説明

ボールねじ装置

【課題】 ねじ軸が回転せずに軸方向に直線移動する形態で使用される際に好適なボールねじ装置を提供する。
【解決手段】 ボールねじナット3が回転して、ねじ軸2が軸方向に直線移動し、ねじ軸2の極限位置がストッパ14によって規定される。ボールねじナット3と一体に回転しねじ軸2が移動可能に嵌め入れられている中空軸5を備えている。中空軸5に、ねじ軸2が極限位置に到達する前にねじ軸2に摩擦力を作用させる小径部12が形成され、ねじ軸2の端部に、樹脂層13が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボールねじ装置に関し、特に、ねじ軸が回転せずに軸方向に直線移動する形態で使用されるボールねじ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ねじ軸およびこれにボールを介してねじ合わされたボールねじナットを備えているボールねじ装置は、電動アクチュエータ用や緩衝器用としてよく使用されており、例えば、特許文献1には、ねじ軸にモータを接続することで、ねじ軸が回転して、ボールねじナットが軸方向に直線移動する形態とされたボールねじ装置を緩衝器に適用することが開示されている。
【特許文献1】特開2006−67649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ボールねじ装置の場合、上記従来のものとは逆に、ボールねじナットにモータを接続し、ねじ軸が直進移動する形態で使用することがある。この形態では、通常、外部から強い力を受けた場合のねじ軸の所定量以上の移動を防止するために、ストッパが設けられる。ストッパによってねじ軸が停止する直前は、ねじ軸が高速で移動し、ボールねじナットが高速で回転しているため、ねじ軸の急激な停止によって、ボールねじナットに大きい回転慣性力が発生し、この回転慣性力によってボールねじの軌道部に圧痕が発生する可能性がある。
【0004】
この発明の目的は、ねじ軸が回転せずに軸方向に直線移動する形態で使用される際に好適なボールねじ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明によるボールねじ装置は、ねじ軸およびこれにボールを介してねじ合わされたボールねじナットを備え、ボールねじナットが回転して、ねじ軸が軸方向に直線移動し、ねじ軸の前進方向の極限位置がストッパによって規定されるボールねじ装置において、ねじ軸が極限位置に到達する前にねじ軸の前進速度を減少させる制動手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0006】
この発明によるボールねじ装置は、アクチュエータ(モータによって中空軸およびボールねじナットが回転させられ、これにより、ねじ軸が直線移動する形態)として使用されることがあり、緩衝器(ねじ軸が外部からの力によって直線移動させられ、これにより、中空軸およびボールねじナットが回転し、モータが発生する電磁力が減衰力となる形態)として使用されることがある。
【0007】
いずれの場合でも、ねじ軸は、往復直線移動し、通常、その所定方向(この明細書では「前進方向」と称す。この「前進方向」は、ストッパに衝突する移動方向を意味し、具体的には、上下、前後、左右およびその他の方向のいずれであってもよい。)の所定量以上の移動を防止するためのストッパが設けられる。ストッパは、例えば、ねじ軸が所定量以上移動した際にハウジングに当接するフランジ部をねじ軸に設けることで形成することができ、また、ストッパは、ねじ軸と一体に直線移動する部材に形成してもよく、直線移動しない方の部材(ハウジングや中空軸)に設けることもできる。なお、往復直線移動の一方向だけでなく、その逆方向についてもストッパが設けられていてもよく、この場合に、逆方向のストッパに対応する制動手段がさらに設けられているようにしてもよい。ストッパによってねじ軸の前進方向の極限位置が規定されていることで、極限位置に達すると、ねじ軸が強制的に停止させられる。この際のねじ軸の移動速度が速い場合、ねじ軸の急停止時におけるナットの回転慣性力が大きいため、ボールねじ軌道に圧痕が生じることがある。
【0008】
制動手段は、ねじ軸を停止させるためのものではなく、ねじ軸がストッパに衝突した時の衝撃荷重を小さくするためのものであり、制動手段のストロークは、制動手段のストロークをすべて使った後にストッパとの衝突が起こるように、ストッパのストロークに比べて小さいものとされる。ねじ軸に軸方向の大きな力が作用すると、ねじ軸が高速で直線移動するが、高速で前進しているねじ軸は、制動手段から進行方向と逆向きの力を受けることになり、これによって、ねじ軸の直線移動速度(前進速度)が減少し、これに伴い、ボールねじナットの回転速度が減少して、ボールねじナットの回転慣性力が小さくなる。この後、ねじ軸がストッパによって強制的に停止させられるが、このときのボールねじナットの回転慣性力は小さくなっているので、ボールねじの軌道部に圧痕が発生することが防止される。ストッパによって強制的に停止させられた後、ねじ軸は、元の状態に復帰させられる。
【0009】
制動手段は、種々の構成とすることが可能であり、例えば、ボールねじナットに固定されかつねじ軸の前進方向にのびる中空軸をさらに備えており、制動手段は、中空軸先端部内周に形成されてねじ軸に摩擦力を作用させる小径部と、中空軸の小径部およびねじ軸の先端部外周の少なくとも一方に形成された樹脂層とからなることがある。
【0010】
中空軸は、好ましくは、金属製でモータロータを兼ねるものとされ、中空軸の小径部は、中空軸の先端部を内径が徐々に小さくなるテーパ状とすることで形成することができる。ねじ軸の端部は、テーパ状としてもよく、テーパ状でなくても(ストレート状であっても)よい。樹脂層は、例えば、ねじ軸の端部外周に形成される。中空軸の小径部は、円筒状モータロータの内周に、樹脂をテーパ状に塗布することで形成することもできる。ねじ軸に軸方向の大きな力が作用した際、ねじ軸は、まず、中空軸の小径部に入り込むことで、その前進速度が減少し、これに伴い、ボールねじナットの回転速度が減少して、ボールねじナットの回転慣性力が小さくなる。樹脂層は、ねじ軸が中空軸の小径部に嵌まり合う際の衝撃を抑えるとともに、ねじ軸を元の状態に復帰させることを容易にする。樹脂層の材料は、例えば、ポリウレタン、ポリアミド等とされる。樹脂層により、ねじ軸からのボールねじナットの脱落防止機能も得ることができる。
【0011】
また、制動手段は、前進するねじ軸を受けるための弾性部材を有しており、弾性部材を介して前進するねじ軸を受けるためのものとされることがあり、制動手段は、前進するねじ軸を受けるためのエアダンパーを有しており、エアダンパーを介して前進するねじ軸を受けるためのものとされることがある。弾性部材としては、種々の形式のばねやゴムまたは合成樹脂からなる弾性体などがある。
【0012】
エアダンパーは、例えば、中空軸の先端開口がカバーで閉鎖されることによってシリンダが形成され、ねじ軸の先端部がピストンの作用を果たすようにすることで形成することができる。中空軸の先端部は、テーパ状であってもよく、ストレート状であってもよい。また、空気室の空気を徐々に排出するためのオリフィスは、あってもなくてもよい。
【0013】
ねじ軸の直線移動を案内するスプラインがねじ軸に一体に設けられていることがある。この場合のスプラインは、ボールスプラインであってもよく、例えばインボリュートスプラインのような嵌合式のスプラインであってもよい。
【0014】
ボールねじ装置は、例えば、ねじみぞおよびスプラインみぞが設けられたねじ軸と、ねじ軸のねじみぞにボールを介してねじ合わされたボールねじナットと、ボールねじナットに一体化されている中空軸と、ねじ軸のスプラインみぞにボールを介して嵌め合わされてねじ軸の軸方向直線運動を案内するボールスプライン外筒と、軸受を介して中空軸を回転可能に支持するとともにボールスプライン外筒を移動不可能に支持するハウジングと、中空軸外周に固定された磁石(ロータ)およびこれに対向するようにハウジング内周に固定されたステータからなるモータと、ねじ軸の所定量以上の直線移動を防止するためのストッパと、上記制動手段とを備えているものとされる。
【発明の効果】
【0015】
この発明のボールねじ装置によると、ねじ軸が強制的に停止させられる際の衝撃荷重を小さくすることができ、ボールねじ軌道に圧痕が発生することを防止できる。これにより、強度確保のために全体を大きくした場合の慣性モーメント増加という問題が解消し、ボールねじ装置を小型化および軽量化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。以下の説明において、左右は、図の左右をいうものとし、また、左方を前進方向とする。
【0017】
図1は、この発明によるボールねじ装置の第1実施形態を示している。
【0018】
ボールねじ装置(1)は、ねじみぞ(2a)および左右方向にのびるスプラインみぞ(2b)が設けられた左右にのびる鋼製ねじ軸(2)と、ねじ軸(2)のねじみぞ(2a)にボール(4)を介してねじ合わされたボールねじナット(3)と、ボールねじナット(3)に一体化されて左方にのびる中空軸(5)と、ねじ軸(2)のスプラインみぞ(2b)にボール(7)を介して嵌め合わされてねじ軸(2)の左右方向(軸方向)直線運動を案内するボールスプライン外筒(6)と、軸受(9)を介して中空軸(5)を回転可能に支持するとともにボールスプライン外筒(6)を移動不可能に支持するハウジング(8)と、中空軸(5)外周に固定された磁石(ロータ)(10a)およびこれに対向するようにハウジング(8)内周に固定されたステータ(10b)からなるモータ(10)と、ねじ軸(2)の所定量以上の前進を防止するためのストッパ(14)と、ストッパ(14)が衝突する前にねじ軸(2)の前進速度を減少させるための制動手段(15)とを備えている。
【0019】
ねじ軸(2)と中空軸(5)とは、同心状に配置されており、ボールねじ装置(1)は、中空軸(5)がモータ(10)のロータを兼ねていることにより、中空軸(5)およびボールねじナット(3)を回転させて、ねじ軸(2)を直線移動させる形態で使用される。
【0020】
図1において、ストッパ(14)は、ねじ軸(2)が左方に移動して、その前進方向の移動量が所定値(ねじ軸(2)の極限位置)となった場合に、ハウジング(8)に当たるように形成されている。
【0021】
中空軸(5)は、略円筒状で、ねじ軸(2)との間に所要の径方向間隙を有しねじ軸(2)に干渉しない大径部(11)と、大径部(11)の左端に連なってその最小径がねじ軸(2)の外径よりも小さい小径部(12)とを有している。
【0022】
図2に拡大して示すように、中空軸(5)の小径部(12)は、徐々に径が小さくなり先端径がねじ軸(2)の外径よりも小さいテーパ状とされており、制動手段(15)は、この中空軸(5)の小径部(12)と、小径部(12)に嵌まり合っていくねじ軸(2)の左端部(左端面および左端部外周)に形成された樹脂層(13)とを備えている。
【0023】
このボールねじ装置(1)は、例えば、自動車の電磁サスペンション用として使用するのに適している。電磁サスペンションは、タイヤから伝わる軸方向運動をボールねじ機構により回転運動に変換し、この回転運動をモータ(10)に取り込んで、モータ(10)で発生する電磁力を減衰力として利用する緩衝器であり、突起乗り越し等のサスペンションオーバストローク時には、直線移動部分に設けられたバンプストッパがモータフランジ等に衝突することにより、高速回転していたモータ(10)が急停止し、モータ(10)の慣性トルクにより過大軸力がボールねじ部分(2)(3)(4)に負荷されることがあり、この場合のボールねじ機構の保護が課題となっている。
【0024】
上記のボールねじ装置(1)によると、ストッパ(14)がハウジング(8)に当たる前に、ねじ軸(2)の左端部(前進方向の端部=先端部)が中空軸(5)の小径部(12)内に入り込み、これによって、ねじ軸(2)に摩擦力(制動力)が作用する。この結果、ねじ軸(2)の前進速度は減少し、これに伴い、モータ(10)の回転速度も減少する。したがって、ストッパ(14)がハウジング(8)に当たった時には、モータ(10)の慣性トルクは小さくなっており、ボールねじ機構が保護され、圧痕の発生などの問題が生じることが防止される。
【0025】
制動手段(15)は、ストッパ(14)が衝突する前にねじ軸(2)の前進速度を減少させるものであれば、上記構成に限られるものではない。その例を以下に示す。
【0026】
図3は、この発明によるボールねじ装置の第2実施形態を示しており、摩擦力を作用させるための中空軸(5)の小径部(12)の形状が第1実施形態から変更されたものであって、中空軸(5)の小径部(12)は、大径部(11)側にあってその最小径がねじ軸(2)の径にほぼ等しい第1ストレート部(12a)と、中空軸(5)の端部側にあってその最小径がねじ軸(2)の径よりも小さい第3ストレート部(12c)と、第1ストレート部(12a)と第3ストレート部(12c)との間にあってこれらの中間の径を有する第2ストレート部(12b)と、大径部(11)と第1ストレート部(12a)とをつなぐ第1テーパ部(12d)と、第1ストレート部(12a)と第2ストレート部(12b)とをつなぐ第2テーパ部(12e)と、第2ストレート部(12b)と第3ストレート部(12c)とをつなぐ第3テーパ部(12f)とからなるものとされている。
【0027】
このボールねじ装置(1)によると、第1実施形態のものと同様に、ストッパ(14)がハウジング(8)に当たる前に、ねじ軸(2)の左端部(前進方向の端部=先端部)が中空軸(5)の小径部(12)内に入り込み、これによって、ねじ軸(2)に摩擦力(制動力)が作用する。この結果、ねじ軸(2)の前進速度は減少し、これに伴い、モータ(10)の回転速度も減少する。したがって、ストッパ(14)がハウジング(8)に当たった時には、モータ(10)の慣性トルクは小さくなっており、ボールねじ機構が保護され、圧痕の発生などの問題が生じることが防止される。
【0028】
図1および図2に示す第1実施形態と図3に示す第2実施形態とは、ねじ軸(2)に対して制動がかけられる位置および制動荷重が異なっている。すなわち、第1実施形態のものは、中空軸(5)の小径部(12)がテーパ状であるので、図2において、中空軸(5)の右側から徐々に荷重が増加していくように制動がかけられる。これに対し、第2実施形態のものでは、中空軸(5)の小径部(12)が段付き状であるので、ねじ軸(2)の先端部と最初に干渉する第1ストレート部(12a)による制動で所定の制動荷重をかけることができ、さらに、大きな荷重に対して制動をかける必要がある場合は、2番目に干渉する第2ストレート部(12b)でさらなる制動がかけられる。このため、第2実施形態のものによると、制動位置および荷重をより明確にすることができる。したがって、要求される荷重と制動位置とに応じて、第1実施形態のものと第2実施形態のものとを使い分けることができる。
【0029】
図4は、この発明によるボールねじ装置の第3実施形態を示している。
【0030】
図4において、制動手段(15)は、徐々に径が小さくなり先端径がねじ軸(2)の外径よりも小さいテーパ状とされた中空軸(5)の小径部(12)と、ハウジング(8)の先端部に固定されて中空軸(5)の先端開口を閉鎖しているカバー(16)と、ねじ軸(2)の先端部に設けられたOリング(環状シール部材)(17)とを備えており、中空軸(5)の小径部(12)の先端開口がカバー(16)で閉鎖されることによってシリンダが形成され、ねじ軸(2)のOリング(17)付きの先端部がピストンの作用を果たすことで、エアダンパー(25)が形成されている。
【0031】
この実施形態のボールねじ装置(1)によると、ストッパ(14)がハウジング(8)に当たる前に、ねじ軸(2)の端部が中空軸(5)の小径部(12)内に入り込み、Oリング(17)が中空軸(5)の小径部(12)の内周面に摺接することで、ねじ軸(2)が先端方向に移動するに連れて増大する逆向きの力を与える空気室が形成される。この結果、ねじ軸(2)の前進速度は減少し、これに伴い、モータ(10)の回転速度も減少する。したがって、ストッパ(14)がハウジング(8)に当たった時には、モータ(10)の慣性トルクは小さくなっており、ボールねじ機構が保護され、圧痕の発生などの問題が生じることが防止される。この後、ねじ軸(2)の左端部が中空軸(5)の大径部(11)内に位置するようにねじ軸(2)を移動させると、ねじ軸(2)外周と中空軸(5)内周との間に空気通路がある元の状態に復帰する。
【0032】
図5は、この発明によるボールねじ装置の第4実施形態を示しており、制動手段(15)が弾性部材を利用したものとされている。
【0033】
図5において、中空軸(5)は、先端部を含めて同じ径とされており、制動手段(15)は、ハウジング(8)の先端部に固定されて中空軸(5)の先端開口を閉鎖しているカバー(16)と、カバー(16)に設けられてねじ軸(2)の先端部を受ける発泡ウレタンからなる弾性体(弾性部材)(18)とを有している。
【0034】
この実施形態のボールねじ装置(1)によると、ストッパ(14)がハウジング(8)に当たる前に、ねじ軸(2)の端部が弾性体(18)に衝突することで、ねじ軸(2)に進行方向と逆向きの力が作用する。この結果、ねじ軸(2)の前進速度は減少し、これに伴い、モータ(10)の回転速度も減少する。したがって、ストッパ(14)がハウジング(8)に当たった時には、モータ(10)の慣性トルクは小さくなっており、ボールねじ機構が保護され、圧痕の発生などの問題が生じることが防止される。
【0035】
図6は、この発明によるボールねじ装置の第5実施形態を示している。
【0036】
図6において、中空軸(5)は、先端部を含めて同じ径とされており、制動手段(15)は、円筒部(22a)、円筒部(22a)の左端に設けられた円板部(22b)、および円筒部(22a)の右端に設けられたフランジ部(22c)からなり円筒部(22a)の右端部がハウジング(8)に設けられた開口(8a)の縁部に固定された固定ばね受け部材(22)と、円柱部(23a)およびその左端に設けられた円板部(23b)からなり固定ばね受け部材(22)の円筒部(22a)内に移動可能に配された可動ばね受け部材(23)と、固定ばね受け部材(22)の円板部(22b)と可動ばね受け部材(23)の円板部(23b)との間に支持された弾性部材としてのコイルばね(24)とからなる。
【0037】
この実施形態のボールねじ装置(1)によると、ねじ軸(2)がストッパ(14)に当たる際、まず、ねじ軸(2)の左端(先端)が可動ばね受け部材(23)に当接し、この可動ばね受け部材(23)が弾性部材(24)を押して左方に移動することによって、ねじ軸(2)の前進速度は減少し、これに伴い、モータ(10)の回転速度も減少する。したがって、ストッパ(14)がハウジング(8)に当たった時には、モータ(10)の慣性トルクは小さくなっており、ボールねじ機構が保護され、圧痕の発生などの問題が生じることが防止される。
【0038】
なお、上記のボールねじ装置(1)は、電動アクチュエータとして使用することもできる。この場合、モータの回転駆動力をボールねじナット(3)を介してねじ軸(2)の軸方向推力に変換し、推力の軸方向反力を軸受(9)で支持してねじ軸(2)を直線運動させ、ねじ軸(2)に作用する軸方向荷重をボールねじナット(3)で負荷するとともに、トルクをボールスプライン外筒(6)で支持した形態での使用となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、この発明のボールねじ装置の第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図2は、図1の要部の拡大縦断面図である。
【図3】図3は、この発明のボールねじ装置の第2実施形態を示す要部の拡大縦断面図である。
【図4】図4は、この発明のボールねじ装置の第3実施形態を示す要部の拡大縦断面図である。
【図5】図5は、この発明のボールねじ装置の第4実施形態を示す要部の拡大縦断面図である。
【図6】図6は、この発明のボールねじ装置の第5実施形態を示す要部の拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0040】
(1) ボールねじ装置
(2) ねじ軸
(3) ボールねじナット
(4) ボール
(5) 中空軸
(12) 小径部
(13) 樹脂層
(14) ストッパ
(15) 制動手段
(18) 弾性体(弾性部材)
(24) コイルばね(弾性部材)
(25) エアダンパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ軸およびこれにボールを介してねじ合わされたボールねじナットを備え、ボールねじナットが回転して、ねじ軸が軸方向に直線移動し、ねじ軸の前進方向の極限位置がストッパによって規定されるボールねじ装置において、
ねじ軸が極限位置に到達する前にねじ軸の前進速度を減少させる制動手段が設けられていることを特徴とするボールねじ装置。
【請求項2】
ボールねじナットに固定されかつねじ軸の前進方向にのびる中空軸をさらに備えており、制動手段は、中空軸先端部内周に形成されてねじ軸に摩擦力を作用させる小径部と、中空軸の小径部およびねじ軸の先端部外周の少なくとも一方に形成された樹脂層とからなることを特徴とする請求項1のボールねじ装置。
【請求項3】
制動手段は、前進するねじ軸を受けるための弾性部材を有していることを特徴とする請求項1のボールねじ装置。
【請求項4】
制動手段は、前進するねじ軸を受けるためのエアダンパーを有していることを特徴とする請求項1のボールねじ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−156354(P2009−156354A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335566(P2007−335566)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】