている。したがって、流出する際には絞り弁62によって絞られ、流入する際には逆止弁61が絞り弁62のバイパス通路となってスムースに流入する。
一方、水タンク59に通じる第2−第4合流水路86に配置する逆止弁61は、水タンク59に戻る方向の流通が阻止され、吸引する方向の流通を許容する。したがって、水タンク59に戻す際には絞り弁62によって絞られ、水タンク59から吸引する際には逆止弁61がバイパス通路となってスムースに吸引される。
【0076】
また、シリンダ駆動用電磁弁74と各第1,第2シリンダ71,72間の第1,第2通気路76,77に逆止弁61付きの絞り弁62を配置するようにしてもよい。逆止弁61は、各空気室71b,72bに流入する方向の流通は許容し、流出する方向の流通は阻止するように配置すればよい。
また、この実施例では、所定の動的繰り返し荷重の圧力変化となるように、第1,第2シリンダ71,72を駆動制御するようになっているが、図16に示すように、第1−第3合流水路85に繰り返し荷重用シリンダ63を接続し、第1,第2シリンダ71,72によって所定圧まで加圧した段階で停止し、繰り返し荷重用シリンダ63を周期的に往復移動させることにより、動的繰り返し荷重を作用させることも可能である。このシリンダ63の往復移動は機械的に加圧するような構成とすることもできる。
【0077】
以下、具体的な試験手順を説明する。
ボーリング孔100を検査すべき地層の深さまで掘削し、ボーリングロッド101によって測定用セル1をボーリング孔100内の所定深さ位置まで挿入する。
まず、中間セル部11、上下の動的セル部12,13および上下のガードセル部14,15の加圧室11a,12a,13a,14a,15aすべてにゴム状膜部材32が密着するまで加圧する。
次に、中間セル部11と上部ガードセル部14および下部ガードセル部15に同じ圧力で加圧する。
次いで、上部動圧セル部12および下部動圧セル部13の加圧室12a,13a内の水を交互に繰り返し加圧し、各圧力検出器41,42,43,44,45および各ポンプユニット41の流量センサ75からの検出信号をコンピュータ50に読み込み、加圧室内の圧力と孔壁の変位量をモニタに表示する。同時に中間セル部11に設けた間隙水圧検出器20からの信号もコンピュータ50に読み込む。
【0078】
上部,下部動的セル部12,13で0.1〜1Hz前後の周波数で繰り返し動的圧力を側的に作用させることで、動的圧力Pと変位rの関係から、動的強度および変形特性を掴むことが可能である。
上部,下部動的セル部12,13で動的圧力を繰り返しかけることで、図14に示すように、中間セル部11の側壁部にはP12,P13>P11の圧力が生じ、P12,P13の圧力が大きくなり土層J1に降伏、破壊現象が生じると、中間セル部11を押し付ける現象が出る。地盤によっては、P12,P13<P11となって、図中点線で示すように中間セル部11の変位が拡大する現象がでる。したがって、中間セル部11のマイナス変位あるいはプラス変位変化を記録、モニタすることで、側壁部の土層J1の動的強度特性あるいは変形特性がつかめることになる。また、これが砂土層であれば間隙水圧がの上昇すると同時に急激に土層の破壊が生じ、これを液状化現象とみなすことも可能と思量される。本発明は間隙水圧検出器20によって土層J1の間隙水圧を直接モニタしているので、この間隙水圧のデータと動的圧力と変位のデータとの相関関係、たとえば急激に変位が増大し破壊が生じたと思われる時点での間隙水圧の変化を見ることにより、土層の液状化についての有益なデータとして活用することができる。
【0079】
図15は実際の試験結果を示している。この試験結果によれば、240秒後にマイナス変位に転じており、この時点で破壊が開始したものと思量される。
測定後に中間セル部11に静的圧力をかけて破壊後の強度を求めることで、粘性土であれば疲労による強度低下を掴むことができ、砂土層であれば、液状化後の残留強度測定が可能と思量される。
【0080】
上部および下部ガードセル部14,15でも、その変位変化を記録、モニタし、中間セル部11のデータと比較することで、測定結果の関連性・裏付け・土質の一様性などが検討でき、応用範囲が広がる。
【0081】
図17は本発明の実施例3の変形例を示している。
基本的な構成は実施例3と同一なので、以下の説明では主として実施例3と異なる点についてのみ説明するものとする。同一の構成部分については同一の符号を付して説明を省略する。
この例では、水タンク359を目盛り付きのパイプ状のタンクで、測定用セル1の加圧室に流出入する水量の変化を、ストロークセンサ75の他に目視でも測定可能としたものである。このようにすれば、オペレータは水面の動き監視することにより、孔壁の土層の変位(測定用セル1のゴム状膜部材の変位)を直感的に把握することができる。また、水位変化を監視するセンサ365を設け、コンピュータ50に水位情報を送信し、ストロークセンサ75によって検出される流量と対比させることにより、検出データの信頼性を高めることができる。図示例では、水位を監視するセンサ356は圧力センサで、水タンク359の底部に配置し、水面の高さに応じた水圧を検出するようになっている。もっとも、水位を検出できればよく、水面に浮かぶフロートを利用して水面の位置を検出するようにしてもよいし、その他、公知の種々のセンサを利用可能である。
【0082】
さらに、ポンプユニットから測定用セル1に供給する供給路に圧力値を目視可能な圧力計360を設け、圧力計をタンク359上部に配置すれば、供給圧変化と水タンク59の水位変化を直接目で確認することができ、供給圧と孔壁の土層の変位(測定用セル1のゴム状膜部材の変位)を直感的に把握することができる。圧力計360は圧力に応じて針が動くアナログ式でもよいし、ディジタル式のものでもよい。
圧力計360で検出された供給圧のデータはコンピュータ50に送信し、加圧室内の圧力と対比することにより、測定用セル1に通じるパイプの影響等を検討することができ、圧力の検出データについての信頼性も高めることができる。
また、測定用セル1の各加圧室の圧力についても、直接目で確認できるように、測定用セル1に圧力検出用のパイプ361を取り付けて地上に引き出し、このパイプ361に圧力値を目視可能な圧力計362を設け、圧力計362を供給圧検出用の圧力計360と並べて水タンク359上部に配置するようにしてもよい。このようにすれば、測定用セル1への供給圧と加圧室内の圧力をタンク359の水位変化と共に目視で同時に監視することができる。この圧力計362で検出された加圧室内の圧力データについてもコンピュータ50に送信し、供給圧と対比することにより、検出データの信頼性を高めることができる。
なお、この実施例3の試験装置は、上部,下部動的セル部12,13によって静的荷重を載荷することで、通常の「孔内水平載荷試験」を行うことも可能である。この際に、中間セル部11の孔壁周囲の土層には、上部,下部動的セル12,13からの静的な圧縮力が作用し、一種の一軸圧縮試験的な要素も合わせて検討可能であり、静的な載荷試験から動的な載荷試験まで汎用的に利用することができる。また、この実施例3ではポンプユニットを用いて動的繰り返し荷重を制御するようになっているが、圧力を制御するサーボ弁を用いて動的繰り返し荷重を制御するようにしてもよい。
【0083】
また、本発明の試験装置の複数の加圧室を備えた測定用セルの代わりに、加圧室が一つの従来の「水平載荷試験」の測定用セルを取り付けることも可能である。
本発明のポンプユニット,制御ボックスおよびコンピュータを一式とする制御装置を、既存の水平載荷試験装置にそのまま取り付けることで、従来は手動で行われていた水平載荷試験の自動化を図ることができるという利点もある。全自動の水平載荷試験装置も製品として存在するが、高額であり、手動の試験装置を処分してまで全自動の試験装置に切り替えるところまでいたっていない。本発明の試験装置の制御装置に、既存の水平載荷試験装置の測定用セルおよびタンクをつなげれば、水平載荷試験装置の全自動化を図ることができ、既存の装置も活用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によれば、地下のサンプルを取り出すことなく、原位置で試験できるので、自然状態での土層の動的繰り返し荷重に対する強度および変形特性を求めることができる。特に、非常にゆるい砂層あるいは礫などの混入でサンプリングが不可能な土層、砂礫層など粒径の大きい土層または風化岩、軟岩などでも測定が可能であり、利用範囲が広がる。また、従来のサンプル試験に対して短時間で試験が可能なために、経済的である。
特に、ボールリング孔の孔壁の孔軸方向の複数の領域に交互に動的繰り返し圧縮荷重を載荷することにより、載荷領域の境界部に実際の地震の横揺れに似た形の繰り返しせん断力を加わえることができ、動的繰り返し圧縮荷重に対する特性と同時に、せん断力に対する特性についても試験することができる。液状化はせん断力によって生じやすくなるので、液状化の判定に有効である。境界部が崩れると圧縮荷重載荷領域にも液状化が拡がり、変位が大きく変化するため液状化が判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1(A)は本発明の実施例1に係るボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験装置の概略構成を示す図、図1(B)は圧力制御弁の制御構成を示す図である。
【図2】図2(A)は図1の圧力制御弁による出力例を示す図、同図(B)は図1の試験結果のモデルを示すグラフである。
【図3】図3は図1の試験結果モデルの他のグラフである。
【図4】図4(A)乃至(E)は本発明の実施例2に係るボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験方法を示す説明図である。
【図5】図5は図4のゴムゾンデの機能説明図である。
【図6】図6は図5のゴムゾンデの概略構成図である。
【図7】図7は本発明の実施例2に係るボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験装置の構成例を示す説明図である。
【図8】図8(A)乃至(F)は中間土層の静的強度試験の試験結果モデルを示すグラフである。
【図9】図9は本発明の実施例3に係るボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験装置の測定用セルの機能説明図である。
【図10】図10は図9の測定用セルの構成を示すもので、同図(A)は縦断面図、同図(B)は上面図、同図(C)は接続部の部分拡大断面図である。
【図11】図11(A)は図10の測定用セルの正面図、同図(B)は上部ガードセル部の通水路を断面にして示した断面図、同図(C)は上部動圧セル部の通水路を断面に示して示す断面図、同図(D)は間隙水圧検出装置の構成例を示す断面図である。
【図12】図12は本発明の試験装置の概念図である。
【図13】図13は図12の試験装置のポンプユニットの回路構成図である。
【図14】図14は試験中に孔壁に載荷される荷重状態を模式的に示す図である。
【図15】図15は試験結果を示すグラフである。
【図16】図16は図13の回路構成の変形例を示す図である。
【図17】図17は本発明の実施例3の変形例に係る地盤の液状化および動的特性試験装置の概念図である。
【符号の説明】
【0086】
201 ゴムゾンデ(測定用セル)、202 水タンク(液体タンク)、203 水(液体)、
204 圧力供給部、205 圧力制御弁、206 連結管、
207 コンピュータ、
209トルク発生装置、210 変位検出部、
211 せん断荷重発生装置、212 変位検出部
100 ボーリング孔
110 ゴムゾンデ
111,112,113 第1,第2,第3室
121,122,123 第1,第2,第3圧力調整部
114 本体部、115 ゴム部材、116 締め付け部材
120A ガスボンベ、120B ガスタンク
121C,123C 水圧シリンダ
121D,123D バルブ
121E,123E バルブ
122C 水タンク122C、122D 圧力制御弁
J1 上段土層、J2 中間土層、J3 下段土層
150 間隙水圧計
100 ボーリング孔
1 測定用セル
11 中間セル部、
12 上部動的セル部、
13 下部動的セル部
14 上部ガードセル部
15 下部ガードセル部
11a 加圧室、11a 加圧室 12a 加圧室、13a 加圧室,14a 加圧室,15a 加圧室
J1,J2,J3,J4,J5 土層
31 セル本体
32 ゴム状膜部材
33 シール板
32a 内向き突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に設けたボーリング孔の孔壁の試験対象土層に動的繰り返し荷重を載荷して孔壁の変位を測定し地盤の動的特性を求めることを特徴とするボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験方法。
【請求項2】
ボーリング孔の孔壁の孔軸方向の複数の領域に交互に動的繰り返し荷重を載荷することにより、荷重の載荷領域の中間土層に孔軸と交差する方向のせん断力を交互に繰り返し作用させることを特徴とする請求項1に記載のボーリング孔を利用した原位置における地盤の液状化および動的特性試験方法。
【請求項3】
動的繰り返し試験を行った中間土層に静的な荷重を載荷して強度を測定する請求項2に記載のボーリング孔を利用した原位置における地盤の液状化および動的特性試験方法。
【請求項4】
ボーリング孔の孔壁の一つの領域に交互に振動または動的繰り返し荷重を載荷し、繰り返し加重の大きさ,振動または繰返し回数および変位の関係から、地盤の動的特性を知る請求項1に記載のボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験方法。
【請求項5】
動的繰り返し荷重は、孔軸と直交する方向に載荷される圧縮荷重と、孔軸を中心とする回転方向に載荷されるねじりせん断荷重と、孔軸と平行方向に載荷されるせん断荷重の3つの荷重のうちの一つ、または少なくとも2種類の荷重を組み合わせた組み合わせ荷重である請求項1または4に記載のボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験方法。
【請求項6】
地盤に設けたボーリング孔内に挿入されると共に圧力媒体の圧力によって孔壁を押圧する測定用セルと、該測定用セル内の圧力媒体の圧力を周期的に変動させることが可能な圧力調整手段と、前記孔壁の変位を検出するための変位検出手段と、を備えていることを特徴とするボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験装置。
【請求項7】
測定用セルはボーリング孔の孔軸方向に沿って孔壁を押圧する複数の室に区分され、圧力調整出段は複数の室内の圧力媒体に交互に動的繰り返し圧力を加える請求項6に記載のボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験装置。
【請求項8】
圧力調整手段は、中間室を隔てて上下の室には交互に動的繰り返し圧力を加え、中間室には静的な圧力を加える請求項7に記載のボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験装置。
【請求項9】
測定用セルを孔壁に密接させた状態で測定用セルに孔軸回りに動的繰り返し荷重を加えるトルク発生手段と、該トルク発生手段によって加えた動的繰り返し荷重による孔壁の回転変位を検出する変位検出手段と、を備えていることを特徴とする請求項6に記載のボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験装置。
【請求項10】
測定用セルを孔壁に密接させた状態で測定用セルに孔軸と平行方向に動的繰り返し荷重を加えるせん断荷重発生手段と、せん断荷重による孔壁の軸方向変位を検出する変位検出手段と、を備えていることを特徴とする請求項6または9に記載のボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験装置。
【請求項11】
ボーリング孔内に挿入される測定用セルが、互いに独立した加圧室を備えた複数のセル部に区分され、各セル部の加圧室内に充填される液体の液圧を制御して対応する土層に独立して荷重を載荷する構成で、
セル部は、静的荷重を載荷する中間セル部と、該中間セル部の上下に位置し土層に対して動的繰り返し荷重を載荷する上部動的セル部および下部動的セル部を備えたボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験装置において、
前記上部動的セル部の上方および下部動的セル部下方に、土層に静的荷重を載荷する上部ガードセル部と下部ガードセル部を設けたことを特徴とするボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験装置。
【請求項12】
測定用セルは、中間セル部に対応する土層の間隙水圧を検出する間隙水圧検出手段を備えている請求項11に記載のボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験装置。
【請求項13】
間隙水圧検出手段は、中間セル部表面を構成するゴム状膜部材に圧力導入部を備えている請求項12に記載のボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験装置。
【請求項14】
ボーリング孔内に挿入される測定用セルが、互いに独立した加圧室を備えた複数のセル部に区分され、各セル部の加圧室内に充填される液体の液圧を制御して対応する土層に独立して荷重を載荷するボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験装置において、各セル部は互いに独立して交換可能に連結されていることを特徴とするボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験装置。
【請求項15】
各セル部は、セル本体と、該セル本体の外周に被着される筒状のゴム状膜部材とを備え、セル本体とゴム状膜部材の間に液体が充填される加圧室が形成される構成となっている請求項14に記載のボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験装置。
【請求項16】
各セル本体の間にはゴム状膜部材の端部が密接するシール板が介装されている請求項15に記載のボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験装置。
【請求項17】
加圧室内の液圧を加圧する手段は液体を加圧するシリンダを備え、シリンダロッドのストロークを検出するストローク検出手段を設け、シリンダストロークから荷重を載荷した土層の孔壁の変位を測定する構成となっている請求項11または14に記載のボーリング孔を利用した原位置での地盤の液状化および動的特性試験装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【国際公開番号】WO2005/066421
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【発行日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516784(P2005−516784)
【国際出願番号】PCT/JP2004/005970
【国際出願日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(501284044)株式会社マスダ技建 (2)
【Fターム(参考)】