説明

ボールねじ装置およびそれを備えた電動パワーステアリング装置

【課題】 ボールねじ装置の組付け工程内で、ボールねじシャフトとボールナットとの間に適正な与圧を簡単に付与できるようにしたボールねじ装置およびそれを備えた電動パワーステアリング装置を提供すること。
【解決手段】 電動パワーステアリング装置10のボールねじ装置13は、ラックシャフト12に一体に設けられたボールねじシャフト12bと、モータシャフト36に装着されボールねじシャフト12bに循環ボール21を介してそれぞれ螺合する第1および第2のボールナット23、24と、モータシャフトに螺合され第1および第2のボールナットをモータシャフトの端面に締付ける締付けナット48と、第2のボールナットの外周と締付けナットの内周との間に介在され締付けナットの締付けにより第1および第2のボールナット間に所定の相対回転トルクを付与するトルク付与手段51とによって構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじシャフトに循環ボールを介して螺合する一対のボールナットを供えたボールねじ装置およびそれを備えた電動パワーステアリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電動パワーステアリング装置は、ステアリングシャフトの回転によって軸方向移動されるラックシャフトと、ステアリングシャフトに発生する操舵トルクに基づいてモータシャフトを回転駆動する電動モータと、モータシャフトの回転運動をラックシャフトの軸方向運動に変換するボールねじ装置とを備えている。
【0003】
この種の電動パワーステアリング装置においては、ベルジャン路等、段差のある路面を走行した際に、タイヤ側よりラックシャフトを強制振動させる外力が入力され、クリアランスをもつボールねじ装置を発生源としてガタガタ音が発生する。また、ボールねじ装置において発生した振動がギヤハウジングから車両に伝わり、車室内で異音となる。
【0004】
このような問題に対処するために、従来、例えば特許文献1に記載されているようなボールねじ装置を備えた電動パワーステアリング装置が知られている。かかる電動パワーステアリング装置のボールねじ装置は、ラックシャフトの外周に形成された雄ねじ軌条(ボール転動溝)とボールナットの内周に形成された雌ねじ軌条(ボール転動溝)との間に複数のボールを転動可能に備え、これら雄ねじ軌条と雌ねじ軌条のピッチ間隔を異ならせることにより、操向車輪が左右いずれの方向にも転舵されていない操舵の中立状態において、雄ねじ軌条、雌ねじ軌条およびボール間の隙間がほぼ0となるように与圧を付与している。
【特許文献1】特開2001−114117号公報(段落番号0028〜0030、図1〜図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1に記載のものにおいては、雄ねじ軌条と雌ねじ軌条との間で循環ボールに遊びが生じないように与圧を与えることは可能である。そのためには、雄ねじ軌条および雌ねじ軌条を加工するにあたってピッチ、よろめき、転動面形状を加工誤差なく高精度に加工する必要があり、これらが高精度に加工できない場合には、与圧にばらつきが生じ、循環ボールがガタついて異音を発生したり、循環ボールが雄ねじ軌条および雌ねじ軌条内をなめらかに転動せず、操舵感覚を阻害する虞れがあった。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたもので、ボールねじ装置の組付け工程内で、ボールねじシャフトとボールナットとの間に適正な与圧を簡単に付与できるようにしたボールねじ装置およびそれを備えた電動パワーステアリング装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、外周面にボール転動溝をらせん状に形成したボールねじシャフトと、内周面にボール転動溝をそれぞれらせん状に形成し前記ボールねじシャフトに循環ボールを介してそれぞれ螺合する第1および第2のボールナットと、これら第1および第2のボールナットを装着したナット装着部材と、該ナット装着部材に螺合され前記第1および第2のボールナットを前記ナット装着部材の端面に締付ける締付けナットを備えたボールねじ装置において、前記締付けナット側に位置する前記第2のボールナットの外周と前記締付けナットの内周との間に介在され前記締付けナットの締付けにより前記第1および第2のボールナット間に所定の相対回転トルクを付与するトルク付与手段を設けたことを特徴とするボールねじ装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、トルク付与手段は、前記第2のボールナットの外周と前記締付けナットの内周との間に介在されたスリップリングからなり、前記締付けナットによる前記第2のボールナットの締付け時に、前記スリップリングにより前記第2のボールナットに所定の回転トルクを付与し、所定の回転トルクを越えると前記締付けナットと第2のボールナット間でスリップを生じさせるようになっているボールねじ装置である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、ギヤハウジングと、該ギヤハウジングに軸方向に移動可能に貫挿されラックピニオン機構を介して入力軸に連結されるラックシャフトと、電動モータと、該電動モータの回転出力を前記ラックシャフトの軸方向運動に変換するボールねじ装置とを備えた電動パワーステアリング装置において、前記ボールねじ装置は、前記ラックシャフトに一体に設けられたボールねじシャフトと、前記電動モータによって回転されるナット装着部材に装着され前記ボールねじシャフトに循環ボールを介してそれぞれ螺合する第1および第2のボールナットと、前記ナット装着部材に螺合され前記第1および第2のボールナットを前記ナット装着部材の端面に締付ける締付けナットと、該締付けナット側に位置する前記第2のボールナットの外周と前記締付けナットの内周との間に介在され前記締付けナットの締付けにより前記第1および第2のボールナット間に所定の相対回転トルクを付与するトルク付与手段とによって構成したことを特徴とする電動パワーステアリング装置である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項3において、前記電動モータは、前記ラックシャフトと同軸的に前記ギヤハウジング内に配置され、前記ナット装着部材は、前記電動モータのモータシャフトを構成している電動パワーステアリング装置である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、締付けナット側に位置する第2のボールナットの外周と締付けナットの内周との間に締付けナットの締付けにより第1および第2のボールナット間に所定の相対回転トルクを付与するトルク付与手段を設けたので、単に締付けナットによるボールナットの締付けによって第1のボールナットと第2のボールナットとの間に所定の相対回転トルクを付与することができる。従って、ボールねじ装置に適正な与圧を簡単に付与することができるようになり、ボールねじ装置の生産性を向上できるとともに、生産コストを低減することができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、トルク付与手段は、第2のボールナットの外周と締付けナットの内周との間に介在されたスリップリングからなり、締付けナットによる第2のボールナットの締付け時に、スリップリングによって第2のボールナットに所定の回転トルクを付与し、所定の回転トルクを越えると締付けナットと第2のボールナット間でスリップを生じさせるようになっているので、第2のボールナットの外周と締付けナットの内周との間にスリップリングを介在させるだけのきわめて簡単な構造で、第1のボールナットと第2のボールナットとの間に適正な相対回転トルクを付与することができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、電動パワーステアリング装置のボールねじ装置を、ラックシャフトに一体に設けられたボールねじシャフトと、ナット装着部材に装着されボールねじシャフトに循環ボールを介してそれぞれ螺合する第1および第2のボールナットと、ナット装着部材に螺合され第1および第2のボールナットをナット装着部材の端面に締付ける締付けナットと、該締付けナット側の第2のボールナットの外周と締付けナットの内周との間に介在され締付けナットの締付けにより第1および第2のボールナット間に所定の相対回転トルクを付与するトルク付与手段とによって構成したので、電動パワーステアリング装置のボールねじ装置に適正な与圧を簡単に付与することができるようになる。従って、タイヤ側より入力される振動による異音の発生を防止することができ、しかも、ボールねじ装置の通常の組付け工程によって適正な与圧を付与できるので、電動パワーステアリング装置の生産性を向上でき、生産コストを低減することができる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、電動モータは、ラックシャフトと同軸的にギヤハウジング内に配置され、ナット装着部材は、電動モータのモータシャフトを構成しているので、電動モータ同軸タイプの小形の電動パワーステアリング装置のボールねじ装置に適正な与圧を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明の第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1および図2において、10は電動パワーステアリング装置を示し、この電動パワーステアリング装置10は、車両の左右方向に延在して配設されるアルミ合金製のギヤハウジング11を備え、このギヤハウジング11にラックシャフト12、ボールねじ装置13、入力軸14および電動モータ15等が組込まれている。
【0016】
ギヤハウジング11は、中空円筒状に形成されたモータハウジング16と、モータハウジング16の両端に同軸上に嵌合されたそれぞれ中空円筒状に形成されたラックハウジング17,18からなり、モータハウジング16とラックハウジング17,18はボルト等によって一体的に結合されている。なお、ギヤハウジング11は、ラックハウジング17,18に形成された取付け部17a,18aを介して、図略の車体フレームに支持されるようになっている。
【0017】
ギヤハウジング11には、ラックシャフト12が貫挿され、ラックシャフト12の一端外周にはラック歯12aが形成されている。ラック歯12aは、ステアリングホイール19から操舵力が伝達される入力軸14の先端に刻設されたピニオンギヤ20と噛合し、このピニオンギヤ20の回転によってラックシャフト12が軸方向(図の左右方向)へ移動される。
【0018】
ラックシャフト12の他端外周には、ボールねじ装置13を構成するボールねじシャフト12bが一体に形成されている。ラックシャフト12の両端は図示してないが、タイロッドおよびナックルアームを介して操向車輪に連結され、ラックシャフト12の軸方向移動により操向車輪が左右に操向されるようになっている。
【0019】
電動モータ15は、ボールねじ装置13を介してラックシャフト12に軸方向のアシスト力を付与するもので、ロータを構成するモータシャフト36とステータ37とから構成され、ラックシャフト12と同軸的に配置されている。モータシャフト36は中空円筒状に形成され、その一端はラックハウジング17の一端内周に装着された複列アンギュラ玉軸受38に回転可能に支持され、他端はモータハウジング18の内周に装着された玉軸受39に回転可能に支持されている。モータシャフト36の中空穴には、ラックシャフト12(ボールねじシャフト12b)が同軸的に軸方向移動可能に貫挿されている。モータシャフト36の外周には、平板状の永久磁石40が円周上に複数接着され、この永久磁石40に対向してステータ37がモータハウジング16の内周に配設されている。ステータ37は複数のコイル41を備え、このコイル41に通電して発生する磁束を永久磁石40に作用させることによりモータシャフト36が回転される。また、モータハウジング16のラックハウジング17側の内周には回転角検出センサ42が設けられ、モータシャフト36の回転位置を検出するようになっている。
【0020】
電動モータ15は、図1に示すように、制御ユニット43に電気的に接続されており、制御ユニット43にはステアリングホイール19のステアリング操作により生じる操舵トルクを検出するトルクセンサ44と、モータシャフト36の回転角を検出する回転角検出センサ42とが電気的に接続されている。トルクセンサ44はステアリングシャフト45を構成するアッパシャフト45aとロアシャフト45bとの間に配設され、アッパシャフト45aとロアシャフト45bとの相対角変位に基づいて操舵トルクを検出するようになっている。制御ユニット43はトルクセンサ44と回転角検出センサ42の検出結果に応じて、補助トルク(アシスト力)を働かせるべき方向および大きさを電動モータ15に生じさせるようになっている。
【0021】
ボールねじ装置13は、主にボールねじシャフト12bと、第1および第2の一対のボールナット23,24と、これらボールねじシャフト12bと第1および第2のボールナット23,24の各間に介在された複数の循環ボール21から構成されている。ボールねじシャフト12bの外周には循環ボール21が転動するボール転動溝22がらせん状に形成され、また、第1および第2のボールナット23,24の内周には、循環ボール21が転動するボール転動溝25,26がそれぞれらせん状に形成され、これらボール転動溝22とボール転動溝25,26との各間に循環ボール21をなす複数のボール(鋼球)が転動可能に介装されている。
【0022】
第1および第2のボールナット23には、公知の循環駒によって数条のボール循環溝がそれぞれ形成され、これらボール循環溝を循環ボール21が循環されるようになっている。
【0023】
第1および第2のボールナット23,24は、図3に詳細図示するように、モータシャフト36に形成されたナット装着穴36aに嵌合され、ナット装着穴36aの開口端内周に形成されたねじ穴36bに螺合する締付けナット48によりモータシャフト36に固定されるようになっている。ナット装着穴36aに嵌合された第2のボールナット24は、締付けナット48の端面48aにより押圧され、この第2のボールナット24を介して第1のボールナット23がモータシャフト36の内端面36cに押付けられる。そして、第1および第2のボールナット23,24を締付けナット48によって予め定められた締付けトルクで締付けることにより、第1および第2のボールナット23,24をモータシャフト36に固定的に装着するようになっている。なお、モータシャフト36は、請求項1におけるナット装着部材を構成している。
【0024】
前記締付けナット48に当接する第2のボールナット24の一端には小径部24aが形成され、この小径部24aの外周と締付けナット48の内周との間に、スリップリング50が介挿されている。スリップリング50は締付けナット48の内周に装着され、締付けナット48による締付け時に、第2のボールナット24の小径部24aに嵌合して第2のボールナット24に締付けナット48の回転トルクを伝達するようになっている。そして、第2のボールナット24の端面が第1のボールナット24の端面に当接して締付けナット48による締付けトルクが所定の回転トルクを越えると、第2のボールナット24に対して締付けナット48が空転されるようになる。この空転は第2のボールナット24の外周とスリップリング50との間、もしくは締付けナット48の内周とスリップリング50との間のいずれかで生起される。このようにして、締付けナット48は、第1および第2のボールナット23,24がモータシャフト36の内端面36cに予め定められた締付けトルクで締付けられるまで締付けられる。
【0025】
すなわち、スリップリング50は、ウエーブを形成した板状のばね用材料をリング状にして、締付けナット48の内周と第2のボールナット24の外周との間に介挿することにより、締付けナット48と第2のボールナット24の径方向につっぱり力を発生させ、いわゆるトルクリミッターとして機能するものである。スリップリング50としては、例えば、レンコールトレランスリングジャパン株式会社製の締結器(商品名:トレランスリング)を使用できる。
【0026】
このように、モータシャフト36への第1および第2のボールナット23、24の装着時に、締付けナット48の締付けによりスリップリング50を介して第2のボールナット24に所定の回転トルクが伝達されることにより、第2のボールナット24とボールねじシャフト12bとの空隙が除去され、同時にその反作用により第1のボールナット23が第2のボールナット24に対して相対回転され、第1のボールナット23とボールねじシャフト12bとの空隙が除去される。従って、ボールねじ装置13にスリップリング50による所定の与圧が付与され、ボールねじ装置13のがたが除去される。
【0027】
上記したスリップリング50によって、締付けナット48の締付けにより第1および第2のボールナット23、24間に所定の相対回転トルクを付与するトルク付与手段51を構成している。
【0028】
なお、締付けナット48により第1および第2のボールナット23、24を予め定められた締付けトルクでモータシャフト36に装着した後に、締付けナット48の端部をモータシャフト36のナット装着穴36aの開口端に形成された切欠き36dにかしめることにより、締付けナット48が回り止めされ、締付けナット48の緩みが防止される。
【0029】
次に、上記のように構成された電動パワーステアリング装置10の動作について説明する。ステアリングホイール19を操舵すると、操舵トルクがステアリングシャフト45を介して入力軸14に伝達され、ピニオンギヤ20とラック歯12aとによるラックピニオン機構を介してラックシャフト12が軸方向に移動される。
【0030】
ステアリングシャフト45に与えられた操舵トルクはトルクセンサ44により検出され、また、回転角検出センサ42によって電動モータ15のモータシャフト36の回転位置等が検出される。これら操舵トルクおよびモータシャフト36の回転位置等に基づいて制御ユニット43が電動モータ15を制御し、補助トルクを発生させる。電動モータ15による補助トルクはボールねじ装置13によってラックシャフト12の軸方向移動に変換され、運転者によるステアリングホイール19の操舵力が軽減される。
【0031】
ところで、ボールねじ装置13の第1および第2のボールナット23,24には、スリップリング50によって所定の相対回転トルクが付与され、ボールねじ装置13のがたが防止されているため、ベルジャン路等、段差のある路面を走行した際に、タイヤ側よりラックシャフト12を強制振動させる外力が入力されても、ガタガタ音が発生せず、しかも、タイヤからの外力による振動によって車室内で異音が発生することがなくなる。
【0032】
このように上記した第1の実施の形態によれば、トルク付与手段51の付設によって、電動パワーステアリング装置10のボールねじ装置13に適正な与圧を付与することができるので、タイヤ側より入力される振動による異音の発生を防止することができる。しかも、ボールねじ装置13の通常の組付け工程内において適正な与圧を簡単に付与できるので、電動パワーステアリング装置10の生産性を向上でき、生産コストを低減することができる。
【0033】
また、上記した実施の形態の如く、一対のボールナット23,24に相対回転トルクを付与してボールナット23,24とボールねじシャフト12bの間に与圧を付与することにより、ボールナット23,24とボールねじシャフト12bの軸方向位置を調整して与圧を付与するものに比較し、与圧を数倍に増幅でき、高精度な与圧調整を行うことができる。
【0034】
図4および図5は、本発明の第2の実施の形態を示すもので、トルク付与手段51の変形例を示すものである。第2の実施の形態におけるトルク付与手段51は、第2のボールナット24の外周に円周上複数突設された樹脂製の係合突起60からなり、この係合突起60が締付けナット48の先端内周に所定の摩擦力で摩擦係合するようにしたものである。そして、締付けナット48によるボールナット23、24の締付け時に、係合突起60によって第2のボールナット24に所定の回転トルクを付与し、所定の回転トルクを越えると第2のボールナット24に対して係合突起60を滑らせて締付けナット48を空転させるようにしたものである。この場合、突起60を、締付けナット48の内周側に形成して、第2のボールナット24の外周との間で摩擦係合させるようにしてもよい。なお、トルク付与手段51を除く構成は第1の実施の形態と同じであるので、同一部品に同一の参照番号を付し、その説明は省略する。
【0035】
斯様に、締付けナット48の締付けにより第1および第2のボールナット23、24間に所定の相対回転トルクを付与するトルク付与手段51は、同様な機能を有する各種の構成を採り得るものであり、実施の形態で述べたものに限定されるものではなく、また、その形状においても必ずしもリング状である必要はない。
【0036】
上記した実施の形態においては、電動モータ15をラックシャフト12と同軸的に配置した電動パワーステアリング装置について説明したが、電動パワーステアリング装置としては、例えば、特開2003−300470号公報に記載されているように、電動モータの回転軸線とラックシャフトの中心軸線とが交差するように電動モータを配置し、電動モータの回転出力を傘歯車機構のような伝動機構を介してボールねじ装置のボールナットを装着したナット装着部材に伝達するように構成したものであってもよい。また、前記伝動機構として、平歯車機構あるいは伝動ベルト機構を採用すれば、電動モータをその回転軸線がラックシャフトの中心軸線と平行になるように配置することも可能である。
【0037】
また、上記した実施の形態においては、トルク付与手段51を備えたボールねじ装置13を電動パワーステアリング装置10に適用した例について述べたが、当該ボールねじ装置13は、回転運動を直線運動に変換する、あるいは直線運動を回転運動に変換する他の技術分野にも応用可能であり、電動パワーステアリング装置10に用いることに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る電動パワーステアリング装置を車体へ搭載した概略構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示すボールねじ装置を使用した電動パワーステアリング装置の断面図である。
【図3】図2に示したボールねじ装置の詳細を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態を示す図3に相応する図である。
【図5】図4のA−A線に沿って切断した図である。
【符号の説明】
【0039】
10…電動パワーステアリング装置、11…ギヤハウジング、12…ラックシャフト、12a…ラック歯、12b…ボールねじシャフト、13…ボールねじ装置、14…入力軸、15…電動モータ、16…モータハウジング、17,18…ラックハウジング、19…ステアリングホイール、20…ピニオンギヤ、21…循環ボール、22…ボール転動溝、23,24…ボールナット、25、26…ボール転動溝、36…モータシャフト(ナット装着部材)、36a…ナット装着穴、36b…ねじ穴、37…ステータ、42…回転角検出センサ、43…制御ユニット、44…トルクセンサ、45…ステアリングシャフト、48…締付けナット、50…スリップリング、51…トルク付与手段、60…係合突起。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面にボール転動溝をらせん状に形成したボールねじシャフトと、内周面にボール転動溝をそれぞれらせん状に形成し前記ボールねじシャフトに循環ボールを介してそれぞれ螺合する第1および第2のボールナットと、これら第1および第2のボールナットを装着したナット装着部材と、該ナット装着部材に螺合され前記第1および第2のボールナットを前記ナット装着部材の端面に締付ける締付けナットを備えたボールねじ装置において、前記締付けナット側に位置する前記第2のボールナットの外周と前記締付けナットの内周との間に介在され前記締付けナットの締付けにより前記第1および第2のボールナット間に所定の相対回転トルクを付与するトルク付与手段を設けたことを特徴とするボールねじ装置。
【請求項2】
請求項1において、トルク付与手段は、前記第2のボールナットの外周と前記締付けナットの内周との間に介在されたスリップリングからなり、前記締付けナットによる前記第2のボールナットの締付け時に、前記スリップリングにより前記第2のボールナットに所定の回転トルクを付与し、所定の回転トルクを越えると前記締付けナットと第2のボールナット間でスリップを生じさせるようになっているボールねじ装置。
【請求項3】
ギヤハウジングと、該ギヤハウジングに軸方向に移動可能に貫挿されラックピニオン機構を介して入力軸に連結されるラックシャフトと、電動モータと、該電動モータの回転出力を前記ラックシャフトの軸方向運動に変換するボールねじ装置とを備えた電動パワーステアリング装置において、前記ボールねじ装置は、前記ラックシャフトに一体に設けられたボールねじシャフトと、前記電動モータによって回転されるナット装着部材に装着され前記ボールねじシャフトに循環ボールを介してそれぞれ螺合する第1および第2のボールナットと、前記ナット装着部材に螺合され前記第1および第2のボールナットを前記ナット装着部材の端面に締付ける締付けナットと、該締付けナット側に位置する前記第2のボールナットの外周と前記締付けナットの内周との間に介在され前記締付けナットの締付けにより前記第1および第2のボールナット間に所定の相対回転トルクを付与するトルク付与手段とによって構成したことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
請求項3において、前記電動モータは、前記ラックシャフトと同軸的に前記ギヤハウジング内に配置され、前記ナット装着部材は、前記電動モータのモータシャフトを構成している電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−329354(P2006−329354A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−155215(P2005−155215)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】